説明

粒体の包囲溶融によりシリコンから単結晶を製作するための方法

【課題】円錐形の管の管端部のこのような凝固を確実に防止する。
【解決手段】この課題は、粒体の包囲溶融によりシリコンから単結晶を製作するための方法において、シリコン製の回転プレートの下位に配置された誘導加熱コイルにより、単結晶の円錐形に拡張された区分を結晶化させ、誘導溶融されたシリコンを、前記プレートの中央開口を取り囲んでおり且つ前記プレートの下方に延びる前記プレートの円錐形の管を通して、単結晶の円錐形に拡張された区分上に位置し且つ円錐形の管の管端部に接触している溶融物に供給し、しかも、単結晶の円錐形に拡張された区分が15〜30mmの直径を有して結晶化される限りは、前記管端部の外径が15mmを下回らないように、前記プレートの下位に配置された誘導加熱コイルによって十分なエネルギを供給することによって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中央開口を備えた、シリコンから成る回転プレートと、前記開口を取り囲んでシリコンから成る前記プレートの下方に延在する、シリコンから成る円錐形の管と、シリコンを溶融するためにシリコンから成る前記プレートの上位に配置された第1の誘導加熱コイルと、溶融されたシリコンを結晶化させるためにシリコンから成る前記プレートの下位に配置された第2の誘導加熱コイルとを有する装置を用いて粒体を包囲溶融することにより、シリコンから単結晶を製作するための方法である。
【背景技術】
【0002】
この方法は、FZ法("floating zone method")とも呼ばれるゾーン引上げ法に類似している。特別な相違点は、シリコンから成る多結晶の供給棒("feed rod")の代わりに、シリコンから成る多結晶の粒体が包囲溶融される点にある。この粒体は、流動層内での堆積によって得られる。粒体を溶融し且つ溶融された粒体を結晶化させるためには、それぞれ専用の誘導加熱コイル("inductor coil")が使用され、これらの誘導加熱コイルは、シリコン製の回転プレートの上位若しくは下位に位置している。シリコンから成る粒体は、第1の誘導加熱コイルによって溶融され、液状シリコンから成る薄膜として前記プレートの中央開口及び円錐形の管を通流し、第2の誘導加熱コイルによって制御されつつシリコンから成る成長単結晶へと結晶化される溶融物を形成する。
【0003】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第10204178号明細書には、この方法を実施するために適した方法及び装置が詳しく説明されている。
【0004】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第102008013326号明細書に記載の粒体を溶融するための誘導加熱コイルは、下面側の中央に複数の突出したセグメントを有しており、これらの突出したセグメントを介して、プレートから円錐形の管を通って溶融物に向かって流れる液状のシリコンから成る薄膜が加熱され且つ液状に保持され得る。
【0005】
しかし、このようなコイルを使用した場合でも、円錐形の管の管端部が、単結晶の円錐形に拡張された区分の成長過程において狭くなり続け、終には固体の状態に移行するシリコンに基づき凝固することは、確実には防止され得ないということが判明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許出願公開第10204178号明細書
【特許文献2】ドイツ連邦共和国特許出願公開第102008013326号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、円錐形の管の管端部のこのような凝固を確実に防止する対策を講じることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、粒体の包囲溶融によりシリコンから単結晶を製作するための方法において、シリコン製の回転プレートの下位に配置された誘導加熱コイルにより、単結晶の円錐形に拡張された区分を結晶化させ、誘導溶融されたシリコンを、前記プレートの中央開口を取り囲んでおり且つ前記プレートの下方に延びる前記プレートの円錐形の管を通して、単結晶の円錐形に拡張された区分上に位置し且つ円錐形の管の管端部に接触している溶融物に供給し、しかも、単結晶の円錐形に拡張された区分が15〜30mmの直径を有して結晶化される限りは、前記管端部の外径が15mmを下回らないように、前記プレートの下位に配置された誘導加熱コイルによって十分なエネルギを供給することによって解決される。
【発明の効果】
【0009】
この方法の最初に、この時点では管端部がまだ固体のシリコンから成る層によって閉鎖されている円錐形の管を、プレートの下位に配置された誘導加熱コイルによって管端部において溶融すると、小さな体積の液状シリコンが生ぜしめられる。高密度のエネルギを管端部及び形成される溶融シリコン体積に誘導式で伝達可能にするためには、円錐形の管の管端部が、誘導加熱コイルの内孔に対して最短距離にもたらされる。次いで単結晶の種結晶が溶融シリコン体積に当て付けられ、FZ法に対応して、まず最初に単結晶の細首(「ネック」)、次に最終直径まで円錐形に拡張された単結晶の区分、最後に一定の目標直径を有する区分が結晶化される。このために必要な溶融シリコン材料は、管端部を閉鎖している層の溶融、円錐形の管の管端部からの部分的な溶融、プレートの上方からの部分的な溶融及びその後のシリコンから成る粒体の溶融によって準備される。単結晶の円錐形に拡張された区分の結晶化の過程において、円錐形に拡張された区分上に溶融物が形成され、この溶融物は、プレートの下位に配置された誘導加熱コイルの内孔を通過して延在しており且つ固/液相境界を介して円錐形の管の管端部に接触している。一定の目標直径を有する区分が結晶化される場合、又は場合によっては既に前もって、誘導加熱コイルと溶融物とは、溶融物が誘導加熱コイルの内孔を通って対称的に延在しているように、相対的に位置決めされる。
【0010】
円錐形に拡張された単結晶の区分が結晶化される場合は、円錐形の管が管端部の領域において、固化していくシリコンにより管端部が完全に閉鎖されるまで徐々に狭められるという危険が生じる。その結果、単結晶の成長は中断される。なぜならば、溶融されたシリコンを円錐形の管を通して最早供与することができず、且つ/又は溶融されたシリコンが円錐形の管内で停滞して、終にはシリコンから成る回転プレートの上位に配置された第1の誘導加熱コイルと接触してしまうからである。
【0011】
発明者はその理由を、円錐形に拡張された単結晶の区分が15〜30mmの直径を有し且つ結晶化される臨界的な位相の間の円錐形の管の管端部の外径の大きさが、管端部と溶融物との間の、固/液相境界の凝固を回避する延在部を可能にするためには不十分である、という点にあると見ている。本発明では前記のような相境界の延在部が、プレートの下方に配置された誘導加熱コイルによって管が管端部から、臨界的な位相の間に管端部の外径が15mmを下回らないように溶融されることによって保証される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】管端部を凝固させる状況を示した図である。
【図2】管端部の凝固の回避の仕方を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を図面につき詳しく説明する。
【0014】
図1には、単結晶の円錐形に拡張された結晶化する区分1と、予め結晶化された狭幅ネック2の一部とが示されている。更なる結晶成長には、円錐形に拡張された区分上に位置するシリコンから成る溶融物3と、シリコンから成るプレート5の円錐形の管6の内壁に沿って溶融物3に向かって流れる、溶融されたシリコンから成る被膜4とによって近づけられる。この被膜は、プレートの上位に配置された第1の誘導加熱コイル7によるプレート表面の溶融によって生ぜしめられ且つ液状に保たれる。後の時点で前記誘導加熱コイル7は、漏斗12を通ってプレート5に搬送されるシリコンから成る粒体13を誘導溶融するためにも使用される。この場合、被膜4は主として溶融された粒体によって形成される。誘導加熱コイル7は、有利には前掲のドイツ連邦共和国特許出願公開第102008013326号明細書に記載の誘導加熱コイルの構成を有している。プレート5の下面は、例えば冷却装置10によって冷却される。シリコンから成るプレート5の下方に配置された第2の誘導加熱コイル8は、主としてFZ法の場合と同様に作動され、まず最初に所定の最終直径まで円錐形に拡張された区分1を結晶化させ、その後一定の目標直径を備えた単結晶区分を制御しながら結晶化させる。
【0015】
臨界的な位相の最中に、円錐形に拡張された単結晶の区分1の直径が15〜30mmに成長し且つ円錐形の管6の管端部の外径Dが15mm未満であるか又は15mm未満になると、高い確率で、円錐形の管6の管端部が凝固する。前記外径Dが小さければ小さいほど、固/液相境界9は、円錐形の管6の管端部の外縁部における三重点Tから内側に向かって急峻に下降する。この下降に基づき三重点Tは、相境界9に沿って内側に向かってずれる傾向がある。その結果、溶融物3と第2の誘導加熱コイル8との間の間隔はより大きくなり、これにより、より少ないエネルギが溶融物3に伝達されるので、溶融物3は円錐形の管6の管端部において凝固する恐れがある。誘導加熱コイル8と溶融物3との間の間隔の減少又は誘導加熱コイル8の加熱出力の増大は、この状況においては最早何の助けにもならない。このような対策は、それどころか管端部がますます狭くなることを促進する。なぜならば、この場合は電磁的な圧力が、溶融物3と三重点Tとを更に内側に向かって押圧するからである。
【0016】
前記メカニズムが進行することを確実に回避するためには、プレート5の下方に配置された誘導加熱コイル8によって、円錐形の管6が管端部から、この管端部の外径Dが臨界的な相の間は15mmを下回らない程度に溶融される。これにより、図2に示したような固/液相境界の延在部が達成される。固/液相境界は、円錐形の管6の管端部の外縁部における三重点Tから内側に向かって上昇している。この上昇は、三重点Tが円錐形の管6の管端部の外縁部に安定的に残留し且つ第2の誘導加熱コイル8と溶融物3との間の間隔が大きくはならないためには十分である。
【0017】
第2の誘導加熱コイル8の内孔11の直径は溶融物3の直径よりも大きく、有利には30mm以上且つ40mm以下である。臨界的な位相の間の円錐形の管6の管端部の外径と内孔11の直径との比率は、1:3又はそれ以上であり、特に有利には1:3〜4:5である。
【0018】
円錐形に拡張された区分1が既に30mmよりも大きな直径に成長していると、例え円錐形の管の管端部の外径Dが15mm未満になったとしても、円錐形の管6の管端部の凝固を防ぐためには、溶融物に向かって後流する、溶融されたシリコンの量は一般には十分である。
【0019】
例:
直径100mmの、シリコンから成る複数の単結晶が、粒体の包囲溶融によって製造された。以下の表は、円錐形の管の管端部の外径に関連して、円錐形に拡張された区分の直径が15mmに到達してから直径30mmに到達するまでの時間内で1つの単結晶を成功裏に製作するために必要とした、平均的な被着試験の回数を示したものである。
【0020】
【表1】

【符号の説明】
【0021】
1 単結晶の円錐形に拡張された区分、 2 狭幅ネック、 3 溶融物、 4 被膜、 5 プレート、 6 円錐形の管、 7 第1の誘導加熱コイル、 8 第2の誘導加熱コイル、 9 固/液相境界、 11 内孔、 12 漏斗、 13 粒体、 T 三重点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒体の包囲溶融によりシリコンから単結晶を製作するための方法において、シリコン製の回転プレートの下位に配置された誘導加熱コイルにより、単結晶の円錐形に拡張された区分を結晶化させ、誘導溶融されたシリコンを、前記プレートの中央開口を取り囲んでおり且つ前記プレートの下方に延びる前記プレートの円錐形の管を通して、単結晶の円錐形に拡張された区分上に位置し且つ円錐形の管の管端部に接触している溶融物に供給し、しかも、単結晶の円錐形に拡張された区分が15〜30mmの直径を有して結晶化される限りは、前記管端部の外径が15mmを下回らないように、前記プレートの下位に配置された誘導加熱コイルによって十分なエネルギを供給することを特徴とする、粒体の包囲溶融によりシリコンから単結晶を製作するための方法。
【請求項2】
前記プレートの下位に配置された誘導加熱コイルによって十分なエネルギを供給して、単結晶の円錐形に拡張された区分が15〜30mmの直径を有して結晶化される限りは、前記管端部の外径と、前記誘導加熱コイルの内孔の直径との比が1:3又はそれ以上であるようにする、請求項1記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−102234(P2011−102234A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−253104(P2010−253104)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(599119503)ジルトロニック アクチエンゲゼルシャフト (223)
【氏名又は名称原語表記】Siltronic AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】