説明

粒状入浴剤組成物の製造方法

【課題】入浴剤成分である無機塩類、有機酸およびその塩類、薬用植物、色素、香料、保湿剤等を高濃度配合することができる、粒状入浴剤組成物の製造方法を提供すること。
【解決手段】粒状入浴剤組成物の製造方法であって、(1)水溶性高分子と溶解分散助剤とを混合し、55℃〜85℃の温度に加温し、混合物を得る工程、(2)入浴剤成分を、55℃〜85℃に保持した前記(1)で得られた混合物に添加、混合し、溶液または分散液を得る工程、および(3)55℃〜85℃に保持した前記(2)で得られた溶液または分散液を、非混和性の溶媒に滴下する工程を含むことを特徴とする、製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入浴剤成分である無機塩類、有機酸およびその塩類、薬用植物、色素、香料、保湿剤等を高濃度配合することができる、粒状入浴剤組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
入浴には1日の疲れをとり、心身ともにリラックスさせるという効果をはじめとし、種々の効果があることが知られている。この入浴効果を高めるために、各種の入浴剤が開発され実用化されてきた。例えば、無機塩類や薬用植物の抽出物などの有効成分を配合することにより皮膚表面を刺激して血行を促進し、新陳代謝を活発にし、保温性や爽快感を高めた入浴剤、保湿剤や保護剤、清浄化成分を加えて、皮膚を衛生的で健やかに保つようにした入浴剤、さらに香りや色調を与えて、感覚的な面での効果を高めた入浴剤などが市販されている。
【0003】
しかしながら、入浴剤の有効成分のうち、液状成分、例えば植物抽出液、エッセンシャルオイル、香料等は、高濃度配合することが困難であった。例えばこれらの液状成分を粉末入浴剤等に配合すると、入浴剤を固結させる。さらに高濃度で配合させようとすると、多量の液状成分が入浴剤を泥状にし、計量や容器への充填を困難にさせるといった問題があった。また、粉末成分であっても、例えば色素等を高配合すると、身体や器具類への染着等の問題があった。
【0004】
このような問題を解消するために、かかる有効成分を他の粉体成分と共にマルメライザー等の造粒機を用いて顆粒化した粒状の入浴剤組成物や、かかる有効成分をゼラチン等を皮膜としてカプセル剤としたのちに、他の粉体成分に配合した入浴剤組成物等の開発が行われている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、前者の製造方法は、入浴剤成分と、賦型剤、結合剤等とを混合して、マルメライザー等の造粒機にて製造するものであるため、植物抽出液等の液状成分の配合量が多いと造粒できない。また、後者のカプセル剤は、粉体成分を多量に配合することはできず、香料、精油等の液状成分も多量に配合するとカプセル自体の安定性を損なうという問題がある。
【特許文献1】特公平7−64935号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、入浴剤成分である無機塩類、有機酸およびその塩類、薬用植物、色素、香料、保湿剤等を高濃度配合することができる、粒状入浴剤組成物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、入浴剤成分を水溶性高分子中に溶解または分散させる、すなわち実質的にほとんど全ての入浴剤成分を水溶性高分子中に包含させることにより、入浴剤成分を高濃度に、かつ安定的に配合させることができる粒状入浴剤組成物の製造方法を見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、粒状入浴剤組成物の製造方法であって、
(1)水溶性高分子と溶解分散助剤とを混合し、55℃〜85℃の温度に加温し、混合物を得る工程、
(2)入浴剤成分を、55℃〜85℃に保持した前記(1)で得られた混合物に添加、混合し、溶液または分散液を得る工程、および
(3)55℃〜85℃に保持した前記(2)で得られた溶液または分散液を、非混和性の溶媒に滴下する工程
を含むことを特徴とする、製造方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の粒状入浴剤組成物の製造方法では、組成物に入浴剤成分を高濃度に配合することができる。本発明の製造方法は、入浴剤成分の安定性にも優れる、今までにない入浴剤を作りだすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の製造方法で用いる水溶性高分子は、常温で固体状のものであればよく、平均分子量1000〜20000のポリエチレングリコール、特に平均分子量4000〜20000のポリエチレングリコールが好ましい。入浴剤成分を溶解または分散させるのに必要な量として、水溶性高分子、溶解分散助剤および入浴剤成分の合計を100重量部に対して、55〜85重量部、特に60〜80重量部の量で用いることが好ましい。
【0010】
本発明の製造方法で用いる溶解分散助剤は、入浴剤成分を溶解または分散させるとともに、前記水溶性高分子と混合したとき、溶解または分散し、混合物を形成するものであればよい。入浴剤成分を溶解または分散させるのに必要な量として、水溶性高分子、溶解分散助剤および入浴剤成分の合計を100重量部に対して、10〜35重量部、特に好ましくは20〜30重量部の量で用いるのが好ましい。具体的には、水、アルコール類、多価アルコール類、尿素、ブドウ糖、果糖、アスコルビン酸、ヒドロキシプロピルシクロデキストリンまたはグリシンを挙げることができ、少なくとも1種または2種以上を組み合わせてのいずれも使用できる。アルコール類としては、好ましくは炭素数1〜6のアルコール、具体例としては、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等を挙げることができ、多価アルコール類としては、好ましくは炭素数2〜6の多価アルコール、具体例としては、プロピレングリコール、ヘキサンジオール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、ソルビトール、マルチトール等を挙げることができる。
【0011】
本発明の製造方法で用いる非混和性の溶媒とは、前記水溶性高分子と実質的に溶け合わない溶媒を意味する。具体的には、シリコーン油、オリーブ油、ゴマ油、ナタネ油、アーモンド油、サザンカ油、ツバキ油、落花生油、流動パラフィンまたは流動イソパラフィンのいずれも使用できる。シリコーン油の例としては、常温で液状のものであればよい。例えば、ジメチルシリコーンオイル、環状シリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等を挙げることができる。
【0012】
次に、本発明の粒状入浴剤組成物の製造方法について説明する。第一に、水溶性高分子55〜85重量部と溶解分散助剤10〜35重量部と混合し、混合物を得る。この際、常温で固体状の水溶性高分子を溶かすために、加温する。かかる温度は、用いる水溶性高分子の融点や、溶解分散助剤の種類や量に応じて異なるが、通常約55〜85℃である。次いで、入浴剤成分1〜37重量部を、約55℃〜85℃に保持したこの溶液に添加、混合し、溶液または分散液を得る。
【0013】
次いで、得られた溶液又は分散液を約55℃〜85℃に保ちながら、20cm層以上の非混和性の溶媒相の上部より滴下する。そして、溶媒層中で形成された粒子を取り出し、表面の非混和性の溶媒を、非水性で揮発性の溶媒を用いて洗浄除去し、乾燥する。以上によって目的とする入浴剤成分を高濃度に含有した粒状入浴剤組成物を得ることができる。得られた組成物の粒度は、滴下する溶液または分散液の粘度、表面張力等の物性に依存するが、滴下に用いられる器具の口径等の選択により適宜所望の値を得ることができ、例えば平均粒径が0.1〜10mm、好適には1〜5mmのものを得ることができる。
【0014】
本発明の製造方法で用いる入浴剤成分は、55℃〜85℃に保持した水溶性高分子と溶解分散助剤の混合物に、均一に溶解または分散するものであればよく、その入浴剤組成物の目的とする効能・効果に応じて、無機塩類、有機酸およびその塩類、薬用植物、色素、香料または保湿剤等から、少なくとも1種の成分、好適には2種以上の成分を適宜選択して用いればよい。本発明に用いる入浴剤成分の例として、硫酸ナトリウム、乾燥硫酸ナトリウム、無水硫酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、硫酸アルミニウムカリウム、硫酸マグネシウム等の無機塩類、クエン酸、酒石酸、コハク酸、リンゴ酸およびその塩類などの有機酸およびその塩類を挙げることができ、これらは通常市販されているものを用いればよい。
【0015】
また、薬用植物としては、センキュウ、サンシシ、ハッカヨウ、キッソウコン、ショキョウ、ショウブ、ウイキョウ、オウゴン、カンゾウ、エンジュ、ヨクイニン、チンピ、カンピ、ビワヨウ、シャクヤク、マツブサ、オウバク、コウボク、アロエ、カミツレ、セイヨウノコギリソウ、ハマメリス等の植物の抽出物や、パインニードル油、ラベンダー油、シソ油、ユーカリ油、オレンジ油、ローズマリー油、メリッサ油、タイム油、セージ油、レモン油、ライム油、ヒバ油、ローズ油、ジャスミン油、ヒノキ油等の精油類を挙げることができる。さらに香料としては、ゲラニオール、シトラール、シトロネロール、リナロール、メントール、ターピネオール等の単品香料やこれに天然香料を含めた調合香料等を挙げることができる。
【0016】
色素としては、厚生労働省令で定める医薬品等に使用することができるタール系色素に該当する赤色2号、赤色3号、赤色102号、赤色104号の(1)、赤色105号の(1)、赤色106号、赤色213号、赤色223号の(1)、黄色4号、黄色5号、黄色201号、黄色202号の(1)、黄色203号、橙色205号、緑色3号、緑色201号、緑色204号、青色1号、青色2号、青色205号、紫色201号、褐色201号、クロロフィル類、クチナシ類、フラボノイド系、カロチノイド系、キノン系、リボフラビン類の天然色素等の色素を挙げることができる。本発明の製造方法によって得られる粒状入浴剤組成物には、他に、デキストリン、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム等の高分子物質、ビタミンCの誘導体、ビタミンEおよびその誘導体、ビタミンB2、アミノ酸類、イソプロピルフェノール、フェノキシエタノール、パラオキシ安息香酸エステル等の入浴剤成分を適宜配合してもよい。
【実施例】
【0017】
以下に実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0018】
〔実施例1〕
ポリエチレングリコール4000 70重量部とエタノール15重量部とを混合し、70℃に加温し、混合物を得た。この温度を保ちながら、これに黄色202号の(1)3重量部、ローズマリー油9重量部およびローズマリー様調合香料8重量部を添加、混合し、分散液を調製した。次いでかかる分散液を70℃に保ちながらスポイド(NIKKO CHEMICAL社製 DP−3)で高さ30cm層のジメチルシリコーン相に滴下した。相中で形成された粒子を取り出し、洗浄後45℃の送風乾燥機で1時間乾燥し、粒状入浴剤組成物(平均粒径約3mm)を得た。
次に、この粒状入浴剤組成物20重量部と乾燥硫酸ナトリウム80重量部を混合し、入浴剤を製造した。この入浴剤をアルミパックに20g充填し、安定性を40℃75%RH条件下に3ヶ月保存した。乾燥硫酸ナトリウムに色素が染着していなかった。また、精油、香料の染み出しもなく安定であった。
【0019】
〔実施例2〕
色素粒:ポリエチレングリコール6000 75重量部と、エタノール20重量部およびグリシン1重量部とを混合し、80℃に加温し、混合物を得た。この温度を保ちながら、これに青色1号4重量部を添加、混合し分散液を調製した。次いでかかる分散液を80℃に保ちながらスポイド(NIKKO CHEMICAL社製 DP−3)で高さ50cm層のオリーブ油相に滴下した。相中で形成された粒子を取り出し、洗浄後50℃の送風乾燥機で3時間乾燥し、粒状入浴剤組成物(平均粒径約3mm)を得た。
生薬粒:ポリエチレングリコール20000 80重量部と、水2重量部、プロパノール8重量部および尿素4重量部を混合し、80℃に加温し、混合物を得た。この温度を保ちながら、これにラベンダー油6重量部を添加、混合し、分散液を調製した。かかる分散液を80℃に保ちながらスポイド(NIKKO CHEMICAL社製 DP−3)で高さ20cm層のジメチルシリコン相に滴下した。相中で形成された粒子を取り出し、洗浄後50℃の送風乾燥機で2時間乾燥し、粒状入浴剤組成物(平均粒径約3mm)を得た。
香料粒:ポリエチレングリコール4000 30重量部およびポリエチレングリコール20000 30重量部と、エタノール12重量部およびヒドロキシプロピルシクロデキストリン3重量部とを混合し、75℃に加温し、混合物を得た。この温度を保ちながら、これに、ジャスミンの調合香料25重量部を添加、混合し、分散液を調製した。次いでかかる分散液を75℃に保ちながらスポイド(NIKKO CHEMICAL社製 DP−3)で高さ40cm層の環状シリコーン相に滴下した。相中で形成された粒子を取り出し、洗浄後、45℃の送風乾燥機で1時間乾燥し、粒状入浴剤組成物(平均粒径約3mm)を得た。
次に色素粒5g、生薬粒10g、香料粒5gを計り取り、アルミパックに充填し、安定性を40℃75%RH条件下に6ヶ月保存した。色素の他の粒子への染着もなく、香料、精油の染み出しもなく安定であった。
【0020】
〔実施例3〕
ポリエチレングリコール20000 65重量部と、エタノール13重量部およびグリシン5重量部とを混合し、75℃に加温し、混合物を得た。この温度を保ちながら、オウゴンエキス末5重量部およびセンキュウエキス12重量部を添加、混合し、分散液を調製した。次いでかかる分散液を75℃に保ちながらスポイド(NIKKO CHEMICAL社製 DP−3)で高さ50cm層のジメチルシリコーン相に滴下した。相中で形成された粒子を取り出し、洗浄後、40℃の送風乾燥機で1時間乾燥し、粒状入浴剤組成物(平均粒径約3mm)を得た。
次に、この粒状入浴剤組成物30重量部と市販の粉末入浴剤70重量部を混合し、新たな入浴剤を製造した。この入浴剤をアルミパックに30g充填し、安定性を40℃75%RH条件下に6ヶ月保存した。色素の粒子への染着もなく、香料、エキスの染み出しもなく安定であった。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明の新規粒状入浴剤組成物は、入浴剤成分を高濃度に配合することができ、また安定性にも優れる、今までにない入浴剤を作りだすことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状入浴剤組成物の製造方法であって、
(1)水溶性高分子と溶解分散助剤とを混合し、55℃〜85℃の温度に加温し、混合物を得る工程、
(2)入浴剤成分を、55℃〜85℃に保持した前記(1)で得られた混合物に添加、混合し、溶液または分散液を得る工程、および
(3)55℃〜85℃に保持した前記(2)で得られた溶液または分散液を、非混和性の溶媒に滴下する工程
を含むことを特徴とする、製造方法。
【請求項2】
水溶性高分子が、平均分子量1000〜20000のポリエチレングリコールであることを特徴とする、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
溶解分散助剤が、水、アルコール類、多価アルコール類、尿素、ブドウ糖、果糖、アスコルビン酸、ヒドロキシプロピルシクロデキストリンまたはグリシンから選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項1または2記載の製造方法。
【請求項4】
非混和性の溶媒が、シリコーン油、オリーブ油、ゴマ油、ナタネ油、アーモンド油、サザンカ油、ツバキ油、落花生油、流動パラフィンまたは流動イソパラフィンから選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項1〜3いずれか1項記載の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか1項記載の製造方法により得られる粒状入浴剤組成物。

【公開番号】特開2007−137832(P2007−137832A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−335252(P2005−335252)
【出願日】平成17年11月21日(2005.11.21)
【出願人】(591088098)癸巳化成株式会社 (2)
【Fターム(参考)】