説明

粒子状物質検出装置およびこれを用いた排気浄化フィルタの故障検知装置

【課題】電極部の再生時とPMの集塵・検知時とで、測定回路を切換える必要が無く、1つの測定回路でPMの検出が可能なPMセンサおよびこれを用いたDPFの故障判定装置を提供すること。
【解決手段】電極部と、電極部に測定電圧を印加して静電容量を測定する測定手段と、静電容量の変化に基づいてPMの量に相関のある値を検出する粒子状物質検出手段と、電極部を再生する電極部再生手段と、静電容量に基づいて電極部の再生の完了を判定する再生完了判定手段と、を備えるPMセンサであって、粒子状物質検出手段は、電極部に検出用周波数の測定電圧を印加したときの静電容量の変化に基づいて、PM量に相関のある値を検出し、再生完了判定手段は、電極部の再生の実行時において、電極部に印加する測定電圧の周波数を検出用周波数よりも高い再生用周波数に変更したうえで測定された静電容量に基づいて、電極部の再生の完了を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子状物質検出装置およびこれを用いた排気浄化フィルタの故障検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排気管に、排気に含まれる粒子状物質を捕集する排気浄化フィルタを設け、粒子状物質の排出量を低減する技術が広く用いられている。また、排気浄化フィルタが設けられた車両には、排気浄化フィルタの故障を検知するための装置が設けられる。この故障検知装置は、排気に含まれる粒子状物質の濃度を検出する粒子状物質検出装置を排気浄化フィルタの下流に備え、この粒子状物質検出装置の出力に基づいて、排気浄化フィルタの故障を検知する。
【0003】
上記粒子状物質検出装置として、例えば、多孔質の導電性物質で構成された電極部を備える粒子状物質検出装置が提案されている(特許文献1参照)。この粒子状物質検出装置は、粒子状物質が自然に集塵されて付着することによる電極部の電気抵抗値の変化を測定し、この測定値に基づいて、排気に含まれる粒子状物質の濃度を検出する。電極部に付着させることができる粒子状物質の量には限界があるため、検出後は、例えばヒータなどの加熱手段によって、電極部に付着した粒子状物質を燃焼除去する。
【0004】
また、例えば、静電集塵式の粒子状物質検出装置が提案されている(特許文献2参照)。この静電集塵式の粒子状物質検出装置では、一対の電極板で構成された電極部を排気管内に設け、この検出電極に所定の電圧を印加することで粒子状物質を積極的に集塵して検出電極に付着させる。次に、粒子状物質が付着した電極部の静電容量などの電気的特性を測定することにより、排気の粒子状物質の濃度を検出する。上記特許文献1の粒子状物質検出装置と同様に、検出後は、例えばヒータなどの加熱手段によって、電極部に付着した粒子状物質を燃焼除去する。
【0005】
ところで、電極部に付着した粒子状物質を燃焼除去する際には、付着した粒子状物質の燃焼除去が完了し、電極部の再生が完了したか否かを判定する手段が必要となる。
かかる手段としては、例えば、粒子状物質の付着量に応じて、付着した粒子状物質の燃焼除去に要する所定時間を予め実験を行うことにより求めておき、かかる所定時間が経過したか否かに基づいて、電極部の再生が完了したか否かを判定する手段が挙げられる。
また、上記特許文献2のように、電極部の静電容量に基づいて、電極部の再生が完了したか否かを判定する手段が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−266961号公報
【特許文献2】特開2008−139294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、予め設定した所定時間が経過したか否かに基づいて電極部の再生が完了したか否かを判定する手段では、判定の精度が低く、再生時間を長めに設定する必要がある。そのため、再生による消費電力が増大して燃費が悪化するうえ、粒子状物質の検出頻度が減少する結果、排気浄化フィルタの故障検知回数が減少してしまう。
【0008】
一方、上記特許文献2で用いる粒子状物質の静電容量は、温度によって大きく変動し、運転条件や排気浄化フィルタの再生などの外部要因による影響を大きく受ける。具体的には、粒子状物質の静電容量は、温度が高くなるにつれて増大する。そのため、特に電極部の再生時においては、電極部を550℃以上にまで昇温させることから、電極部に付着した粒子状物質の静電容量は顕著に増大する。
【0009】
このように、電極部の再生時には、検出される粒子状物質の静電容量が顕著に増大するため、測定回路の測定レンジは広く設定される。これに対して、粒子状物質の集塵・検知時には、高い測定精度が求められるとともに、温度が比較的低い条件下での検出であるため、測定レンジは狭く設定される。即ち、電極部の再生時と、粒子状物質の集塵・検知時とでは、静電容量を検出するための測定回路に求められる測定レンジが大きく異なる。そのため、上記特許文献2の粒子状物質検出装置では、測定レンジの異なる少なくとも2つの測定回路を備える必要があり、コストの増加を招いてしまう。
【0010】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、その目的は、電極部の再生時と粒子状物質の集塵・検知時とで、測定回路を切換える必要が無く、1つの測定回路で粒子状物質の検出が可能な粒子状物質検出装置およびこれを用いた排気浄化フィルタの故障判定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため本発明は、内燃機関(例えば、後述のエンジン1)の排気系(例えば、後述の排気管4)に設けられた電極部(例えば、後述の電極板130,131および集塵部120)と、前記電極部に測定電圧を印加して前記電極部の静電容量を測定する測定手段(例えば、後述のセンサ制御ユニット17)と、前記測定手段によって測定される静電容量が前記電極部に粒子状物質が付着することにより変化する特性に基づいて、排気に含まれる粒子状物質の量に相関のある値を検出する粒子状物質検出手段(例えば、後述のECU5およびセンサ制御ユニット17)と、前記粒子状物質検出手段による検出を実行した後、前記電極部に付着している粒子状物質を燃焼除去することで前記電極部を再生する電極部再生手段(例えば、後述のヒータ層122,129およびセンサ制御ユニット17)と、前記測定手段によって測定された静電容量に基づいて、前記電極部再生手段による前記電極部の再生の完了を判定する再生完了判定手段(例えば、後述のECU5,センサ制御ユニット17および図11のステップS64の実行に係る手段)と、を備える粒子状物質検出装置(例えば、後述のPMセンサ11およびECU5)を提供する。この粒子状物質検出装置は、前記測定手段によって印加される交流の測定電圧の周波数を変更する周波数変更手段(例えば、後述のECU5,センサ制御ユニット17および図11のステップS61の実行に係る手段)を備え、前記粒子状物質検出手段は、前記電極部に検出用周波数(例えば、後述の検出用周波数fa)の測定電圧を印加したときの静電容量の変化に基づいて、排気に含まれる粒子状物質の量に相関のある値を検出し、前記再生完了判定手段は、前記電極部再生手段による前記電極部の再生の実行時において、前記周波数変更手段によって前記電極部に印加する測定電圧の周波数を前記検出用周波数よりも高い再生用周波数(例えば、後述の再生用周波数fz)に変更したうえで前記測定手段によって測定された静電容量に基づいて、前記電極部再生手段による前記電極部の再生の完了を判定することを特徴とする。
【0012】
本発明では、粒子状物質の集塵・検知時には、周波数が低い検出用周波数の測定電圧を電極部に印加して静電容量を測定し、測定された静電容量の変化に基づいて排気に含まれる粒子状物質の量に相関のある値を検出する構成とした。また、検出後に実行する電極部の再生時には、検出用周波数よりも高い再生用周波数に変更して静電容量を測定し、測定された静電容量に基づいて電極部の再生の完了を判定する構成とした。
【0013】
ここで、周波数をf、インピーダンスをZcとしたときに、静電容量Cは、1/(2πfZc)で表され、図1に示すように、周波数fが高くなるにつれて静電容量Cは小さくなる特性を有する。そのため、各周波数の静電容量変化は、理論的には図2に示す通りとなるが、実際の粒子状物質では、不特定な要因によって曲線の立ち上り部分や収束位置がずれて、図3に示すような周波数特性を示す。この図3から、周波数を高くすることによって、粒子状物質の静電容量の測定値を小さくできることが分かる。
【0014】
また、再生時における電極部の静電容量Cの温度特性を図4に示す。図4に示すように、電極部を昇温させたときには、粒子状物質(PM)が付着していない場合に比べて、付着している場合の方が静電容量Cの変化が顕著に大きい。具体的には、粒子状物質が電極部に付着していない場合には、電極部の温度がおよそ500℃付近に達した後、電極部の静電容量Cは緩やかに増大する。これに対して、粒子状物質が電極部に付着している場合には、温度T(400℃)で静電容量Cは急激に増大し始め、粒子状物質の燃焼温度である温度T(550℃)まで指数関数的に増大する。この図4から、粒子状物質が付着した電極部の再生時には、静電容量Cは顕著に増大し、集塵・検知時に比べて広い測定レンジが必要であることが分かる。
【0015】
そこで、本発明によれば、静電容量が顕著に増大する電極部の再生時に、粒子状物質の集塵・検知時に比べて高い周波数の測定電圧に切換える構成としたため、測定される静電容量の値を小さくできる。これにより、測定電圧の周波数を高周波数化することによって、より広いレンジでの静電容量の測定が可能となり、測定回路の切換えを行うことなく、測定された静電容量に基づいて再生の完了を判定できる。従って、電極部の再生時と粒子状物質の集塵・検知時とで、測定回路を切換えることなく1つの測定回路で粒子状物質を検出でき、コストを削減できる。
また、例えば1つの測定回路で測定レンジを広げた場合と比べて、精度良く静電容量を測定でき、再生の完了を精度良く判定できる。
【0016】
この場合、前記周波数変更手段は、第1の検出用周波数(例えば、後述の検出用周波数fa)と、当該第1の検出用周波数よりも高い第2の検出用周波数(例えば、後述の検出用周波数fb)の少なくとも2つの検出用周波数に切換え可能であり、前記粒子状物質検出手段(例えば、後述の図14の処理の実行に係る手段)は、前記電極部に前記第1の検出用周波数の測定電圧を印加したときの静電容量の変化に基づいて、排気に含まれる粒子状物質の量に相関のある値を検出し、前記電極部に粒子状物質が付着することによって静電容量が所定の上限値(例えば、後述の閾値C)に達したときには、前記周波数変更手段によって前記第1の検出用周波数から前記第2の検出用周波数に切換えたうえで、排気に含まれる粒子状物質の量に相関のある値の検出を継続することが好ましい。
【0017】
本発明では、粒子状物質の集塵・検知時において、先ず、周波数の低い第1の検出用周波数の測定電圧を印加して静電容量を測定し、測定された静電容量に基づいて排気に含まれる粒子状物質の量に相関のある値を検出する構成とした。また、電極部に粒子状物質が付着することによって静電容量が所定の上限値に達したときには、第1の検出用周波数よりも高い第2の検出用周波数の測定電圧に切換えて静電容量を測定し、測定された静電容量に基づいて排気に含まれる粒子状物質の量に相関のある値の検出を継続する構成とした。
これにより、周波数の低い第1の検出用周波数の測定電圧を印加して測定された静電容量が所定の上限値にまで達したときに、第1の検出用周波数よりも高い第2の検出用周波数の測定電圧に切換えることにより、測定される静電容量の値を小さくでき、より広いレンジでの静電容量の測定が可能となる。そのため、静電容量の変化の検出を継続でき、排気に含まれる粒子状物質の量に相関のある値の検出を継続して行うことができる。従って、検出時間を長く確保することができるため、粒子状物質の量に相関のある値の検出頻度を高めて検出精度を向上できる。また、検出精度を向上できるため、電極部の再生回数を低減でき、燃費を向上できる。
また、この発明によれば、検出時間を長く確保できるため連続測定に近い測定が可能となり、排気浄化フィルタの故障判定以外の内燃機関制御にも利用できる。
【0018】
この場合、前記所定の上限値(例えば、後述の閾値C)は、前記電極部に粒子状物質が付着することにより、前記電極部の静電容量に有意な変化が現れる上限値であることが好ましい。
【0019】
この発明では、第1の検出用周波数の測定電圧を印加して測定した電極部の静電容量が、有意な変化が現れる上限値に達したときに、第1の検出用周波数よりも高い第2の検出用周波数の測定電圧に切換える構成とした。
これにより、第1の検出用周波数の測定電圧を印加することによって静電容量の変化を検出可能な限界まで静電容量の測定を行った後に、第2の検出用周波数に切換えて静電容量の測定を継続できる。そのため、検出時間をより長く確保することができるため、検出頻度をより高めて検出精度をより向上できる。
【0020】
また、本発明では、内燃機関の排気系に設けられ、排気に含まれる粒子状物質を捕集する排気浄化フィルタ(例えば、後述のDPF3)の故障検知装置(例えば、後述のECU5Aおよびセンサ制御ユニット17)を提供する。この故障検知装置は、前記排気浄化フィルタの下流に設けられた請求項2または3記載の粒子状物質検出装置(例えば、後述のPMセンサ11およびECU)と、前記粒子状物質検出手段によって検出された排気に含まれる粒子状物質の量に相関のある値(例えば、後述のPM捕集率X)に基づいて、前記排気浄化フィルタの故障を判定する故障判定手段(例えば、後述のECU5A,センサ制御ユニット17および図16のステップS734〜S736の実行に係る手段)と、前記故障判定手段による故障判定を実行するか否かを判定する実行判定手段(例えば、後述のECU5A,センサ制御ユニット17および図16のステップS727の実行に係る手段)と、前記第1の検出用周波数(例えば、後述の検出用周波数fa)の測定電圧を印加して静電容量を測定していた期間における前記内燃機関からの粒子状物質の排出量を算出する排出量算出手段(例えば、後述のECU5Aおよび図16のステップS725,S728,S732の実行に係る手段)と、を備え、前記実行判定手段は、前記排出量が所定量(例えば、後述の閾値Y)以上であるときには、前記排気浄化フィルタの故障判定を実行すると判定し、前記排出量が前記所定量未満であるときには、前記排気浄化フィルタの故障判定を実行しないと判定し、前記粒子状物質検出手段(例えば、後述の図16のステップS721〜S733の実行に係る手段)は、前記電極部に前記第1の検出用周波数の測定電圧を印加したときの静電容量の変化に基づいて、排気に含まれる粒子状物質の量に相関のある値を検出し、前記電極部に粒子状物質が付着することによって静電容量が前記所定の上限値(例えば、後述の閾値C)に達しかつ前記実行判定手段によって前記排気浄化フィルタの故障判定を実行しないと判定されたときには、前記周波数変更手段によって前記第1の検出用周波数から前記第2の検出用周波数(例えば、後述の検出用周波数fb)に切換えたうえで、排気に含まれる粒子状物質の量に相関のある値の検出を継続することを特徴とする。
【0021】
この発明では、電極部に粒子状物質が付着することによって、第1の検出用周波数の測定電圧で測定された静電容量が所定の上限値に達し、かつ内燃機関からの粒子状物質の排出量が所定量以上であるときには、排気浄化フィルタの故障判定を実行する構成とした。また、静電容量が所定の上限値に達し、かつ内燃機関からの粒子状物質の排出量が所定量未満であるときには、排気浄化フィルタの故障判定を実行せずに、第1の検出用周波数よりも高い第2の検出用周波数に切換えたうえで粒子状物質の量に相関のある値の検出を継続し、故障判定を実行する構成とした。
これにより、第1の検出用周波数の測定電圧を印加した状態で、排気浄化フィルタの故障判定が精度良く行える所定量以上の粒子状物質が排出されていたときに故障判定を実行するため、精度の高い故障判定ができる。一方、故障判定が精度良く行える所定量の粒子状物質が排出されていなかったときには故障判定を実行しないため、誤判定のおそれを回避できる。また、この場合には、より高い周波数の第2の検出用周波数に切換えることによって、第2の検出用周波数の測定電圧で測定された静電容量の変化に基づいて排気に含まれる粒子状物質の量に相関のある値の検出を継続し、かかる値に基づいた故障判定を再度、実行するため、精度の高い故障判定が可能となる。
ところで、測定精度としては周波数の低い測定電圧の方が高いため、より周波数の低い第1の検出用周波数の測定電圧を印加した状態で測定を行うのが望ましい。これに対して、故障判定では、測定レンジを広く使って静電容量の測定および粒子状物質の量に相関のある値の検出を行うことにより、高い判定精度が得られる。そのため、第1の検出用周波数の測定電圧で、複数回に分割して故障判定を実行した場合にあっては、故障判定の精度は大きく低下する。そこで、本発明によれば、第1の検出用周波数の測定電圧下で測定可能な限界まで測定を行った後、粒子状物質の排出量が少ない場合には故障判定を実行せずに、より高い第2の検出用周波数に切換えたうえで測定、検出を継続し、故障判定を実行するため、精度の高い故障判定が可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、電極部の再生時と粒子状物質の集塵・検知時とで、測定回路を切換える必要が無く、1つの測定回路で粒子状物質の検出が可能な粒子状物質検出装置およびこれを用いた排気浄化フィルタの故障判定装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】周波数と静電容量との関係を示す図である。
【図2】各周波数の静電容量変化を示す図である。
【図3】粒子状物質の静電容量の周波数特性を示す図である。
【図4】再生時における電極部の静電容量の温度特性を示す図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係るPMセンサが適用されたエンジンの排気浄化装置の構成を示す図である。
【図6】上記実施形態に係るPMセンサの概略構成を示す図である。
【図7】上記実施形態に係るセンサ素子の斜視図である。
【図8】上記実施形態に係るセンサ素子の分解斜視図である。
【図9】上記実施形態に係るセンサ素子の集塵部内にPMが全面に付着して堆積したときの様子を模式的に示した図である。
【図10】上記実施形態に係るECUによるPMセンサの制御手順を示すフローチャートである。
【図11】上記実施形態に係るPMセンサの電極部再生処理の手順を示すフローチャートである。
【図12】再生時における電極部の静電容量の周波数特性を示す図である。
【図13】再生時における電極部の静電容量変化を示す図である。
【図14】上記実施形態に係るPMセンサのPM検知処理の手順を示すフローチャートである。
【図15】周波数の切換えを実行したときの静電容量の変化を示す図である。
【図16】本発明の第2実施形態に係るPMセンサのPM検知処理の手順を示すフローチャートである。
【図17】PM総排出量と静電容量との関係を示す図である。
【図18】PM捕集率とPMエミッション値との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、第2実施形態以後の説明において、第1実施形態と共通する構成については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0025】
<第1実施形態>
図5は、本実施形態に係る粒子状物質検出装置が適用された内燃機関の排気浄化装置の構成を示す模式図である。
内燃機関(以下単に「エンジン」という)1は、各気筒内に燃料を直接噴射するディーゼルエンジンであり、各気筒には図示しない燃料噴射弁が設けられている。これら燃料噴射弁は、電子制御ユニット(以下、「ECU(Electric Control Unit)」という)5により電気的に接続されており、燃料噴射弁の開弁時間および閉弁時間は、ECU5により制御される。
【0026】
エンジン1の排気が流通する排気管4には、排気に含まれる炭素を主成分とした粒子状物質(以下、「PM(Particulate Matter)」という)を捕集し排気を浄化する排気浄化フィルタ(以下、「DPF(Diesel Particulate Filter)」という)3と、排気に含まれるPMを検出する粒子状物質検出装置(以下、「PMセンサ」という)11とが、上流側からこの順で設けられている。
【0027】
DPF3は、多孔質体のフィルタ壁を備え、排気がこのフィルタ壁の微細な孔を通過する際に、排気に含まれるPMをフィルタ壁の表面およびフィルタ壁中の微細孔に堆積させることにより、これを捕集する。
【0028】
図6は、PMセンサ11の概略構成を示す図である。
PMセンサ11は、排気管4の内部のうちDPF3の下流側に設けられたセンサ素子12と、ECU5に接続され、このセンサ素子12を制御するセンサ制御ユニット17と、を備える。PMセンサ11は、以下に示すように、排気管4内を流通する排気に含まれるPMが付着したセンサ素子12の静電容量を測定し、この測定値に基づいて、排気管4内を流通する排気中のPMを検出する。
【0029】
センサ制御ユニット17は、集塵用DC電源13と、インピーダンス測定器14と、センサ素子12の温度、より詳しくは後述の電極部の温度を制御する温度制御装置15と、を含んで構成される。
【0030】
図7は、センサ素子12の斜視図である。
図7に示すように、センサ素子12は、PMを含む排気が通過する通気孔を有しており、この通気孔により集塵部120が形成される。排気中に含まれるPMは、この集塵部120の内壁に付着して堆積する。
【0031】
図8は、センサ素子12の分解斜視図である。
センサ素子12は、図8に示すように、一対の電極板130,131を、板状のスペーサ125A,125Bを介装して組み合わせ、ヒータ層122,129およびアルミナプレート121で挟持することにより構成される。これにより、電極板130,131、スペーサ125A,125Bで囲まれた集塵部120が形成される。
【0032】
電極板130は、誘電体層124と、集塵電極層123とを積層することにより形成される。また、電極板131は、誘電体層126と、測定電極層127と、集塵電極層128とを積層することにより形成される。
なお、これら電極板130,131と、上述の集塵部120とにより、本実施形態の電極部が構成される。
【0033】
測定電極層127は、一対の櫛形の測定電極127A,127Bを備える。具体的には、測定電極127A,127Bは、測定電極層127の一端側の集塵部120に対応する位置に形成された一対の櫛歯部と、この櫛歯部から他端側へかけて延びる一対の櫛本体部と、を含んで構成される。より具体的には、測定電極127A,127Bは、一方の櫛形の測定電極127Aの櫛歯部と他方の櫛形の測定電極127Bの櫛歯部とが相互に挟み合うように対向配置されている。
また、一対の櫛本体部は、インピーダンス測定器14に電気的に接続されている。
【0034】
ここで、測定電極層127に櫛形の測定電極127A,127Bを備える本実施形態のPM検出メカニズムについて説明する。
図9は、本実施形態のセンサ素子12の集塵部120内にPMが全面に付着して堆積したときの様子を模式的に示した図である。図9に示すように、集塵部120に集塵されたPMは、櫛形の測定電極127A,127Bの櫛歯部上に誘電体層を介して堆積する。このとき、隣接する測定電極127A,127B間におけるもれ電界が、堆積したPMによる影響を受け、測定電極127A,127B間の静電容量が変化する。この静電容量の変化は、PMの付着量に相関があることから、この静電容量の変化を測定することにより、排気に含まれるPMを検出できる。なお、以下の説明において、センサ素子12の静電容量とは、センサ素子12のうちPMの付着量に相関のある集塵部120の静電容量を意味する。
【0035】
集塵電極層123,128は、タングステン導体層からなる集塵電極123A,128Aを備える。この集塵電極123A,128Aは、集塵電極層123,128の一端側の集塵部120に対応する位置に略正方形状に形成された導体部と、この導体部からアルミナ基板の他端側へかけて線状に延びる導線部と、を含んで構成される。
また、集塵電極123A,128Aの導線部は、集塵用DC電源13に電気的に接続されている。
なお、集塵電極123A、128Aの導体部の一辺の長さは、約10mmである。
【0036】
ヒータ層122,129は、ヒータ配線122A,129Aを備え、これらヒータ配線122A,129Aは、温度制御装置15およびインピーダンス測定器14に電気的に接続されている。
また、アルミナプレート121は、略矩形状のアルミナ基板であり、厚みは約1mmである。
【0037】
集塵用DC電源13は、集塵電極層123,128に備えられた集塵電極123A,128Aの導線部に電気的に接続されている。集塵用DC電源13は、ECU5から送信された制御信号に基づいて動作し、後述する測定電圧よりも大きい所定の集塵電圧を集塵電極層123,128間に印加する。電極部にPMが未付着の状態では静電容量の有意な変化が検出できず、測定が不可能であるところ、集塵電圧を印加してPMの付着を促進することにより、ある程度PMが付着して静電容量の有意な変化が検出できる状態を素早く形成できる。
【0038】
インピーダンス測定器14は、測定電極層127の一対の櫛本体部に電気的に接続されている。インピーダンス測定器14は、ECU5から送信された制御信号に基づいて動作し、所定の測定電圧および測定周期のもとで、センサ素子12の静電容量を検出し、検出した静電容量に略比例した検出信号をECU5に出力する。
【0039】
温度制御装置15は、各電極板130,131に接して設けられたヒータ層122,129のヒータ配線122A,129Aに電気的に接続されており、これらヒータ層122,129に電力を供給するヒータ用DC電源(図示せず)を含んで構成される。
ヒータ用DC電源は、ECU5から送信された制御信号に基づいて動作し、ヒータ層122,129に所定の電流を通電する。ヒータ層122,129は、ヒータ用電源から電流が供給されると発熱し、各電極板130,131を加熱する。これにより、各電極板130,131を加熱し、集塵部120に付着したPMを燃焼除去する。
なお、電極部の温度は、温度制御装置15により検出されるヒータ配線の抵抗値に基づいて算出される。
【0040】
ECU5は、各種センサからの入力信号波形を整形し、電圧レベルを所定のレベルに修正し、アナログ信号値をデジタル信号値に変換する等の機能を有する入力回路と、中央演算処理ユニット(以下「CPU」という)とを備える。この他、ECU5は、CPUで実行される各種演算プログラムおよび演算結果等を記憶する記憶回路と、センサ制御ユニット17およびエンジン1の燃料噴射弁等に制御信号を出力する出力回路とを備える。
以上のようなハードウェア構成により、ECU5には、以下に示すPMセンサの制御処理を実行するための粒子状物質検出部、再生完了判定部および周波数変更部の各モジュールが構成される。
【0041】
次に、図10〜14を参照して、ECUによるPMセンサの制御について説明する。
図10は、ECUによるPMセンサの制御手順を示すフローチャートである。このPMセンサの制御処理は、ECUにより所定の周期で繰り返し実行される。
【0042】
ステップS1では、電極部に印加する測定電圧の周波数fが、周波数が低く高感度測定が可能な検出用周波数faに設定されていない場合には、faへの切換えを実行する。その後、ステップS2に移る。
検出用周波数faとしては、後述する再生用周波数fzよりも低い周波数に設定される。例えば、検出用周波数faは、再生用周波数fzに対して、fa=fz×10−2(Hz)の関係式を満たすように設定される。
【0043】
ステップS2では、電極部の静電容量の測定を開始する。具体的には、ステップS1で切換え設定した検出用周波数faの測定電圧を電極部に印加し、静電容量の測定を開始する。その後、ステップS3に移る。
【0044】
ステップS3では、電極部の温度Tが100℃以上であるか否かを判定する。この判定がYESの場合には、エンジンの始動時に発生して電極部に付着した凝縮水が揮発する状態にあると判断し、ステップS4に移る。一方、NOの場合には、この判定を再度実行する。
なお、電極部の温度Tは、温度制御装置により検出されたヒータ配線の抵抗値に基づいて算出される。より詳しくは、電極部の温度Tは、温度制御装置により検出されたヒータ配線122A,129Aの抵抗値に基づいて、ECU5により算出される。
【0045】
ステップS4では、測定された電極部の静電容量Cが、所定の閾値C以下であるか否かを判定する。この判定がYESの場合には、電極部に付着していた凝縮水が完全に揮発して除去されたと判断し、ステップS5に移る。一方、この判別がNOの場合には、凝縮水がまだ電極部に付着していると判断し、この判別を再度実行する。
なお、所定の閾値Cとしては、図4に示した温度T(PMの温度特性変化が増大して静電容量が急激に増大しはじめる温度であり、具体的には400℃)以下の所定温度におけるPMが付着した電極部の静電容量に設定される。凝縮水のような液体は導電率が高いため、その静電容量はPMに比して顕著に大きいことから、C以下であれば、凝縮水は完全に除去されたと判断できる。
【0046】
ステップS5では、電極部の再生の有無を判定する。具体的には、測定された電極部の静電容量Cが所定の閾値Cを超えているか否かを判定する。この判定がYESの場合には、電極部の再生処理が必要であると判断し、ステップS6の電極部再生処理に移る。一方、NOの場合には、電極部の再生処理は不要であると判断し、ステップS7のPM検知処理に移る。
所定の閾値Cは、予め実験を行うことにより設定される。例えば、後述する図13で示すように、PMが付着していない電極部の静電容量に設定される。
【0047】
ステップS6では、電極部の再生処理を実行する。その後、ステップS7のPM検知処理に移る。本ステップにより、電極部に付着していたPMが燃焼除去される。この電極部の再生処理の詳細については後述する。
【0048】
ステップS7では、PMの検知処理を実行する。その後、本PMセンサの制御処理を終了する。本ステップにより、排気中のPM濃度や捕集率が算出される。このPM検知処理の詳細については後述する。
【0049】
次に、PMセンサの電極部再生処理の手順について説明する。
図11は、PMセンサの電極部再生処理の手順を示すフローチャートである。
【0050】
ステップS61では、電極部に印加されている測定電圧の検出用周波数faを、再生用周波数fzに切換える処理を実行する。その後、ステップS62に移る。
再生用周波数fzとしては、上述の検出用周波数faよりも高い周波数に設定され、例えば、再生用周波数fzは、検出用周波数faに対して、fz=fa×10(Hz)の関係式を満たすように設定される。
【0051】
ここで、検出用周波数faと再生用周波数fzについて、図12を参照して説明する。
図12は、再生時における電極部の静電容量の周波数特性を示す図である。図12に示すように、先ず、検知処理時における集塵の際には、検出用周波数faの集塵電圧を電極部に印加することにより、PMが積極的に電極部に付着するため、静電容量Cは急激な立ち上りを示す。その後、検出用周波数faの測定電圧を電極部に印加すると、PMが電極部に自然付着していくにつれて、静電容量Cは緩やかに上昇した後、やがて飽和する。
再生処理時には、電極部の温度TはPMの温度特性変化が増大しはじめる温度T(400℃)を超えるため、静電容量Cは指数関数的に増大する。そして、電極部の温度TがPM燃焼温度Tに達したときに、PMは燃焼除去されるため、静電容量Cは急激に低下する。
【0052】
このように、再生用周波数fzに比して低い検出用周波数faの場合には、検知処理時と再生処理時とでは測定される静電容量の値が大きく異なる。そのため、検知処理時の測定感度を維持するためには、検知処理時には測定レンジ1の測定回路を用い、再生処理時にはより広い測定レンジ2の測定回路に切換える必要がある。これに対して本実施形態では、再生処理時に、例えば電極部の温度TがTに達したときに、検出用周波数faから再生用周波数fzへの切換えを実行し、これにより、再生時における電極部の静電容量Cの値を小さくして、再生処理時の測定回路の切換えを不要とするものである。従って、再生用周波数fzは、測定される静電容量Cの値が測定レンジ1の範囲内となるように、即ち検出用周波数faのときの測定レンジと同等の測定レンジとなるように、設定される。
【0053】
図11に戻って、ステップS62では、ヒータをオンにし、PMセンサの電極部の温度を昇温させる。その後、ステップS63に移る。
具体的には、温度制御装置により、電極部の温度を図4に示したPMの燃焼温度T(550℃)まで昇温させる。
【0054】
ステップS63では、電極部の温度Tが、PMの燃焼温度Tに達したか否かを判定する。この判定がYESの場合には、ステップS64に移り、NOの場合には、この判定を再度実行する。
なお、電極部の温度Tは、温度制御装置により検出されたヒータ配線の抵抗値に基づいて算出される。
【0055】
ステップS64では、電極部の静電容量Cが所定の閾値C以下であるか否かを判定する。この判定がYESの場合には、電極部の再生が完了したものと判断し、ステップS65に移る。一方、NOの場合には、この判定を再度実行する。
【0056】
ここで、所定の閾値Cについて、図13を参照して説明する。
図13は、再生時における電極部の静電容量変化を示す図である。図13に示すように、電極部にPMが付着していない場合には、電極部自体の温度特性により、静電容量Cの初期状態から温度の上昇とともに静電容量は増大する。そして、電極部の温度TがPM燃焼温度Tに達した後、静電容量は緩やかに減少し、所定の静電容量で収束する。静電容量の立ち上り部分におけるオーバーシュートは、ヒータ制御のオーバーシュート、検知できないほど微量のPM、静電容量測定用の測定電極とヒータ間に生じる温度差などが要因と考えられる。
これに対して、電極部にPMが付着している場合には、電極部およびPMの温度特性により、静電容量Cの初期状態から温度の上昇とともに静電容量は指数関数的に増大する。そして、電極部の温度TがPM燃焼温度Tに達すると、PMは燃焼除去されるため、静電容量は急激に小さくなり、PMが付着していなかった場合と同一の静電容量で収束する。このときの収束値をCと設定し、電極部の再生の完了の判定基準として用いる。
【0057】
図11に戻って、ステップS65では、ヒータをオフにし、電極部再生処理を終了する。
【0058】
次に、PMセンサのPM検知処理の手順について説明する。
図14は、PMセンサのPM検知処理の手順を示すフローチャートである。
【0059】
ステップS701では、電極部に印加する測定電圧の周波数fが、周波数が低く高感度測定が可能な検出用周波数faに設定されていない場合には、faへの切換えを実行する。その後、ステップS702に移る。
【0060】
ステップS702では、検出用周波数faのときの静電容量変化に応じたPM濃度マップへの切換えを実行する。その後、ステップS703に移る。
ここで、排気に含まれるPMの濃度は、予め作成されてECUに格納された静電容量変化に応じたPM濃度マップを参照することにより、算出される。上述したように、静電容量変化は測定電圧の周波数に応じて変動することから、ステップS701で実行した検出用周波数faの切換えに伴って、検出用周波数faのときの静電容量変化に応じたPM濃度マップの切換えを実行するものである。
【0061】
ステップS703では、PMの集塵を開始する。その後、ステップS704に移る。
具体的には、電極部に検出用周波数faの集塵電圧を印加し、排気に含まれるPMを積極的に捕集する。集塵は、例えば車速が0になったときなど、予め決定されたタイミングで開始する。
【0062】
ステップS704では、電極部の静電容量Cが所定の閾値C以上であるか否かを判定する。この判定がYESの場合には、測定される静電容量に有意な変化が現れ、その変化に基づいてPM濃度の算出が可能な程度にPMが捕集されたと判断し、ステップS705に移る。一方、NOの場合には、この判定を再度実行する。
所定の閾値Cは、予め実験を行うことにより、測定される静電容量に有意な変化が現れる程度に、電極部にPMが付着したときの静電容量に設定される。
【0063】
ステップS705では、PMの集塵を停止する。その後、ステップS706に移る。
具体的には、電極部に対する検出用周波数faの集塵電圧の印加を停止し、PMの捕集を停止する。
【0064】
ステップS706では、電極部の静電容量Cが所定の閾値C未満であるか否かを判定する。この判定がYESの場合には、PMセンサが静電容量の変化を検知可能な状態であると判断し、ステップS707に移る。一方、NOの場合には、PMセンサが静電容量の変化を検知不可能な状態であると判断し、ステップS708に移る。
所定の閾値Cは、予め実験を行うことにより、静電容量に有意な変化が現れる上限値に設定される。
【0065】
ステップS707では、排気中のPM濃度を算出する。算出後は、ステップS706に戻る。
具体的には、PM濃度は、検出用周波数faのときの静電容量変化に応じたPM濃度マップを参照することにより、算出される。
【0066】
ステップS708では、現在設定されている測定電圧の検出用周波数fが、再生用周波数fzに達しているか否かを判定する。この判定がYESの場合には、これ以上高い周波数への切換えを実行した場合にあっては測定回路の測定レンジを超えてしまうため、周波数の切換えを実行せずにPM検知処理を終了する。一方、NOの場合には、ステップS709に移る。
【0067】
ステップS709では、より高い検出用周波数への切換えを実行する。その後、ステップS710に移る。
【0068】
ステップS710では、切換え後の検出用周波数のときの静電容量変化に応じたPM濃度マップへの切換えを実行する。その後、ステップS706に戻る。
【0069】
ここで、検出用周波数の切換えについて、図15を参照して説明する。
図15は、周波数の切換えを実行したときの静電容量の変化を示す図である。図15に示すように、先ず、低い検出用周波数faの集塵電圧を印加してPMの捕集を積極的に行った後、検出用周波数faの測定電圧を印加すると、時間の経過とともに電極部にPMが自然付着することにより、静電容量Cは増大する。そして、静電容量Cが予め設定されたPM濃度を検知可能な上限値Cに達したときに、より高い周波数fbへの切換えを実行する。上述したように、周波数が高くなるにつれて静電容量は小さくなる一方で、検知可能な上限値はCで一定であることから、図15に示すように、この周波数の切換えにより静電容量の測定の継続が可能となる。周波数fbでの測定を継続し、再び静電容量がCに達したときに、より高い周波数fcへの切換えを実行する。このような周波数の切換え処理を、周波数fが再生用周波数fzに達するまで繰り返し実行する。
なお、切換える検出用周波数としては、例えば、切換え前の検出用周波数に所定値α(>0)を加算して得られた検出用周波数の他、切換え前の検出用周波数に所定値αを乗算して得られた検出用周波数が挙げられる。
【0070】
なお、本実施形態のPM検知処理により算出されたPM濃度は、例えばDPFの故障検知に利用される。また、本実施形態のPM検知処理では、検出用周波数を切換えることによって静電容量の測定を継続して実行できるため、例えば内燃機関の燃焼制御や、PM堆積計算の補正などに利用される。
【0071】
本実施形態によれば、以下の効果が奏される。
本実施形態では、PMの集塵・検知時には、周波数が低い検出用周波数faの測定電圧を電極部に印加して静電容量を測定し、測定された静電容量の変化に基づいて排気に含まれるPMの量に相関のある値を検出する構成とした。また、検出後に実行する電極部の再生時には、検出用周波数faよりも高い再生用周波数fzに変更して静電容量を測定し、測定された静電容量に基づいて電極部の再生の完了を判定する構成とした。
即ち、本実施形態によれば、静電容量が顕著に増大する電極部の再生時に、PMの集塵・検知時に比べて高い周波数の測定電圧に切換える構成としたため、測定される静電容量の値を小さくできる。これにより、測定電圧の周波数を高周波数化することによって、より広いレンジでの静電容量の測定が可能となり、測定回路の切換えを行うことなく、測定された静電容量に基づいて再生の完了を判定できる。従って、電極部の再生時とPMの集塵・検知時とで、測定回路を切換えることなく1つの測定回路でPMを検出でき、コストを削減できる。
また、例えば1つの測定回路で測定レンジを広げた場合と比べて、精度良く静電容量を測定でき、再生の完了を精度良く判定できる。
【0072】
また、本実施形態では、PMの集塵・検知時において、先ず、周波数の低い検出用周波数faの測定電圧を印加して静電容量を測定し、測定された静電容量に基づいて排気に含まれるPMの量に相関のある値を検出する構成とした。また、電極部にPMが付着することによって静電容量が所定の上限値Cに達したときには、検出用周波数faよりも高い検出用周波数fbの測定電圧に切換えて静電容量を測定し、測定された静電容量に基づいて排気に含まれるPMの量に相関のある値の検出を継続する構成とした。
これにより、周波数の低い検出用周波数faの測定電圧を印加して測定された静電容量が所定の上限値Cにまで達したときに、検出用周波数faよりも高い検出用周波数fbの測定電圧に切換えることにより、測定される静電容量の値を小さくでき、より広いレンジでの静電容量の測定が可能となる。そのため、静電容量の変化の検出を継続でき、排気に含まれるPMの量に相関のある値の検出を継続して行うことができる。従って、検出時間を長く確保することができるため、PMの量に相関のある値の検出頻度を高めて検出精度を向上できる。また、検出精度を向上できるため、電極部の再生回数を低減でき、燃費を向上できる。
また、本実施形態によれば、検出時間を長く確保できるため連続測定に近い測定が可能となり、DPFの故障判定以外のエンジン制御にも利用できる。
【0073】
また、本実施形態では、検出用周波数faの測定電圧を印加して測定した電極部の静電容量が、有意な変化が現れる上限値Cに達したときに、検出用周波数faよりも高い検出用周波数fbの測定電圧に切換える構成とした。
これにより、検出用周波数faの測定電圧を印加することによって静電容量の変化を検出可能な限界まで静電容量の測定を行った後に、検出用周波数fbに切換えて静電容量の測定を継続できる。そのため、検出時間をより長く確保することができるため、検出頻度をより高めて検出精度をより向上できる。
【0074】
<第2実施形態>
第2実施形態は、PMセンサのPM検知処理の手順が第1実施形態と異なる。具体的には、検出用周波数の切換えを実行する条件が第1実施形態と異なり、ECUの構成が第1実施形態と異なる。
具体的には、図示しない本実施形態のECU5Aは、ECU5の構成に加えて、以下に示すPMセンサの制御処理を実行するための故障判定部、実行判定部および排出量算出部
の各モジュールが構成される。
また、本実施形態のECU5Aには、警告灯が接続される。警告灯は、DPFが故障した状態であることを示すためのものであり、例えば、車両のメータパネルに設けられる。警告灯は、ECU5Aから送信された制御信号に基づいて点灯し、これにより、運転者はDPFが故障した状態であることを認識する。
【0075】
以下、本実施形態に係るPMセンサのPM検知処理の手順について説明する。
図16は、本実施形態に係るPMセンサのPM検知処理の手順を示すフローチャートである。
【0076】
ステップS721では、電極部に印加する測定電圧の周波数fが、周波数が低く高感度測定が可能な検出用周波数faに設定されていない場合には、faへの切換えを実行する。その後、ステップS722に移る。
【0077】
ステップS722では、PMの集塵を開始する。その後、ステップS723に移る。
具体的には、電極部に検出用周波数faの集塵電圧を印加し、排気に含まれるPMを積極的に捕集する。集塵は、例えば車速が0になったときなど、予め決定されたタイミングで開始する。
【0078】
ステップS723では、電極部の静電容量Cが所定の閾値C以上であるか否かを判定する。この判定がYESの場合には、測定される静電容量に有意な変化が現れ、その変化に基づいてPM濃度の算出が可能な程度にPMが捕集されたと判断し、ステップS724に移る。一方、NOの場合には、この判定を再度実行する。
所定の閾値Cは、予め実験を行うことにより、測定される静電容量に有意な変化が現れる程度に、電極部にPMが付着したときの静電容量に設定される。
【0079】
ステップS724では、PMの集塵を停止する。その後、ステップS725に移る。
具体的には、電極部に対する検出用周波数faの集塵電圧の印加を停止し、PMの捕集を停止する。
【0080】
ステップS725では、エンジンから排出されてDPFに流入するPM量Yの積算を開始する。PM量Yの積算は、PM量Yが「0」でない場合には「0」にリセットした後に開始する。その後、ステップS726に移る。
なお、PM量Yは、例えば、エンジン回転数および燃料噴射量に応じた所定のマップを検索することにより算出される。また、例えば、DPFの上流側の排気管内に、別のPMセンサを設け、このPMセンサの出力に基づいてPM量Yを算出することもできる。
【0081】
ステップS726では、電極部の静電容量Cが所定の閾値C以上であるか否かを判定する。この判定がYESの場合には、PMセンサが静電容量の変化を検知不可能な状態になったと判断し、ステップS727に移る。一方、NOの場合には、PMセンサが静電容量の変化を検知可能な状態であると判断し、測定を継続してこの判定を再度実行する。
所定の閾値Cは、予め実験を行うことにより、静電容量に有意な変化が現れる上限値に設定される。
【0082】
ステップS727では、DPFの故障判定を実行するか否かを判定する。具体的には、積算されたPM量Yが、所定の閾値Y以上であるか否かを判定する。この判定がYESの場合には、十分な精度でPM捕集率を算出でき精度の高いDPF故障判定が可能である程、多量のPMが排出されてDPFに流入したと判断し、ステップS728に移る。一方、NOの場合には、少量のPMしかDPFに流入しておらず、精度の高いDPF故障判定が不可能であると判断し、ステップS730に移る。
【0083】
ステップS728では、上記ステップS727で、精度の高いDPF故障判定が可能である程、多量のPMが排出されてDPFに流入したと判断されたため、DPFに流入するPM量Yの積算を終了する。その後、ステップS729に移る。
【0084】
ステップS729では、DPFにおけるPM捕集率Xを算出する。算出後は、ステップS734に移る。
具体的には、下記式(1)により、PM捕集率X(%)を算出する。下記式(1)において、Yは、ステップS725で積算を開始しステップS728で積算を終了して取得したPMの積算量であり、Mは、PM量Yの積算期間(即ち、検出用周波数faを印加して静電容量を測定していた期間)において、DPFから流出したPMの総量である。なお、このMは、予め実験を行うことにより設定されてECUに格納された、図17に示すようなPM総量(DPFから流出したPMの総量)と静電容量Cとの関係に基づいて算出される。
[数1]
X(%)=(1−M/Y)×100 ・・・式(1)
【0085】
ステップS730では、上記ステップS727で、少量のPMしかDPFに流入しておらず、精度の高いDPF故障判定が不可能であると判断されたため、検出用周波数faから、より高い検出用周波数fbへの切換えを実行する。これにより、測定される静電容量の値を小さくでき、静電容量の測定の継続が可能となる。その後、ステップS731に移る。
【0086】
ステップS731では、電極部の静電容量Cが所定の閾値C以上であるか否かを判定する。この判定がYESの場合には、PMセンサが静電容量の変化を検知不可能な状態になったと判断し、ステップS732に移る。一方、NOの場合には、PMセンサが静電容量の変化を検知可能な状態であると判断し、この判定を再度実行する。
所定の閾値Cは、予め実験を行うことにより、静電容量に有意な変化が現れる上限値に設定される。
【0087】
ステップS732では、DPFに流入するPM量Yの積算を終了する。その後、ステップS733に移る。
【0088】
ステップS733では、DPFにおけるPM捕集率Xを算出する。算出後は、ステップS734に移る。
具体的には、下記式(2)により、PM捕集率X(%)を算出する。下記式(2)において、Yは、ステップS725で積算を開始しステップS732で積算を終了して取得したPMの積算量であり、Mは、PM量Yの積算期間(即ち、検出用周波数faを印加して静電容量を測定していた期間と検出用周波数fbを印加して静電容量を測定していた期間の合計期間)においてDPFから流出したPMの総量である。なお、このMは、予め実験を行うことにより設定されてECUに格納された、図17に示すようなPM総量(DPFから流出したPMの総量)と静電容量Cとの関係に基づいて算出される。
[数2]
X(%)=(1−M/Y)×100 ・・・式(2)
【0089】
ステップS734では、DPFの故障判定を実行する。具体的には、ステップS729またはステップS733で算出されたPM捕集率Xが、所定の閾値X以下であるか否かを判定する。この判定がNOの場合には、ステップS735に移ってDPFは正常であると判断し、本PM検知処理を終了する。一方、YESの場合には、ステップS736に移ってDPFは故障していると判断し、警告灯を点灯させて、本PM検知処理を終了する。
なお、所定の閾値Xは、予め実験を行うことにより設定される。具体的には、所定の閾値Xは、図18に示すようなPM捕集率XとPMエミッション値との関係に基づいて、PMエミッション値が所定値となるときのPM捕集率Xと、PMエミッション値が所定値+αとなるときのPM捕集率Xとの間の値に設定される。
【0090】
本実施形態によれば、第1実施形態の効果に加えて、さらに以下の効果が奏される。
本実施形態では、電極部にPMが付着することによって、検出用周波数faの測定電圧で測定された静電容量が所定の上限値Cに達し、かつエンジンからのPMの排出量が所定量Y以上であるときには、DPFの故障判定を実行する構成とした。また、静電容量が所定の上限値Cに達し、かつエンジンからのPMの排出量が所定量Y未満であるときには、DPFの故障判定を実行せずに、検出用周波数faよりも高い検出用周波数fbに切換えたうえでPMの量に相関のある値の検出を継続し、故障判定を実行する構成とした。
これにより、検出用周波数faの測定電圧を印加した状態で、DPFの故障判定が精度良く行える所定量Y以上のPMが排出されていたときに故障判定を実行するため、精度の高い故障判定ができる。一方、故障判定が精度良く行える所定量Y以上のPMが排出されていなかったときには故障判定を実行しないため、誤判定のおそれを回避できる。また、この場合には、より高い周波数の検出用周波数fbに切換えることによって、検出用周波数fbの測定電圧で測定された静電容量の変化に基づいて排気に含まれるPMの量に相関のある値の検出を継続し、かかる値に基づいた故障判定を再度、実行するため、精度の高い故障判定が可能となる。
ところで、測定精度としては周波数の低い測定電圧の方が高いため、より周波数の低い検出用周波数faの測定電圧を印加した状態で測定を行うのが望ましい。これに対して、故障判定では、測定レンジを広く使って静電容量の測定およびPMの量に相関のある値の検出を行うことにより、高い判定精度が得られる。そのため、検出用周波数faの測定電圧で、複数回に分割して故障判定を実行した場合にあっては、故障判定の精度は大きく低下する。そこで、本実施形態によれば、検出用周波数faの測定電圧下で測定可能な限界まで測定を行った後、PMの排出量が少ない場合には故障判定を実行せずに、より高い検出用周波数fbに切換えたうえで測定、検出を継続し、故障判定を実行するため、精度の高い故障判定が可能となる。
【0091】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良は本発明に含まれる。
例えば、上記第2実施形態では、DPFのPM捕集率Xに基づいてDPFの故障判定を実行したが、これに限定されない。DPFに流入するPM量Yの積算の代わりに、エンジンから排出される排気量、即ちDPFに流入する排気量を積算してもよい。排気量は、エンジンの吸気量などに基づいて算出される。この場合には、PM捕集率Xの代わりに、排気量の積算期間においてDPFから流出したPMの総量を排気量で除して平均PM濃度を算出し、この平均PM濃度に基づいてDPFの故障判定を実行する。
また、DPFに流入するPM量とDPFから流出したPM量から直接、DPFの故障判定を実行してもよい。
【符号の説明】
【0092】
1…エンジン(内燃機関)
11…PMセンサ(粒子状物質検出装置)
12…センサ素子
120…集塵部(電極部)
122,129…ヒータ層(電極部再生手段)
130,131…電極板(電極部)
17…センサ制御ユニット(測定手段、粒子状物質検出手段、電極部再生手段、再生完了判定手段、周波数変更手段)
3…DPF
4…排気管(排気系)
5…ECU(粒子状物質検出装置、再生完了判定手段、周波数変更手段)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気系に設けられた電極部と、
前記電極部に測定電圧を印加して前記電極部の静電容量を測定する測定手段と、
前記測定手段によって測定される静電容量が前記電極部に粒子状物質が付着することにより変化する特性に基づいて、排気に含まれる粒子状物質の量に相関のある値を検出する粒子状物質検出手段と、
前記粒子状物質検出手段による検出を実行した後、前記電極部に付着している粒子状物質を燃焼除去することで前記電極部を再生する電極部再生手段と、
前記測定手段によって測定された静電容量に基づいて、前記電極部再生手段による前記電極部の再生の完了を判定する再生完了判定手段と、を備える粒子状物質検出装置であって、
前記測定手段によって印加される交流の測定電圧の周波数を変更する周波数変更手段を備え、
前記粒子状物質検出手段は、前記電極部に検出用周波数の測定電圧を印加したときの静電容量の変化に基づいて、排気に含まれる粒子状物質の量に相関のある値を検出し、
前記再生完了判定手段は、前記電極部再生手段による前記電極部の再生の実行時において、前記周波数変更手段によって前記電極部に印加する測定電圧の周波数を前記検出用周波数よりも高い再生用周波数に変更したうえで前記測定手段によって測定された静電容量に基づいて、前記電極部再生手段による前記電極部の再生の完了を判定することを特徴とする粒子状物質検出装置。
【請求項2】
前記周波数変更手段は、第1の検出用周波数と、当該第1の検出用周波数よりも高い第2の検出用周波数の少なくとも2つの検出用周波数に切換え可能であり、
前記粒子状物質検出手段は、前記電極部に前記第1の検出用周波数の測定電圧を印加したときの静電容量の変化に基づいて、排気に含まれる粒子状物質の量に相関のある値を検出し、前記電極部に粒子状物質が付着することによって静電容量が所定の上限値に達したときには、前記周波数変更手段によって前記第1の検出用周波数から前記第2の検出用周波数に切換えたうえで、排気に含まれる粒子状物質の量に相関のある値の検出を継続することを特徴とする請求項1記載の粒子状物質検出装置。
【請求項3】
前記所定の上限値は、前記電極部に粒子状物質が付着することにより、前記電極部の静電容量に有意な変化が現れる上限値であることを特徴とする請求項2記載の粒子状物質検出装置。
【請求項4】
内燃機関の排気系に設けられ、排気に含まれる粒子状物質を捕集する排気浄化フィルタの故障検知装置であって、
前記排気浄化フィルタの下流に設けられた請求項2または3記載の粒子状物質検出装置と、
前記粒子状物質検出手段によって検出された排気に含まれる粒子状物質の量に相関のある値に基づいて、前記排気浄化フィルタの故障を判定する故障判定手段と、
前記故障判定手段による故障判定を実行するか否かを判定する実行判定手段と、
前記第1の検出用周波数の測定電圧を印加して静電容量を測定していた期間における前記内燃機関からの粒子状物質の排出量を算出する排出量算出手段と、を備え、
前記実行判定手段は、前記排出量が所定量以上であるときには、前記排気浄化フィルタの故障判定を実行すると判定し、前記排出量が前記所定量未満であるときには、前記排気浄化フィルタの故障判定を実行しないと判定し、
前記粒子状物質検出手段は、前記電極部に前記第1の検出用周波数の測定電圧を印加したときの静電容量の変化に基づいて、排気に含まれる粒子状物質の量に相関のある値を検出し、前記電極部に粒子状物質が付着することによって静電容量が前記所定の上限値に達しかつ前記実行判定手段によって前記排気浄化フィルタの故障判定を実行しないと判定されたときには、前記周波数変更手段によって前記第1の検出用周波数から前記第2の検出用周波数に切換えたうえで、排気に含まれる粒子状物質の量に相関のある値の検出を継続することを特徴とする排気浄化フィルタの故障判定装置。
















































【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−220974(P2011−220974A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−93375(P2010−93375)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】