粒子または粒子クラスタを制御下でカプセル化するための微小流体デバイス、システム及び方法
【課題】サブミリ級の大きさの粒子またはそのクラスタをカプセル化する微小流体デバイスを提供する。
【解決手段】カプセル化のための粒子を懸濁状態で含む第1の液相(φ1)を送出するための第1のダクト10と、前記第1の液相と不混和である第2の液相(φ2)の流れを運ぶための第2のダクト20とを備え、前記第1のダクトは前記第2のダクト内へと開いて前記第2のダクトと共に流体接合部30を形成し、かつ本デバイスは、前記第1のダクト内を流れる前記第1の液相を放出するための、前記接合部の上流に配置されかつ懸濁状態の粒子によって少なくとも部分的に塞がれやすい、これにより前記第1のダクト内で圧力を上昇させる口45、45’を装備する少なくとも1つの微小流体ダクト40、40’を備える。このようなデバイスを含む微小流体システム、及びこのようなデバイスの使用を基礎とするカプセル化の方法。
【解決手段】カプセル化のための粒子を懸濁状態で含む第1の液相(φ1)を送出するための第1のダクト10と、前記第1の液相と不混和である第2の液相(φ2)の流れを運ぶための第2のダクト20とを備え、前記第1のダクトは前記第2のダクト内へと開いて前記第2のダクトと共に流体接合部30を形成し、かつ本デバイスは、前記第1のダクト内を流れる前記第1の液相を放出するための、前記接合部の上流に配置されかつ懸濁状態の粒子によって少なくとも部分的に塞がれやすい、これにより前記第1のダクト内で圧力を上昇させる口45、45’を装備する少なくとも1つの微小流体ダクト40、40’を備える。このようなデバイスを含む微小流体システム、及びこのようなデバイスの使用を基礎とするカプセル化の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サブミリメートル級の大きさの粒子またはこのような粒子のクラスタを制御下でカプセル化するための微小流体デバイス、システム及び方法に関する。より具体的には、本発明は、細胞、特にヒトの細胞またはランゲルハンス島等の細胞クラスタをカプセル化することに適する。
【背景技術】
【0002】
細胞のカプセル化は、マイクロカプセル内の細胞または細胞クラスタを、移植後の免疫系による攻撃から保護するために不動にすることに存する技術である。カプセルは、カプセル化された細胞の代謝にとって不可欠である栄養分子、酸素、他等の低分子量の分子の進入を許容するに足る多孔質であると同時に、免疫系の抗体または細胞等の高分子量の物質の進入を防止するものである必要がある。従って、カプセルのこの選択的透過性は、カプセル化されるドナーからの細胞と、移植レシピエントの免疫系細胞との直接的接触を防止するように設計され、移植によって使用される免疫抑制治療剤は激しい副作用を伴うことから、これにより、その投与の制限を可能にする。その選択的透過性に加えて、製造されるカプセルは生体適合性のあるものでなければならず、機械的強度がありかつカプセル化されるべきものに整合するサイズでなければならない。
【0003】
カプセル化の数ある用途の中では、膵臓内に位置し、かつインスリンを生成することにより体内の血糖を調整するβ細胞を含む幾つかのタイプの細胞によって構成される脆い細胞の塊であるランゲルハンス島を挙げることができる。これらの島のカプセル化は、インスリンを生成するその固有のβ細胞を免疫系が破壊する自己免疫疾患であるインスリン依存性糖尿病の治療に使用される従来の細胞療法(例えば、膵臓移植または島移植)に代わるものである。
【0004】
既知の主たるカプセル化方法は、下記の何れかを利用する。即ち、
・ 空気または液体の同軸噴流。結果的に生じるカプセルは、400マイクロメートル(μm)から800μmまでの範囲内のサイズを有する(但し、生成されるカプセルの平均サイズは400μmよりも600μmから800μmまでの範囲に近い。Zimmermann著「NRM−、CLSM−及びAFM−画像化により検認される均一に架橋された機能的アルギン酸マイクロカプセルの製造」Biomaterials 24、2003年、2083−2096ページ参照)。または、
・ 電位差。これは、カプセルサイズの縮小が優先される場合に最も広範に使用されるカプセル化技術である(よって、カプセルサイズは200μmから800μmまでの範囲内)。Goosen著「体組織カプセル化のための静電液滴の生成:高電圧電源の評価」Biotechnol.Prog. 13、1997年、497−502ページ参照。もしくは、
・ 使用される溶液の粘性によって制限される場合があるという欠点のある振動技術。Seifert著「細胞不動化のための小型単分散アルギン酸ビーズの製造」Biotechnol.Prog. 13、1997年、562−568ページ参照。
【0005】
先行技術において知られるこれらの技術には、下記のような所定の欠点がある。
【0006】
・ カプセルのサイズが、カプセル化されるべき細胞/島のサイズに必ずしも適さない。
【0007】
・ カプセルサイズのばらつきが、液滴サイズの縮小に伴って大きくなる。
【0008】
・ 生成されるカプセルは必ずしも球形でなく、よって、再現精度の欠如を招く。
【0009】
これらの問題点に加えて、現在の大部分のカプセル化技術は、各液滴内に包含される細胞または細胞クラスタの数を制御する方法を提供していない。カプセル化される細胞またはクラスタの数は、カプセル化基質として作用する高分子溶液における細胞(またはクラスタ)の懸濁濃度を調整することにより、専ら統計学的に決定される(この濃度は、カプセル化する粒子のサイズ、及びカプセルとして所望されるサイズに依存する)。従って、従来のシステムは、多数の空のカプセル、並びに可変数の細胞またはクラスタを包含するカプセルを生成する。
【0010】
空のカプセルの主たる欠点は、移植される必要のある細胞の合計体積を増加させ、かつこれらが組織の脈管再生に特に適すると思われる領域内へ移植されることを妨げることにある。カプセル化細胞は、栄養及び酸素を供給されるために血管網の近くに存在する必要があることから、組織の脈管再生に特に適すると思われる領域内への移植はカプセル化細胞の壊死を回避するために不可欠である。例えば、1型糖尿病の治療の場合、移植用カプセルの合計体積の低減は、カプセル化された島を、立体障害の問題でカプセルが従来的に移植される腹腔よりも脈管再生には有利な領域である肝臓または脾臓内へ移植することを可能にすると思われる。
【0011】
カプセルが可変数の細胞またはクラスタを包含する場合は、細胞またはクラスタがカプセル表面から突き出す危険性があり、よって、グラフトが拒否される免疫反応をトリガする危険が冒される。カプセルのサイズがカプセル化されるべきもののサイズにぴったりと合っている場合、この問題はさらに悪化する。
【0012】
上述の従来技術の欠点を解決するために、微小流体技術を基礎とするカプセル化デバイス及び方法が提案されている。例えば、下記を参照されたい。
【0013】
・Workmanら著「不動化されたヒト細胞をカプセル化するためのアルギン酸ビーズの微小流体チップベース合成」Biomicrofluidics 1、2007年。この論文は、ほぼ80μmから400μmまでの範囲内の直径を有するカプセルを、所謂「流体力学的絞り込み」効果によって製造する方法について記述している。
【0014】
・Sugiuraら著「肝臓細胞を含むアルギン酸カルシウムビーズのマイクロノズルアレイを使用するサイズ制御」Biomaterials 26、2005年、3327−3331ページ。この刊行物に記述されている方法では、50μmから200μmまでの範囲内のサイズのカプセルが、30μmの直径を有する「マイクロノズル」を介してアルギン酸塩を油性相内へ注入することにより形成される。
【0015】
これらの技術は、カプセルサイズのより優れた制御をもたらし、かつ前記サイズは従来技術を使用する場合に比べて低減されるが、カプセル当たりの粒子(細胞またはクラスタ)数の可変性は依然として高い。
【0016】
現時点で本件発明の発明者が知るところの、隔離された粒子がカプセル化されることを有効化する唯一の技術は、水性相に含まれる細胞がT接合部において水/油インタフェースへ向かって移動されることを有効化する、微小流体工学と光ピンセットとの併用に依存している。この技術は、カプセル化細胞のサイズと同程度の大きさであるサイズのカプセルを生成するという優位点も示す。しかしながら、これは、その用途を科学的調査分野以外で存立可能にするに足るカプセル化速度の達成を可能にするものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、先行技術によるこれらの欠点の少なくとも幾つかを解決しようとするものである。
【0018】
具体的には、本発明は、細胞または細胞クラスタが、制御されかつ再生可能な数でカプセル化されることを有効化しようとするものである。有利には、本発明は、カプセルが、カプセルに含まれる細胞またはクラスタの数によく合うサイズで製造されることを有効化し、一方で、空のカプセルの製造を回避する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明によるデバイスは微小流体型であり、単純な構造体を呈し、かつ従来の微細加工技術によって低コストで製造されることが可能である。
【0020】
より正確に言えば、本発明は、サブミリ級の大きさの粒子またはこのような粒子のクラスタを制御下でカプセル化するための微小流体デバイスを提供し、本デバイスは、カプセル化のための粒子または粒子クラスタを懸濁状態で含む第1の液相を送出するための第1の微小流体ダクトと、前記第1の液相と不混和である第2の液相の流れを運ぶための第2の微小流体ダクトと、を備え、前記第1のダクトは前記第2のダクト内へと開いて前記第2のダクトと共に流体接合部を形成し、本デバイスはさらに、前記第1のダクト内を流れる前記第1の液相を放出するための少なくとも1つの放出微小流体ダクトを備え、前記少なくとも1つの放出微小流体ダクトは、前記接合部の上流に配置されかつ懸濁状態の粒子または粒子クラスタによって少なくとも部分的に塞がれることに適し、よって前記第1のダクト内で圧力を上昇させる口を装備し、これにより、前記第1のダクトに沿って前記懸濁により取り込まれる粒子または粒子クラスタは前記接合部において蓄積しやすく、前記2つの不混和液相間のインタフェースで捉えられ、最終的に、前記放出ダクトの口が塞がれていることに起因する圧力上昇によって前記第2のダクト内へ注入される。
【0021】
有利には、本発明によるデバイスは、前記第1のダクトの両側に配置される少なくとも1対の微小流体放出ダクトを含んでもよい。
【0022】
より正確に言えば、本デバイスは、単一の放出ダクトのみ、または単一対の放出ダクトのみを有してもよい。
【0023】
第1の実施形態では、前記カプセル化ダクトの口の断面及び前記口の前記接合部からの距離、及び前記第1のダクトの断面も、前記接合部における単一の粒子または粒子クラスタの到達が、前記第1のダクト内に、前記粒子または粒子クラスタが前記第2のダクト内へ注入されることを有効化するに足る圧力上昇を誘発させるようにして選択されてもよい。
【0024】
第2の実施形態では、前記放出ダクトの口の断面及び前記口の前記接合部からの距離、並びに前記第1のダクトの断面は、前記粒子または粒子クラスタが前記第2のダクト内へ注入されることを有効化するに足る圧力が、予め決められた数の粒子または粒子クラスタが前記接合部において前記2つの不混和液相間のインタフェースにより捕捉されるまで到達されないようにして選択されてもよく、前記予め決められる数は1より多く、かつ好適には2から10までの範囲内である。
【0025】
第3の実施形態では、本デバイスは、前記接合部から異なる距離に位置する口を有する少なくとも2つの放出ダクト、または少なくとも2対の放出ダクトを含んでもよく、前記放出ダクトの口の断面及び前記口の前記接合部からの距離、及び前記第1のダクトの断面は、粒子または粒子クラスタが前記第2のダクト内へ注入されることを有効化するに足る圧力が、前記少なくとも2つのダクトまたは少なくとも2対のダクトが塞がれる場合にのみ到達されるようにして選択され、これにより、複数の粒子または粒子クラスタが確実に同時に注入されることが可能にされる。
【0026】
第4の実施形態では、本デバイスは、前記放出ダクトの前記口または各口にマイクロピラーアレイを含んでもよい。
【0027】
本デバイスは、前記第1及び第2のダクト間の流体接合部にマイクロピラーアレイを含んでもよい。
【0028】
前記流体接合部はT接合部であってもよく、前記第1及び第2のダクトは両者間に60゜から90゜までの範囲内の角度、好適には80゜から90゜までの範囲内の角度、かつさらに好適にはほぼ90゜に等しい角度を形成する。
【0029】
ある変形例では、前記流体接合部は、微小流体フローの絞り込み接合部であってもよい。
【0030】
本発明の変形実施形態では、
・前記第1及び第2のダクトは、カプセル化されるべきものの直径dの110%から130%までの範囲内の断面を呈してもよく、前記放出ダクトは、前記第1のダクトの断面の約30%から60%までの断面を呈し、かつ前記放出ダクトまたは放出ダクト対の口の前記接合部からの距離は、カプセル化されるべきものの直径の10%から50%までの範囲内である。
【0031】
・前記ダクトは、基板内にエッチングまたは成形される溝によって構成されてもよい。
【0032】
・或いは、本デバイスは三次元構造体を呈しかつ成形またはエッチングされた平面基板の積層によって構成されてもよく、前記第1のダクトは、前記基板を略垂直に通過し、一方で、前記第2のダクト及び前記放出ダクトは基板間のインタフェースに前記インタフェースに平行して形成される。
【0033】
・前記ダクトの寸法は、細胞または細菌がカプセル化されることを有効化するように適合化されてもよい。
【0034】
また本発明は、サブミリ級の大きさの粒子またはこのような粒子のクラスタを制御下でカプセル化するための微小流体システムも提供し、本システムは、先に述べたようなデバイスと、前記デバイスの第1のダクト内へ、カプセル化のためのサブミリ級の大きさの粒子またはこのような粒子のクラスタを懸濁状態で含む第1の液相を注入するための注入手段であって、前記液相は少なくとも1つのカプセル化剤も含む注入手段と、前記第1のダクト内を流れる第1の液相を前記放出ダクトを介して放出するための放出手段と、前記デバイスの第2のダクト内へ、前記液相とは不混和である第2の液相を注入するための注入手段と、を備え、前記第1及び第2の液相を注入するための前記注入手段、及び前記第1の液相を放出するための前記放出手段は、前記接合部において前記2つの不混和液相間に安定したインタフェースが形成されることを有効化しかつ前記放出ダクトのうちの1つまたはそれ以上が塞がれた場合に前記インタフェースが破裂することを有効化するように適合化される。
【0035】
このようなシステムは、前記接合部の下流で前記第2のダクトへ接続されるゲル化ユニットも含んでもよく、前記ユニットは、前記第2のダクト内へ注入されて前記第1の液相により構成される薄膜内に包囲される粒子または粒子クラスタを懸濁状態で含む前記第2の液相を入力として受け入れるように適合化され、かつ前記粒子または粒子クラスタを含むカプセルを構成するために、前記薄膜内に含まれるカプセル化剤をゲル化させるように適合化される。
【0036】
また本発明は、サブミリ級の粒子またはこのような粒子のクラスタを制御下でカプセル化するための微小流体方法も提供し、本方法は、先に述べたデバイスの第1のダクト内へカプセル化のための粒子または粒子クラスタを懸濁状態で含む第1の液相を注入するステップであって、前記液相は少なくとも1つのカプセル化剤も含む注入するステップと、前記第1のダクト内を流れる液相を前記放出ダクトを介して放出するステップと、前記デバイスの第2のダクト内へ前記第1の液相と不混和である第2の液相を注入するステップとを含み、前記第1及び第2の液相が注入される圧力、及び前記第1の液相の放出流量は、前記接合部において前記2つの不混和液相間に安定したインタフェースが形成されることを有効化しかつ前記放出ダクトのうちの1つまたはそれ以上が塞がれた場合に前記インタフェースが破裂されかつ制御された数の粒子または粒子クラスタが前記第2のダクト内へ注入されることを有効化するようにして選択される。
【0037】
また本方法は、前記粒子または粒子クラスタを包囲する中実壁のカプセルを形成するために、前記第2のダクト内へ注入される粒子または粒子クラスタを包囲する前記第1の液相によって構成される薄膜内に含まれるカプセル化剤をゲル化するステップも含んでもよい。
【0038】
前記粒子は、細胞、特にヒトの細胞及び細菌から選択されてもよい。特に細胞は、β細胞等の膵臓細胞であってもよく、より一般的には、ホルモン、蛋白質または治療関連の他の任意の物質を分泌する細胞であってもよい。また細胞は、幹細胞であってもよい。例として、細胞クラスタはランゲルハンス島であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
本発明の他の特徴、詳細及び優位点は、例として示される添付の図面を参照して行う以下の説明を読めば明らかとなる。
【図1】本発明によるデバイスの異なる4つの実施形態を示す略図である。
【図2】本発明によるデバイスの異なる4つの実施形態を示す略図である。
【図3】本発明によるデバイスの異なる4つの実施形態を示す略図である。
【図4a】図1のデバイスにおける液圧分布を示す。
【図4b】図1のデバイスにおける液圧分布を示す。
【図4c】図1のデバイスにおける液圧分布を示す。
【図4d】図1のデバイスにおける液圧分布を示す。
【図4e】図1のデバイスにおける液圧分布を示す。
【図5】本発明によるデバイスの第5の実施形態を示す。
【図6】本発明によるデバイスの第6の実施形態を示す。
【図7】図1から図3、図5または図6のうちの任意の図に示されたデバイスを含むカプセル化システム全体を示す線図である。
【図8】本発明によるデバイスの異なる4つの実施形態を示す略図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明の微小流体デバイスは2つの不混和相、即ち、例えば、諸図においてφ1で参照されている水性の第1の相と、油性タイプの第2の相φ2とを使用する。例として、第1の相は生物学的緩衝剤または生理学的血清によって構成されてもよく、これは、カプセル化のための細胞または細胞クラスタ(図中のC)を懸濁状態で含み、かつ溶液中にアルギン酸ヒドロゲル、キトサン、カラギーナン、アガロースゲル、ポリエチレングリコール(PEG)または他の任意の適切なポリマ等のカプセル化剤を含む。
【0041】
第2の相は、植物油(例えば、ひまわり油)、鉱油、シリコン、ペルフルオロ溶媒、他であってもよい。
【0042】
第1の相が水性タイプであり、かつ第2の相が油性タイプであることは、絶対に不可欠であるわけではない。最も重要な点は、これらの2相が不混和性であるべきことにあり、かつ特殊な用途を除いて、第1の相は細胞または細胞クラスタが生き延びることを有効化すべきであることにある。
【0043】
本デバイスは、T接合部30を形成する、参照数字10及び20で示される第1及び第2の主微小流体ダクトを備える。副ダクト40、40’、50、50’は、接合部30の近くで第1のダクト10から離れる。
【0044】
第1のダクト10は、水性相φ1を供給され、油性相φ2を供給される第2のダクト20内へ開いている。従って、これらの2ダクトは流体のT接合部を形成する。「T接合部」という用語は微小流体工学の分野において既知であり、厳密すぎる解釈がされるべきではない。これらの2ダクトが、両者間で正確に90゜である角度を成すことは必須ではない。例として、この角度は60゜から90゜までの範囲内、好適には80゜から90゜までの範囲内であってもよく、90゜により近い値であれば特に好適である。
【0045】
2つの液相φ1及びφ2は不混和性であることから、接合部30にはインタフェースIが形成される。水性相φ1は、前記インタフェースによって第2のダクトへ流れ込むことを防止され、副ダクト40、40’、50、50’を介して流れ出る。2つの液相の圧力及び流量の値は、インタフェースにおける前記圧力と張力との平衡によりインタフェースIが安定を保つようにして決められる。
【0046】
副ダクトまたは放出ダクト40、40’、50、50’は、チャネル10へ開いた、かつ断面が主ダクト10及び20の断面より小さい個々の口を呈し、細胞Cを通過させない。従って、第1の液相φ1によって運ばれる粒子(細胞またはクラスタ)はインタフェースIで捕獲されて留まり、一方で前記液相は副ダクトを介して放出される。これは、前記粒子が前記副ダクトの口を塞ぐまで続き、これにより圧力が上昇してインタフェースIが破壊され、1つまたはそれ以上の粒子が第2のダクト内へ注入される。
【0047】
より正確に言えば、放出ダクトの閉塞は遷移圧力を上昇させ、これにより第1の液相の液滴が第2のダクト内へ注入される。前記液滴は、1つまたは複数の粒子を含む。図中のKで参照される液滴のサイズは、液滴が包含する細胞またはクラスタのサイズに一致する。即ち、液滴Kを、1つまたは複数の粒子を包囲する微細な液膜であると考えることが可能である。この液膜はカプセルの前駆体を構成し、これは、第1の液相内で溶液中に存在するカプセル化剤(例えば、アルギン酸塩)をゲル化することにより、それ自体既知の方法で形成されるべきものである。
【0048】
2つの微小流体ダクト間のT接合部によって不混和液相内に液滴を形成することは、先行技術において既知である。例えば、T.Thorsenら著の論文「小胞発生微小流体デバイスにおける動的パターンの形成」Physical Review Letters 86(18)、2001年、4163−4166ページ参照。
【0049】
本発明のデバイスは、同時に注入される、及び延ては所定のカプセル内に含まれる粒子(細胞またはクラスタ)の数を正確に制御することを可能にする。これは、3つの例を使用して理解することができる。
【0050】
図1の実施形態では、2つの副放出ダクト40、40’が接合部30の直近において第1のダクト10の両側へ対称的に設けられる。前記放出ダクト40、40’の口45、45’の断面及び接合部30からのその距離、並びに第1のダクトの断面は、前記接合部における単一粒子の到達が前記放出ダクトを閉塞させるに足るものであり、これにより、著しい圧力上昇が発生して前記粒子の第2のダクト内への注入が有効化されるように選択される。言い替えれば、粒子は、インタフェースIへ到達すると直ぐに1つずつ注入される。当然ながら、これが発生するためには、粒子は、第1の液相において、接合部へグループではなく個々に到達し得る十分な間隔で存在する必要がある。
【0051】
図1は、本デバイスの二次元図であるが、実際には、ダクトは有限深さを呈する。当然ながら、前記ダクトの断面の大きさの決定に際しては、この深さを考慮する必要がある。
【0052】
本デバイスの様々なダクトの深さは、一様であっても、異なってもよい。原則として、第1のダクト10の末端部分は、放出ダクト40、40’の閉塞を有効化するために、カプセル化のための粒子の直径に一致する必要がある。これに対して、第2のダクト20及び前記ダクト10の上流に位置する粒子供給ダクト(不図示)は、損失水頭を低減しかつ粒子上の剪断を制限するために、より大きい深さを呈してもよい。これは、細菌等の極小寸法(マイクロメートル級、またはサブマイクロメートル級)の粒子の場合に特に効果的である。
【0053】
図2の実施形態では、放出ダクト40、40’(または、より正確にはその口45、45’)は、接合部30からさらに大きい距離で位置づけられている。この場合、前記放出ダクトを塞ぐためには、インタフェースIにおいて複数の粒子Cが捕捉される必要がある。本図は、副ダクト40、40’が閉塞状態になることなく、第1のダクト10内に既に5つの粒子が積み重なり、φ1−φ2インタフェースにおける表面張力によって前記ダクト10内に保持されている例を示している。これに対して、6番目の粒子が到着すると、第1のダクト内に閉塞が生じ、延ては圧力が上昇して、ラインまたは「待ち行列」の最初の粒子が第2のダクト内へ注入される。この例の場合も、粒子はやはり1つずつ注入される。
【0054】
図1の実施形態に比べて、この実施形態には、特に小寸法の隔絶された細胞またはクラスタのカプセル化が所望される場合、技術的に製造が容易であるという優位点がある。即ち、このような状況下で第1の例を実装する場合には、第2のダクトを接合部30の直近に製造することが要求されることになる。
【0055】
図2に示すタイプのデバイスは、複数の粒子を同時に注入するためにも使用可能である。即ち、全てがダクトの大きさの決定、及び2つの液相の注入(及び恐らくは放出)圧力に依存する。
【0056】
また、この第2の実施形態は、注入される粒子が多分散である場合にも、より適する。しかしながら、このような状況下では、各カプセルに包含される粒子数に関する制御の精度は、粒子懸濁が単分散である場合よりも低い。しかしながら、カプセルのサイズは単分散のままであり、かつカプセル形成が生じる場合でも、カプセルは必ず細胞を含み、空になることはない。
【0057】
さらに、この第2の実施形態は、小寸法の粒子をカプセル化する場合でも、比較的大きい主ダクトの使用を可能にする。これにより、ラプラス圧は下がり、延ては前記粒子に作用する可能性のある有害な圧縮力も下がる。
【0058】
先に述べたように、放出ダクトの口45、45’と接合部30との距離は、考慮されなければならない唯一のパラメータではない。即ち、(N+1)番目の粒子が到達するまで放出ダクトが十分に完全な形で閉塞状態にならないことを保証するためには、前記口及び第1のダクトの断面寸法も適切に決定される必要がある。但し、Nは、本デバイスの設計時に正確に決定される。この寸法決めは、注入圧力及び2つの液相の表面張力、並びにカプセル化のための粒子のサイズが全て既知であると想定することによって実行される。
【0059】
図3に示す第3の実施形態では、接合部30からの異なる距離に2対の放出ダクト(40、40’及び50、50’)が設けられる。本デバイスの寸法は、一方のダクト対のみの閉塞では流体インタフェースIの破裂に不十分であるように決定される。例えば、本図に示すように、第1のダクト対40、40’(接合部に近い方のペア)は、接合部に4つの粒子Cが蓄積すると塞がれるが、第2のダクト対50、50’は第6の細胞が到達するまで塞がらない。
【0060】
前記第6の細胞が到達すると、第1のダクト内の圧力上昇はインタフェースIを破裂させるに足るレベルに達し、粒子Cが第2のダクト20内へ注入され始める。従って、第2の放出ダクトの口は空くが、第1のダクトの口は塞がれたままである。その結果、ダクト10内には引き続き幾分かの圧力が存在する。この圧力は、そのままでは流体インタフェースIを破壊するほどのものではないが、既に発生した破裂を十分に持続させる。従って、前記インタフェースは、全ての排出ダクトの口が空いた状態にされるまで、即ち、ダクト20内へ3つの粒子が注入された後まで再形成することができない。
【0061】
従って、この第3の実施形態は、1以上でありかつ好適には1から10までの範囲内である制御された数の細胞または細胞クラスタを同時にカプセル化する場合に適する。
【0062】
図8に示す第4の実施形態では、排出ダクト40、40’の口45、45’にマイクロピラー450、450’のアレイが設けられる。細胞が不在であれば、相φ1の流れはこれらのピラー間の隙間を通り抜け、2つの横方向の放出ダクト40及び40’内へ放出される。1つまたは複数の細胞が相φ2とのインタフェースの近くに止まると、相φ1の流体力学的抵抗が突然高まり、静止細胞に圧力が加わる。ピラー間及び放出ダクト内の損失水頭の大きさを適切に決めることにより、この圧力上昇は、液滴内に閉じこめられた状態の1つまたは複数の細胞を相φ2内へ押し出すに足るものとなる。ピラーの優位点は、損失水頭が正確に決定されることにあり、かつピラー間の細胞の捕獲が制御されることにもある。細胞は幾分変形可能であることから、細胞はピラー間の隙間に留まる状態となり、よって正確に位置決めが行われる。カプセル化のための細胞の直径をDで表すとすれば、ピラーの直径は、好適にはD/5からD/3までの範囲内であり、ダクト10方向の2ピラー間の間隔は、好適には2D/3から4D/5までの範囲内である。
【0063】
図8に示すように、ダクト10とダクト20との間の接合部30には、細胞を安定させかつ細胞を高精度で静止状態に保つ目的で、追加的なマイクロピラーのアレイ451を設けることもできる。この追加的なアレイ451は、放出ダクトの口に位置するアレイ450及び450’とは独立して使用されることも可能である。
【0064】
図1から図3及び図8に示す4つの実施形態では、放出ダクトは対で、第1のダクト10を中心に正確に対称配置されている。これは、不可欠であるというわけではなく、非対称の放出ダクト、または双方が第1のダクトの片側だけに配置されるダクトでも使用可能である。しかしながら、第1のダクト内を流れる粒子が片側に配置される放出ダクトに吸い込まれ、これにより時ならぬ閉塞が生じることを回避するために、放出ダクトは、少なくとも略対称配置であることが好適である。
【0065】
先に述べた類のデバイスの物理的寸法は、意図される用途に依存し、かつ具体的には、カプセル化されるべき粒子のサイズに依存する。例として、隔絶される細胞は、約数マイクロメートルの直径を有してもよく、一方でランゲルハンス島型のクラスタは直径500μmに達するものであっても、これを超えるものであってもよい。しかしながら、原則として、本デバイスは微小流体型である必要があり、これは、ダクトの横方向寸法が数マイクロメートルまたは数十マイクロメートルから1ミリメートルまたは最大数ミリメートルまでの範囲内である必要があることを意味する。
【0066】
図4a及び図4cは、本発明によるデバイスの接合部30に直近する領域の拡大図を示す。グレーレベルは、2つの液相φ1及びφ2内の圧力値を表す。図4b及び図4dのグラフは、各々図4a及び図4cに示す状況に関するインタフェースIを通じた圧力差ΔP1、ΔP2を示す。
【0067】
図4a及び図4bの状況では、2つの液相間のインタフェースIに単一の粒子C1が存在する。放出ダクトの口は、接合部から粒子の直径より短い距離に位置づけられている。しかしながら、主ダクトの側面には第1の液相が流れることのできる十分なスペースが残っていることから、前記放出ダクトは部分的にしか塞がれない。この例は、口と接合部との距離が、本デバイスのサイズの決定に際して考慮される必要のあるパラメータの1つでしかないことを明示している。
【0068】
第2の粒子C2の到着(図4c)は、液体の放出にとって追加的な障害物となる。必然的に、インタフェースを通じた圧力差は増大し、インタフェースIの破裂を招く臨界値ΔPRより大きい値ΔP2に達する。従って、これらの2粒子のうちの少なくとも1つは第2のダクト20内へ注入される。より正確に言えば、ΔP1の値がインタフェースの破裂を持続させるに足るものであれば、双方の粒子が注入され、そうでなければ、1つの粒子C1(列内の最初の粒子)のみが注入され、次いで直後に安定したインタフェースが再形成される。
【0069】
図4eは、圧力差ΔPの値がインタフェースIにおける粒子の数NCに依存する様子を示す。実線は、単に視線をガイドするためのものである。ΔPは、接合部に粒子が存在しないときにもゼロではないことが分かる。この値ΔP(0)は、インタフェースにおける表面張力に等しい。
【0070】
インタフェースを破裂させる圧力差ΔPRは、次式、
【0071】
【数1】
【0072】
で与えられる。ここで、γ12は2つの液相間の界面張力であり、w及びdは各々、矩形断面であることが想定される第1のダクトの幅及び深さである。
【0073】
図4b、図4d及び図4eのグラフにおける圧力値の単位は、パスカル(Pa)である。
【0074】
図1から図3及び図8の実施形態は、平面形状を有する微小流体チップ型デバイスに関するものである。
【0075】
このようなデバイスは、シリコン、シリカまたはガラス製の基板上へ、従来の写真平板技術及び超小型電子技術に使用される類のエッチングを使用して製造されることが可能である。シリコン上では、この技術は、高精度であり(マイクロメートル級)かつエッチング深さ及びパターン幅にさほど制限がないという優位点を有する。
【0076】
ある変形例では、本デバイスは、それ自体が写真平板術により製造される「マスタ」を使用して、プラスチック材料(特にポリジメチルシロキサン−PDMS)を成形することにより製造されてもよい。
【0077】
原則として、本発明によるデバイスの製造には広範な材料が適する可能性がある。好適には、特に本デバイスを使用して移植可能なカプセルを製造する場合、これらの材料は、消毒できるものである必要がある。
【0078】
また本デバイスは、微小流体の入口及び出口の全てが同じ平面には存在しない三次元形式で製造されてもよい。このような状況下では、カプセルの形成は、副放出ダクトを塞ぐことにより誘発される局所的な圧力上昇だけでなく、重力により細胞または細胞クラスタ上へ加わる沈降力にも起因する。
【0079】
図5にその一実施形態が略示されているこのようなデバイスは、エッチングまたは成形されたパターンを有する平面基板S1−S5の積層によって構成される。第2のダクト20及び放出ダクト40、40’は、前記エッチングされた、または成形されたパターンによって基板間のインタフェースに、基板に平行して形成される。これに対して、第1のダクト10は貫通穴の積層によって構成され、よってこれは、前記複数の基板を略垂直に通過する。
【0080】
図1から図5の実施形態では、第1及び第2のダクトはT字形の流体接合部30を形成する(2つのダクトが互いに直交することは必須でないことから、「T字形」は広義に理解されるべきである)。しかしながら、これが唯一の可能な形状ではない。従って、図6は、微小流体フローの絞り込み接合部30’の使用に基づく本発明の代替実施形態におけるデバイスを示す。
【0081】
このデバイスでは、第2のダクトは、接合部30’で出合う2つの分岐20a及び20bによって形成される。これらの2つの分岐内では、第2の液相φ2が前記接合部へ向かって流れる。
【0082】
流体接合部30’は、図1から図3におけるT接合部30のような3分岐接合部ではなく、4分岐接合部である。即ち、分岐20a及び20bから到来する油性相と、第1のダクトから接合部内へ注入される粒子Cとを受け入れる目的で、第1のダクト10の向かいに第3のダクト60が設けられる。
【0083】
微小流体フロー絞り込み(MFF)の原理は、S.L.Anna、N.Bontoux及びH.A.Stone共著の論文「マイクロチャネルにおける「フローの絞り込み」を使用する分散形成」Applied Physics Letters 82(3)、2003年、364−366ページ、から知られる。
【0084】
図7は、細胞または細胞クラスタをカプセル化するための微小流体システム全体の図である。このようなシステムは、
・ 本発明のデバイスDと、
・ 前記デバイスの第1のダクト10内へ、第1の液相φ1及びカプセル化のための粒子で構成される懸濁液を注入するための注入手段であって、例として、シリンジプッシャP1または圧力コントローラを有する注入器をそなえてもよい注入手段と、
・ 前記デバイスの第2のダクト20内へ第2の液相φ2を注入するための注入手段であって、同様にシリンジプッシャP2または圧力コントローラを有する注入器をそなえてもよい注入手段と、
・ 任意選択として、前記第1の液相を放出ダクト40、40’(不図示:ある変形例では、前記液体は大気へ放出されてもよい)を介して吸い込むための吸引手段と、
・ カプセルをゲル化するための微小流体手段Eと、を備える。図7において、参照記号Kは、まだゲル化されていない、単に第1の液相の薄膜に包囲された細胞または細胞クラスタによって構成される「カプセル」を示すが、参照記号K’はゲル化されたカプセルを示す。
【0085】
微小流体手段Eは、第2の液相φ2が、ゲル化剤(例えば、アルギン酸塩でカプセル化する場合はCa+イオン)を溶液で含む不混和性の第3の液相φ3に接触するH形の微小流体デバイスであってもよい。カプセルKは、第2及び第3の液相間のインタフェースI’を通過し、インタフェースI’においてゲル化反応に曝され、次いで患者へ移植するために回収される。このようなデバイスは、文献US 2006/0051329に記載されている。文献WO 2005/103106は、本発明のカプセル化デバイスと組み合わせた使用に適する別の微小流体ゲル化デバイスについて記載している。
【0086】
カプセル化デバイスDとゲル化デバイスEは、一体形式で(共通の基板または基板積層上に)製造されてもよく、離散していてもよい。
【0087】
図7のシステムは、必ずしもカプセル選別ユニットを含まないことが分かる。これは、本発明によるデバイスDが、極度に均一な大きさ及び内容物のカプセルの達成を可能にし、かつ具体的には、空のカプセルの製造回避を可能にする、という事実に起因する。しかしながら、カプセル化のための粒子またはクラスタを選別するためのデバイスは、有利には、カプセル化ユニットの上流に設けられてもよい。先行技術では、多くの微小流体選別デバイスが知られている。例えば、文献WO 2004/037374、WO 2006/102258、WO 2002/02316及び2008年5月13日に本件出願の出願者名義で出願された「Systeme microfluidique et procede pour le tri d’amas de cellules et de preference pour leur encapsulation en cotinue suite a leur tri」[細胞クラスタを選別しかつ好適には選別後にこれらを連続してカプセル化するための微小流体システムと方法]と題するフランス特許出願第0802575号参照。
【0088】
ゲル化デバイスの存在は、必ずしも必要ではない。患者に移植するための中実壁カプセルを取得することが望まれる場合は、概してこれが必須であるが、(特に、研究分析または生体分析の分野では)「カプセル化された」細胞または細胞クラスタを液滴内に懸濁して置くだけで足りるという状況がある。このような状況下では、第1の液相φ1は必ずしもカプセル化剤を含む必要がない。
【技術分野】
【0001】
本発明は、サブミリメートル級の大きさの粒子またはこのような粒子のクラスタを制御下でカプセル化するための微小流体デバイス、システム及び方法に関する。より具体的には、本発明は、細胞、特にヒトの細胞またはランゲルハンス島等の細胞クラスタをカプセル化することに適する。
【背景技術】
【0002】
細胞のカプセル化は、マイクロカプセル内の細胞または細胞クラスタを、移植後の免疫系による攻撃から保護するために不動にすることに存する技術である。カプセルは、カプセル化された細胞の代謝にとって不可欠である栄養分子、酸素、他等の低分子量の分子の進入を許容するに足る多孔質であると同時に、免疫系の抗体または細胞等の高分子量の物質の進入を防止するものである必要がある。従って、カプセルのこの選択的透過性は、カプセル化されるドナーからの細胞と、移植レシピエントの免疫系細胞との直接的接触を防止するように設計され、移植によって使用される免疫抑制治療剤は激しい副作用を伴うことから、これにより、その投与の制限を可能にする。その選択的透過性に加えて、製造されるカプセルは生体適合性のあるものでなければならず、機械的強度がありかつカプセル化されるべきものに整合するサイズでなければならない。
【0003】
カプセル化の数ある用途の中では、膵臓内に位置し、かつインスリンを生成することにより体内の血糖を調整するβ細胞を含む幾つかのタイプの細胞によって構成される脆い細胞の塊であるランゲルハンス島を挙げることができる。これらの島のカプセル化は、インスリンを生成するその固有のβ細胞を免疫系が破壊する自己免疫疾患であるインスリン依存性糖尿病の治療に使用される従来の細胞療法(例えば、膵臓移植または島移植)に代わるものである。
【0004】
既知の主たるカプセル化方法は、下記の何れかを利用する。即ち、
・ 空気または液体の同軸噴流。結果的に生じるカプセルは、400マイクロメートル(μm)から800μmまでの範囲内のサイズを有する(但し、生成されるカプセルの平均サイズは400μmよりも600μmから800μmまでの範囲に近い。Zimmermann著「NRM−、CLSM−及びAFM−画像化により検認される均一に架橋された機能的アルギン酸マイクロカプセルの製造」Biomaterials 24、2003年、2083−2096ページ参照)。または、
・ 電位差。これは、カプセルサイズの縮小が優先される場合に最も広範に使用されるカプセル化技術である(よって、カプセルサイズは200μmから800μmまでの範囲内)。Goosen著「体組織カプセル化のための静電液滴の生成:高電圧電源の評価」Biotechnol.Prog. 13、1997年、497−502ページ参照。もしくは、
・ 使用される溶液の粘性によって制限される場合があるという欠点のある振動技術。Seifert著「細胞不動化のための小型単分散アルギン酸ビーズの製造」Biotechnol.Prog. 13、1997年、562−568ページ参照。
【0005】
先行技術において知られるこれらの技術には、下記のような所定の欠点がある。
【0006】
・ カプセルのサイズが、カプセル化されるべき細胞/島のサイズに必ずしも適さない。
【0007】
・ カプセルサイズのばらつきが、液滴サイズの縮小に伴って大きくなる。
【0008】
・ 生成されるカプセルは必ずしも球形でなく、よって、再現精度の欠如を招く。
【0009】
これらの問題点に加えて、現在の大部分のカプセル化技術は、各液滴内に包含される細胞または細胞クラスタの数を制御する方法を提供していない。カプセル化される細胞またはクラスタの数は、カプセル化基質として作用する高分子溶液における細胞(またはクラスタ)の懸濁濃度を調整することにより、専ら統計学的に決定される(この濃度は、カプセル化する粒子のサイズ、及びカプセルとして所望されるサイズに依存する)。従って、従来のシステムは、多数の空のカプセル、並びに可変数の細胞またはクラスタを包含するカプセルを生成する。
【0010】
空のカプセルの主たる欠点は、移植される必要のある細胞の合計体積を増加させ、かつこれらが組織の脈管再生に特に適すると思われる領域内へ移植されることを妨げることにある。カプセル化細胞は、栄養及び酸素を供給されるために血管網の近くに存在する必要があることから、組織の脈管再生に特に適すると思われる領域内への移植はカプセル化細胞の壊死を回避するために不可欠である。例えば、1型糖尿病の治療の場合、移植用カプセルの合計体積の低減は、カプセル化された島を、立体障害の問題でカプセルが従来的に移植される腹腔よりも脈管再生には有利な領域である肝臓または脾臓内へ移植することを可能にすると思われる。
【0011】
カプセルが可変数の細胞またはクラスタを包含する場合は、細胞またはクラスタがカプセル表面から突き出す危険性があり、よって、グラフトが拒否される免疫反応をトリガする危険が冒される。カプセルのサイズがカプセル化されるべきもののサイズにぴったりと合っている場合、この問題はさらに悪化する。
【0012】
上述の従来技術の欠点を解決するために、微小流体技術を基礎とするカプセル化デバイス及び方法が提案されている。例えば、下記を参照されたい。
【0013】
・Workmanら著「不動化されたヒト細胞をカプセル化するためのアルギン酸ビーズの微小流体チップベース合成」Biomicrofluidics 1、2007年。この論文は、ほぼ80μmから400μmまでの範囲内の直径を有するカプセルを、所謂「流体力学的絞り込み」効果によって製造する方法について記述している。
【0014】
・Sugiuraら著「肝臓細胞を含むアルギン酸カルシウムビーズのマイクロノズルアレイを使用するサイズ制御」Biomaterials 26、2005年、3327−3331ページ。この刊行物に記述されている方法では、50μmから200μmまでの範囲内のサイズのカプセルが、30μmの直径を有する「マイクロノズル」を介してアルギン酸塩を油性相内へ注入することにより形成される。
【0015】
これらの技術は、カプセルサイズのより優れた制御をもたらし、かつ前記サイズは従来技術を使用する場合に比べて低減されるが、カプセル当たりの粒子(細胞またはクラスタ)数の可変性は依然として高い。
【0016】
現時点で本件発明の発明者が知るところの、隔離された粒子がカプセル化されることを有効化する唯一の技術は、水性相に含まれる細胞がT接合部において水/油インタフェースへ向かって移動されることを有効化する、微小流体工学と光ピンセットとの併用に依存している。この技術は、カプセル化細胞のサイズと同程度の大きさであるサイズのカプセルを生成するという優位点も示す。しかしながら、これは、その用途を科学的調査分野以外で存立可能にするに足るカプセル化速度の達成を可能にするものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、先行技術によるこれらの欠点の少なくとも幾つかを解決しようとするものである。
【0018】
具体的には、本発明は、細胞または細胞クラスタが、制御されかつ再生可能な数でカプセル化されることを有効化しようとするものである。有利には、本発明は、カプセルが、カプセルに含まれる細胞またはクラスタの数によく合うサイズで製造されることを有効化し、一方で、空のカプセルの製造を回避する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明によるデバイスは微小流体型であり、単純な構造体を呈し、かつ従来の微細加工技術によって低コストで製造されることが可能である。
【0020】
より正確に言えば、本発明は、サブミリ級の大きさの粒子またはこのような粒子のクラスタを制御下でカプセル化するための微小流体デバイスを提供し、本デバイスは、カプセル化のための粒子または粒子クラスタを懸濁状態で含む第1の液相を送出するための第1の微小流体ダクトと、前記第1の液相と不混和である第2の液相の流れを運ぶための第2の微小流体ダクトと、を備え、前記第1のダクトは前記第2のダクト内へと開いて前記第2のダクトと共に流体接合部を形成し、本デバイスはさらに、前記第1のダクト内を流れる前記第1の液相を放出するための少なくとも1つの放出微小流体ダクトを備え、前記少なくとも1つの放出微小流体ダクトは、前記接合部の上流に配置されかつ懸濁状態の粒子または粒子クラスタによって少なくとも部分的に塞がれることに適し、よって前記第1のダクト内で圧力を上昇させる口を装備し、これにより、前記第1のダクトに沿って前記懸濁により取り込まれる粒子または粒子クラスタは前記接合部において蓄積しやすく、前記2つの不混和液相間のインタフェースで捉えられ、最終的に、前記放出ダクトの口が塞がれていることに起因する圧力上昇によって前記第2のダクト内へ注入される。
【0021】
有利には、本発明によるデバイスは、前記第1のダクトの両側に配置される少なくとも1対の微小流体放出ダクトを含んでもよい。
【0022】
より正確に言えば、本デバイスは、単一の放出ダクトのみ、または単一対の放出ダクトのみを有してもよい。
【0023】
第1の実施形態では、前記カプセル化ダクトの口の断面及び前記口の前記接合部からの距離、及び前記第1のダクトの断面も、前記接合部における単一の粒子または粒子クラスタの到達が、前記第1のダクト内に、前記粒子または粒子クラスタが前記第2のダクト内へ注入されることを有効化するに足る圧力上昇を誘発させるようにして選択されてもよい。
【0024】
第2の実施形態では、前記放出ダクトの口の断面及び前記口の前記接合部からの距離、並びに前記第1のダクトの断面は、前記粒子または粒子クラスタが前記第2のダクト内へ注入されることを有効化するに足る圧力が、予め決められた数の粒子または粒子クラスタが前記接合部において前記2つの不混和液相間のインタフェースにより捕捉されるまで到達されないようにして選択されてもよく、前記予め決められる数は1より多く、かつ好適には2から10までの範囲内である。
【0025】
第3の実施形態では、本デバイスは、前記接合部から異なる距離に位置する口を有する少なくとも2つの放出ダクト、または少なくとも2対の放出ダクトを含んでもよく、前記放出ダクトの口の断面及び前記口の前記接合部からの距離、及び前記第1のダクトの断面は、粒子または粒子クラスタが前記第2のダクト内へ注入されることを有効化するに足る圧力が、前記少なくとも2つのダクトまたは少なくとも2対のダクトが塞がれる場合にのみ到達されるようにして選択され、これにより、複数の粒子または粒子クラスタが確実に同時に注入されることが可能にされる。
【0026】
第4の実施形態では、本デバイスは、前記放出ダクトの前記口または各口にマイクロピラーアレイを含んでもよい。
【0027】
本デバイスは、前記第1及び第2のダクト間の流体接合部にマイクロピラーアレイを含んでもよい。
【0028】
前記流体接合部はT接合部であってもよく、前記第1及び第2のダクトは両者間に60゜から90゜までの範囲内の角度、好適には80゜から90゜までの範囲内の角度、かつさらに好適にはほぼ90゜に等しい角度を形成する。
【0029】
ある変形例では、前記流体接合部は、微小流体フローの絞り込み接合部であってもよい。
【0030】
本発明の変形実施形態では、
・前記第1及び第2のダクトは、カプセル化されるべきものの直径dの110%から130%までの範囲内の断面を呈してもよく、前記放出ダクトは、前記第1のダクトの断面の約30%から60%までの断面を呈し、かつ前記放出ダクトまたは放出ダクト対の口の前記接合部からの距離は、カプセル化されるべきものの直径の10%から50%までの範囲内である。
【0031】
・前記ダクトは、基板内にエッチングまたは成形される溝によって構成されてもよい。
【0032】
・或いは、本デバイスは三次元構造体を呈しかつ成形またはエッチングされた平面基板の積層によって構成されてもよく、前記第1のダクトは、前記基板を略垂直に通過し、一方で、前記第2のダクト及び前記放出ダクトは基板間のインタフェースに前記インタフェースに平行して形成される。
【0033】
・前記ダクトの寸法は、細胞または細菌がカプセル化されることを有効化するように適合化されてもよい。
【0034】
また本発明は、サブミリ級の大きさの粒子またはこのような粒子のクラスタを制御下でカプセル化するための微小流体システムも提供し、本システムは、先に述べたようなデバイスと、前記デバイスの第1のダクト内へ、カプセル化のためのサブミリ級の大きさの粒子またはこのような粒子のクラスタを懸濁状態で含む第1の液相を注入するための注入手段であって、前記液相は少なくとも1つのカプセル化剤も含む注入手段と、前記第1のダクト内を流れる第1の液相を前記放出ダクトを介して放出するための放出手段と、前記デバイスの第2のダクト内へ、前記液相とは不混和である第2の液相を注入するための注入手段と、を備え、前記第1及び第2の液相を注入するための前記注入手段、及び前記第1の液相を放出するための前記放出手段は、前記接合部において前記2つの不混和液相間に安定したインタフェースが形成されることを有効化しかつ前記放出ダクトのうちの1つまたはそれ以上が塞がれた場合に前記インタフェースが破裂することを有効化するように適合化される。
【0035】
このようなシステムは、前記接合部の下流で前記第2のダクトへ接続されるゲル化ユニットも含んでもよく、前記ユニットは、前記第2のダクト内へ注入されて前記第1の液相により構成される薄膜内に包囲される粒子または粒子クラスタを懸濁状態で含む前記第2の液相を入力として受け入れるように適合化され、かつ前記粒子または粒子クラスタを含むカプセルを構成するために、前記薄膜内に含まれるカプセル化剤をゲル化させるように適合化される。
【0036】
また本発明は、サブミリ級の粒子またはこのような粒子のクラスタを制御下でカプセル化するための微小流体方法も提供し、本方法は、先に述べたデバイスの第1のダクト内へカプセル化のための粒子または粒子クラスタを懸濁状態で含む第1の液相を注入するステップであって、前記液相は少なくとも1つのカプセル化剤も含む注入するステップと、前記第1のダクト内を流れる液相を前記放出ダクトを介して放出するステップと、前記デバイスの第2のダクト内へ前記第1の液相と不混和である第2の液相を注入するステップとを含み、前記第1及び第2の液相が注入される圧力、及び前記第1の液相の放出流量は、前記接合部において前記2つの不混和液相間に安定したインタフェースが形成されることを有効化しかつ前記放出ダクトのうちの1つまたはそれ以上が塞がれた場合に前記インタフェースが破裂されかつ制御された数の粒子または粒子クラスタが前記第2のダクト内へ注入されることを有効化するようにして選択される。
【0037】
また本方法は、前記粒子または粒子クラスタを包囲する中実壁のカプセルを形成するために、前記第2のダクト内へ注入される粒子または粒子クラスタを包囲する前記第1の液相によって構成される薄膜内に含まれるカプセル化剤をゲル化するステップも含んでもよい。
【0038】
前記粒子は、細胞、特にヒトの細胞及び細菌から選択されてもよい。特に細胞は、β細胞等の膵臓細胞であってもよく、より一般的には、ホルモン、蛋白質または治療関連の他の任意の物質を分泌する細胞であってもよい。また細胞は、幹細胞であってもよい。例として、細胞クラスタはランゲルハンス島であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
本発明の他の特徴、詳細及び優位点は、例として示される添付の図面を参照して行う以下の説明を読めば明らかとなる。
【図1】本発明によるデバイスの異なる4つの実施形態を示す略図である。
【図2】本発明によるデバイスの異なる4つの実施形態を示す略図である。
【図3】本発明によるデバイスの異なる4つの実施形態を示す略図である。
【図4a】図1のデバイスにおける液圧分布を示す。
【図4b】図1のデバイスにおける液圧分布を示す。
【図4c】図1のデバイスにおける液圧分布を示す。
【図4d】図1のデバイスにおける液圧分布を示す。
【図4e】図1のデバイスにおける液圧分布を示す。
【図5】本発明によるデバイスの第5の実施形態を示す。
【図6】本発明によるデバイスの第6の実施形態を示す。
【図7】図1から図3、図5または図6のうちの任意の図に示されたデバイスを含むカプセル化システム全体を示す線図である。
【図8】本発明によるデバイスの異なる4つの実施形態を示す略図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明の微小流体デバイスは2つの不混和相、即ち、例えば、諸図においてφ1で参照されている水性の第1の相と、油性タイプの第2の相φ2とを使用する。例として、第1の相は生物学的緩衝剤または生理学的血清によって構成されてもよく、これは、カプセル化のための細胞または細胞クラスタ(図中のC)を懸濁状態で含み、かつ溶液中にアルギン酸ヒドロゲル、キトサン、カラギーナン、アガロースゲル、ポリエチレングリコール(PEG)または他の任意の適切なポリマ等のカプセル化剤を含む。
【0041】
第2の相は、植物油(例えば、ひまわり油)、鉱油、シリコン、ペルフルオロ溶媒、他であってもよい。
【0042】
第1の相が水性タイプであり、かつ第2の相が油性タイプであることは、絶対に不可欠であるわけではない。最も重要な点は、これらの2相が不混和性であるべきことにあり、かつ特殊な用途を除いて、第1の相は細胞または細胞クラスタが生き延びることを有効化すべきであることにある。
【0043】
本デバイスは、T接合部30を形成する、参照数字10及び20で示される第1及び第2の主微小流体ダクトを備える。副ダクト40、40’、50、50’は、接合部30の近くで第1のダクト10から離れる。
【0044】
第1のダクト10は、水性相φ1を供給され、油性相φ2を供給される第2のダクト20内へ開いている。従って、これらの2ダクトは流体のT接合部を形成する。「T接合部」という用語は微小流体工学の分野において既知であり、厳密すぎる解釈がされるべきではない。これらの2ダクトが、両者間で正確に90゜である角度を成すことは必須ではない。例として、この角度は60゜から90゜までの範囲内、好適には80゜から90゜までの範囲内であってもよく、90゜により近い値であれば特に好適である。
【0045】
2つの液相φ1及びφ2は不混和性であることから、接合部30にはインタフェースIが形成される。水性相φ1は、前記インタフェースによって第2のダクトへ流れ込むことを防止され、副ダクト40、40’、50、50’を介して流れ出る。2つの液相の圧力及び流量の値は、インタフェースにおける前記圧力と張力との平衡によりインタフェースIが安定を保つようにして決められる。
【0046】
副ダクトまたは放出ダクト40、40’、50、50’は、チャネル10へ開いた、かつ断面が主ダクト10及び20の断面より小さい個々の口を呈し、細胞Cを通過させない。従って、第1の液相φ1によって運ばれる粒子(細胞またはクラスタ)はインタフェースIで捕獲されて留まり、一方で前記液相は副ダクトを介して放出される。これは、前記粒子が前記副ダクトの口を塞ぐまで続き、これにより圧力が上昇してインタフェースIが破壊され、1つまたはそれ以上の粒子が第2のダクト内へ注入される。
【0047】
より正確に言えば、放出ダクトの閉塞は遷移圧力を上昇させ、これにより第1の液相の液滴が第2のダクト内へ注入される。前記液滴は、1つまたは複数の粒子を含む。図中のKで参照される液滴のサイズは、液滴が包含する細胞またはクラスタのサイズに一致する。即ち、液滴Kを、1つまたは複数の粒子を包囲する微細な液膜であると考えることが可能である。この液膜はカプセルの前駆体を構成し、これは、第1の液相内で溶液中に存在するカプセル化剤(例えば、アルギン酸塩)をゲル化することにより、それ自体既知の方法で形成されるべきものである。
【0048】
2つの微小流体ダクト間のT接合部によって不混和液相内に液滴を形成することは、先行技術において既知である。例えば、T.Thorsenら著の論文「小胞発生微小流体デバイスにおける動的パターンの形成」Physical Review Letters 86(18)、2001年、4163−4166ページ参照。
【0049】
本発明のデバイスは、同時に注入される、及び延ては所定のカプセル内に含まれる粒子(細胞またはクラスタ)の数を正確に制御することを可能にする。これは、3つの例を使用して理解することができる。
【0050】
図1の実施形態では、2つの副放出ダクト40、40’が接合部30の直近において第1のダクト10の両側へ対称的に設けられる。前記放出ダクト40、40’の口45、45’の断面及び接合部30からのその距離、並びに第1のダクトの断面は、前記接合部における単一粒子の到達が前記放出ダクトを閉塞させるに足るものであり、これにより、著しい圧力上昇が発生して前記粒子の第2のダクト内への注入が有効化されるように選択される。言い替えれば、粒子は、インタフェースIへ到達すると直ぐに1つずつ注入される。当然ながら、これが発生するためには、粒子は、第1の液相において、接合部へグループではなく個々に到達し得る十分な間隔で存在する必要がある。
【0051】
図1は、本デバイスの二次元図であるが、実際には、ダクトは有限深さを呈する。当然ながら、前記ダクトの断面の大きさの決定に際しては、この深さを考慮する必要がある。
【0052】
本デバイスの様々なダクトの深さは、一様であっても、異なってもよい。原則として、第1のダクト10の末端部分は、放出ダクト40、40’の閉塞を有効化するために、カプセル化のための粒子の直径に一致する必要がある。これに対して、第2のダクト20及び前記ダクト10の上流に位置する粒子供給ダクト(不図示)は、損失水頭を低減しかつ粒子上の剪断を制限するために、より大きい深さを呈してもよい。これは、細菌等の極小寸法(マイクロメートル級、またはサブマイクロメートル級)の粒子の場合に特に効果的である。
【0053】
図2の実施形態では、放出ダクト40、40’(または、より正確にはその口45、45’)は、接合部30からさらに大きい距離で位置づけられている。この場合、前記放出ダクトを塞ぐためには、インタフェースIにおいて複数の粒子Cが捕捉される必要がある。本図は、副ダクト40、40’が閉塞状態になることなく、第1のダクト10内に既に5つの粒子が積み重なり、φ1−φ2インタフェースにおける表面張力によって前記ダクト10内に保持されている例を示している。これに対して、6番目の粒子が到着すると、第1のダクト内に閉塞が生じ、延ては圧力が上昇して、ラインまたは「待ち行列」の最初の粒子が第2のダクト内へ注入される。この例の場合も、粒子はやはり1つずつ注入される。
【0054】
図1の実施形態に比べて、この実施形態には、特に小寸法の隔絶された細胞またはクラスタのカプセル化が所望される場合、技術的に製造が容易であるという優位点がある。即ち、このような状況下で第1の例を実装する場合には、第2のダクトを接合部30の直近に製造することが要求されることになる。
【0055】
図2に示すタイプのデバイスは、複数の粒子を同時に注入するためにも使用可能である。即ち、全てがダクトの大きさの決定、及び2つの液相の注入(及び恐らくは放出)圧力に依存する。
【0056】
また、この第2の実施形態は、注入される粒子が多分散である場合にも、より適する。しかしながら、このような状況下では、各カプセルに包含される粒子数に関する制御の精度は、粒子懸濁が単分散である場合よりも低い。しかしながら、カプセルのサイズは単分散のままであり、かつカプセル形成が生じる場合でも、カプセルは必ず細胞を含み、空になることはない。
【0057】
さらに、この第2の実施形態は、小寸法の粒子をカプセル化する場合でも、比較的大きい主ダクトの使用を可能にする。これにより、ラプラス圧は下がり、延ては前記粒子に作用する可能性のある有害な圧縮力も下がる。
【0058】
先に述べたように、放出ダクトの口45、45’と接合部30との距離は、考慮されなければならない唯一のパラメータではない。即ち、(N+1)番目の粒子が到達するまで放出ダクトが十分に完全な形で閉塞状態にならないことを保証するためには、前記口及び第1のダクトの断面寸法も適切に決定される必要がある。但し、Nは、本デバイスの設計時に正確に決定される。この寸法決めは、注入圧力及び2つの液相の表面張力、並びにカプセル化のための粒子のサイズが全て既知であると想定することによって実行される。
【0059】
図3に示す第3の実施形態では、接合部30からの異なる距離に2対の放出ダクト(40、40’及び50、50’)が設けられる。本デバイスの寸法は、一方のダクト対のみの閉塞では流体インタフェースIの破裂に不十分であるように決定される。例えば、本図に示すように、第1のダクト対40、40’(接合部に近い方のペア)は、接合部に4つの粒子Cが蓄積すると塞がれるが、第2のダクト対50、50’は第6の細胞が到達するまで塞がらない。
【0060】
前記第6の細胞が到達すると、第1のダクト内の圧力上昇はインタフェースIを破裂させるに足るレベルに達し、粒子Cが第2のダクト20内へ注入され始める。従って、第2の放出ダクトの口は空くが、第1のダクトの口は塞がれたままである。その結果、ダクト10内には引き続き幾分かの圧力が存在する。この圧力は、そのままでは流体インタフェースIを破壊するほどのものではないが、既に発生した破裂を十分に持続させる。従って、前記インタフェースは、全ての排出ダクトの口が空いた状態にされるまで、即ち、ダクト20内へ3つの粒子が注入された後まで再形成することができない。
【0061】
従って、この第3の実施形態は、1以上でありかつ好適には1から10までの範囲内である制御された数の細胞または細胞クラスタを同時にカプセル化する場合に適する。
【0062】
図8に示す第4の実施形態では、排出ダクト40、40’の口45、45’にマイクロピラー450、450’のアレイが設けられる。細胞が不在であれば、相φ1の流れはこれらのピラー間の隙間を通り抜け、2つの横方向の放出ダクト40及び40’内へ放出される。1つまたは複数の細胞が相φ2とのインタフェースの近くに止まると、相φ1の流体力学的抵抗が突然高まり、静止細胞に圧力が加わる。ピラー間及び放出ダクト内の損失水頭の大きさを適切に決めることにより、この圧力上昇は、液滴内に閉じこめられた状態の1つまたは複数の細胞を相φ2内へ押し出すに足るものとなる。ピラーの優位点は、損失水頭が正確に決定されることにあり、かつピラー間の細胞の捕獲が制御されることにもある。細胞は幾分変形可能であることから、細胞はピラー間の隙間に留まる状態となり、よって正確に位置決めが行われる。カプセル化のための細胞の直径をDで表すとすれば、ピラーの直径は、好適にはD/5からD/3までの範囲内であり、ダクト10方向の2ピラー間の間隔は、好適には2D/3から4D/5までの範囲内である。
【0063】
図8に示すように、ダクト10とダクト20との間の接合部30には、細胞を安定させかつ細胞を高精度で静止状態に保つ目的で、追加的なマイクロピラーのアレイ451を設けることもできる。この追加的なアレイ451は、放出ダクトの口に位置するアレイ450及び450’とは独立して使用されることも可能である。
【0064】
図1から図3及び図8に示す4つの実施形態では、放出ダクトは対で、第1のダクト10を中心に正確に対称配置されている。これは、不可欠であるというわけではなく、非対称の放出ダクト、または双方が第1のダクトの片側だけに配置されるダクトでも使用可能である。しかしながら、第1のダクト内を流れる粒子が片側に配置される放出ダクトに吸い込まれ、これにより時ならぬ閉塞が生じることを回避するために、放出ダクトは、少なくとも略対称配置であることが好適である。
【0065】
先に述べた類のデバイスの物理的寸法は、意図される用途に依存し、かつ具体的には、カプセル化されるべき粒子のサイズに依存する。例として、隔絶される細胞は、約数マイクロメートルの直径を有してもよく、一方でランゲルハンス島型のクラスタは直径500μmに達するものであっても、これを超えるものであってもよい。しかしながら、原則として、本デバイスは微小流体型である必要があり、これは、ダクトの横方向寸法が数マイクロメートルまたは数十マイクロメートルから1ミリメートルまたは最大数ミリメートルまでの範囲内である必要があることを意味する。
【0066】
図4a及び図4cは、本発明によるデバイスの接合部30に直近する領域の拡大図を示す。グレーレベルは、2つの液相φ1及びφ2内の圧力値を表す。図4b及び図4dのグラフは、各々図4a及び図4cに示す状況に関するインタフェースIを通じた圧力差ΔP1、ΔP2を示す。
【0067】
図4a及び図4bの状況では、2つの液相間のインタフェースIに単一の粒子C1が存在する。放出ダクトの口は、接合部から粒子の直径より短い距離に位置づけられている。しかしながら、主ダクトの側面には第1の液相が流れることのできる十分なスペースが残っていることから、前記放出ダクトは部分的にしか塞がれない。この例は、口と接合部との距離が、本デバイスのサイズの決定に際して考慮される必要のあるパラメータの1つでしかないことを明示している。
【0068】
第2の粒子C2の到着(図4c)は、液体の放出にとって追加的な障害物となる。必然的に、インタフェースを通じた圧力差は増大し、インタフェースIの破裂を招く臨界値ΔPRより大きい値ΔP2に達する。従って、これらの2粒子のうちの少なくとも1つは第2のダクト20内へ注入される。より正確に言えば、ΔP1の値がインタフェースの破裂を持続させるに足るものであれば、双方の粒子が注入され、そうでなければ、1つの粒子C1(列内の最初の粒子)のみが注入され、次いで直後に安定したインタフェースが再形成される。
【0069】
図4eは、圧力差ΔPの値がインタフェースIにおける粒子の数NCに依存する様子を示す。実線は、単に視線をガイドするためのものである。ΔPは、接合部に粒子が存在しないときにもゼロではないことが分かる。この値ΔP(0)は、インタフェースにおける表面張力に等しい。
【0070】
インタフェースを破裂させる圧力差ΔPRは、次式、
【0071】
【数1】
【0072】
で与えられる。ここで、γ12は2つの液相間の界面張力であり、w及びdは各々、矩形断面であることが想定される第1のダクトの幅及び深さである。
【0073】
図4b、図4d及び図4eのグラフにおける圧力値の単位は、パスカル(Pa)である。
【0074】
図1から図3及び図8の実施形態は、平面形状を有する微小流体チップ型デバイスに関するものである。
【0075】
このようなデバイスは、シリコン、シリカまたはガラス製の基板上へ、従来の写真平板技術及び超小型電子技術に使用される類のエッチングを使用して製造されることが可能である。シリコン上では、この技術は、高精度であり(マイクロメートル級)かつエッチング深さ及びパターン幅にさほど制限がないという優位点を有する。
【0076】
ある変形例では、本デバイスは、それ自体が写真平板術により製造される「マスタ」を使用して、プラスチック材料(特にポリジメチルシロキサン−PDMS)を成形することにより製造されてもよい。
【0077】
原則として、本発明によるデバイスの製造には広範な材料が適する可能性がある。好適には、特に本デバイスを使用して移植可能なカプセルを製造する場合、これらの材料は、消毒できるものである必要がある。
【0078】
また本デバイスは、微小流体の入口及び出口の全てが同じ平面には存在しない三次元形式で製造されてもよい。このような状況下では、カプセルの形成は、副放出ダクトを塞ぐことにより誘発される局所的な圧力上昇だけでなく、重力により細胞または細胞クラスタ上へ加わる沈降力にも起因する。
【0079】
図5にその一実施形態が略示されているこのようなデバイスは、エッチングまたは成形されたパターンを有する平面基板S1−S5の積層によって構成される。第2のダクト20及び放出ダクト40、40’は、前記エッチングされた、または成形されたパターンによって基板間のインタフェースに、基板に平行して形成される。これに対して、第1のダクト10は貫通穴の積層によって構成され、よってこれは、前記複数の基板を略垂直に通過する。
【0080】
図1から図5の実施形態では、第1及び第2のダクトはT字形の流体接合部30を形成する(2つのダクトが互いに直交することは必須でないことから、「T字形」は広義に理解されるべきである)。しかしながら、これが唯一の可能な形状ではない。従って、図6は、微小流体フローの絞り込み接合部30’の使用に基づく本発明の代替実施形態におけるデバイスを示す。
【0081】
このデバイスでは、第2のダクトは、接合部30’で出合う2つの分岐20a及び20bによって形成される。これらの2つの分岐内では、第2の液相φ2が前記接合部へ向かって流れる。
【0082】
流体接合部30’は、図1から図3におけるT接合部30のような3分岐接合部ではなく、4分岐接合部である。即ち、分岐20a及び20bから到来する油性相と、第1のダクトから接合部内へ注入される粒子Cとを受け入れる目的で、第1のダクト10の向かいに第3のダクト60が設けられる。
【0083】
微小流体フロー絞り込み(MFF)の原理は、S.L.Anna、N.Bontoux及びH.A.Stone共著の論文「マイクロチャネルにおける「フローの絞り込み」を使用する分散形成」Applied Physics Letters 82(3)、2003年、364−366ページ、から知られる。
【0084】
図7は、細胞または細胞クラスタをカプセル化するための微小流体システム全体の図である。このようなシステムは、
・ 本発明のデバイスDと、
・ 前記デバイスの第1のダクト10内へ、第1の液相φ1及びカプセル化のための粒子で構成される懸濁液を注入するための注入手段であって、例として、シリンジプッシャP1または圧力コントローラを有する注入器をそなえてもよい注入手段と、
・ 前記デバイスの第2のダクト20内へ第2の液相φ2を注入するための注入手段であって、同様にシリンジプッシャP2または圧力コントローラを有する注入器をそなえてもよい注入手段と、
・ 任意選択として、前記第1の液相を放出ダクト40、40’(不図示:ある変形例では、前記液体は大気へ放出されてもよい)を介して吸い込むための吸引手段と、
・ カプセルをゲル化するための微小流体手段Eと、を備える。図7において、参照記号Kは、まだゲル化されていない、単に第1の液相の薄膜に包囲された細胞または細胞クラスタによって構成される「カプセル」を示すが、参照記号K’はゲル化されたカプセルを示す。
【0085】
微小流体手段Eは、第2の液相φ2が、ゲル化剤(例えば、アルギン酸塩でカプセル化する場合はCa+イオン)を溶液で含む不混和性の第3の液相φ3に接触するH形の微小流体デバイスであってもよい。カプセルKは、第2及び第3の液相間のインタフェースI’を通過し、インタフェースI’においてゲル化反応に曝され、次いで患者へ移植するために回収される。このようなデバイスは、文献US 2006/0051329に記載されている。文献WO 2005/103106は、本発明のカプセル化デバイスと組み合わせた使用に適する別の微小流体ゲル化デバイスについて記載している。
【0086】
カプセル化デバイスDとゲル化デバイスEは、一体形式で(共通の基板または基板積層上に)製造されてもよく、離散していてもよい。
【0087】
図7のシステムは、必ずしもカプセル選別ユニットを含まないことが分かる。これは、本発明によるデバイスDが、極度に均一な大きさ及び内容物のカプセルの達成を可能にし、かつ具体的には、空のカプセルの製造回避を可能にする、という事実に起因する。しかしながら、カプセル化のための粒子またはクラスタを選別するためのデバイスは、有利には、カプセル化ユニットの上流に設けられてもよい。先行技術では、多くの微小流体選別デバイスが知られている。例えば、文献WO 2004/037374、WO 2006/102258、WO 2002/02316及び2008年5月13日に本件出願の出願者名義で出願された「Systeme microfluidique et procede pour le tri d’amas de cellules et de preference pour leur encapsulation en cotinue suite a leur tri」[細胞クラスタを選別しかつ好適には選別後にこれらを連続してカプセル化するための微小流体システムと方法]と題するフランス特許出願第0802575号参照。
【0088】
ゲル化デバイスの存在は、必ずしも必要ではない。患者に移植するための中実壁カプセルを取得することが望まれる場合は、概してこれが必須であるが、(特に、研究分析または生体分析の分野では)「カプセル化された」細胞または細胞クラスタを液滴内に懸濁して置くだけで足りるという状況がある。このような状況下では、第1の液相φ1は必ずしもカプセル化剤を含む必要がない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サブミリ級の大きさの粒子またはこのような粒子のクラスタを制御下でカプセル化するための微小流体デバイス(D)であって、
・カプセル化のための粒子または粒子クラスタ(C)を懸濁状態で含む第1の液相(φ1)を送出するための第1の微小流体ダクト(10)と、
・前記第1の液相と不混和である第2の液相(φ2)の流れを運ぶための第2の微小流体ダクト(20)であって、前記第1のダクトは前記第2のダクト内へと開いて前記第2のダクトと共に流体接合部(30、30’)を形成する第2の微小流体ダクト(20)と、
・前記第1のダクト内を流れる前記第1の液相を放出するための少なくとも1つの放出微小流体ダクト(40、40’、50、50’)であって、前記接合部の上流に配置されかつ懸濁状態の粒子または粒子クラスタによって少なくとも部分的に塞がれることに適し、これにより前記第1のダクト内で圧力を上昇させる口(45、45’)を装備する少なくとも1つの放出微小流体ダクト(40、40’、50、50’)と、を備え、
これにより、前記第1のダクトに沿って前記懸濁により取り込まれる粒子または粒子クラスタは前記接合部において蓄積しやすく、前記2つの不混和液相間のインタフェース(I)で捉えられ、最終的に、前記放出ダクトの口が塞がれていることに起因する圧力上昇によって前記第2のダクト内へ注入される微小流体デバイス(D)。
【請求項2】
前記第1のダクトの両側に配置される少なくとも1対の微小流体放出ダクトを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
単一のカプセル化ダクト、または単一対のカプセル化ダクトのみを含む、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記カプセル化ダクトの口の断面及び前記口の前記接合部からの距離、及び前記第1のダクトの断面も、前記接合部における単一の粒子または粒子クラスタの到達が、前記第1のダクト内に、前記粒子または粒子クラスタが前記第2のダクト内へ注入されることを有効化するに足る圧力上昇を誘発させるようにして選択される、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記放出ダクトの口の断面及び前記口の前記接合部からの距離、並びに前記第1のダクトの断面は、粒子または粒子クラスタが前記第2のダクト内へ注入されることを有効化するに足る圧力が、予め決められた数の粒子または粒子クラスタが前記接合部において前記2つの不混和液相間のインタフェースによって捕捉されるまで到達されないようにして選択され、前記予め決められる数は1より多く、かつ好適には2から10までの範囲内である、請求項3に記載のデバイス。
【請求項6】
前記接合部から異なる距離に位置する口を有する少なくとも2つの放出ダクト、または少なくとも2対の放出ダクトを含み、前記放出ダクトの口の断面及び前記口の前記接合部からの距離、及び前記第1のダクトの断面は、粒子または粒子クラスタが前記第2のダクト内へ注入されることを有効化するに足る圧力が、前記少なくとも2つのダクトまたは少なくとも2対のダクトが塞がれる場合にのみ到達されるようにして選択され、これにより、複数の粒子または粒子クラスタが確実に同時に注入されることが可能にされる、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項7】
前記流体接合部(30)はT接合部であり、前記第1及び第2のダクトは両者間に60゜から90゜までの範囲内の角度、好適には80゜から90゜までの範囲内の角度、かつさらに好適にはほぼ90゜に等しい角度を形成する、請求項1から6のいずれかに記載のデバイス。
【請求項8】
前記流体接合部(30)は、微小流体フローの絞り込み接合部である、請求項1から6のいずれかに記載のデバイス。
【請求項9】
前記第1及び第2のダクトは、カプセル化されるべきものの直径dの110%から130%までの範囲内の断面を呈し、前記放出ダクトは、前記第1のダクトの断面の約30%から60%までの断面を呈し、かつ前記放出ダクトまたは放出ダクト対の口の前記接合部からの距離は、カプセル化されるべきものの直径の10%から50%までの範囲内である、請求項1から8のいずれかに記載のデバイス。
【請求項10】
前記放出ダクトの前記口または各口にマイクロピラーアレイ(450、450’)を含む、請求項1から9のいずれか記載のデバイス。
【請求項11】
前記第1及び第2のダクト間の流体接合部にマイクロピラーアレイ(451)を含む、請求項1から10のいずかれに記載のデバイス。
【請求項12】
平面構造を呈し、前記ダクトは、基板内にエッチングまたは成形される溝によって構成される、請求項1から11のいずれかに記載のデバイス。
【請求項13】
三次元構造体を呈し、成形またはエッチングされた平面基板(S1−S5)の積層によって構成され、前記第1のダクトは、前記基板を略垂直に通過し、一方で前記第2のダクト及び前記放出ダクトは基板間のインタフェースに前記基板に平行して形成される、請求項1から11のいずれかに記載のデバイス。
【請求項14】
前記ダクトの寸法は、細胞または細菌がカプセル化されることを有効化するように適合化される、請求項1から13のいずかれに記載のデバイス。
【請求項15】
サブミリ級の大きさの粒子またはこのような粒子のクラスタを制御下でカプセル化するための微小流体システムであって、
・先行する任意の請求項記載のデバイス(D)と、
・前記デバイスの第1のダクト内へ、カプセル化のためのサブミリ級の大きさの粒子またはこのような粒子のクラスタを懸濁状態で含む第1の液相を注入するための注入手段(P1)であって、前記液相は少なくとも1つのカプセル化剤も含む注入手段(P1)と、
・前記第1のダクト内を流れる前記第1の液相を前記放出ダクトを介して放出するための放出手段と、
・前記デバイスの第2のダクト内へ、前記液相とは不混和である第2の液相を注入するための注入手段(P2)と、を備え、
前記第1及び第2の液相を注入するための前記注入手段、及び前記第1の液相を放出するための前記放出手段は、前記接合部において前記2つの不混和液相間に安定したインタフェースが形成されることを有効化しかつ前記放出ダクトのうちの1つまたはそれ以上が塞がれた場合に前記インタフェースが破裂することを有効化するように適合化される微小流体システム。
【請求項16】
前記接合部の下流で前記第2のダクトへ接続されるゲル化ユニット(E)も含み、前記ユニットは、
・前記第2のダクト内へ注入されて前記第1の液相により構成される薄膜内に包囲される粒子または粒子クラスタを懸濁状態で含む前記第2の液相を入力として受け入れるように適合化され、かつ、
・前記粒子または粒子クラスタを含むカプセルを構成するために、前記薄膜内に含まれるカプセル化剤をゲル化させるように適合化される、請求項15に記載の微小流体システム。
【請求項17】
サブミリ級の粒子またはこのような粒子のクラスタを制御下でカプセル化するための微小流体方法であって、
・請求項1から請求項14のいずれかに記載のデバイスの第1のダクト内へカプセル化のための粒子または粒子クラスタを懸濁状態で含む第1の液相を注入するステップであって、前記液相は少なくとも1つのカプセル化剤も含む、注入するステップと、
・前記第1のダクト内を流れる液相を前記放出ダクトを介して放出するステップと、
・前記デバイスの第2のダクト内へ前記第1の液相と不混和である第2の液相を注入するステップと、を含み、
前記第1及び第2の液相が注入される圧力、及び前記第1の液相の放出流量は、前記接合部において前記2つの不混和液相間に安定したインタフェースが形成されることを有効化しかつ前記放出ダクトのうちの1つまたはそれ以上が塞がれた場合に前記インタフェースが破裂されかつ制御された数の粒子または粒子クラスタが前記第2のダクト内へ注入されることを有効化するようにして選択される方法。
【請求項18】
前記粒子または粒子クラスタを包囲する中実壁のカプセル(K’)を形成するために、前記第2のダクト内へ注入される粒子または粒子クラスタを包囲する前記第1の液相によって構成される薄膜内に含まれるカプセル化剤をゲル化するステップをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記粒子は、細胞、特にヒトの細胞及び細菌から選択される、請求項17または18に記載の方法。
【請求項1】
サブミリ級の大きさの粒子またはこのような粒子のクラスタを制御下でカプセル化するための微小流体デバイス(D)であって、
・カプセル化のための粒子または粒子クラスタ(C)を懸濁状態で含む第1の液相(φ1)を送出するための第1の微小流体ダクト(10)と、
・前記第1の液相と不混和である第2の液相(φ2)の流れを運ぶための第2の微小流体ダクト(20)であって、前記第1のダクトは前記第2のダクト内へと開いて前記第2のダクトと共に流体接合部(30、30’)を形成する第2の微小流体ダクト(20)と、
・前記第1のダクト内を流れる前記第1の液相を放出するための少なくとも1つの放出微小流体ダクト(40、40’、50、50’)であって、前記接合部の上流に配置されかつ懸濁状態の粒子または粒子クラスタによって少なくとも部分的に塞がれることに適し、これにより前記第1のダクト内で圧力を上昇させる口(45、45’)を装備する少なくとも1つの放出微小流体ダクト(40、40’、50、50’)と、を備え、
これにより、前記第1のダクトに沿って前記懸濁により取り込まれる粒子または粒子クラスタは前記接合部において蓄積しやすく、前記2つの不混和液相間のインタフェース(I)で捉えられ、最終的に、前記放出ダクトの口が塞がれていることに起因する圧力上昇によって前記第2のダクト内へ注入される微小流体デバイス(D)。
【請求項2】
前記第1のダクトの両側に配置される少なくとも1対の微小流体放出ダクトを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
単一のカプセル化ダクト、または単一対のカプセル化ダクトのみを含む、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記カプセル化ダクトの口の断面及び前記口の前記接合部からの距離、及び前記第1のダクトの断面も、前記接合部における単一の粒子または粒子クラスタの到達が、前記第1のダクト内に、前記粒子または粒子クラスタが前記第2のダクト内へ注入されることを有効化するに足る圧力上昇を誘発させるようにして選択される、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記放出ダクトの口の断面及び前記口の前記接合部からの距離、並びに前記第1のダクトの断面は、粒子または粒子クラスタが前記第2のダクト内へ注入されることを有効化するに足る圧力が、予め決められた数の粒子または粒子クラスタが前記接合部において前記2つの不混和液相間のインタフェースによって捕捉されるまで到達されないようにして選択され、前記予め決められる数は1より多く、かつ好適には2から10までの範囲内である、請求項3に記載のデバイス。
【請求項6】
前記接合部から異なる距離に位置する口を有する少なくとも2つの放出ダクト、または少なくとも2対の放出ダクトを含み、前記放出ダクトの口の断面及び前記口の前記接合部からの距離、及び前記第1のダクトの断面は、粒子または粒子クラスタが前記第2のダクト内へ注入されることを有効化するに足る圧力が、前記少なくとも2つのダクトまたは少なくとも2対のダクトが塞がれる場合にのみ到達されるようにして選択され、これにより、複数の粒子または粒子クラスタが確実に同時に注入されることが可能にされる、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項7】
前記流体接合部(30)はT接合部であり、前記第1及び第2のダクトは両者間に60゜から90゜までの範囲内の角度、好適には80゜から90゜までの範囲内の角度、かつさらに好適にはほぼ90゜に等しい角度を形成する、請求項1から6のいずれかに記載のデバイス。
【請求項8】
前記流体接合部(30)は、微小流体フローの絞り込み接合部である、請求項1から6のいずれかに記載のデバイス。
【請求項9】
前記第1及び第2のダクトは、カプセル化されるべきものの直径dの110%から130%までの範囲内の断面を呈し、前記放出ダクトは、前記第1のダクトの断面の約30%から60%までの断面を呈し、かつ前記放出ダクトまたは放出ダクト対の口の前記接合部からの距離は、カプセル化されるべきものの直径の10%から50%までの範囲内である、請求項1から8のいずれかに記載のデバイス。
【請求項10】
前記放出ダクトの前記口または各口にマイクロピラーアレイ(450、450’)を含む、請求項1から9のいずれか記載のデバイス。
【請求項11】
前記第1及び第2のダクト間の流体接合部にマイクロピラーアレイ(451)を含む、請求項1から10のいずかれに記載のデバイス。
【請求項12】
平面構造を呈し、前記ダクトは、基板内にエッチングまたは成形される溝によって構成される、請求項1から11のいずれかに記載のデバイス。
【請求項13】
三次元構造体を呈し、成形またはエッチングされた平面基板(S1−S5)の積層によって構成され、前記第1のダクトは、前記基板を略垂直に通過し、一方で前記第2のダクト及び前記放出ダクトは基板間のインタフェースに前記基板に平行して形成される、請求項1から11のいずれかに記載のデバイス。
【請求項14】
前記ダクトの寸法は、細胞または細菌がカプセル化されることを有効化するように適合化される、請求項1から13のいずかれに記載のデバイス。
【請求項15】
サブミリ級の大きさの粒子またはこのような粒子のクラスタを制御下でカプセル化するための微小流体システムであって、
・先行する任意の請求項記載のデバイス(D)と、
・前記デバイスの第1のダクト内へ、カプセル化のためのサブミリ級の大きさの粒子またはこのような粒子のクラスタを懸濁状態で含む第1の液相を注入するための注入手段(P1)であって、前記液相は少なくとも1つのカプセル化剤も含む注入手段(P1)と、
・前記第1のダクト内を流れる前記第1の液相を前記放出ダクトを介して放出するための放出手段と、
・前記デバイスの第2のダクト内へ、前記液相とは不混和である第2の液相を注入するための注入手段(P2)と、を備え、
前記第1及び第2の液相を注入するための前記注入手段、及び前記第1の液相を放出するための前記放出手段は、前記接合部において前記2つの不混和液相間に安定したインタフェースが形成されることを有効化しかつ前記放出ダクトのうちの1つまたはそれ以上が塞がれた場合に前記インタフェースが破裂することを有効化するように適合化される微小流体システム。
【請求項16】
前記接合部の下流で前記第2のダクトへ接続されるゲル化ユニット(E)も含み、前記ユニットは、
・前記第2のダクト内へ注入されて前記第1の液相により構成される薄膜内に包囲される粒子または粒子クラスタを懸濁状態で含む前記第2の液相を入力として受け入れるように適合化され、かつ、
・前記粒子または粒子クラスタを含むカプセルを構成するために、前記薄膜内に含まれるカプセル化剤をゲル化させるように適合化される、請求項15に記載の微小流体システム。
【請求項17】
サブミリ級の粒子またはこのような粒子のクラスタを制御下でカプセル化するための微小流体方法であって、
・請求項1から請求項14のいずれかに記載のデバイスの第1のダクト内へカプセル化のための粒子または粒子クラスタを懸濁状態で含む第1の液相を注入するステップであって、前記液相は少なくとも1つのカプセル化剤も含む、注入するステップと、
・前記第1のダクト内を流れる液相を前記放出ダクトを介して放出するステップと、
・前記デバイスの第2のダクト内へ前記第1の液相と不混和である第2の液相を注入するステップと、を含み、
前記第1及び第2の液相が注入される圧力、及び前記第1の液相の放出流量は、前記接合部において前記2つの不混和液相間に安定したインタフェースが形成されることを有効化しかつ前記放出ダクトのうちの1つまたはそれ以上が塞がれた場合に前記インタフェースが破裂されかつ制御された数の粒子または粒子クラスタが前記第2のダクト内へ注入されることを有効化するようにして選択される方法。
【請求項18】
前記粒子または粒子クラスタを包囲する中実壁のカプセル(K’)を形成するために、前記第2のダクト内へ注入される粒子または粒子クラスタを包囲する前記第1の液相によって構成される薄膜内に含まれるカプセル化剤をゲル化するステップをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記粒子は、細胞、特にヒトの細胞及び細菌から選択される、請求項17または18に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図4d】
【図4e】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図4d】
【図4e】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2010−12457(P2010−12457A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−116393(P2009−116393)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【出願人】(508358737)
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE
【住所又は居所原語表記】25 rue Leblanc, Batiment Le Ponant D, 75015 Paris, France
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−116393(P2009−116393)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【出願人】(508358737)
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE
【住所又は居所原語表記】25 rue Leblanc, Batiment Le Ponant D, 75015 Paris, France
【Fターム(参考)】
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