説明

粉粒体の熱処理装置

【課題】長時間の連続運転ができ、減菌するとともに品質のばらつきの少ない一定品質の熱処理した粉粒体を得ることができる粉粒体の熱処理装置を提供する。
【解決手段】粉粒体の投入口および排出口、飽和蒸気の吹込口ならびに水または温湯の供給口を備える円筒形外側圧力容器と、投入口および排出口に連通する粉粒体の導入口および導出口ならびに飽和蒸気が流通する多孔板を備え、円筒形外側圧力容器内に配置される円筒形内側攪拌容器と、円筒形内側攪拌容器内に導入された粉粒体を撹拌しながら導出口に向けて移送する撹拌手段と、攪拌される粉粒体に水または温湯をスプレー状に加水するためのスプレーノズルとを有し、円筒形内側攪拌容器内に導入された粉粒体を撹拌しながら、水または温湯をスプレー状に加水しつつ、多孔板を通して導入された飽和蒸気によって熱処理することことにより、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飽和蒸気(飽和水蒸気)を用いて粉粒体を熱処理することにより減菌するとともに、品質のばらつきの少ない一定品質の熱処理した粉粒体を得るための、すなわち、後に所定条件で加水処理したときに品質のばらつきのない、もしくは、品質のばらつきを抑えることのできる熱処理した粉粒体を得ることができる粉粒体の熱処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、穀物や加工食品や医薬品などの粉粒体を過熱蒸気や飽和蒸気を用いて殺菌する装置が知られている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
特許文献1に記載の粉粒体の減菌装置は、加圧容器内に飽和蒸気を吹き込みつつ、加圧容器内で攪拌羽根によって粉粒体を攪拌して移送させながら飽和蒸気によって加熱殺菌するものである。この減菌装置は、固定された加圧容器内において攪拌羽根が密に植設された攪拌軸を回転させるので、高速な回転が可能であり、粉粒体を短時間で効率よく大量に減菌処理することができ、小麦粉などの殺菌処理に適用できるものである。すなわち、この減菌装置は、粉粒体、特に小麦粉、そば粉などの穀粉を変質させることなく短時間で効果的に減菌することができるものである。
【0003】
一方、特許文献2に記載の殺菌機は、上端部に開閉される被殺菌物の供給口を持ち、下端部に開閉される排出口を持つ密封状態の缶体内に、飽和蒸気、過熱蒸気、高圧蒸気、低圧蒸気などの蒸気を供給管から噴出させつつ、缶体内において供給口から排出口に亘る、内壁に多数の桟が配設された攪拌胴を回転させながら、攪拌胴内の被殺菌物を攪拌して移送させながら加熱殺菌、加熱変性等の加熱処理を行うものである。また、この殺菌機は、攪拌胴の回転数を制御することにより、被殺菌物が回転攪拌胴を通過する時間を制御し、被殺菌物の処理時間を制御することができるものである。
【0004】
こうして、この殺菌機は、蒸気の供給による完全な殺菌が可能で、リーフ、粒、粉、等の多種類な原料に対応でき、簡単に扱えて、多種、多量の原料を原料品質を損なわず、充分な攪拌でムラをなくし、湿熱の殺菌効果が充分に発揮できる流動型で被殺菌物の色素、組織、風味等の品質劣化を防ぐことができるというものである。
また、この殺菌機は、攪拌胴の回転支持ローラを枠体に設け、この該枠体を缶体内に付設したレール上を移動させて攪拌胴を缶体内より取り外し自在とし、また、供給口から供給された被殺菌物を攪拌胴に供給するための、筒に覆われた螺旋状の巻線を缶体内に出入れ自在に設けることにより、コンパクトで安価で、丸洗い可能なものとされている。
【0005】
【特許文献1】特許第2784505号公報
【特許文献2】特開平10−075990号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載の殺菌機は、缶体内で被殺菌物を攪拌・移送するのに攪拌胴を回転させるため、攪拌胴の回転数を高速にするには限界があり、被殺菌物を大量に処理することができないという問題があった。また、この殺菌機は、缶体内を密封状態にするために、缶体の供給口および排出口を開閉するための複雑な機構のスイングバルブが必要であるし、缶体の供給口から供給された被殺菌物を、回転する攪拌胴に供給するのに、缶体の供給口から回転する攪拌胴内まで移送するための、筒に覆われた螺旋状の巻線よりなる羽根を回転させる複雑な機構が必要があるという問題があった。
さらに、被殺菌物の温度を直接測定することや、被殺菌物に加水を行うことが回転する攪拌胴のために行えないという問題があった。
【0007】
ところで、特許文献1に記載の粉粒体の減菌装置で粉粒体の減菌処理の連続運転を続けていると、例えば、小麦粉を減菌する処理を長時間に亘り続けていると、加圧容器の内壁に、飽和蒸気の冷却による結露が生じると、生じた結露に極少量の小麦粉が混合され、この混合物が飽和蒸気に触れて変性することが繰り返されるために、攪拌羽根と加圧容器との隙間に飽和蒸気の水分と熱によって変性した小麦粉の塊が形成され、場合によってはこれが剥がれて、減菌装置の運転を停止しなければならなくなるという問題があった。
なお、この粉粒体の減菌装置を起動する際には、その圧力容器は冷却されているので、飽和蒸気によって圧力容器が十分に加熱されるまでは、必ず飽和蒸気は結露するため、運転開始が可能になる時に完全に結露を無くすことはできないし、圧力容器内に完全に結露が無くなってから運転開始しようとすると、運転開始までに時間がかかりすぎるという問題があった。
【0008】
また、近年、特許文献1に記載の粉粒体の減菌装置等で減菌処理された粉粒体、例えば減菌処理小麦粉の場合は、これを水に溶いて調味料やその他の材料などを添加して、てんぷらやフライなどの揚げ物用バッターとして用いられることがある。
このように揚げ物の用途で用いられるバッター粉は、加水してバッターに調整した際の粘度が重要な品質管理項目であり、これが適正な値になるように、高い吸水性を持つα化澱粉などを添加してバッターの粘度を整えているのが実情である。
しかし、より純良なバッターを提供するには、α化澱粉のような副材に頼ることなく、小麦粉そのものの吸水性を向上させることが必要とされる。そのためには、特許文献1に記載の粉粒体の減菌装置を用いた減菌処理過程で、飽和水蒸気処理だけでなく加水処理をも行うことが効果的であることが分かった。
【0009】
そこで、本発明者等は、特許文献1に記載の粉粒体の減菌装置を用い、飽和水蒸気および水を加えて小麦粉を処理してみたところ、結露のために小麦粉と水の混合物が装置内部へ多量に付着し、長時間の運転では圧力容器や粉粒体排出口ならびにロータリーバルブが閉塞してしまうという問題に見舞われた。また、飽和水蒸気の結露による水分増加と、加水による水分増加を適切にコントロールできないため、得られた処理小麦粉を用いて調整したバッターは品質(特に粘度)が一定にならないという問題があり、特許文献1に記載の粉粒体の減菌装置を用いて、品質が一定のバッター粉を製造することは殆ど不可能であった。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、上記従来技術の問題点を解消し、飽和水蒸気処理だけでなく加水処理を行っても、装置内部に結露を生じさせることなく、長時間の連続運転が可能で、しかも処理水分のむらがなく、品質が均一な熱処理された粉粒体を得ることができる粉粒体の熱処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、一端近くに粉粒体の投入口、他端近くに粉粒体の排出口を備え、さらに、飽和蒸気の吹込口および水または温湯の供給口を備える円筒形外側圧力容器と、前記投入口に連通する粉粒体の導入口、前記排出口に連通する粉粒体の導出口および前記飽和蒸気が流通可能な多孔板を備え、前記円筒形外側圧力容器内に配置される円筒形内側攪拌容器と、前記円筒形内側攪拌容器内に配置され、前記投入口から投入され、前記導入口を経て前記円筒形内側攪拌容器内に導入された粉粒体を撹拌しながら前記導出口に向けて移送する撹拌手段と、前記円筒形内側攪拌容器に配置され、その内部に導入され、前記攪拌手段によって攪拌される粉粒体に水または温湯をスプレー状に加水するための、前記供給口に連通するスプレーノズルとを有し、前記投入口から投入され、前記導入口から前記円筒形内側攪拌容器内に導入された粉粒体を、前記撹拌手段によって撹拌しながら、前記スプレーノズルから水または温湯をスプレー状に加水しつつ、前記吹込口から吹き込まれ、前記多孔板を通して導入された飽和蒸気によって熱処理することを特徴とする粉粒体の熱処理装置を提供するものである。
【0012】
ここで、前記円筒形外側圧力容器は、前記排出口側の前記他端側に開閉可能な開閉蓋を備えるのが好ましい。
また、前記円筒形内側攪拌容器は、その両端の少なくとも一方に円形の前記多孔板を備えるのが好ましい。
また、前記多孔板は、前記円筒形内側攪拌容器の前記導入口側の前記一端側に設けられる円形のパンチングプレートであるのが好ましい。
また、前記円筒形内側攪拌容器は、互いに接する複数の円筒形内部カートリッジからなり、前記複数の円筒形内部カートリッジの各々は、前記円筒形外側圧力容器内に、配設された少なくとも2本のガイドレールによって移動可能に支持されるのが好ましい。
【0013】
また、前記撹拌手段は、回転攪拌軸およびこの攪拌軸上に植設された、前記円筒形内側攪拌容器の円筒内径に近い寸法の複数の棒状羽根を備えるのが好ましい。
また、前記複数の棒状羽根は、前記回転攪拌軸上に周囲に向かってラセン状に植設され、前記回転攪拌軸に対して直角方向から見た回転軌跡が前記回転攪拌軸の軸方向にほとんど隙間なく並ぶように配列されるのが好ましい。
また、前記回転攪拌軸は、前記他端側の先端は、前記円筒形内側攪拌容器から延在し、前記円筒形外側圧力容器の内側に、固定手段によって取り外し可能に固定された支持部材で支持された軸受ユニットによって回転可能に支持され、前記一端側の先端は、前記円筒形内側攪拌容器から延在し、前記円筒形外側圧力容器の側板の外側に取り付けられた軸受ユニットによって回転可能に支持され、前記回転攪拌軸と前記円筒形外側圧力容器の側板との間は、シール部材によって気密にシールされるのが好ましい。
また、熱処理前の粉粒体は、マテリアルシールスクリュを介して前記円筒形外側圧力容器の前記投入口に供給されるのが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、飽和蒸気を用いて粉粒体を熱処理する際に、円筒形外側圧力容器と円筒形内側攪拌容器との間に飽和蒸気を吹き出させて、円筒形外側圧力容器内に配置される、飽和蒸気が流通可能な円筒形内側攪拌容器内において粉粒体を攪拌するようにして、飽和蒸気による熱処理を行うようにしたので、円筒形内側攪拌容器の内壁などの粉粒体と接する部分に結露を生じさせることが無いので、長時間の連続運転ができ、さらに、飽和蒸気を用いると共に水または温湯を添加して粉粒体を熱処理することにより、減菌すると共に品質のばらつきの少ない一定品質の熱処理した粉粒体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る粉粒体の熱処理装置について、添付の図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1(a)は、本発明に係る粉粒体の熱処理装置の一実施形態を概念的に示す正面断面図であり、(b)は、(a)に示す熱処理装置のIB−IB線断面図である。また、図2(a)は、図1(a)に示す熱処理装置の上面断面図であり、(b)は、(a)に示す熱処理装置のIIB−IIB線断面図である。また、図3は、図1(a)に示す熱処理装置の端面模式図である。
【0016】
図1(a)〜図3に示す粉粒体の熱処理装置10は、小麦粉等の穀粉や穀粒等の穀物、加工食品、薬品原料などの粉粒体の減菌や殺菌などを行うと共に、後に所定条件下で加水をすることを前提とした前処理を行うためのものであって、所定圧力に維持される円筒形外側圧力容器(以下、圧力容器という)12と、圧力容器12内に配置される円筒形内側攪拌容器(以下、攪拌容器という)14と、攪拌容器14内に配置される撹拌機16とを有する。ここで、攪拌容器14および撹拌機16は、横型高速ミキサーを構成する。
【0017】
ここで、圧力容器12は、その内部を加熱殺菌(減菌)するための飽和蒸気によって所定の圧力に維持するもので、基端近くの略中央部に粉粒体の投入口18aを備え、先端近くの下側に粉粒体の排出口18bを備える円筒胴体18と、円筒胴体18の先端側の円形開口を開閉自在に閉塞する先端鏡板20と、円筒胴体18の基端側の円形開口を閉塞する基端側蓋部材22とを有する。なお、先端鏡板20は、円筒胴体18に取り付けられた腕19に設けられた軸20aを支点として回動することにより開閉され、閉止時、図示しないロック機構によりロックされる。
【0018】
基端側蓋部材22の上部には、飽和蒸気の吹込口24aとなる飽和蒸気の供給管24が取り付けられ、その先端の飽和蒸気の吹出口24bが圧力容器12内の基端側蓋部材22と攪拌容器14との間に下向きに配置される。なお、飽和蒸気は、図示しないボイラーから蒸気ヘッダを介して供給されるようになっている。
また、円筒胴体18は、さらに、基端近くの横側に設けられ、攪拌容器14内で攪拌される粉粒体に加水するための水または温湯の供給口18cと、上側に設けられ、攪拌容器14内の圧力が高くなり過ぎないように機能する安全弁18dと、先端近くの上側に設けられ、先端鏡板20を開放する前に圧力容器12内の圧力を大気開放するための開閉弁18eと、下側に設けられ、吹出口24bから圧力容器12内に吹き出した飽和蒸気が冷えて結露した水分を圧力容器12から排出するためのドレンセパレータ18fとを備える。
【0019】
次に、攪拌容器14は、圧力容器12の投入口18aから投入された粉粒体、吹込口24aから供給管24を経てその先端の吹出口24bから吹き出された飽和蒸気および供給口18cから供給された水または温湯を内部に受け入れ、内部に配置された攪拌機16によって粉粒体を攪拌しながら、圧力容器12の排出口18bに向けて移送すると共に、飽和蒸気によって粉粒体を熱処理すると共に、粉粒体に水または温湯をスプレー状に散布するものである。
【0020】
攪拌容器14は、4つの円筒状分割カートリッジ26a、26b、26cおよび26dからなる円筒ケーシング26と、円筒ケーシング26の基端側および先端側の円形開口に取り付けられ、飽和蒸気が流通可能な円形の多孔板であるパンチングプレート28aおよび28bとを備える。なお、分割カートリッジ26a、26b、26cおよび26dは、それぞれ、圧力容器12内に配設された図示しない少なくとも2本のガイドレールによって移動可能に支持されるのが好ましい。このように構成することにより、攪拌容器14の洗浄はもちろん、圧力容器12内の清掃や洗浄なども容易となり、その結果、熱処理対象の粉粒体の変更を容易に行うことができ、その結果、種々の粉粒体を熱処理することができる。
ここで、円筒ケーシング26の基端側および先端側の円形開口の一方の円形の多孔板に代えて、単なる円板からなるめくら板を用いても良いが、この場合には、先端側を円板とし、飽和蒸気の吹出口24bに近い基端側をパンチングプレート28aとするのが好ましい。
【0021】
円筒ケーシング26の基端側の分割カートリッジ26aには、圧力容器12の投入口18aに連通する導入口27aが設けられ、先端側の分割カートリッジ26dには、圧力容器12の排出口18bに連通する導出口27bが設けられる。
なお、攪拌容器14の導入口27aは、圧力容器12内の圧力保持のために、圧力容器12の投入口18a内に設けられ、後述するマテリアルシールスクリュ44に連通する小径の管路25によって構成される。一方、圧力容器12の排出口18bは、攪拌容器14の円形状の導出口27bを受け入れるように、少し大径の円形状をなす。なお、両者は、金属接触で接続しても良いが、図示しないバンドなどで接続して、接続部分で粉粒体の漏れが無いようにするのが好ましい。
【0022】
円筒ケーシング26の基端側の分割カートリッジ26aには、圧力容器12の投入口18aの近くに水または温湯の供給口18cと管路などによって連通するスプレーノズル27cが取り付けられており、攪拌容器14内の粉粒体に向けてスプレーノズル27cから水または温湯がスプレー状に散布され、加水される。ここで、散布された水または温湯は熱容量が大きいので、飽和蒸気による減菌や殺菌を助長する機能も持つ。
なお、加水量は、特に制限的ではなく、熱処理される粉粒体の特性や、求められる性状に応じて適宜選択すればよい。特に、バッター粉として利用される小麦粉の場合には、適切な粘度を発現させるために、小麦粉の質量に対して3〜10%程度の水分を散布するのが好ましい。
【0023】
攪拌機16は、攪拌容器14内に配置されて、圧力容器12の投入口18aから投入され、導入口27aを経て攪拌容器14内に導入された粉粒体を撹拌しながら導出口27bに向けて移送するためのもので、高速回転する攪拌軸30と、この攪拌軸30上に植設された、攪拌容器14の円筒内径に近い寸法の複数のピン状の攪拌羽根32とを備える。ここで、複数の攪拌羽根32は、攪拌軸30上に周囲に向かってラセン状に植設され、攪拌軸30に対して直角方向から見た回転軌跡が攪拌軸30の軸方向にほとんど隙間なく並ぶように配列されるのが好ましい。
【0024】
ところで、図1(a)〜図3から明らかなように、撹拌機16は、攪拌軸30の周囲にらせん状に等間隔に多数のピン状の攪拌羽根32が植設されており、攪拌軸30を展開すると図4ようになる。ピン状の攪拌羽根32が並ぶ直線は、図4において攪拌軸30の軸線に垂直な線に対して10゜42′の角度をなしているが、この角度に限定されるものではない。ピン状の攪拌羽根32は、攪拌軸30の軸線に垂直な方向(図で白矢印で示す)から見たとき、ピン状の攪拌羽根32の回転軌跡がほとんど隙間なく並ぶような間隔および本数で配列されている。
【0025】
熱処理装置10の先端側の攪拌軸30の先端は、攪拌容器14のパンチングプレート28bから延在し、圧力容器12の内側に、図示しないナットなどの固定手段によって取り外し可能に固定されたホイール状の支持部材34で支持された軸受ユニット36によって回転可能に支持される。一方、攪拌軸30の基端側の先端は、攪拌容器14のパンチングプレート28aから延在し、圧力容器12の蓋部材22の外側に取り付けられた軸受ユニット38によって回転可能に支持される。
また、攪拌軸30と圧力容器12の蓋部材22との間は、シール部材40によって気密にシールされる。
なお、攪拌軸30は、パンチングプレート28aおよび28bの中央開口に挿通されるが、攪拌軸30とこれらの中央開口との間は、熱処理される粉粒体が漏れなければシールの必要はなく、粉粒体が漏れない程度の隙間としても良いし、粉粒体が漏れないように攪拌軸30またはパンチングプレート28aおよび28bの中央開口にブラシや柔軟部材などを取り付けても良い。
【0026】
また、本発明の粉粒体の熱処理装置10は、図3に示すように、さらに、粉粒体を保持するホッパ42と、ホッパ42から供給される粉粒体を圧力容器12を経て攪拌容器14に圧力遮断状態で移送して、基端近くに設けられた後述する投入口18aから供給するマテリアルシールスクリュ44と、圧力容器12の先端近くに設けられた後述する排出口18bから殺菌された粉粒体を排出するためのロータリーバルブ46とを有する。
【0027】
本発明の粉粒体の熱処理装置は、基本的に以上のように構成されるものであるが、以下に、その作用について説明する。
ここで、図1(a)〜図4に示す上記構成の熱処理装置10を用いて、粉粒体を熱処理し、殺菌および水分調整のための加水をするには、予め、圧力容器12内に吹出口24bから飽和蒸気を吹き出させて、圧力容器12、攪拌容器14および攪拌機16などを十分に加熱し、少なくとも攪拌容器14内に結露を生じさせることがないように暖機運転をする。この間、圧力容器12内で飽和蒸気が冷えて結露した水分は、ドレンセパレータ18fから排出される。
【0028】
この暖機運転の後、圧力容器12内に吹出口24bから飽和蒸気を吹き出させ、かつ攪拌容器14内の攪拌機16の攪拌軸30を高速で回転させた状態で、ホッパー42から熱処理(減菌、殺菌、加水)すべき粉粒体をマテリアルシールスクリュ44により加圧容器12の投入口18aから導入口27aを経て攪拌容器14内に供給する。
その結果、粉粒体は、攪拌容器14内において撹拌機16により導入口27aから導出口27bに向かって移送されながら撹拌されつつ、吹出口24bから吹き出し、パンチングプレート28aおよび/または28bを経て攪拌容器14内に流入した飽和水蒸気とまんべんなく混合され、それにより殺菌または減菌されるとともに、水または温湯の供給口18cから供給され、スプレーノズル27cから粉粒体に応じて所定量散布されたスプレー状の水分とも、まんべんなく混合され、それにより適切に加水される。
【0029】
こうして、十分に殺菌され、適切に加水された熱処理済粉粒体は、導出口27bを経て攪拌容器14から導出され、圧力容器12の排出口18bからロータリバルブ46を経て排出される。
こうして得られた熱処理済粉粒体は、これが小麦粉の場合、十分に殺菌されまたは減菌されていることはもちろん、適切に加水されて熱処理されているため、これに加水してバッターとし、その後、油で揚げた際には、揚げた衣がサクサク感を持ち、また、口溶けの良さが向上している。
【0030】
もちろん、図示例の熱処理装置10は、飽和蒸気を用いて粉粒体を熱処理する際に、圧力容器12と攪拌容器14との間に吹出口24bから飽和蒸気を吹き出させて、圧力容器12内に配置された攪拌容器14内において粉粒体を攪拌するようにし、飽和蒸気による熱処理(殺菌)を行うようにしたので、粉粒体にスプレーノズル27cから水分をスプレー状に散布しても、攪拌容器14の内壁などの粉粒体と接する部分に結露を生じさせることが無い。
このため、図示例の熱処理装置10は、長時間の連続運転ができる。
【0031】
また、図示例の熱処理装置10は、粉粒体にスプレーノズル27cから水分を散布することなく、攪拌容器14内において粉粒体を攪拌しながら、流入した飽和蒸気のみによる殺菌を行うことができるのはもちろんであり、この場合には、殺菌装置または減菌装置として機能させることができる。
したがって、本発明の熱処理装置は、粉粒体の殺菌または減菌とともに後の加水処理の前加水処理を予め行うこともできるし、単に、粉粒体の殺菌または減菌のみを行うこともできる。すなわち、本発明の熱処理装置は、用途や粉粒体の特性になどに応じて、水分調整済の加熱処理済粉粒体の製造装置としても、殺菌または減菌装置としても用いることができる。
なお、本発明の熱処理装置を用いて、得られた加熱処理済粉粒体は、処理前の原料粉粒体に比べて、当然水分が多いので、乾燥装置などにおける乾燥工程を通して水分を調節する必要がある。このような乾燥には、例えば、気流乾燥が使われる。
【0032】
上記実施例では、撹拌羽根32としてピン状(棒状)の羽根、例えばピン(棒)を用いているが、本発明はこれに限定されず、どのような攪拌羽根を用いても良いが、断面が長方形である板羽根よりは正方形や円に近い棒状の羽根の方が高い殺菌効果を示すので好ましい。さらに、この棒状の撹拌羽根は、粉粒体に対する撹拌機能のほかに移送機能を有する必要があるが、そのためには上記実施例のように、回転軸の周囲にらせん状に配列されるだけでなく、回転軌跡がほとんど隙間なく並ぶようになれば他の配列状態でもよい。
【0033】
また、ロータリーバルブでのシールは、その構造上内圧が高い場合は、高圧気体(この場合飽和蒸気)が逃げるが、飽和蒸気の場合は、これが結露して粉粒体を固め運転不能になってしまうことが多い。圧力容器12内の攪拌容器14への粉粒体の供給に関しては、特にこの傾向が強い。
それに対して、マテリアルシールスクリュを用いることにより、100%の充填率で次々と送り込まれる粉粒体そのもので気密が保たれるため、内部の水蒸気が漏れることがなく、その結果、このような不都合が生ずることはない。
【0034】
なお、上記実施例においては、粉粒体を、加圧下で、回転攪拌軸に対して直角方向から見た回転軌跡がほとんど隙間なく並ぶように配列された複数の棒状羽根により撹拌しながら飽和蒸気、もしくは、飽和蒸気およびスプレー状に散布された水分とまんべんなく混合して加熱するように構成したので、粉粒体が飽和蒸気、もしくは飽和蒸気および水分と充分に且つ均一に混合されて短時間で高い殺菌効果が得られる。
一方、上記実施例において、加熱殺菌や減菌に使用された飽和蒸気は、水分となって、そのまま粉粒体中に添加されるが、このとき撹拌の効果により、かたまりやブロックやだまにならず均一に添加される。
【0035】
また、上記実施例においては、攪拌容器内における飽和蒸気による結露の発生を防ぐことができるので、攪拌容器内に水分と熱によって変性した粉粒体が壁面に張り付くことがなく、その結果、攪拌機能が阻害されることがなくスムーズな連続運転が長期に亘ってできる。
【0036】
以上、本発明に係る粉粒体の熱処理装置について実施例を挙げて詳細に説明したが、本発明は、上記実施例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や設計の変更を行ってもよいのは、もちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】(a)は、本発明に係る粉粒体の熱処理装置の一実施形態を概念的に示す正面断面図であり、(b)は、(a)に示す熱処理装置のIB−IB線断面図である。
【図2】(a)は、図1(a)に示す熱処理装置の上面断面図であり、(b)は、(a)に示す熱処理装置のIIB−IIB線断面図である。
【図3】図1(a)に示す熱処理装置の端面模式図である。
【図4】図1(a)に示す熱処理装置に用いられる撹拌羽根の一実施例の展開図である。
【符号の説明】
【0038】
10 粉粒体の熱処理装置(熱処理装置)
12 円筒形外側圧力容器(圧力容器)
14 円筒形内側攪拌容器(攪拌容器)
16 撹拌機
18 円筒胴体
18a 粉粒体の投入口(投入口)
18b 粉粒体の排出口(排出口)
18c 水または温湯の供給口(供給口)
18d 安全弁
18e 開閉弁
18f ドレンセパレータ
20 先端鏡板
22 基端側蓋部材(蓋部材)
24 飽和蒸気の供給管
24a 飽和蒸気の吹込口(吹込口)
24b 飽和蒸気の吹出口(吹出口)
25 管路
26 円筒ケーシング
26a、26b、26c、26d 円筒状分割カートリッジ
27a 粉粒体の導入口(導入口)
27b 粉粒体の導出口(導出口)
27c スプレーノズル
28a、28b パンチングプレート
30 攪拌軸
32 ピン状の攪拌羽根(攪拌羽根)
34 ホイール状の支持部材
36、38 軸受ユニット
40 シール部材
42 ホッパ
44 マテリアルシールスクリュ
46 ロータリーバルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端近くに粉粒体の投入口、他端近くに粉粒体の排出口を備え、さらに、飽和蒸気の吹込口および水または温湯の供給口を備える円筒形外側圧力容器と、
前記投入口に連通する粉粒体の導入口、前記排出口に連通する粉粒体の導出口および前記飽和蒸気が流通可能な多孔板を備え、前記円筒形外側圧力容器内に配置される円筒形内側攪拌容器と、
前記円筒形内側攪拌容器内に配置され、前記投入口から投入され、前記導入口を経て前記円筒形内側攪拌容器内に導入された粉粒体を撹拌しながら前記導出口に向けて移送する撹拌手段と、
前記内側攪拌容器に配置され、その内部に導入され、前記攪拌手段によって攪拌される粉粒体に水または温湯をスプレー状に加水するための、前記供給口に連通するスプレーノズルとを有し、
前記投入口から投入され、前記導入口から前記円筒形内側攪拌容器内に導入された粉粒体を、前記撹拌手段によって撹拌しながら、前記スプレーノズルから水または温湯をスプレー状に加水しつつ、前記吹込口から吹き込まれ、前記多孔板を通して導入された飽和蒸気によって熱処理することを特徴とする粉粒体の熱処理装置。
【請求項2】
前記円筒形外側圧力容器は、前記排出口側の前記他端側に開閉可能な開閉蓋を備える請求項1に記載の粉粒体の熱処理装置。
【請求項3】
前記円筒形内側攪拌容器は、その両端の少なくとも一方に円形の前記多孔板を備える請求項1または2に記載の粉粒体の熱処理装置。
【請求項4】
前記多孔板は、前記円筒形内側攪拌容器の前記導入口側の前記一端側に設けられる円形のパンチングプレートである請求項3に記載の粉粒体の熱処理装置。
【請求項5】
前記円筒形内側攪拌容器は、互いに接する複数の円筒形内部カートリッジからなり、前記複数の円筒形内部カートリッジの各々は、前記円筒形外側圧力容器内に、配設された少なくとも2本のガイドレールによって移動可能に支持される請求項1〜4のいずれかに記載の粉粒体の熱処理装置。
【請求項6】
前記撹拌手段は、回転攪拌軸およびこの回転攪拌軸上に植設された、前記円筒形内側攪拌容器の円筒内径に近い寸法の複数の棒状羽根を備える請求項1〜5のいずれかに記載の粉粒体の熱処理装置。
【請求項7】
前記複数の棒状羽根は、前記回転攪拌軸上に周囲に向かってラセン状に植設され、前記回転攪拌軸に対して直角方向から見た回転軌跡が前記回転攪拌軸の軸方向にほとんど隙間なく並ぶように配列される請求項6に記載の粉粒体の熱処理装置。
【請求項8】
前記回転攪拌軸は、
前記他端側の先端は、前記円筒形内側攪拌容器から延在し、前記円筒形外側圧力容器の内側に、固定手段によって取り外し可能に固定された支持部材で支持された軸受ユニットによって回転可能に支持され、
前記一端側の先端は、前記円筒形内側攪拌容器から延在し、前記円筒形外側圧力容器の側板の外側に取り付けられた軸受ユニットによって回転可能に支持され、
前記回転攪拌軸と前記円筒形外側圧力容器の側板との間は、シール部材によって気密にシールされる請求項6または7に記載の粉粒体の熱処理装置。
【請求項9】
熱処理前の粉粒体は、マテリアルシールスクリュを介して前記円筒形外側圧力容器の前記投入口に供給される請求項1〜8のいずれかに記載の粉粒体の熱処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−34038(P2009−34038A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−201037(P2007−201037)
【出願日】平成19年8月1日(2007.8.1)
【出願人】(000226998)株式会社日清製粉グループ本社 (125)
【Fターム(参考)】