説明

粉末洗剤用包装容器

【課題】 古紙として再利用可能な(水離解性を有する)防湿紙を用いた粉末洗剤箱において、防湿性に優れ、かつ耐界面活性剤性の優れた粉末洗剤用包装容器を提供する。
【解決手段】防湿層を有する紙支持体から構成された包装容器であり、吸油性粒子と水溶性樹脂からなる耐界面活性剤層を防湿層より内側に形成した粉末洗剤用包装容器、耐界面活性剤層の水溶性樹脂固形分100質量部に対し、吸油性粒子が10〜150質量部含有された前項記載の粉末洗剤用包装容器、吸油性粒子が耐界面活性剤層表面に存在する前項記載の粉末洗剤用包装容器、防湿層が平板状顔料と合成樹脂から形成されている前項記載の粉末洗剤用包装容器、

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、古紙として再利用可能な(水離解性を有する)防湿紙を用いた包装容器に関するものであり、更に詳述すれば、防湿性、包装適性、耐界面活性剤性に優れ、衣料用洗剤や食器用洗剤などの吸湿性の粉体を収容する粉末洗剤用包装容器を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、衣料用洗剤、食器用洗剤、風呂用洗剤のような吸湿性の粉体(粉末)の容器には、紙支持体と防湿層含む防湿積層体(防湿板紙、防湿カートン)が使用されている。このような吸湿性粉体は吸湿によって製品価値を著しく低下させるために防湿性の容器が必要である。防湿性が不十分だと、粉末状洗剤が吸湿により固結(ケーキング=粉末の凝集現象)し、その商品価値が失われてしまう。
そこで従来よりこのような容器用の積層体として、紙支持体/高分子層(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデンなどの防湿性高分子層)/紙支持体で構成された防湿積層体が使用されてきた。このような防湿積層体は紙支持体に高分子化合物を熔融ラミネートして積層、あるいは、高分子フィルムを接着剤で紙支持体と貼合(ドライラミネート)されたものである(以下ポリラミ積層体と称する)。
【0003】
しかしながら、これらポリラミ積層体あるいは防湿包装容器は、使用後に古紙として再使用するため回収しても水に十分に離解せず、古紙として再使用できないので問題となっている。また、使用済みポリラミ積層体あるいは防湿包装容器は廃棄するにしても、処分としては焼却や埋め立てによるしかないため環境汚染となる懸念があり、多くの問題を抱えているのが現状である。即ち、従来の防湿積層体あるいは防湿包装容器にはいずれにも問題点があり、これらに代わる防湿積層体あるいは防湿包装容器の開発が急がれている。
【0004】
そこで、本発明者等は、紙支持体上に平板状顔料と合成樹脂ラテックスとからなる塗料を塗工して防湿層を形成した防湿積層体を提案した(特許文献1参照)。この発明においては、それ自体は水蒸気を通さないと思われる顔料、例えば白雲母のような平板状顔料を合成樹脂ラテックスなどの重合体と混合して防湿層を形成させるものである。その防湿メカニズムは、平面的には水蒸気の透過面積が小さくなること、また厚み方向では平板状顔料が防湿層表面に対して平行に配列して積層するため、防湿層中の水蒸気はこの平板状顔料を迂回しながら透過することから(曲路効果)、水蒸気の透過距離が長くなり、結果として大幅に防湿性能が向上するものである。
【0005】
なお、本発明者等は、平板状顔料と合成樹脂ラテックスからなる塗料を塗工して防湿層を形成した防湿積層体の改良技術を特許文献2、特許文献3で提案している。また、マイクロフルートカートンに上記防湿層を形成した箱を提案している(特許文献4)。
【0006】
しかしながら、粉末状洗剤には、界面活性剤が含まれており、そのため上記特許文献1の防湿紙は粉末洗剤用の容器としては使用できないといった問題点がある。即ち、界面活性剤が防湿層に浸透すると防湿性が低下するという問題がある。
特に防湿層と洗剤が接触した状態では洗剤の成分(主として界面活性剤)が浸透して短時間で防湿性を悪化させる傾向がある。
【0007】
その他、界面活性剤が防湿包装容器に浸透して、容器内側の表面が黒ずんだり、浸透が激しい場合は容器表面にまで達して外観を損ねるといった問題もある。また、界面活性剤が容器に浸透するため洗剤に含まれる界面活性剤の量が減少し、洗剤の洗浄性が低下するという問題点もある。
【0008】
界面活性剤とは別の問題として、罫線を付けて紙を折り曲げて箱を形成するが、その折り曲げ部分の防湿性が低下するという問題が一般的に存在し、上記特許文献1に記載した平板状顔料を含有する防湿紙においても同様な問題が存在する。
【0009】
【特許文献1】特開平9−21096号公報
【特許文献2】特開平9−268494号公報
【特許文献3】特開平10−249978号公報
【特許文献4】特開2001−219930号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、古紙として再利用可能な(水離解性を有する)防湿紙を用いた粉末洗剤箱において、防湿性に優れ、かつ耐界面活性剤性の優れた粉末洗剤用包装容器を提供することを課題とする。また、更には、罫線掛けし折り曲げた場合にも防湿性が低下しない粉末洗剤用包装容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記課題を解決するために以下の方法をとる。
本発明の第1は、防湿層を有する紙支持体から構成された包装容器であり、吸油性粒子と水溶性樹脂からなる耐界面活性剤層を防湿層より内側に形成したこと粉末洗剤用包装容器である。
【0012】
本発明の第2は、耐界面活性剤層の水溶性樹脂固形分100質量部に対し、吸油性粒子が10〜150質量部含有された本発明の第1に記載の粉末洗剤用包装容器である。
【0013】
本発明の第3は、吸油性粒子が耐界面活性剤層表面に存在する本発明の第1〜2のいずれかに記載の粉末洗剤用包装容器である。
【0014】
本発明の第4は、防湿層が平板状顔料と合成樹脂から形成されている本発明の第1〜3のいずれかに記載の粉末洗剤用包装容器である。
【0015】
本発明の第5は、水溶性樹脂が、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アミロース、アミロペクチン、プルラン、カードラン、ザンタン、キチン、キトサン、セルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリベンゼンスルホン酸、ポリベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、アンモニウム塩ポリビニルチオール、ポリグリセリンの群から選ばれる1または2以上である本発明の第1〜4のいずれかに記載の粉末洗剤用包装容器である。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、再離解可能であり、防湿性に優れ、かつ、耐界面活性剤性の優れた粉末洗剤用包装容器の提供が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明者等は、合成樹脂と平板状顔料からなる防湿層によって防湿性を発揮する防湿積層体に、耐罫線割れおよび耐界面活性剤性を付与することを検討した。
紙製紙器(容器)を製造する場合、特定の3次元の形に成形しやすいように、防湿積層体を特定の形状に打抜き、罫線を入れるのが通常である(この打抜きおよび罫線を入れた紙をブランクあるいはカートンと呼ぶ)。罫線はその部分を基点として箱を折りたたむために入れるものであり、防湿積層体の厚さや箱の大きさ、あるいは形状により、形や罫線の幅、罫線の高さ(非罫線部分を基準とした罫線頂点の高さ)を適宜決める。一般に罫線の高さは50μm〜500μmである。このような罫線を入れると防湿積層体の防湿層が破壊されやすく防湿性が低下する場合がある。
本発明者等が検討したところ、罫線を入れるオス型あるいはメス型の型に防湿層表面が直接接すると防湿性が悪くなることが判明した。そのため、更に検討を行ったところ、紙支持体/防湿層/紙支持体のように両表面とも紙支持体とするか、あるいは紙支持体/防湿層/保護層のように防湿層表面に何らかの保護層を設けることにより罫線による防湿性の低下が抑えられることを見出した。
【0018】
また、界面活性剤を多量に含む洗剤のような粉体を防湿積層体で包装すると、洗剤の成分(主として界面活性剤)が支持体や防湿層に浸透して、外観不良になったり防湿性が悪化するといった問題点があることが判明した。
【0019】
本発明者等が鋭意検討したところ、吸油性粒子を含むある特定の水溶性樹脂層を設けると界面活性剤の浸透を防ぐことを見出した。通常、界面活性剤は親油性と親水性の両方の性質を兼ね備えている。洗剤として使用される場合、界面活性剤が繊維間や繊維と汚れの間に浸透することで汚れを落としている。そのため、界面活性剤は浸透性が高く、多くの物質中に溶解、拡散する方が好ましい。界面活性剤の親水/疎水性の割合を示す一つの指標にHLB(Hydrophile-Lipophile Balance)がある。ノニオン型(非イオン性)界面活性剤のHLBは親水基の分子量を界面活性剤の分子量で除した値に20を掛けた値である(グリフィンのHLB)。ノルマルパラフィン(直鎖状パラフィン)はHLB=0であり、ポリエチレングリコールはHLB=20であり、ノニオン系界面活性剤は一般にHLB値が0〜20の間にある。また、アニオン型やカチオン型の界面活性剤のHLBは油の乳化実験で決めることができる(分散系レオロジーと分散化技術 梶内・薄井 1991年 大学図書)。
通常、洗剤に使用される界面活性剤は数種類の界面活性剤を組合わせる。本発明者等が検討したところ、HLBが12未満のノニオン型界面活性剤が合成樹脂と平板状顔料の防湿層に浸透し、防湿性が大幅に悪化することを見出した。特に罫線部分への浸透が激しく、防湿性の悪化が著しい。
【0020】
そこで耐界面活性剤層の検討を行った。初めにパラフィンワックスやシリコーン樹脂、アクリルスチレン樹脂などの疎水性樹脂の耐界面活性剤性を検討したがいずれも不十分なことが分かった。
【0021】
しかし、本発明者は、特定の水溶性樹脂、特に水への溶解性が高く水素結合性の親水基を有する水溶性樹脂と吸油性粒子の両方を含む耐界面活性剤層は、耐界面活性剤性が高いことを見出した。
この理由は、水溶性樹脂表面の親水基と界面活性剤の親水性成分が化学的結合(水素結合と推定される)を形成し、界面活性剤が空気層に疎水基を突き出した構造を形成すると考えられる。空気層に疎水基を突き出した構造は空気が疎水性のため非常に安定で熱力学的にも安定であるためと推定される。
【0022】
本発明者は、上記水溶性樹脂に、更に粒子形態の吸油性粒子を加えて耐界面活性剤層を形成させたものは、劇的に耐界面活性剤性を向上することを見出した。
吸油性粒子を耐界面活性剤層に添加することで劇的に耐界面活性剤性を向上できる理由として、吸油性粒子は選択的に界面活性剤を内部に取り込み、界面活性剤の浸透を妨げることと、粒子形態で耐界面活性剤層に存在するため、粉末洗剤との接触面積が少なくなり、界面活性剤の浸透を妨げることができるためと考えられる。
従って、上記吸油性粒子は、耐界面活性剤層表面に存在させること、さらには表面から突出して存在させることが更に望ましい。
【0023】
本発明における吸油性粒子とは、JIS K 5101で測定した吸油量が10ml/100g以上であるものとする。吸油量が10ml/100g未満のものは、吸油性が不十分であり、耐界面活性剤性を向上させる効果を得ることができない。
吸油性粒子は、上記条件を満たすものであれば、種類について特に制限はないが、例えば、澱粉、シリカ、ゼオライト、炭酸カルシウム、ホワイトカーボン(含水半晶性ケイ酸)、珪藻土などが好適に使用可能である。特に好適には、澱粉粒子が使用できる。澱粉粒子の場合、澱粉粒子形状のまま水溶性樹脂中に分散された状態で塗工するものとする。
【0024】
また、吸油性粒子の平均粒子径は、光散乱理論を応用したレーザー回折による粒度分布測定装置において測定した値で、1.0〜100μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは2.0〜50μm、更に好ましくは5.0〜20μmである。平均粒子径が1.0μm未満であると吸油性粒子を均一な粒子径に分級することが困難となりコストアップになるばかりでなく、粉末洗剤との接触面積を少なくする効果が小さくなるため適さない。平均粒子径が100μmを越えて大きくなると、耐界面活性剤層から欠落しやすくなり耐界面活性剤性が悪化するため適さない。
【0025】
本発明で使用できる水溶性樹脂は、樹脂単位質量当りの水素結合性基又はイオン性基の質量百分率が20〜60%の割合を満足する高水素結合性樹脂であることが好ましい。更に好ましい例としては、高水素結合性樹脂の樹脂単位質量当りの水素結合性基又はイオン性基の質量百分率が30〜50%の割合を満足するものが挙げられる。
【0026】
高水素結合性樹脂の水素結合性基としては水酸基、アミノ基、チオール基、カルボキシル基、スルホン酸基、燐酸基などが挙げられ、イオン性基としてはカルボキシレート基、スルホン酸イオン基、燐酸イオン基、アンモニウム基、ホスホニウム基などが挙げられる。高水素結合性樹脂の水素結合性基又はイオン性基のうち、更に好ましいものとしては、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、スルホン酸基、カルボキシレート基、スルホン酸イオン基、アンモニウム基、などが挙げられる。
【0027】
具体例としては、例えば、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アミロース、アミロペクチン、プルラン、カードラン、ザンタン、キチン、キトサン、セルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリベンゼンスルホン酸、ポリベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、アンモニウム塩ポリビニルチオール、ポリグリセリンなどが挙げられる。
この中でも特に好ましくは、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アミロースが挙げられる。
【0028】
ポリビニルアルコールとは、ビニルアルコールのモノマー単位を主成分として有するポリマーである。このような「ポリビニルアルコール」としては、例えば、酢酸ビニル重合体の酢酸エステル部分を加水分解ないしエステル交換(けん化)して得られるポリマー(正確にはビニルアルコールと酢酸ビニルの共重合体となったもの)や、トリフルオロ酢酸ビニル重合体、ギ酸ビニル重合体、ピバリン酸ビニル重合体、t−ブチルビニルエーテル重合体、トリメチルシリルビニルエーテル重合体等をけん化して得られるポリマーが挙げられる(「ポリビニルアルコール」の詳細については、例えば、ポバール会編、「PVAの世界」、1992年、(株)高分子刊行会;長野ら、ポバール、1981年、(株)高分子刊行会を参照することができる)。
ポリビニルアルコールにおける「けん化」の程度はモル百分率で70%以上が好ましく、85%以上のものが更に好ましく、98%以上のいわゆる完全けん化品が更に好ましい。また、重合度は100以上5000以下が好ましい(更には、200以上3000以下が好ましい)。
また、ポリビニルアルコールはシラノール基(−Si(OH))、アミノ基、カルボン酸などの官能基で変性されていてもかまわない。
ここでいう多糖類とは、種々の単糖類の縮重合によって生体系で合成される生体高分子であり、ここではそれらをもとに化学修飾したものも含まれる。例えば、セルロース及びヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体、アミロース、アミロペクチン、プルラン、カードラン、ザンタン、キチン、キトサンなどを挙げることができる。
【0029】
また、水溶性樹脂のうち多糖類としては澱粉が使用できる。澱粉は水と共に加熱溶融することで澱粉溶液とすることができることは公知であり、この澱粉溶液は本発明においての水溶性樹脂として好適に使用することができる。また、加熱溶融しない紛体澱粉は、本発明においての吸油性粒子として好適に使用することができる。
上記澱粉の原料としては、地下澱粉として馬鈴薯、甘薯、タピオカ等があり、地上澱粉として米、麦、トウモロコシ等がある。これらの澱粉をそのまま糊化して使用してもかまわないが、酵素変性や熱化学変性、酢酸エステル化変性、リン酸エステル化変性、カルボキシエーテル化変性、ヒドロキシエーテル化変性、カチオン化変性等の変性を、一種類あるいは二種類以上組合わせて品質改良した澱粉を使用することが、粘度や塗工適性の面で好ましい。トウモロコシ澱粉を酵素変性や酸変性したものが好適に使用される。
【0030】
本発明で用いられる水溶性樹脂が、高水素結合性樹脂である時には、その耐水性を改良する目的で水素結合性基用架橋剤を用いることができる。
水素結合性基用架橋剤としては特に限定されないが、例えば、チタン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、メラミン系カップリング剤、エポキシ系カップリング剤、イソシアネート系カップリング剤、銅化合物、ジルコニウム化合物、ホウ素化合物、コロイダルシリカなどが挙げられ、より好ましくは、ジルコニウム化合物、ホウ素化合物が挙げられる。
ジルコニウム化合物の具体例としては、例えば、オキシ塩化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、4塩化ジルコニウム、臭化ジルコニウム等のハロゲン化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、塩基性硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウムなどの鉱酸のジルコニウム塩、蟻酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、プロピオン酸ジルコニウム、カプリル酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウムなどの有機酸のジルコニウム塩、炭酸ジルコニウムアンモニウム、硫酸ジルコニウムナトリウム、酢酸ジルコニウムアンモニウム、蓚酸ジルコニウムナトリウム、クエン酸ジルコニウムナトリウム、クエン酸ジルコニウムアンモニウムなどのジルコニウム錯塩などが挙げられる。
【0031】
また、洗剤に含まれるアルカリ成分に対するバリアー性を向上するために、疎水性樹脂を耐界面活性剤層中に添加することが可能である。
更に、耐界面活性剤層に、消泡剤、濡れ剤、染料、色合い調整剤、増粘剤を必要に応じて添加することが可能である。
【0032】
耐界面活性剤層のの塗工量は0.05〜10g/mが好ましく、より好ましくは0.1〜5g/m、更に好ましくは0.2〜3g/mである。塗工量が0.05g/m未満だと耐界面活性剤性の効果がなく、10g/mを越えると効果が頭打ちとなるばかりでなく、製函適性(得られた防湿積層体同士を接着剤などで貼合する際の接着性)が悪化するため好ましくない。
【0033】
なお、本発明における耐界面活性剤層としては、水溶性樹脂としてポリビニルアルコール、澱粉溶液、エチレンービニルアルコール共重合体、吸油性粒子として澱粉、シリカ、ゼオライトを使用する組み合せが好ましい。
これらの組み合せにより、耐界面活性剤層の耐油性を著しく向上させることが可能である。
【0034】
次に、本発明の防湿層について説明する。
本発明において使用される防湿層は、特に限定されるものではないが、例えば平板状顔料と合成樹脂からなる防湿層、スチレン/アクリル酸エステル共重合物とマレイン酸変性樹脂、パラフィンワックス、テキサノールを特定の割合で混合した防湿層やアタクチックポリプロピレン及び/またはアモルファスポリアルファオレフィンからなる防湿層等が存在する。特に離解性を有し、離解後、古紙として再生された紙が滑りにくい防湿層が好ましく用いられる。
本発明においては、この中でも平板状顔料と合成樹脂から形成されている防湿層が、優れた防湿性、耐薬品性、および離解性等の面から最も好ましい。
【0035】
本発明で、防湿層を形成するために使用できる合成樹脂は、それ自体で成膜性があり、耐水性を示すものであれば特に制限はない。耐水性の指標としては、樹脂単独の被膜を作製し(ガラス板状に合成樹脂の溶液(水溶液あるいはアルカリ性水溶液)あるいはエマルジョンなどを、乾燥後の厚さが50μm〜100μmになるように塗布し、110℃、5分間乾燥後、乾燥剤の入ったデシケーター中で40℃24時間乾燥させる)。その被膜を23℃の水(サンプル質量に対して100倍以上の質量の水)の中に24時間、浸漬し(攪拌子でゆっくりとかき混ぜる)、被膜を取り出して乾燥させ(乾燥条件:110℃、5分間乾燥後、乾燥剤の入ったデシケーター中で40℃24時間乾燥させる)、その質量減が10%以下、より好ましくは5%以下、更にに好ましくは3%以下である。
【0036】
また、本発明の合成樹脂単独被膜の防湿性は厚さ20μm換算で透湿度が800g/m・24hr以下、好ましくは600g/m・24hr以下、より好ましくは400g/m・24hr以下である。具体的な測定方法は、上記耐水性の指標と同様に合成樹脂被膜を形成し、JIS−Z−0208(カップ法)B法(40℃90%RH)で透湿度を測定し、該合成樹脂被膜の厚さを測定し、20μm換算の透湿度を求める。この時、透湿度は厚さに反比例すると仮定する。
防湿層を形成する合成樹脂は水性のエマルジョン(ラテックス、乳化物、マイクロエマルジョン、分散物などもエマルジョンに含まれるとする)あるいはアルカリ水に溶解させたものが好ましい。水溶性あるいは熱水可溶性(水あるいは熱水に対する溶解度が5%以上)の合成樹脂は防湿性が上述した透湿度よりはるかに大きいため好ましくない。例えばポリビニルアルコール(PVA)は水に対する溶解度が5〜30%の範囲にあるが(溶解度は分子量あるいはケン化度に依存する)、その単独被膜(20μm)の透湿度は上述した条件化で1000g/m・24hrを越えるため、本発明の防湿層を形成するためには使用できない。
【0037】
本発明での防湿層を形成するために使用される合成樹脂としては、芳香族ビニル系単量体、脂肪族共役ジエン系単量体、エチレン性不飽和カルボン酸エステル系単量体、不飽和脂肪酸系単量体、αオレフィン系単量体及びその他の共重合可能な単量体の中から1種又は2種以上を乳化重合したものが挙げられる。具体的には、芳香族ビニル系単量体と脂肪族共役ジエン系単量体から乳化重合によって得られるスチレン−ブタジエン系共重合体(SBR)、エチレン性不飽和カルボン酸エステル系単量体と脂肪族共役ジエン系単量体から乳化重合によって得られるメチルメタクリレート−ブタジエン系共重合体(MBR)、芳香族ビニル系単量体とエチレン性不飽和カルボン酸エステル系単量体から乳化重合によって得られるスチレン−アクリル系共重合体、αオレフィン系単量体と不飽和脂肪酸系単量体の乳化重合から得られるエチレン−アクリル酸系共重合体、1種類あるいは2種類以上のエチレン性不飽和カルボン酸エステル系単量体の乳化重合から得られるアクリルエステル系重合体などが挙げられる。これら共重合体は他の単量体と共重合させて使用してもかまわない。
単量体について詳述する。芳香族ビニル系単量体は合成樹脂に耐水性と適度な硬さを付与させるもので、具体的には、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−t−ブチルスチレン、クロロスチレンなどがあり、スチレンが好適に使用される。
脂肪族共役ジエン系単量体は合成樹脂に柔軟性を付与させるもので、具体的には、ブタジエン、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンなどが挙げられ、1,3−ブタジエンが好適に使用される。
エチレン性不飽和カルボン酸エステル系単量体は合成樹脂に耐水性を付与させるとともに、合成樹脂の硬さやガラス転移温度(Tg)、最低造膜温度(MFT)を調整させるもので、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-アミル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル等の(メタ)アクリル酸エステル単量体などが挙げられる。
不飽和脂肪酸単量体は、合成樹脂の成膜性を向上させるとともに、共重合体の水中でのコロイドとしての安定性を高めるもので、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸などの不飽和カルボン酸;フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、ブテントリカルボン酸などの不飽和多価カルボン酸;イタコン酸モノエチルエステル、フマル酸モノブチルエステル、マレイン酸モノブチルエステルなどの、少なくとも1個のカルボキシル基を有する不飽和ポリカルボン酸アルキルエステル;アクリルアミドプロパンスルホン酸、アクリル酸スルホエチルナトリウム塩、メタクリル酸スルホプロピルナトリウム塩などの不飽和スルホン酸及びその塩が挙げられる。アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸が好適に使用される。
αオレフィン系単量体は合成樹脂に耐水性と柔軟性を付与させるもので具体的にはエチレン、プロピレンなどが挙げられる。
上述した単量体と共重合可能な他の単量体は、合成樹脂の耐水性を高めたり、カチオン基を導入して接着性を高めたり、架橋性の官能基を導入して強度を高めたりするもので、具体的には、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのエチレン性不飽和ニトリル; アクリル酸β-ヒドロキシエチル、アクリル酸β-ヒドロキシプロピル及びメタクリル酸β-ヒドロキシエチルなどのエチレン性不飽和カルボン酸ヒドロキシアルキルエステル; アクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド及びジアセトンアクリルアミドなどのエチレン性不飽和カルボン酸アミド及びその誘導体; アクリル酸グリシジル及びメタクリル酸グリシジルなどの不飽和カルボン酸グリシジルエステル; アクロレイン及びアリルアルコール等のビニル化合物などが挙げられる。
合性成樹脂エマルジョンは、上記した各単量体を用いて公知の乳化重合法により製造することができる。即ち、所望の単量体を混合し、これに乳化剤、重合開始剤等を加えて水系で乳化重合を行えばよく、一括して仕込み重合する方法、各成分を連続供給しながら重合する方法などの各種の方法が適用できる。
【0038】
乳化重合用の乳化剤としてはアルキル又はアルキルアリル硫酸塩、アルキル又はアルキルアリルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル又はアルキルアリルエーテル硫酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩等のアニオン性乳化剤、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルアンモニウムクロライド等のカチオン性乳化剤、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンカルボン酸エステル等のノニオン性乳化剤などが例示される。乳化剤の使用量はエマルジョンに対して要求される性質に応じて変わりうるが、一般に重合安定性を向上させる目的やエマルジョンの機械的、化学的安定性を良好にする目的には乳化剤の使用量は多いことが望ましく、乾燥皮膜の耐水性を向上させるためには逆に使用量が少ない方が望ましく、通常は単量体の合計量100質量部に対して0.1〜5質量部程度の範囲内から目的に応じて使用量が決められる。
重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、過酸化水素、t-ブチルハイドロパーオキサイド、アゾビスアミジノプロパン塩酸塩等の水溶性タイプ、ベンゾイルパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド、ジブチルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クミルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシオクトエート、アゾビスイソブチロニトリル等の油溶性タイプなどが用いられる。また更に必要に応じ、酸性亜硫酸ナトリウム、ロンガリット、L-アスコルビン酸、糖類、アミン類などの還元剤を併用したレドックス系も使用することができる。それらの使用量は単量体の合計量100質量部に対して0.01〜3質量部程度とすればよい。重合反応は通常35〜90℃程度で行えばよく、反応時間は通常3〜10時間程度とすればよい。
なお、乳化重合の開始時あるいは終了後に塩基性物質を加えてpHを調整することにより、エマルジョンの重合安定性、凍結安定性、機械的安定性、化学的安定性等を向上させることができる。特に膨潤性無機層状化合物との配合安定性を得るためには、得られるエマルジョンのpHが5以上となるように調整することが好ましい。膨潤性無機層状化合物の水分散液は通常アルカリ性(pH7〜11)を示すため、混和性の面から合成樹脂のエマルジョンはアルカリ性(pH7以上)がより好ましい。塩基性物質としては、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、苛性ソーダ、苛性カリ等を使用することができる。特にアンモニアが防湿性の面で好ましい。
【0039】
合成樹脂水性分散体の粒子径は一般に100nm〜300nmであるが、粒子径150nm以下、特に60〜100nm程度の小さい粒子径の水性分散体を使用すると成膜性が向上し欠陥の少ない膜ができるため好ましい。
【0040】
なお、本発明の防湿層を形成する合成樹脂としては、ポリエステル系樹脂、生分解性樹脂(ポリ乳酸、ポリ酪酸、ポリカプロラクタムなど、また、天然系生分解性樹脂も含まれる)、ポリウレタン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂なども使用することができる。
【0041】
防湿層を形成する合成樹脂のガラス転移温度(Tg)、最低増膜温度(MFT)、ゲル分率(トルエンに対する不溶分)などには特に制限はないが、Tgは−30℃〜60℃、より好ましくは−20℃〜50℃、更に好ましくは−10℃〜40℃である。MFTは70℃以下、より好ましくは60℃以下、更に好ましくは50℃以下が好ましい。ゲル分率は20%〜99%が好ましく、より好ましくは30%〜95%、更に好ましくは40%〜90%である。
Tgが−30℃より小さいと防湿面の粘着性が強くブロッキングを生じやすくなり、Tgが60℃を越えて大きくなると成膜性が低下して防湿性が悪くなる。MFTが70℃より大きいと成膜性が低下して防湿性が悪くなる。ゲル分率が20%未満になるとブロッキングを生じやすくなり、また、99%を越えて大きいと成膜性が低下して防湿性が悪くなる。
【0042】
また、本発明の防湿層を形成する合成樹脂はエマルジョンあるいはラテックスの形態で使用されるが、合成樹脂のエマルジョンあるいはラテックスはアニオン性のものが好ましい。アニオン性にするためにはカルボン酸やスルホン酸基を有するモノマーを共重合させた合成樹脂を使用することが好ましい。合成樹脂がアニオン性を示すと、無機層状化合物に吸着した含窒素化合物と強い総合作用、含窒素化合物中のアミノ基やアミド基と合成樹脂中のカルボン酸基やスルホン酸基が強いイオン結合あるいは、乾燥過程で脱水反応を起こし共有結合を形成し、耐水性が向上し、その結果防湿性が向上する。
【0043】
本発明の防湿層で好適に使用できる平板状顔料としては、第1にはフィロケイ酸塩鉱物が挙げられる。フィロケイ酸塩鉱物に属するものは板状又は薄片状で明瞭な劈開性を有し、雲母族、パイロフィライト、タルク(滑石)、緑泥石、セプテ緑石、蛇紋石、スチルプノメレーン、粘土鉱物などがある。これらの中でも産出される時の粒子が大きく産出量が多い鉱物、例えば雲母族やタルクが好ましい。雲母族には、白雲母(マスコバイト)、絹雲母(セリサイト)、金雲母(フロコパイト)、黒雲母(バイオタイト)、フッ素金雲母(人造雲母、合成マイカ)、紅マイカ、ソーダマイカ、バナジンマイカ、イライト、チンマイカ、パラゴナイト、ブリトル雲母、カリ四ケイ素雲母、ナトリウム四ケイ素雲母、ナトリウムテニオライト、リチウムテニオライトなどが挙げられる。組成的にタルクに類似する合成雲母などの合成品も本発明の範疇に含むものとする。
カオリンなどの粘土鉱物も一般的には平板結晶といわれている。しかし、結晶一個をとれば、平板状の部分はあるが全体としては粒状である。しかし、カオリンのうち、意識的に結晶層を剥離し、平板にしたデラミカオリンなどは、本発明における平板状顔料として用いることができる。また、平板状顔料の粒子径は、防湿層の膜厚に対応したものを使用することが好ましい。その場合は、平板状顔料をボールミル、サンドグラインダー、コボルミル、ジェットミルなどの粉砕機で粉砕分級して所望の粒子径を得た後、本発明に使用するものとする。
本発明に好適に用いられる平板状顔料の第2として、膨潤性無機層状化合物の具体例としては、グラファイト、リン酸塩系誘導体型化合物(リン酸ジルコニウム系化合物等)、カルコゲン化物、ハイドロタルサイト類化合物、リチウムアルミニウム複合水酸化物、粘土系鉱物、合成マイカ、合成スメクタイト等を挙げることができる。
グラファイト、リン酸塩系誘導体型化合物(リン酸ジルコニウム系化合物等)、カルコゲン化物、ハイドロタルサイト類化合物、リチウムアルミニウム複合水酸化物は、単位結晶層が互いに積み重なって層状構造を有する化合物ないし物質であり、ここで層状構造とは、原子が共有結合等によって強く結合して密に配列した面が、ファン・デル・ワールス力等の弱い結合力によって略平行に積み重なった構造をいう。
「カルコゲン化物」とは、IV族(Ti,Zr,Hf)、V族(V,Nb,Ta)及び/又はVI族(Mo,W)元素のジカルコゲン化物であって、式MX2(Mは上記元素、Xはカルコゲン(S,Se,Te)を示す。)で表わされるものをいう。
粘土系鉱物は、一般に、シリカの四面体層の上部に、アルミニウムやマグネシウム等を中心金属にした八面体層を有する2層構造を有するタイプと、シリカの四面体層が、アルミニウムやマグネシウム等を中心金属にした八面体層を両側から狭んでなる3層構造を有するタイプに分類される。前者の2層構造タイプとしては、カオリナイト族、アンチゴライト族等を挙げることができ、後者の3層構造タイプとしては、層間カチオンの数によってスメクタイト族、バーミキュライト族、マイカ族等を挙げることができる。
これらの粘土系鉱物としては、スメクタイト族、バーミキュライト族などの粘土鉱物を挙げることができる。より具体的には、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、ハロイサイト、アンチゴライト、クリソタイル、パイロフィライト、モンモリロナイト、ヘクトライト、テトラシリリックマイカ、ナトリウムテニオライト、マーガライト、タルク、バーミキュライト、ザンソフィライト、緑泥石等を挙げることができる。また、白水晴雄著、「粘土鉱物学」、1988年、(株)朝倉書店 などの文献を参照することができる。特にスメクタイトが好ましく、スメクタイトにはモンモリロナイト、ハイデライト、ノントロナイト、サポナイト、鉄サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイトなどを挙げることができる。
これら膨潤性無機層状化合物は天然品(粘土性鉱物)以外にも、合成品、加工処理品(例えばシランカップリング剤の表面処理品)のいずれであってもよく、合成スメクタイトとしては、式Na0.1〜1.0Mg2.4〜2.9Li0.0〜0.6Si3.5〜4.09.0〜10.6(OH及び/又はF)1.5〜2.5で示されるものが挙げられる。
【0044】
合成スメクタイトや合成マイカの製造方法には、水熱反応法(特開平6−345419号公報)、固相反応法、熔融法(特開平5−270815号公報参照)の3つの合成方法がある。
水熱反応法は、珪酸塩、マグネシウム塩、アルカリ金属イオン、アルカリ金属塩、フッ素イオンなど各種原料を含んだ水溶液あるいは水性スラリーをオートクレーブやパイプリアクターの中で100〜400℃の高温、高圧化のもとで反応させ合成させる方法である。水熱反応法では、結晶の成長が遅いため一般に大きな粒子のものが得られなく、一般に粒子径が10〜100nmのものがほとんどである。もちろん、水熱反応においても、低濃度、低温、長時間の条件で合成すれば粒子径が1μm以上の大きな粒子を製造することは可能だが、製造コストが極端に高くなるといった問題がある。
固相反応法はタルクと珪フッ化アルカリと他の原料とともに400℃〜1000℃の範囲で数時間反応させ、合成マイカを製造する方法である。固相反応は原料のタルクの構造を残したまま元素移動を起こしマイカが生成する(トポタキシー)ため、得られる合成マイカの品質が原料のタルク物性やその不純物に依存したり、元素移動を完全にコントロールできないため合成マイカの純度や結晶化度が低いといった問題がある。
熔融法は、無水珪酸、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、珪フッ化カリウム、炭酸カリウム、その他の原料をマイカの熔融点(例えば1500℃)以上で熔融後、徐冷結晶化し、合成マイカや合成スメクタイトを製造する方法である。また、加熱方法の違いにより、外熱式熔融法と内熱式熔融法がある。外熱式熔融法は原料を入れたるつぼを熔融点以上の温度の室に入れて昇温後、熔融点以下の温度の室に移動させて製造する方法であるがるつぼの費用が高いといった問題点がある。内熱式熔融法は黒鉛(炭素)電極や金属電極を備えてた容器中で通電により原料を加熱熔融させた後、冷却させる方法であり、熔融合成法においては内熱式熔融法が一般的である。熔融合成法は冷却結晶化した塊を粉砕、分級することにより粒子径をコントロールした合成品を製造することができる。熔融合成法は原料として純度が高い原料を使用することができ、熔融化するため原料が均一に混合できるため、結晶化度が高く、粒子径が大きく、純度の高い合成マイカや合成スメクタイトを製造することができるといった利点がある。
【0045】
合成膨潤性無機層状化合物としては、フッ素金雲母(KMgAlSi10F、熔融法又は固相反応法)、カリウム四珪素雲母(KMg.5Si10、熔融法)、ナトリウム四ケイ素雲母(NaMg.5Si10、熔融法)、ナトリウムテニオライト(NaMgLiSi10、熔融法)、リチウムテニオライト(LiMgLiSi10、熔融法)などの合成マイカ、ナトリウムヘクトライト(Na0.33Mg2.67Li0.33Si4.010(OH又はF)2、水熱反応法又は熔融法)、リチウムヘクトライト(Na0.33Mg2.67Li0.33Si4.010(OH又はF)2、水熱反応法又は熔融法)、サポナイト(Na0.33Mg2.67AlSi4.010(OH)2、水熱反応法)などの合成スメクタイトが挙げられる。
【0046】
粘土鉱物の市販品としては、一般にナトリウムベンナイトと呼ばれる天然のベントナイトや、クニピア(天然モンモリロナイト、クニミネ工業製)、スメクトン(水熱反応法合成スメクタイト、クニミネ工業社製)、ビーガム(商標:バンダービルト社製)、ラポナイト(商標:ラポルテ社製)、DMクリーンA、DMA−350、Na−Ts、NTO−5(熔融法、ナトリウム四珪素雲母、商標:トピー工業製)、ベンゲル(商標:豊順洋行社製)、ソマシフME−100(固相反応法合成マイカ、商標:コープケミカル)等を挙げることができ、これらは単独で用いても、2種以上を混合して用いることもできる。
本発明により好ましいものは、水中で容易に膨潤、壁開及び分散する膨潤性無機層状化合物である。膨潤性無機層状化合物の溶媒への「膨潤・へき開」性の程度は、以下の「膨潤・へき開」試験により評価することができる。該膨潤性無機層状化合物の膨潤性は、下記膨潤性試験において約5mL以上(より好ましくは約20mL以上)の程度であることが好ましい。膨潤性の具体的なものとしては、上記クニピア(膨潤力:65mL/2g以上)、スメクトン(膨潤力:60mL/2g以上)、DMクリーンA、DMA−350、Na−Ts(膨潤力:30mL/2g以上)、ME−100(商標:コープケミカル社製、膨潤力:20mL/2g以上)及びベンゲル(膨潤力:38mL/2g以上)等である。
【0047】
一方、該膨潤性無機層状化合物のへき開性は、下記へき開性試験において約5mL以上(より好ましくは約20mL以上)の程度であることが好ましい。これらの場合、溶媒としては、膨潤性無機層状化合物の密度より小さい密度を有する溶媒を用いる。該溶媒としては、水を用いることが好ましい。
膨潤性試験を詳述する。膨潤性無機層状化合物2gを溶媒100mLにゆっくり加える(100mLメスシリンダーを容器とする)。静置後、23℃、24hr後の膨潤性無機層状化合物分散層と上澄みとの界面の目盛から前者(膨潤性無機層状化合物分散層)の体積を読む。この数値が大きい程、膨潤性が高い。
へき開性試験を詳述する。膨潤性無機層状化合物30gを溶媒1500mLにゆっくり加え、分散機(浅田鉄工(株)製、デスパーMH−L、羽根径52mm、回転数3100rpm、容器容量3L、底面−羽根間の距離28mm)にて周速8.5m/secで90分間分散した後(23℃)、分散液100mLをとりメスシリンダーに入れ60分静置後、上澄みとの界面から、膨潤性無機層状化合物分散層の体積を読む。
【0048】
また、本発明で使用するのに好ましい膨潤性無機層状化合物としては、陽イオン交換容量が100g当り、30〜300meq、より好ましくは50〜250meq、特に好ましくは60〜200meqである。陽イオン交換容量が30meq/100g未満だと含窒素化合物との効果が小さくなり防湿性に優れない。また、300meq/100gを越えて大きいと塗料が凝集しやすくなり好ましくない。一般に、天然及び合成スクメタイトは85〜130meq/100gの陽イオン交換容量を有するものが本発明において特に好ましいものである。
陽イオン交換容量の測定は一般にアルコール洗浄法(Schollenberger法あるいはその改良法、和田光史(1981)粘土科学21,160-163参照)と呼ばれる測定方法で行う。膨潤性無機層状化合物の粉末0.2〜1.0gあるいは約1〜3%水分散液を約10〜30mlを100ml容量の遠心分離管に採取する。1Nの酢酸アンモニウム(CHCOONH)液(pH7)を加えて約80mlとして、十分に振とうした後、遠心沈降させ上澄みを捨てる(遠沈洗浄)。遠沈洗浄を4回繰り返した後、遠心分離管に残っている余剰の塩を取り除くため80%エタノール水溶液(pH7)で遠沈洗浄を3回行う。次に10%のNaCl水溶液を用いて遠沈洗浄を4回繰り返し、遠心管の上澄み液をすべて集めて抽出液とする。抽出液のNHを蒸留法で定量し、試料の乾燥質量(100g)当りのミリグラム当量数(meq)を陽イオン交換容量(cation exchange capacity,CEC)の値とする。なお測定は23℃の環境下で行う。また、測定は7点行い、最大値と最小値を除いた5点の平均を測定値とした。
【0049】
膨潤性無機層状化合物としては、そのアスペクト比が50〜5000のものが好ましい。アスペクト比(Z)とはZ=L/aなる関係で示されるものであり、Lは膨潤性無機層状化合物の水中での平均粒子径(レーザー回折法で測定。堀場製作所LA−910.屈折率1.3、体積分布50%のメジアン径)であり、aは膨潤性無機層状化合物の厚みであり。厚みは、防湿層の断面をSEMやTEMによる写真観察によって求めた値である。平均粒子径は0.1μm〜100μmが好ましく、とりわけ0.5μm〜50μmが好ましい。粒子径が0.1μm未満になるとアスペクト比が小さくなる上、防湿層中で防湿面に対して平行に並びにくくなり、防湿効果が不十分になる。粒子径が100μmを越えて大きくなると防湿層から膨潤性無機層状化合物が突き出てしまい好ましくない。
これら膨潤性無機層状化合物の中でも、ナトリウム四珪素雲母、ナトリウムテニオライト、リチウムテニオライト、ナトリウムヘクトライト、リチウムヘクトライト、サポナイト、天然スメクタイト(モンモリロナイト)が好ましい。これらの中でも、粒子径、アスペクト比、結晶性の面からから熔融合成法で製造されたナトリウム四珪素雲母(トピー工業製、DMA350)やタルクにフッ化ケイ素をインターカレートし約800℃で焼成して得られる膨潤性フッ素マイカが特に好ましい。
また、本発明で使用する平板状顔料は水、あるいは溶剤中で分散された状態での平均粒子径が20nm〜100μmの間にあるものが好適であり、好ましくは0.1μm〜50μm、より好ましくは1μm〜30μmである。平均粒子径が20nm未満であると、アスペクト比が小さくなり防湿性向上効果が小さい。一方100μmを越えると塗工層表面から顔料が突き出し、外観不良や防湿性低下を招き好ましくない。
【0050】
本発明で用いる平板状顔料の水あるいは溶剤に分散された平均粒子径は、平均粒子径が0.1μm以上のものは光散乱理論を応用したレーザー回折による粒度分布測定装置において測定した値である。また、水あるいは溶剤に分散された平均粒子径が0.1μmのものについは動的光散乱法を用いて測定した値である。
また、本発明で使用する平板状顔料の好ましいアスペクト比は5以上であり、特に好ましくはアスペクト比が10以上である。アスペクト比が5未満のものは曲路効果が小さいために防湿性が低下する。アスペクト比は大きいほど平板状顔料の塗工層中における層数が大きくなるため高い防湿性能を発揮する。平板状顔料の厚みは、防湿膜の断面写真より測定する。厚みが0.1μm以上のものは電子顕微鏡写真より画像解析して求める。厚みが0.1μm未満のものは透過型電子顕微鏡写真より画像解析して求める。本発明でいうアスペクト比は、上記水、又は溶剤に分散された平均粒子径を防湿膜の断面写真より求めた厚さで除したものである。
防湿層における合成樹脂と平板状顔料の配合量は、質量換算で99/1〜30/70が好ましく、より好ましくは90/10〜35/65、特に好ましくは85/15〜40/60である。平板状顔料の配合量が1%未満になると、防湿性向上効果及び離解性向上効果が小さくなる。平板状顔料が70%を越えて大きくなると、平板状顔料の間を埋める樹脂が不足して、空隙やピンホールの増大を招き防湿性が悪化する。
【0051】
本発明で使用できる含窒素化合物は、水溶液中でカチオン性を示す化合物であれば特に制限はないが、カチオン化度が0.1〜10meq/gのものが好ましく、0.2〜7meq/gが更に好ましく、0.5〜5meq/gが特に好ましい。カチオン化度が0.1meq/g未満だと、カチオン性が弱く、無機層状化合物への吸着力が弱くなるため防湿性が悪くなり、9meq/gを越えて大きいと、塗料が凝集しやすくなり取扱いが困難となるばかりでなく、防湿性も悪化する。
含窒素化合物を具体的に挙げると、ポリアルキレンポリアミン、ポリアミド化合物、ポリアミドアミン−エピハロヒドリン又はホルムアルデヒド縮合反応生成物、ポリアミン−エピハロヒドリン又はホルムアルデヒド縮合反応生成物、ポリアミドポリ尿素−エピハロヒドリン又はホルムアルデヒド縮合反応生成物、ポリアミンポリ尿素−エピハロヒドリン又はホルムアルデヒド縮合反応生成物、及びポリアミドアミンポリ尿素−エピハロヒドリン又はホルムアルデヒド縮合反応生成物、ポリアミドポリ尿素化合物、ポリアミンポリ尿素化合物、ポリアミドアミンポリ尿素化合物及びポリアミドアミン化合物、ポリエチレンイミン、ポリビニルピリジン、アミノ変性アクリルアミド系化合物、ポリビニルアミン、ポリビニルアミンなどがある。また、含窒素化合物は特開平9−291499号公報に記載の含窒素化合物も使用できる。
更に、含窒素化合物としてはイミン化合物やアミン化合物と称せられるものが代表である。これらのうちイミン化合物としてはポリアルキレンイミンが代表であり、ポリエチレンイミン、アルキルあるいはシクロペンチル変性ポリエチレンイミン、エチレン尿素のイミン付加物、ポリ(エチレンイミン−尿素)及びポリアミンポリアミドのエチレンイミン付加物、又は、これらのアルキル変性体、アルケニル変性体、ベンジル変性体、もしくは、脂肪族環状炭化水素変性体、ポリアミドイミド、ポリイミドワニス、からなる群より選ばれたポリイミン系化合物がある。
また、アミン化合物としてはポリアルキレンポリアミンがある。例えばポリエチレンポリアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどの化合物である。また同様の効果を示すものとしては、ポリアミドのポリエチレンイミド付加物などの化合物などのポリアミド、ヒドラジン化合物、ポリアミンポリアミドのエピクロロヒドリン付加物(炭素数3〜10の飽和二塩基性カルボン酸とポリアルキレンポリアミンとからポリアミドをエピクロルヒドリンと反応させて得られる水溶性で陽イオン性の熱硬化性樹脂)などのポリアミンアミド化合物、4級窒素含有アクリルポリマー、4級窒素含有ベンジルポリマー、ウレタン、カルボン酸アミン塩基を有する化合物、メチロール化メラミン、カチオン性ポリウレタンなどの化合物などの含窒素4級塩化合物がある。また、カチオン変性ポリウレタン樹脂、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体、第3級窒素含有アクリル系樹脂等などのカチオン樹脂が挙げられる(カチオン樹脂については特開平8−90898号公報、特開昭63−162275号公報、特開昭62−148292号公報を参照されたい)。更に、尿素、チオ尿素、グアニル尿素、メチル尿素、ジメチル尿素などの尿素化合物やジシアンジアミド誘導体なども本発明の範疇である。
【0052】
含窒素化合物の添加量は、平板状顔料の陽イオン交換容量と配合量及び含窒素化合物のカチオン化度で決定される。平板状顔料の表面部はアニオン性であり、表面部にカチオン交換能があるといわれている。また、含窒素化合物のカチオン化度によって平板状顔料の平面部への吸着能力が異なるものと推定される。本発明者等は平板状顔料の陽イオン交換容量A(meq/100g)と含窒素化合物のカチオン化度B(meq/g)及び平板状顔料と含窒素化合物の質量比C/D(平板状顔料の添加量/含窒素化合物の添加量)が次の関係を満たしている時に防湿性が優れていることを見出した。
10≦(A×C)/(B×D)≦1000
ここでは(A×C)/(B×D)の値をカチオン比と呼ぶ。カチオン比が10未満だと、含窒素化合物による平板状顔料の被覆が不十分(含窒素化合汚物のカチオン化度が弱く平板状顔料に吸着していない、平板状顔料の陽イオン交換容量が小さすぎる、含窒素化合物の添加量が少なすぎるため、の少なくとも一つが理由として挙げられる)なため防湿性が不十分となる。またカチオン比が1000より越えて大きいと塗料が凝集しやすくなり好ましくない。
【0053】
含窒素化合物のカチオン化度の測定方法を詳述する。含窒素化合物を濃度が0.4g/l(1リットル中に含窒素化合物が固形分として0.4g含まれる)の水溶液になるようにイオン交換水で調整する。得られた含窒素化合物水溶液10mlにトルイジンブルー指示薬を2滴添加する。次に、1/400N(0.0025mol/リットル)のポリビニル硫酸カリウム(PVSK,ファクター1.108)溶液で滴定を行い、溶液が青色から赤紫色に変色した滴定量を読み、下記計算式から含窒素化合物のカチオン化度を求めた。
カチオン化度(meq/g)=1/400×ファクター(1.108)×滴定量(ml)÷{0.4(g/l)×10(ml)}
測定は7点行い、最大値と最小値を除いた5点の平均を測定値とした。また、測定は23℃50%RHの環境下で行った。
防湿積層体の防湿層中に含まれる平板状顔料の量及び陽イオン交換容量の測定方法は次のとおりである。まず防湿層をカミソリ刃で一定量削り取りその質量を測定する。削り取った防湿層を550℃3時間加熱し灰化する。灰化した質量を測定するとともにIR、X線回折、電子顕微鏡写真などで無機層状化合物であることを確認する。得られた平板状の陽イオン交換量を前述の方法で測定する。また、粒子径の測定及び電顕写真観察により後述のアスペクト比も測定できる。
防湿積層体の防湿層中に含まれる含窒素化合物の添加量及びカチオン化度は次のように測定する。防湿層をカミソリ刃で一定量削り取り、これを水によるソックスレー抽出により抽出する。抽出液の水を除去し得られた固形分の質量を測定する。この固形分のIR、NMR、DSC、質量分析などのような分析手法を用いて含窒素化合物の量を定量する。また、得られた含窒素化合物のカチオン化度は前記の方法で測定する。
また、含窒素化合物はカチオン性を示すために、平板状顔料のアニオン部分やアニオン性の合成樹脂エマルジョンと混合した時にショック(塗料凝集)を起こすことがある。このようなショックを防止するために塩基性物質を含窒素化合物、平板状顔料の水溶液や合成樹脂エマルジョン中に加えてアルカリ側(pH7〜10が好ましい)に調整した方が好ましい。特に含窒素化合物に塩基性化合物を添加する方法がショック防止の効果が大きい。塩基性物質としては、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、苛性ソーダ、苛性カリ等を使用することができる。特にアンモニアが防湿性の面で好ましい。
【0054】
本発明の防湿層において、防湿性を向上させるために防湿性向上剤を添加することができる。防湿性向上剤は、合成樹脂と反応して、それを疎水性に変性し、又は架橋反応してこれを疎水性化し、あるいは平板状顔料を被覆して、合成樹脂との接着性を高め、又はそれを疎水性化し、又は、その互に平行な積層配向を促進し、あるいは、合成樹脂の粒子と及び/又は平板状顔料との接着性を高め、又はこれらの間隙を充填するなどして、防湿層の防湿性能を向上させるものである。
【0055】
本発明に用いられる防湿性向上剤は、例えば、炭素原子数が1〜8個のアルデヒド化合物、1個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物、架橋反応性多価金属化合物、オルガノアルコキシシラン化合物、オルガノアルコキシ金属化合物、含窒素化合物から選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましい(防湿性向上剤については特開平09−291499号公報参照)。
【0056】
本発明においては、平板状顔料の分散剤としてイオン界面活性剤を使用してもよい。イオン界面活性剤としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩などが例示されるが、このうち特にカルボン酸塩が好ましい。カルボン酸塩は泡が出難く、コーティング性能が特に向上する。陽イオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤などは膨潤性無機層状珪酸塩と凝集を起こしやすく、コーティング剤に適度な粘性と膨潤性無機層状珪酸塩の分散性を付与できない場合が多く好ましくない。
【0057】
カルボン酸塩としては、脂肪酸のナトリウム、カリウム塩、ヤシ油脂肪酸のナトリウム、カリウム塩、トール油脂肪酸のナトリウム、カリウム塩、アミン塩、N-ラウロイルサルコシン、アシル化ポリペプチド等が例示され、またスルホン酸塩としては直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルキルベンゼンスルホン酸塩、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメンスルホン酸塩、リグニンスルホン酸塩、石油スルホン酸塩、N-アシルアルキルタウリン塩、n-パラフィンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、イセチオン酸塩などが例示され、硫酸エステル塩としては直鎖第1級アルコール硫酸塩、ポリオキシエチレン付加直鎖アルコール硫酸塩、硫酸化油等が例示され、リン酸エステル塩、ポリリン酸エステル塩としてはポリオキシエチレン付加直鎖アルコールリン酸塩等が例示され、その他にフッ化炭化水素基含有の陰イオン界面活性剤なども使用し得る。
【0058】
なお、陰イオン界面活性剤の配合量は、平板状顔料に対して陰イオン界面活性剤を質量換算で0.01%〜10%が好ましい。0.01%よりも小さく、あるいは10%より大きいとむしろ分散性、コーティング性も不良となる。
【0059】
また、平板状顔料の分散は、各種形状を有するプロペラによる攪拌やホモジナイザーでの攪拌でもかまわないが、平板状顔料を水中で十分に分散させるために、ヘンシェルミキサー(三井鉱山製)、スーパーミキサー、高圧ホモジナイザー、高圧分散機、超音波分散機で分散する方が好ましい。
【0060】
膨潤性の面から高圧分散機が特に好ましい。高圧分散機とは、分散させるべき粒子と溶媒等の媒体を混合した組成物を複数本の細管中に高速通過させ衝突させることにより、高剪断や高圧状態などの特殊な条件下を作り出す装置である。例えば、組成物を管径1〜1000μmの細管中を通過させることが好ましく、該組成物には最大圧力条件が100kgf/cm以上の圧力がかかることが好ましく、500kgf/cm以上がより好ましい。また組成物が高圧分散装置内を通過する際、組成物の最高到達速度が100m/sec以上に達するものが好ましく、また伝熱速度は100kcal/hr以上のものが好ましい。
【0061】
かかる高圧分散装置としては、例えばMicrofluidics Corporation社製超高圧ホモジナイザー(商品名マイクロフルイダイザー)あるいはナノマイザー社製ナノマイザーがあり、他にもマントンゴーリン型高圧分散装置、例えばイズミフードマシナリ製ホモゲナイザー、日本ビーイーイー製超高圧ジェット流反転型乳化装置等が挙げられる。
【0062】
また、本発明における防湿層の塗工量は、0.1〜20g/mが好ましく、より好ましくは1〜15g/m、更に好ましくは3〜10g/mである。
【0063】
防湿層塗工量が0.1g/m未満であると、防湿性が悪く好ましくない。また塗工量が20g/mを越えると、防湿性は頭打ちとなるため不経済であり、また防湿層の割合が大きくなることで古紙としての価値が低下する。
本発明の防湿層を形成する際には、必要に応じて、ポリカルボン酸などの分散剤、シリコーン系などの消泡剤、界面活性剤、保水剤、色合い調整剤、平板状顔料以外の顔料(炭酸カルシウム、クレー、カオリン、マイカ)などを添加することが可能である。
【0064】
以上で述べたような合成樹脂と平板状顔料からなる防湿塗料を紙支持体に塗工して防湿層を形成する。塗工設備として特に限定はしないが、ブレードコーター、バーコーター、エアナイフコーター、スリットダイコーターなどの方式が好ましい。特に防湿層形成にはブレードコーター、バーコーター、エアナイフコーター、スリットダイコーターなどの塗工表面をスクレイプするコーターが平板状顔料の配向を促すという点で好ましい。
【0065】
また本発明に用いられる紙支持体は、機械的離解作用により水中で分散しやすいパルプを主成分とするものであれば特に制限はないが、一般的に用いられている晒または未晒クラフト紙(酸性紙又は中性紙)、又は段ボール用、建材用、白ボ−ル用、チップボ−ル用などに用いられる板紙などが好適であり、更に好ましくはヤンキ−ドライヤ−などで強制乾燥がなされた片ツヤ紙、又はカレンダ−処理が施された晒/未晒クラフト紙などであり、このような紙基材を用いた場合は、その高平滑な基材表面より、防湿層の厚さ方向における平板状顔料の配向性は、塗工面に対して乱れることなく均一に、平行に配列しやすくなるため、防湿性能も格段に向上する。
また、基材と防湿層の間に防湿層の塗工適性や塗工量減のためにアンカー層をてもよい。
【0066】
本発明の粉末洗剤用包装容器の素材となる防湿積層体の構成は、紙支持体/防湿層/紙支持体/耐界面活性剤層、紙支持体/防湿層/耐界面活性剤層が好ましい。製造方法の一例を挙げると、紙支持体に防湿層を形成した防湿紙と紙支持体を接着剤で貼合し片面に耐界面活性剤層を形成する方法、紙支持体に防湿層を形成した後に防湿層上に耐界面活性剤層を形成する方法、防湿塗料を紙支持体に塗布し乾燥前に別の紙支持体と貼合した後、耐界面活性剤層を設ける方法などが挙げられる。
【0067】
上記の防湿積層体を、耐界面活性剤層が内側となるようにして、定法によって製函して包装用箱することで、本発明の粉末洗剤用包装容器を得ることが可能である。包装容器の外側となる面は、印刷適性等を付与するため、顔料塗工層を設けたものであることが更に望ましい。
【実施例】
【0068】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。特に断りのない限り実施例中の部は質量部を示す。
<実施例1>
水36部に25%アンモニア水溶液を0.40部加え攪拌し、含窒素化合物(カチオン化度2.5meq/g、変性ポリアミド系樹脂、pH7.2、固形分50%、商標:SPI203(50)、住友化学(株)製)4.5部を攪拌しながら加えた。
更に、攪拌しながら酸変性SBRラテックス(固形分50%、スチレン単量体47部、ブタジエン単量体38部、メタクリル酸15部、ガラス転移温度15℃、ゲル分率80%、粒子径80nm、pH7.0、商標HOJ4097、日本ゼオン(株)製)100部を加え攪拌した。
これに平板状顔料として膨潤性合成マイカ(ナトリウム四ケイ素雲母、NaMg2.5Si10、粒子径6.3μm、陽イオン交換容量100meq/100g、6%水分散液、商標:NTO−5、トピー工業(株)製)50部を攪拌しながら添加して防湿塗料とした。
得られた防湿塗料を未晒クラフト紙(坪量70g/m、厚さ100μm)に防湿層の塗工量が固形分で12g/mになるようにメイヤーバーで塗工した後、熱風乾燥機を用いて110℃、1分間乾燥して防湿紙を得た。
該防湿紙の防湿面に接着剤として酢ビ系エマルジョン(SE8001、固形分60%、 昭和高分子(株)製)を固形分で5g/mになるように塗布し、塗布後すぐに坪量600g/mの白板紙(厚さ700μm)の非塗工面と貼合し、熱風乾燥機を用いて110℃、1分間乾燥して貼合し、積層体を得た。
次いで、ポリビニルアルコール(ケン化度98.5%、重合度500、商標:PVA105、クラレ(株)製)の10%水溶液に、吸油性粒子として澱粉粒子(商標:エースK100、王子コーンスターチ(株)製)を該ポリビニルアルコール固形分100質量部に対して50質量部攪拌しながら添加し、耐界面活性剤塗料を得た。
前記積層体の未晒クラフト紙面に、得られた耐界面活性剤塗料を固形分換算で2g/mになるようにメイヤーバーで塗工した後、熱風乾燥機を用いて110℃、1分間乾燥して防湿積層体を得た。
【0069】
<実施例2>
澱粉粒子添加量をポリビニルアルコール100質量部に対して10質量部にしたこと以外は実施例1と同様にして防湿積層体を得た。
【0070】
<実施例3>
澱粉粒子添加量をポリビニルアルコール100質量部に対して150質量部にしたこと以外は実施例1と同様にして防湿積層体を得た。
【0071】
<実施例4>
吸油性粒子として、澱粉粒子の替わりにシリカ粒子(平均粒径12.0μm、商標:サイロジェットP416、グレースデビソン(株)製)を使用したこと以外は実施例1と同様にして防湿積層体を得た。
【0072】
<実施例5>
アモルファスポリオレフィン(単独重合体、重量平均分子量7万)40部、結晶性ポリプロピレン樹脂(ホモタイプ、メルトフローレート38g/10分、融点157℃)20部、テルペンフェノール共重合樹脂(軟化点145℃、数平均分子量1000)35部、熱可塑性エラストマー(比重0.89、メルトフローレート13g/10分、商標:タフテックH1052、旭化成社製)5部、安定剤としてヒンダードフェノール系酸化防止剤(融点125℃)1部からなる混合物を220℃で300mmTダイを用いて板紙(坪量540g/m 厚さ660μm)にホットメルト塗工した。アモルファスポリオレフィンの防湿層厚さは20μmだった。
得られた防湿板紙の非防湿面側に実施例1と同様にして耐界面活性剤層を設けて防湿積層体を得た。
【0073】
<比較例1>
吸油性粒子を添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして防湿積層体を得た。
【0074】
<比較例2>
吸油性粒子の替わりに、吸油性のないポリエチレン粒子(平均粒径20μm、商標:UF20、住友精化(株)製)を使用したこと以外は実施例1と同様にして防湿積層体を得た。
【0075】
<比較例3>
耐界面活性剤層を設けなかったこと以外は実施例1と同様にして防湿積層体を得た。
【0076】
<試験方法>
1)透湿度
JIS−Z−0208(カップ法)B法(40℃90%RH)に準じて、白板紙の塗工面が上側にくるように測定した。
なお、透湿度の基準としては、50g/m・24時間以下であれば防湿積層体として実用性がある。
2)洗剤透湿度
JIS−Z−0208(カップ法)B法に準じて、塩化カルシウムの代わりに市販の粉末洗剤を使用した。また、白板紙の塗工面が上側にくるように測定した。洗剤と防湿積層体が接触するようにカップを逆にして測定を行った。測定時間は一ヶ月間とした。湿度条件は40℃75%RHとした。
なお、本発明中において、評価に使用する市販の粉末洗剤としては、現在代表的な市販品3社(K社、L社、P社)のものを使用し、以下も同様とする。
3)耐界面活性剤性試験
HLB9.7の界面活性剤(ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル、エマルゲン105、花王製)約2ccを防湿積層体に滴下して裏面に界面活性剤が浸透するかどうかを判定した。
一ヶ月以上浸透しないものを◎、2週間以上浸透しないものを○、1日以上浸透しないものを△、1時間以内に浸透するものを×とした。環境は40℃75%RHとした。△以上であれば使用可能であり、○以上であることが好ましい。
4)耐罫線部分の耐界面活性剤性
幅3mm、罫線高さ約200μmの罫線を紙支持体の流れ方向(繊維の配向方向)に沿って罫線を入れた。該罫線部分の耐界面活性剤性を上記3)の方法で測定した。△以上であれば使用可能であり、○以上であることが好ましい。
5)製函適性
酢ビ系エマルジョンの接着性を評価した。防湿積層体の白板紙の塗工面と反対側(クラフト紙側あるいは耐界面活性剤層側、容器にした時の内側の面)に酢ビ系エマルジョン系接着剤(SE8001 昭和高分子製)を有姿で50g/mの塗工量になるように塗布し、その面と反対の面(白板紙の塗工面)を貼合わせ、ゴムロールで3往復し、接着時間を測定した。接着時間は、接着剤を塗布した時をスタートとし、塗布から10秒後ごとに防湿積層体を接着面から剥がし、防湿積層体が材破する時間を求めた。測定数は7点とし、最大値と最小値を除いた平均時間(秒、一桁目を四捨五入)を測定値とした。材破までの時間が1分以内であれば製函適性があり、好ましくは40秒以内である。
【0077】
【表1】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
防湿層を有する紙支持体から構成された包装容器であり、吸油性粒子と水溶性樹脂からなる耐界面活性剤層を防湿層より内側に形成したことを特徴とする粉末洗剤用包装容器。
【請求項2】
耐界面活性剤層の水溶性樹脂固形分100質量部に対し、吸油性粒子が10〜150質量部含有されたことを特徴とする請求項1に記載の粉末洗剤用包装容器。
【請求項3】
吸油性粒子が耐界面活性剤層表面に存在することを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の粉末洗剤用包装容器。
【請求項4】
防湿層が平板状顔料と合成樹脂から形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の粉末洗剤用包装容器。
【請求項5】
水溶性樹脂が、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アミロース、アミロペクチン、プルラン、カードラン、ザンタン、キチン、キトサン、セルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリベンゼンスルホン酸、ポリベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、アンモニウム塩ポリビニルチオール、ポリグリセリンの群から選ばれる1または2以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の粉末洗剤用包装容器。




【公開番号】特開2006−131278(P2006−131278A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−323565(P2004−323565)
【出願日】平成16年11月8日(2004.11.8)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】