説明

粉体センサ

【課題】粉体の有無だけでなく残量に応じて変化する検出信号を出力することが可能な粉体センサを提供する。
【解決手段】発振回路10は、出力信号Vdrvの周波数を、圧電素子5の共振周波数Frを含む周波数範囲で掃引する。位相差検出回路20は、発振回路10の出力信号Vdrvと圧電素子5の端子電圧Vpとの位相差を検出する。位相差変換回路30は、位相差検出回路20によって検出した位相差をアナログ電圧に変換するもので、例えば積分回路により実現される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機のトナー等の粉体を検出する粉体センサに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば複写機に用いられているトナーは、複写枚数が増加するほどその量が消費されるので、常にその残量を検知して適当量に減った場合は新たに補給してやらねばならない。このような目的で粉体の有無を検知する粉体センサが知られている。
【0003】
下記特許文献1の粉体センサは、粉体センサ素子7(2端子の圧電素子)の入力側に抵抗Rを介して掃引発振回路6を接続し、粉体センサ素子7の端子電圧と掃引発振回路6の駆動パルス信号との位相比較を位相比較部8aで行い、この比較結果を位相弁別部8bで弁別して粉体の有無を検知する。具体的には、検知した位相差を、予め設定した45゜のしきい値を基に例えば80゜乃至90゜の場合はレベル0に、また0゜乃至10゜の場合はレベル1にレジスタにラッチし、粉体の有無に応じて検知信号をデジタル信号として出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2928273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の粉体センサは、粉体の有無に応じた2値検知しかできないため、ユーザにとっては情報量が不足で便利とはいえなかった。
【0006】
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、その目的は、粉体の有無だけでなく残量に応じて変化する検出信号を出力することが可能な粉体センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、粉体センサである。この粉体センサは、
圧電素子と、
少なくとも前記圧電素子の共振周波数又はその近傍の周波数の出力信号を前記圧電素子に印加する発振回路と、
前記発振回路の出力信号と前記圧電素子の端子電圧との位相差を検出する位相差検出回路と、
前記位相差検出回路によって検出した前記位相差をアナログ電圧に変換する位相差変換回路とを備える。
【0008】
前記位相差変換回路は、前記位相差検出回路の出力電圧を入力電圧とする積分回路を含むとよい。
【0009】
前記発振回路は、前記圧電素子の共振周波数を含む周波数範囲で出力信号の周波数を掃引する掃引発振回路であるとよい。
【0010】
前記発振回路は、電圧制御発振器と、前記電圧制御発振器に制御電圧を入力する可変定電圧源とを含むとよい。
【0011】
本発明の別の態様も、粉体センサである。この粉体センサは、
圧電素子と、
少なくとも前記圧電素子の共振周波数又はその近傍の周波数の出力信号を前記圧電素子に印加する発振回路と、
前記発振回路の出力信号に対する前記圧電素子の端子電圧の遅れ又は進みの期間に、前記圧電素子に印加される信号の周波数よりも高い周波数のパルスを数えるカウンタとを備える。
【0012】
前記発振回路は、電圧制御発振器と、前記電圧制御発振器に制御電圧を入力する可変定電圧源と、前記電圧制御発振器の出力信号が入力される分周器とを備え、前記分周器の出力信号を前記圧電素子に印加し、
前記カウンタは、前記分周器から出力される、前記圧電素子への印加信号よりも周波数の高い出力信号のパルスを数えるとよい。
【0013】
前記粉体センサにおいて、前記カウンタの出力信号をアナログ電圧に変換するDAコンバータを備えるとよい。
【0014】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法やシステムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、粉体の有無だけでなく残量に応じて変化する検出信号を出力することが可能な粉体センサを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態1に係るトナーセンサのブロック図。
【図2】図1に示す圧電素子5の入力信号の周波数に対する位相遅れ特性図。
【図3】図1の位相差検出回路20の例示的な回路図。
【図4】図3の位相差検出回路20の出力信号Vdetの一例を示すタイミングチャート。
【図5】図1の位相差変換回路の例示的な回路図。
【図6】積分回路21の出力電圧Vintの一例を示すタイミングチャート。
【図7】本発明の実施の形態2に係るトナーセンサのブロック図。
【図8】図7のトナーセンサにおける例示的なタイミングチャート(その1)。
【図9】同タイミングチャート(その2)。
【図10】本発明の実施の形態3に係るトナーセンサのブロック図。
【図11】図10における掃引数11ビットの場合の例示的なタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態1に係る粉体センサとしてのトナーセンサのブロック図である。このトナーセンサは、圧電素子5と、発振回路10と、位相差検出回路20と、位相差変換回路30とを備える。
【0019】
トナーボックスに取り付けられた圧電素子5は、入力信号の周波数とトナー残量によって当該入力信号に対する位相の遅れが変化するものであり、入力信号の周波数に対する位相遅れ特性は図2に示すとおりである。すなわち、圧電素子5は、共振周波数Frの入力信号に対しては純抵抗に近い状態で位相遅れが小さい一方、入力信号の周波数が共振周波数Frから離れるにつれて静電容量としての性質が大きくなって位相遅れが大きくなる。また、圧電素子5は、トナーボックス内のトナー残量が多いほど振動が阻害され、共振周波数Frの入力信号に対しても静電容量としての性質が大きくなる。
【0020】
発振回路10は、少なくとも圧電素子5の共振周波数Fr又はその近傍の周波数の出力信号Vdrvを抵抗R1(制限抵抗)を介して圧電素子5に印加する。発振回路10は、好ましくは、出力信号Vdrvの周波数を、圧電素子5の共振周波数Frを含む周波数範囲で掃引する。掃引は、トナーボックスに取り付けた状態での圧電素子5の共振周波数が正確に特定できない場合に有効である。位相差検出回路20は、発振回路10の出力信号Vdrvと圧電素子5の端子電圧Vpとの位相差を検出する。
【0021】
図3は、図1の位相差検出回路20の例示的な回路図である。図4は、図3の位相差検出回路20の出力信号Vdetの一例を示すタイミングチャートである。位相差検出回路20の出力信号Vdetは、発振回路10の出力信号Vdrvの立ち上がり後、圧電素子5の端子電圧Vpが立ち上がるまでの間、ローレベル(0V)となる。また、トナー残量が多いほど、共振周波数Fr付近において発振回路10の出力信号Vdrvに対する圧電素子5の端子電圧Vpの位相遅れが大きくなり、位相差検出回路20の出力信号Vdetは長い期間に渡ってローレベル(0V)となる。一方、トナー残量がほとんど無くて圧電素子5が純抵抗として作用する場合、位相遅れは概ねゼロになる。この場合において、周波数掃引時、特に圧電素子5の共振周波数Frの近傍において周波数を低くしていく過程で、圧電素子5の端子電圧Vpが発振回路10の出力信号Vdrvの位相よりも進むことがある。そうすると、位相差検出回路20の出力信号Vdetは、圧電素子5の端子電圧Vpの立ち上がり後、発振回路10の出力信号Vdrvが立ち上がるまでの間、ハイレベル(Vdd)となる。その他の期間は、出力段のMOSFET201,202が共にオフとなり、高インピーダンス状態となる。
【0022】
図5(A)及び図5(B)は、図1の位相差変換回路30の例示的な回路図である。位相差変換回路30は、位相差検出回路20によって検出した位相差をアナログ電圧に変換するもので、図示のように例えば積分回路21により実現される。積分回路21の出力電圧(キャパシタCの電圧)は、パルスごとに初期化される(例えばVdd又はVdd/2となる)。なお、キャパシタCの一端は、グランド以外の固定電圧端子(電圧は0とVddの中間で例えばVdd/2)に接続されてもよい。積分回路21の後段のアナログピーク検出回路22については後述する。
【0023】
図6は、積分回路21の出力電圧Vintの一例を示すタイミングチャートである。積分回路21の出力電圧Vintは、位相差検出回路20の出力電圧Vdetがローレベル(0V)の期間に、キャパシタCが放電されることで下降する。トナー残量が多いほど、位相差検出回路20の出力信号Vdetは長い期間に渡ってローレベル(0V)となるため、積分回路21の出力電圧の下降幅は大きくなる。一方、積分回路21の出力電圧Vintは、位相差検出回路20の出力電圧Vdetがハイレベル(Vdd)の期間に、キャパシタCが充電されることで上昇する。なお、位相差検出回路20の出力電圧Vdetがハイレベル(Vdd)ということは、トナー残量がほとんど無いことを意味する。したがって、積分回路21の出力電圧は、トナー残量を示すアナログ電圧である。
【0024】
アナログピーク検出回路22は、例えば発振回路10の出力信号Vdrvの立ち上がり又は圧電素子5の端子電圧Vpの立ち下りを契機として積分回路21の出力電圧を受信し、当該出力電圧が現在保持している電圧よりも高いときは当該電圧を更新するものであり、発振回路10が出力信号の周波数を掃引する場合に必要となる。すなわち、周波数掃引が行われる場合、共振周波数Frから遠い周波数ではトナー残量の多少に関わらず約90°の位相遅れが生じるため、掃引終了時の積分回路21の出力電圧はトナー残量に関係ないものとなる。一方、掃引終了時にアナログピーク検出回路22に保持されているアナログ電圧Voutは、積分回路21の出力電圧のピーク値であってトナー残量に対応したものとなる。なお、ピーク検出回路22に時定数の長い(数秒程度の)放電回路を付加してもよい。放電回路は、ピーク検出回路22に使用される電荷保存用キャパシタ221に並列に抵抗を入れるだけで目的を達成できる。
【0025】
本実施の形態によれば、トナー残量に対応したアナログ電圧を得ることができる。すなわち、従来のような粉体の有無検出だけでなく、粉体の残量に応じて変化するアナログ電圧(検出信号)を出力することが可能な粉体センサを実現可能である。
【0026】
図7は、本発明の実施の形態2に係る粉体センサとしてのトナーセンサのブロック図である。図8は、図7のトナーセンサにおける例示的なタイミングチャート(その1)である。図9は、同タイミングチャート(その2)である。このトナーセンサにおいて、発振回路10は、可変定電圧源11と、VCO12(VCO:電圧制御発振器)と、4段分周器13とを有する。VCO12は、可変定電圧源11からの制御電圧で動作する。4段分周器13は、VCO12の出力信号を1/16分周する。分周後の出力信号Vdrvは、抵抗R1を介して圧電素子5に印加される。可変定電圧源11の電圧を変化させることで、出力信号Vdrvの周波数を圧電素子5の共振周波数Frを含む周波数範囲で掃引する。
【0027】
デコード&ラッチ回路25は、例えば4段のカウンタを含み、このカウンタは、発振回路10の出力信号Vdrvに対する圧電素子5の端子電圧Vpの遅れの期間に、圧電素子5に印加される信号(Vdrv)の周波数よりも高い周波数のパルスを数える(例えばダウンカウントする)。数える対象となるパルスは、例えば発振回路10の出力信号Vdrvの2倍、4倍、8倍、又は16倍の周波数のパルスであり、4段分周器13から得られる。16倍の周波数のパルスを数える場合、1カウントにつき22.5°の位相遅れに相当する。
【0028】
デコード&ラッチ回路25は、ピーク検出回路を含む。このピーク検出回路は、例えば発振回路10の出力信号Vdrvの立ち上がり又は圧電素子5の端子電圧Vpの立ち下りを契機として前記カウンタの出力信号(各ビットの値)を受信し、前記カウンタの出力信号に対応するカウント値が現在保持している出力信号に対応するカウント値よりも大きいときは当該出力信号を更新する。したがって、発振回路10の周波数掃引終了時、前記ピーク検出回路には、前記カウンタの最大カウント値に対応する出力信号が保持され当該出力信号はデコード&ラッチ回路25においてラッチされ、DAC35(DAC:DAコンバータ)によってアナログ電圧Voutに変換される。アナログ電圧Voutは、位相遅れに対応するカウント値をDA変換したものであるから、トナー残量に対応したものである。なお、デジタル出力でよい場合は、デコード&ラッチ回路25でラッチした出力信号(ここでは4ビット)をそのまま出力してもよい。
【0029】
本実施の形態によれば、トナー残量に対応したアナログ電圧又は複数ビットの出力信号を得ることができる。
【0030】
図10は、本発明の実施の形態3に係る粉体センサとしてのトナーセンサのブロック図である。図11は、図10における掃引数11ビット(発振周波数が211通り)の場合の例示的なタイミングチャートである。このトナーセンサにおいて、発振回路10は、可変定電圧源11からの制御電圧で動作するVCO12の出力信号を抵抗R1を介して圧電素子5に印加するとともに位相差検出回路251に入力する。位相差検出回路251は、発振回路10の出力信号Vdrvに対する圧電素子5の端子電圧Vpの遅れの期間に、圧電素子5に印加される信号(Vdrv)の周波数よりも高い周波数の位相差分のパルスを数える(ダウンカウントする)。また、端子電圧Vpの進みの期間にも、同パルスを数える(アップカウントする)構成も可能である。ピーク検出回路252には、発振回路10の周波数掃引終了時、位相差検出回路251の最大カウント値に対応する出力信号が保持される。ラッチ253は、位相差検出回路251の保持する出力信号を所定のタイミングでラッチする。位相差検出回路251、ピーク検出回路252、及びラッチ253の動作は、図7で既述のデコード&ラッチ回路25の動作に準ずる。
【0031】
VCO12の出力パルスは、Nビットのアップダウンカウンタ15によってカウントされる。Nは周波数の掃引ビット数であり、発振回路10の出力信号Vdrvは、段階的に2N通り変化する。ラッチ253は、周波数掃引の終了時(例えばアップダウンカウンタ15のアップカウントしてカウント値が2N−1になった時)にピーク検出回路252の保持する信号をラッチする。ピーク検出回路252は、次の周波数掃引の開始時(例えばアップダウンカウンタ15がカウント値0からアップカウントを開始する時)にリセットされる。ラッチ253でラッチされた信号は、DAC35によってアナログ電圧Voutに変換される。アナログ電圧Voutは、位相遅れに対応するカウント値をDA変換したものであるから、トナー残量に対応したものである。なお、デジタル出力でよい場合は、ラッチ253でラッチした出力信号(複数ビット)をそのまま出力してもよい。
【0032】
本実施の形態も、実施の形態2と同様の効果を奏する。なお、図7における分周器13を設けて、分周器13から得られるパルス(発振回路10の出力信号Vdrvの2倍、4倍、8倍、又は16倍の周波数のパルス)を位相差検出回路251でカウントしてもよい。
【0033】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0034】
5 圧電素子
10 発振回路
11 可変定電圧源
12 VCO
13 分周器
15 アップダウンカウンタ
20 位相差検出回路
25 デコード&ラッチ回路
30 位相差変換回路
35 DAC

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子と、
少なくとも前記圧電素子の共振周波数又はその近傍の周波数の出力信号を前記圧電素子に印加する発振回路と、
前記発振回路の出力信号と前記圧電素子の端子電圧との位相差を検出する位相差検出回路と、
前記位相差検出回路によって検出した前記位相差をアナログ電圧に変換する位相差変換回路とを備える、粉体センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の粉体センサにおいて、前記位相差変換回路は、前記位相差検出回路の出力電圧を入力電圧とする積分回路を含む、粉体センサ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の粉体センサにおいて、前記発振回路は、前記圧電素子の共振周波数を含む周波数範囲で出力信号の周波数を掃引する掃引発振回路である、粉体センサ。
【請求項4】
請求項3に記載の粉体センサにおいて、前記発振回路は、電圧制御発振器と、前記電圧制御発振器に制御電圧を入力する可変定電圧源とを含む、粉体センサ。
【請求項5】
圧電素子と、
少なくとも前記圧電素子の共振周波数又はその近傍の周波数の出力信号を前記圧電素子に印加する発振回路と、
前記発振回路の出力信号に対する前記圧電素子の端子電圧の遅れ又は進みの期間に、前記圧電素子に印加される信号の周波数よりも高い周波数のパルスを数えるカウンタとを備える、粉体センサ。
【請求項6】
請求項5に記載の粉体センサにおいて、
前記発振回路は、電圧制御発振器と、前記電圧制御発振器に制御電圧を入力する可変定電圧源と、前記電圧制御発振器の出力信号が入力される分周器とを備え、前記分周器の出力信号を前記圧電素子に印加し、
前記カウンタは、前記分周器から出力される、前記圧電素子への印加信号よりも周波数の高い出力信号のパルスを数える、粉体センサ。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の粉体センサにおいて、前記カウンタの出力信号をアナログ電圧に変換するDAコンバータを備える、粉体センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−202965(P2012−202965A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70804(P2011−70804)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】