説明

粘度指数向上剤及び潤滑油組成物

【課題】 粘度指数向上効果を高く保ちつつ、金属への吸着性に優れた粘度指数向上剤を提供する。
【解決手段】 特定のアルキル(メタ)アクリレートからなる構成単位(a)並びにチオール基含有構成単位(b1)及びカルボキシル基含有構成単位(b2)からなる群から選ばれる1種以上の構成単位(b)を含む油溶性共重合体(A)からなる粘度指数向上剤であって、前記共重合体(A)が、3,000〜1,000,000の重量平均分子量を有し、かつ、前記共重合体(A)の重量に基づいて前記構成単位(a)を50〜99.5重量%及び前記構成単位(b)を0.5〜50重量%含有することを特徴とする粘度指数向上剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘度指数向上剤、粘度指数向上剤組成物及び粘度指数向上剤を含有する潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などに使用される潤滑油や作動油等は一般に温度が高いほど粘度が低くなるが、実用上は低温から高温まで広い範囲にわたって粘度ができるだけ変化しないことが望ましい。そこで潤滑油に粘度指数向上剤と呼ばれる高分子化合物を添加して粘度の温度依存性を改善する方法が広く行われている。そのような高分子化合物としては、例えばメタクリル酸エステル共重合体(特許文献−1〜3参照)及びオレフィン共重合体(特許文献−4参照)が知られている。
近年、地球環境保護の気運が高まり、自動車の省燃費性がより一層要求されている。潤滑油の低粘度化は粘性抵抗低減による省燃費化の有効な手段の一つであり、低粘度化を実現するための方法として低粘度基油に粘度指数向上剤を添加する方法があるが、従来の粘度指数向上剤を用いた場合、粘度指数は高い水準で確保することはできても、低粘度化による潤滑性の低下、特に金属疲労性が悪化するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献−1】特許第2732187号公報
【特許文献−2】特開平8−53683号公報
【特許文献−3】特開2004−307551号公報
【特許文献−4】特開2005−200454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
潤滑油の粘度を低く保ちつつ、金属疲労性を改善させるためには、金属のしゅう動部の近傍のみを局部的に増粘させる方法が考えられ、金属への吸着性に優れたポリマーを用いて金属のしゅう動部の近傍におけるポリマー濃度を上げることが有効である。
即ち、本発明の課題は、粘度指数向上効果を高く保ちつつ、金属への吸着性に優れた粘度指数向上剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、特定の単量体から構成される重合体が、粘度指数向上能を高く保ちつつ、金属への吸着性に優れていることを見出し本発明に至った。即ち本発明は、炭素数8〜17のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートからなる構成単位及び炭素数18〜24の直鎖アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートからなる構成単位からなる群から選ばれる1種以上の構成単位(a)並びにチオール基含有構成単位(b1)及びカルボキシル基含有構成単位(b2)からなる群から選ばれる1種以上の構成単位(b)を含む油溶性共重合体(A)からなる粘度指数向上剤であって、前記共重合体(A)が、3,000〜1,000,000の重量平均分子量を有し、かつ、前記共重合体(A)の重量に基づいて前記構成単位(a)を50〜99.5重量%及び前記構成単位(b)を0.5〜50重量%含有することを特徴とする粘度指数向上剤;20〜90重量%の該粘度指数向上剤及び10〜80重量%の希釈剤からなる粘度指数向上剤組成物;並びに基油と該粘度指数向上剤又は該粘度指数向上剤組成物とからなり、粘度指数向上剤を潤滑油組成物の重量に基づいて0.01〜45重量%の量含有する潤滑油組成物;である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の粘度指数向上剤は、金属への吸着性に優れており、金属表面近傍を局部的に増粘させる効果を有していることから、金属疲労を起こしにくいという優れた効果を奏し、且つ、粘度指数向上効果も高い。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明における油溶性共重合体(A)の構成単位(a)は、C8-17(炭素数8〜17を意味し、以下同様である)のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート及びC18-24の直鎖アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる1種以上のアルキル(メタ)アクリレートを共重合させることにより得られる。
【0008】
8-17のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートとしては、直鎖C8-17アルキル(メタ)アクリレート、分岐C8-17アルキル(メタ)アクリレート及びこれらの混合物が挙げられる。
【0009】
直鎖C8-17アルキル(メタ)アクリレートとしては、n−オクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレート、n−ペンタデシル(メタ)アクリレート及びn−ヘキサデシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート並びにC8-17のチーグラーアルコールの(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0010】
分岐C8-17アルキル(メタ)アクリレートとしては、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソドデシル(メタ)アクリレート、2−メチルウンデシル(メタ)アクリレート、イソトリデシル(メタ)アクリレート、2−メチルドデシル(メタ)アクリレート、イソテトラデシル(メタ)アクリレート、2−メチルトリデシル(メタ)アクリレート、イソペンタデシル(メタ)アクリレート及び2−メチルテトラデシル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0011】
直鎖C8-17アルキル(メタ)アクリレートと分岐C8-17アルキル(メタ)アクリレートの混合物には、オキソアルコールの(メタ)アクリレートが含まれ、オキソアルコールとしては、「ネオドール23」及び「ネオドール45」(シェル化学株式会社製)、「ドバノール23」及び「ドバノール45」(三菱化学株式会社製)並びに「オキソコール1213」及び「オキソコール1415」(日産化学株式会社製)等が挙げられる。
【0012】
8-17のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートの内で好ましいのは、粘度指数及び低温粘度の観点から、C12-17(更にC12-16)アルキル(メタ)アクリレート、特に直鎖C12-17(更にC12-16)アルキル(メタ)アクリレートである。
【0013】
18-24の直鎖アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えばn−オクタデシル(メタ)アクリレート、n−ノナデシル(メタ)アクリレート、n−エイコシル(メタ)アクリレート、n−ドコシル(メタ)アクリレート及びn−テトラコシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの内で、粘度指数及び低温粘度の観点から好ましいのはn−オクタデシル(メタ)アクリレートである。
【0014】
本発明における油溶性共重合体(A)は、チオール基含有構成単位(b1)及びカルボキシル基含有構成単位(b2)からなる群から選ばれる1種以上の構成単位(b)を含むことにより、金属への吸着性が向上する。
【0015】
油溶性共重合体(A)が、チオール基含有構成単位(b1)を含む油溶性共重合体である場合の、チオール基の導入方法としては、以下の2つの方法が挙げられる。
(1)チオール基含有単量体を共重合する方法。
(2)チオール基に誘導しうる官能基を有する前駆体共重合体中の該官能基をチオール基に誘導する方法。
(1)及び(2)の内で好ましいのは、製造工程中の安定性の観点から(2)の方法である。
【0016】
前記(1)の方法におけるチオール基含有単量体としては、アリルメルカプタン及び2−メルカプトエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0017】
前記(2)の方法におけるチオール基に誘導しうる官能基としては、1級アミノ基、水酸基及びカルボキシル基が挙げられる。官能基の内、反応性の観点から好ましいのは1級アミノ基及び水酸基、特に1級アミノ基である。前記(2)の方法における前駆体共重合体は、1級アミノ基含有単量体、水酸基含有単量体若しくはカルボキシル基含有有単量体を含む単量体を共重合する方法、又は、1級アミノ基の場合はケチミン基含有単量体を共重合し、ケチミン基を加水分解する方法によって得られる。その後、得られた共重合体中の1級アミノ基、水酸基又はカルボキシル基と、これらの基と反応してチオール基を生成する化合物とを反応させることによって、目的とするチオール基含有構成単位を含む油溶性共重合体が得られる。
【0018】
官能基としてケチミン基を有する共重合体は、通常はケチミン基含有単量体を共重合成分の1つとして共重合することにより得られる。ケチミン基含有単量体は、比較的疎水性があり、かつ、共重合工程でも安定性が高く、副反応が起こりにくいので好ましく用いられる。
【0019】
ケチミン含有単量体としては、下記一般式(1)で示される単量体が挙げられ、該単量体を使用した場合は、得られた共重合体をアルカリ性又は中性で加水分解することにより、ケチミン基を1級アミノ基に変換することができる。
【0020】
【化1】

【0021】
式中、R1は水素原子又はメチル基、Qはカルボニル基又はC1-8のアルキレン基、Zは−O−又は−NH−、A1はC2-4のアルキレン基(例えばエチレン基、1,2−又は1,3−プロピレン基及び1,2−、1,3−又は1,4−ブチレン基)、nは0〜50の整数であり、Qがカルボニル基のときはnは1〜50の整数である。R2及びR3は、それぞれ独立に水素原子、C1-8のアルキル基、置換されていてもよいフェニル基又はR2とR3が相互に結合したC4-12のシクロアルキレン基であり、R2とR3が同時に水素原子になることはない。
【0022】
前記一般式(1)で示される単量体の内、Qがカルボニル基で、Zが−O−である単量体の製造方法としては以下の方法が挙げられる。例えば1級アミノ基含有アルコール[2
−アミノエタノール、2−アミノプロパノール、3−アミノプロパノール、2−アミノブタノール、3−アミノブタノール、4−アミノブタノール及び2−(2−アミノエトキシ)エタノール等]とケトン(シクロペンタノン、シクロヘキサノン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソプロピルケトン、ジイソプロピルケトン及びジイソブチルケトン等)又はアルデヒド(ベンズアルデヒド及びメトキシベンズアルデヒド等)を必要により水と共沸する溶媒(トルエン、ベンゼン及びキシレン等)を用い100℃又はそれ以上の温度で水を留出させて反応させてケチミン化アルコールを得た後、得られたケチミン化アルコールと(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル又は(メタ)アクリル酸エチル等とを脱水エステル化反応又はエステル交換反応させて一般式(1)で示される単量体が合成される。
【0023】
一般式(1)で示される単量体の内で、Qがアルキレン基のものは、(メタ)アリルアミン、アミノエチル(メタ)アリルエーテル及びアミノエトキシエチル(メタ)アリルエーテル等と、前述のケトンとの反応で得られる。
【0024】
一般式(1)で示される単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸とN−イソプロピリデン−2−ヒドロキシエチルアミンとのエステル、(メタ)アクリル酸とN−(1−メチルイソペンチリデン)−2−ヒドロキシエチルアミンとのエステル、(メタ)アクリル酸とN−1−イソブチルイソペンチリデン−2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルアミンとのエステル、(メタ)アクリル酸とN−イソプロピリデン−2−アミノエチルアミンとのアミド及び(メタ)アクリル酸とN−1−メチルイソペンチリデン−2−アミノエチルアミンとのアミド等が挙げられる。
【0025】
1級アミノ基含有単量体としては、アミノアルキル(C1-8)(メタ)アクリレート若しくは(メタ)アクリルアミド[アミノエチル(メタ)アクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート及びN−アミノエチル(メタ)アクリルアミド等]並びにモノアルケニルアミン[モノアリルアミン等]が挙げられる。
【0026】
水酸基含有単量体としては、水酸基を1個含有するC5-8の(メタ)アクリレート[例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及び2−ヒドロキシエトキシエチル(メタ)アクリレート];水酸基を2〜8個含有する(メタ)アクリレート[例えばグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ジグリセリン、蔗糖及びメチルグルコシドの(メタ)アクリレート];C2-6のアルケノール[例えばビニルアルコール(酢酸ビニル単位の加水分解により形成される)、(メタ)アリルアルコール、(イソ)プロペニルアルコール及び3〜8個の水酸基を含有する多価アルコールのC3-6アルケニルエーテル{トリメチロールプロパンモノ−又はジ−(メタ)アリルエーテル等}];水酸基含有芳香族単量体(o−、m−又はp−ヒドロキシスチレン等);並びに上記水酸基含有単量体のC2-4のアルキレンオキサイド(例えばエチレンオキサイド、1,2−又は1,3−プロピレンオキサイド及び1,2−、1,3−又は1,4−ブチレンオキサイド)付加物(付加モル数1〜20)等が挙げられる。
【0027】
カルボキシル基含有単量体としては、例えば不飽和モノカルボン酸[メタクリル酸、アクリル酸、(イソ)クロトン酸及びシンナミック酸等]、不飽和ジカルボン酸(マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸及びメサコン酸等)並びに不飽和ジカルボン酸のモノC1-8アルキルエステル(モノアルキルマレート、モノアルキルフマレート及びモノアルキルイタコネート等)が挙げられる。
【0028】
1級アミノ基、水酸基又はカルボキシル基と反応してチオール基を生成する化合物としては、例えばチオール基含有カルボン酸(チオグリコール酸及び3−メルカプトプロピオン酸等)、チオール基含有カルボン酸エステル(チオグリコール酸メチル及び3−メルカプトプロピオン酸メチル等)及び一般式(2)で示されるジチオエステル基若しくはトリチオエステル基を有する環状化合物(例えばエチレンジチオカルボナート、エチレントリチオカルボナート、炭素数3〜22のメルカプトカルボン酸の分子内環状エステル及び炭素数3〜22のメルカプトチオンカルボン酸の分子内環状エステル)が挙げられ、副反応が起こりにくさの観点から、好ましいのはジチオエステル基若しくはトリチオエステル基を有する環状化合物である。
【0029】
【化2】

【0030】
式中、R4は、炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐のアルキレン基又は炭素数2〜20の直鎖若しくは分岐のアルコキシアルキレン基、Xは酸素原子又は硫黄原子、Yは硫黄原子又はメチレン基である。
【0031】
チオール基に誘導しうる官能基をチオール基に誘導する方法で誘導されるチオール基としては、下記一般式(3)で示される基が挙げられる。
【0032】
【化3】

【0033】
一般式(3)において、R1、Q、Z及びA1はそれぞれ一般式(1)における前記R1、Q、Z及びA1に対応した同じ基であり、nはそれぞれ一般式(1)における前記nに対応した同じ数である。
【0034】
一般式(3)で示される基のうち、金属への吸着性の観点から好ましいものとしては、以下の基が挙げられる。
(1):一般式(3)において、R1=メチル基、Q=カルボニル基、Z=酸素原子、A1=エチレン基、n=2、である基
(2):一般式(3)において、R1=メチル基、Q=カルボニル基、Z=酸素原子、A1=エチレン基、n=1、である基
(3):一般式(3)において、R1=メチル基、Q=カルボニル基、Z=−NH−、A1=エチレン基、n=1、である基
【0035】
油溶性共重合体(A)にカルボキシル基含有構成単位(b2)を導入する方法としてはカルボキシル基含有単量体を共重合させる方法が挙げられる。
カルボキシル基含有単量体(b2)としては、前記カルボキシル基含有単量体と同様のものが挙げられる。これらの内、重合性と金属への吸着性の観点から好ましいのはメタクリル酸及びアクリル酸であり、更に好ましいのはメタクリル酸である。
【0036】
本発明における油溶性共重合体(A)は、更に炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートからなる構成単位(c)を含有してもよい。構成単位(c)としてはメチル、エチル、n−若しくはイソプロピル又はn−、イソ−、sec−若しくはt−ブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの内で、粘度指数向上能の観点から好ましいのはメチルメタクリレートである。
【0037】
油溶性共重合体(A)は、粘度指数及び金属への吸着性の観点から、(A)の重量に基づいて、下記表1に示した重量%の構成単位を含有する。
上記及び以下において、特別に規定しない限り%は重量%を示す。
【0038】
【表1】

【0039】
油溶性共重合体(A)の金属への吸着性は、(A)の酸化鉄への吸着試験における吸着INDEXによって評価できる。
【0040】
下記数式(1)で定義される吸着INDEXは、油溶性共重合体(A)の酸化鉄への吸着性を表すものである。(A)が高分子であることから、吸着前後の(A)の溶液の粘度変化によって金属表面に吸着された(A)の量の尺度とすることができ、吸着INDEXが大きいほど金属表面近傍でのポリマー濃度が高くなり、局部的に粘度が上がるため、金属疲労性が向上すると考えられる。
(A)の吸着INDEXは、好ましくは2以上、更に好ましくは2.5以上である。吸着INDEXが2以上であると、金属への吸着性が良好である。
【0041】
【数1】

【0042】
吸着試験前後の40℃での動粘度は、次の方法で測定したものである。
(1)基油(「ダイアナフレシアW−8」出光興産(株)製、100℃での動粘度:2.3mm2/s。40℃での動粘度:8.06mm2/s)180部に、油溶性共重合体(A)20部を添加し、80℃で1時間撹拌して溶解させて評価油を調製する。
(2)評価油の40℃での動粘度(吸着試験前の40℃での動粘度)をJIS−K−2283の方法で測定する。
(3)評価油100部に酸化鉄(2価及び3価の混合物)(アルドリッチ社製の試薬、粒径:5ミクロン以下)10部を加え、25℃で、2時間撹拌後、濾紙でろ過し、ろ液の40℃での動粘度(吸着試験後の40℃での動粘度)を測定する。
(4)上記計算式にて吸着INDEXを小数点以下1桁まで求める。
【0043】
<計算例>
吸着前の40℃での動粘度=10.68mm2/s、
吸着後の40℃での動粘度=10.61mm2/s、
基油[「ダイアナフレシアW−8」出光興産(株)製]の40℃での動粘度=8.06mm2/s;
【0044】
【数2】

【0045】
尚、吸着INDEXは、(A)を構成する単量体(b)及び/又は(c)の比率を増やすことにより上げることができ、比率を減らすことにより下げることができる。
【0046】
油溶性共重合体(A)は、通常、25℃の鉱物油100部に、少なくとも0.5部、好ましくは少なくとも2部、更に好ましくは少なくとも30部、特に好ましくは少なくとも70部溶解する。
【0047】
ポリスチレンを標準としたゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される(A)の重量平均分子量(以下Mwと略記)は、通常3,000〜1,000,000である。Mwが3,000未満では粘度指数が低く、1,000,000を超えるとせん断安定性が悪い。
(A)のMwの好ましい範囲は、(A)を含有する潤滑油組成物の用途によって異なるが、せん断安定性の観点から、好ましくは下記表2に記載の範囲である。(A)のMwは、重合時の温度、単量体濃度(溶媒濃度)、触媒量又は連鎖移動剤量等により調整できる。
【0048】
【表2】

【0049】
*:オートマチックトランスミッション油
**:ベルト−コンティニュアスリーバリュアブルトランスミッション油
***:マニュアルトランスミッション油
【0050】
(A)は、公知の製造方法によって得ることができる。例えば前記の単量体を溶剤中で重合触媒存在下にラジカル重合することにより得られる。
【0051】
溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン又はC9-10のアルキルベンゼン等の芳香族溶剤、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン及びオクタン等の脂肪族C6-18炭化水素、2−プロパノール、1−ブタノール及び2−ブタノール等のC3-8のアルコール系溶剤、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤並びに鉱物油が使用できる。これら溶剤の内で好ましいものは、溶解性の観点からアルコール系溶剤であり、更に好ましくは2−プロパノールである。
【0052】
重合触媒としては、アゾ系触媒[例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(以下、ADVNと略記)及びジメチル2,2−アゾビスイソブチレート]、過酸化物系触媒[例えば、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−アミルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、ジブチルパーオキシトリメチルアジペート、ベンゾイルパーオキシド、クミルパーオキシド及びラウリルパーオキシド]が使用できる。更に、必要により連鎖移動剤(例えば、C2-20のアルキルメルカプタン)を使用することもできる。
【0053】
反応温度は、通常50〜140℃、好ましくは60〜120℃である。また、上記の溶液重合の他に、塊状重合、乳化重合又は懸濁重合により得ることもできる。更に、共重合体の重合様式としては、ランダム付加重合又は交互共重合のいずれでもよく、また、グラフト共重合又はブロック共重合のいずれでもよい。
【0054】
本発明の粘度指数向上剤は、通常は上記油溶性共重合体(A)のみからなる。
【0055】
本発明の粘度指数向上剤組成物は、20〜90%の粘度指数向上剤及び10〜80%の希釈剤を含有する。
粘度指数向上剤をそのまま基油に添加するよりも、粘度指数向上剤組成物を添加する方が基油に溶解し易いという点で好ましい。
【0056】
粘度指数向上剤組成物としては、油溶性共重合体(A)を溶液重合で製造して得られた溶液状のもの及び希釈剤中に油溶性共重合体(A)を溶解して得られるものが挙げられる。
【0057】
希釈剤としては、脂肪族溶剤[C6-18の脂肪族炭化水素(ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、オクタン、デカリン及び灯油等)]、芳香族溶剤[C7-15の芳香族溶剤{トルエン、キシレン、エチルベンゼン、C9の芳香族混合溶剤(トリメチルベンゼン及びエチルトルエン等の混合物)及びC10-11の芳香族混合溶剤等}]、鉱物油[例えば、溶剤精製油、パラフィン油、イソパラフィンを含有する高粘度指数油、水素化分解による高粘度指数油及びナフテン油]並びに合成潤滑油[炭化水素系合成潤滑油(ポリα−オレフィン系合成潤滑油)及びエステル系合成潤滑油等]等が挙げられる。これらの内好ましいものは鉱物油及び合成潤滑油であり、更に好ましいのは鉱物油である。
【0058】
粘度指数向上剤組成物における油溶性共重合体(A)の割合は、粘度指数向上剤組成物の重量に基づき、ハンドリング性の観点から、好ましくは20〜90%、更に好ましくは30〜85%、特に40〜80%であり、希釈剤の割合は、粘度指数向上剤組成物の重量に基づき、好ましくは10〜80%、更に好ましくは15〜70%、特に好ましくは20〜60%である。
【0059】
本発明の潤滑油組成物は、基油と、前記粘度指数向上剤又は前記粘度指数向上剤組成物とを含有してなり、粘度指数向上剤を潤滑油組成物の重量に基づいて通常0.01〜45%含有する。
基油としては、鉱物油[例えば、溶剤精製油、パラフィン油、イソパラフィンを含有する高粘度指数油、水素化分解による高粘度指数油及びナフテン油]並びに合成潤滑油[炭化水素系合成潤滑油(ポリα−オレフィン系合成潤滑油等)及びエステル系合成潤滑油等]及びこれらの混合物が挙げられる。
【0060】
潤滑油組成物の用途に基づく潤滑油組成物中の粘度指数向上剤の好ましい含有量は、下記表3に記載の範囲である。
【0061】
【表3】

【0062】
基油の100℃での動粘度は、低粘度化の観点から、好ましくは1〜6mm2/sであり、更に好ましくは1〜5mm2/sである。
基油の粘度指数は、好ましくは60以上、更に好ましくは100以上、特に好ましくは105以上であり、好ましくは180以下、更に好ましくは175以下、特に好ましくは170以下である。
このような基油に本発明の粘度指数向上剤又は粘度指数向上剤組成物を配合した潤滑油組成物は、粘度指数が更に高くなり省燃費性が良好となる。
【0063】
また、基油の流動点(JIS K2269−1993年)は、好ましくは−5℃以下、更に好ましくは−10℃〜−70℃である。基油の流動点がこの範囲であるとワックスの析出量が少なく低温粘度が良好となる。
【0064】
潤滑油組成物の100での動粘度は、低粘度化の観点から、1〜12mm2/sであることが好ましく、更に好ましい範囲は、潤滑油組成物の用途に基づいて下記表4に記載の範囲である。
【0065】
【表4】

【0066】
本発明の潤滑油組成物は、デファレンシャル油及び工業用ギヤ油等のギヤ油、マニュアルトランスミッション油(以下、MTFと略記)、オートマチックトランスミッション油(以下、ATFと略記)及びベルト−CVTF等の変速機油、トロイダル−CVT油等のトラクション油、ショックアブソーバー油、パワーステアリング油、建設機械用作動油及び工業用作動油等の作動油並びにエンジン油等に好適に用いられる。これらの内で好ましいのはデファレンシャル油、ATF、ベルト−CVT油、エンジン油及びMTFであり、更に好ましいのはデファレンシャル油、ATF、ベルト−CVT油及びMTFである。
【0067】
本発明の潤滑油組成物は、更に任意の1種以上の添加剤を含むことができる。
【0068】
添加剤としては、以下のものが使用できる。
(1)清浄剤:
塩基性、過塩基性又は中性の金属塩[スルフォネート(石油スルフォネート、アルキルベンゼンスルフォネート及びアルキルナフタレンスルフォネート等)の過塩基性又はアルカリ土類金属塩等]、サリシレート類、フェネート類、ナフテネート類、カーボネート類、フォスフォネート類及びこれらの混合物;
(2)分散剤:
コハク酸イミド類(ビス−又はモノ−ポリブテニルコハク酸イミド類)、マンニッヒ縮合物及びボレート類等;
(3)抗酸化剤:
ヒンダードフェノール類及び芳香族2級アミン類等;
(4)油性向上剤:
長鎖脂肪酸及びそれらのエステル(オレイン酸及びオレイン酸エステル等)、長鎖アミン及びそれらのアミド(オレイルアミン及びオレイルアミド等)等;
(5)摩擦摩耗調整剤:
モリブデン系及び亜鉛系化合物(モリブデンジチオフォスフェート、モリブデンジチオカーバメート及びジンクジアルキルジチオフォスフェート等)等;
(6)極圧剤:
硫黄系化合物(モノ−及びジ−スルフィド、スルフォキシド及び硫黄フォスファイド化合
物)、フォスファイド化合物並びに塩素系化合物(塩素化パラフィン等)等;
(7)消泡剤:
シリコン油、金属石けん、脂肪酸エステル及びフォスフェート化合物等;
(8)抗乳化剤:
第4級アンモニウム塩(テトラアルキルアンモニウム塩等)、硫酸化油及びフォスフェート(ポリオキシエチレン含有非イオン性界面活性剤のフォスフェート等)等;
(9)腐食防止剤:
窒素原子含有化合物(ベンゾトリアゾール及び1,3,4−チオジアゾリル−2,5−ビスジアルキルジチオカーバメート等)等。
【0069】
これらの添加剤は、潤滑油組成物の重量に基づいて、下記表5記載の量を使用することができる。
【0070】
【表5】

【実施例】
【0071】
以下に実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下において部は重量部を表す。
【0072】
実施例で用いた測定方法及び試験方法は以下の通りである。
(GPCによる重量平均分子量の測定方法)
装置 : 東洋曹達製 HLC−802A
カラム : TSK gel GMH6 2本
測定温度 : 40℃
試料溶液 : 0.5%のテトラヒドロフラン溶液
溶液注入量 : 200μl
検出装置 : 屈折率検出器
標準 : ポリスチレン
【0073】
(低温粘度の試験方法)
JPI−5S−26−85の方法で−40℃の粘度を測定した。
(密度の測定方法)
JIS−K−2249の振動式の方法で行った。
(動粘度及び粘度指数の試験方法)
JIS−K−2283の方法で行った。
(せん断安定性の試験方法)
CEC L45−45−A−99の方法に従い試験時間を20時間とした。
【0074】
<製造例1>(ケチミン基含有単量体の合成)
攪拌装置、加熱冷却装置、温度計、滴下ロート、窒素吹き込み管及び減圧装置を備えた反応容器に、トルエン90部、ジイソブチルケトン200部及び2−(2−アミノエトキ
シ)エタノール50部を仕込み、130℃で4時間、還流させながら反応させた後、減圧下(圧力6mmHg)でトルエン及び未反応のイソブチルケトンを除去した。30℃に冷却後、メタクリル酸メチル75部、ナトリウムメトキシド2.0部、フェノチアジン2.5部及びトルエン200部を仕込み、80℃で6時間、減圧下(圧力500mmHg)で還流させながら反応させた後、減圧下(圧力6mmHg)でトルエン及びメタクリル酸メチルを除去して、下記構造式のメタクリル酸とN−1−イソブチルイソペンチリデン−2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルアミンとのエステル(以下、IBIPMAと略記)を得た。
【0075】
【化4】

【0076】
<実施例1>
攪拌装置、加熱冷却装置、温度計、滴下ロート、窒素吹き込み管及び減圧装置を備えた反応容器に、トルエン25部を仕込み、別のガラス製ビーカーに、n−ドデシルメタクリレート60部及び製造例1で得たIBIPMA62.5部、連鎖移動剤としてのドデシルメルカプタンを1.5部、ラジカル重合開始剤としてのADVN0.5部及びトルエン6部を仕込み、20℃で撹拌、混合して単量体溶液を調製し、滴下ロートに仕込んだ。反応容器の気相部の窒素置換を行った後に系内温度を70〜85℃に保ちながら、2時間かけて単量体溶液を滴下し、滴下終了から85℃で2時間熟成した。その後、水20部を加え85℃で2時間加熱撹拌し加水分解した。次に、120℃に昇温し、減圧下(圧力6mmHg)に水及びトルエンを留去し、得られたポリマーをメタノール500部で再沈殿し、メタノール200部で2回洗浄後、100℃で4時間、圧力6mmHgで減圧乾燥して、一級アミノ基含有共重合体を得た。更に得られた共重合体100部、エチレントリチオカルボナート20部及びテトラヒドロフランを500部仕込み、85℃で2時間還流させながら加熱撹拌を行い、開環反応させた。その後、85℃、減圧下(圧力6mmHg)でテトラヒドロフランを除去した。次にメタノール500部で再沈殿し、メタノール200部で2回洗浄後、100℃で4時間、圧力6mmHgで減圧乾燥し、チオール基含有粘度指数向上剤(A1)を得た。(A1)のMwを表6に示す。
【0077】
<実施例2>
n−ドデシルメタクリレート60部を2−エチルヘキシルアクリレート60部に変更した以外は実施例1と同様にして、チオール基含有粘度指数向上剤(A2)を得た。(A2)のMwを表6に示す。
【0078】
<実施例3>
n−ドデシルメタクリレート60部をn−ヘキサデシルメタクリレート60部に変更した以外は実施例1と同様にして、チオール基含有粘度指数向上剤(A3)を得た。(A3)のMwを表6に示す。
【0079】
<実施例4>
n−ドデシルメタクリレート60部をn−オクタデシルメタクリレート60部に変更した以外は実施例1と同様にして、チオール基含有粘度指数向上剤(A4)を得た。(A4)のMwを表6に示す。
【0080】
<実施例5>
n−ドデシルメタクリレート60部をn−テトラコシルメタクリレート60部に変更した以外は実施例1と同様にして、チオール基含有粘度指数向上剤(A5)を得た。(A5)のMwを表6に示す。
【0081】
<実施例6>
n−ドデシルメタクリレート60部をn−ドデシルメタクリレート30部及びn−オクタデシルメタクリレート30部に変更した以外は実施例1と同様にして、チオール基含有粘度指数向上剤(A6)を得た。(A6)のMwを表6に示す。
【0082】
<実施例7>
n−ドデシルメタクリレートの部数60部を99.5部に、IBIPMAの部数62.5部を0.8部に変更した以外は実施例1と同様にして、チオール基含有粘度指数向上剤(A7)を得た。(A7)のMwを表6に示す。
【0083】
<実施例8>
n−ドデシルメタクリレートの部数60部を50部に、IBIPMAの部数62.5部を78.1部に変更した以外は実施例1と同様にして、チオール基含有粘度指数向上剤(A8)を得た。(A8)のMwを表6に示す。
【0084】
<実施例9>
n−ドデシルメタクリレートの部数60部を80部に、IBIPMAの部数62.5部を31.3部に変更した以外は実施例1と同様にして、チオール基含有粘度指数向上剤(A9)を得た。(A9)のMwを表6に示す。
【0085】
<実施例10>
攪拌装置、加熱冷却装置、温度計、滴下ロート、窒素吹き込み管及び減圧装置を備えた反応容器に、トルエン25部を仕込み、別のガラス製ビーカーに、n−ドデシルメタクリレート75部、メタクリル酸25部、連鎖移動剤としてのドデシルメルカプタンを1.5部、ラジカル重合開始剤としてのADVN0.5部及びトルエン6部を仕込み、20℃で撹拌、混合して単量体溶液を調製し、滴下ロートに仕込んだ。反応容器の気相部の窒素置換を行った後に系内温度を70〜85℃に保ちながら、2時間かけて単量体溶液を滴下し、滴下終了から85℃で2時間熟成した。その後120℃、減圧下(圧力6mmHg)で水及びトルエンを留去して、カルボキシル基含有粘度指数向上剤(A10)を得た。(A10)のMwを表6に示す。
【0086】
<実施例11>
n−ドデシルメタクリレート75部をn−ドデシルメタクリレート30部、n−オクタデシルメタクリレート30部及びメチルメタクリレート15部に変更した以外は実施例10と同様にして、カルボキシル基含有粘度指数向上剤(A11)を得た。(A11)のMwを表6に示す。
【0087】
<実施例12>
n−ドデシルメタクリレート75部をn−ドデシルメタクリレート30部、n−オクタデシルメタクリレート30部及びn−ブチルメタクリレート15部に変更した以外は実施例10と同様にして、カルボキシル基含有粘度指数向上剤(A12)を得た。(A12)のMwを表6に示す。
【0088】
<比較例1>
n−ドデシルメタクリレートの部数75部を100部に変更し、メタクリル酸25部を使用しなかった以外は実施例10と同様にして、比較用粘度指数向上剤(B1)を得た。(B1)のMwを表6に示す。
【0089】
<比較例2>
n−ドデシルメタクリレート75部をn−ドデシルメタクリレート40部、n−オクタデシルメタクリレート30部及びメチルメタクリレート30部に変更した以外は実施例10と同様にして、比較用粘度指数向上剤(B2)を得た。(B2)のMwを表6に示す。
【0090】
<比較例3>
n−ドデシルメタクリレート60部をn−ドデシルメタクリレート69.8部及びn−オクタデシルメタクリレート30部に、IBIPMAの部数62.5部を0.3部に変更した以外は実施例1と同様にして、比較用粘度指数向上剤(B3)を得た。(B3)のMwを表6に示す。
【0091】
<比較例4>
n−ドデシルメタクリレート60部をn−ドデシルメタクリレート20部及びn−オクタデシルメタクリレート20部に、IBIPMAの部数62.5部を93.8部に変更した以外は実施例1と同様にして、比較用粘度指数向上剤(B4)を得た。(B4)のMwを表6に示す。
【0092】
【表6】

【0093】
尚、表6の(a)〜(c)の各構成単位は以下の通りである。
(a1):n−ドデシルメタクリレート
(a2):2−エチルヘキシルアクリレート
(a3):n−ヘキサデシルメタクリレート
(a4):n−オクタデシルメタクリレート
(a5):n−テトラコシルアクリレート
(b1):2−(2−メルカプトエトキシ)エチルメタクリレート
(b2):メタクリル酸
(c1):メチルメタクリレート
(c2):n−ブチルメタクリレート
【0094】
<実施例13〜24及び比較例5〜8>(潤滑油組成物の製造及び評価)
撹拌混合装置の付いたステンレス製容器に、得られる潤滑油組成物の100℃での動粘度が5.2±0.2(mm2/s)になり、かつ潤滑油組成物の合計が100部になるように基油(高粘度指数油;100℃での動粘度=4.6mm2/s、粘度指数=118、流動点=−17.5℃)と(A1)〜(A12)又は(B1)〜(B4)をそれぞれ仕込み、80℃で1時間混合し、本発明の潤滑油組成物(C1)〜(C12)及び比較の潤滑油組成物(D1)〜(D4)を作製した。
得られた潤滑油組成物の100℃での動粘度、粘度指数、−40℃での低温粘度、せん断安定性及び粘度指数向上剤の吸着INDEXの測定結果を表7に示す。
【0095】
【表7】

【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の粘度指数向上剤を使用した潤滑油組成物は、従来の粘度指数向上剤を使用した潤滑油組成物に比べて、粘度指数向上効果及び金属への吸着性が優れていることから、輸送用機器用及び各種工作機器用等の駆動系潤滑油[ギア油(マニュアルトランスミッション油及びデファレンシャル油等)や自動変速機油(オートマチックトランスミッション油、ベルトCVT油及びトロイダルCVT油等)等]、作動油(機械の作動油、パワーステアリング油及びショックアブソーバー油等)並びにエンジン油(ガソリン用及びディーゼル用等)に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数8〜17のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートからなる構成単位及び炭素数18〜24の直鎖アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートからなる構成単位からなる群から選ばれる1種以上の構成単位(a)並びにチオール基含有構成単位(b1)及びカルボキシル基含有構成単位(b2)からなる群から選ばれる1種以上の構成単位(b)を含む油溶性共重合体(A)からなる粘度指数向上剤であって、前記共重合体(A)が、3,000〜1,000,000の重量平均分子量を有し、かつ、前記共重合体(A)の全重量に基づいて前記構成単位(a)を50〜99.5重量%及び前記構成単位(b)を0.5〜50重量%含有することを特徴とする粘度指数向上剤。
【請求項2】
前記油溶性共重合体(A)が、チオール基に誘導しうる官能基を有する前駆体共重合体中の該官能基をチオール基に誘導して得られる油溶性共重合体である請求項1記載の粘度指数向上剤。
【請求項3】
前記油溶性共重合体(A)が、更に炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートからなる構成単位(c)を含有し、前記共重合体(A)の全重量に基づいて、前記構成単位(a)を60〜94.5重量%、前記構成単位(b)を0.5〜30重量%及び前記構成単位(c)を5〜30重量%含有する請求項1又は2記載の粘度指数向上剤。
【請求項4】
前記油溶性共重合体(A)が前記構成単位(a)、前記構成単位(b)及び前記構成単位(c)のみからなる請求項1〜3のいずれか記載の粘度指数向上剤。
【請求項5】
20〜90重量%の請求項1〜4のいずれか記載の粘度指数向上剤及び10〜80重量%の希釈剤からなる粘度指数向上剤組成物。
【請求項6】
基油と請求項1〜4のいずれか記載の粘度指数向上剤又は請求項5記載の粘度指数向上剤組成物を含有し、粘度指数向上剤を潤滑油組成物の重量に基づいて0.01〜45重量%含有する潤滑油組成物。
【請求項7】
ギヤー油用、変速機油用、トラクション油用、作動油用又はエンジン油用である請求項6記載の潤滑油組成物。

【公開番号】特開2009−256665(P2009−256665A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−78724(P2009−78724)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】