説明

粉末エアゾール製品および粉末エアゾール用バルブ

【課題】 従来より耐久性を向上することができる粉末エアゾール製品および粉末エアゾール用バルブを提供する。
【解決手段】 粉末エアゾール製品10のバルブ40は、押されることによって容器本体30内の粉末の噴射を行うための合成樹脂製のステム43と、ステム43が挿入される貫通孔44aが形成されたステムラバー44とを備えており、ステム43は、貫通孔44aに挿入されてステムラバー44に対して摺動するラバー摺動部43bと、ステムラバー44に対するラバー摺動部43bの矢印40bで示す摺動方向において粉末エアゾール容器20の外部側の端に配置された端面43fと、矢印40bで示す方向と異なる方向に湾曲可能である湾曲可能部43dとを備えており、湾曲可能部43dは、ステム43のうちラバー摺動部43bより端面43f側の部分の少なくとも一部を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末を噴射する粉末エアゾール製品と、それに使用される粉末エアゾール用バルブとに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粉末エアゾール用バルブとして、粉末エアゾール容器の内容物である粉末を噴射するためのステムと、ステムが挿入される貫通孔が形成されたステムラバーとを備えているものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。粉末エアゾール用バルブは、ステムがステムラバーに対して摺動することによって、ステムの外周に付着した粉末がステムラバーによって掻き落とされるようになっている。ステムは、このようにステムラバーに対して摺動するようになっているので、ステムラバーと摺動する部分(以下「ラバー摺動部」という。)の径を大きくすると、ステムラバーとの接触面積が大きくなって、ステムラバーに対して摺動するときにステムラバーから受ける抵抗力が大きくなる。ステムがステムラバーに対して摺動するときにステムラバーから大きな抵抗力を受けるということは、粉末エアゾール用バルブの利用者にとって操作性が悪いということである。したがって、粉末エアゾール用バルブは、粉末を噴射しないエアゾール製品のバルブと比較して、ステムのラバー摺動部の径が小さくなるように設計されている。
【0003】
ここで、粉末エアゾール用バルブのステムの材質としては、金属や合成樹脂などが知られている。金属製のステムは、合成樹脂製のステムと比較して高価である。したがって、粉末エアゾール用バルブのステムとしては、金属性のステムと比較して安価である合成樹脂製のステムが採用されることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−115372号公報(段落「0054」、段落「0059」)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、合成樹脂製のステムが採用された粉末エアゾール用バルブにおいては、ステムのラバー摺動部の径が小さくなるように設計されると、ラバー摺動部の剛性が足りないので、粉末エアゾール製品が落下などで外部から異常な衝撃を受けたときに、ステムがラバー摺動部で折れてしまうという問題がある。ここで、金属製のステムは、合成樹脂製のステムと比較して剛性が高いので、ラバー摺動部の径が小さくなるように設計されたとしても、ラバー摺動部での折れなどの問題が発生することはない。したがって、合成樹脂製のステムにおいても、金属製のステムの剛性に近づけるために、より剛性の高い合成樹脂を使用したステムが多くの開発者によって開発されている。しかしながら、合成樹脂製のステムは、未だに剛性が足りずにラバー摺動部で折れてしまうことがある。
【0006】
そこで、本発明は、従来より耐久性を向上することができる粉末エアゾール製品および粉末エアゾール用バルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の粉末エアゾール製品は、粉末が充填された粉末エアゾール容器と、前記粉末エアゾール容器に取り付けられて前記粉末の噴射を行うための噴射装置とを備えている粉末エアゾール製品であって、前記粉末エアゾール容器は、前記粉末が充填されるための容器本体と、前記容器本体に取り付けられた粉末エアゾール用バルブとを備えており、前記粉末エアゾール用バルブは、押されることによって前記粉末エアゾール容器内の前記粉末の噴射を行うための合成樹脂製のステムと、前記ステムが挿入される貫通孔が形成されたステムラバーとを備えており、前記噴射装置は、押されることによって前記ステムを押すための噴射ボタンを備えており、前記ステムは、前記貫通孔に挿入されて前記ステムラバーに対して摺動する部分であるラバー摺動部と、前記ステムラバーに対する前記ラバー摺動部の摺動方向において前記粉末エアゾール容器の外部側の端に配置された端面と、前記摺動方向と異なる方向に湾曲可能である湾曲可能部とを備えており、前記湾曲可能部は、前記ステムのうち前記ラバー摺動部より前記端面側の部分の少なくとも一部を含んでいることを特徴とする。
【0008】
上述したように、合成樹脂製のステムは、従来、ラバー摺動部で折れることを防止するために剛性をより高めるように開発が進められている。しかしながら、本発明の発明者は、このような従来の開発の方向性に対して完全に発想を転換し、合成樹脂製のステムが折れることを防止するためには寧ろステムに湾曲可能部を設ける方が良いという結論に達し、本発明を完成させた。本発明の粉末エアゾール製品は、ステムが湾曲可能部を備えているので、利用者によって落下させられたときなどに外部からステムに衝撃が伝達されても、伝達された衝撃を湾曲可能部の湾曲によって吸収することができる。したがって、本発明の粉末エアゾール製品は、合成樹脂製のステムが折れる可能性を従来より低下させることができ、従来より耐久性を向上することができる。
【0009】
また、本発明の粉末エアゾール製品の前記噴射装置は、前記噴射ボタンを回転可能に支持するボタン支持部を備えており、前記ボタン支持部は、少なくとも前記噴射ボタンが前記ステムを押すことによって前記湾曲可能部が湾曲する位置まで、前記噴射ボタンを回転可能に支持することが好ましい。
【0010】
この構成により、本発明の粉末エアゾール製品は、噴射ボタンの動きに追随してステムが変形するので、噴射ボタンがステムにしっかり嵌っている状態で粉末を噴射することができる。したがって、本発明の粉末エアゾール製品は、噴射ボタンとステムとの間から噴射剤が漏れることを抑えることができ、性能を向上することができる。
【0011】
また、本発明の粉末エアゾール製品の前記噴射ボタンは、前記端面と対向する対向面を備えており、前記端面および前記対向面は、前記噴射ボタンが前記ステムを押すときに少なくとも一部が互いに接触し、前記ボタン支持部は、少なくとも前記噴射ボタンが前記ステムを押すことによって前記湾曲可能部が湾曲して前記端面および前記対向面の角度が同一になる位置まで、前記噴射ボタンを回転可能に支持することが好ましい。
【0012】
この構成により、本発明の粉末エアゾール製品は、ステムの端面と噴射ボタンの対向面とがしっかり接触している状態で粉末を噴射することができる。したがって、本発明の粉末エアゾール製品は、噴射ボタンとステムとの間から噴射剤が漏れることを一層抑えることができ、性能を一層向上することができる。
【0013】
また、本発明の粉末エアゾール用バルブは、粉末が充填された粉末エアゾール容器の部品である粉末エアゾール用バルブであって、押されることによって前記粉末エアゾール容器内の前記粉末の噴射を行うための合成樹脂製のステムと、前記ステムが挿入される貫通孔が形成されたステムラバーとを備えており、前記ステムは、前記貫通孔に挿入されて前記ステムラバーに対して摺動する部分であるラバー摺動部と、前記ステムラバーに対する前記ラバー摺動部の摺動方向において前記粉末エアゾール容器の外部側の端に配置された端面と、前記摺動方向と異なる方向に湾曲可能である湾曲可能部とを備えており、前記湾曲可能部は、前記ステムのうち前記ラバー摺動部より前記端面側の部分の少なくとも一部を含んでいることを特徴とする。
【0014】
この構成により、本発明の粉末エアゾール用バルブは、ステムが湾曲可能部を備えているので、利用者によって落下させられたときなどに外部からステムに衝撃が伝達されても、伝達された衝撃を湾曲可能部の湾曲によって吸収することができる。したがって、本発明の粉末エアゾール用バルブは、合成樹脂製のステムが折れる可能性を従来より低下させることができ、従来より耐久性を向上することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の粉末エアゾール製品および粉末エアゾール用バルブは、従来より耐久性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施の形態に係る粉末エアゾール製品の外観斜視図である。
【図2】噴射ボタンが押されていないときの図1に示す粉末エアゾール製品の側面断面図である。
【図3】噴射ボタンが押されているときの図1に示す粉末エアゾール製品の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0018】
まず、本実施の形態に係る粉末エアゾール製品の構成について説明する。
【0019】
図1は、本実施の形態に係る粉末エアゾール製品10の外観斜視図である。図2は、噴射ボタン64が押されていないときの粉末エアゾール製品10の側面断面図である。
【0020】
図1および図2に示すように、粉末エアゾール製品10は、粉末が充填された粉末エアゾール容器20と、粉末エアゾール容器20の上部に取り付けられて粉末エアゾール容器20の内容物である粉末の噴射を行うための合成樹脂製の噴射装置60とを備えている。
【0021】
粉末エアゾール容器20は、噴射剤としての液体状態のガスおよび内容物としての粉末が充填されるための金属製の容器本体30と、容器本体30の上部に取り付けられた粉末エアゾール用バルブとしてのバルブ40と、容器本体30の内部でバルブ40の下部に取り付けられたディップチューブ50とを備えている。ここで、容器本体30と、バルブ40とによって囲まれた空間を以下において容器内空間20aという。
【0022】
容器本体30は、上部の開口31の周囲に形成されたビード部32を有している。
【0023】
バルブ40は、容器本体30のビード部32に固定される金属製のマウンティングカップ41と、粉末エアゾール容器20の内部側でマウンティングカップ41に固定されている合成樹脂製のハウジング42と、マウンティングカップ41およびハウジング42に下部が囲まれていて粉末エアゾール容器20の外部側に上部が突出している合成樹脂製のステム43と、マウンティングカップ41およびハウジング42に挟まれていてステム43が挿入されているステムラバー44と、粉末エアゾール容器20の外部側に向けてステム43を付勢するスプリング45とを備えている。ここで、ハウジング42と、ステム43と、ステムラバー44とによって囲まれた空間を以下においてバルブ内空間40aという。
【0024】
マウンティングカップ41は、図示していないガスケットを介して容器本体30のビード部32に固定されるフランジ部41aと、中央に設けられていてハウジング42を保持するハウジング保持部41bと、ハウジング保持部41bの中央に設けられている開口部41cとを備えている。
【0025】
ハウジング42は、マウンティングカップ41のハウジング保持部41bによって保持されている部分に形成されたスリット42aと、気化したガスを流通させるために容器内空間20aおよびバルブ内空間40aを連通させるベーパータップ孔42bと、液体状態のガスおよび粉末を流通させるためにバルブ内空間40aおよびディップチューブ50の流路51を連通させる主孔42cと、ハウジング42およびステム43の間に流路を形成するために放射状に複数設けられたリブ42dと、ディップチューブ50を保持しているチューブ保持部42eとを備えている。なお、ステム43が押し下げられていないとき、バルブ内空間40aには、容器内空間20a内で気化してベーパータップ孔42bを介して導入されたガスが充満している。
【0026】
ステム43は、粉末エアゾール容器20の内容物である粉末を粉末エアゾール容器20の外部に噴出するための非貫通の噴出孔43aと、ステムラバー44に対して摺動する部分であるラバー摺動部43bと、ラバー摺動部43bに形成されて噴出孔43aに連通しているステム孔43cと、ステムラバー44に対するラバー摺動部43bの矢印40bで示す摺動方向と異なる方向に湾曲可能である湾曲可能部43dと、スプリング45と係合するスプリング係合部43eとを備えていて、噴出孔43a、ラバー摺動部43b、ステム孔43cおよび湾曲可能部43dが形成されている円柱状の部分と、スプリング係合部43eが形成されている円柱状の部分とからなっている。噴出孔43aは、ステム43のうち、矢印40bで示す方向において粉末エアゾール容器20の外部側の端に配置された端面43fに開口している。湾曲可能部43dは、ステム43のうちラバー摺動部43bより端面43f側の部分の少なくとも一部を含んでおり、ステム43の材料である合成樹脂が剛性の低い合成樹脂に選定されることによって実現されている。
【0027】
ステムラバー44は、矢印40bで示す方向に貫通してステム43のラバー摺動部43bが挿入されている貫通孔44aが形成されている。
【0028】
ステム43のステム孔43cは、ステム43において、ステムラバー44に対するステム43の摺動によって貫通孔44aに対して粉末エアゾール容器20の外部側および内部側に移動する位置に配置されている。なお、ステムラバー44に対するステム43の摺動のストロークは、ステム43の外周に付着した粉末の掻き落としのために、例えば3mmと比較的大きくなっている。したがって、ラバー摺動部43bが形成されている円柱状の部分の径は、ステムラバー44から受ける抵抗力を抑えるために、例えば3mmと比較的小さくなっている。
【0029】
噴射装置60は、マウンティングカップ41のフランジ部41aの内周側に圧入される略円筒形の円筒部61と、円筒部61の外周面に繋がっていてフランジ部41aと接触するフランジ部62と、粉末エアゾール容器20の内容物である粉末の噴射を行うためのノズル63と、押されることによってステム43を押してノズル63に噴射を行わせるための噴射ボタン64と、円筒部61および噴射ボタン64を繋ぐインテグラルヒンジ部65とを有している。
【0030】
円筒部61は、マウンティングカップ41のフランジ部41aと係合する環状突起部61aが外周面上に形成されている。円筒部61は、インテグラルヒンジ部65によって噴射ボタン64を回転可能に支持しており、本発明のボタン支持部を構成している。
【0031】
噴射ボタン64は、利用者によって押されるための操作部64aと、粉末エアゾール容器20のステム43に係合する係合部64bと、係合部64bに係合されたステム43からノズル63までを連通する流路64cとを有している。噴射ボタン64は、円筒部61に回転可能に支持されていることによって、押されたときにインテグラルヒンジ部65を支点に回転してステム43を押すようになっている。係合部64bを構成する面であってステム43の端面43fと対向する対向面64dは、噴射ボタン64がステム43を押すときに少なくとも一部がステム43の端面43fと接触するようになっている。
【0032】
インテグラルヒンジ部65は、円筒部61と、噴射ボタン64のうちノズル63の近傍の部分とを繋いでいる。
【0033】
図3は、噴射ボタン64が押されているときの粉末エアゾール製品10の側面断面図である。
【0034】
図3に示すように、円筒部61は、噴射ボタン64がステム43を押すことによってステム43の湾曲可能部43dが湾曲してステム43の端面43fと噴射ボタン64の対向面64dとの角度が同一になる位置まで、噴射ボタン64を回転可能に支持するようになっている。
【0035】
次に、粉末エアゾール製品10の機能について説明する。
【0036】
(内容物充填時)
マウンティングカップ41の開口部41cと、ステム43との間から液体状態のガスおよび内容物としての粉末が導入されると、導入された液体状態のガスおよび粉末の圧力によってステムラバー44が押し下がり、マウンティングカップ41と、ステムラバー44との間に空間が生じる。
【0037】
したがって、マウンティングカップ41の開口部41cと、ステム43との間から導入された液体状態のガスおよび粉末は、マウンティングカップ41と、ステムラバー44との間に生じた空間と、ハウジング42のスリット42aとを介して、容器内空間20aに充填される。
【0038】
(通常使用時)
図3に示すように、噴射ボタン64は、利用者によって操作部64aが押し下げられると、インテグラルヒンジ部65を支点として回転することによって、粉末エアゾール容器20のステム43をスプリング45に抗して押し下げる。
【0039】
ステム43が押し下げられると、ステム孔43cがバルブ内空間40aと、噴出孔43aとを連通させるので、バルブ内空間40aに充満していたガスがステム孔43cを介して噴出孔43aから噴出する。その後、液体状態のガスおよび粉末がディップチューブ50の流路51およびハウジング42の主孔42cを介してバルブ内空間40a内に導入される。同時に、容器内空間20a内で気化したガスもハウジング42のベーパータップ孔42bを介してバルブ内空間40a内に導入される。そして、バルブ内空間40a内に導入されたガスおよび粉末は、互いに混ぜ合わされてステム孔43cを介して噴出孔43aから噴出する。これによって、粉末エアゾール容器20の内容物である粉末は、噴射ボタン64の流路64cおよびノズル63を介して粉末エアゾール製品10の外部に噴射される。
【0040】
ここで、粉末エアゾール製品10は、ステムラバー44に対するステム43の摺動によってステムラバー44の貫通孔44aに対してステム43のステム孔43cが粉末エアゾール容器20の外部側および内部側に移動するので、ステムラバー44に対してステム43が摺動するときにステム43のうちステム孔43cの近傍に付着した粉末がステムラバー44によって掻き落とされる。したがって、粉末エアゾール製品10は、ステム43のうちステム孔43cの近傍に粉末が堆積して生じる動作不良を防ぐことができる。
【0041】
(被衝撃時)
粉末エアゾール製品10が地面に落下したときなどに、噴射ボタン64が外部と接触して外部から異常な衝撃を受けることがある。噴射ボタン64が外部から衝撃を受けると、その衝撃は、噴射ボタン64の係合部64bを介してステム43に伝達される。このとき、係合部64bからステム43に加わる衝撃の方向は、矢印40bで示す方向と異なる方向である場合がある。ステム43は、矢印40bで示す方向と異なる方向の衝撃を係合部64bから受けると、図3に示すように湾曲可能部43dで湾曲するが、湾曲によって衝撃を吸収するので、折れることはない。
【0042】
上述したように、合成樹脂製のステムは、従来、ラバー摺動部で折れることを防止するために剛性をより高めるように開発が進められている。しかしながら、本発明の発明者は、このような従来の開発の方向性に対して完全に発想を転換し、合成樹脂製のステムが折れることを防止するためには寧ろステムに湾曲可能部を設ける方が良いという結論に達し、本発明を完成させた。本実施の形態に係る粉末エアゾール製品10は、ステム43が湾曲可能部43dを備えているので、利用者によって落下させられたときなどに外部からステム43に衝撃が伝達されても、伝達された衝撃を湾曲可能部43dの湾曲によって吸収することができる。したがって、粉末エアゾール製品10は、合成樹脂製のステム43が折れる可能性を従来より低下させることができ、従来より耐久性を向上することができる。
【0043】
また、粉末エアゾール製品10は、噴射ボタン64が円筒部61に回転可能に支持されているので、被衝撃時だけでなく、通常使用時にも、作動させられるたびに、ステム43を折り曲げようとする力(以下「折曲力」という。)が噴射ボタン64からステム43に加わる。このように通常使用時に噴射ボタン64からステム43に加わる折曲力は、被衝撃時に噴射ボタン64からステム43に加わる折曲力と比較して、力としては弱いが、受ける回数は多いので、結果としてステム43の折れに影響を与える。しかしながら、粉末エアゾール製品10は、このような通常使用時の折曲力も、湾曲可能部43dの湾曲によって吸収することができる。したがって、粉末エアゾール製品10は、合成樹脂製のステム43が折れる可能性を従来より低下させることができ、従来より耐久性を向上することができる。
【0044】
また、粉末エアゾール製品10の円筒部61は、少なくとも噴射ボタン64がステム43を押すことによって湾曲可能部43dが湾曲する位置まで、噴射ボタン64を回転可能に支持するようになっている。このため、粉末エアゾール製品10は、噴射ボタン64の動きに追随してステム43が変形するので、噴射ボタン64がステム43にしっかり嵌っている状態で粉末を噴射することができる。したがって、粉末エアゾール製品10は、噴射ボタン64とステム43との間から噴射剤が漏れることを抑えることができ、性能を向上することができる。
【0045】
更に、粉末エアゾール製品10の円筒部61は、少なくとも噴射ボタン64がステム43を押すことによってステム43の湾曲可能部43dが湾曲してステム43の端面43fと噴射ボタン64の対向面64dとの角度が同一になる位置まで、噴射ボタン64を回転可能に支持するようになっている。このため、粉末エアゾール製品10は、ステム43の端面43fと噴射ボタン64の対向面64dとがしっかり接触している状態で粉末を噴射することができる。したがって、粉末エアゾール製品10は、噴射ボタン64とステム43との間から噴射剤が漏れることを一層抑えることができ、性能を一層向上することができる。
【0046】
なお、本実施の形態においては、噴射ボタンが円筒部に回転可能に支持されている粉末エアゾール製品について説明したが、ステムラバーに対するラバー摺動部の摺動方向に噴射ボタンが移動可能な粉末エアゾール製品であっても、地面に落下したときなどの外部から異常な衝撃を受けるときに、ステムを折り曲げようとする力が外部から伝達されることがある。したがって、本発明は、ステムラバーに対するラバー摺動部の摺動方向に噴射ボタンが移動可能な粉末エアゾール製品に対しても有益である。
【符号の説明】
【0047】
10 粉末エアゾール製品
20 粉末エアゾール容器
30 容器本体
40 バルブ(粉末エアゾール用バルブ)
43 ステム
43b ラバー摺動部
43d 湾曲可能部
43f 端面
44 ステムラバー
44a 貫通孔
60 噴射装置
61 円筒部(ボタン支持部)
64 噴射ボタン
64d 対向面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末が充填された粉末エアゾール容器と、前記粉末エアゾール容器に取り付けられて前記粉末の噴射を行うための噴射装置とを備えている粉末エアゾール製品であって、
前記粉末エアゾール容器は、前記粉末が充填されるための容器本体と、前記容器本体に取り付けられた粉末エアゾール用バルブとを備えており、
前記粉末エアゾール用バルブは、押されることによって前記粉末エアゾール容器内の前記粉末の噴射を行うための合成樹脂製のステムと、前記ステムが挿入される貫通孔が形成されたステムラバーとを備えており、
前記噴射装置は、押されることによって前記ステムを押すための噴射ボタンを備えており、
前記ステムは、前記貫通孔に挿入されて前記ステムラバーに対して摺動する部分であるラバー摺動部と、前記ステムラバーに対する前記ラバー摺動部の摺動方向において前記粉末エアゾール容器の外部側の端に配置された端面と、前記摺動方向と異なる方向に湾曲可能である湾曲可能部とを備えており、
前記湾曲可能部は、前記ステムのうち前記ラバー摺動部より前記端面側の部分の少なくとも一部を含んでいることを特徴とする粉末エアゾール製品。
【請求項2】
前記噴射装置は、前記噴射ボタンを回転可能に支持するボタン支持部を備えており、
前記ボタン支持部は、少なくとも前記噴射ボタンが前記ステムを押すことによって前記湾曲可能部が湾曲する位置まで、前記噴射ボタンを回転可能に支持することを特徴とする請求項1に記載の粉末エアゾール製品。
【請求項3】
前記噴射ボタンは、前記端面と対向する対向面を備えており、
前記端面および前記対向面は、前記噴射ボタンが前記ステムを押すときに少なくとも一部が互いに接触し、
前記ボタン支持部は、少なくとも前記噴射ボタンが前記ステムを押すことによって前記湾曲可能部が湾曲して前記端面および前記対向面の角度が同一になる位置まで、前記噴射ボタンを回転可能に支持することを特徴とする請求項2に記載の粉末エアゾール製品。
【請求項4】
粉末が充填された粉末エアゾール容器の部品である粉末エアゾール用バルブであって、
押されることによって前記粉末エアゾール容器内の前記粉末の噴射を行うための合成樹脂製のステムと、前記ステムが挿入される貫通孔が形成されたステムラバーとを備えており、
前記ステムは、前記貫通孔に挿入されて前記ステムラバーに対して摺動する部分であるラバー摺動部と、前記ステムラバーに対する前記ラバー摺動部の摺動方向において前記粉末エアゾール容器の外部側の端に配置された端面と、前記摺動方向と異なる方向に湾曲可能である湾曲可能部とを備えており、
前記湾曲可能部は、前記ステムのうち前記ラバー摺動部より前記端面側の部分の少なくとも一部を含んでいることを特徴とする粉末エアゾール用バルブ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−31117(P2011−31117A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−174969(P2009−174969)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(000144463)株式会社三谷バルブ (142)
【Fターム(参考)】