説明

粉粒物散布体の製造装置

【課題】 粉粒物を傷めることなく、粉粒物をシート上に一定の散布パターンで平面状に展開して散布すること。
【解決手段】 フィーダ11から送給される粉粒物1が平面トラフ12を介して、トラフ12の下方を搬送されているシート101上に散布される粉粒物散布体の製造装置であって、トラフ12とシート101との間に回転円板13を設け、トラフ12から供給される粉粒物1の一部を該円板13の開口部14からシート101上に散布するもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉粒物散布体の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
粉粒物散布体の製造装置として、特許文献1に記載の如く、散布装置が供給する粉粒物を、散布装置の下方に搬送されているシート上に散布するものがある。
【0003】
散布装置は、ケーシング内を回転するロータの外周部に粉粒物捕捉凹部を備え、ロータの凹部にケーシングの上部供給口から供給した粉粒物を、ロータの回転により、ケーシングの下部排出口からシート上に散布しようとするものである。
【特許文献1】特開2002-178429
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の粉粒物散布体の製造装置には以下の問題点がある。
(1)散布装置を構成するロータの凹部に収容した粉粒物をその凹部の反転によりシート上に散布するものであり、粉粒物はかたまり状になってシート上に落ちる。粉粒物をシート上に一定の散布パターンで平面上に展開して散布できない。
【0005】
(2)散布装置を構成するロータがケーシング内を回転するとき、ロータの凹部に供給された粉粒物をケーシングの内面に対してすり切ることにより、粉粒物の散布量を計量するものであり、粉粒物をすり切り破砕力により傷める。また、粉粒物の散布量を容積にて計量するものであり、散布量の重量誤差を伴なう。
【0006】
本発明の課題は、粉粒物を傷めることなく、粉粒物をシート上に一定の散布パターンで平面状に展開して散布することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、フィーダから送給される粉粒物が平面トラフを介して、トラフの下方を搬送されているシート上に散布される粉粒物散布体の製造装置であって、トラフとシートとの間に回転円板を設け、トラフから供給される粉粒物の一部を該円板の開口部からシート上に散布するようにしたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1、図2の散布装置10は、粉粒物散布体100の製造装置であり、連続シート101の長手方向に一定の間隔を介して間欠をなす被散布部、本実施例では予めホットメルト等の粘着剤を塗工してある被散布部102に粉粒物1を散布するものである。本実施例のシート101は、搬送ローラ200に巻き回され、散布装置10の下方を、等速で水平に搬送される。
【0009】
散布装置10は、図1、図2に示す如く、フィーダ11から連続的に送給される粉粒物1が平面トラフ12を介して、トラフ12の供給口12Aの下方を搬送されているシート101上に散布される。本実施例において、フィーダ11はロードセルの上に、電磁フィーダ、トラフ、ホッパを搭載した定重量式振動フィーダであり、ロードセルを重量センサとしたロスインウェイ方式(減算式)で、フィーダ11からの粉粒物1の連続的な送給量をフィードバック制御して定重量化できる。
【0010】
散布装置10は、トラフ12とシート101との間(トラフ12の下方、シート101の上方)に回転円板13を設け、回転円板13の回転中心の周囲に1個以上の孔状開口部14を設けている。円板13は、支持ブラケット15に取付けたモータ16の回転軸16Aに着脱され、モータ16により所定の回転動作パターンで回転され、トラフ12の供給口12Aから落下して供給される粉粒物1の一部を開口部14からシート101の被散布部102の上に散布する。
【0011】
散布装置10は、円板13の開口部14とシート101の被散布部102とが上下に対応するように、シート101の搬送装置と、円板13のモータ16を同期運転する。また、円板13は、図3に示す如く、シート101の散布範囲(被散布部102)と不散布範囲の双方に対して同速回転する等速パターンAと、シート101の散布範囲に対して減速、不散布範囲に対して増速する増減速パターンBと、シート101の散布範囲に対して停止、不散布範囲に対して回転する一旦停止パターンCのいずれかの回転動作パターンで駆動できる。
【0012】
散布装置10は、トラフ12の供給口12Aから円板13の非開口部(開口部14以外の部分、主として円板13の周方向で相隣る開口部14と開口部14に挟まれる部分)に供給された粉粒物1を回収装置20に回収する。
【0013】
回収装置20は、トラフ12の供給口12Aの下方を通過する回転円板13の回転方向の下流側にスクレーパ21を備える。スクレーパ21は、支持ブラケット15に吊下げ支持されて円板13の上面に僅かな隙間(粉粒物1の粒径より小さい隙間)を介し、円板13の非開口部上の粉粒物1を円板13の半径方向外方へ掻き出す。スクレーパ21により円板13上を掻き出された粉粒物1は、円板13の開口部14又は円板13の外周縁を経てそれらの下方に設置されている取入れシュート22に集められ、ひいては回収箱23に回収される。
【0014】
散布装置10は、円板13として、開口部14の配置、形状等の異なる複数種類の円板13を例えば下記(A)〜(C)の如くに有し、それらの円板13を交換可能にする。尚、円板13における開口部14の配置、形状等を定めるに際し、予め与えられる前提条件は下記(1)〜(4)とする。
【0015】
(1)シート101における被散布部102の寸法
長さA=0.1(m)、巾B=0.08(m)、間隔C=0.05(m)
(2)散布装置10の生産能力
100個/分
(3)シート101の搬送速度
V1=18(m/min)
(4)トラフ12の粉粒体流速
V2=6(m/min)
【0016】
(A)3個の開口部14をもつ回転円板13(図4)
・円板分割数:H=3
・円板開口部角度:θ2=80(°)
・円板非開口部角度:θ3=40(°)
・円板回転数:N=100/3=33.3(rpm) 等速回転
・円板の角速度:ω=(N*2π)/60=3.491(rad/s)
・円板開口部の中心半径:R4=(A+C)*3/2π=0.0716(m)
・円板開口部内半径:R1=R4−0.04=0.0316(m)
・円板開口部外半径:R2=R4+0.04=0.112(m)
・円板開口部内半径部分の周速:VR1=R1*ω=0.0316*3.491=0.110(m/s)
・トラフ角度:θ1=30(°)
・粉粒体の円板接線方向の流速:V2cosθ1/60=6*cos30°/60=0.0866(m/s)
尚、トラフ12から落下した粉粒体が円板13の非開口部に溜まらない。
V2cosθ1≦VR1 → 0.0866(m/s)≦0.110(m/s)
【0017】
(B)5個の開口部14をもつ回転円板13(図4)
・円板分割数:H=5
・円板開口部角度:θ2=48(°)
・円板非開口部角度:θ3=24(°)
・円板回転数:N=100/5=20(rpm) 等速回転
・円板の角速度:ω=(N*2π)/60=2.094(rad/s)
・円板開口部の中心半径:R4=(A+C)*5/2π=0.119(m)
・円板開口部内半径:R1=R4−0.04=0.0794(m)
・円板開口部外半径:R2=R4+0.04=0.159(m)
・円板開口部内半径部分の周速:VR1=R1*ω=0.0794*2.094=0.166(m/s)
・トラフ角度:θ1=30(°)
・粉粒体の円板接線方向の流速:V2cosθ1/60=6*cos30°/60=0.0866(m/s)
尚、トラフ12から落下した粉粒体が円板13の非開口部に溜まらない。
V2cosθ1≦VR1 → 0.866(m/s)≦0.166(m/s)
【0018】
(C)6個の開口部14をもつ回転円板13(図4、図5)
・円板分割数:H=6
・円板開口部角度:θ2=48(°)
・円板非開口部角度:θ3=12(°)
・円板最大回転数:N=100/6=16.67(rpm)
・円板の最大角速度:ω=(N*2π)/60=1.745(rad/s)(図5の不等速回転)
・円板開口部の中心半径:R4=(A+C/2)*6/2π=0.119(m)
・円板開口部内半径:R1=R4−0.04=0.0794(m)
・円板開口部外半径:R2=R4+0.04=0.0159(m)
・円板開口部内半径部分の周速:VR1=R1*ω=0.0794*1.745=0.139(m/s)
・トラフ角度:θ1=30(°)
・粉粒体の円板接線方向の流速:V2cosθ1/60=6*cos30°/60=0.0866(m/s)
尚、トラフ12から落下した粉粒体が円板13の非開口部に溜まらない。
V2cosθ1≦VR1 → 0.0866(m/s)≦0.139(m/s)
【0019】
従って、散布装置10による粉粒物1の散布動作は以下の如くなされる。
(1)フィーダ11が定重量の粉粒物1をトラフ12に一定の流速で連続的に送給する。
【0020】
(2)粉粒物1はトラフ12の供給口12Aから単一層をなす連続供給状態で回転円板13の側に流れ落ちる。
【0021】
(3)回転円板13は所定の回転動作パターンで回転しており、円板13の開口部14に対応した粉粒物1だけがその単一層のままその開口部14を通ってシート101側に流れ落ちる。
【0022】
(4)シート101は一定の速度で搬送されており、粉粒物1を搬送中のシート101の被散布部102の上に単一層を維持する平面状に展開して間欠に散布される。
【0023】
(5)トラフ12の供給口12Aから回転円板13の非開口部の上に流れ落ちた粉粒物1は、円板13の非開口部の上に乗って回収装置20により回収される。
【0024】
本実施例によれば以下の作用効果を奏する。
(請求項1)
(a)粉粒物1は平面トラフ12から積層状態でない単一層をなす連続供給状態で回転円板13の側に流れ落ち、回転円板13の開口部14に対応した粉粒物1だけがその単一層のままその開口部14を通ってシート101側に流れ落ち、搬送中のシート101上に単一層を維持する平面状に展開して間欠に散布される。尚、トラフ12から回転円板13の非開口部の上に流れ落ちた粉粒物1は該円板13に乗って回収側へ移送される。
【0025】
(b)粉粒物1はトラフ12からの連続供給状態下で、トラフ12の供給口12Aの下方を回転円板13の開口部14が通過する間だけ、該円板13の下方を搬送中のシート101上に散布されてその散布量を規制される。粉粒物1の散布量は、フィーダ11からの粉粒物1の連続的な流れの一部を回転円板13の開口部14に通して計量されるものであり、粉粒物1をすり切り破砕力等により傷めることがない。
【0026】
(c)回転円板13の開口部14の配置、形状、回転円板13の回転速度とシート101の移動速度の設定により、粉粒物1の散布パターンを変更できる。尚、シート101における被散布部102の長さAが長いものにあっては、回転円板13を一旦停止パターンCで駆動し、被散布部102の長さAが連続する一定期間だけ円板13を停止させれば、円板13の大型化を回避できる。
【0027】
(請求項2)
(d)フィーダ11を定重量式とすることにより、フィーダ11からの粉粒物1の連続的な流れを定重量化でき、ひいては上述(b)の粉粒物1の散布量を定重量化できる。
【0028】
(請求項3)
(e)前述(a)のトラフ12から回転円板13の非開口部の上へ流れ落ちた粉粒物1は、該円板13の回転方向の下流側に設けてある回収装置20のスクレーパ21等により掻き集められて回収される。
【0029】
(請求項4)
(f)開口部14の異なる回転円板13を交換使用することにより、粉粒物1の散布巾等、散布パターンを簡易に変更できる。
【0030】
(請求項5)
(g)前述(a)〜(f)により、粉粒物1を傷めることなく、シート101上に一定の散布パターンで平面状に展開して散布できる。
【0031】
図6の散布装置10Aは、前記散布装置10を2個並置し、2個の散布装置10のそれぞれにより、広巾シート101の長手方向に直交する巾方向に定めた2ヶ所の被散布部102のそれぞれに粉粒物1を散布可能にしたものである。
【0032】
図7の散布装置10Bは、前述散布装置10と、他の散布装置30を並置し、散布装置10と散布装置30により、広巾シート101の長手方向に直交する巾方向に定めた3ヶ所の被散布部102のそれぞれに粉粒物1を散布可能にしたものである。
【0033】
散布装置30は、散布装置10と基本構造を同一にするものであり、2個のフィーダ31A、31B及びそれらトラフ32A、32Bを有するとともに、1個の回転円板33を有し、回転円板33はトラフ32Aに対応する1個以上(図7では4個)の開口部33Aを外周側に備え、トラフ32Bに対応する1個以上(図7では4個)の開口部33Bを内周側に備えたものである。21A、21Bは回収装置20のスクレーパ、23は共通の回収箱である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は散布装置を示す正面図である。
【図2】図2は図1の平面図である。
【図3】図3は回転円板の回転動作パターンを示す線図である。
【図4】図4は散布装置の具体例を示す平面図である。
【図5】図5は回転円板の回転動作パターンの具体例を示す線図である。
【図6】図6は2連式散布装置を示す平面図である。
【図7】図7は3連式散布装置を示す平面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 粉粒物
10 散布装置
11 フィーダ
12 トラフ
13 回転円板
14 開口部
20 回収装置
101 シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィーダから送給される粉粒物が平面トラフを介して、トラフの下方を搬送されているシート上に散布される粉粒物散布体の製造装置であって、
トラフとシートとの間に回転円板を設け、トラフから供給される粉粒物の一部を該円板の開口部からシート上に散布する粉粒物散布体の製造装置。
【請求項2】
前記フィーダが定重量式フィーダである請求項1に記載の粉粒物散布体の製造装置。
【請求項3】
前記トラフから回転円板の非開口部に供給された粉粒物を回収装置に回収する請求項1又は2に記載の粉粒物散布体の製造装置。
【請求項4】
前記回転円板として開口部の異なる複数種類の回転円板を有し、それらの回転円板を交換可能にする請求項1〜3のいずれかに記載の粉粒物散布体の製造装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の粉粒物散布体の製造装置を用いてシート上の長手方向に間欠的に粉粒物を散布する粉粒物散布体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−181404(P2006−181404A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−374943(P2004−374943)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】