説明

粉状物質の造粒方法およびその造粒物

【課題】比較的少量の粘結剤の添加でも、硫酸が独立して存在する粉状物質を適確に粒状あるいは塊状にすることが可能な方法およびその造粒物を提供する。
【解決手段】少なくとも硫酸が独立して存在する粉状物質を粒状あるいは塊状にする方法であって、前記粉状物質に、カルシウム化合物と粉状有機粘結剤を添加して混練し、こうして得た混練物を造粒機によって粒径10〜200mmの粒状あるいは塊状に造粒することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも硫酸が独立して存在する粉状物質を粒状あるいは塊状にする方法およびその造粒物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、この種の粉状物質の造粒方法として、熱間強度に優れて製錬炉の炉況安定に寄与することができ、安価に製造することができる製錬炉用廃材ブリケットの製造方法であって、金属成分を含有する粉粒状廃材と結合剤とを混練し、混練された混練物をブリケットに製団し、製団されたブリケットを自然養生するものや(特許文献1)、溶解炉および製錬炉より発生する集塵ダストの成型および還元処理において成型性に優れかつ高還元性を持つブリケットの製造方法であって、集塵ダストに、プラスチックを1〜10重量%、石灰成分を5〜30重量%、および炭材を5〜20重量%。混練、成型するもの(特許文献2)がある。
【特許文献1】特開2006−265617号公報
【特許文献2】特開2005−248235号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、上述の粉状物質の造粒方法を、少なくとも硫酸が独立して存在する粉状物質を粒状あるいは塊状にするのに適用することを試みた。しかし、前者の粉状物質の造粒方法では、製団されたブリケットの熱間強度が弱く、また、後者の粉状物質の造粒方法では、所要の熱間強度を得るには多量の粘結剤が必要であるなどの問題があった。
【0004】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的は、比較的少量の粘結剤の添加でも、硫酸が独立して存在する粉状物質を適確に粒状あるいは塊状にすることが可能な方法およびその造粒物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために本発明における粉状物質の造粒方法は、少なくとも硫酸が独立して存在する粉状物質を粒状あるいは塊状にする方法であって、前記粉状物質に、カルシウム化合物と粉状有機粘結剤を添加して混練し、こうして得た混練物を造粒機によって粒径10〜200mmの粒状あるいは塊状に造粒することを特徴とする。
【0006】
このように構成されたものにおいては、硫酸が独立して存在する粉状物質の硫酸分とカルシウムとが化学反応して硫酸カルシウム、いわゆる石膏が生成されるとともに、その硫酸分が無くなる。これに伴い、高温雰囲気での硫酸の急激な酸化現象が生じないため有機結合剤の結合力が維持され、この結果、造粒物は、高温雰囲気下での強度低下が抑制され、しかも生成された石膏が熱間強度を高くする結合剤として寄与し、400〜550℃の高温雰囲気下で粒あるいは塊状態を維持することができる。
【0007】
なお、本発明において、少なくとも硫酸が独立して存在する粉状物質としては、例えば、硫酸鉛粉体や、炭酸鉛粉体に硫酸を添加した物などがある。
またなお、本発明において、カルシウム化合物は、消石灰、石灰、生石灰、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、フッ化カルシウムのうちいずれかである
またなお、本発明において、粉状有機粘結剤は、澱粉、デキストリン、リグニンのうちいずれかである。
またなお、本発明において、造粒機としては、ブリケットマシン、タブレット、ペレットなどを形成するものがある。
【発明の効果】
【0008】
以上の説明から明らかなようにから、本発明は、少なくとも硫酸が独立して存在する粉状物質を粒状あるいは塊状にする方法であって、前記粉状物質に、カルシウム化合物と粉状有機粘結剤を添加して混練し、こうして得た混練物を造粒機によって粒径10〜200mmの粒状あるいは塊状に造粒するから、粉状物質の硫酸分とカルシウムとが化学反応して石膏が生成されるとともに、その硫酸分が無くなって有機結合剤の結合力が維持されるため、造粒された造粒物は、温度400〜550℃の高温雰囲気下で10〜30分間、粒あるいは塊状態を維持する高い熱間強度を持つことができるなどの優れた実用的効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図1に示す粉状物質の造粒設備を用いて本発明により粉状物質の造粒方法について詳細に説明する。少なくとも硫酸が独立して存在する粉状物質として粉状硫酸鉛を、ホッパー1から混練機2(新東工業株式会社製 MSG05)に所要量投入するとともに、この混練機2に、カルシウム化合物としての消石灰と、粉状有機粘結剤としての澱粉と、水をそれぞれ所要量添加して混練し、こうして得た混練物を、中間ホッパー3で一時貯蔵したのちベルトコンベア4によって切り出して造粒機としてのブリケットマシン5(新東工業株式会社製 BMS−2)に供給し、ブリケットマシン5によって塊状に造粒する。
【0010】
なお、本粉状物質の造粒設備では塊状物は、ベルトコンベア6によって振動篩7に搬送されて篩い分けられたのちベルトコンベア8によって製品ヤード9に搬送されるようになっている。
こうして造粒した塊状物を1日放置したのち温度500℃の高温雰囲気下で20分間置き、そのときの強度を測定した結果を表1に示す。

【0011】
【表1】

【0012】
また、表1のテスト4の条件で造粒した塊状物を1日放置したのち、温度500℃の高温雰囲気下で加熱経過時間毎に強度を測定した結果を表2に示す。
すなわち、表2は塊状物が高温雰囲気で強度低下を抑制できる時間を調べたデータである。
【0013】
【表2】

【0014】
表1からは次のことが分かる。すなわち、粉状硫酸鉛の塊状物の強度は著しく大きくなり、塊状化直後に2mの高さから鋼板上に落下させても破損は少なく、1日後の圧壊強度は43kg程度となった。その結果、塊状物は、10m高さまで破損させずに貯蔵可能であり、しかも搬送時に破損することは殆ど無かった。さらに、表2からは、30分までは強度低下が少ない事が分かった。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明を実施するための粉状物質の造粒設備の模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも硫酸が独立して存在する粉状物質を粒状あるいは塊状にする方法であって、前記粉状物質に、カルシウム化合物と粉状有機粘結剤を添加して混練し、こうして得た混練物を造粒機によって粒径10〜200mmの粒状あるいは塊状に造粒することを特徴とする粉状物質の造粒方法。
【請求項2】
前記粉状物質は、硫酸鉛粉体であることを特徴とする請求項1に記載の粉状物質の造粒方法。
【請求項3】
請求項1〜3のうちいずか1項に記載の粉状物質の造粒方法において、
前記カルシウム化合物は、消石灰、石灰、生石灰、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、フッ化カルシウムのうちいずれかであることを特徴とする粉状物質の造粒方法。
【請求項4】
請求項1〜4のうちいずか1項に記載の粉状物質の造粒方法において、
前記粉状有機粘結剤は、澱粉、デキストリン、リグニンのうちいずれかであることを特徴とする粉状物質の造粒方法。
【請求項5】
少なくとも硫酸が独立して存在する粉状物質を粒状あるいは塊状にした物質であって、
前記粉状物質とカルシウム化合物と有機粘結剤との混練物が、造粒機によって粒径10〜200mmの粒状あるいは塊状に造粒されたものであることを特徴とする造粒物。
【請求項6】
前記粉状物質は硫酸鉛粉体であることを特徴とする請求項6に記載の造粒物。

【図1】
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【公開番号】特開2008−106328(P2008−106328A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−291927(P2006−291927)
【出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【出願人】(000191009)新東工業株式会社 (474)
【Fターム(参考)】