説明

粒子の懸濁液の光散乱特性を測定するための円形の試料セルおよびシステム、ならびに粒子の懸濁液によって散乱された光を測定する方法

【課題】光ビームが当てられた溶液から散乱された光を収集する効率を高める。
【解決手段】横方向かつ垂直レンズとして作用する外面を組込んだ、光散乱測定を行なうための試料セルを説明する。この独自の構造は、そこに含まれ、またはそれを通って流れる流体内に懸濁され、それに入射する細い光ビームによって照らされた分子および粒子によって散乱された光の非常に改良された測定を可能にする。結果として生じるセルのレンズ構造は、散乱光光度計に統合され、各散乱光収集検出器の前の好適な開口部と組合されると、迷光がそのような各検出器に入ることを著しく減少させる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連特許および出願
以下の特許および出願は、この発明の出願に関連する方法および装置に関与する:
G.R.ジャニク(Janik)およびP.J.ワイアット(Wyatt)、米国特許第5,404,217号(1995年4月4日)「レーザ液体フローセルマニホールドシステム、および組立のための方法」(Laser liquid flow cell manifold system and method for assembly)
P.J.ワイアットおよびG.R.ジャニク、米国特許第5,530,540号(1996年6月25日)「微小量についての光散乱測定セル」(Light scattering measurement cell for very small volumes)
S.P.トレイノフ(Trainoff)、米国特許第6,426,794号(2002年7月30日)「自動自己洗浄を取入れた光学フローセル」(An optical flow cell incorporating automatic self cleaning)
S.P.トレイノフ、米国特許第6,452,672号(2002年9月17日)「自己洗浄光学フローセル」(A self cleaning optical flow cell)
S.P.トレイノフおよびP.J.ワイアット、米国特許第6,651,009号(2003年11月18日)「注入法により巨大分子の平均溶液特性を判定するための方法」(Method for determining average solution properties of macromolecules by the injection method)
P.J.ワイアットおよびM.J.ウェイダ(Weida)、米国特許第6,774,994号(2004年8月10日)「懸濁液中の粒子の絶対数密度を求めるための方法および装置」(Method and apparatus for determining absolute number densities of particles in suspension)
S.P.トレイノフ、米国特許第7,386,427号(2008年6月10日)「相互検出器帯域拡大の効果を修正するための方法」(Method for correcting the effects of interdetector band broadening)
D.I.サム(Some)およびS.P.トレイノフ、2008年2月29日に出願された米国特許出願連続番号第12/072,986号、「流動溶媒への注入により溶液中の分子の平均特性を判定するための方法」(Method for determining average properties of molecules in solution by injection into a flowing solvent)
S.P.トレイノフ、2008年4月18日に出願された米国特許出願連続番号第12/148,358号、「相互検出器帯域拡大の効果を修正後、試料の物理的特性を導き出す方法」(Method to derive physical properties of a sample after correcting the effects of interdetector band broadening)
背景
分子、ウイルス、ナノ粒子、リポソームなどの溶質を含有する溶液はしばしば、分離に続き、クロマトグラフ手法または他の種類の調製手法によって測定される。そのような測定は、溶質濃度、溶液粘度および光散乱特性の判定を含んでいてもよい。対応する濃度判定と組合せて使用される後者の測定は、溶液構成要素のサイズ、モル質量、凝集および結合を導き出すために使用されてもよい。そのような判定を改良するために、散乱光を、レーザなどによって生成されたような関連する光ビームの方向に対して複数の角度で測定することにより、光散乱測定がしばしば行なわれる。そのような測定は多角度光散乱(multiangle light scattering)または短くMALSと呼ばれ、絶対光散乱光度計またはそれらの派生物によって行なわれる。
【0002】
そのようなMALS測定を行なう際の容易さにおける劇的な改良は、以下に‘927特許と呼ばれる米国特許第4,616,927号に最初に記載された軸方向フローセルの導入と共に生じた。特にセルを光度計に組込む手段に関するさらなる改良が、対応する米国特許第5,530,540号、第4,952,055号、第4,907,884号、および意匠特許Des第329,821号に記載されている。
【0003】
いわゆる軸方向フローセルの基本構造は、小さい研磨孔を有する直円柱からなり、研磨孔は円柱の底部と上部との中ほどで直径を貫通している。試料およびそれに当る入射光ビームの双方が、この同じ孔を通過する。これは、照明ビームが通常、溶液流方向に対して直角となっている、より従来の照明システムとはかなり異なる。軸方向セルフローについては、セル自体は、ビームの異なる部分から散乱された光からの近軸光線を、それを包囲し、孔を通りかつセル底部に平行な平面上に位置する1組の検出器上へと結像する、円筒レンズとして作用する。また、非常に重要なことは、よくあるようにセル屈折率が流体屈折率よりも大きい場合に、より小さい散乱角度での測定が実施可能なことである。‘927の軸方向フローセルを取入れている光散乱光度計の性能は、大抵の他のフローセル実施例よりもはるかに優れているが、改良された構造から恩恵を受ける、散乱光の収集に関する重要な要素がいくつか残っている。この発明の主な目的は、これらの要素に対処し、試料セルがそれを通って流れる溶液によって散乱された光を収集する上でより大きな役割を果たす光度計の全体的性能を高める方法および手段を提供することである。
【0004】
上述のように、フローセル構造のレンズのような挙動は、中央の照明ビームからの近軸光線を、散乱光検出器を含む円弧上に集束させることを可能にする。しかしながら、セル底部に平行な平面においてセルを出た光線に非常に近接した光線しか、検出器に到達しない。検出器に向かって散乱された光の多くは検出器平面から外へ屈折され、収集されない。加えて、液体/ガラス−孔の界面からの迷光の一部が検出器に到達して、それにより、収集中の信号への背景寄与を増加させる。分子生物学、分析化学、ナノ粒子特性化および他の分野を、それらの採用および光散乱手法の使用によって著しく拡大することにおける‘927のセル設計の成功は、新規のセル構造および用途の開発に著しい刺激を与えた。
【0005】
この発明の主な目的は、光ビームが当てられた溶液から散乱された光を収集する効率を高めることである。この発明の別の目的は、空間フィルタリングが迷光寄与を著しく減少させ得る光収集構造により、収集された散乱信号の信号対ノイズ比を改良することである。
【発明の概要】
【0006】
再設計された軸方向フローセルにより、それを通って流れる溶質によって散乱された光の測定が改良され得る。その好ましい実施例では、このセルは、外接した複数の検出器の各々に入射する迷光を減少させる手段を提供しつつ、そのように散乱された光の大部分を捕らえるよう設計されている。こうして得られたフローセルは、‘947発明の円筒構造よりもはるかに効率的に、同伴溶液によって散乱された光を集束させる回転面を取入れている。散乱光を検出器上に集束させることにより、この発明の構造は、フローを拘束するセル孔の壁から生じる迷光を著しく減少させるよう、空間フィルタリングと組合されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】光散乱光度計への挿入用の取付具のいくつかを有する、先行技術のフローセルを示す図である。
【図2】この発明と共通の特徴である、先行技術のセルの孔の中心で生じる散乱光の屈折を示す図である。
【図3】孔を含みかつセル底部に平行な平面内での先行技術の散乱ジオメトリの上面図である。
【図4】先行技術の円筒セルジオメトリの側面図である。
【図5】新規のセル形状の側面図である。
【図6】いくつかの取付具を有するこの発明の新規のフローセルを示す図である。
【図7】孔表面からの二次散乱光を退ける、好適に選択されたスリット構造の側面図である。
【図8】多レンズ構造を取入れたこの発明の一実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
発明の詳細な説明
図1は、先行技術である‘947発明の軸方向フローセルを、光度計内でのその位置を保ち、かつセルを通って流れる試料から散乱された光を測定するためにその使用を可能にするために必要とされる典型的な1組の取付具と共に示している。セル1は、半径Rの直円柱の形をした、ガラスまたはプラスチックといった透明媒質でできており、封止材4が押し付けられるよう、2つの側面3が平たくなっている。この明細書全体を通して、セルの組成はガラスであると言及されるが、それは、通過する溶液にとって好適な他のあらゆる透明媒質でできていてもよい。その中心を直径に沿って通っているのは研磨孔2であり、その断面は概して0.5〜1.5mmの範囲の円形または矩形であってもよい。2つのマニホールド5がセルを前記封止材に押し付けている。取付具によって封止材7に押し付けられた窓6は、細い光ビームがそれを通過することを可能にする。光は概してレーザ源からであり、直円柱構造のセル底部に対して垂直に偏光されている。マニホールド同士は、底部プレート9およびボルト10によって結合されている。流体試料は取付具11を通って導入され、除去されてもよい。
【0009】
図2は、この発明において留保された先行技術の孔の内部での屈折の詳細を示す。ここに図示されているのは、セル13の中心で試料によって方向θへと散乱され、空気−ガラス界面14で方向θ′へと屈折している入射光ビーム12のジオメトリである。通過する溶液は反射率がns、ガラスは反射率がngで、通常、ns<ngである。このため、液体内で角度θで散乱された光は、角度θ′で孔を出る屈折光線へと変換されている。これは先行技術のセルの重要な要素であった。なぜなら、小さい散乱角度での散乱が、溶液ガラス界面での屈折によって、より実験的に到達可能なより大きい散乱角度へと変換されるためである。以下の説明では、θgは、スネルの法則による修正を行なった後のガラスにおける散乱光の角度(‘947特許のθ′)を指す、ということが理解されるべきである。セルの空気−ガラス界面での最終的な屈折が、重要な主要項目となる。
【0010】
このセルジオメトリの別の利点は、セルの外部によって形成された円筒レンズが、入射光ビーム12の方向に対して図3の円弧15で示す任意の散乱角θsで散乱するビームに沿って、セルの中心から距離fh離れて検出器が配置され得るリングに光を集束させることである。この先行技術のセルジオメトリのさらなる詳細を図3に示す。ビームは、水平軸に沿った線源として作用する。セルの半径をR、その屈折率をnとする。セルの中心から角度θsで主要ビームから放出された光線と、ビームに沿ってさらに距離x離れて同じ角度で放出された別の光線とを考慮されたい。スネルの法則から、線17に対して角度θg16で入射する、セルの中心からの光線は、以下の式に従う。
【0011】
【数1】

【0012】
正弦の法則から、以下のようになる。
【0013】
【数2】

【0014】
近軸光線のみを考慮し、θ=1かつθg=1である場合、以下の式が得られる。
【0015】
【数3】

【0016】
なお、θsは小さいと仮定する必要はない。あらゆる散乱角度での近軸光線について、同じ結果が得られる。
【0017】
ここで、セルの中心から距離fh離れて配置された先行技術の円筒セルに基づいた検出器によって収集された光を、考慮されたい。このジオメトリを図4に示す。検出器が半径ρであり、かつ焦点リングに位置するならば、収集角の範囲が計算され得る。ここでも、近軸の場合については、以下の式が得られる。
【0018】
【数4】

【0019】
式(3)によって与えられる焦点距離fhについては、式(4)は以下のようになる。
【0020】
【数5】

【0021】
半径が1.5mmの検出器、半径が16mmのセル、およびn=1.5については、
【0022】
【数6】

【0023】
である。実際の収集領域は幾分小さめである。なぜなら、検出器は通常円形であり、正方形ではないためである。しかしながら、これは試料から生じる全散乱光の一部であることに留意することが重要である。
【0024】
ここで、この発明の主要要素、すなわち、新規の円筒レンズを用いて(散乱面外の)方位角方向においてより多くの光を収集することにより、フローセル内の試料によって散乱された光をより効率的に捕らえつつ、(散乱面内の)軸方向における平均化を最小限に抑える手段を考慮されたい。これは、すべての多角度光散乱機器は軸方向角度(θ)の関数として散乱強度を測定し、この方向における平均化はデータを歪めてモデルへの適合を問題あるものにするため、重要である。方位角方向における平均化には、この問題がない。収集効率を高める手段は、図5に示す凸レンズ構造を統合するよう、先行技術のセル表面をその垂直方向において修正することによるものである。凸レンズ構造のそのような統合について、垂直方向における集束を提供するよう、理論が展開されてきたが、そのような垂直集束はフレネルレンズ素子の円周方向の統合によっても達成され得ることが、当業者には理解されるであろう。また、これに代えて、垂直集束を提供する連続的な凸構造は、平坦な円形表面の近傍に位置付けられ、かつ各々その関連する検出器上への垂直集束を提供する、離散的な円筒レンズ素子に置換えられてもよい。
【0025】
セルの中心と半径R′のこの発明の凸状領域の中心との間の距離は、dである。散乱光線は、照らされた試料を角度αで出て、孔の中心から距離l離れたところで円形表面と交差し、その法線に対して角度θgを作る。余弦の法則および正弦の法則を適用すると、以下の式が得られる。
【0026】
【数7】

【0027】
焦点距離は以下の式によって与えられることが示され得る。
【0028】
【数8】

【0029】
この式は完全非球面レンズ設計fv(α)について解くことができるが、以下のような近軸近似で解く方がはるかにより容易である。
【0030】
【数9】

【0031】
これにより、αから独立した結果、すなわち以下の式が得られる。
【0032】
【数10】

【0033】
水平方向および垂直方向の両方において散乱光線を同じ距離で集束させるために、2つの焦点距離は等しく設定され、fh=fvである。半径について解き、R=d+R′を思い出すと、以下の式が得られる。
【0034】
【数11】

【0035】
これが主な結果である。それはレンズ半径R′をセルのサイズRおよびガラスの屈折率nに関連付ける。
【0036】
先行技術の構造に対するこの発明の構造の重要な一利点は、それがはるかにより多くの光を集めることである。簡単な数値例がこれを実証するであろう。先行技術のセルとほぼ同じサイズである、全体的半径R=16mm、屈折率n=1.5のガラスセルを考慮されたい。f=fh=fv=3.0R、R′=0.25R、かつd=0.75Rとする。図5の構造の最大収集角は単に以下のようになる。
【0037】
【数12】

【0038】
それによりα=322mradとなる。これは収集効率の1桁分の増加を引起す。この分析は単なる概算である。なぜなら、それは検出器の実際の形状と非近軸光線を収集するための効率とを無視しているためである。しかしながら、それは検出器信号レベルの著しい増加があることを実証している。検出器がショットノイズ限度にある器具類については、信号の平方根が3倍以上の期待されたS/Nの向上を引起すにつれて、検出器のノイズは増加するであろう。
【0039】
図6は、この発明のセル18、および光散乱光度計内でのその位置および機能を維持するために必要な主要取付具の表示を示す。セルは、マニホールド手段19および20ならびに底部プレート21によって保持されている。ばね座金22は、セルの前記マニホールドとの接触を確実にする。セルを通る軸方向孔23は、液体がOリング封止材24によって妨げられずにそれを通って流れるように、マニホールドと接続されている。ねじ付きボルト25、26、および27は、前記セルマニホールドおよび底部プレート21を単一のアセンブリに保持する。Oリング封止材29とねじ付き取付具30との間に挟まれた窓28により、細い光ビームが前記アセンブリを通過してもよい。クロマトグラフィ装置、ポンプ、試料源などへの接続を可能にするねじ付き取付具31により、溶液が、前記マニホールドを通る連結通路を含む前記封止されたアセンブリを通って、前記孔へと流れてもよい。また、たとえば、セルに直接機械加工され、ビームが軸方向孔に垂直に出入りするよう端部を平坦化した流体出入口により、光学窓がセル構造自体に組込まれ得ることにも留意すべきである。
【0040】
式(11)および(12)の結果をもたらした上述の分析は、著しく改良された散乱光収集効率を達成するために開発されたこの発明の方法および装置の単なる一例を表わしている。対応するセルの凸状構造は、近軸近似が使用され得る単純な円形形状となるよう選択されたものである。それは作製が容易であるという利点も有する。しかしながら、収集効率をさらに高める回転非球面を作成するために式(8)を分析的にまたは数値的に解くことも可能である。このため、この発明は、光散乱セルの性能を高める一般的な方法を教示している。
【0041】
この発明の方法および装置のさらなる一利点は、著しい量の迷光の排除を簡略化する新規の実施例の能力に関する。上述のこの発明のフローセルは、フローセル内部のビームを、そこから距離f離れたリング上に位置する検出器に結像するため、これは空間フィルタリングに特に適用できるジオメトリをもたらす。フローセル孔の縁からの二次散乱光を退けるために、図7に示すように、前記焦点リング上に位置するそのような各検出器33の前に、スリット32を置けばよい。そこには2組の散乱光線が示されており、それらは、孔35の中心で照らされた試料34で生じるもの、および孔−液体界面37の迷光36から生じるものである。
【0042】
この発明の設計の一目標は、セルからの散乱光の収集を最大にすることである。この発明のセルにより、方位角方向に散乱した光の小範囲が、前述の散乱リング上にそれを受けるよう配置された検出器によって、各極角で捕らえられる。垂直に偏光された入射光の場合、方位角φの関数としての所与の極方向への散乱光強度の変動は、入射光ビームの波長に対してサイズが非常に小さい粒子については、cos2φに比例する。より大きな粒子については、方位角の変化とともに極性散乱の変化が検出され得る。そのような変化は、入射光を消極する粒子についても見られる場合がある。したがって、入射放射と直交していない平面において散乱光を測定することが望ましいかもしれない。これは、たとえば可変半波長板によって入射光の偏光面を回転させることにより、容易に達成され得る。にもかかわらず、そのような測定は、照らされた粒子の方位角散乱特性を記録するために、偏光面の各配向について別個の測定を必要とするであろう。試料は既に放射をあらゆる方位角方向に散乱させているため、そのような散乱光を異なる方位角散乱面から同時に収集することが望ましいようである。これは、図8に示すような拡張された構造によって達成され得る。この多レンズ構造はそれにより、入射光ビームの偏光面に対して異なる配向での、単一レンズセルの改良を取入れた測定を可能にする。前述のように、この発明の設計は、新規の円筒レンズによって散乱光の線源を空間で共通の散乱面上に位置するリング上へと結像することにより、動作する。共通の孔38に対して異なる散乱面へと散乱された光の測定に関する異なるレンズ素子を、39、40、および41で示す。方位角の全範囲を網羅する一連のレンズを形成する一般化構造を、右手に42で示す。しかしながら、対応する散乱リングに集束される方位角の範囲は、各極性方向について同じでなければならないことに留意されたい。このため、極角が0°および180°に近づくにつれて、収集角αの範囲は減少する。実際、
【0043】
【数13】

【0044】
である。
好ましい状況下では、試料が十分に高い濃度を有し、フローセルを通って十分にゆっくりと移動している場合、図8の統合構造とできるだけ同じ量の情報を得るために十分迅速に、偏光面の変更と完全な1組の散乱データの収集とを繰返すことが可能であり得る。
【0045】
前述の説明は、説明のため、この発明の完全な理解を提供するよう特定の用語を使用した。しかしながら、この発明を実践するために特定の詳細が必要とはされないことは、当業者には明らかであろう。このため、この発明の特定の実施例の前述の説明は、例示および説明のために提示されている。それらは、包括的であるよう、またはこの発明を開示されたとおりの形態に限定するよう意図されてはいない。明らかに、上述の教示に鑑みて多くの修正および変更が可能である。実施例は、この発明の原理およびその実際の用途を最良に説明するために選択され、説明されたものであり、それらはそれにより、考えられた特定の使用に適合するようなさまざまな修正を用いて、当業者がこの発明およびさまざまな実施例を最良に利用することを可能にする。添付された特許請求の範囲およびそれらの均等物がこの発明の範囲を定義することが意図されている。
【符号の説明】
【0046】
18:セル、19、20:マニホールド手段、21:底部プレート、23:軸方向孔、24:Oリング封止材、28:窓、29:Oリング封止材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子の懸濁液の光散乱特性を測定するための円形の試料セルであって、その本体部は、
1)直径に沿って配置され、粒子の懸濁液を保持する内部孔を含み、そこを光の細いビームが、前記粒子から光を散乱させるよう前記懸濁液を照らしながら通過し、前記本体部はさらに、
2)前記孔の両方の開口部にあり、前記セルのマニホールド手段への組込みを可能にし、取付具を用いてそれを保持して位置付け、前記懸濁液の流れを可能にする手段と、
3)照らされた前記孔から共通の散乱角度へと散乱された光を同心検出リング上の単一の対応する共通の焦点に集束させるよう、横方向レンズかつ垂直レンズとして作用するよう構成された外面とを有する、試料セル。
【請求項2】
前記外面は、孔を含む水平面に垂直な軸を中心とする回転面である、請求項1に記載の試料セル。
【請求項3】
前記外面は凸形状である、請求項2に記載の試料セル。
【請求項4】
前記凸形状は、前記セルの中心から固定された距離離れて位置する点を中心とする一定の曲率半径を有する、請求項3に記載の試料セル。
【請求項5】
Rは、孔を含む水平面における試料セルの半径、R′は、前記試料セルの中心から距離d離れたところに中心がある外面の固定された曲率半径、nは、試料セルを形成する透明材料の屈折率であり、Rは、
【数1】

という関係によってR′に関連付けられている、請求項4に記載の試料セル。
【請求項6】
粒子の懸濁液の光散乱特性を測定するためのシステムであって、
1)対応する複数の散乱角度の各々で散乱光を各々検出する複数の光検出器を有する検出リングと、
2)試料セルとを含み、前記試料セルは、
a.円形の本体部を有し、前記円形の本体部は、その直径に沿って、かつ前記検出リングと同じ平面に位置する内部孔を含み、前記試料セルはさらに、
b.前記孔の両方の開口部にあり、前記セルのマニホールド手段への組込みを可能にし、取付具を用いてそれを保持して位置付け、前記孔を通る前記粒子の懸濁液の流れを可能にする、平坦化された、または他の態様で修正された端を有し、
c.共通の散乱角度を有する散乱光を検出リング上の共通の焦点距離に集束させるよう、横方向レンズかつ垂直レンズとして作用するよう形作られた回転面である外面を含み、前記システムはさらに、
3)マニホールドアセンブリを含み、前記マニホールドアセンブリは、
a.光散乱光度計内で整列するよう前記セルを保持し、
b.前記孔を通る前記懸濁液の導入および流れを可能にする手段および取付具を含み、
c.光ビームが前記孔を通って流れる前記粒子の懸濁液を照らし、そこから散乱するように、前記孔を通る前記光ビームの通過を可能にするために必要とされるような光学手段を提供する、システム。
【請求項7】
前記試料セルの外側回転面はそこにフレネルレンズを統合しており、前記フレネルレンズはそれにより、それを通って出射する散乱光の垂直集束を提供する、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記垂直集束は、平坦な円形表面の近傍に配置された別個の円筒レンズ[DJ1]素子により達成され、前記平坦な円形表面はそれを通って出射する散乱光の横方向集束を提供する、請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記孔を通る光ビームの通過を可能にするために必要とされる前記光学手段は、前記マニホールドに適切に保持された窓である、請求項6に記載のシステム。
【請求項10】
前記孔を通る光ビームの通過を可能にするために必要とされる前記光学手段は、前記セルの構造に組み込まれている、請求項6に記載のシステム。
【請求項11】
前記光検出器には各々、前記試料セルの前記孔の縁から前記対応する散乱角度へと生成された二次散乱光を退ける空間フィルタを形成する、対応するスリットが取付けられている、請求項6に記載のシステム。
【請求項12】
前記試料セルの外側回転面は凸形状である、請求項6に記載のシステム。
【請求項13】
前記凸形状の外面は、前記試料セルの中心から固定された距離離れて位置する点を中心とする一定の曲率半径を有する、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
Rは、前記孔を含む水平面における前記試料セルの半径、R′は、前記試料セルの中心から距離d離れたところに中心がある外面の固定された曲率半径、nは、試料セルを形成する透明材料の屈折率であり、R、R′、およびdは、
【数2】

として関連付けられている、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記二次散乱光は迷光である、請求項11に記載のシステム。
【請求項16】
前記光ビームはレーザからのものである、請求項11に記載のシステム。
【請求項17】
前記レーザからの前記光ビームは、前記検出リングを含む平面に対して垂直に平面偏光されている、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記レーザからの前記光ビームは平面偏光されており、偏光面は、前記検出リングを含む平面に対して90°以外の角度をなしている、請求項16に記載のシステム。
【請求項19】
前記レーザからの前記光ビームは平面偏光されており、前記偏光面の角度は可変半波長板によって変更され得る、請求項16に記載のシステム。
【請求項20】
粒子の懸濁液により、試料セルを包囲するリング上に配置された複数の検出器の各々へと散乱された光を測定する方法であって、
1)試料セルを選択するステップを含み、前記試料セルは、
a.円形の本体部を有し、前記円形の本体部は、その直径に沿って、かつ前記検出器を含む前記リングと同じ平面に位置する内部孔を含み、前記試料セルはさらに、
b.前記孔の両方の開口部にあり、前記セルのマニホールド手段への組込みを可能にし、取付具を用いてそれを保持して位置付け、前記液体の流れを可能にする手段を有し、
c.共通の散乱角度を有する前記散乱された光のあらゆる寄与を、前記検出器を含むリング上の共通の焦点距離に集束させる横方向かつ垂直レンズとして作用するよう形成された回転面である外面を有し、
d.前記マニホールド手段内に位置付けられ、前記マニホールド手段は、
i.光散乱光度計内で整列するよう前記セルを保持し、
ii.前記孔を通る前記懸濁液の導入および流れを可能にする手段および取付具を含み、
iii.光ビームが前記孔を通って流れる前記粒子の懸濁液を照らし、そこから散乱するように、前記孔を通る前記光ビームの通過を可能にするために必要とされるような光学手段を提供し、前記方法はさらに、
2)散乱光特性を測定すべき前記液体試料で前記内部孔を充填するステップと、
3)光ビームを前記孔に通すステップと、
4)前記包囲するリング上に配置された前記検出器の各々で収集された散乱光を測定するステップとを含む、方法。
【請求項21】
回転面は凸状である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記孔の構造の要素によって散乱された二次光を退けるよう、前記検出器の各々の前に空間フィルタが配置されている、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記二次散乱光は迷光である、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記光ビームはレーザからのものである、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記レーザからの前記光ビームは、前記検出リングを含む平面に対して垂直に平面偏光されている、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記レーザからの前記光ビームは平面偏光されており、偏光面は、前記検出リングを含む平面に対して垂直でない角度をなしている、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記レーザからの前記光ビームは平面偏光されており、前記偏光面の前記角度は可変半波長板によって変更され得る、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記孔を通る光ビームの通過を可能にするために必要とされる前記光学手段は、前記マニホールドに適切に保持された窓である、請求項20に記載の方法。
【請求項29】
前記孔を通る光ビームの通過を可能にするために必要とされる前記光学手段は、前記セルの構造に組み込まれている、請求項20に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−286491(P2010−286491A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−135191(P2010−135191)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【出願人】(594035932)ワイアット テクノロジー コーポレイション (8)
【氏名又は名称原語表記】Wyatt Tecknology Corporation
【Fターム(参考)】