説明

粉塵捕捉装置および投写型画像表示装置

【課題】フィルター量を増やしたり、装置自身を大型化することなく、埃の多い環境でも、フィルターの少ない交換回数で十分な能力を発揮できる粉塵捕捉装置を提供する。
【解決手段】第1及び第2巻取り軸33a、33b間に架張され、第2巻取り軸に未使用部分が巻回されているロール状のフィルター20と、第1及び第2巻取り軸間にフィルター面と接触するように設けられたブラシ41と、フィルターを巻上げまたは巻戻すように第1及び第2巻取り軸を駆動する送り機構と、フィルター面を通過させて外気を導くように設けられた開口部35と、送り機構を制御する送り制御部とを備える。送り制御部は、第2巻取り軸側からフィルターの未使用部分を送り出す更新操作を作動させる際に、一旦、第1巻取り軸により巻上げ量Laでフィルターを巻上げた後、第2巻取り軸により巻戻し量Lbでフィルターを巻戻し、La≧Lbとなるように送り機構を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルターを用いた粉塵捕捉装置、特に、フィルターを自動的に更新、清掃する機能を備えた粉塵捕捉装置、およびそれを用いた投写型画像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プロジェクタなどの投写型画像表示装置は、液晶パネルやDMD(デジタルミラーデバイス)などの画像表示素子を備え、ランプなどの光源からの強力光を画像表示素子に集光し、この光を入力画像信号に応じて変調することにより形成される光学画像を拡大投写して、大画面を得るものである。
【0003】
強力な光に曝される画像表示素子、光源自身、装置電源等は発熱が大きく、適切な冷却がなされないと熱的に破壊されるおそれがある。このため、投写型画像表示装置には一般的に、ファンにより吸気口から外気を装置内に導入して、装置内を冷却する構成が用いられる。
【0004】
しかしながら、外気と一緒に粉塵が導入される場合があり、それが画像表示素子やプリズムなどの光学部品、光源周辺に付着することで、明るさ低下や色むらの発生源になっている。このため、粉塵を捕捉するためのフィルターが吸気口に配置される。しかし、主として用いられるウレタンフィルターの場合、数百時間毎でのフィルター洗浄が必要である。また、より小さな粉塵を集塵可能な静電フィルターの場合は洗浄が出来ないことから、数百時間毎に新品に交換することが必要である。
【0005】
一方、投写型画像装置の多くは天吊り用途であり、高所に配置される。そのため、簡単にフィルター交換が出来る設置状態ではなく、常に適切な状態に有るとは言えない。
【0006】
また、ウレタンフィルターは、物理的に小さな開口に粉塵を捕捉して侵入を抑止するが、10μmを下回る大きさの粉塵を防ぐことは出来ない。よって黄砂やたばこの粒子などの侵入を阻止できない。一方、静電フィルターは、開口は大きく圧力損失を抑えながらも、粉塵は静電気で捕集するので、小さな埃まで捕捉できる。
【0007】
上記のような状況から、例えば、特許文献1には類似の課題に対する解決策として、以下のような構造が開示されている。
【0008】
これに依れば、オゾン脱臭装置の静電フィルターを帯状に長く形成して、2つの回転ローラ間に巻取り自在に張設する。そして脱臭運転時間に応じて、静電フィルターが巻かれた方の回転ローラから他方の回転ローラに、静電フィルターを駆動モーターにより自動的に巻き取る。
【0009】
このように、巻取り式の静電フィルターを使用し、かつ運転時間に応じて巻き取ることで、静電フィルターの未使用部分を通気部分に移動させて、フィルターの交換回数を減らすことができる。
【特許文献1】特開平5−49830号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1の上記構成をプロジェクタに応用すれば、同様にして、フィルター交換時間を延ばすことが可能であると考えられる。しかし、静電フィルター自身は捕捉能力を残している状態であっても、多量の粉塵が付着すると静電気による効果が得られなくなり、粉塵は捕捉されず装置内に侵入してしまうおそれがある。
【0011】
このため、埃の多い環境では、フィルターの収納スペースを大きくしない限り、短期間での静電フィルターの交換が必要になる。
【0012】
しかしながら、フィルターの収納スペースを大きくすれば投写型画像装置自身も大きくなり、また、フィルターの使用量も多くなり、昨今の省スペース化、省資源化に逆行する。
【0013】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、フィルター量を増やしたり、装置自身を大型化することなく、埃の多い環境でも、フィルターの少ない交換回数で十分な能力を発揮できる粉塵捕捉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために本発明の粉塵捕捉装置は、所定の間隔を設けて配置された第1及び第2巻取り軸と、前記第1及び第2巻取り軸間に架張され、前記第2巻取り軸に未使用部分が巻回されているロール状のフィルターと、前記第1及び第2巻取り軸間の所定の位置に、前記フィルター面と接触するように設けられたブラシと、前記第1及び第2巻取り軸を介して前記フィルターを巻上げまたは巻戻すように前記第1及び第2巻取り軸を駆動する送り機構と、前記第1及び第2巻取り軸間において前記フィルター面を通過させて外気を導くように設けられた開口部と、前記送り機構を制御する送り制御部とを備え、前記送り制御部は、前記第2巻取り軸側から前記フィルターの未使用部分を送り出す更新操作を作動させる際に、一旦、前記第1巻取り軸により巻上げ量Laで前記フィルターを巻上げた後、前記第2巻取り軸により巻戻し量Lbで前記フィルターを巻戻し、La≧Lbとなるように前記送り機構を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、静電フィルターで微小な粉塵まで除去可能な上、長時間の使用でもフィルターは常に自動更新、清掃されて良好な状態に有ることから、維持管理に手間をかけることなく長時間粉塵除去性能を維持可能とすることができる。
【0016】
同時に、フィルター容量を増やすことなく収納性にも優れているので、小型化や機種展開にも対応が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、上記構成を基本として、以下のような態様をとることができる。
【0018】
すなわち、上記構成の粉塵捕捉装置において、前記送り制御部が前記更新操作を作動させる条件は、前記フィルターを透過する前の空気温度を検出する温度センサーの出力と、前記フィルターを透過した空気量を検出する風量センサーの出力に基づいて設定されることが好ましい。
【0019】
また、前記風量センサーは受熱部と発熱部とを備え、前記受熱部と前記発熱部間を空気が通過することにより変化する前記受熱部の出力の変化が風量に対応し、前記送り制御部は、前記風量センサーの出力と、前記温度センサー出力とを摂氏温度に換算した値から算出される温度差が所定値を越えたことを条件として、前記更新操作を作動させることが好ましい。
【0020】
また、前記巻上げ量Laと前記巻戻し量Lbの大きさの関係を、前記更新操作を作動させた複数の時期の間隔に応じて可変に設定可能であることが好ましい。
【0021】
また、前記送り制御部は、前記更新操作を作動させる条件として、前記温度センサー及び前記風量センサーの出力に基づいて設定された条件とともに、所定の使用時間の経過を条件として併せて適用して前記送り機構を制御することが好ましい。
【0022】
また、前記開口部における前記フィルターの面を通過させて外気を吸気する吸気ファンを備え、前記送り制御部は、前記温度センサー及び前記風量センサーの出力に基づく前記更新操作を作動させる条件が充足されたことを検知したときに、最初は前記第1及び第2巻取り軸を駆動させることなく前記吸気ファンの回転数を所定値に上昇させた後に、再度前記更新操作を作動させる条件が充足されたことを検知したときに、前記第1及び第2巻取り軸を駆動させる制御を行うことが好ましい。
【0023】
また、前記第2巻取り軸に巻回された前記フィルターの未使用部分の残量が減少し、Laを確保できなくなった場合、あるいは所定の残量になった場合には、前記フィルターの未使用部分の残量について使用者への警告表示を行うことが望ましい。
【0024】
また、前記第2巻取り軸に巻回された前記フィルターの未使用部分の残量が減少し、Laを確保できなくなった場合、あるいは所定の残量になった場合において、前記更新操作を作動させる条件が充足された場合に、巻上げ量Laを減じてLbを同じ値として、前記送り機構を制御する構成とすることができる。
【0025】
また、前記送り制御部は、前記更新操作を作動させた複数の時期の間隔に基づいて、前記フィルターの使用可能残時間の予測値を算出し、算出された前記使用可能残時間を表示可能である構成とすることができる。
【0026】
また、前記フィルター使用当初から実行された前記更新操作の回数をk、前記フィルター使用当初からの累積使用時間ΣUt、1回の更新操作によりフィルターの一部を使用可能な最長時間として想定されている部分最長使用時間Pm、及び前記フィルター全長について実行可能な前記更新操作の回数Nとするとき、前記使用可能残時間Rtの予測値を下記の式により算出する構成とすることができる。
【0027】
Rt=[{ΣUt+(N+1−k)×Pm}/(N+1)]×(N+1−k)
また、前記送り制御部は、前記使用可能残時間が一度表示された後、前記フィルターを交換することなく使用が続けられた場合、使用可能残時間が設定値以下になったときに再度、使用可能残時間を表示し、その後、所定時間間隔で使用可能残時間の表示を所定回繰り返した後に、当該粉塵捕捉装置が用いられている装置の電源を切る制御を行うことが好ましい。
【0028】
また、前記更新操作を完了出来ない場合、使用者に当該状況を報知する表示を行う構成とすることができる。
【0029】
また、前記更新操作を完了出来ない場合、当該粉塵捕捉装置が用いられている装置の電源を一旦切断し、再投入後には電源切断前の動作状況によらず、前記第1巻取り軸による巻取り動作から開始する構成とすることができる。
【0030】
本発明の投写型画像表示装置は、少なくとも吸気口、排気口を有する筐体と、空気を吸入または排出する送風部と、光源部と、画像形成部と、投写光学系と、電源部と、上記いずれかの構成の粉塵捕捉装置とを備えた構成とすることができる。
【0031】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0032】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における投写型画像表示装置の全体平面構成を示す断面図である。本実施の形態は、投写型画像表示装置に用いられる粉塵捕捉装置の改良、特に粉塵捕捉装置の動作の制御に関するものである。従って、光学構成について特定のものに限定されることはないので、本実施の形態における光学構成は一般的なものである。そのため、以下の説明では、光学構成については簡単に説明する。
【0033】
図1において、光源であるランプ1から出射された光は、反射鏡2により前方に出射され、光学ユニット3へ入射する。その入射光は、ダイクロイックミラー4、5、全反射ミラー6、7、8を経て赤、緑、青の色光に分離される。
【0034】
その後、各色の光は、入射側偏光板9R、9G、9B、画像表示素子である液晶パネル10R、10G、10B、出射側偏光板11R、11G、11Bによって、外部からの入力信号(図示せず)に基づいて強度変調される。
【0035】
これらの光は、ダイクロイック反射膜12R、12Bを備えた合成プリズム13で一光路上に合成され、投写レンズ14に入射する。この投写レンズ14は、液晶パネル10R、10G、10B上の画像を、装置前方に配置されたスクリーン(図示せず)に拡大投写するように設計される。
【0036】
この画像表示の際、黒表示のためには、ランプ1からの光を入射側偏光板9R、9G、9B、出射側偏光板11R、11G、11Bで吸収する必要がある。このため、これらの偏光板は高温を発することになる。一方で、これらの偏光板は主に有機材料からなるので、適当な温度にまで冷却しないと変質して、画像を制御できなくなり使用不能に陥る。
【0037】
また、装置内には、発光時に1000度にもなるランプ1、及び周辺の機構部品、ランプ1の点灯や画像表示のための電源ユニット15等、自己発熱が大きい要素が配置されるので、これらの信頼性を確保するためには冷却手段が必要である。
【0038】
従って本実施の形態に於いては、送風部である吸気ファン16によって、筐体17の側面に設けられた筐体吸気口18から外気(比較的温度の低い空気)が装置内に導かれる。吸気ファン16で吸入された外気は、粉塵捕捉部19の静電フィルター20を経て、ファン吹き出し口に密着して配置されている光学ユニットダクト21に導かれる。
【0039】
光学ユニットダクト21には、上述した入射側偏光板9R、9G、9B、液晶パネル10R、10G、10B、出射側偏光板11R、11G、11Bの下部に相当する位置に、それぞれ青用、緑用、赤用の開口22B、22G、22Rが設けられている。
【0040】
これらの開口22R、22G、22Bから吹き出された空気は、入射側偏光板9R、9G、9B、液晶パネル10R、10G、10B、出射側偏光板11R、11G、11Bの熱を奪った後、排気ファン23によって排出される。その過程で、排出される空気はランプ1やその周辺機構部品、電源ユニット15の熱をも奪う。排気ファン23に至った空気は、筐体17の側面に設けられた排気口24を経て装置外に排出される。
【0041】
このような冷却の過程で、外気と共に吸入された外部の粉塵が液晶パネル周辺や光源部に付着し、その結果、輝度の早期劣化を起こしたり、投射像に色むらが生じるなどの不具合が発生する場合がある。これを防止するために、筐体吸気口18から吸気ファン16に至るまでの間に粉塵捕捉部19が設けられている。
【0042】
また、隙間から粉塵の入り込み難い筐体構造として、投写レンズ14も完全に筐体17内に収容し、光透過部には窓部材25が筐体17に隙間なく貼られた構造が採用されている。さらに、筐体吸気口18と粉塵捕捉部19の間、粉塵捕捉部19と吸気ファン16を覆う吸気ダクト26の間、排気口24と排気ファン23との間には、空気を通さない緩衝材27、28、29が設けられて、必ず粉塵捕捉部19を経て外気が吸入されるようになっている。
【0043】
粉塵捕捉部19の動作を制御するためのデータを収集するための要素として、外気温センサ30と、風量センサ31が設けられている。これらのセンサの出力は、投写型画像表示装置の動作全体に関する制御機能を有する制御回路部32に供給される。制御回路部32は、それらのセンサの出力に基づいて粉塵捕捉部19を制御する。
【0044】
外気温センサ30は、筐体吸気口18に配置される。風量センサ31は、吸気ファン16の吐出口近傍に配置される。あるいは、風量測定用の導風路を設け、その導風路中に風量センサ31を取り付けてもよい。
【0045】
風量センサ31としては、一般的に用いられる構造、例えば、発熱部とそれに対向させた受熱部を有し、両部間を空気が通過する構造のものを用いることができる。受熱部には、温度検出素子が用いられる。すなわち、気流による冷却効果が風量に応じて変化し、受熱部の検出温度が変化することに基づき風量を検出する構造であり、検出温度が風量に対応する。但し、外気温度による特性の変動を、外気温センサ30が検出する外気温度に基づいて補償する。なお、他の構成の風量センサを用いることもできる。
【0046】
風量センサ31は、静電フィルター20の目詰まりの度合いを検出するために用いられる。吸気ファン16を駆動するモータの出力が同じであれば、静電フィルター20の目詰まりの度合いに応じて、吸気ファン16により吸入される空気の風量が変化する。すなわち、静電フィルター20の目詰まりの度合いが高くなるほど、風量センサ31が検出する風量が低下し、風量に対応する検出温度の値が高くなる。
【0047】
以下に、粉塵捕捉部19の構造について図2を参照して説明する。図2は、粉塵捕捉部19を拡大して示した平面形状の断面図である。粉塵捕捉部19は、粉塵捕捉フィルター部と、フィルター清掃部と、フィルター送り機構及びフィルター送り量検出手段を含む送り機構制御部とから構成されている。
【0048】
粉塵捕捉フィルター部は、ロール形態の静電フィルター20と、静電フィルター20の両端に配置された第1及び第2巻取り軸33a、33bと、これらの部品を収納し、フィルター送り機構との連結部を備えた小型筐体34とから構成される。
【0049】
小型筐体34は、第1及び第2巻取り軸33a、33b間において、筐体吸気口18とほぼ同じ大きさで、筐体吸気口18からの空気を流入させるための開口部35を有している。そして、第1及び第2巻取り軸33a、33bの間には、静電フィルター20をガイドする中継回転軸36a、36b、走行量モニター軸37が配置されている。
【0050】
フィルター清掃部は、粉塵捕捉フィルター部との間で空間を仕切り、粉塵収納部38を形成する隔壁39と、隔壁39の一部に取り付けられた固定ブラシ40と、固定ブラシ40に対向する可動ブラシ41とから構成される。
【0051】
可動ブラシ41は、図3の外観斜視図に示すように、静電フィルター20と安定した摩擦を得るための接触部42を備えた搬送部43上に設けられている。搬送部43は、静電フィルター20との摩擦により、静電フィルター20の動作に合わせて可動なように設けられている。
【0052】
フィルター送り機構は、モーターを含む駆動部と、第1及び第2巻取り軸33a、33bと駆動部との連結部とから構成されている。図4は、フィルター送り機構の概略構成を示す正面図である。
【0053】
図4に示すように、第1及び第2巻取り軸33a、33bの端部には、凹部44a、44bが設けられており、この凹部44a、44bには、連結部45a、45bが挿入され連結されている。この連結部45a、45bにより、静電フィルター20が収納された小型筐体34を装置本体に対して着脱可能にすることができる。
【0054】
連結部45a、45bには、軸46a、46bを介してギヤ47a、47bが固定されている。このギヤ47a、47bは小型ギヤ48a、48bを介してステッピングモーターユニット49a、49bにそれぞれ接続されている。このステッピングモーターユニット49a、49bには、図示しないクラッチが内蔵されている。それにより、モーター通電時はギヤトレインはロックされ有効になるが、モーター通電時外ではギヤトレインが切断され、巻取り軸側が外部力により回転自由となる。また、これらは、制御回路部32に含まれる送り制御部よって制御される。
【0055】
フィルター送り量検出手段は、図2に示すように、走行量モニター軸37上を走行する静電フィルター20が密着するように押圧バネ50を備えている。それにより、静電フィルター20が巻上げられた際には、静電フィルター20の動きに確実に対応して、静電フィルター20の移動に合わせて走行量モニター軸37が回転する。
【0056】
この構成に依れば、走行量モニター軸37の回転は、常にフィルター送り量に合った回転数となっている。すなわち、静電フィルター20を巻上げて行くうちに、第2巻取り軸33bに巻かれているフィルターの巻径が変わった場合、一定量フィルターを送るのにかかる時間が変化するが、それにより走行量モニター軸37の回転数が変化することはない。
【0057】
図4に示すように、小型筐体34の底部から突出した走行量モニター軸37の端には回転検出反射パターン51が設けられている。回転検出反射パターン51と対向するように、フォトセンサーであるパターン検出センサー52が、装置本体壁53に固定されている。従って、静電フィルター20の送り量を、パターン検出センサー52のパターン検出出力に基づいて計測することが出来る。
【0058】
制御回路部32は、パターン検出センサー52の検出信号を用いてステッピングモーターユニット49aの駆動を制御し、常に静電フィルター20の送り量を適切な状態に管理する。
【0059】
ところで、静電フィルターは、初期は高い集塵性能を備え、通気量も比較的多いが、粉塵が多く付着すると急激に通気性が悪くなり圧力損失が大きくなり、冷却性能が落ちるという課題があった。また、静電フィルター自身は吸着能力を残していても、粉塵が多く付着することによって、静電気による吸着効果が弱まるという課題があった。本実施の形態に依れば、長時間使用の際にも適切な制御を行うことで、自動的に高い集塵性能を維持することが出来る。
【0060】
本実施の形態においては、投写型画像表示装置に対して着脱可能に設計された粉塵捕捉部19の小型筐体34は、筐体吸気口18に臨むように装着され、その状態で、投写型画像表示装置が動作させられる。投写型画像表示装置の使用を続けると、冷却のための外気と共に周囲の粉塵が吸引され、筐体吸気口18から流入し、小型筐体34の開口部35を経て、粉塵捕捉フィルター部の静電フィルター20に捉えられる。
【0061】
そして、長期間の使用により粉塵が堆積すると、通気を妨げるので、本実施の形態では、所定の条件に従って、静電フィルター20における開口部35に位置して汚れた部分を、未使用部分と置き換える更新操作が行われる。更新操作は、タイマーにより計測される粉塵捕捉部19の累積使用時間、あるいは、風量センサ31によって検知されるフィルタ目詰まりの状態等に応じて開始される。
【0062】
上記構成による更新操作に伴う粉塵捕捉部19の動作を、図2、及び図5A〜図5Cを参照して説明する。図2に示す状態では、前回の更新操作により、静電フィルター20上の埃が可動ブラシ41に付着している。更新操作が開始されると、第1巻取り軸33aが図2の矢印方向に回動させられる。それにより、一端を第1巻取り軸33aに固定された静電フィルター20は、巻き取られることになり、中継回転軸36a、36b、走行量モニター軸37を経て、第2巻取り軸33bを回転させ、静電フィルター20が第2巻取り軸33bから引き出される。
【0063】
この動作により、静電フィルター20における、開口部35に臨む位置にあって埃が吸着され堆積した部分が、第1巻取り軸33aの側に送られて、静電フィルター20における未使用の部分が開口部35の対向する位置に配置される。このとき、静電フィルター20に接触している接触部42を備えた搬送部43は、図2において右方向に移動する。同時に、搬送部43に備えられた可動ブラシ41も同じ方向に移動することになる。
【0064】
移動結果の状態を図5Aに示す。可動ブラシ41が右方向に移動すると、隔壁39に設けられた固定ブラシ40に接触する。その後、図5Bに示すように、可動ブラシ41が固定ブラシ40上を行き過ぎる位置に至った時点で、搬送部43は押し戻しバネ54によって制動される。
【0065】
一方、走行量モニター軸37の回転数を読みとるパターン検出センサー52の出力によって、制御回路部32は、静電フィルター20の送り量を検出し、第1巻取り軸33aの駆動を介して送り量を制御する。搬送部43が押し戻しバネ54によって制動された状態に達しても、所定の巻上げ量に達するまでは、第1巻取り軸33aの駆動が継続される。所定の巻上げ量に達したときに、第1巻取り軸33aの駆動が停止される。このとき、開口部35に臨む静電フィルター20の面が、すべて未使用の面に切り替わった状態になっている。その後、第2巻取り軸33bの駆動が開始される。
【0066】
第2巻取り軸33bは、図2の矢印の逆方向に回動させられる。従って、一端を第2巻取り軸33bに固定された静電フィルター20は、巻き戻されることになり、走行量モニター軸37、中継回転軸36a、36bを経て、第1巻取り軸33aを回転させ、静電フィルター20を引き戻す。
【0067】
この動作により、巻き戻される静電フィルター20に接触する接触部42を介して、搬送部43に備えられた可動ブラシ41が、図5Cに示すように、左方向に移動する。その際、可動ブラシ41が固定ブラシ40に接触することで、ブラシ上の埃を落としながら、図2の位置まで戻る。
【0068】
この状態で、固定壁55により搬送部43は移動を停止させられるが、静電フィルター20はさらに移動を続ける。そのため、静電フィルター20上の埃は可動ブラシ41により落とされ、可動ブラシ41に付着する。可動ブラシ41に付着した埃は、次回の更新操作に際して、図5Cに示した動作により、隔壁39によって粉塵捕捉フィルター部と仕切られた粉塵収納部38内に取り込まれることで除去される。
【0069】
以上のようにして、静電フィルター20の通気性を改善する事ができ、また、静電気による吸着効果も回復するため、再び同じ箇所を使用することができる。
【0070】
ここで、可動ブラシ41は斜めに植毛されたマジックブラシからなり、その植毛の方向は、静電フィルター20の巻戻し方向(図2における左方向)に逆行する方向であることが望ましい。
【0071】
次に、以上の粉塵捕捉部19における更新操作を制御する手順について、図6示すフロー図を参照して説明する。
【0072】
先ず、投写型画像表示装置の電源投入等により、粉塵捕捉部19が起動する(ステップS1)。それにより、更新操作を開始すべき条件が充足されたか否かが判定される(ステップS2)。更新操作を開始すべき条件は、タイマーにより計測される粉塵捕捉部19の累積使用時間、あるいは、風量センサ31によって検知されるフィルタ目詰まりの状態等に基づいて設定される。
【0073】
更新操作を開始すべき条件が充足されると、第1巻取り軸33aが駆動されて、更新操作が開始される(ステップS3)。第1巻取り軸33aの駆動中、パターン検出センサー52の出力によって、制御回路部32は、静電フィルター20の送り量を検出し、所定の巻上げ量Laに達したか否かを判定する(ステップS4)。
【0074】
所定の巻上げ量Laに達したときに、第1巻取り軸33aの駆動が停止される(ステップS5)。このとき、図5Bに示したように、可動ブラシ41が押し戻しバネ54に接触し、かつ、開口部35に覗く静電フィルター20の面がすべて新しい面に切り替わった状態になっている。その後、第2巻取り軸33bの駆動が開始される(ステップS6)。
【0075】
第2巻取り軸33bの駆動により、静電フィルター20が巻き戻される。第2巻取り軸33bの駆動中は、所定の巻戻し量Lbに達したか否かが判定される(ステップS7)。巻戻し量Lbは、巻上げ量Laに対して、Lb≦Laの関係を満足するように設定される。所定の巻戻し量Lbに達したときに、第2巻取り軸33bの駆動が停止され(ステップS8)、ステップS2に戻る。以上のようにして、粉塵捕捉部の作動が停止されるまで、更新操作を制御する動作が繰り返される。
【0076】
静電フィルター20の巻上げ量Laと巻戻し量Lbは、両者を等しくした構成でも実施可能である。しかし、再使用するフィルターの集塵性能はより劣化することから、巻上げ量Laと巻戻し量Lbは、上述のように、Lb≦Laの関係に設定されることが望ましい。
【0077】
また、巻上げ量Laは、静電フィルター20の送り方向における小型筐体34の開口部35の長さLcに対して、La≧Lcの関係にあることが望ましい。
【0078】
走行量モニター軸37は、必ずしも上述の位置ではなくても構成可能であり、中継回転軸36aや中継回転軸36bに置き換えることも可能である。
【0079】
走行量モニター軸37の回転検出手段として、フォトセンサーを用いたが、一般的な接触式のスイッチを用いることも、非接触式のホール素子のようなものに置き換えることも可能であることは言うまでもない。
【0080】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2における投写型画像表示装置は、図6に示した実施の形態1における粉塵捕捉部の制御方法を適用可能な、粉塵捕捉部の他の構成を採用したものである。図7は、本実施の形態における投写型画像表示装置の全体平面構成を示す断面図である。この装置では、光学構成等については、実施の形態1とほぼ同様であり、同じ箇所については同一の番号を付し、説明を省略する。
【0081】
本実施の形態では、実施の形態1の粉塵捕捉部19とは異なる構成の粉塵捕捉部60が用いられる。粉塵捕捉部60は、実施の形態1の粉塵捕捉部19における固定ブラシ40及び可動ブラシ41に代えて、回転ブラシ64を用いてフィルター清掃部が構成されている。
【0082】
以下、図8を用いて、粉塵捕捉部60の構造について説明する。なお、実施の形態1の粉塵捕捉部19と同様の要素については、同一の参照符号を付して、説明の繰り返しを省略する。この粉塵捕捉部60は、粉塵捕捉部19と同様、粉塵捕捉フィルター部と、フィルター清掃部と、フィルター送り機構及びフィルター送り量検出手段を含む送り機構制御部とから構成される。
【0083】
粉塵捕捉フィルター部は、静電フィルター20、及び第1及び第2巻取り軸33a、33bと、これらの部品を収納し、フィルター送り機構との連結部を備えた小型筐体61とから構成される。小型筐体61は、筐体吸気口18とほぼ同じ大きさで、筐体吸気口18からの空気を流入せしめるための開口部62を有している。
【0084】
フィルター清掃部は、粉塵捕捉フィルター部との間で空間を仕切る隔壁63a、63bと、第1巻取り軸33aに連動して回転可能に設けられた回転ブラシ64と、この回転ブラシ64を覆うように設けられた埃よけケース65とから構成されている。
【0085】
図9は、回転ブラシ64の駆動機構を示す斜視図である。回転ブラシ64の端部には、図9に示すブラシギヤ66が設けられており、ブラシ中継ギヤ67を経由して、第1巻取り軸33aの端部に設けられた巻取り軸ギヤ68に繋がっている。
【0086】
これにより、静電フィルター20を巻上げた場合に、フィルター20が送られる方向と逆方向に回転ブラシ64が回転し、図8に示すように中継回転軸36a、36b間を走行するフィルター20上の埃が除去される。
【0087】
埃よけケース65における隔壁63a、63b近傍には開口65aが設けられており、回転ブラシ64によって除去された埃がここを通って、隔壁63a、63bによって仕切られた粉塵収納部69に納められる。
【0088】
フィルター送り機構は、実施の形態1と同様の、第1及び第2巻取り軸33a、33bと、駆動部との連結部と、モーターを含む駆動部とから構成されている。フィルター送り量検出手段も、実施の形態1と同じ構成である。
【0089】
投写型画像表示装置に対して着脱可能に設計された粉塵捕捉部60の小型筐体61は、筐体吸気口18に臨むように装着され、その状態で、投写型画像表示装置が動作させられる。そして、長期間の使用により粉塵が堆積すると、通気を妨げるので、所定の条件に従って、静電フィルター20における開口部35に位置して汚れた部分を、未使用部分と置き換える更新操作が行われる。以下に説明する更新操作の際の制御は、図6に示した実施の形態1の場合と同様に行うことができる。
【0090】
更新操作が開始されると、第1巻取り軸33aが図8の矢印方向に回動させられる。それにより、静電フィルター20が第2巻取り軸33bから引き出され、開口部62と対向する位置にあった静電フィルター20における、埃が吸着され堆積した部分が送られて、静電フィルター20の未使用の部分が開口部62に臨む位置に配置される。
【0091】
このとき、第1巻取り軸33aの端部に設けられた巻取り軸ギヤ68(図9参照)が回転し、ブラシ中継ギヤ67を経由してブラシギヤ66が駆動させられる。これによって回転ブラシ64が回転する。その回転方向は静電フィルター20が送られる方向と逆方向であるため、フィルター上の埃が掻き取られる。掻き取られた埃は、埃よけケース65の開口65aを経て、粉塵収納部69に納められる。
【0092】
一方、制御回路部32は、パターン検出センサー52の出力パルスに基づき、静電フィルター20の送り量を検出する。その検出信号に基づき、第1巻取り軸33aの駆動を介して送り量、すなわち巻上げ量を制御する。この巻上げ量は、開口62に露出して埃が付着した部分が、回転ブラシ64の接触位置に至る量と同等、あるいはそれ以上とすることが望ましい。
【0093】
所定の巻上げ量Laに達したときに、第1巻取り軸33aの駆動が停止され、第2巻取り軸33bの駆動が開始される。すなわち、第2巻取り軸33bが、図8の矢印の方向と逆の方向に回動させられる。これにより、一端を第2巻取り軸33bに固定された静電フィルター20は巻き戻されることになる。
【0094】
この動作により、巻取り軸ギヤ68が回転し、ブラシ中継ギヤ67を経由してブラシギヤ66が駆動させられる。これにより、回転ブラシ64が逆回転する。その回転方向は静電フィルター20が巻き戻される方向と逆方向であり、フィルター上の埃が再度掻き取られる。ここでも掻き取られた埃は、埃よけケース65の開口65aを経て、粉塵収納部69に納められる。
【0095】
そして、静電フィルター20の使用済みの一部が開口部62の位置に戻る。これにより通気性を改善することができ、また、静電気による吸着効果も回復するため、再び同じ箇所を使用することができる。
【0096】
(実施の形態3)
図10は、本発明の実施の形態3における粉塵捕捉部の更新操作の一部の手順を示すフロー図である。本実施の形態は、図6に示した更新操作の手順中のステップS2(更新操作の開始条件の判定)についての具体的な構成に関する。従って、ステップS3以降の手順については図示を省略する。本実施の形態の手順は、実施の形態1あるいは2と同様の投写型画像表示装置の全体構成、及び粉塵捕捉部の構成を採用する場合に適用することができる。
【0097】
本実施の形態においては、更新操作を開始すべき条件が、風量センサ31によって検知されるフィルタ目詰まりの状態に基づいて設定される。但し、風量センサ31の検出出力は、外気温によって影響を受けるので、外気温センサ30によって検出される外気温による補償を行うことが望ましい。そのため、図10に示す手順では、風量センサ31及び外気温センサ30の出力信号を用いた判定が行われる。
【0098】
粉塵捕捉部が起動すると(ステップS1)、風量センサ31の出力信号が取得され(ステップS9)、また、外気温センサ30の出力信号が取得される(ステップS10)。風量センサ31の出力信号は摂氏温度Taに換算され(ステップS11)と、外気温センサ30の出力信号は摂氏温度Tbに換算される(ステップS12)。
【0099】
次にステップS13により、温度換算風量Tw=Tb−Taが演算される。この演算により、風量センサ31が検出する風量値に対して、摂氏温度ベースで外気温センサ30の出力による外気温の補償が行われる。Twは風量に対応する温度値であるが、次のステップS14の処理では、その温度値のままで用いられる。
【0100】
すなわち、ステップS14では、更新操作の開始条件として設定されている静電フィルター20の目詰まりの状態を示す基準温度Trと、温度換算風量Twが比較される。そして、Tw>Trであれば、更新操作が開始される(ステップS3)。
【0101】
以上のようにして、更新操作の手順中の更新操作の開始条件が充足されたか否かを、静電フィルター20の目詰まりの程度を基準として、精度よく判定することができる。
【0102】
各センサーは温度に対する出力が多くの場合リニアではないため、異なる2つのセンサー出力間の差を見る場合は環境温度に合わせて変化する出力差の関係を補足するデータを持つ必要がある。本実施の形態によれば各センサー出力を一旦摂氏温度に変換してから比較を行うことで、変化する環境温度下でも多くの補正データを持つことなく簡単な構成で正しい値を得ることが出来る。
【0103】
また、以上のように、静電フィルター20の目詰まりの程度を基準として更新操作の開始条件が充足されたか否かを判定する場合、複数の更新操作の時期の間隔は変動する。そのため、巻上げ量Laと巻戻し量Lbの大きさの関係を、更新操作を作動させた複数の時期の間隔に応じて可変に設定可能とすることが望ましい。
【0104】
(実施の形態4)
図11は、本発明の実施の形態4における粉塵捕捉部の更新操作の一部の手順を示すフロー図である。本実施の形態は、図6に示した更新操作の手順中のステップS2の、実施の形態3とは異なる態様に関する。本実施の形態の手順も、実施の形態1あるいは2と同様の投写型画像表示装置の全体構成、及び粉塵捕捉部の構成を採用する場合に適用することができる。
【0105】
本実施の形態においては、図6に示した更新操作の手順中の更新操作の開始条件が充足されたか否かを判定するステップS2を、2つのステップS15とS16により構成したものである。
【0106】
粉塵捕捉部が起動すると(ステップS1)、まず、粉塵捕捉部の累積使用時間が所定値に達したか否かが判定される(ステップS15)。累積使用時間は、制御回路部32に備えたタイマーを用いて計測することができる。
【0107】
累積使用時間が所定値に達していれば、更新操作を開始する(ステップS3)。累積使用時間が所定値に達していなければ、静電フィルター20の目詰まりが所定値以上になったか否かが判定される(ステップS16)。目詰まりの状態の判定には、実施の形態4に示したような、風量センサ31及び外気温センサ30の出力信号を用いた手順を用いることができる。
【0108】
静電フィルター20の目詰まりが所定値以上になっていれば、更新操作を開始する(ステップS3)。そうでなければ、ステップS15に戻る。
【0109】
以上のような設定で更新操作の開始条件の充足を判定することにより、粉塵捕捉部が使用される際の実情に合わせて、適切に更新操作の制御を行うことができる。
【0110】
さらに、上述のような、累積使用時間及びフィルター目詰まりを条件として更新操作の開始の判定を行なう制御に加えて、投写型画像表示装置には、人為により強制的に更新操作を開始させるモードを備えることが望ましい。
【0111】
(実施の形態5)
図12は、本発明の実施の形態5における粉塵捕捉部の更新操作の手順を示すフロー図である。本実施の形態では、図6に示した更新操作に追加された手順が実行される。従って、図6に示したフロー図におけるステップと同一のステップには同一の参照符号を付して、説明の繰り返しを省略する。本実施の形態の手順も、実施の形態1あるいは2と同様の投写型画像表示装置の全体構成、及び粉塵捕捉部の構成を採用する場合に適用することができる。
【0112】
本実施の形態においては、図6に示した更新操作の手順に対して、吸気ファン16の動作の制御手順が追加される。すなわち、更新操作を開始すべき条件が充足されたとき(ステップS2)、吸気ファン16が高回転数で駆動されているか否かを判定する(ステップS17)。吸気ファン16の回転数は、少なくとも所定の低回転数と高回転数で選択的に駆動され、当初は低回転数が選択される。
【0113】
吸気ファン16が高回転数で駆動されていなければ、更新操作を開始することなく、吸気ファン16の駆動を高回転数に変更し(ステップS18)、ステップS2に戻る。
【0114】
吸気ファン16が高回転数で駆動されていれば、ステップS3に進んで更新操作が行なわれる。ステップS8で更新操作が終了した後、ステップS19で吸気ファン16の駆動を低回転数に変更する(ステップS19)。その後、ステップS2に戻る。
【0115】
以上のように、更新操作の開始条件が充足される毎に更新操作を行なうのではなく、一旦、吸気ファン16の駆動を高回転数に変更することにより、冷却能力を維持し、それでも冷却能力を維持できない状態になってから更新操作を行なう。これにより、静電フィルター20の寿命、すなわち使用可能時間を長くすることができる。
【0116】
(実施の形態6)
図13は、本発明の実施の形態6における粉塵捕捉部の更新操作の手順を示すフロー図である。本実施の形態では、図6に示した更新操作に追加された手順が実行される。従って、図6に示したフロー図におけるステップと同一のステップには同一の参照符号を付して、説明の繰り返しを省略する。また、図6に示した処理と同じであるステップS4〜S7については、図示を省略する。本実施の形態の手順も、実施の形態1あるいは2と同様の投写型画像表示装置の全体構成、及び粉塵捕捉部の構成を採用する場合に適用することができる。
【0117】
本実施の形態においては、図6に示した更新操作の手順に対して、更新操作が終了(ステップS8)した後に、フィルターの未使用部分の長さを算出するステップS20以降の動作が追加される。
【0118】
フィルターの未使用部分の長さは、粉塵捕捉部への装着当初のフィルターの長さ、及び更新操作が繰り返される毎に送られた長さに基づいて容易に算出することができる。ステップS20で算出された未使用部分の長さに基づき、巻上げ量Laが確保できるか否かが判定される(ステップS21)。可能であれば、ステップS2に戻る。
【0119】
巻上げ量Laの確保が不可能な状態であれば、未使用部分の残量について警告を表示し(ステップS22)、その後ステップS2に戻る。
【0120】
このような制御を行うことにより、フィルターの未使用部分の長さについて使用者が認識していない状態で、更新操作が不能な状態に陥ることを防止できる。
【0121】
なお、ステップS21で、巻上げ量Laの確保が不可能な状態であると判定された場合に、ステップS7(図6参照)において巻上げ量Laを減じてLbを同じ値として制御することで、フィルターを更新すること無くクリーニング動作のみを行う制御をするように変更することもできる。
【0122】
ここでは巻き上げ量Laが確保できるか否かで判定したが、所定の送り残量、すなわち所定の送り回数になった場合を上記と同様に判断基準とすることが出来る。
【0123】
(実施の形態7)
図14は、本発明の実施の形態7における粉塵捕捉部の更新操作の手順を示すフロー図である。本実施の形態では、図6に示した更新操作に追加された手順が実行される。従って、図6に示したフロー図におけるステップと同一のステップには同一の参照符号を付して、説明の繰り返しを省略する。また、図6に示した処理と同じであるステップS4〜S7については、図示を省略する。本実施の形態の手順も、実施の形態1あるいは2と同様の投写型画像表示装置の全体構成、及び粉塵捕捉部の構成を採用する場合に適用することができる。
【0124】
本実施の形態においては、図6に示した更新操作の手順に対して、更新操作が終了(ステップS8)した後に、フィルターの使用可能残時間の予測値を算出するステップS23以降の動作の制御が追加される。ステップS23で算出された使用可能残時間は、使用者への警告のために表示される(ステップS24)。
【0125】
使用可能残時間は、更新操作を作動させた複数の時期の間隔に基づいて行なうことが望ましい。一例として、以下のように算出することができる。
【0126】
算出のパラメータとして、フィルター使用当初から実行された更新操作の回数k、フィルター使用当初からの累積使用時間ΣUt、1回の更新操作によりフィルターの開口部35に臨む部分を使用可能な最長時間として想定されている部分最長使用時間Pm、及びフィルター全長について実行可能な更新操作の回数Nを用いる。
【0127】
使用可能残時間Rtを、下記の式(1)により算出する。
【0128】
Rt=[{ΣUt+(N+1−k)×Pm}/(N+1)]×(N+1−k) (1)
この算出方法では、フィルターの使用済みの部分については実際に使用された累積使用時間ΣUtを用い、未使用の部分については部分最長使用時間Pmを適用して、フィルター全長が使用された場合の推定累積使用時間{ΣUt+(N+1−k)×Pm}を算出する。
【0129】
(N+1)は、フィルター全長について更新操作毎に切換えて使用可能な部分領域数を意味する。従って、推定累積使用時間を、部分領域数(N+1)で除算することにより、部分領域当たりの推定平均使用時間が算出される。算出時点で残されている更新操作の可能な回数(N+1−k)を推定平均使用時間に乗算することにより、使用可能残時間Rtが算出される。
【0130】
以上のとおり、使用可能残時間Rtの初期値が部分最長使用時間Pmにより決まるので、使用開始後は、使用可能残時間Rtは減少するのみとなる。そして、算出時までに実際に使用された実態を反映させて使用可能残時間Rtが予測されるので、使用者に対して表示する使用可能残時間Rtとして、実態に合った妥当な長さの予測値を提供することが可能である。
【0131】
(実施の形態8)
図15は、本発明の実施の形態8における粉塵捕捉部の更新操作の手順を示すフロー図である。本実施の形態では、図6に示した更新操作に追加された手順が実行される。従って、図6に示したフロー図におけるステップと同一のステップには同一の参照符号を付して、説明の繰り返しを省略する。また、図6に示した処理と同じであるステップS4〜S7については、図示を省略する。本実施の形態の手順も、実施の形態1あるいは2と同様の投写型画像表示装置の全体構成、及び粉塵捕捉部の構成を採用する場合に適用することができる。
【0132】
本実施の形態においては、図14に示した実施の形態7における更新操作と同様、更新操作が終了(ステップS8)した後に、フィルターの使用可能残時間を算出するステップS23以降の動作の制御が追加される。使用可能残時間の算出には、一例として、実施の形態7に示した方法を用いることができる。
【0133】
ステップS23で算出された使用可能残時間についてステップ24で表示を行なった後、算出された使用可能残時間が所定値未満になっているか否かが判定される(ステップS25)。使用可能残時間が所定値以上であれば、ステップS2に戻る。
【0134】
使用可能残時間が所定値未満であれば、ステップS26に進み、使用可能残時間を表示する。その後ステップS27に進み、所定時間の経過を待つ。所定時間が経過したら、使用可能残時間の表示が所定回数に達したか否かが判定される(ステップS28)。表示が所定回数に達していなければ、ステップS26に戻る。表示が所定回数に達していれば、ステップS29に進み、投写型画像表示装置の電源が切断される。
【0135】
例えば、ステップS25での所定値が10分に設定され、ステップS27での所定時間が1分に設定され、ステップS28での所定回数が9回に設定されている場合は、次のようになる。
【0136】
例えば、最後の更新操作が行われたときに使用可能残時間(例えば200時間)が表示されて、使用者の注意を喚起する。そのまま使用が継続されて、使用可能残時間が例えば10分を切ったとき、ステップS26で使用可能残時間について警告が表示される。その後、ステップS26〜S28により、1分毎の警告表示が繰り返される。そして、警告表示が9回繰り返された後に、投写型画像表示装置の電源が切断される。従って、フィルターの使用可能残時間の完了により、使用者にとって不測の状態で電源が切断される状態を回避できる。
【0137】
以上の各実施の形態の手順で粉塵捕捉部の更新操作を制御することにより、フィルターの性能を十分に発揮しながら、交換回数を低減することが可能となる。
【0138】
なお、上記の各例における更新操作を完了出来ない何らかの事態が発生した場合、使用者に当該状況を報知する表示を行うことが望ましい。あるいは、更新操作を完了出来ないために、投写型画像表示装置の電源を一旦切断した場合、再投入後には電源切断前の動作状況によらず、第1巻取り軸による巻取り動作から開始するように構成することが望ましい。例えば、フィルター交換直後には、第2巻取り軸による巻戻し動作が不可能であるため、動作不能になる事態を回避するためである。
【0139】
なお、以上の実施の形態では、粉塵捕捉用フィルターとして、静電フィルターを例に挙げたが、静電フィルターは比較的高価なことから、巻取り可能なフィルター材料、例えば、繊維間に開口がある布の様なものでも使用可能である。ただし集塵性は静電フィルターに比べて劣ってしまうことから、フィルターの送り方等については、フィルター特性に合わせて最適化していくことが必要である。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本発明の粉塵捕捉装置は、小型でありながら、埃の多い環境でも、フィルターの少ない交換回数で十分な能力を発揮でき、天吊り用途等で、かつ埃の多い環境で使用されるプロジェクタ等の投写型画像表示装置に用いるのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】本発明の実施の形態1における投写型画像表示装置の全体平面構成を示す断面図
【図2】同投写型画像表示装置における粉塵捕捉部の構造を示す断面図
【図3】同粉塵捕捉部における可動ブラシの外観を示す斜視図
【図4】同粉塵捕捉部におけるフィルター送り機構の概略構成を示す正面図
【図5A】同粉塵捕捉部の動作状態を示す断面図
【図5B】同粉塵捕捉部の他の動作状態を示す断面図
【図5C】同粉塵捕捉部の更に他の動作状態を示す断面図
【図6】同粉塵捕捉部の更新操作の手順を示すフロー図
【図7】本発明の実施の形態2における投写型画像表示装置の全体平面構成を示す断面図
【図8】同投写型画像表示装置における粉塵捕捉部の構造を示す断面図
【図9】同粉塵捕捉部における回転ブラシの駆動機構を示す斜視図
【図10】本発明の実施の形態3における粉塵捕捉部の更新操作の手順を示すフロー図
【図11】本発明の実施の形態4における粉塵捕捉部の更新操作の手順を示すフロー図
【図12】本発明の実施の形態5における粉塵捕捉部の更新操作の手順を示すフロー図
【図13】本発明の実施の形態6における粉塵捕捉部の更新操作の手順を示すフロー図
【図14】本発明の実施の形態7における粉塵捕捉部の更新操作の手順を示すフロー図
【図15】本発明の実施の形態8における粉塵捕捉部の更新操作の手順を示すフロー図
【符号の説明】
【0142】
1 ランプ
2 反射鏡
3 光学ユニット
4、5 ダイクロイックミラー
6、7、8 全反射ミラー
9R、9G、9B 入射側偏光板
10R、10G、10B 液晶パネル
11R、11G、11B 出射側偏光板
12R、12B ダイクロイック反射膜
13 合成プリズム
14 投写レンズ
15 電源ユニット
16 吸気ファン
17 筐体
18 筐体吸気口
19 粉塵捕捉部
20 静電フィルター
21 光学ユニットダクト
22R、22G、22B 開口
23 排気ファン
24 排気口
25 窓部材
26 吸気ダクト
27、28、29 緩衝材
30 外気温センサ
31 風量センサ
32 制御回路部
33a 第1巻取り軸
33b 第2巻取り軸
34 小型筐体
35 開口部
36a、36b 中継回転軸
37 走行量モニター軸
38 粉塵収納部
39 隔壁
40 固定ブラシ
41 可動ブラシ
42 接触部
43 搬送部
44a、44b フィルター巻取り軸凹部
45a、45b 連結部
46a、46b 軸
47a、47b、48a、48b ギヤ
49a、49b ステッピングモーターユニット
50 押圧バネ
51 回転検出反射パターン
52 パターン検出センサー
53 装置本体壁
54 押し戻しバネ
55 固定壁
60 粉塵捕捉部
61 小型筐体
62 開口部
63a、63b 隔壁
64 回転ブラシ
65 埃よけケース
65a 開口
66 ブラシギヤ
67 ブラシ中継ギヤ
68 巻取り軸ギヤ
69 粉塵収納部
70 蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の間隔を設けて配置された第1及び第2巻取り軸と、
前記第1及び第2巻取り軸間に架張され、前記第2巻取り軸に未使用部分が巻回されているロール状のフィルターと、
前記第1及び第2巻取り軸間の所定の位置に、前記フィルター面と接触するように設けられたブラシと、
前記第1及び第2巻取り軸を介して前記フィルターを巻上げまたは巻戻すように前記第1及び第2巻取り軸を駆動する送り機構と、
前記第1及び第2巻取り軸間において前記フィルター面を通過させて外気を導くように設けられた開口部と、
前記送り機構を制御する送り制御部とを備え、
前記送り制御部は、前記第2巻取り軸側から前記フィルターの未使用部分を送り出す更新操作を作動させる際に、一旦、前記第1巻取り軸により巻上げ量Laで前記フィルターを巻上げた後、前記第2巻取り軸により巻戻し量Lbで前記フィルターを巻戻し、La≧Lbとなるように前記送り機構を制御することを特徴とする粉塵捕捉装置。
【請求項2】
前記送り制御部が前記更新操作を作動させる条件は、前記フィルターを透過する前の空気温度を検出する温度センサーの出力と、前記フィルターを透過した空気量を検出する風量センサーの出力に基づいて設定されている請求項1記載の粉塵捕捉装置。
【請求項3】
前記風量センサーは受熱部と発熱部とを備え、前記受熱部と前記発熱部間を空気が通過することにより変化する前記受熱部の出力の変化が風量に対応し、
前記送り制御部は、前記風量センサーの出力と、前記温度センサー出力とを摂氏温度に換算した値から算出される温度差が所定値を越えたことを条件として、前記更新操作を作動させる請求項2記載の粉塵捕捉装置。
【請求項4】
前記巻上げ量Laと前記巻戻し量Lbの大きさの関係を、前記更新操作を作動させた複数の時期の間隔に応じて可変に設定可能である請求項3記載の粉塵捕捉装置。
【請求項5】
前記送り制御部は、前記更新操作を作動させる条件として、前記温度センサー及び前記風量センサーの出力に基づいて設定された条件とともに、所定の使用時間の経過を条件として併せて適用して前記送り機構を制御する請求項2記載の粉塵捕捉装置。
【請求項6】
前記開口部における前記フィルターの面を通過させて外気を吸気する吸気ファンを備え、
前記送り制御部は、前記温度センサー及び前記風量センサーの出力に基づく前記更新操作を作動させる条件が充足されたことを検知したときに、最初は前記第1及び第2巻取り軸を駆動させることなく前記吸気ファンの回転数を所定値に上昇させた後に、再度前記更新操作を作動させる条件が充足されたことを検知したときに、前記第1及び第2巻取り軸を駆動させる制御を行う請求項2記載の粉塵捕捉装置。
【請求項7】
前記第2巻取り軸に巻回された前記フィルターの未使用部分の残量が減少し、Laを確保できなくなった場合、あるいは所定の残量になった場合には、前記フィルターの未使用部分の残量について使用者への警告表示を行う請求項1記載の粉塵捕捉装置。
【請求項8】
前記第2巻取り軸に巻回された前記フィルターの未使用部分の残量が減少し、Laを確保できなくなった場合、あるいは所定の残量になった場合において、前記更新操作を作動させる条件が充足された場合に、巻上げ量Laを減じてLbを同じ値として、前記送り機構を制御する請求項2記載の粉塵捕捉装置。
【請求項9】
前記送り制御部は、前記更新操作を作動させた複数の時期の間隔に基づいて、前記フィルターの使用可能残時間の予測値を算出し、算出された前記使用可能残時間を表示可能である請求項4記載の粉塵捕捉装置。
【請求項10】
前記フィルター使用当初から実行された前記更新操作の回数をk、前記フィルター使用当初からの累積使用時間ΣUt、1回の更新操作によりフィルターの一部を使用可能な最長時間として想定されている部分最長使用時間Pm、及び前記フィルター全長について実行可能な前記更新操作の回数Nとするとき、
前記使用可能残時間Rtの予測値を下記の式により算出する請求項9記載の粉塵捕捉装置。
Rt=[{ΣUt+(N+1−k)×Pm}/(N+1)]×(N+1−k)
【請求項11】
前記送り制御部は、前記使用可能残時間が一度表示された後、前記フィルターを交換することなく使用が続けられた場合、使用可能残時間が設定値以下になったときに再度、使用可能残時間を表示し、その後、所定時間間隔で使用可能残時間の表示を所定回繰り返した後に、当該粉塵捕捉装置が用いられている装置の電源を切る制御を行う請求項9記載の粉塵捕捉装置。
【請求項12】
前記更新操作を完了出来ない場合、使用者に当該状況を報知する表示を行う請求項1記載の粉塵捕捉装置。
【請求項13】
前記更新操作を完了出来ない場合、当該粉塵捕捉装置が用いられている装置の電源を一旦切断し、再投入後には電源切断前の動作状況によらず、前記第1巻取り軸による巻取り動作から開始する請求項1記載の粉塵捕捉装置。
【請求項14】
少なくとも吸気口、排気口を有する筐体と、空気を吸入または排出する送風部と、光源部と、画像形成部と、投写光学系と、電源部と、請求項1〜13のいずれかに記載の粉塵捕捉装置とを備えた投写型画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−119941(P2010−119941A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−294781(P2008−294781)
【出願日】平成20年11月18日(2008.11.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】