説明

粉粒体処理装置、および粉粒体処理システム

【課題】処理ガスの供給を均一化することにより、粉粒体の処理時間を大幅に短縮することができる粉粒体処理装置を提供する。
【解決手段】粉粒体処理装置1は、容器2、処理槽3と、ロート部4とを備えている。容器2は、粉粒体を内部に投入する投入口9を有する。処理槽3は、投入口9から投入される粉粒体を受ける。処理槽3は、下方に行くほど細くなる形状をしている。処理槽3は、少なくとも下部が粉粒体を処理する処理ガスの通過を許す通気性を有する材料で作製されている。しかも、処理槽3の下端には、処理槽3の内部の粉粒体を排出する排出口10が形成されている。ロート部4は、処理槽3の下端付近に配置されている。ロート部4は、粉粒体を排出口10へすべり落とす。ロート部4は、通気性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉粒体を処理ガスを用いて処理する粉粒体処理装置、および粉粒体処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、特許文献1に記載されているように、粉粒体材料に対して乾燥処理するために、粉粒体材料を貯留する貯留槽に下方から熱流を供給する粉粒体処理装置が用いられている。
【0003】
また、特許文献2に記載されているように、粉粒体材料に対して冷却処理するために、下方に行くほど細くなる形状をしている処理槽(ホッパ)を有する逆円錐状の充填層式冷却装置が用いられている。この充填層式冷却装置では、本体下部を構成する逆円錐状の下部コーンの側面から給気管を介して冷却用の空気を導入している。
【特許文献1】特開平5−240581号公報
【特許文献2】特開2000−327379号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、中空逆円錐状の処理槽の全体を通気性を有する材料で製造して処理槽の下方から熱風を送り込めるようにしても、中空逆円錐状の処理槽下端の排出口に粉粒体を落下しやすいようにロート部を設けた場合には、熱風は、ロート部を通過しないので処理槽の下端付近に導入できないため、粉粒体の層の中央上部付近の昇温が著しく遅くなり、粉粒体の層に均一に通過することができなくなり、運転時間のロスや温度ムラによる品質低下が生じるおそれがある。
【0005】
本発明の課題は、処理ガスの供給を均一化することにより、粉粒体の処理時間を大幅に短縮することができる粉粒体処理装置、および粉粒体処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明の粉粒体処理装置は、容器と、処理槽と、ロート部とを備えている。容器は、粉粒体を内部に投入する投入口を有する。処理槽は、投入口から投入される粉粒体を受ける。処理槽は、下方に行くほど細くなる形状をしている。処理槽は、少なくとも下部が粉粒体を処理する処理ガスの通過を許す通気性を有する材料で作製されている。しかも、処理槽の下端には、処理槽の内部の粉粒体を排出する排出口が形成されている。ロート部は、処理槽の下端付近に配置されている。ロート部は、粉粒体を排出口へすべり落とす。ロート部は、通気性を有する。
【0007】
ここでは、粉粒体を排出口へすべり落とすロート部が通気性を有しているので、処理ガスがロート部を通ることが可能になる。このため、ロート部近傍の粉粒体の層における淀み領域が大幅に縮小され、処理ガスを粉粒体の層に均一に通過することが可能になり、運転時間のロスや温度ムラによる品質低下を解消できる。とくに処理槽中心部における処理時間が短縮される。
【0008】
第2発明の粉粒体処理システムは、第1発明から第1発明の粉粒体処理装置の複数台が粉粒体を連続的に処理できるように互いに連結されることにより構成されている。
【0009】
ここでは、粉粒体処理システムが上記の粉粒体処理装置の複数台が粉粒体を連続的に処理できるように互いに連結されることにより構成されているので、粉粒体の処理速度を大幅に向上することが可能である。
【0010】
第3発明の粉粒体処理システムは、第2発明の粉粒体処理システムであって、複数台の粉粒体処理装置は、予熱処理装置、フッ素化処理装置、脱気処理装置、および冷却処理装置のうちの少なくとも2つを選択したものから構成されている。予熱処理装置は、粉粒体に加熱ガスを供給して、粉粒体を予熱する。フッ素化処理装置は、粉粒体にフッ素ガスを供給して、粉粒体をフッ素化処理する。脱気処理装置は、粉粒体に脱気ガスを供給して、粉粒体を脱気する。冷却処理装置は、粉粒体に冷却ガスを供給して、粉粒体を冷却する。選択された少なくとも2つの処理装置は、直列に連結されている。
【0011】
ここでは、粉粒体処理システムが、予熱処理装置とフッ素化処理装置と脱気処理装置と冷却処理装置のうちから選択された少なくとも2つの処理装置が直列に連結されているので、フッ素樹脂の粉粒体を処理する速度を大幅に向上することが可能である。
【発明の効果】
【0012】
第1発明によれば、ロート部近傍の粉粒体の層における淀み領域が大幅に縮小され、処理ガスを粉粒体の層に均一に通過することが可能になり、運転時間のロスや温度ムラによる品質低下を解消できる。とくに処理槽中心部における処理時間が短縮される。
【0013】
第2発明によれば、粉粒体の処理速度を大幅に向上することができる。
【0014】
第3発明によれば、フッ素樹脂の粉粒体を処理する速度を大幅に向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
つぎに本発明の粉粒体処理装置、および粉粒体処理システムの実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0016】
〔第1実施形態〕
<粉粒体処理装置1の構成>
図1および図2に示される粉粒体処理装置1は、粉粒体に処理ガスを送り込んで種々の処理(乾燥、フッ素化等)を行う装置であり、容器2と、処理槽3と、ロート部4と、分散部材5と、閉鎖部材6と、給気管7と、排気管8とを備えている。
【0017】
粉粒体処理装置1は、粉粒体の一例である溶融系フッ素樹脂などのペレットに、熱風を送り込むことにより、所定の目標温度まで加熱して予熱処理を行う。また、粉粒体処理装置1は、予熱処理後に、熱風をフッ素ガスに切り換えてフッ素化処理を行い、ついで脱気ガスを導入して脱気処理し、その後冷却ガスを導入して冷却処理するなどのバッチ処理を行うことが可能である。
【0018】
容器2は、上端面にペレットを投入する投入口9が形成された密閉容器である。容器2の形状は、給気管7から容器2内部に導入された処理ガスが容器2内部で円滑に旋回可能な円筒形状である。なお、ペレットの投入口9は、ペレットの処理中には気密性のハッチ(図示せず)などで閉鎖される。
【0019】
容器2の内部は、容器2の内部に嵌合された中空逆円錐状の処理槽3によって、下部空間11と上部空間12に区画されている。
【0020】
給気管7は、容器2の下部外周に複数本等間隔で取り付けられている。給気管7は、下部空間11に連通している。給気管7から導入された処理ガスは、下部空間11内部で旋回しながら、中空逆円錐状の処理槽3の通気性を有する側周面から処理槽3内部へ入っていく。
【0021】
排気管8は、容器2の上端面に複数本取り付けられ、出口側は1本に集合している。排気管8は、上部空間12に連通している。
【0022】
処理槽3は、投入口9から投入されたペレットを受け、下方に行くほど細くなる形状である中空逆円錐状をしている。処理槽3の下端には、処理後のペレットを排出する排出口10が形成されている。排出口10は、処理中には閉鎖弁(図示せず)で閉鎖され、処理後のペレットを排出する際には閉鎖弁が開放される。排出口10は、閉鎖弁および排出管(図示せず)を通して、容器2の外部に連通している。
【0023】
なお、処理槽3は、下へ行くほど細くなる形状であればよく、円錐だけでなく、多角錐でもよい。また、円錐の側周面を内側に凸にした形状(例えば、ラッパ形状)であったり、または、円錐の側周面を外側に凸にした形状(例えば、釣鐘形状)あってもよい。
【0024】
処理槽3の少なくとも下部は、ペレットを処理する熱風などの処理ガスの通過を許す通気性を有する材料で作製されている。例えば、処理槽3は、パンチングメタル(穴あきの鋼板)等によって中空逆円錐状に製造されている。パンチングメタルに形成された小孔の大きさは、処理されるペレットが通過できない程度の大きさに設定されている。なお、パンチングメタルの代わりに小孔が全体的に開口された耐熱性を有する合成樹脂製シートによって、中空逆円錐状の処理槽3を製造してもよい。処理槽3の上部は、後述する閉鎖部材6による部分的な閉鎖によって、通気性がない。一方、処理槽3の下部は、閉鎖部材6によって閉鎖されていないので、通気性を有している。
【0025】
閉鎖部材6は、逆円錐状の処理槽3の上部を部分的に覆う部材であり、鋼板または耐熱性を有する合成樹脂シート等を幅広のリング状に成形することによって製造されている。閉鎖部材6は、処理槽3の上部を部分的に覆っているので、処理槽3の内部のペレットに均一に給気管7からの熱風などの処理ガスを供給することが可能である。
【0026】
ここで、中空逆円錐状の処理槽3の円錐面の全面積に対する閉鎖部材6が処理槽3の上部を覆う面積の割合(すなわち、閉鎖率)は、処理槽3の円錐面の傾斜角θ(図2参照)が大きい場合(すなわち、処理槽3の下端凸部が鋭角になる場合)には、大きい方が好ましい。なぜならば、傾斜角θが大きくなれば、処理槽3内部のペレット層Pの厚みが薄い外周側(すなわち、通気性を有する中空逆円錐状の処理槽3の上部外周縁付近)への熱風の流れが増えるので、処理槽3の内部のペレットに均一に熱風を供給することが困難になる。かかる不具合を解消するために、閉鎖率は大きい方が好ましいからである。
【0027】
一方、傾斜角θが小さい場合(処理槽3の下端凸部が鈍角になる場合)には、上記不具合が生じにくいので、閉鎖率は、小さい方が好ましい。
【0028】
このように、通気性を有する処理槽3の上部を閉鎖することで、ペレット層P下部を中心として熱風が放射状に拡散し、最も予熱時間の長い処理槽3の垂直軸中心CL(塔中心部)のペレット表層における予熱時間を大幅に短縮することができる。またペレット充填量が少ない運転においても、通気性を有する処理槽3の上部の露出に伴う偏流を抑制することが可能であり、充填量の変更に対してもペレット層P内の熱風の速度分布を一様に保つことが可能である。その結果、ペレットの予熱むらによる品質向上、及び予熱運転時間の効率向上が可能となる。
【0029】
ロート部4は、処理槽3の下端付近に配置され、ペレットを排出口10へすべり落とす中空逆円錐状の部材である。ロート部4は、熱風が通過できるように、通気性を有している。例えば、ロート部4は、全体的に小孔が開けられたパンチングメタルまたは合成樹脂シートなどによって中空の逆円錐状に形成され、排出口10に対応する部分が開口されている。
【0030】
ロート部4の内面は、すべりやすくする処理、例えば研磨などの処理が施されている。または、ロート部4をペレットがすべりやすい樹脂材料等で作製してもよい。
【0031】
このように、ロート部4が通気性を有することにより、熱風がロート部4を通ることが可能になるため、ロート部4近傍のペレット層Pにおける淀み領域A3(図2参照)が大幅に縮小され、垂直軸中心CL(塔中心部)における予熱時間は更に短縮される。
【0032】
また、容器2のペレットを投入するための投入口9は、処理槽3の垂直軸中心CLの付近に配置されているので、ペレットが上部より処理槽3へ投入される際に、処理槽3の垂直軸中心CLの付近に投入されるので、ペレット層Pが処理槽2の外周縁に偏って堆積することがなくなり、ペレット層P内の偏流を低減する。これにより、熱風がペレット層P下部より流入して放射状にペレット層Pを広がるようになり、熱風がペレット層Pを通過しないで処理槽3上部を流れるバイパス流れがなくなり、ペレット層P内の偏流が改善される。
【0033】
分散部材5は、投入口9の下に配置され、ペレットを処理槽3上に分散させて平坦化させる部材である。分散部材5は、中空円錐状の形状を呈しており、その頂点が投入口9の真下になるように配置されている。分散部材5は、容器2内部に横梁(図示せず)などを介して固定されている。投入口9から落下するペレットは、分散部材5によって分散され、処理槽3内部に均一にまたは分散部材5の真下付近が凹んだペレット層Pが形成される。分散部材5は、鋼板または合成樹脂シートなどによって中空の円錐状に形成される。
【0034】
これにより、予熱時間が最も長い垂直軸中心CL(塔中心部)におけるペレット層Pの厚みを減らし、ペレット層Pの予熱が一様化される。
【0035】
なお、分散部材5は、投入口9から投入されるペレットを分散できるものであれば、適宜の形状を採用してもよく、円錐状だけでなく、他の形状でもよい。
【0036】
<図2の熱風の流速分布の説明>
図2には、本実施形態の粉粒体処理装置1の実施例として、コンピュータシミュレーションによって求めた容器2内部の熱風の流速分布が矢印で示されている。
【0037】
(1) 本実施形態では、図2に示されるように、通気性を有する処理槽3の小孔が開口している(以下、パンチングという)部分の上部の2/5(40%)を閉鎖部材6によって閉鎖している。パンチング上部を2/5閉鎖することにより、熱風が処理槽3内部のペレット層Pに下部より流入して、放射状にペレット層Pを広がっており、ペレット層P内の偏流が解消されている。
【0038】
とくに、図2に示されるように、容器2内部において、処理槽3下方の下部空間11では、熱風が旋回しながら処理槽3の通気性を有するパンチング部分を通過して上昇するが、処理槽3上部2/5(40%)が閉鎖部材6によって閉鎖されているので、熱風が処理槽3の上部を通る偏流を防ぐことができ、処理槽3内部のペレット層Pに均一に熱風を吹き込むことが可能である。
【0039】
ここで、図2の熱風の流速分布では、閉鎖部材6の真下の熱風が滞留している部分A1およびA2、ならびに処理槽3下端付近が、最も熱風の流速が低くなっている。なお、熱風が供給されている間は、排出口10は閉鎖弁(図示せず)で閉じられているので、排出口10からの熱風の流入はない。一方、処理槽3の通気性を有するパンチング部分のうち、閉鎖部材6の下縁付近の部分Bでは、熱風が回り込むので、最も熱風の流速が高くなっている。
【0040】
(2) また、処理槽3下部に配置されたペレットをすべりやすくするロート部4にもパンチングされて通気性を有しているようになっているので、熱風がロート部4を通過して処理槽3内部に流入し、より均一に放射状にペレット層Pを広がることが可能になり、ペレット層P内の偏流をより効果的に解消している。
【0041】
(3) さらに、図2では、投入口9真下の分散部材5によって、処理槽3内部に投入されたペレット層Pの表層形状が平坦化されている。ペレット表層形状を平坦化することにより、ペレット層Pの外周側と中心部でペレット層Pの厚みの差が小さくなるので、ペレット層P内の偏流、及びペレット中心部における昇温速度が山状のペレット表層形状と比較してさらに改善される。
【0042】
<図3のペレット層Pの温度分布の変化>
図3の(a−1)〜(a−10)には、本実施形態の粉粒体処理装置1の実施例として、コンピュータシミュレーションによって求めた容器2内部のペレット層Pにおける処理開始から一定時間毎のペレット層Pの温度分布がそれぞれ示されている。
【0043】
本実施形態では、前述のように、(i)通気性を有する処理槽3のパンチング上部の2/5(40%)を閉鎖部材6によって閉鎖していることにより、熱風が処理槽3内部のペレット層Pに下部より流入して、放射状にペレット層Pを広がっており、ペレット層P内の熱風の偏流が解消されている。また、(ii)処理槽3下部のロート部4にもパンチングされて通気性を有しており、(iii)分散部材5によって処理槽3内部に投入されたペレット層Pの表層形状が平坦化されている。この(i)〜(iii)の条件の組合せによって、ペレット層P中心部におけるペレットの昇温速度が改善されており、ペレット中央表層PIII(図4参照)における所定の目標温度までの昇温時間が短縮される。
【0044】
具体的には、図3(a−1)〜(a−10)に示されるように、処理槽3の上部2/5(40%)が閉鎖部材6によって閉鎖されているので、熱風が処理槽3の上部を通る偏流を防ぐことができ、処理槽3内部のペレット層Pに均一に熱風を吹き込まれている。
【0045】
また、図3(a−1)〜(a−10)に示されるように、ロート部4もパンチングされて通気性を有しているので、熱風がロート部4を通ってペレット層Pの中心部を迅速に加熱することが可能である。
【0046】
さらに、図3(a−1)〜(a−10)に示されるように、処理槽3内部に投入されたペレット層Pの表層形状が平坦化されているので、昇温しにくいペレット層Pの表層中央付近にも熱風が十分に行き渡るので、短時間でペレット層P全体を昇温することが可能である。
【0047】
<図4および図5のペレット層Pの時間変化>
図4(a)には、比較例におけるペレット層P内部の温度モニタリングポイントPI〜PVを示す図、図4(b)には、本発明の実施例1〜3におけるペレット層P内部の温度モニタリングポイントPI〜PVを示す図である。
【0048】
ここで、温度モニタリングポイントPI〜PVは、それぞれ
PI:処理槽3の外周部の壁際、
PII:処理槽3の外周部の壁際から所定の長さだけ中央側に入った所、
PIII:ペレット層Pの中央表層の所、
PIV:ペレット層P内部の所定位置
PV:ペレット層P内部の所定位置であって、PIVよりも下方の位置
である。
【0049】
図5(a)は、比較例におけるペレット層P内部の温度モニタリングポイントPI〜PVにおいてコンピュータシミュレーションによってモニタリングされた各温度曲線I〜Vを示す図である(なお、図中の温度曲線VIは、熱風の流入温度である(以下同じ))。
【0050】
ここで、比較例では、
α-1:ペレット層Pの表層形状が中央を凸とする山形であり、
β-1:処理槽3のパンチング上部が閉鎖されておらず、
δ-1:ロート部4がパンチングされていない(通気性を有しない)、
仕様とされている。
【0051】
また、図5(b)は、本発明の実施例1(α:ペレット層Pの表層形状の平坦化)におけるペレット層P内部の温度モニタリングポイントPI〜PVにおいてコンピュータシミュレーションによってモニタリングされた各温度曲線I〜Vを示す図(VIは、熱風の流入温度)、
同図5(c)は、本発明の実施例2(上記α+(β:閉鎖部材6によってパンチング上部2/5閉鎖))におけるペレット層P内部の温度モニタリングポイントPI〜PVにおいてコンピュータシミュレーションによってモニタリングされた各温度曲線I〜Vを示す図(VIは、熱風の流入温度)、
同図5(d)は、本発明の実施例3(上記α+β+(δ:ロート部4にパンチングにより通気性をもたせる))におけるペレット層P内部の温度モニタリングポイントPI〜PVにおいてコンピュータシミュレーションによってモニタリングされた各温度曲線I〜Vを示す図(VIは、熱風の流入温度)、
である。
【0052】
なお、また、表1には、比較例および本発明の実施例1〜3の仕様が示されている。
【0053】
【表1】

【0054】
以上の実験結果に基づく考察は、以下の通りである。
【0055】
図5(a)および(b)を見れば、α:ペレット層Pの表層形状の平坦化の条件がない比較例の場合には、ペレット層Pの中央表層の温度(図5(a)の曲線III)ならびにペレット層Pの内部温度(同曲線IV、V)の昇温速度が遅い(曲線の立ち上がりが遅い)ので、所定のモニタリング時間の間に、ペレット層P全体が所定の目標温度まで昇温を完了することができなかった。これは、ペレット層Pの表層形状の平坦化の条件がない場合には、ペレット層Pの中心表層が山形になり、ペレット層Pの外周部を通る熱風の偏流が多いので、ペレット層Pの外周部の温度(同曲線I、II)は早く上がるが、中央部の温度上昇は遅くなるためである。一方、図5(b)を見れば、α:ペレット層Pの表層形状の平坦化の条件がある本発明の実施例1の場合には、ペレット層Pの中央表層の温度(図5(b)の曲線III)ならびにペレット層Pの内部温度(同曲線IV、V)の昇温速度が速い(曲線の立ち上がりが速い)ので、所定のモニタリング時間の間には、ペレット層P全体が所定の目標温度にかなり近づくことができる。これは、ペレット層Pの表層形状の平坦化によりペレット層Pの塔中心部にも熱風が通りやすくなり、ペレット層Pの外周部の昇温速度(同曲線I、II)だけでなく中央部の昇温速度も改善されたためである。
【0056】
また、図5(b)および(c)を見れば、β:パンチング上部2/5閉鎖の条件がない本発明の実施例1の場合には、ペレット層Pの中央表層の温度(図5(b)の曲線III)ならびにペレット層Pの内部温度(同曲線IV、V)の昇温速度が遅い(曲線の立ち上がりが遅い)ので、所定のモニタリング時間の間に、ペレット層P全体が所定の目標温度まで昇温を完了することができなかった。これは、ペレット層Pの外周部を通る熱風の偏流が多いので、ペレット層Pの外周部の温度(同曲線I、II)は早く上がるが、中央部の温度上昇は遅くなるためである。
【0057】
一方、図5(c)を見れば、β:パンチング上部2/5閉鎖の条件がある本発明の実施例2の場合には、ペレット層Pの中央表層の温度(図5(c)の曲線III)ならびにペレット層Pの内部温度(同曲線IV、V)の昇温速度が速い(曲線の立ち上がりが速い)ので、所定のモニタリング時間の間に、ペレット層P全体が所定の目標温度まで昇温を完了している。これは、ペレット層Pの外周部を通る熱風の偏流が閉鎖部材6によって防がれているので、ペレット層Pの外周部の温度(同曲線I、II)も中央部の温度も均一に上昇して全体の昇温速度が改善されたためである。
【0058】
さらに、図5(c)および(d)を見れば、δ:ロート部4にパンチングにより通気性をもたせる条件がない本発明の実施例2の場合には、ペレット層Pの中央表層の温度(図5(c)の曲線III)の昇温速度が遅い。一方、図5(d)を見れば、δ:ロート部4にパンチングにより通気性をもたせる条件がある本発明の実施例3の場合には、本発明の実施例3の場合には、ペレット層Pの中央表層の温度(図5(d)の曲線III)の昇温速度が速い(曲線の立ち上がりが速い)ので、本発明の実施例2の場合よりも短い時間で、ペレット層P全体が所定の目標温度まで昇温を完了している。これは、ロート部4にパンチングにより通気性をもたせているので、ペレット層Pの塔中心部を流れる熱風の流量が増加するので、ペレット層Pの全体の昇温速度がさらに改善されたためである。
【0059】
また、ロート部4にパンチングにより通気性をもたせることによって、ペレット層Pを熱風が通過するときの圧力損失値である塔内圧損値を低く抑えることができた。
【0060】
<第1実施形態の特徴>
(1)
第1実施形態の粉粒体処理装置1では、ペレットを排出口10へすべり落とすロート部4が通気性を有しているので、熱風がロート部4を通ることが可能になるため、ロート部4近傍のペレット層Pにおける淀み領域A3(図2参照)が大幅に縮小され、熱風をペレット層Pに均一に通過することが可能になり、運転時間のロスや温度ムラによる品質低下を解消できる。とくに処理槽3中心部における処理時間が短縮される。
【0061】
(2)
第1実施形態の粉粒体処理装置1では、処理槽3の少なくとも下部が、ペレットを処理する熱風などの処理ガスの通過を許す通気性を有する材料で作製されている。そして、処理槽3の上部は、処理槽3の下部よりも通気性が小さい。
【0062】
このため、ペレット層P下部を中心として熱風が放射状に拡散し、最も予熱時間の長い処理槽3の中心部における予熱時間を大幅に短縮することが可能である。またペレット充填量が少ない運転においても、処理槽3の通気性を有するパンチング部分の露出に伴う偏流を抑制することが可能であり、充填量の変更に対してもペレット層P内の速度分布を一様に保つことが可能である。その結果、ペレットの予熱むらによる品質向上、及び予熱運転時間の効率向上が可能となる。
【0063】
(3)
とくに、第1実施形態の粉粒体処理装置1では、処理槽3の上部が熱風などの処理ガスが通過しないように閉鎖されているので、処理槽3の内部のペレットに均一に熱風を供給することができる。
【0064】
(4)
第1実施形態の粉粒体処理装置1では、処理槽3の全体が、熱風などの処理ガスの通過を許す通気性を有する材料で製造され、しかも、閉鎖部材6によって、処理槽3の上部を熱風が通過しないように閉鎖しているので、処理槽3の上部における熱風の偏流を確実に防ぐことが可能である。また、処理状況に応じて、最適の幅や材質の閉鎖部材6を選定することも可能である。
【0065】
(5)
第1実施形態の粉粒体処理装置1では、容器2の上端面に形成されたペレットの投入口9が、処理槽3の垂直軸中心CL付近に配置されているので、ペレット層Pが処理槽2の外周縁に偏って堆積することがなくなり、ペレット層P内の偏流を低減する。これにより、熱風がペレット層P下部より流入して放射状にペレット層Pを広がるようになり、熱風がペレット層Pを通過しないで処理槽3上部を流れるバイパス流れがなくなり、ペレット層P内の偏流が改善される。
【0066】
(6)
第1実施形態の粉粒体処理装置1では、分散部材5が投入口9の下に配置され、分散部材5によってペレットを処理槽3上に分散させて平坦化させるので、予熱時間が最も長い処理槽3の中心部におけるペレット層Pの厚みを減らし、ペレット層Pの予熱が一様化され、処理時間を更に短縮することが可能になる。
【0067】
<第1実施形態の変形例>
(A)
なお、第1実施形態では、処理槽3全体をパンチングメタルで通気性を有するように製造し、その後、処理槽3の上部2/5を閉鎖部材6で閉鎖しているが、処理槽3と閉鎖部材6とを一体成形してもよい。この場合、部品点数を減少させることができ、粉粒体処理装置の製造が容易になる。
【0068】
(B)
第1実施形態では、本発明の一実施形態である粉粒体処理装置1の処理の一例として、ペレットの予熱処理を例にあげて説明しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の処理、例えば、予熱処理後に、熱風をフッ素ガスに切り換えてフッ素化処理を行い、ついで脱気ガスを導入して脱気処理し、その後冷却ガスを導入して冷却処理するなどのバッチ処理、またはいずれか1つの処理を行うことが可能である。
【0069】
(C)
粉粒体としては、ペレットだけでなく、種々の形状、大きさの粉粒体を本発明の粉粒体処理装置1によって処理することが可能である。
【0070】
(D)
本発明の粉粒体処理装置1では、溶融系のフッ素樹脂以外の粉粒体についても、適宜の処理ガスを用いて処理することが可能である。
【0071】
(E)
上記第1実施形態では、パンチングメタルなどの通気性を有する処理槽3の上部を閉鎖部材6で閉鎖しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、処理槽3の上部を下部よりも通気性を低くするようにしていればよい。例えば、処理槽3のパンチングメタルの小孔の大きさを処理槽3の下部よりも上部へ行くほど小さくして、熱風が通りにくくするようにしてもよい。この場合も、ペレット層P下部を中心として熱風が放射状に拡散し、最も予熱時間の長い処理槽3の中心部における予熱時間を大幅に短縮することが可能である。
【0072】
(F)
上記第1実施形態では、給気管7を介して、処理槽3の下方の下部空間11から処理ガスを導入しているが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の変形例として、容器2の内部における処理槽3よりも上部の上部空間12に処理ガスを導入するガス導入管13(図1参照)をさらに備えてもよい。この場合、予熱処理およびフッ素化処理を連続してバッチ処理する場合に、処理槽3下方から給気管7を介して熱風を送って処理槽3内部のペレットなどの粉粒体を予熱した後、ガス導入管13からフッ素ガスなどの処理ガスを導入することにより、冷えやすいペレットの表層からフッ素化などの処理をすることが可能になる。
【0073】
また、予熱処理後に、予熱されたペレット対して、処理槽3の上方からガス導入管13を介してフッ素ガスを導入するとともに、下方からも給気管7を介してフッ素ガスを導入することにより、より迅速にフッ素化処理を行うことが可能になる。
【0074】
(G)
上記第1実施形態では、ペレットなどの粉粒体を容器2に投入した後に、容器2の内部に処理ガスを導入して処理を開始しているが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の変形例として、ペレットなどの粉粒体を容器2の内部に投入しながら処理ガスによる処理を行ってもよい。この場合、ペレットなどの粉粒体を投入すると同時に処理を進めることができ、作業時間を短縮することが可能である。
【0075】
(H)
上記第1実施形態では、給気管7を介して処理槽3の下方から処理ガスを導入し、処理槽3の上方から処理ガスを排気管8を介して排出しているが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の変形例として、処理ガスは、処理槽3の上側から入って下側から出るようにしてもよい。この場合、処理ガスが処理槽3の上側の排気管8から入って下側の給気管7から出るので、処理槽3の上側から入ってくる処理ガスがペレットなどの粉粒体の層の全体に拡散し、最も処理時間の長い処理槽3の中心部における処理時間を大幅に短縮することが可能である。また、ペレットなどの粉粒体の充填量が少ない処理においても、処理槽3の通気性を有する部分の露出に伴う処理ガスの偏流を抑制することが可能であり、ペレットなどの粉粒体の充填量の変更に対しても粉粒体の層内の速度分布を一様に保つことが可能である。
【0076】
(I)
第1実施形態では、投入口9の下に配置された分散部材5によってペレットを処理槽3上に分散させて平坦化させているが、本発明はこれに限定されるものではない。第1実施形態の変形例として、図6に示されるように、分散部材5の代わりに、ペレット層Pの中心表層を凹ませるために、棒状(丸棒、角棒いずれでもよい)の部材である棒状部材14を、処理槽3の上部開口の中央付近に垂れ下がるようにあらかじめ配置しておいてもよい。
【0077】
この場合、ペレットを処理槽3の内部に注入したときに棒状部材14の下部がペレット層Pの中心表層に埋まることにより、ペレット層Pの中心表層を凹ませることが可能になる。これにより、ペレット層Pの垂直軸中心(塔中心部)における厚みが薄くなり、塔中心部への熱風の流量を増加させることができる。
【0078】
このような中心表層を凹ませる棒状部材14は、棒状部材14内部も熱風が流れるようにして熱風の流量を増加させるために、棒状部材14を網目状に小孔が開口されたメッシュ状にしてもよい。
【0079】
[第2実施形態]
上記の第1実施形態では、1台の粉粒体処理装置1によって、溶融系フッ素樹脂などのペレットの予熱処理、フッ素化処理、脱気処理、および冷却処理の一連の処理をバッチ処理することが説明されているが、本発明はこれに限定されるものではない。第2実施形態として、図7に示されるように、各処理を行うための粉粒体処理装置51〜54を互いに連結することにより1つのフッ素樹脂のペレットを処理する粉粒体処理システム50を構成することによって、ペレットを連続的に処理するようにしてもよい。この場合、1台の粉粒体処理装置1でバッチ処理する場合と比較してフッ素樹脂のペレットを処理する速度を大幅に向上することが可能である。
【0080】
ここで、図7に示される粉粒体処理システム50は、予熱処理装置51と、フッ素化処理装置52と、脱気処理装置53と、冷却処理装置54とが垂直に連結されて構成されている。
【0081】
各処理装置51〜54の基本構成は、図1の第1実施形態の粉粒体処理装置1と共通しており、図7において図1と同一符号が付された部分は同一の構成要素を示している。したがって、各処理装置51〜54についても、(i)通気性を有する処理槽3のパンチング上部の2/5(40%)を閉鎖部材6によって閉鎖していることにより、熱風が処理槽3内部のペレット層Pに下部より流入して、放射状にペレット層Pを広がっており、ペレット層P内の処理ガスの偏流が解消されており、処理時間を大幅に短縮することが可能である。またペレット充填量が少ない運転においても、処理槽3の通気性を有するパンチング部分の露出に伴う偏流を抑制することが可能である。また、(ii)処理槽3下部のロート部4にもパンチングされて通気性を有しており、(iii)分散部材5によって処理槽3内部に投入されたペレット層Pの表層形状が平坦化されているので、処理時間をさらに短縮することが可能である。
【0082】
また、粉粒体処理システム50では、上流側の処理装置で処理が終わったペレットは、排出口10から落下して、下流側の処理装置の投入口9を通して投入される。
【0083】
予熱処理装置51は、ペレットに加熱ガス(すなわち、熱風)を供給して、ペレットを予熱する。フッ素化処理装置52は、ペレットにフッ素ガスを供給して、ペレットをフッ素化処理する。脱気処理装置53は、ペレットに脱気ガスを供給して、ペレットを脱気する。冷却処理装置54は、ペレットに冷却ガスを供給して、ペレットを冷却する。
【0084】
<第2実施形態の変形例>
(A)
第2実施形態では、フッ素樹脂のペレットを処理するための粉粒体処理システム50を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の粉粒体を連続処理するための粉体処理システムについて本発明を適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、粉粒体を処理ガスを用いて種々の処理を施すための中空逆円錐状の処理槽(ホッパ)を有する粉粒体処理装置ならびにそれを用いた粉粒体処理システムに適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の第1実施形態に係わる粉粒体処理装置の構成図。
【図2】図1の粉粒体処理装置の容器内部の熱風の流速分布を示す図。
【図3】(a−1)〜(a−10)は、容器2内部のとくにペレット層Pにおける処理開始から一定時間毎のペレット層Pの温度分布を示す図。
【図4】(a)は、比較例におけるペレット層P内部の温度モニタリングポイントPI〜PVを示す図、(b)には、本発明の実施例1〜3におけるペレット層P内部の温度モニタリングポイントPI〜PVを示す図。
【図5】(a)〜(d)は比較例および本発明の実施例1〜3におけるペレット層P内部の温度モニタリングポイントPI〜PVでモニタリングされた各温度曲線I〜Vを示す図。
【図6】本発明の第1実施形態の変形例に係わる棒状部材を備えた粉粒体処理装置の構成図。
【図7】本発明の第2実施形態に係わる粉粒体処理システムの構成図。
【符号の説明】
【0087】
1 粉粒体処理装置
2 容器
3 処理槽
4 ロート部
5 分散部材
6 閉鎖部材
9 投入口
10 排出口
14 棒状部材
50 粉粒体処理システム
51 予熱処理装置
52 フッ素化処理装置
53 脱気処理装置
54 冷却処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉粒体を内部に投入する投入口(9)を有する容器(2)と、
前記投入口(9)から投入される粉粒体を受け、下方に行くほど細くなる形状をしており、少なくとも下部が前記粉粒体を処理する処理ガスの通過を許す通気性を有する材料で作製されており、かつ、下端には、前記処理槽(3)の内部の前記粉粒体を排出する排出口(10)が形成されている処理槽(3)と、
前記処理槽(3)の下端付近に配置され、前記粉粒体を前記排出口(10)へすべり落とすロート部(4)と
を備えており、
前記ロート部(4)は、通気性を有している、
粉粒体処理装置(1)。
【請求項2】
請求項1記載の粉粒体処理装置(1)の複数台が前記粉粒体を連続的に処理できるように互いに連結されることにより構成されている、
粉粒体処理システム(50)。
【請求項3】
複数台の前記粉粒体処理装置は、
前記粉粒体に加熱ガスを供給して、前記粉粒体を予熱する予熱処理装置(51)、
前記粉粒体にフッ素ガスを供給して、前記粉粒体をフッ素化処理するフッ素化処理装置(52)、
前記粉粒体に脱気ガスを供給して、前記粉粒体を脱気する脱気処理装置(53)、および
前記粉粒体に冷却ガスを供給して、前記粉粒体を冷却する冷却処理装置(54)
のうちの少なくとも2つを選択したものから構成されており、
選択された少なくとも2つの処理装置(51、52、53、54)は、直列に連結されている、
請求項2に記載の粉粒体処理システム(50)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−127868(P2009−127868A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−299557(P2007−299557)
【出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】