説明

粉砕装置及びこれを用いた粒状洗剤組成物の製造方法

【課題】界面活性剤の含有量が少ない粒状洗剤組成物であっても、効率的に生産できる粉砕装置及び粒状洗剤組成物の製造方法。
【解決手段】粉砕室10と、該粉砕室10の内部に設けられ、略水平方向を軸線として回転し被粉砕物を粉砕する粉砕部40とを有し、前記粉砕室10の下部は、前記粉砕部の先端41の軌跡に近接する曲面20とされ、前記曲面20には前記粉砕部40の回転方向Aに向かって段階的に異なる孔径の孔26を形成する。前記粉砕部10の回転方向Aに対し、前記曲面20の下端Pから後方に設けられた孔26の孔径が、該下端Pから前方に設けられた孔26の孔径よりも小さいことが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉砕装置及びこれを用いた粒状洗剤組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
衣料用洗剤等の粒状洗剤組成物は、主要な構成成分として界面活性剤含有粒子を含有している。かかる界面活性剤含有粒子は、一般に、アニオン界面活性剤等の界面活性剤やアルカリビルダー等を含有する洗剤スラリー(噴霧乾燥用スラリー)を噴霧乾燥して洗剤組成物ベース粉末(噴霧乾燥粒子)を製造し、当該ベース粉末(噴霧乾燥粒子)を高嵩密度化して製造されている。
噴霧乾燥粒子を高嵩密度化する方法としては、例えばベース粉末と液体のバインダー成分を混練機に連続的に供給し、捏和してドウ状物を得、得られたドウ状物をペレット状に押出成形し、さらに粉砕(粉砕処理)して高嵩密度の界面活性剤含有粒子を製造する方法がある。一般的に、粉砕処理は、複数台の粉砕装置を直列に連結し、段階的に小さい粒径にする方法が採られている。
【0003】
近年では、環境意識の高まりから、粒状洗剤組成物においても環境への負荷の低減が望まれるようになってきており、これに対応するために洗剤組成物中の界面活性剤濃度を低減させることが望まれている。かかる要望に対応するために、高い洗浄力を有するα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩を有効に活用することが必要となる。
しかし、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩を多く含む粉体は、粉砕装置内部や空気輸送される配管内部に付着しやすく製造安定性が損なわれやすいという問題がある。
【0004】
こうした問題に対し、洗剤粒子の粘弾性と表面付着性の指標となる圧裂引張強度とを一定の範囲とすることで、粉砕装置内、輸送配管内、での洗剤粒子の付着を抑制する方法が提案されている(例えば、特許文献1、2)。また、比較的多量のゼオライトを添加し粉砕することで、洗剤粒子の粉砕装置への付着を防止する方法(例えば、特許文献3)や、無機硫酸塩を添加した洗剤原料を粉砕、造粒することで、粉砕装置等への洗剤粒子の微粉の付着を防止する方法が提案されている(例えば、特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−105211号公報
【特許文献2】特開2007−291176号公報
【特許文献3】特開2008−156409号公報
【特許文献4】特開2008−179800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、粒状洗剤組成物には、さらなる界面活性剤の含有量の低減が求められている。かかる粒状洗剤組成物は、界面活性剤の含有量が少ないために脆く、ペレット状の成型物を粉砕装置で粉砕する際、従来に比べ粉砕の際に発生する微粉が増加する傾向にある。発生した微粉は、粉砕装置内に付着するため、該装置内の清掃の頻度が高くなり、生産効率が低下するという問題がある。
そこで、本発明は、界面活性剤の含有量が少ない粒状洗剤組成物であっても、効率的に生産できる粉砕装置及び粒状洗剤組成物の製造方法を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の粉砕装置は、粉砕室と、該粉砕室の内部に設けられ、略水平方向を軸線として回転し被粉砕物を粉砕する粉砕部とを有し、前記粉砕室の下部は、前記粉砕部の先端の軌跡に近接する曲面とされ、該曲面には、前記粉砕部の回転方向に向かって段階的に異なる孔径の孔が形成されていることを特徴とする。前記粉砕部の回転方向に対し、前記曲面の下端から後方に設けられた孔の孔径が、該下端から前方に設けられた孔の孔径よりも小さいことが好ましい。
【0008】
本発明の粒状洗剤組成物の製造方法は、前記の粉砕装置を用いて、界面活性剤を含有する捏和物を粉砕することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、界面活性剤の含有量が少ない粒状洗剤組成物であっても、効率的に粒状洗剤組成物を生産できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の粉砕装置の一例を示す断面図である。
【図2】図1の粉砕装置のII−II断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の粉砕装置について、その一実施形態例を以下に図1、2を用いて説明する。図1は、本発明の実施形態にかかる粉砕装置8の断面図である。図2は、図1の粉砕装置8のII−II断面図である。粉砕装置8は、粉砕室10と、粉砕室10の内部に設けられた粉砕部40とを有するものである。
【0012】
粉砕室10は、その軸線が略水平となるように設けられ、粉砕室10の下方には、粉砕室10の下部を囲う筐体状のケーシング50が設けられている。粉砕室10の上部には、被粉砕物を投入する投入口12が設けられている。粉砕室10の内部には、粉砕部40が、略水平の回転軸Oをもって回転方向Aで回転可能に軸支されている。粉砕室10の下部は、粉砕部40が回転方向Aで回転した際、その先端41が描く軌跡に近接した曲面20とされ、曲面20に孔26が設けられ篩部21とされている。
【0013】
ケーシング50の下端には、被粉砕物を粉砕した粉砕物を粉砕装置8から排出する排出口52が設けられている。ケーシング50は、第一の側面54と第二の側面56と第三の側面58と第四の側面59と、第一の側面54の下端から排出口52に向かって傾斜する第一の底面55と、第二の側面56の下端から排出口52に向かって傾斜する第二の底面57とで構成されている。
【0014】
粉砕部40は、軸部44と、軸部44から径方向に突出するように設けられた粉砕刃42とで構成されている。粉砕部40は、図1に示すように4枚の粉砕刃42を周方向に90°ピッチで配置して粉砕刃集合体とし、図2に示すように2個の粉砕刃集合体を回転軸Oに沿って任意の間隔で軸部44に配置することで形成されている。軸部44は図示されない駆動部と接続されている。
【0015】
篩部21は、粉砕部40の回転方向Aに向かって段階的に異なる孔径の複数の孔26が形成されたものである。ここで「段階的」とは、回転方向Aの方向に篩部21を2以上の領域に区分けし、該領域毎には同一の孔径の孔26を形成し、任意の領域と隣接する他の任意の領域とを比較した際に形成された孔26の孔径が異なる状態、又は、領域に区分けせずに、回転方向Aに向かって徐々に孔径を変化させることを意味する。
【0016】
領域単位で異なる孔径の孔26が形成された篩部21としては、例えば、粉砕部40の回転方向Aに対し曲面20の下端Pから後方の領域(後部篩)24と、下端Pから前方の曲面(前部篩)22とに区分けし、後部篩24の孔径を前部篩22の孔径よりも小さくしたものが挙げられる。あるいは、後部篩24の孔径を前部篩22の孔径よりも大きくしたものが挙げられる。また、例えば、篩部21は、篩部21を回転方向Aに向かって3以上の領域に区分けし、回転方向Aに向かうに従って、孔径が小さくなるようにしてもよいし、大きくなるようにしてもよい。
また、例えば、篩部21には、篩部21を領域分けせず、回転方向Aの方向に徐々に孔径が小さくなるように孔26を配置してもよいし、徐々に大きくなるように配置してもよい。あるいは、回転方向Aの方向で曲面20の下端に向かうに従い孔径を小さくし、次いで、上方に向かうに従って孔径を大きくしてもよい。
中でも、篩部21は、回転方向Aに向かって段階的に孔径が小さくなるように孔26が形成されていることが好ましい。例えば、後部篩24の孔径を前部篩22の孔径よりも小さくしたものが挙げられる。このように、後部篩24の孔径を前部篩22の孔径よりも小さくすることで、次のような理由により、被粉砕物から発生した微粉(洗剤微粉)が粉砕装置8内に付着することを防止できる。投入口から落下してきた被粉砕物は、重力により篩部21の下端Pに集まる様に挙動する。下端Pに至った被粉砕物は、高速で回転している粉砕部40で粉砕される。この際、発生した洗剤微粉は、粉砕部40の回転に従い後部篩24からケーシング50内に排出されるように挙動する。しかし、後部篩24の孔径を小さくしておくことで、後部篩24から排出される洗剤微粉の量は制御される。こうして、洗剤微粉が、特定の箇所に偏って付着するのを防止できる。
【0017】
孔26の孔径は、所望する粉砕物の粒径に応じて決定することができ、例えば、所望する粉砕物の粒子径に対して3〜30倍の範囲で決定することが好ましく、4〜25倍の範囲で決定することがより好ましい。
各孔26の孔径の違いの程度は特に限定されないが、例えば、2種の孔径の孔26を設けた場合、その内の最も小さい孔径が、最も大きい孔径に対し、20〜80%が好ましく、30〜70%であることがより好ましい。上記範囲内であれば、粉砕物の粒度分布が広がりすぎることを防止すると共に、粉砕装置8内及び配管内への被粉砕物から発生する洗剤微粉の付着を抑制できるためである。
【0018】
篩部21における孔径毎の孔26の合計面積の比率は、粉砕物に求める粒子径等を勘案して決定できる。例えば、2種の孔径の孔26を設けた場合、その内の小さい方の孔径の開口面積の合計値(小開口面積)/大きい方の孔径の開口面積の合計値(大開口面積)で表される大小開口面積比は、20/80〜80/20が好ましく、30/70〜70/30がより好ましい。上記範囲内であれば、粉砕装置8内及び配管内への洗剤微粉の付着を抑制できるためである。
【0019】
孔26の形状は、生産効率や篩部21の強度等を勘案して決定することができ、例えば、真円、楕円、矩形等が挙げられる。加えて、篩部21には異なる形状の孔26が形成されていてもよい。このような孔26が設けられた篩部21としては、板状のステンレスや鋼に貫通孔を設けたパンチングメタル、線形のステンレスや鋼製で構成されたスクリーンやメッシュ等が挙げられる。
なお、孔径は、真円の場合にはその内径を意味し、楕円の場合にはその短径を意味し、矩形の場合には短辺の長さを意味する。
【0020】
曲面20と先端41が描く軌跡との近接の程度は、粉砕部40が回転した際に曲面20と接触しないと共に、被粉砕物を効率的に粉砕できる程度に離間している範囲で決定することができる。
曲面20の形状は、被粉砕物の粉砕効率等を考慮して決定することができ、例えば、回転軸Oを基準として粉砕室10の下部全体を先端41が描く軌跡に沿った形状としてもよいし、粉砕室10の下部の一部を先端41が描く軌跡に沿った形状としてもよい。生産効率の観点からは、粉砕室10の下部全体を先端41が描く軌跡に沿った形状とすることが好ましい。
【0021】
ケーシング50の材質は、所望の耐久性を得られるものであれば特に限定されず、例えは、ステンレスや鋼等が挙げられる。
【0022】
粉砕刃42の形状は、被粉砕物の硬度や脆さ等の物性に応じて決定することができ、例えば、回転方向A側の全体に刃を設けたものであってもよいし、回転方向A側の一部に刃を設けたものであってもよい。
粉砕刃42の材質は、その形状や被粉砕物の硬度や脆さ等の物性に応じて決定することができ、例えば、ステンレス等を挙げることができる。
【0023】
粉砕装置8を用いた粒状洗剤組成物の製造方法を説明する。
まず、駆動部を起動し、粉砕部40を回転方向Aで回転させる。次いで、被粉砕物を投入口12から投入する。投入された被粉砕物は、回転する粉砕部40の粉砕刃42により粉砕され、任意の大きさの粉砕物となる。任意の大きさにされた粉砕物は、篩部21の孔26を通過し、ケーシング50に設けられた排出口52から排出される。排出された粉砕物は、そのまま粒状洗剤組成物としてもよいし、さらに、界面活性剤や香料等を噴霧して造粒したり、他の洗剤成分を造粒した造粒粒子と粉体混合し、粒状洗剤組成物とすることができる。
【0024】
被粉砕物は、各種界面活性剤、無機ビルダー、有機ビルダー、蛍光剤、ポリマー類、ケーキング防止剤、還元剤、金属イオン捕捉剤、pH調整剤等、洗剤の構成成分として公知の成分を含有する成型体である。被粉砕物は公知の方法により製造することができる。例えば、被粉砕物としては、界面活性剤やアルカリビルダー等を含有する噴霧乾燥用スラリーを噴霧乾燥して噴霧乾燥粒子を製造し、該噴霧乾燥粒子とバインダー成分とを混練機で捏和したドウ状物が挙げられる。また、例えば、得られたドウ状物をペレット状に押出成形したものが挙げられる。
【0025】
被粉砕物に含有される界面活性剤の種類は、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤を一種単独で、又は、二種以上の併用とすることができる。被粉砕物の界面活性剤の含有量は特に限定されないが、例えば、30質量%以下が好ましく、20〜30質量%がより好ましく、22〜29質量%がさらに好ましい。界面活性剤の含有量が少なすぎると、ドウ状物が得られにくいと共に、得られる粒状洗剤組成物の洗浄力が低くなる。界面活性剤の含有量が多すぎると、そもそも洗剤微粉が発生しにくく、本発明の効果が顕著に表れない傾向にある。
【0026】
噴霧乾燥は、公知の方法で行うことができる。例えば、噴霧乾燥用スラリーを噴霧乾燥塔に移送し、該噴霧乾燥塔の塔頂付近に設置された噴霧乾燥用スラリーの微粒化装置から、所定の噴霧圧力で噴霧を行う方法により噴霧乾燥粒子を製造できる。噴霧乾燥塔は特に限定されず、向流式でも並流式でもよく、中でも、熱効率がよい向流式が好ましい。
【0027】
混練機は特に限定されず、公知の装置を使用できる。例えば、密閉式の圧密化処理装置、好ましくは横型連続式のニーダーが好適に挙げられる。ニーダーの他に、一軸又は二軸スクリュー押出機等を用いることもできる。これらの装置は、回分式、連続式のいずれであってもよい。
【0028】
押出成型で成型されるペレット状の成型物の大きさは特に限定されず、粉砕装置8の能力等を勘案して決定することができ、例えば、1〜20mmφが好ましい。
押出成型に用いる押出成型機としては公知の装置を用いることができ、一軸又は二軸スクリュー型押出機やディスク型押出機やロール型押出機を使用することができ、中でも、スクリュー型、二軸型が好ましく、二軸型がより好ましい。
【0029】
粉砕処理は、1台の粉砕装置8を用いて粉砕処理を行ってもよいし、2台以上の粉砕装置8を用い、任意の粉砕装置8の排出口52を他の粉砕装置8の投入口12に連結し、多段に連結した粉砕装置8により粉砕処理を行ってもよい。
粉砕装置8を多段に連結する場合には、2〜3台の粉砕装置8を連結することが好ましく、3台を連結することがより好ましい。加えて、粉砕装置8を多段に連結する場合には、後段に行くほど篩部21の孔径を小さくすることが好ましい。このように粉砕装置8を多段に連結すると共に、後段に行くほど孔26の孔径を小さくすることで、粒度分布をシャープにすることができる。
【0030】
粉砕処理においては、粉砕装置内へ送風を行って被粉砕物の温度制御を行うことが好ましい。好ましくは、粉砕を終えた直後の粉砕物の温度が20〜40℃の範囲となるように、温度制御された冷風または温風を供給する。上記範囲内であると装置付着をより抑制できる。
送風温度は10〜40℃が好ましい。また、送風量は0.1〜5m/kg(被粉砕物の単位質量当たり)が好ましい。
【0031】
粉砕処理では、粉砕助剤を添加することが好ましい。粉砕助剤は、粉砕装置8中に少量添加することにより、粉砕動力の低減、粉砕粒度の改善、粉砕物の性状の改善等の作用を奏する。粉砕助剤の平均粒径は50μm以下が好適であり、好ましくは20μm以下である。また、添加量は被粉砕物の全量に対して0.5〜10質量%が好適である。
粉砕助剤としては、例えば、ステアリン酸塩、A型ゼオライト等のアルミノ珪酸塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等のアルカリ土類金属炭酸塩、非晶質シリカ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム等のケイ酸塩、タルク、ベントナイト等の粘土鉱物、二酸化珪素、二酸化チタン、微粉砕された炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウムが望ましく、アルミノ珪酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩がより好ましく、A型ゼオライトがさらに好ましい。
これらの粉砕助剤が粉砕物表面に付着し、粉砕物の表面活性を低下させることにより、粉砕装置8又は配管等への付着防止を図ると共に、粉砕動力の低減や、粉砕物の流動性改善が図られる。
【0032】
こうして得られる粉砕物の平均粒子径は、200〜1500μmが好ましく、300〜1200μmがより好ましい。平均粒径が1500μmを超えると、洗濯中での溶解性が遅くなり、布付着、洗浄力低下の問題が生じるおそれがある。200μm未満であると、微粉の増加による発塵量の増大と粉砕収率の低下、流動性の悪化につながりやすい。
【0033】
なお平均粒子径は、目開き1680μm、1410μm、1190μm、1000μm、710μm、500μm、350μm、250μm、149μm、の9段の篩と受け皿を用いた分級操作により測定できる。分級操作は、受け皿に目開きの小さな篩から目開きの大きな篩の順に積み重ね、最上部の1680μmの篩の上から100g/回のベースサンプルを入れ、蓋をしてロータップ型ふるい振盪機(株式会社飯田製作所製、タッピング:156回/分、ローリング:290回/分)に取り付け、10分間振動させた後、それぞれの篩及び受け皿上に残留したサンプルを篩目ごとに回収する操作を行う。
この操作を繰すことによって1410〜1680μm(1410μm)、1190〜1410μm(1190μm)、1000〜1190μm(1000μm)、710〜1000μm(710μm)、500〜710μm(500μm)、350〜500μm(350μm)、250〜350μm(250μm)、149〜250μm(149μm)、皿〜149μm(149μm)の各粒子径の分級サンプルを得、質量頻度(%)を算出する。
次に、算出した質量頻度が50%以上となる最初の篩の目開きをaμmとし、またaμmよりも一段大きい篩の目開きをbμmとし、受け皿からaμmの篩までの質量頻度の積算をc%、またaμmの篩上の質量頻度をd%として、下記(1)式によって平均粒子径(質量50%)を求められる。
【0034】
【数1】

【0035】
粉砕物の嵩密度は、用途に応じて決定することができ、例えば、0.6〜1.2g/mLが好ましく、0.7〜1.0g/mLがより好ましい。なお、嵩密度はJIS K3362−1998に準じた測定で得られる値である。
【0036】
上述のとおり、粉砕装置8は、篩部21に回転方向Aに向かって段階的に異なる孔径の孔26が設けられているため、被粉砕物から発生した洗剤微粉が特定の位置に偏って付着することを防止し、粉砕装置8内の清掃頻度を低減し、生産効率の向上が図れる。
洗剤微粉の付着防止の原理は明らかではないが、以下のように推測できる。
粉砕装置8は、粉砕部40が高速で回転し被粉砕物を粉砕するため、粉砕室10内の空気に乱流が生じる。この乱流により粉砕室10で粉砕物が舞い上がって投入口12から排出されないように、投入口12から空気を送り込んだり、排出口52側を投入口12よりも減圧することが多い。こうして、投入口12から排出口52に向かう気流が生じる。
投入口12から排出口52に向かう気流は、粉砕部40の回転で生じる気流の影響を受け、第二の側面56側に傾いた流れとなる。この結果、洗剤微粉は、第二の側面56又は第二の底面57に吹き付けられる量が多くなり、早期に付着・堆積することとなる。
本発明は、篩部21の孔径が回転方向Aに向かって段階的に異なるため、比較的孔径の大きい孔26を投入口12から排出口52に向かう気流が優先して流通することで、該気流を整流し、洗剤微粉が第二の側面56側又は第二の底面57側に偏って流れることを防止することができる。この結果、洗剤微粉が過度に堆積することなく、粉砕装置8内での洗剤微粉の付着を防止できる。
【0037】
加えて、後部篩24の孔径を前部篩22の孔径よりも小さくすることで、第二の側面56側や第二の底面57側に傾きがちな気流を制御し、洗剤微粉の付着抑制の効果をさらに向上することができる。
【0038】
このように、本発明によれば、付着した洗剤微粉の取り除く清掃頻度を低減し、粒状洗剤組成物を効率的に生産できる。
【0039】
上述の実施形態では、粉砕部40を構成する粉砕刃42は、軸部44から径方向に突出するように4枚設けられているが、本発明はこれに限定されず、3枚以下であってもよいし、5枚以上であってもよい。また、粉砕刃42の周方向のピッチは90°に限定されることはない。
加えて、上述の実施形態では、4枚の粉砕刃42を周方向に4枚配置して粉砕刃集合体とし、2個の粉砕刃集合体を回転軸Oに沿って任意の間隔で軸部44に配置しているが、本発明はこれに限定されず、粉砕刃集合体は1個であってもよいし、3個以上であってもよい。
【実施例】
【0040】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(使用原料)
・α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩含有ペースト(ライオン株式会社製)
組成:脂肪酸鎖長;炭素数16/18、含有質量比8/2、有効成分63質量%、ノニオン界面活性剤16質量%、ジ塩及びメチル硫酸塩等の不純物8質量%、水分13質量%
・炭酸ナトリウム:粒灰(ソーダアッシュジャパン株式会社製)
・蛍光剤:チノパールCBS−X(チバ・ジャパン株式会社製)
・水酸化カリウム:フレーク状苛性カリ(旭硝子株式会社製)
・直鎖アルキルベンゼンスルホン酸:ライポンLH−200(ライオン株式会社製)
・LAS−K:直鎖アルキルベンゼンスルホン酸(ライオン株式会社製、ライポンLH−200、AV値(LAS−Hを1g中和するに要する水酸化カリウムのmg数)=180.0)を噴霧乾燥用スラリー中で48質量%水酸化カリウム溶液で中和したもの。表中の配合量は、LAS−Kとしての質量%を示す。
・アクリル酸/マレイン酸コポリマー塩:アクアリックTL−400(株式会社日本触媒製、純分40質量%水溶液)
・ノニオン界面活性剤:ECOROL26(ECOGREEN社製炭素数12〜16のアルキル基をもつアルコール)の酸化エチレン平均15モル付加体(ライオン株式会社製、純分90質量%)
・A型ゼオライト:シルトンB(水澤化学株式会社製、純分80質量%)
・炭酸カリウム:炭酸カリウム(粉末)(旭硝子株式会社製)
・硫酸ナトリウム:中性無水芒硝A0(四国化成株式会社製)
・石鹸:炭素数12〜18の脂肪酸ナトリウム(ライオン株式会社製、純分:67質量%、タイター:40〜45℃、脂肪酸組成:C12:11.7質量%、C14:0.4質量%、C16:29.2質量%、C18F0(ステアリン酸):0.7質量%、C18F1(オレイン酸):56.8質量%、C18F2(リノール酸):1.2質量%、分子量:289)
【0041】
(製造例1)被粉砕物の製造
[噴霧乾燥粒子の調製]
表1の組成に従い、各成分(噴霧乾燥粒子の被覆剤として用いるA型ゼオライト2質量%当量を除く)を攪拌機、ジャケットを有する反応装置内に投入し、水に溶解分散させ(攪拌機のジャケット温度75℃)、固形分濃度60質量%の噴霧乾燥用スラリーを調製した。
次いで、この噴霧乾燥用スラリーを向流式乾燥塔を用いて以下の条件で噴霧乾燥し、噴霧乾燥塔の下部より噴霧乾燥粒子コート被覆剤としてA型ゼオライトの一部(2質量%)を導入して噴霧乾燥粒子を得た。
・噴霧乾燥装置:向流式、塔径2.0m、有効長5.0m。
・微粒化方式:加圧ノズル方式。
・噴霧圧力:30kg/cm
・熱風入口温度:250℃。
・熱風出口温度:100℃。
得られた噴霧乾燥粒子の平均粒子径は約300μm、嵩密度は0.3g/mL、水分含有量は5質量%であった。
噴霧乾燥粒子中の水分含有量(質量%)の測定は、Kett水分計(商品名、株式会社ケツト科学研究所製;赤外線水分計)により測定した。測定条件は170℃、20分で行った。
【0042】
【表1】

【0043】
[被粉砕物の造粒]
得られた噴霧乾燥粒子72.3質量部と、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩含有ペースト15質量部、ノニオン界面活性剤2質量部、水0.5質量部を連続ニーダー(栗本鐵工所社製、KRC−S4型)に投入し、捏和して(ニーダーの回転数135rpm、ジャケット温度:ジャケット入り口5℃、出口25℃(ジャケットに通水して冷却))、ドウ状物を調製した。得られたドウ状物の温度は55±15℃であった。
次いで、得られたドウ状物を、ペレッターダブル(不二パウダル株式会社製、製品名:EXD−100型)に投入し、孔径約10mm、厚さ10mmのダイスから押し出すと同時に切断(カッター周速:5m/s)し、被粉砕物であるペレット状成形体(直径約10mm、長さ70mm以下(実質的には5mm以上))を得た。被粉砕物の界面活性剤の含有量は28.5質量%であった。
【0044】
(実施例1〜6、比較例1)
粉砕装置として、フィッツミル(ホソカワミクロン株式会社製、DKA−3型)を三段に連結した。各段の粉砕装置には、表2に記載の条件に従って円形の孔を設けたスクリーン(図1の粉砕装置8の篩部21に相当)を設置し、図1、2の粉砕装置8と同様の粉砕装置とした。三段目の粉砕装置の排出口は、鉛直方向下方に向かって伸び、その後、略水平方向に屈曲した形状の配管(90度エルボー、60mmφ)を介してサイクロン分離器と接続した。篩部21に相当するスクリーンは前部篩と後部篩とに区分けし、前部篩に形成された孔は全て同じ孔径であり、後部篩に形成された孔は全て同じ孔径である。
粉砕装置にペレット状成形体89.8質量部及び粉砕助剤としてのA型ゼオライト6.5質量部を投入し、送風共存下で被粉砕物を粉砕して粉砕物とし、サイクロン分離器で気流中から粉砕物を分離した。粉砕開始15分後に、付着抑制の評価を行い、その結果を表2に示す。
なお、粉砕部の回転数は、回転数100%=4700rpm(周速約60m/s)に対する割合(%)として、表2に記載した。その他の粉砕条件は以下の通りとした。得られた粉砕物の温度は30±10℃、平均粒子径が350μm、嵩密度は0.85g/mLであった。表中、開口面積比とは、「前部篩の孔の開口面積の合計/後部篩の孔の開口面積の合計」で表される比率である。
・送風温度:15±3℃
・送風量(気/固の比率):2.8±0.25m/kg
・処理速度:230kg/hr
【0045】
(付着抑制の評価方法)
[粉砕装置付着性]
被粉砕物を15分間粉砕した後、粉砕室の内壁及びケーシングの内壁(篩部を除く)に付着した付着物の質量を測定した。それらの質量の和を下記評価基準で評価した。「△」以上を合格とした。なお、下記評価基準は、粉砕装置の実用上の連続運転の期間を目安として区分した。評価基準は、連続運転が2週間以上できるレベルの付着量を「○」、連続運転が1週間以上2週間未満できるレベルの付着量を「△」、連続運転が1週間未満であるレベルの付着量を「×」とした。
【0046】
<評価基準>
○:0g以上10g未満
△:10g以上40g未満
×:40g以上
【0047】
[配管付着性]
被粉砕物を15分間粉砕した後、三段目の粉砕装置の排出口に設置した90度エルボー(60mmφ)に付着した付着物の質量を測定し、下記評価基準で評価した。「○」を合格とした。なお、下記評価基準は、粉砕装置の実用上の連続運転の期間を目安として区分した。評価基準は、連続運転が2週間以上できるレベルの付着量を「○」、連続運転が1週間以上2週間未満できるレベルの付着量を「△」、連続運転が1週間未満であるレベルの付着量を「×」とした。
【0048】
<評価基準>
○:0g以上0.1g未満
△:0.1g以上0.2g未満
×:0.2g以上
【0049】
【表2】

【0050】
表2に示すように、本発明の粉砕装置を用いた実施例1〜6は、粉砕装置付着性、配管付着性が共に良好であった。後部篩の孔径を前部篩の孔径よりも小さくした実施例3は、後部篩の孔の孔径を前部篩の孔の孔径よりも大きくした実施例4に比べて一段目の粉砕装置において粉砕装置付着性に優れていることが判った。
これに対し、単一の孔径の孔を設けた曲面を用いた比較例1は、一段目の粉砕装置付着性が「×」、さらに配管付着性が「×」であった。
【符号の説明】
【0051】
8 粉砕装置
10 粉砕室
21 篩部
22 前部篩
24 後部篩
20 曲面
26 孔
40 粉砕部
41 先端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉砕室と、該粉砕室の内部に設けられ、略水平方向を軸線として回転し被粉砕物を粉砕する粉砕部とを有し、
前記粉砕室の下部は、前記粉砕部の先端の軌跡に近接する曲面とされ、
該曲面には、前記粉砕部の回転方向に向かって段階的に異なる孔径の孔が形成されていることを特徴とする粉砕装置。
【請求項2】
前記粉砕部の回転方向に対し、前記曲面の下端から後方に設けられた孔の孔径は、該下端から前方に設けられた孔の孔径よりも小さいことを特徴とする、請求項1に記載の粉砕装置。
【請求項3】
請求項1又は2の粉砕装置を用いて、界面活性剤を含有する捏和物を粉砕することを特徴とする、粒状洗剤組成物の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−207749(P2010−207749A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58114(P2009−58114)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】