説明

粉末化粧料の製造方法

【課題】本発明は、粉末化粧料の製造方法、特に使用性に優れ、化粧もちのよい粉末化粧料の改良に関する。
【解決手段】粉末成分と揮発性溶媒とを予備混合した後、前記混合物と油性成分とを混合撹拌し、続いて媒体撹拌ミルを用いて前記混合物を分散粉砕してスラリーとする工程を備え、
且つ、前記油性成分が、
(a)25℃における粘度が100mPa・s以上である非極性シリコーンオイルと、
(b)ポリエーテル・アルキル共変性シリコーンと、
(c)極性油と、
を含むことを特徴とする粉末化粧料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末化粧料の製造方法、特に使用性に優れ、化粧もちのよい粉末化粧料の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パウダーファンデーション等の粉末成分と油性成分を混合してなる粉末化粧料の製造方法としては、乾式製法及び湿式製法が知られている。乾式製法は、粉末成分と結合剤としての油性成分とを撹拌混合機を用いて混合し、粉砕機にて粉砕した後、金属や樹脂製の中皿に充填し、圧縮成型する製法であり、生産性の高さから現在最も汎用されている。
一方で、湿式製法は、粉末成分と油性成分の混合物を揮発性の溶媒中で混練してスラリーとした後、乾燥及び成形を行う製法であり、溶媒を用いない乾式製法に比べ、粉体の形状に係わらず油剤を粉体中へ均一に分散させることができることから、粉末化粧料に多様な粉末成分を適用する傾向にある近年では、殊にこの湿式製法を応用した技術開発が期待されている。
【0003】
湿式製法による粉末化粧料は、その使用感等の改善ないし有効作用の付与のため、原料である粉末成分又はその結合剤としての油性成分について種々の検討がなされている。例えば、粉末成分に微粒子酸化亜鉛と高分子球状弾性粉体を配合した粉末化粧料に関する技術においては、湿式充填方法によって粉末表面を油分で十分に被覆することにより、粉末成分の有する肌荒れ改善効果に加え、化粧料の使用性も維持せしめる(特許文献1)。
また、粉末化粧料の湿式製法において、油性成分としてポリオキシアルキレン基とオルガノポリシロキサン基を枝ポリマーに有するシロキサン化合物を用いることで、粉体成分の分散性を向上させる技術が報告されている(特許文献2)。
【0004】
また、パウダーファンデーションにおいて、汗や皮脂に対する化粧もちの向上や、塗布の際に水の使用を可能にするため、粉体表面に疎水化処理を施した粉末を配合した両用ファンデーションが製造されてきた。このような両用ファンデーションは主に夏用であることから、紫外線防御効果をもたせるために、極性油の紫外線吸収剤を配合することも多い。
【特許文献1】特開2003−81769号
【特許文献2】特開2001−58926号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、湿式製法による粉末化粧料は、製造時に粉末成分と油性成分とを混合するという特徴ゆえに経時的に粉末成分の余吸油量が低下し、使用時に皮脂の吸収力が低くなる、すなわち化粧もちが十分ではないという問題点があった。また、前記粉末化粧料に疎水化処理粉末を高配合しようとすれば、さらなる吸油量の低下を招き、いわゆるケーキングを起こし易くなる等使用性に改善の余地が残されている。
したがって、高い撥水性を付与するために多量の疎水化処理粉末を要し、さらに油性の紫外線吸収剤を配合する両用ファンデーションの湿式製法による製造は困難であるのが現状である。
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は使用性及び化粧もちに優れ、水使用の可能な粉末化粧料の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明者らが鋭意研究を行った結果、湿式製法の油性成分として高粘度のシリコーンオイルを配合することにより、原料の混合撹拌工程において粉体成分の粒子表面が疎水化処理され、あらかじめ疎水化処理粉末を配合することなく水使用が可能な粉末化粧料が得られることを見出した。
さらに、ポリエーテル・アルキル共変性シリコーンを配合することにより、前記シリコーンオイルの分散性が向上し、且つ紫外線吸収剤として添加する極性油が系において安定して乳化され、使用感の優れた粉末化粧料の製造が可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の粉末化粧料の製造方法は、粉末成分と揮発性溶媒とを予備混合した後、前記混合物と油性成分とを混合撹拌し、続いて媒体撹拌ミルを用いて前記混合物を分散粉砕してスラリーとする工程を備え、且つ、前記油性成分が、
(a)25℃における粘度が100mPa・s以上である非極性シリコーンオイルと、
(b)ポリエーテル・アルキル共変性シリコーンオイルと、
(c)極性油と、
を含むことを特徴とする。
上記製造方法において、極性油がオクチルメトキシシンナメート及び/又は2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレートを含むことが好適である。
また、上記製造方法において、粉末成分が合成雲母を含むことが好適である。
さらに、上記製造方法において、揮発性溶媒がエチルアルコールであり、その添加量が粉体成分及び油性成分の混合物100重量部に対し40〜70重量部であることが好適である。
【発明の効果】
【0008】
本発明にかかる製造方法によれば、特定粘度の非極性シリコーンオイルで均一にコーティングされた粉末成分により、疎水性が高く、ケーキングの生じにくい粉末化粧料を得ることができる。さらに、アルキル・ポリエーテル共重合シリコーンオイルを配合することにより、前記シリコーンオイルの分散性が向上し、フィット感が高く、粉っぽさが少ない等使用感に優れ、化粧もちのよい粉末化粧料が得られる。また、アルキル・ポリエーテル共重合シリコーンオイルの作用により、非極性シリコーンオイルと極性油を安定して配合することが可能となり、非極性シリコーンオイルで均一に被覆された粉末成分と、極性油からなる紫外線吸収剤とを配合した粉末化粧料の製造が可能となる。
さらに、本発明の製造方法によれば、粉末化粧料を製造すると同時に該化粧料中の粉末成分へ疎水化処理を施すことができるため、あらかじめ粉末成分に疎水化処理を施しておく、又は市販の疎水化処理粉体を用意する必要がなく、製造効率ないしコストの削減にも有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明にかかる粉末化粧料の製造方法は、揮発性溶媒中に分散した粉末成分の粒子表面を特定粘度のシリコーンオイルでコーティングすることにより、粉末成分に高い疎水性を付与するものである。従来から、粉末成分とその結合剤としてシリコーンオイル等の油性成分とを混合することは知られていたが、粉末ないし油性成分に凝集が起きてしまうため、前記混合工程において油性成分を粉末成分に均一に被覆させることは難しかった。
【0010】
一方、本発明は、高い疎水性を有する特定粘度のシリコーンオイルと、アルキル・ポリエーテル共変性シリコーンオイルとを併せて配合することにより両シリコーンオイルの系における分散性を向上せしめ、該オイルが凝集することなく均一に粉末粒をコーティングするものである。すなわち、粉末成分と油性成分とを混合攪拌すると同時に粉末成分を疎水化処理し得る。さらに、前記変性シリコーンオイルの相溶性により、非極性のシリコーンオイルと極性油とを分離することなく配合することが可能となる。
このようにして得た疎水性粉末を適宜乾燥・成形することにより、使用性及び化粧もちに優れ、水使用の可能な粉末化粧料を得ることができる。
【0011】
以下、本発明をその製造方法に沿って詳細に説明する。
まず、粉末成分と揮発性溶媒の予備混合を行う。
粉末成分と揮発性溶媒の混合には、ディスパーミキサー、コンビミックス、ホモミキサー、プラネタリーミキサー等の通常化粧品の製造に使用される混合撹拌機を適用することができる。ミキサーの回転数、混合時間及び温度等は、従来の湿式製法に準じて適宜調整すればよい。
次に、前記予備混合により得た粉末成分の溶媒分散物へ油性成分を加え、引き続き混合撹拌を行う。
【0012】
前記原料の混合が成れば、媒体攪拌ミルを用いてさらに前記混合物の解砕/粉砕/分散を行う。媒体攪拌ミルとは、粉末成分(および油性成分)と溶媒からなる分散液をビーズ等の固体分散媒体(メディア)が充填された容器内に収容し、該容器内の液体を攪拌することでメディアによる衝撃力、摩擦力等により成分の解砕/粉砕/分散を行うものである。媒体攪拌ミルを用いた揮発性溶媒中での粉末と油分の解砕/粉砕/分散により、粉末成分と油性成分との混合・分散状態を高めることができ、さらに粉末成分表面に均一に油性成分を被覆させることができるため、使用感触のよい粉末化粧料を得ることができる。また、凝集性の強い粉末を容易に解砕し、揮発性溶媒中に均一に分散することもできる。
【0013】
媒体攪拌ミルの例としては、バスケットミルなどのバッチ式ビーズミル、横型・縦型・アニュラー型の連続式のビーズミル、サンドグラインダーミル、ボールミルなどが好適なものとして挙げられるが、本発明の目的に合致していれば特に制限無く使用することができる。つまり、凝集状態にある粉末成分を配合した場合、これら粉末成分の凝集を解いて一次粒子に近い状態まで攪拌、分散させ、油性成分を粉末表面に均一に付着させ得るものであれば特に制限なく使用することができる。
【0014】
媒体攪拌ミルに用いるメディアとしては、ビーズが望ましく、ガラス、アルミナ、ジルコニア、スチール、フリント石などを原材料としたビーズが使用可能であり、特に、ジルコニア製が好ましい。また、ビーズの大きさとしては、通常直径0.5〜10mm程度のものが好ましく用いられるが、本発明では直径2mm〜5mm前後のものが好ましく用いられる。ビーズ径の大きさが小さすぎると、雲母、タルクなどの体質顔料の解砕が過度に進行し、使用感触に悪影響を及ぼしたり、成型後の硬度が硬くなるため取れが悪くなったり、ケーキングなどを引きおこしやすくなる。一方、ビーズの大きさが大きすぎると粉末成分の凝集を十分に解くことができず、油性成分の均一な被覆が困難となる。
【0015】
前記媒体撹拌ミルによって、粉体成分及び油性成分が揮発性溶媒中で十分に解砕/粉砕/分散されてスラリーとなれば、該スラリーから溶媒を蒸留、揮発等の常法により除去した後、金属や樹脂製の中皿などの容器内に充填して粉末化粧料を得ることができる。
あるいは、上記スラリーから溶媒を除去し、金属や樹脂製の中皿などの容器内に充填した後、乾式プレス成型を行ってもよい。なお、乾式プレス成型は常法により行うことができる。さらに、スラリーから溶媒を除去した後、粉砕工程を設けてもよい。
あるいは、上記スラリーを金属や樹脂の中皿などの容器内に充填した後、吸引プレス成形を行ってもよい。
【0016】
次に、本発明の各構成成分について説明する。
粉末成分
本発明に用いることができる粉末成分としては、通常化粧品に適用可能な成分であれば特に限定されず、例えば、タルク、カオリン、絹雲母(セリサイト)、白雲母、金雲母、合成雲母、紅雲母、黒雲母、焼成タルク、焼成セリサイト、焼成白雲母、焼成金雲母、パーミキュライト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、マグネシウム、シリカ、ゼオライト、硫酸バリウム、焼成硫酸カルシウム(焼セッコウ)、リン酸カルシウム、弗素アパタイト、ヒドロキシアパタイト、セラミックパウダー、金属石鹸(例えば、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウムなど)、窒化ホウ素、フォトクロミック性酸化チタン(酸化鉄を焼結した二酸化チタン、)、還元亜鉛華;有機粉末(例えば、シリコーンエラストマー粉末、シリコーン粉末、シリコーンレジン被覆シリコーンエラストマー粉末、ポリアミド樹脂粉末(ナイロン粉末)、ポリエチレン粉末、ポリメタクリル酸メチル粉末、ポリスチレン粉末、スチレンとアクリル酸の共重合体樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、ポリ四弗化エチレン粉末、セルロース粉末等);無機白色顔料(例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛等);無機赤色系顔料(例えば、酸化鉄(ベンガラ)、チタン酸鉄等);無機褐色系顔料(例えば、γ−酸化鉄等);無機黄色系顔料(例えば、黄酸化鉄、黄土等);無機黒色系顔料(例えば、黒酸化鉄、低次酸化チタン等);無機紫色系顔料(例えば、マンゴバイオレット、コバルトバイオレット等);無機緑色系顔料(例えば、酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト等);無機青色系顔料(例えば、群青、紺青等);パール顔料(例えば、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔、雲母チタン、酸化鉄被覆雲母チタン、低次酸化チタン被覆雲母チタン、フォトクロミック性を有する雲母チタン、基板として雲母の代わりタルク、ガラス、合成フッ素金雲母、シリカ、オキシ塩化ビスマスなどを使用したもの、被覆物として酸化チタン以外に、低次性酸化チタン、着色酸化チタン、酸化鉄、アルミナ、シリカ、ジルコニア、酸化亜鉛、酸化コバルト、アルミなどを被覆したもの、機能性パール顔料として、パール顔料表面に樹脂粒子を被覆したもの(特開平11-92688)、パール顔料表面に水酸化アルミニウム粒子を被覆したもの(特開2002-146238)、パール顔料表面に酸化亜鉛粒子を被覆したもの(特開2003-261421)、パール顔料表面に硫酸バリウム粒子を被覆したもの(特開2003-61229)等);金属粉末顔料(例えば、アルミニウムパウダー、カッパーパウダー等);ジルコニウム、バリウム又はアルミニウムレーキ等の有機顔料(例えば、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色228号、赤色405号、橙色203号、橙色204号、黄色205号、黄色401号、及び青色404号などの有機顔料、赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色227号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、緑色3号及び青色1号等);天然色素(例えば、クロロフィル、β−カロチン等)等が挙げられ、単独で用いることも、適宜組み合わせて使用することもできる。
【0017】
本発明においては、粉末成分に合成雲母を含むことが好ましい。合成雲母は、従来、あらかじめ疎水化処理を施しても、該疎水化処理粉末と他原料の混合時に粉体表面へ修飾した疎水基が剥離しがちであった。また、このような疎水基の剥離は、既製の疎水化処理合成雲母粉末を用いた際にも頻繁に見られる。
この点において、本発明にかかる製造方法によれば、合成雲母を含む粉末成分の疎水化処理のためのコーティングオイルとして、特定のシリコーンオイル及びポリエーテル・アルキル共変性シリコーンを用いることにより、コーティングの剥離を防ぐことができる。また、上記のように本発明の製造方法は、粉末成分と油性成分を揮発性溶媒中で混合する(湿式混合)工程を含む。この工程により各成分は揮発性溶媒中に分散し、粉末表面へ均一に油性成分を被覆することができる。
【0018】
揮発性溶媒
本発明に適用しうる揮発性溶媒には特に制限はないが、精製水、環状シリコーン、エチルアルコール、軽質流動イソパラフィン、低級アルコール、エーテル類、LPG、フルオロカーボン、N−メチルピロリドン、フルオロアルコール、揮発性直鎖状シリコーン、次世代フロン等が挙げられる。本発明においては、回収性等の観点からメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類の使用が好ましく、特にエチルアルコールが好ましい。
揮発性溶媒の添加量は、一般的に粉体成分及び油性成分の混合物100重量部に対し20〜100重量部が好適である。
【0019】
なお、湿式製法による粉末化粧料の製造では、粉末成分と油性成分を溶媒中でスラリーとしたのち、前記溶媒を揮発乾燥させる工程を経るのが一般的である。このとき溶媒の添加量が多すぎると、乾燥固化の際に粉末が収縮してひび割れを起こすことがある。したがって、湿式製法による粉末化粧料製造時の溶媒添加量は極力少ないことが好ましいとされる。
また一方で、揮発性溶媒が少なすぎると粉体成分が油性成分に十分分散されず、色むらや凝集が起こりやすくなる。
この点において、本発明にかかる製造方法によれば、特定の油性成分の配合により粉体成分の分散性が著しく向上するため、揮発性溶媒の添加量を従来法よりも低減しうると考えられる。したがって、本発明の製造方法における揮発性溶媒の添加量は、粉体成分及び油性成分の混合物100重量部に対し40〜70重量部がより好適である。
【0020】
油性成分
本発明の油性成分は、次の(a)〜(c)成分を含む。
(a)25℃における粘度が100mPa・s以上である非極性シリコーンオイル
本発明において、油性成分として25℃における粘度が100mPa・s以上であり、且つ非極性であるシリコーンオイルを用いることができる。
シリコーンオイルの粘度が100mPa・s未満であると、粉末へ被覆処理したシリコーンオイルが他の油性成分に溶け出してしまい、撥水性が低下するため好ましくない。
このようなシリコーンオイルとしては、例えば、鎖状ポリシロキサン(例えば、メチルポリシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン等);環状ポリシロキサン(例えば、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等)等が挙げられる。
前記シリコーンオイルの配合量は、粉末化粧料に対し0.1〜10重量%が好適である。シリコーンオイルの添加量が10重量%を超えると系がべたついて扱いにくく、また、添加量が0.1重量%に満たないと、粉末成分を十分に被覆することができないことがあるため好ましくない。
【0021】
(b)ポリエーテル・アルキル共変性シリコーン
本発明において、ポリエーテル・アルキル共変性シリコーンとは、直鎖構造のポリエーテル変性シリコーンを基本として、シロキサン鎖が分岐した構造を有し、さらに、シロキサン主鎖に長鎖アルキル基を共変性したものを示す。具体的には、ラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、セチルPEG/PPG−10/1ジメチコン等が挙げられ、特に本発明においてはラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンの使用が好適である。
上記ポリエーテル・アルキル共変性シリコーンの配合量としては、粉末化粧料に対して0.1〜2重量%が好ましく、さらに好ましくは0.5〜0.9重量%である。配合量が0.1重量%に満たないと、ポリエーテル・アルキル共変性シリコーンが粉末成分へ十分に被覆されず、一方、2重量%を超えて配合しても粉末成分への被覆量は増加しないため、製造効率上好ましくない。
【0022】
(c)極性油
本発明に用いることができる極性油としては、粉末化粧料に配合し得るものであれば特に制限されるものではなく、例えば、天然又は合成エステル油、脂肪酸、高級アルコール等が挙げられる。
特に本発明においては、極性油を紫外線吸収剤として配合することが好ましい。紫外線吸収効果を有する極性油としては、具体的には、安息香酸系紫外線吸収剤(例えば、パラアミノ安息香酸(以下、PABAと略す)、PABAモノグリセリンエステル、N,N−ジプロポキシPABAエチルエステル、N,N−ジエトキシPABAエチルエステル、N,N−ジメチルPABAエチルエステル、N,N−ジメチルPABAブチルエステル、N,N−ジメチルPABAエチルエステル等);アントラニル酸系紫外線吸収剤(例えば、ホモメンチル−N−アセチルアントラニレート等);サリチル酸系紫外線吸収剤(例えば、アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、p−イソプロパノールフェニルサリシレート等);桂皮酸系紫外線吸収剤(例えば、オクチルメトキシシンナメート、エチル−4−イソプロピルシンナメート、メチル−2,5−ジイソプロピルシンナメート、エチル−2,4−ジイソプロピルシンナメート、メチル−2,4−ジイソプロピルシンナメート、プロピル−p−メトキシシンナメート、イソプロピル−p−メトキシシンナメート、イソアミル−p−メトキシシンナメート、オクチル−p−メトキシシンナメート(2−エチルヘキシル−p−メトキシシンナメート)、2−エトキシエチル−p−メトキシシンナメート、シクロヘキシル−p−メトキシシンナメート、エチル−α−シアノ−β−フェニルシンナメート、2−エチルヘキシル−α−シアノ−β−フェニルシンナメート、グリセリルモノ−2−エチルヘキサノイル-ジパラメトキシシンナメート等);ベンゾフェノン系紫外線吸収剤(例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4,4'−ジメトキシベンゾフェノン、2,2',4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−4'−メチルベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸塩、4−フェニルベンゾフェノン、2−エチルヘキシル−4'−フェニル−ベンゾフェノン−2−カルボキシレート、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシ−3−カルボキシベンゾフェノン等);3−(4'−メチルベンジリデン)−d,l−カンファー、3−ベンジリデン−d,l−カンファー;2−フェニル−5−メチルベンゾキサゾール;2,2'−ヒドロキシ−5−メチルフェニルベンゾトリアゾール;2−(2'−ヒドロキシ−5'−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール;2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニルベンゾトリアゾール;ジベンザラジン;ジアニソイルメタン;4−メトキシ−4'−t−ブチルジベンゾイルメタン;5−(3,3−ジメチル−2−ノルボルニリデン)−3−ペンタン−2−オン、ジモルホリノピリダジノ;2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート;2,4−ビス−{[4−(2−エチルヘキシルオキシ)−2−ヒドロキシ]−フェニル}−6−(4−メトキシフェニル)−(1,3,5)−トリアジン等が挙げられ、単独ないし数種を組み合わせて配合することができる。本発明においては、特にオクチルメトキシシンナメート及び/又は2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレートの使用が好ましい。
また、上記極性油の配合量としては、他の油分との相溶性等を考慮すれば、粉末化粧料全量に対して0.1〜5重量%が好ましい。
【0023】
本発明にかかる製造方法による粉末化粧料の形態としては、例えば、ファンデーション、白粉、口紅、アイシャドウ、チーク、ボディーパウダー、パフュームパウダー、ベビーパウダー、プレスドパウダーなどの粉末状もしくは固形状の粉末化粧料が挙げられるが、本発明の効果を損ねないものであれば制限はない。特にファンデーションとして、水使用が可能な両用ファンデーションを好適に製造することができる。
【0024】
また、本発明において、本発明の効果を損なわない範囲であれば、上記成分の他に通常化粧品に用いられる成分、例えば、粉末成分、液体油脂、固体油脂、ロウ、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル、シリコーン、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、保湿剤、水溶性高分子、増粘剤、皮膜剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、多価アルコール、糖、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、pH調整剤、皮膚栄養剤、ビタミン、酸化防止剤、酸化防止助剤、香料、水等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0025】
粉末成分としては、例えば、タルク、カオリン、絹雲母(セリサイト)、白雲母、金雲母、合成雲母、紅雲母、黒雲母、焼成タルク、焼成セリサイト、焼成白雲母、焼成金雲母、パーミキュライト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、マグネシウム、シリカ、ゼオライト、硫酸バリウム、焼成硫酸カルシウム(焼セッコウ)、リン酸カルシウム、弗素アパタイト、ヒドロキシアパタイト、セラミックパウダー、金属石鹸(例えば、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウムなど)、窒化ホウ素、フォトクロミック性酸化チタン(酸化鉄を焼結した二酸化チタン、)、還元亜鉛華;有機粉末(例えば、シリコーンエラストマー粉末、シリコーン粉末、シリコーンレジン被覆シリコーンエラストマー粉末、ポリアミド樹脂粉末(ナイロン粉末)、ポリエチレン粉末、ポリメタクリル酸メチル粉末、ポリスチレン粉末、スチレンとアクリル酸の共重合体樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、ポリ四弗化エチレン粉末、セルロース粉末等);無機白色顔料(例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛等);無機赤色系顔料(例えば、酸化鉄(ベンガラ)、チタン酸鉄等);無機褐色系顔料(例えば、γ−酸化鉄等);無機黄色系顔料(例えば、黄酸化鉄、黄土等);無機黒色系顔料(例えば、黒酸化鉄、低次酸化チタン等);無機紫色系顔料(例えば、マンゴバイオレット、コバルトバイオレット等);無機緑色系顔料(例えば、酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト等);無機青色系顔料(例えば、群青、紺青等);パール顔料(例えば、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔、雲母チタン、酸化鉄被覆雲母チタン、低次酸化チタン被覆雲母チタン、フォトクロミック性を有する雲母チタン、基板として雲母の代わりタルク、ガラス、合成フッ素金雲母、シリカ、オキシ塩化ビスマスなどを使用したもの、被覆物として酸化チタン以外に、低次性酸化チタン、着色酸化チタン、酸化鉄、アルミナ、シリカ、ジルコニア、酸化亜鉛、酸化コバルト、アルミなどを被覆したもの、機能性パール顔料として、パール顔料表面に樹脂粒子を被覆したもの(特開平11−92688)、パール顔料表面に水酸化アルミニウム粒子を被覆したもの(特開2002−146238)、パール顔料表面に酸化亜鉛粒子を被覆したもの(特開2003−261421)、パール顔料表面に硫酸バリウム粒子を被覆したもの(特開2003−61229)等);金属粉末顔料(例えば、アルミニウムパウダー、カッパーパウダー等);ジルコニウム、バリウム又はアルミニウムレーキ等の有機顔料(例えば、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色228号、赤色405号、橙色203号、橙色204号、黄色205号、黄色401号、及び青色404号などの有機顔料、赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色227号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、緑色3号及び青色1号等);天然色素(例えば、クロロフィル、β−カロチン等)等が挙げられる。
前述の必須配合成分と、上記任意成分の一種または二種以上とを配合して本発明の粉末化粧料を調製することができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明の技術範囲はこれら実施例により何ら限定されるものではない。なお、配合量は特に指定のない限り、重量%で示す。
【実施例1】
【0026】
<油性成分の種類1>
本発明にかかる製造方法において、粉末成分の疎水化に好適なシリコーンオイルを検討するために、下記の表1に示す配合で粉末化粧料を作成し、疎水性の評価を行った。結果を図1に示す。
【0027】
粉末化粧料の調製
合成雲母95重量%、及びアウトパーツとして99%エチルアルコール50重量%をジルコニアビーズと共に分散機(ディスパーミキサー)を用いて30分間混合攪拌した。さらに、前記分散液へ油性成分5重量%を添加し、30分間混合攪拌を行った。完成したスラリーを50℃以上にて乾燥させた後、粉砕機(エミーデ)を用いて試料の粉砕を行い、各試験例の粉末化粧料を得た。なお、油性成分の粘度は25℃下におけるものである。
疎水性の評価
各試料の疎水性の評価は、各試料粉末の水に対する接触角による。接触角が大きいほど撥水性(疎水性)が高いことを示す。
【0028】
(表1)

【0029】
図1に示すとおり、試験例1−1及び1−2の油性成分を用いて製造した粉末化粧料には高い撥水性が認められた。一方、低粘度のシリコーンオイル(試験例1−3)や極性を有するシリコーンオイル(試験例1−4)を用いた粉末化粧料は、水接触角を示さなかった。また、シリコーンオイル以外の油性成分においては、非極性油(試験例1−5)又は極性油(試験例1−6)に係わらず、粉末化粧料に撥水性は認められなかった。
以上より、本願にかかる粉末化粧料の製造方法において、粉末成分の疎水化処理に適した油性成分として、粘度が100mPa・s以上であり、且つ非極性のシリコーンオイルが好適であることが認められた。
【実施例2】
【0030】
<油性成分の種類2>
本発明にかかる製造方法において、油性成分全体に分散、相溶性を付与する油性成分を検討した。下記表2に示す配合で粉末化粧料を製造し、油性成分の相溶性、化粧料の使用性、及びシリコーンオイルの凝集性の評価を下記の通り行った。結果を表2に示す。
粉末化粧料の製造
下記表2に示す配合量にて試験例2−1〜2−5の各粉末化粧料を製造した。まず、表2の粉体成分及び油性成分100重量部に対して、アウトパーツとして50重量部となる量のエチルアルコールと粉末成分とをディスパーミキサーを用いて30分間混合した。続いて、油性成分を前記混合物へ添加し、30分間混合攪拌を行った。さらに混合物は、直径3mmのジルコニアビーズを充填した媒体撹拌ミル(サイドグラインダーミル)を用いて30分間解砕してスラリーとした。完成したスラリーを50℃以上にて乾燥させた後、ヘンシェルミキサーにて解砕して、さらにパルペライザーで粉砕後、プレス成型を施し固形状の粉末化粧料を得た。
【0031】
相溶性評価
上記で得た各試験例の粉末化粧料について、油性成分中のシリコーンオイル及び極性油の相溶性を評価した。両者が分離することなく乳化分散している状態を「白濁」とし、乳化せずに分離し層を成している状態を「分離」とした。前記評価試験は、室温および70℃下でそれぞれ行った。
【0032】
官能特性評価
上記で得た各試験例の粉末化粧料について、専門パネラー20名を用いて以下の官能特性評価項目に関して評価をした。
評価基準
【0033】
(なめらかさ)
◎:20名中、17名以上がなめらかであると回答
○:20名中、12〜16名がなめらかであると回答
△:20名中、9〜11名がなめらかであると回答
×:20名中、5〜8名がなめらかであると回答
××:20名中、4名以下がなめらかであると回答
【0034】
(肌へのつき)
◎:20名中、17名以上が肌へのつきがよいと回答
○:20名中、12〜16名が肌へのつきがよいと回答
△:20名中、9〜11名が肌へのつきがよいと回答
×:20名中、5〜8名が肌へのつきがよいと回答
××:20名中、4名以下が肌へのつきがよいと回答
【0035】
(のび)
◎:20名中、17名以上がのびがよいと回答
○:20名中、12〜16名がのびがよいと回答
△:20名中、9〜11名がのびがよいと回答
×:20名中、5〜8名がのびがよいと回答
××:20名中、4名以下がのびがよいと回答
【0036】
(やわらかさ)
◎:20名中、17名以上がやわらかいと回答
○:20名中、12〜16名がやわらかいと回答
△:20名中、9〜11名がやわらかいと回答
×:20名中、5〜8名がやわらかいと回答
××:20名中、4名以下がやわらかいと回答
【0037】
(肌へのフィット感)
◎:20名中、17名以上が肌へのフィット感があると回答
○:20名中、12〜16名が肌へのフィット感があると回答
△:20名中、9〜11名が肌へのフィット感があると回答
×:20名中、5〜8名が肌へのフィット感があると回答
××:20名中、4名以下が肌へのフィット感があると回答
【0038】
(粉っぽさ)
◎:20名中、4名以下が粉っぽいと回答
○:20名中、5〜8名が粉っぽいと回答
△:20名中、9〜11名が粉っぽいと回答
×:20名中、12〜16名が粉っぽいと回答
××:20名中、17名以上が粉っぽいと回答
【0039】
凝集性評価
各試験例の粉末化粧料におけるシリコーンオイル(ジメチルポリシロキサン)の凝集(オイルブツ)の発生を目視にて観察した。
◎:オイルブツが認められない
○:オイルブツがほとんど認められない
△:少量のオイルブツが認められる
×:著しくオイルブツが認められる
【0040】
(表2)

【0041】
表2によれば、脂肪酸エステルからなる非イオン界面活性剤を配合した試験例2−1の粉末化粧料は、使用性に劣り、且つ油性成分の分離も見られた。また、オイルには著しく凝集が認められた。
ポリエーテル変性シリコーンを配合した試験例2−2及び試験例2−3においては、使用性、凝集性が前者よりやや向上し、油性成分の混合も可能になったが、オイルブツは依然認められた。
一方、ポリエーテル・アルキル共変性シリコーンを配合した2−4及び2−5の粉末化粧料においては、使用性が著しく向上し、オイルブツも認められなくなった。
以上より、本発明にかかる製造方法において、極性油と、非極性シリコーンオイルとを分離することなく乳化させる界面活性剤として、ポリエーテル・アルキル共変性シリコーンオイルを配合することが好適であると認められた。また、特にラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンの使用が好ましい。
【実施例3】
【0042】
<ポリエーテル・アルキル共変性シリコーンオイルの配合量>
本発明にかかる製造方法において、好適なポリエーテル・アルキル共変性シリコーンオイルの配合量を検討するために、次の試験を行った。
タルク40重量%、ラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン0.1〜1.25重量%、及びエチルアルコールを加えて100重量%とし、直径1mmのガラスビーズを50体積%充填した分散機(ペイントシェイカー)により5分間攪拌混合し、続いて、ラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンを加えて30分間混合攪拌を行った。出来上がったスラリーは15000rpmで1時間遠心分離して固液を分離した。フィルターにて濾過した3gの上澄み液を120℃にて3時間乾燥し、エチルアルコールを揮散させた。残存したラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンの量から、粉末を被覆した該シリコーンオイルの量を算出した。ラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンの配合濃度と粉末への被覆量の関係を図2に示す。
【0043】
図2によれば、ラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンは、およそ0.1重量%の配合で既に粉末への被覆が見られた。そして、配合量0.9重量%で粉末の被覆は平衡に達し、ラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンをそれ以上配合しても粉末成分への吸着は増えなかった。
したがって、上記結果と本発明に適用する粉末成分の種類や形態とを考慮すれば、本発明におけるポリエーテル・アルキル共変性シリコーンオイルの配合量は、粉末化粧料に対して0.1〜2.0重量%が好ましく、より好ましくは0.5〜0.9重量%である。
【実施例4】
【0044】
<製造方法による疎水性>
表2に示す試験例2−5の処方を用いて、下記の製造方法による粉末化粧料の疎水性を検討した。各試料の疎水性は水に対する接触角を測定することによって評価した。結果を図3に示す。
【0045】
試験例4−1
上記表2に示した試験例2−5の粉末成分及び油性成分100重量部に対し、アウトパーツとして50重量部のエチルアルコールと粉末成分とをディスパーミキサーを用いて5分間分散混合した。続いて油性成分を前記混合物へ添加し、30分間混合攪拌を行った。さらに混合物は、直径2mmのジルコニアビーズを充填した媒体撹拌ミル(サイドグラインダーミル)を用いて30分間解砕して、スラリーとした。このスラリーを50℃以上にて乾燥させたあと、パルペライザーにて粉砕して、乾燥粉末状の試料を得た。
【0046】
試験例4−2
上記試験例4−1と同様の製法で得たスラリーを、フラッシュドライヤー(スピンフラッシュドライヤー;AVP Nordic Anhyro社製)を用いて揮発性成分を揮発させ、乾燥粉末状の試料を得た。
【0047】
試験例4−3
上記表2に示した試験例2−5の粉体成分及び油性成分をヘンシェルミキサーを用いて乾式混合を行い、パルペライザーにより解砕して乾燥粉末状の試料を得た。
【0048】
図3に示すとおり、湿式製法による試験例4−1及び4−2の粉末化粧料の撥水性は、乾式製法による試験例4−3に比して著しく優れたものであった。
以上の結果から、本発明にかかる粉末化粧料の製造方法において、粉末成分と油性成分の混合を湿式にて行うことにより、粉末成分の疎水化が著しく向上すると認められた。また、湿式製法により粉末化粧料中の粉末成分は均一に疎水化処理がなされ、その優れた疎水性は乾燥工程を経ても維持されていることが示唆される。
【実施例5】
【0049】
<粉末成分の種類>
本発明に適用しうる粉末成分を検討するため、粉末成分としてタルク又は合成雲母を用い、下記の各油性成分について粉末の疎水化を試験した。各試料の疎水性は、実施例1と同様に粉末の接触角の測定により評価した。各試験例の処方及び疎水性評価を表3に示す。
【0050】
粉末化粧料の製造
粉末成分及び油性成分100重量部に対し、アウトパーツとして50重量部のエチルアルコールと粉末成分とをディスパーミキサーを用いて5分間混合した。続いて油性成分を前記混合物へ添加し、30分間混合攪拌を行った。さらに混合物は、直径2mmのジルコニアビーズを充填した媒体撹拌ミル(サイドグラインダーミル)を用いて30分間解砕し、スラリーとした。続いて、このスラリーを50℃以上にて乾燥させ、乾燥固化した試料をヘンシェルミキサーで解砕し、さらにパルペライザーで粉砕後、プレス成型を施し固形状の粉末化粧料を得た。
【0051】
(表3)

【0052】
表3より、タルクは全ての油性成分よって疎水化処理が可能であったが、合成雲母は粘度が100mPa・s以上の非極性シリコーンオイル以外では十分な疎水化処理を施すことができなかった。このことから、本発明の製造方法において、粉末を疎水化処理する油性成分として粘度が100mPa・s以上の非極性シリコーンオイルを用いることにより、従来粉末化粧料の製造工程での疎水化が困難であった合成雲母に対し、好適に疎水化処理を施すことができることが認められた。
【実施例6】
【0053】
<揮発性溶媒の添加量>
本発明にかかる粉末化粧料の製造方法における、揮発性溶媒の必要添加量を検討した。粉末化粧料は下記表4の処方とし、実施例2に記載の製造方法に準じて製造した。ただし、揮発性溶媒(エチルアルコール)の添加量は各試験例ごとに40、50、70、100重量部(粉体成分及び油性成分を100重量部とする)とした。粉末化粧料の評価は、下記に示すように試料を肌への塗布した際の色むらの有無による。結果を表5に示す。
【0054】
粉末化粧料の評価
○:塗布時に色むらが見られない
△:塗布時にやや色むらが見られる
×:塗布時に著しく色むらが見られる
【0055】
(表4)

【0056】
(表5)
エチルアルコール添加量(重量部)
40 50 70 100
試験例6−1 × × × ×
試験例6−2 × × × △
試験例6−3 × × × △
試験例6−4 ○ ○ ○ ○
試験例6−5 ○ ○ ○ ○
【0057】
表5に示すように、親油性界面活性剤(試験例6−1)ないしポリエーテル・アルキル共変性シリコーン以外の変性シリコーン(試験例6−2、6−3)を配合した例では、エチルアルコールの添加量が100重量部より少なくすると、粉末化粧料の塗布時に色むらが生じた。しかしながら、ポリエーテル・アルキル共変性シリコーンを配合した試験例6−4及び試験例6−5の粉末化粧料においては、エチルアルコール添加量が40〜70重量部であっても色むらを生じなかった。
粉末化粧料の色むらの発生は、粉末成分及び油性成分が溶媒中に十分に分散せずに凝集を起こし、粉末成分が油性成分に均一に被覆されていないことを示す。
【0058】
したがって、本発明にかかる粉末化粧料の製造方法においては、ポリエーテル・アルキル共変性シリコーンを用いることにより、油性成分の分散性が著しく向上し、より少量の揮発性溶媒の使用で均一なスラリー化が可能になると認められる。すなわち、本発明の製造方法によれば、揮発性溶媒の添加量が低減され、生産コストの大幅な削減が期待できる。 本発明における揮発性溶媒の添加量は、粉末及び油性成分100重量部に対し、40〜70重量部が好適である。
【実施例7】
【0059】
<処方例>
以下に本発明にかかる処方例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、下記の処方中の量は重量%で示している。
両用ファンデーション
(処方) (重量%)
(粉末成分)
タルク 残余
合成雲母 12.0
シリコーン処理セリサイト 10.0
板状硫酸バリウム 5.0
ラウロイルリジン被覆合成金雲母 3.0
低温焼成酸化亜鉛 7.5
酸化チタン 5.0
(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー 0.5
(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)
クロスポリマー 2.0
オクチルトリエトキシシラン処理酸化チタン 10.0
オクチルメトキシシンナメート処理酸化鉄 3.5
クロルフェネシン 0.2
塩酸L−リジン 0.01
(油性成分)
ジメチルポリシロキサン(5000mPa・s) 2.0
ジメチルポリシロキサン(100mPa・s) 3.0
オクチルメトキシシンナメート 2.6
2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート 1.0
ポリエーテル・アルキル変性シリコーン 0.6
(ラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン)
オクトキシグリセリン 0.01
イーミックスD(トコフェロール) 適量
【0060】
(製法)
粉末成分と油性成分とを混合し、さらに前記混合物に対して99%未変性合成級アルコールを加え、分散混練機(コンビミックス)を用いて予備混合した。続いて混合物を直径2mmのジルコニアビーズを充填した媒体ミルを用いて、解砕/粉砕/分散してスラリーとした。次いで、該スラリーをバットに入れ、50℃以上にて乾燥させたあと、乾燥固化した粉末をパルペライザーにて粉砕後、プレス成型を施し固形状の粉末化粧料を得た。
上記より得た両用ファンデーションは、使用性及び化粧もちに優れ、水使用が可能なものであった。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明にかかる製造方法における油性成分の撥水性を示すグラフである。
【図2】本発明にかかる製造方法におけるポリエーテル・アルキル共変性シリコーンの粉体成分への被覆量を示すグラフである。
【図3】本発明にかかる製造方法における、製造方法による撥水性の変化を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末成分と揮発性溶媒とを予備混合した後、前記混合物と油性成分とを混合撹拌し、続いて媒体撹拌ミルを用いて前記混合物を分散粉砕してスラリーとする工程を備え、
且つ、前記油性成分が、
(a)25℃における粘度が100mPa・s以上である非極性シリコーンオイルと、
(b)ポリエーテル・アルキル共変性シリコーンと、
(c)極性油と、
を含むことを特徴とする粉末化粧料の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の製造方法において、前記極性油がオクチルメトキシシンナメート及び/又は2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレートを含むことを特徴とする粉末化粧料の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の製造方法において、前記粉末成分が合成雲母を含むことを特徴とする粉末化粧料の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3に記載の製造方法において、前記揮発性溶媒がエチルアルコールであり、その添加量が粉体成分及び油性成分の混合物100重量部に対し40〜70重量部であることを特徴とする粉末化粧料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−214267(P2008−214267A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−53935(P2007−53935)
【出願日】平成19年3月5日(2007.3.5)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】