説明

粒状組成物およびその製造法

本発明は、高温高湿条件において安定な粒状組成物および当該粒状組成物の簡便で、効率的な製造法を提供することを目的とするものである。本発明によって、核および核を被覆する層を含む粒状組成物であって、核が糖類で、核を被覆する層が生物活性成分および硬化油を含むことを特徴とする粒状組成物、並びに、溶融した硬化油と生物活性成分の混合物を、粒状の糖類に付着あるいは皮膜を形成させることを特徴とする上記粒状組成物の製造法を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、粒状組成物およびその製造法に関する。さらに詳細には、生物活性成分の湿熱安定性を高めた粒状組成物および溶融した硬化油と生物活性成分の混合物を、粒状の糖類に付着あるいは皮膜を形成させることにより、当該粒状組成物を製造する方法に関する。
【背景技術】
酵素や抗生物質、ワクチン、ホルモン、ビタミンなどの生物活性成分は通常の乾燥状態では粉末状であり、この状態で医薬品、食品、洗剤、家畜飼料などに用いられているが、流動性が劣ること、発塵による吸入、皮膚接触などでアレルギー症状などを起こすことがあり、実用上好ましくない。したがって、必要に応じて、これらを一定の形状に加工して使用に供することが行われている。
また、生物活性成分を家畜飼料に添加して用いる場合、高温高湿の条件下では、一般的に活性が低下する。また、飼料工場では飼料やその原料中に通常存在するサルモネラなどの有害細菌などを殺菌するため、飼料のペレット化に際し、約80℃の蒸気により飼料を湿熱処理することが行われている。一方、夏場の屋外の飼料保管タンク内では温度50℃、湿度80%を超えることもある。
以上のようなことから、粉末状の生物活性成分が飛散し難く、高温高湿においても活性が著しく低下しない安定な生物活性成分製剤が求められている。そのため、例えば粒状酵素組成物は、その取り扱いが容易であることから、従来から比較的良く用いられている形状である。この粒状酵素組成物は、押出造粒、マルメ造粒などの方法で製造されている。
例えば、酵素とメッシュ粒度が20〜100(粒度:840〜150μm)の粉粒状低融点物質との混合物を流動下、低融点物質の融点以上に加熱し、造粒することを特徴とする細粒または顆粒状酵素の製造法(特公平4−13019号公報)が報告されている。
また、酵素の飛散を抑制する方法としては顆粒製剤とする方法があり、それらには、セルロースを核として顆粒を製造する方法(特開平1−112983号公報)、低融点物質を核として顆粒を製造する方法(特開昭58−214333号公報)、核にバインダー物質と酵素を溶解した液を吹き付ける方法(特開昭60−37983号公報、特開昭60−37984号公報)、塩類および/または糖類を核として、これに溶融した低融点物質および酵素を被覆した後に高融点物質を添加する方法(特公平3−64108号公報)などがある。しかし、これらの方法は、製造工程が複雑であり、しかも高温高湿条件での酵素の安定性が低いという欠点を有している。
また、高温高湿下において酵素の安定性を維持する方法として、酵素を含有する核を疎水性物質と水不溶性物質によりコートする方法(特表平11−514240号公報)がある。しかしながら、この方法は、複雑な製造工程が必要であり、製造時間も多くかかる上に、造粒機も限定されたものとなっている。
本発明は、酵素の他、抗生物質、ワクチン、ホルモン、ビタミンなどの生物活性成分について、高温高湿条件において安定な粒状組成物および当該粒状組成物の簡便で、効率的な製造法を提供することを目的としている。
【発明の開示】
粒状組成物の有効成分である生物活性成分は、一般的に噴霧乾燥法などにより粉体としたものが用いられているが、本発明者らは、油脂が一定温度で溶融、固化する性質を利用し、このような生物活性成分原末の粉体を油脂に懸濁して、適当な担体に付着あるいは皮膜を形成させることで、湿熱の負荷が直接に生物活性成分に影響を及ぼさない構造物を得られることを見出した。さらに、工程が少なく簡便に当該粒状組成物を製造する方法を開発して、本発明を完成した。
請求項1記載の本発明は、核および核を被覆する層を含む組成物であって、核が糖類であり、核を被覆する層が硬化油および生物活性成分であることを特徴とする粒状組成物である。
請求項2記載の本発明は、糖類が、グラニュー糖または乳糖である請求項1記載の粒状組成物である。
請求項3記載の本発明は、硬化油が、パーム硬化油である請求項1記載の粒状組成物である。
請求項4記載の本発明は、生物活性成分が、酵素である請求項1記載の粒状組成物である。
請求項5記載の本発明は、酵素が、セルラーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼのうちの一もしくは二以上を組み合わせてなるものである請求項4記載の粒状組成物である。
請求項6記載の本発明は、セルラーゼが、トリコデルマ・ビリデ由来のセルラーゼである請求項5記載の粒状組成物である。
請求項7記載の本発明は、アミラーゼが、アスペルギルス・オリゼ由来のアミラーゼである請求項5記載の粒状組成物である。
請求項8記載の本発明は、プロテアーゼが、アスペルギルス・ニガー由来のプロテアーゼである請求項5記載の粒状組成物である。
請求項9記載の本発明は、リパーゼが、カンジダ・クリンダラシア由来のリパーゼである請求項5記載の粒状組成物である。
請求項10記載の本発明は、生物活性成分が、抗生物質である請求項1記載の粒状組成物である。
請求項11記載の本発明は、抗生物質が、コリスチンである請求項10記載の粒状組成物である。
請求項12記載の本発明は、生物活性成分の含有量が、0.1〜15重量%である請求項1および4〜11のいずれか1項記載の粒状組成物である。
請求項13記載の本発明は、溶融した硬化油と生物活性成分を含む混合物を、粒状の糖類に付着あるいは皮膜を形成させることを特徴とする請求項1記載の粒状組成物の製造法である。
請求項14記載の本発明は、糖類が、グラニュー糖または乳糖である請求項13記載の粒状組成物の製造法である。
請求項15記載の本発明は、硬化油が、パーム硬化油である請求項13記載の粒状組成物の製造法である。
請求項16記載の本発明は、生物活性成分が、酵素である請求項13記載の粒状組成物の製造法である。
請求項17記載の本発明は、酵素が、セルラーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼのうちの一もしくは二以上を組み合わせてなるものである請求項16記載の粒状組成物の製造法である。
請求項18記載の本発明は、生物活性成分が、抗生物質である請求項13記載の粒状組成物の製造法である。
請求項19記載の本発明は、抗生物質が、コリスチンである請求項18記載の粒状組成物の製造法である。
請求項20記載の本発明は、生物活性成分の含有量が、0.1〜15重量%である請求項13および16〜19のいずれか1項記載の粒状組成物の製造法である。
請求項21記載の本発明は、請求項1〜12のいずれか1項記載の粒状組成物を配合してなるペレット状飼料である。
請求項22記載の本発明は、ペレット状飼料の製造にあたり、請求項1〜12のいずれか1項記載の粒状組成物を使用することを特徴とするペレット状飼料の製造方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
請求項1記載の本発明は、核および核を被覆する層を含む組成物であって、核が糖類であり、核を被覆する層が硬化油および生物活性成分であることを特徴とする粒状組成物である。
本発明に係る粒状組成物は、有効成分である生物活性成分を硬化油に懸濁し、適当な担体に付着あるいは皮膜を形成させて固化させることで、湿熱による影響を生物活性成分が直接受けない構造になっている。
そのため、この粒状組成物は、湿熱安定性を有する。本明細書において、「湿熱安定性」とは、生物活性成分が加湿および/または加熱されるような条件に曝される場合において、それらの条件による生物活性成分の活性低下の度合いを低減し、組成物に含有される生物活性成分の活性を維持できる性質を意味し、より具体的には、酵素について例示すると、約80℃のスチーム加熱条件下で1分間曝された場合に、75%以上の活性を維持することを指す。この加熱条件は、通常行われる飼料のスチーム滅菌の工程や、夏季において野外に設置された飼料保管タンク内の環境条件などと比べて苛酷な条件である。
本発明における生物活性成分としては、酵素、抗生物質、ワクチン、ホルモン、ビタミンなど、各種疾病の治療または予防などにおいて有効な生物活性を示す化合物が挙げられる。
本発明が適用される酵素としては特に制限はないが、セルラーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼなどが好ましい。さらに好ましくは、トリコデルマ・ビリデ由来のセルラーゼ、アスペルギルス・オリゼ由来のアミラーゼ、アスペルギルス・ニガー由来のプロテアーゼ、およびカンジダ・クリンダラシア由来のリパーゼである。これらは単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができ、同じタイプの酵素の二種以上を組み合わせて用いることもできる。
本発明において使用する酵素は、通常粉末状であり、酵素生産菌を通常の方法で培養して得られた培養液から調製しても良く、また市販の酵素原末でも良い。例えば、セルラーゼの場合、培養液からの調製方法は、アスペルギルス・ニガー、フミコーラ・インソレンス、トリコデルマ・ビリデ、アクレモニウム・セルロリティカス、フザリウム・オキシスポーラム、リゾプス・オリゼなどの当該酵素生産能を有する微生物を培養したのち、培養物を遠心分離などの操作を行うことにより上清液を得て、その後、必要に応じてこれを限外濾過法などにより濃縮し、噴霧乾燥法などで目的とするセルラーゼ原末を得ることができる。また、アミラーゼの場合はアスペルスギルス・オリゼ、バチルス・ズブチリス、バチルス・リケニホルミスなど、プロテアーゼの場合はアスペルギルス・ニガー、バチルス・リケニホルミス、バチルス・ズブチリス、アスペルスギルス・オリゼなど、リパーゼの場合はカンジダ・クリンダラシア、リゾープス・ジャポニクス、リゾープス・デルマ、アリスロバクター・ウレアファシェンスなどの当該酵素生産能を有する微生物培養液から同様にして得ることができる。
次に、本発明が適用される抗生物質としては、コリスチン、カナマイシン、ストレプトマイシン、ペニシリン、ホスホマイシンなどがあり、特にコリスチンが好ましい。これらは単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明において使用する抗生物質は、通常粉末状であり、当該抗生物質生産能を有する微生物、例えばコリスチンの場合、バチルス・ポリミキサーを通常の方法で培養して得られた培養液から調製しても良く、あるいは市販の抗生物質原末でも良い
次に、本発明に用いる硬化油としては、動物硬化油、例えば牛脂硬化油、豚脂硬化油、あるいは植物硬化油、例えばナタネ硬化油、大豆硬化油、オリーブ硬化油、パーム硬化油、ヒマシ硬化油などが挙げられる。これらの中では植物硬化油が好ましく、とりわけパーム硬化油が好適である。なお、乾性油、半乾性油、不乾性油などは粘度が高いため、取り扱いが困難であり、また核の中にしみ込むことがあるので、好ましくない。これに対して、硬化油は約50℃以上の温度で溶融するので生物活性成分を懸濁することができ、温度を下げると、容易に固体となり、核を被覆することができる。また、核にしみ込むこともない。
したがって、本発明に用いる硬化油としては、約50℃以上、好ましくは約50〜65℃の融点を有するものが適当である。また、本発明に用いる硬化油の含有量については、通常、1〜20重量%であり、5〜10重量%が好適である。
本発明において核を覆う皮膜層を構成する成分としては、硬化油および生物活性成分の他に、所望により賦形剤、結合剤などを含めることができる。
また、糖類は、粒状組成物の核を構成するものであり、本発明には、例えばショ糖の粒状結晶であるグラニュー糖、乳糖、三温糖、ショ糖などが用いられ、これらの中では、グラニュー糖や乳糖がより好ましい。また、これらは単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
粒状組成物中における生物活性成分の含有量については、通常0.1〜15重量%であり、1〜10重量%が好適である。生物活性成分含有量が0.1重量%より少ないと、不均質となり、また生物活性成分含有量が15重量%を超えると、硬化油の増量に伴う固結が生じることがある。
次に、請求項13記載の本発明に係る粒状組成物の製造法について説明する。
本発明の製造法は、溶融した硬化油と生物活性成分を含む混合物を、粒状の糖類に付着あるいは皮膜を形成することからなる。
この粒状組成物は、その組成並びに構造が比較的簡単であることから、その製造工程は簡便で工程が少ない。そのため、通常の工程数増加に伴う、製剤含有生物活性成分の活性低下を著しく低減することができる。また、簡単なことではあるが、最も重要な工程の管理は、温度管理である。すなわち、硬化油の溶融後に粉体である生物活性成分を混合して生物活性成分混合硬化油を調製し、該混合物を維持するときの温度、また生物活性成分混合硬化油を担体である糖類に付着あるいは皮膜を形成するときの糖類の温度、糖類に付着あるいは皮膜を形成した後の生物活性成分組成物の温度、さらには最終産物の粒状組成物を得るときに冷却する際の温度を規定することで、目的の湿熱に安定で、均質な構造物を製造することができる。
具体的には、本発明の製造法では、まず硬化油を溶融し、これに生物活性成分を加えて混合し、生物活性成分混合硬化油を得る。一方、糖類を硬化油の融点付近の温度に保温しておき、前記の生物活性成分混合硬化油を徐々に添加した後、35℃程度まで冷却することによって、糖類の外周表面に生物活性成分混合硬化油を付着もしくは皮膜を形成させる。最後に、不要な大粒子をふるい分けなどで除去し、目的の粒状組成物を得ることができる。
本発明の粒状組成物は、前記した粒状組成物としての形態を有するものである限り、その製造法は限定されないし、この製造法に用いる機械や施設などについても特に限定されるものではなく、製造法に適したものを適宜選択して使用すれば良い。
次に、請求項21および22記載の本発明は、上記粒状組成物を用いたペレット状飼料とその製造法に関するものである。
ペレット状飼料の製造は、基本的には常法により行えばよく、製造過程において、標準飼料に本発明の粒状組成物を混合し、湿熱条件下で滅菌および加工を行う。本発明の粒状組成物は、前記したように、湿熱安定性を有しているため、湿熱加工やスチーム滅菌されるペレット状飼料の製造に使用しても、生物活性成分は安定に存在し、当該飼料を給餌された家畜に対して、生物活性成分が持つ本来の能力が発揮される。
本発明に係る粒状組成物の実施例、試験例を以下に例示するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
なお、実施例などで使用した生物活性成分は、トリコデルマ・ビリデ由来のセルラーゼ原末(明治製菓社製)、アスペルギルス・オリゼ由来のアミラーゼ原末(明治製菓社製)、アスペルギルス・ニガー由来のプロテアーゼ原末(明治製菓社製)、カンジダ・クリンダラシア由来のリパーゼ原末(名糖産業社製)、バチルス・ポリミキサー由来の硫酸コリスチン原末(明治製菓社製、製造番号55720、709μg(力価)/mg)である。また、硬化油は、新日本理化社製のパーム硬化油(極度A)を、グラニュー糖は、日新製糖社製の「グラニュー糖G(粒径0.25〜1mm)」を、乳糖は、DMVインターナショナル社製の乳糖#100を用いた。
実施例1 粒状組成物Aの調製
パーム硬化油20gを100mL容のガラス製ビーカーに入れて、80℃±1℃の恒温水槽中に浸漬し、スパーテルを用いて撹拌、溶融した。次に、トリコデルマ・ビリデのセルラーゼ原末6gを撹拌しながら混合して、酵素混合硬化油を調製した。
一方、グラニュー糖174gを500mL容のプラスチック製ビーカーに入れ、50℃±1℃の恒温水槽中で保温した後、上記の酵素混合硬化油26gを徐々に添加した。その後、35℃まで冷却して硬化油を固化させた後、目の開きが1.4mmのふるいで不要な大粒子を除去して、目的とするトリコデルマ・ビリデのセルラーゼ含有量が3重量%の粒状組成物Aを得た。
実施例2 粒状組成物Bの調製
パーム硬化油20gを100mL容のガラス製ビーカーに入れて、80℃±1℃の恒温水槽中に浸漬し、スパーテルを用いて撹拌、溶融した。次に、トリコデルマ・ビリデのセルラーゼ原末6gを撹拌しながら混合して、酵素混合硬化油を調製した。
一方、乳糖174gを500mL容のプラスチック製ビーカーに入れ、50℃±1℃の恒温水槽中で保温した後、酵素混合硬化油26gを徐々に添加した。しかる後、35℃まで冷却して硬化油を固化させた後、目の開きが1.4mmのふるいで不要な大粒子を除去し、目的とするトリコデルマ・ビリデのセルラーゼ含有量が3重量%の粒状組成物Bを得た。
実施例3 粒状組成物Cの調製
グラニュー糖130.5kgをベルトフィダー(光洋機械産業社製)で振動流動層乾燥機(VDF−6000、不二パウダル社製)を用いて品温を55℃に加温調整した後に、電熱ヒーターで保温したマゼラー混合機(PM−200VP、マゼラー社製)に全量を投入し混合した。
一方で、硬化油融解槽(T.K.ユニミキサー、特殊機化工業社製)にパーム硬化油15kgの全量を投入し、液温を80℃±3℃に調整しながら溶融した後、トリコデルマ・ビリデのセルラーゼ原末4.5kgを投入し、混合して酵素混合硬化油を調製した。
その後、マゼラー混合機内のグラニュー糖の品温が55℃±1℃で安定化したところで、グラニュー糖を混合しながら前記酵素混合硬化油を保温した注入ノズルに送液し、全量(19.5kg)を約15分間かけて流し入れた。しかる後、均一に分散させるため、約10分間混合した。このときの品温は、約60℃となった。
次に、スポットエアコン(日立空調システム社製)を用いて冷風を送風して混合しながら、品温を56℃±1℃まで冷却した。その後、マゼラー混合機から混合物を速やかにコンクリートミキサー(PT−200、マゼラー社製)に移し、混合しながら、スポットエアコンを用いて品温が35℃以下になるまで冷却した。
次いで、円形ふるい(カートリッジタイプ、ダルトン社製)で篩過して不要な大粒子を除去し、目的とするトリコデルマ・ビリデのセルラーゼ含有量が3重量%の粒状組成物Cを得た。
実施例4 粒状組成物Dの調製
グラニュー糖123kgを、ベルトフィダーを用いて品温を57℃に調整した後に、これを電熱ヒーターで保温したマゼラー混合機に全量を投入し、混合した。なお、この工程での品温管理は55℃とした。
一方で、硬化油融解槽にパーム硬化油18kgの全量を投入し、液温を81℃±2℃に調整しながら溶融した後、トリコデルマ・ビリデのセルラーゼ原末9kgを投入し、混合して酵素混合硬化油を調製した。
以上の工程を経た後、マゼラー混合機内のグラニュー糖の品温が57℃±1℃で安定化したところで、グラニュー糖を混合しながら、酵素混合硬化油を保温した注入ノズルに送液し、全量(27kg)を約20分間かけて流し入れた。その後、均一に分散させるため、約10分間混合した。このときの品温は、約58℃となった。
次に、スポットエアコンを用いて冷風を送風して混合しながら、品温を56℃±1℃まで冷却したのち、マゼラー混合機から酵素含有混合物を速やかにコンクリートミキサーに移し、滞留がないよう注意しながら混合し、スポットエアコンを用いて品温が35℃以下になるまで冷却した。次いで、ダルトン篩過機を用いて不要な大粒子を除去し、目的とするトリコデルマ・ビリデのセルラーゼ含有量が6重量%の粒状組成物Dを得た。
実施例5 粒状組成物Eの調製
パーム硬化油20gを100mL容のガラス製ビーカーに入れて、80℃±1℃の恒温水槽中に浸漬し、スパーテルを用いて撹拌、溶融した。次に、アスペルギルス・オリゼのアミラーゼ原末6gを撹拌しながら混合して、酵素混合硬化油を調製した。
一方、グラニュー糖174gを500mL容のプラスチック製ビーカーに入れ、50±1℃の恒温水槽中で保温した後、上記の酵素混合硬化油26gを徐々に添加した。その後、35℃まで冷却して硬化油を固化させた後、目の開きが1.4mmのふるいで不要な大粒子を除去して、目的とするアスペルギルス・オリゼのアミラーゼ含有量が3重量%の粒状組成物Eを得た。
実施例6 粒状組成物Fの調製
パーム硬化油20gを100mL容のガラス製ビーカーに入れて、80℃±1℃の恒温水槽中に浸漬し、スパーテルを用いて撹拌、溶融した。次に、アスペルギルス・ニガーのプロテアーゼ原末6gを撹拌しながら混合して、酵素混合硬化油を調製した。
一方、グラニュー糖174gを500mL容のプラスチック製ビーカーに入れ、50℃±1℃の恒温水槽中で保温した後、上記の酵素混合硬化油26gを徐々に添加した。その後、35℃まで冷却して硬化油を固化させた後、目の開きが1.4mmのふるいで不要な大粒子を除去して、目的とするアスペルギルス・ニガーのプロテアーゼ含有量が3重量%の粒状組成物Fを得た。
実施例7 粒状組成物Gの調製
パーム硬化油50gを100mL容のガラス製ビーカーに入れて、80℃±1℃の恒温水槽中に浸漬し、スリーワンモーター(HEIDON、600G型)を用いて撹拌、溶融した。次に、カンジダ・シリンドラセのリパーゼ原末15gを撹拌しながら混合して、酵素混合硬化油を調製した。
一方、グラニュー糖435gをハイスピードミキサー(FUKAE POWTEC、LFS−GS−2J型)に入れ、温水還流ジャケット内で55℃±1℃に保温した後、上記の酵素混合硬化油65gを徐々に添加した。その後、35℃まで冷却して硬化油を固化させた後、目の開きが1.4mmのふるいで不要な大粒子を除去して、目的とするカンジダ・シリンドラセのリパーゼ含有量が3重量%の粒状組成物Gを得た。
実施例8 粒状組成物Hの調製
パーム硬化油30gを100mL容のガラス製ビーカーに入れて、80℃±1℃の恒温水槽中に浸漬し、スリーワンモーター(HEIDON、600G型)を用いて撹拌、溶融した。次に、硫酸コリスチン原末の8.5gを撹拌しながら混合して、硫酸コリスチン混合硬化油を調製した。
一方、60℃の温風乾燥機に入れて保温した、グラニュー糖261.5gをハイスピードミキサー(FUKAE POWTEC、LFS−GS−2J型)に移し入れ、温水還流ジャケット内で50〜60℃に保温した後、38.5gの硫酸コリスチン混合硬化油を徐々に添加した。その後、35℃まで冷却して硬化油を固化させた後、目の開きが1.4mmのふるいで不要な大粒子を除去して、目的とする硫酸コリスチン含有量が2.8重量%の粒状組成物Hを得た。
比較例1 粉末状組成物aの調製
高速撹拌ミキサー(SEGV−200)を用いて、米ぬか油かす471.8g、硫酸コリスチン原末28.2g、米ぬか油かす500gの順に投入し、30rpmで10分間回転させて、目的とする硫酸コリスチン含有量が2.8重量%の粉末状組成物aを得た。
試験例1
この例では、各種酵素の粒状組成物を調製し、該組成物の酵素安定性について評価した。
[酵素の活性測定方法と試料調製法]
1−1.セルラーゼ活性の測定
セルラーゼを酢酸緩衝液(pH4.5)で抽出して試料溶液とし、青色色素をカップリングさせたCM−CELLULOSE(Megazyme社製)と反応させた。この着色されたCM−CELLULOSEは粉末状態で使用でき、40℃、pH4.5の条件下で10分間酵素処理を行った後、酸性アルコールで反応停止させた。
その後、反応液を遠心分離して得られた上清中の青色色素の量を吸光度測定(620nm)し、ブランク液から得られる吸光度を除した値を求めた。同時に酵素反応させたセルラーゼ標準溶液の検量線を基にして、試料中のセルラーゼ活性(単位:u/mL)を求めた。
1−2.測定の範囲
試料溶液を希釈することにより、繊維糖化活性が0.05〜0.3u/mLとなるように調製した。この繊維糖化活性の測定の範囲は、酵素組成物に含まれる酵素として、10〜10000u/gに相当する。
1−3.試料溶液の調製方法
約1gのセルラーゼ試料を100mL容の三角フラスコにとり、50mL酢酸緩衝液(pH4.5)を加えて栓をして、マグネチックスターラーで60分間、室温で撹拌し、0.45μmのメンブランフィルター(Maillex−HV、MILLIPORE社製、口径25mm)でろ過し、試料溶液とした。
1−4.セルラーゼ標準溶液
繊維糖化活性が既知であるトリコデルマ・ビリデのセルラーゼより、0.05〜0.3u/mLの範囲で活性が正確に表示できるように、酢酸緩衝液(pH4.5)を用いて調製した。
2−1.アミラーゼ活性の測定
アミラーゼ活性(でんぷん糖化力)は、飼料および飼料添加物の成分規格に関する省令(昭和51年農林省令第35号)の一般試験法である「酵素力試験法」に準じて以下のように試験した。ただし、測定はpH5.0で行った。なお、試料溶液は0.1mol/L乳酸塩緩衝液で調製した。1でんぷん糖化力単位は、アミラーゼがバレイショデンプンに37℃で作用するとき、反応初期の1分間に1mgのブドウ糖に相当する還元力の増加をもたらす酵素量に相当する。
2−2.測定の範囲
試料溶液を希釈することにより、1mLあたりの濃度が0.4〜0.8でんぷん糖化力単位となるように調製する。
2−3.基質溶液の調製
予めバレイショデンプン約1gを精密に量り、105℃で2時間乾燥し、その減量を測定する。その乾燥物1gに対応するバレイショデンプンを正確に量り、三角フラスコに入れ、水20mLを加えてよく振り混ぜながら徐々に2mol/L水酸化ナトリウム試液5mLを加えて糊状とした。次いで、水浴中で攪拌しながら3分間過熱した後、水25mLを加え、冷却後2mol/L塩酸試液で正確に中和し、pH5.0に調整した0.1mol/L酢酸・酢酸ナトリウム緩衝液10mLを加え、さらに水を加えて正確に100mLとする。
2−4.操作法
試料適量を精密に量り、1mL当たりの濃度が0.4〜0.8でんぷん糖化力単位となるように、pH5.0に調整した0.1mol/L乳酸塩緩衝液を加えて溶かし、試料溶液とする。必要ならば、ろ過または遠心分離を行う。基質溶液10mLを正確に量り、直径30mmの試験管に入れ、37±0.5℃で正確に10分間放置した後、試料溶液1mLを正確に加え、直ちに振り混ぜ、37±0.5℃で正確に10分間放置する。
次に、フェーリング試液のアルカリ性酒石酸塩液2mLを加え、直ちに攪拌し、さらにフェーリング試液の銅液2mLを正確に加え、軽く振り混ぜた後、試験管の口に漏斗をのせ、水浴中で正確に15分間加熱した。その後、直ちに流水で25℃以下に冷却する。さらに、濃ヨウ化カリウム試液2mLおよび希釈した3mol/Lの硫酸2mLを加え、遊離したヨウ素を0.05mol/Lチオ硫酸ナトリウム液で滴定する(指示薬:溶性デンプン試液1〜2滴)。この場合において、滴定の終点は液の青色が消えたときとし、その滴定量をAmLとする。別に、基質溶液10mLの代わりに水10mLをとり、以下同様の方法で操作し、その滴定量をBmLとする。次式より1g中のでんぷん糖化力単位(U)を求める。なお、式中のwは試料溶液1mL中の試料量(g)である。
U=(B−A)×1.6×1/10×1/w
3−1.プロテアーゼ活性の測定
プロテアーゼ活性(蛋白消化力)は、飼料および飼料添加物の成分規格に関する省令(昭和51年農林省令第35号)の一般試験法である「酵素力試験法(蛋白消化力試験法、第2法)」に準じて試験した。ただし、測定はpH2.6で行った。なお、試料溶液は0.1mol/L酢酸塩緩衝液で調製した。1蛋白消化力単位は、プロテアーゼが乳清カゼインに37℃で作用するとき、反応初期の1分間に1μgのチロシンに相当する非蛋白性のフォリン試液呈色物質の増加をもたらす酵素量に相当する。
3−2.測定の範囲
試料溶液を希釈することにより、1mL当たりの濃度が10〜30蛋白消化力単位となるように調製する。
3−3.基質溶液の調製法
予め乳清カゼイン約1gを精密に量り、105℃で2時間乾燥し、その減量を測定する。その乾燥物1.20gに対応する乳清カゼインを正確に量り、1mol/L乳酸試液16mLおよび水146mLを加え、水浴中で加温して溶かす。この液を流水で冷却した後、1mol/L塩酸試液または1mol/L水酸化ナトリウム試液を加えてpH2.6に調整し、次いで水を加え、正確に200mLとする。
3−4.検量線の作成
チロシン標準品を105℃で3時間乾燥し、その0.500gを正確に量り、0.2mol/L塩酸試液を加えて溶かし、正確に500mLとする。この液の1mL、2mL、3mLおよび4mLを正確に量り、それぞれに0.2mol/L塩酸試液を加えて正確に100mLとする。
次いで、各液の2mLを正確に量り、0.55mol/L炭酸ナトリウム試液5mLおよび水により3倍に希釈したフォリン試液1mLをそれぞれ加え、37±0.5℃で30分間放置した後、これらの液について、波長660nmにおける吸光度を測定し、各液のフォリン試液呈色物質の量A1、、A及びAを測定する。別に、0.2mol/L塩酸試液2mLを正確に量り、以下同様の方法で操作し、吸光度Aを測定する。
吸光度差(A−A)、(A−A)、(A−A)および(A−A)を縦軸に、チロシンの量(μg)を横軸にとり、検量線を作成する。
3−5.操作法
試料適量を精密に量り、1mL当たりの濃度が10〜30蛋白消化力単位となるように水、0.1mol/L乳酸塩緩衝液、酢酸緩衝液または0.01mol/L酢酸・酢酸ナトリウム緩衝液を加えて溶かし、試料溶液とする。必要ならば、ろ過または遠心分離を行う。基質溶液5mLを正確に量り、37±0.5℃で30分間放置する。さらに、この液をろ過して沈殿物を完全に除去した後、ろ液2mLを正確に量り、0.55mol/L炭酸ナトリウム試液5mLおよび薄めた水により3倍に希釈したフォリン試液1mLを加えてよく撹拌し、37±0.5℃で30分間放置した後、この液について波長660nmにおける吸光度Aを測定する。別に、試料溶液1mLを正確に量り、トリクロロ酢酸試液A5mLを加えて振り混ぜた後、基質溶液5mLを正確に加え、37±0.5℃で30分間放置する。以下、上記と同様の方法で操作して吸光度AT’を測定する。次式より1g中の蛋白消化力単位(U)を求める。なお、式中Fは検量線から求めた吸光度差1に対するチロシンの量(μg)、wは試料溶液1mL中の試料量(g)である。
U=(A−AT’)×F×11/2×1/10×1/w
4−1.リパーゼ活性の測定
リパーゼ活性(脂肪消化力)は、飼料および飼料添加物の成分規格に関する省令(昭和51年農林省令第35号)の一般試験法である「酵素力試験法」に準じて試験した。ただし、測定はpH7.0で行った。1脂肪消化力単位は、リパーゼがオリーブ油に37℃で作用するとき、反応初期の1分間に1μmolの脂肪酸に相当する消化力の増加をもたらす酵素量に相当する。
4−2.測定の範囲
試料溶液を希釈することにより、1mL当たりの濃度が1.0〜5.0脂肪消化力単位となるように調整する。
4−3.基質溶液の調製法
ポリビニルアルコール試液・オリーブ油混液(3:1)200〜300mLをとり、乳化機の500mL容器に入れ、10℃以下に冷却しながら、毎分12000〜16000回転で10分間乳化し、冷所で1時間放置した後、油層が分離しないことを確認した後、使用する。
4−4.操作法
試料適量を精密に量り、1mL当たりの濃度が1.0〜5.0脂肪消化力単位となるように冷水を加えて溶かし、試料溶液とする。必要ならば、ろ過または遠心分離を行う。基質溶液5mLおよびpH7.0に調整した0.1mol/Lリン酸塩緩衝液4mLを正確に量り、よく混合したのち37±0.5℃で10分間放置してから試料溶液1mLを加える。その後、直ちに撹拌し、37±0.5℃で正確に20分間放置する。
次に、アセトン・エタノール混液(1:1)10mLを加えて振り混ぜ、0.05mol/L塩酸で滴定する(指示薬:フェノールフタレイン試液2〜3滴)。この場において、滴定の終点は、液の赤色が消えたときとし、その滴定量をAmLとする。別に、基質溶液5mLおよびpH7.0に調整した0.1mol/Lリン酸塩緩衝液4mLを正確に量り、よく混合したのち37±0.5℃で30分間放置する。
次に、アセトン・エタノール混液(1:1)10mLを正確に加えて撹拌し、さらに試料溶液1mLを正確に加えて振り混ぜ、以下上記と同様に操作し、その滴定量をBmLとする。次式より1g中の脂肪消化力単位(U)を求める。なお、式中のwは試料溶液1mL中の試料量(g)である。
U=50×(B−A)×1/20×1/w
[粒状組成物の酵素安定性評価]
上記で調製した粒状組成物の酵素安定性を以下の方法で評価した。
動物用飼料製造(家禽および魚類)のために採用されているペレット化工程の中で行われる湿熱処理の工程を、下記のような実験室内で再現させ、酵素組成物の酵素安定性を評価した。すなわち、試料の約0.5gをガラス容器に取り、予め含水させた米ぬか油かすを1g加えて混合した後、100℃の乾熱機(暖気循環型)の棚上に置いて8分間湿熱処理を行った後、それぞれの酵素組成物の酵素安定性について、それぞれ上記した酵素力試験法に従い、酵素活性の残存率を求めた。
また、比較のため、セルラーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼおよびリパーゼの各酵素原末を、上記のように、米ぬか油かすと混合したのち、湿熱処理して得たものを粉末状組成物として、同様の方法にて酵素活性の残存率を求めた。その結果を第1表に示した。

この結果は、本発明によるセルラーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼおよびリパーゼの粒状組成物は、湿熱処理後の酵素活性残存率が高いことを示している。
試験例2
この例では、市販酵素標品と本発明に係る粒状組成物の酵素安定性について比較した。すなわち、市販セルラーゼ(RONOZYME VP、ロシュ社製、ロット番号KT902015)と本発明に係る粒状組成物の酵素安定性を、試験例1に記載の分析方法を用いて比較した。その結果を第2表に示した。

第2表の結果は、本発明の粒状組成物は、比較対照とした市販酵素標品よりも有意に安定性が良いことを示している。
試験例3
この例では、本発明の粒状組成物を配合して調製したペレット状飼料における当該粒状組成物の湿熱安定性について調べた。
子豚用標準飼料(日本配合飼料社製)100kgに実施例3で調製した粒状組成物Cを1.4重量%または2.8重量%添加し、ペレット飼料製造機(カリフォルニア・ペレット・ミル社製1100シリーズ)を用いて、水蒸気温度74〜86℃の条件でペレット状飼料を製造した。
ペレット状飼料の品温が78〜80℃になったことを確認してから、飼料を採取した。飼料の採取後、湿熱履歴を考慮し、速やかにスポットエアコンの冷風にて冷却して、分析用試料とした。
対照として、市販セルラーゼ(RONOZYME VP、ロシュ社製、ロット番号KT902015)を用いたこと以外は同様にしてペレット状飼料を製造し、試験例1に記載の方法で湿熱安定性を、セルラーゼ活性の残存率で比較した。その結果を第3表に示した。

第3表の結果は、本発明の粒状組成物は、ペレット状飼料の製造において、市販品より安定であることを示している。
試験例4
この例では、抗生物質を用いて調製した粒状組成物の安定性について評価した。
[力価測定法(高速液体クロマトグラフ法)]
1.試料調製法
試料約1gを200mL容ネジ口三角フラスコに精密にとり、それぞれに内標準溶液2mLを正確に加えた後、10g/dLリン酸塩緩衝液(pH6.0)を98mL加えた後、密栓して30分間振とうしたのち静置して得た上澄みを0.45μmのメンブランフィルター(Maillex−HV、MILLIPORE社製、口径25mm)によりろ過し、試料溶液とした。
硫酸コリスチン常用標準品の約20mg(力価)を精密に量り、これを約50mLの10g/dLリン酸塩緩衝液(pH6.0)に溶かした後、前記内標準溶液2mLを正確に加えた。その後、10g/dLリン酸塩緩衝液(pH6.0)を加えて100mLとし、これを0.45μmのメンブランフィルターによりろ過したものを標準溶液とした。
2.分析方法
試料溶液および標準溶液各10μLにつき、下記の条件で液体クロマトグラフ法により試験を行い、それぞれの液の内標準物質のピーク面積に対する硫酸コリスチンAと硫酸コリスチンBの合計ピーク面積の比QおよびQを求め、次式より試料溶液中の硫酸コリスチンの量[μg(力価)/mL]を算出した。
試料溶液中の硫酸コリスチンの量[μg(力価)/mL]
=標準溶液中の硫酸コリスチンの量[μg(力価)/mL]×Q/Q
(操作条件)
使用機器 :汎用液体クロマトグラフ装置および自動積分装置
検 出 器 :紫外吸光光度計(測定波長:215nm)
カ ラ ム :内径4.6mm,長さ約250mmのステンレス管に5μmの液体クロマトグラフ用オクタデシルシリル化シリカゲルを充填したカラム(Inertsil ODS−3、ジーエルサイエンス(株)製)を用いた。
カラム温度 :25℃付近の一定温度
移 動 相 :0.05mol/L硫酸ナトリウム溶液とHPLC用アセトニトリルを76:24の割合で混合し、1mol/L硫酸にて、pH2.3に調整した。
流 量 :硫酸コリスチンBの保持時間が7〜8分になるようにした。
粒状組成物の安定性の評価は、前記試験例1の場合と基本的に同じ方法で実施したが、試料である本発明の粒状組成物H(実施例8)および比較例1の粉末状組成物aの1gを用いたこと並びに湿熱処理を100℃の乾熱機(暖気循環型)の棚上に置いた試料を60分間行ったことが異なっている。結果を第4表に示した。

この結果は、本発明に係るコリスチンの粒状組成物は、対照である粉末状組成物に比較して、湿熱処理後のコリスチン力価残存率が高いことを示している。
【産業上の利用可能性】
本発明の粒状組成物は、酵素、抗生物質などの生物活性成分を有効成分としており、この組成物は高温高湿条件下での安定性に優れている。そのため、医薬品、食品、洗剤などの分野において実用性が高い他、飼料分野においてペレット状飼料の製造などでの利用が期待される。
また、本発明の製造法によれば、前記の粒状組成物を、簡便な工程で、効率よく製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
核および核を被覆する層を含む組成物であって、核が糖類であり、核を被覆する層が硬化油および生物活性成分であることを特徴とする粒状組成物。
【請求項2】
糖類が、グラニュー糖または乳糖である請求項1記載の粒状組成物。
【請求項3】
硬化油が、パーム硬化油である請求項1記載の粒状組成物。
【請求項4】
生物活性成分が、酵素である請求項1記載の粒状組成物。
【請求項5】
酵素が、セルラーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼのうちの一もしくは二以上を組み合わせてなるものである請求項4記載の粒状組成物。
【請求項6】
セルラーゼが、トリコデルマ・ビリデ由来のセルラーゼである請求項5記載の粒状組成物。
【請求項7】
アミラーゼが、アスペルギルス・オリゼ由来のアミラーゼである請求項5記載の粒状組成物。
【請求項8】
プロテアーゼが、アスペルギルス・ニガー由来のプロテアーゼである請求項5記載の粒状組成物。
【請求項9】
リパーゼが、カンジダ・クリンダラシア由来のリパーゼである請求項5記載の粒状組成物。
【請求項10】
生物活性成分が、抗生物質である請求項1記載の粒状組成物。
【請求項11】
抗生物質が、コリスチンである請求項10記載の粒状組成物。
【請求項12】
生物活性成分の含有量が、0.1〜15重量%である請求項1および4〜11のいずれか1項記載の粒状組成物。
【請求項13】
溶融した硬化油と生物活性成分を含む混合物を、粒状の糖類に付着あるいは皮膜を形成させることを特徴とする請求項1記載の粒状組成物の製造法。
【請求項14】
糖類が、グラニュー糖または乳糖である請求項13記載の粒状組成物の製造法。
【請求項15】
硬化油が、パーム硬化油である請求項13記載の粒状組成物の製造法。
【請求項16】
生物活性成分が、酵素である請求項13記載の粒状組成物の製造法。
【請求項17】
酵素が、セルラーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼのうちの一もしくは二以上を組み合わせてなるものである請求項16記載の粒状組成物の製造法。
【請求項18】
生物活性成分が、抗生物質である請求項13記載の粒状組成物の製造法。
【請求項19】
抗生物質が、コリスチンである請求項18記載の粒状組成物の製造法。
【請求項20】
生物活性成分の含有量が、0.1〜15重量%である請求項13および16〜19のいずれか1項記載の粒状組成物の製造法。
【請求項21】
請求項1〜12のいずれか1項記載の粒状組成物を配合してなるペレット状飼料。
【請求項22】
ペレット状飼料の製造にあたり、請求項1〜12のいずれか1項記載の粒状組成物を使用することを特徴とするペレット状飼料の製造方法。

【国際公開番号】WO2004/047550
【国際公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【発行日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−555001(P2004−555001)
【国際出願番号】PCT/JP2003/014895
【国際出願日】平成15年11月21日(2003.11.21)
【出願人】(000006091)明治製菓株式会社 (180)
【出願人】(000104814)クニミネ工業株式会社 (30)
【Fターム(参考)】