説明

粒子検出方法及び粒子検出装置

【課題】被検査物に付着した粒子が有機系粒子であっても、レーザ散乱方式における検出感度を向上させることができる粒子検出方法を提供する。
【解決手段】ウェハWの表面に光を照射し、該表面からの散乱光を受光することによって、前記表面に付着した粒子Pを検出する粒子検出方法において、粒子Pが損傷しない所定温度範囲でウェハWの表面に成膜処理を行い、成膜されたウェハWの表面に光を照射し、前記表面からの散乱光を受光することによって、粒子Pを検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査物の表面に光を照射し、該表面からの散乱光を受光することによって、前記表面に付着した有機系粒子を検出する粒子検出方法及び粒子検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス、例えば、超LSI(Large Scale Integrated circuit)の製造工程において、ウエハ表面に粒子状異物(以下「粒子」という)が付着した場合、回路が短絡し、当該半導体デバイスが機能しない虞があり、歩留まり低下の要因となっていた。ウエハ表面に付着した粒子を検出する方法としては、レーザ光でウェハ表面を走査し、粒子からの散乱光を検出することによって、ウェハ面内における粒子の位置及び大きさを測定するという方法が一般的である。
【0003】
近年、半導体デバイスの微細化に伴い、より微小な粒子の検出が要求されている。今現在、ITRS(International Technology Roadmap for Semiconductors)においては20nm台の粒子検出が要求されているが、レーザ散乱方式における検出感度は30〜40nm程度であり、20nm台の粒子は検出できていない。
【0004】
一方、粒子が付着したウェハを成膜すると、レーザ光の散乱強度が増強する事は一般的に知られており、特許文献1には、ウェハの成膜によってレーザ散乱方式における検出感度を向上させる手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−206500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、成膜時にウェハが高温雰囲気に曝されるため、ウェハ表面に付着している粒子が損傷又は消失し、検出不能になることがあった。
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、有機系粒子が損傷しない所定温度範囲で被検査物の表面に成膜処理を行い、成膜された被検査物の表面に光を照射し、該表面からの散乱光を受光することによって、被検査物に付着した粒子の種類に拘わらず、レーザ散乱方式における粒子の検出感度を向上させることができる粒子検出方法及び粒子検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る粒子検出方法は、被検査物の表面に光を照射し、該表面からの散乱光を受光することによって、前記表面に付着した有機系粒子を検出する粒子検出方法において、有機系粒子が損傷しない所定温度範囲で前記被検査物の表面に原子層堆積法にて成膜処理を行い、成膜された前記被検査物の表面に光を照射し、前記表面からの散乱光を受光することによって、有機系粒子を検出することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る粒子検出方法は、前記成膜処理にてシリコン酸化膜を形成することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る粒子検出方法は、前記成膜処理にて30nm以上の膜を形成することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る粒子検出方法は、前記所定温度範囲は50℃未満であることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る粒子検出方法は、成膜された前記被検査物の表面に更に反射膜を形成することを特徴とする。
【0012】
本発明に係る粒子検出装置は、被検査物の表面に光を照射し、該表面からの散乱光を受光することによって、前記表面に付着した有機系粒子を検出する粒子検出装置において、有機系粒子が損傷しない所定温度範囲で前記被検査物の表面に原子層堆積法にて成膜処理を行う成膜手段と、成膜された前記被検査物の表面に光を照射する光照射手段と、前記表面からの散乱光を受光することによって、有機系粒子を検出する手段とを備えることを特徴とする。
【0013】
本発明にあっては、有機系粒子が損傷しない所定温度範囲で被検査物の表面に原子層堆積法にて成膜処理を行う。原子層堆積法は、常温成膜であるため、被検査物の表面に付着した有機系粒子を損傷させることなく成膜し、見かけ上、粒径を大きくすることができる。また、原子層堆積法は、単一の原子層を積層させて成膜する方法であるため、カバレッジが良く、コンフォーマルかつ平滑な膜を形成することができる。つまり、被検査物及び有機系粒子の表面に倣って平滑な膜を形成することができる。更に、原子層堆積法は、CVD等の他の成膜方法に比べて、成膜時に発生する粒子が極めて少ない。
そして、成膜された前記被検査物の表面に光を照射し、該表面からの散乱光を受光することによって有機系粒子を検出する。有機系粒子は成膜によって見かけ上、粒径が大きくなっているため、散乱光が大きくなり、有機系粒子の検出感度が増大する。
なお、言うまでも無く、本発明は、有機系粒子よりも損傷し難い粒子、例えば無機系粒子の検出に適用しても良いし、有機系粒子及び無機系粒子が混在している場合における粒子の検出に本発明を適用しても良い。従って、光散乱方式における検出限界を超えて、微小な有機系粒子を検出することが可能になる。
【0014】
本発明にあっては、原子層堆積法にてシリコン酸化膜を被検査物の表面に形成する。原子層堆積法にて成膜されたシリコン酸化膜は、他の手法及び他の材質で形成された膜に比べて、カバレッジが良く、コンフォーマルかつ平滑な膜を形成することができる。従って、他の成膜方法に比べて、ノイズを増大させること無く、有機系粒子からの散乱光を効果的に増強させることができ、有機系粒子の検出感度を向上させることができる。
【0015】
本発明にあっては、成膜された膜の厚さは30nm以上である。検出感度が40nmの粒子検出装置を用いて粒径34nm以下の粒子を検出することが可能である。特に、膜の厚さが60nm以上である場合、粒径22nmの粒子を検出することが可能になり、膜の厚さが120nm以上である場合、粒径14nmの粒子を検出することが可能になる。
【0016】
本発明にあっては、所定温度範囲は50℃未満である。従って、有機系粒子は損傷しない。
【0017】
本発明にあっては、成膜された被検査物の表面に更に反射膜を形成する。従って、粒子からの散乱光を増強させ、より効果的に粒子の検出感度を向上させることが可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、被検査物に付着した粒子の種類に拘わらず、レーザ散乱方式における粒子の検出感度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態に係る粒子検出装置の一構成例を示した側断面図である。
【図2】本実施の形態に係る粒子検出方法の一例を示したフローチャートである。
【図3】成膜処理部におけるALD成膜の手順を示したフローチャートである。
【図4】粒子検出部における粒子検出の手順を示したフローチャートである。
【図5】シリカ粒子が付着したウェハに形成されたALDシリコン酸化膜の断面SEM写真である。
【図6】ALDシリコン酸化膜の厚さと、検出可能なシリカ粒子の実粒径との関係を示した図表である。
【図7】ウェハに付着した実粒径と、成膜処理後に検出されたシリカ粒子の粒径との関係を示したグラフである。
【図8】成膜処理の効果と、膜の種類との関係を示したグラフである。
【図9】膜厚と、S/N比との関係を示したグラフである。
【図10】膜厚とヘーズレベルとの関係を示したグラフである。
【図11】ウェハからの散乱光の信号強度を概念的に示したグラフである。
【図12】ウェハに形成された膜の断面SEM写真を概念的に示した模式図である。
【図13】変形例に係る粒子検出装置の一構成例を示した側断面図である。
【図14】変形例に係る粒子検出方法の一例を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
<粒子検出装置>
図1は、本発明の実施の形態に係る粒子検出装置の一構成例を示した側断面図である。本実施の形態に係る粒子検出装置は、有機系粒子(以下、粒子Pという。)が損傷しない所定温度範囲でウェハ(被検査物)W表面に成膜処理を行う成膜処理部1と、レーザ散乱方式によってウェハW上の粒子Pを検出する粒子検出部3と、成膜処理部1から粒子検出部3へウェハWを搬送する搬送部2とを備える。
【0021】
成膜処理部1は、ウェハWを収容し、成膜処理を施すための成膜処理室11を備える。成膜処理室11は、例えば、中空略円柱状であり、耐熱及び耐食性に優れた材料、例えば石英で形成されている。成膜処理室11の側壁には、ウェハWを搬入出するための搬入出口11aが設けられ、成膜処理室11の底部には、成膜処理室11に搬入されたウェハWが載置されるステージ12が設けられている。
【0022】
成膜処理室11の側壁の適宜箇所には、成膜処理室11内のガスを排気するための排気管17が配されている。排気管17は、長手方向が上下方向になるように成膜処理室11に沿って形成され、成膜処理室11の側壁に設けられた孔部17aを介して、成膜処理室11と連通している。排気管17の上端は、成膜処理室11の上部に配置された排気口に接続されている。この排気口には排気管17が接続され、排気管17には図示しないバルブを介して排気部18が接続されている。排気部は、例えば、真空ポンプなどの圧力調整機構によって構成されている。
【0023】
また、成膜処理室11の側壁、排気部18と反対側の箇所には、ソースガス供給管16が上下方向に沿って形成され、成膜処理室11の側壁に設けられた孔部16aを介して、成膜処理室11と連通している。ソースガス供給管16には、図示しないバルブを介してシリコン含有物質供給部15が接続されている。シリコン含有物質供給部15は、シリコン含有物質、例えばジイソプロピルアミノシランを、ソースガス供給管16を通じて、ウェハWへ供給し、吸着させる。
【0024】
更に、成膜処理室11の側壁には、酸化ガスを活性化させ、活性化された酸化ガスを、孔部を通じて成膜処理室11へ供給する活性化処理部14がソースガス供給管16に並設されている。酸化ガスは、例えば酸素であり、ウェハW表面に吸着したシリコン含有物質を酸化させるためのガスである。活性化処理部14の内部には、酸化ガス供給管14aが上下方向に沿って配されている。酸化ガス供給管14aには、図示しないバルブを介して酸化ガス供給部13に接続されている。酸化ガス供給部13は、例えば、酸素ボンベ、マスフローコントローラ、圧力調整弁等で構成されている。また、活性化処理部14は、酸化ガス供給管14aにて供給された酸化ガスを活性化させるための一対の電極14bを備えている。一対の電極14b間には、酸化ガスが供給される。一対の電極14bは、図示しない高周波電源、整合器等に接続されている。そして、一対の電極14b間に高周波電源から整合器を介して高周波電力を印加することにより、一対の電極14b間に供給された処理ガスをプラズマ励起(活性化)させ、例えば、酸素ラジカルを生成する。このように活性化された酸化ガスが活性化処理部14から成膜処理室11内に供給される。
【0025】
更に、成膜処理室11の周囲には、図示しない温度調整機構が設けられている。温度調整機構は、ヒータを備えており、該ヒータによって成膜処理室11の内部及びウェハWは所定の温度に保持される。
【0026】
更にまた、成膜処理部は、図示しない制御部を備えている。制御部は、成膜処理部の各構成部の動作を制御することによって、ウェハ表面へのシリコン含有物質及び酸化ガスの供給を交互に繰り返し、ウェハW表面にシリコン酸化膜(以下、ALDシリコン酸化膜L1という。)を形成する。
【0027】
搬送部2は、成膜処理部1及び粒子検出部3にそれぞれ連通する搬入出口21a,21bが形成された中空略直方体の筐体21を備える。筐体21の底部には、ウェハWを成膜処理部1及び粒子検出部3へ搬入出させる搬送ロボット22が設けられている。また、搬送部2は、搬入出口21a,21bを開閉させる扉体23,24を備える。
【0028】
粒子検出部3は、中空略直方体の粒子検出室31を備える。粒子検出室31の側壁には、ウェハWを搬入出するための搬入出口31aが設けられ、粒子検出室31の底部には、粒子検出室31に搬入されたウェハWが載置されるステージ32が設けられている。ステージ32は、ステージ駆動部33によって水平方向へ移動することができる。また、粒子検出室31には、該粒子検出室31の内部からガスを排出されるガス排気口31bが設けられている。ガス排気口31bは、ドライポンプ等の真空ポンプで構成された排気部34に接続されている。なお、ガス排気口31b及び排気部34は必須の構成では無い。
更に、粒子検出部3は、ステージ32に載置されたウェハWの表面に光を照射する光照射部35と、ウェハW表面からの散乱光を受光し、受光した散乱光の強度に応じた信号を出力する受光部36とを備える。信号処理部37は、受光部36から出力された信号を受信し、受信した信号の増強等の各種信号処理を行い、演算部38へ出力する。演算部38は、信号処理部37から出力された信号に基づいて、粒子Pの検出、粒径の演算等の処理を実行する。
【0029】
<粒子検出方法及び粒子検出装置の動作>
図2は、本実施の形態に係る粒子検出方法の一例を示したフローチャートである。まず、被検査物であるウェハWを成膜処理室11に搬入し、ステージ12に載置する。そして、粒子Pが損傷しない所定温度範囲でウェハWの表面に、原子層堆積法にてALDシリコン酸化膜L1を形成する(ステップS11)。所定温度範囲は、有機物が変形又は消失しない温度範囲であり、例えば50℃未満である。後述する原子層堆積法によれば、前記所定温度範囲における成膜処理が可能である。そして、成膜されたウェハWを、搬送部2を用いて成膜処理部1から、粒子検出部3へ搬送する(ステップS12)。次いで、粒子検出部3へ搬送され、ステージ32に載置されたウェハWの表面に光を照射し、ウェハWの表面からの散乱光を受光することによって、有機系粒子Pを検出し(ステップS13)、処理を終える。
【0030】
図3は、成膜処理部1におけるALD成膜の手順を示したフローチャートである。まず、シリコン含有物質を成膜処理室11へ供給する(ステップS31)。成膜処理室11に供給されたシリコン含有物質は、ウェハW表面に原子層単位で吸着する。次いで、酸化ガスを成膜処理室11へ供給する(ステップS32)。成膜処理室11に供給された酸化ガスは、ウェハW表面に吸着したシリコン含有物質を酸化することによって、ウェハW表面にALDシリコン酸化膜L1を形成する。上述のシリコン含有物質及び酸化ガスの供給は常温下で行われる。つまり、ALDシリコン酸化膜L1の成膜処理は常温で行うことができる。そして、目標とするALDシリコン酸化膜L1の厚さに応じて決定される特定回数の成膜処理が実行されたか否かを判定する(ステップS33)。ALDシリコン酸化膜L1の膜厚は、検出を所望する粒子Pの粒径によって適宜決定されるものであるが、30nm以上、60nm以下が好適である。特定回数の成膜を終えていないと判定した場合(ステップS33:NO)、処理をステップS31へ戻す。特定回数の成膜処理を終えたと判定した場合(ステップS33:YES)、成膜処理を終える。
【0031】
このように、シリコン含有ガス及び酸化ガスの供給を交互に繰り返すことによって、カバレッジの良い、コンフォーマルかつ平滑な膜が形成される。
【0032】
図4は、粒子検出部3における粒子検出の手順を示したフローチャートである。粒子検出室31に搬送され、ステージ32に載置されたウェハWに対して、光照射部35はレーザ光を照射する(ステップS51)。そして、ステージ駆動部33は、ステージ32を水平方向へ移動させることによって、レーザ光によるウェハW表面の走査を開始する(ステップS52)。
【0033】
次いで、受光部36は、ウェハW表面の粒子Pによって散乱した散乱光を検出する(ステップS53)。そして、演算部38は、信号処理部37を介して受光部36から受信した信号に基づいて、粒子Pが検出されたか否かを判定する(ステップS54)。具体的には、受光部36にて受光した散乱光の強度が所定値以上であるか否かを判定する。
【0034】
粒子Pを検出したと判定した場合(ステップS54:YES)、演算部38は、信号処理部37を介して受信した信号に基づいて、成膜処理によって見かけ上の粒径が大きくなった粒子Pの粒径を算出する(ステップS55)。次いで、演算部38は、成膜処理によって形成された膜厚と、ステップS55で算出した粒径とに基づいて、成膜前の粒径を算出する(ステップS56)。成膜前の粒径を算出する方法は、公知の技術であるため、詳細な説明は省略する。
【0035】
次いで、演算部38は、ステップS56で算出した粒径を記憶する(ステップS57)。ステップS57の処理を終えた場合、又はステップS54で粒子Pを検出していないと判定した場合(ステップS54:NO)、ステージ駆動部33によって、ウェハWの全面をレーザで走査したか否かを判定する(ステップS58)。ウェハW表面の全面を走査し終えていないと判定した場合(ステップS58:NO)、ステージ駆動部33は、ステップS53に処理を戻し、走査を継続する。ウェハWの全面を走査し終えたと判定した場合(ステップS58:YES)、光照射部35によるレーザ光の照射及びステージ駆動部33による走査を停止させる(ステップS59)。そして、演算部38は、粒子Pの検出結果を外部へ出力し(ステップS60)、処理を終える。
【0036】
次に、本実施の形態に係る粒子検出方法及び粒子検出装置の作用及び効果を説明する。
<実験結果1:断面SEM写真>
ウェハWに平均粒径115nmのシリカ粒子を吹きつけ、原子層堆積法によって、60nmの厚さのシリコン酸化膜を形成した。そして、ALDシリコン酸化膜によって覆われたシリカ粒子の断層SEM写真を撮影した。
【0037】
図5は、シリカ粒子が付着したウェハに形成されたALDシリコン酸化膜の断面SEM写真である。図5中、破線で示した円は、ウェハ上に吹き付けられた粒径115nmのシリカ粒子が存在する箇所を示しており、シリカ粒子の下端に接する水平線の下側がウェハである。図5に示すように、原子層体積法によって形成されたALDシリコン酸化膜は非常にカバレッジが良く、ウェハ及びシリカ粒子の表面に倣うように形成されたコンフォーマルで平滑な膜であることが分かる。後述するように、カバレッジが良く、コンフォーマルかつ平滑な膜が形成することによって、粒子検出部3の検出限界を超えて、微小なシリカ粒子を検出することが可能になる。
【0038】
<実験結果2:ALDシリコン酸化膜の厚さと、計測粒径との関係>
平均粒径が14nm,22nm、34nm、67nm、106nm、115nmのシリカ粒子をウェハの異なる箇所にそれぞれ吹き付け、原子層堆積法によって、ALDシリコン酸化膜を形成し、レーザ散乱法でシリカ粒子を検出する実験を行った。シリカ粒子の検出に用いた粒子検出部3の検出限界は40nmである。また、同実験を、ALDシリコン酸化膜の厚さを、0nm(成膜無し)、30nm、60nm、120nmと変えて行った。
【0039】
図6は、ALDシリコン酸化膜の厚さと、検出可能なシリカ粒子の実粒径との関係を示した図表、図7は、ウェハに付着した実粒径と、成膜処理後に検出されたシリカ粒子の粒径との関係を示したグラフである。図7に示したグラフの横軸は、シリカ粒径の粒径(以下、実粒径という。)、縦軸は、成膜処理によって見かけ上の粒径が大きくなったシリカ粒子からの散乱強度に基づいて算出された粒径(以下、計測粒径という。)を示している。なお、図6中、数字が記入されていないハッチングが付された項目は、シリカ粒子が検出できなかったことを示している。また数字が記入され、ハッチングされた項目は、検出限界である40nm未満のシリカ粒子を検出することが可能になった最小膜厚の条件であることを示している。バツ印が付された項目は、該当する条件で実験が行われていないことを示している。
【0040】
粒子検出部3の検出限界は、40nmである。図7及び8から分かるように、成膜処理を行わなかった場合、ALDシリコン酸化膜の厚さが10nmである場合、実粒径14nm,22nm、34nmのシリカ粒子は検出されなかった。ところが、厚さ約30nmのALDシリコン酸化膜を形成することによって、実粒径34nmのシリカ粒子を検出することが可能になった。また、厚さ約60nmのALDシリコン酸化膜を形成することによって、実粒径22nmのシリカ粒子を検出することが可能になった。更に、厚さ約120nmのALDシリコン酸化膜を形成することによって、実粒径14nmのシリカ粒子を検出することが可能になった。このように、ウェハ表面及びシリカ粒子がALDシリコン酸化膜によって覆われると、見かけの粒径が大きくなるため、散乱強度が大きくなり、検出限界を超えた微小なシリカ粒子の検出が可能になる。
【0041】
<実験結果3:成膜方法及び成膜材料の比較>
図8は、成膜処理の効果と、膜の種類との関係を示したグラフである。
ALDシリコン酸化膜に代えて、チタンTi膜、ArF用レジスト膜、HTO(High Temperature Oxide)膜を形成し、シリカ粒子を検出する実験を行った。横軸は、ウェハ表面に形成された膜の厚さ、縦軸は、成膜後の計測粒径を示している。光散乱強度を増強させるという観点から見ると、チタンTi膜が最も優れており、次いで、ALDシリコン酸化膜、HTO、ArFレジストと続く。
【0042】
図9は、膜厚と、S/N比との関係を示したグラフ、図10は、膜厚とヘーズ(haze)レベルとの関係を示したグラフ、図11は、ウェハからの散乱光の信号強度を概念的に示したグラフである。図9及び図10の横軸は、ウェハ表面に形成された膜の厚さ、図9の縦軸は、散乱強度のS/N比、図10の縦軸はヘーズレベルを示している。図9,10から、ALDシリコン酸化膜は、S/Nが極めて高く、ヘーズレベルも小さいことが分かる。S/N比が大きく、ヘーズレベルが小さい場合、図11左図に示すように、粒子検出信号を誤りなく正確に検出することができる。一方、光散乱強度の増強という観点では優れていたチタンTi膜は、S/N比が小さく、ヘーズレベルが大きいことが分かる。S/N比が小さく、ヘーズレベルが大きい場合、粒子検出信号に紛れてノイズも検出される虞があり、またノイズに埋もれて粒子検出信号を見落とされる虞もあるため、微小なシリカ粒子を正確に検出し、粒径の計測することは困難である。
【0043】
図12は、ウェハに形成された膜の断面SEM写真を概念的に示した模式図である。図12(a)は、ウェハWに形成されたALDシリコン酸化膜、図12(b)は、Ti膜L11、図12(c)は、ArFレジスト膜L12を示している。図12(a)に示すように、ALDシリコン酸化膜は、カバレッジが良く、コンフォーマルで平滑な膜である。従って、粒子検出信号を、粒子Pの実粒径を正確に反映させて増強することができ、しかもS/N比が大きく、ヘーズレベルが小さい粒子検出信号を得ることができる。従って、微小な粒子Pを正確に検出することが可能になる。
一方、Ti膜L11は、カバレッジ、平滑性が悪いため、S/N比が小さく、ヘーズレベルが大きい粒子検出信号しか得られない。従って、微小な粒子Pを正確に検出することができない。
また、ArFレジスト膜L12の場合、コンフォーマル性が悪いため、成膜によって、散乱強度が逆に小さくなってしまう。従って、微小な粒子Pを検出することはできない。
以上の実験結果から、レーザ散乱法による粒子検出には、ALDシリコン酸化膜が最も好適であることが分かる。
【0044】
実施の形態に係る粒子検出方法及び粒子検出装置にあっては、原子層積層法による常温成膜を行う為、ウェハW表面に付着したパーティクルを変形させることが無い。従って、ウェハWに付着した粒子Pが有機系粒子であっても、レーザ散乱方式における検出感度を向上させることができる。
【0045】
また、原子層積層法によって、シリコン酸化膜を形成するため、カバレッジが良く、コンフォーマルかつ平滑な膜で、ウェハW表面及び粒子Pを覆うことができる。ALDシリコン酸化膜L1を形成することによって、高S/N比、低いヘーズレベルのまま、散乱光を増大させることができ、レーザ散乱方式による検出感度を向上させることができる。
【0046】
更に、原子層積層法によって、シリコン酸化膜を形成するため、成膜時に発生し、ウェハWに新たに付着する粒子P数が極めて少ない。従って、ウェハW表面に付着していた粒子Pのみの散乱強度を増強させ、微小な粒子Pを検出することができる。
【0047】
(変形例)
変形例に係る粒子検出方法は、成膜されたウェハW表面に対して更に反射膜を形成し、粒子を検出する点のみが異なるため、以下では主に上記相異点について説明する。
【0048】
図13は、変形例に係る粒子検出装置の一構成例を示した側断面図である。変形例に係る粒子検出装置は、成膜処理部1と、粒子検出部3との間に、搬送部2,2を介して、反射膜形成部4を備える。
【0049】
反射膜形成部4は、例えばスパッタリング装置である。反射膜形成部4は、反射膜形成用の処理室41を備える。該処理室41の成膜処理部1側と、粒子検出部3側にはそれぞれウェハWを搬入及び搬出するための搬入出口41a,41bが形成されている。また、処理室41には、マグネトロンスパッタリングガン46の組立体45と、スパッタリングガン46にスパッタリングガス(例えばアルゴンガス)を供給するためのスパッタリングガス供給部48と、ウェハWを支持するためのステージ42と、処理室41内に反応ガス(例えば窒素ガス)を供給するための反応ガス供給部44を備えている。
【0050】
また、処理室41には、該処理室41の内部からガスを排出されるガス排気口41cが設けられている。ガス排気口41cは、ドライポンプ等の真空ポンプで構成された排気部43に接続されている。この真空ポンプにより処理室41内のガスを排気することにより、処理室41内が所望の真空度に保持される。
【0051】
組立体45に組み込まれたスパッタリングガン46は凹部を有するターゲット47を備えており、このターゲット47は上述のガス供給部から供給されたスパッタリングガスのプラズマによりスパッタされる。これにより、スパッタ粒子がウェハWに向けて射出され、ALDシリコン酸化膜L1上に反射膜L2が形成される。
【0052】
図14は、変形例に係る粒子検出方法の一例を示したフローチャートである。有機系の粒子Pが損傷しない所定温度範囲でウェハWの表面に、原子層堆積法にてシリコン酸化膜の成膜処理を行う(ステップS111)。そして、成膜されたウェハWを、搬送部2を用いて成膜処理部1から、反射膜形成部4へ搬送する(ステップS112)。次いで、粒子検出部3へ搬送され、ステージ42に載置されたウェハWの表面に、反射膜L2を形成する(ステップS113)。反射膜L2は、例えばチタンTiであり、スパッタリングによって成膜される。ALDシリコン酸化膜L1及び反射膜L2における屈折率は、散乱強度に4乗で寄与するため、ALDシリコン酸化膜L1及び反射膜L2の真空に対する屈折率の差が大きい方が好ましい。ALDシリコン酸化膜L1の屈折率は1.46であるのに対して、チタンTiの屈折率は2.52と大きく異なるため、好適である。また、反射膜L2の膜厚は可能な限り薄い方が良い。ALDシリコン酸化膜L1のカバレッジ、コンフォーマル性、平滑性が損なわれるためである。ただ、ALDシリコン酸化膜L1及び反射膜L2の界面での反射強度を担保するためには、反射膜L2の厚さを、照射される光の進入長以上に設定すべきである。従って、反射膜L2の厚さは、照射される光の進入長が好適である。
【0053】
ステップS113の処理を終えた場合、反射膜L2が形成されたウェハWを、搬送部2を用いて反射膜形成部4から粒子検出部3へ搬送する(ステップS114)。次いで、粒子検出部3へ搬送され、ステージ32に載置されたウェハWの表面に光を照射し、ウェハWの表面からの散乱光を受光することによって、粒子Pを検出し(ステップS115)、処理を終える。
【0054】
変形例にあっては、粒子Pからの散乱光をより増強し、より効果的に微小な粒子Pを検出することができる。
【0055】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0056】
1 成膜処理部
2 搬送部
3 粒子検出部
4 反射膜形成部
11 成膜処理室
12 ステージ
13 酸化ガス供給部
14 活性化処理部
15 シリコン含有物質供給部
16 ソースガス供給管
17 排気管
18 排気部
31 粒子検出室
32 ステージ
33 ステージ駆動部
34 排気部
35 光照射部
36 受光部
37 信号処理部
38 演算部
42 ステージ
43 排気部
44 反応ガス供給部
45 組立体
46 スパッタリングガン
47 ターゲット
48 スパッタリングガス供給部
W ウェハ
P 粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物の表面に光を照射し、該表面からの散乱光を受光することによって、前記表面に付着した有機系粒子を検出する粒子検出方法において、
有機系粒子が損傷しない所定温度範囲で前記被検査物の表面に原子層堆積法にて成膜処理を行い、
成膜された前記被検査物の表面に光を照射し、
前記表面からの散乱光を受光することによって、有機系粒子を検出する
ことを特徴とする粒子検出方法。
【請求項2】
前記成膜処理にてシリコン酸化膜を形成する
ことを特徴とする請求項1に記載の粒子検出方法。
【請求項3】
前記成膜処理にて30nm以上の膜を形成する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の粒子検出方法。
【請求項4】
前記所定温度範囲は50℃未満である
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の粒子検出方法。
【請求項5】
成膜された前記被検査物の表面に更に反射膜を形成する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載の粒子検出方法。
【請求項6】
被検査物の表面に光を照射し、該表面からの散乱光を受光することによって、前記表面に付着した有機系粒子を検出する粒子検出装置において、
有機系粒子が損傷しない所定温度範囲で前記被検査物の表面に原子層堆積法にて成膜処理を行う成膜手段と、
成膜された前記被検査物の表面に光を照射する光照射手段と、
前記表面からの散乱光を受光することによって、有機系粒子を検出する手段と
を備えることを特徴とする粒子検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−209025(P2011−209025A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75394(P2010−75394)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】