説明

粘弾性材料用のストランド押出し型

本発明は、幾つかの同様の平行な型チャネル(2)を有する、ポリマーや生地の塊などの粘弾性の塊の押出し型を形成するための型アセンブリ(1)に関する。チャネルはそれぞれ、塊の軸方向輸送方向(F)に型アセンブリ(1)を通って延びる。本発明によれば、それぞれの仕切り(5)が2つの隣接する入口開口(3)の間の型ボディ(1)の上流端に設けられる。この仕切りは軸方向輸送方向(F)と平行に延び、その上流端に刃先(5a)を具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1又は17のいわゆるプレアンブル部分に従う粘弾性材料のための型装置とストランド押出し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特にポリマーやパスタなどの粘弾性材料のためのストランド押出し型装置が当該技術分野において知られている。原則として、それらは幾つかの相互に平行な同一の型管を備えている。これらの管は1つのそれぞれの入口開口の型を通って出口開口に延びる。それぞれの型管は軸方向の材料の運搬方向に型管の上流端に入口領域を、型管の下流端に出口流域を有する。入口開口は互いに隣接している。
【0003】
例えばパスタやポリマーの粘弾性材料のストランドを押出す際、これらの材料は成形される。しかしながら、成形には材料の流れが必要である。材料は特定の位置で裂ける。粘弾性材料の弾性特性のために、機械的材料ストレスも成形・断裂プロセスにおいてこのような粘弾性材料内で生じる。成形のプロセス後材料は完成し、これが付加的な明らかに自発的な変形をもたらす。これに関連して、成形装置から出る材料の機械材料ストレスは、それが先の形状を「覚え」ており、それに戻ろうとする印象を与えるので、「形状記憶」がしばしば参照される。型装置によりパスタやポリマーのストランドを押出す際、これがそれぞれの型管を出るストランドの縮れを引き起こす。ここで、ストレスは、一方で様々な型管への材料の分割・分配の際、他方で材料が型管内に広がる際、材料に生じる。材料の分割・分離から生じる材料内のストレスは、成形されたストランドに対する非対称性のため最も分裂的な効果を有する。しかしながら、材料ストレスと方向を変えようとするストランドの結果的な傾向は型管内で非対称的な壁摩擦を作る。これは、ある条件下でこれら材料ストレスをさらに高める。とにかく、このような粘弾性材料から成るストランドは型装置から出る際前記の縮れを受けやすい。
【0004】
加えて、材料を分離し、材料を成形型管に分配し、最後にそれを成形型管から押出すために、粘弾性材料のストランドへの押出しは比較的多量のエネルギーと型装置における高い圧力差の使用を要する。この間材料は広げられる。言い換えれば、粘弾性材料を成形するのに用いられる従来の型装置は、これら材料に対して比較的高い型抵抗を有する。これは、パスタにとって特に問題がある。ポリエステルやゴムのような古典的なポリマーとは対照的に、主に材料の表面に限定すれば、前記装置は型抵抗と、型装置において少なくとも局所的な温度増加により材料にもたらされたストレスとを減少させるほんの限られた可能性を提供するだけだからである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、粘弾性材料を材料ストランドに成形する際粘弾性材料のこのような材料ストレスを最小化し、またストランド押出しに必要なエネルギー出費や圧力差を低下させること、すなわちこの目的に必要な型抵抗を最小にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、2つのそれぞれ隣接した入口開口の間で型ボディの上流端において軸方向運搬方向Fと平行に延びる分離壁を配置し、分離壁の上流端が刃先(カッティングエッジ)を有することにより冒頭で述べた本発明に従う型装置により達成される。
【0007】
ポリマー材料やパスタなどの粘弾性材料が本発明に従う型装置に当たると、運搬方向Fに沿うケーシングに供給される製品流れは幾つかの部分流れに分けられ、その1つは幾つかの型管の1つを通って流れる。製品流れが幾つかの型管に入る前に、鋭利な刃先が、型装置に供給される製品流れを幾つかの部分流れに分ける。それぞれの刃先は製品に対して非常に小さい当たり面を示すだけなので、局所的な非常に大きい力が刃先において供給された粘弾性製品に作用する。これは、製品を分離させる、刃先に沿う局所的に集中したせん断力を生じさせる。しかしながら、刃先5aに供給される粘弾性製品は刃先で引き裂かれる前に、それが極限の引張応力と壊れる長さに至るまで変形させられる。ポテンシャルエネルギーが粘弾性材料内に蓄えられ、幾つかの部分流れに中継される。しかしながら、全体として、刃先を介して粘弾性材料を幾つかの型管に分離及び分配する際材料にもたらされるストレスは、鋭利な刃先のない従来の型装置より明らかに少ない。それでかなり少ない中身が粘弾性材料の形状記憶になる一方、本発明に従う型装置に供給される粘弾性材料は幾つかの部分ストランドに分配され、それにより型抵抗に加えて、材料が型管を出る際の製品ストランドの変形傾向(縮れなど)が著しく減少する。これらポジティブな効果は特にパスタ型装置について言える。
【0008】
それぞれの隣接する入口開口の入口領域から上流に位置する領域は、軸方向の運搬方向と平行に延びる分離壁で完全に包囲されるのが好ましい。その上流端はそれぞれの刃先として設計される。結局、それぞれの型管に入る材料はなお分離が必要な実質的に全ての点でカットされる。それで、非常に低いストレスが材料にもたらされる。
【0009】
刃先は材料の軸方向運搬方向と90°異なった角度を形成する。例えば、刃先は材料の運搬方向に対して約30〜60°の角度で傾く。しかしながら、運搬方向に対する角度が鋭くなるほど、材料が運搬方向と垂直な半径方向(例えば、半径方向外側から半径方向内側)にカットされる領域の運搬方向に沿って測定される長さLが大きくなるので、鋭角が好ましい。例えば、材料の半径方向外側に流れる領域が初めにカットされるのに対し、材料の半径方向内側に流れる領域は後にカットされる。しかしながら、カットプロセスで材料にもたらされるストレスは半径方向外側領域ですでに和らぐ時間を有していた。従って、カットプロセスにより、流れ方向に直角に延びる所与の刃先の場合より、全体的に型管に分配される材料にもたらされるストレスが少なくなる(単純な「クッキーカッター」原理)。
【0010】
内側型管領域から出口開口に向かう出口領域は、軸方向運搬方向Fに沿って長さLにわたってベル状に広がると有利である。軸方向運搬方向と型出口領域の内壁の間で測定される出口広がりの広がり角度は、軸方向運搬方向に沿って急に増大する。特に、広がり角度は軸方向運搬方向に沿って安定して上がり続け、型内部の0°の広がり角度は型ボディの下流端で90°まで増大する。この場合、長手部分の広がりによるパターンは円に似ており、例えばその曲率半径Rは内側型管領域の半径Rより大きい。この湾曲し広がった出口領域は、従来の出口開口の端と、型管内の垂直な接線から垂線に対してある傾きで(極端な場合、水平に)伸びる出口領域の下流端における接線への湾曲した連続移行部とを交換する。
【0011】
例えばパスタやポリマーなどの粘弾性材料が本発明に従う型装置の型管に当たる際、幾つかの部分流れに分けられた製品流れは幾つかの型管を押し通される。材料が型管に入り、入口領域での成形プロセスの際、材料にストレスが生じる。カットプロセスの間及び/又は型管で広がる間まだ刃先で弱められなかった、材料内で発生したストレスは、広がった出口領域で実質的に完全に緩められる。従って、この型の幾何学的形状では、幾つかの小さい製品ストランドが実質的にストレスなしでそれぞれの型管を出る。広がった出口領域により、製品は軸方向及び半径方向の両方に緩和することができる。これは、型管を出る粘弾性製品ストランドの表面のフルーティング(「シャークスキン」)を防ぐ。
【0012】
特別な実施形態では、出口領域の型管内壁は、軸方向運搬方向に沿う長さLにわたって残りの型管内壁より高い表面粗さを有する。これにより、粗い領域の粗さ及び/又は材料の選択によって製品の表面に特に影響を及ぼすことができる。
【0013】
型管の入口領域が内部領域から長さLに沿う軸方向運搬方向Fと反対側の入口開口に向かって広がるのも有利である。軸方向運搬方向と管入口領域の内壁の間で測定される入口広がりの広がり角度は5〜45°、好ましくは8〜25°になる。製造の観点からは、内部領域から入口開口まで一定の広がり角度を有するのが、すなわち円錐形の入口広がりがあるのが特に簡単である。結局、「穏やかな」広がり、すなわち粘弾性材料の十分ゆっくりした広がりが、比較的高い材料の運搬速度においても実現できる。これは、粘弾性材料の緩和時間が入口広がりでの材料広がりの継続時間より短いことを表す。
【0014】
型装置は、その全長に沿って円形断面を型管に与えるように最良に設計されている。結局、壁のどこでも同じ境界条件が整い、一様で最高に対称的な広がりができる。
【0015】
型装置のコンパクトな構造設計は、管入口領域の軸方向長さがノズル管の全長の50〜80%になることを特徴とする。
【0016】
型管の内壁の少なくとも一部の領域は、粘弾性材料の内壁への付着とそれによる滑り摩擦を防ぐために、テフロン(登録商標)又は同様の材料から成る。
【0017】
前記の型装置の使用を伴う、前記の特にポリマーやパスタなどの粘弾性材料のためのストランド押出し法では、粘弾性材料は、型装置の上流端と下流端の間の圧力勾配Δpにより型装置を押し通される。ここで本発明によれば、圧力勾配Δpは、少なくとも一部のストランド押出しに必要な材料成形が行われる型装置のそれぞれの軸方向部分領域での運搬方向Fに沿う粘弾性材料の流速vにより条件v<L/TRELAXが満たされるように、選択される。ここで、TRELAXは粘弾性材料の緩和時間、L(=L,L,L)は型装置のそれぞれの軸方向部分領域の軸方向長さである。
【0018】
これにより、材料がストランド押出しに必要な粘弾性材料のそれぞれの成形ステップ(例えば、刃先での長さLに沿うカッティング、入口広がりの長さLに沿う広がり、及び出口広がりの長さLに沿う最後の緩和)で緩和するのに十分な時間を常に有し、それで本発明に従う型装置の端で出る間材料は実質的にそれ以上ストレスを有しないことが保証される。
【0019】
前記の粗い軸方向部分領域を最適に利用するために、運搬方向Fに沿う粘弾性材料の流速vは、v>L/TRELAXを満たすように本発明に従う方法の型装置の粗い軸方向部分領域の長さLに調節される。ここで、TRELAXは粘弾性材料の緩和時間であり、Lは粗い部分領域の軸方向長さである。
【0020】
従って、粗い領域の軸方向長さLは好ましくは出口広がりの軸方向長さLより短く、入口広がりの軸方向長さLより短く、そして刃先の軸方向長さLより短い。
【0021】
しかしながら、条件v>L/TRELAXをそれぞれ満たす幾つかの連続して並んだ領域を有する型管の大きい軸方向部分領域を設けることも有利である。壁粘着と壁滑りの相互作用(粘着/滑り効果)はこのようにして影響を受ける。例えば、長さLの粗い軸方向壁部分の周期性又は空間周波数と流速により、特に単位時間当たりに多めの壁裂けを発生させることができる。すなわち、非常に頻発する粘着/滑り効果は、比較的粗い及び比較的滑らかな壁部分を交互にすることで「人工的に」引き起こされる。この利点は、過度に高い材料ストレスが生じず、あるとしても製品に小さめの裂けが生じることである。
【0022】
本発明の付加的な利点、特徴及び可能性のある用途は、限定して解釈されない図に基づいた好ましい実施形態の以下の記述から分かるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1は、軸方向の製品運搬方向Fに沿う、特に麺製造で用いられるパスタのために設計された型装置1の断面図を示す。全部で4本の型管2を有する型装置1(図2参照)は円筒ケーシング7に収容されている。入口開口3はそれぞれの型管2の上流端に位置しており、出口開口4はそれぞれの型管2の下流端に位置している。入口開口3に隣接するそれぞれの型管の入口領域2aは円錐形に広がっているのに対し、出口領域2cは円筒形である。広がり角度α(図3参照)は約10〜20°になる。型装置1の上流端は軸方向の運搬方向Fと平行に延びる4つの分離壁5を有し(図2参照)、この分離壁は入口開口3から上流の領域を入口開口3からそれぞれ上流にある4つの部分領域に分けている。軸方向の運搬方向Fに面する分離壁5の端はそれぞれ、傾斜のついた刃先5aとして設計され、刃先は半径方向内側及び運搬方向Fの両方にケーシング7の内壁から延びる。
【0024】
図2は、製品運搬方向F(図1参照)に沿う図1の型装置1の平面図である。円筒ケーシング7から半径方向内側に延びた分離壁5に加えて、それぞれの円錐形に広がった入口領域2aを有する4本の型管2が見てとれる。分離壁は型装置1の上の領域を4つの部分領域に分けている。4つの鋭利な刃先5aは運搬方向Fに対してある傾斜で延びる。
【0025】
例えばポリマーやパスタなどの粘弾性材料が、図1において流れプロファイルV(r)で概略的に示された本発明に従う型装置1に当たる場合、運搬方向Fに沿ってケーシング7に供給される製品流れは4本の型管2のそれぞれを通って流れる4つの部分流れに分かれる。製品流れが4本の型管2に入る前に、鋭利な刃先5aが型装置1に供給される製品流れを4つの部分流れに分離する。各刃先5aは運搬方向Fに向かい合った製品に対して非常に小さい当たり面を示すだけなので、局所的な非常に大きい力が、刃先5aに当たる粘弾性製品に刃先5aで加えられる。局所的に集中したせん断力が刃先5aに沿って生じ、製品を分離する。しかしながら、刃先5aに供給される粘弾性製品は刃先で引き裂かれる前に、壊れる長さに至るまで変形する。ポテンシャルエネルギーが粘弾性材料内に蓄えられ、4つの部分流れに中継され、これら4つの部分流れにおいて部分的な緩和が生じる。そして、一度材料がそれぞれの型管2に入ると、さらなる粘弾性材料の変形又は成形が4つの製品部分流れ内で生じる。ここでも、材料が型管2に入り、それぞれの入口領域2aで成形される際、材料内でストレスが発生する。しかしながら、これらストレスは刃先5aにおけるよりも小さく、製品は引きちぎられない。
【0026】
刃先のない、また約10〜20°の本発明に従う広がり角度を有する円錐広がり部分のない従来の型装置とは対照的に、本発明に記述された型管2の入口領域2aと分離壁5の刃先5aのレイアウトは、型装置1の流れ抵抗に加えて、本発明に従う型装置1を通って運ばれ成形される材料に生じるストレスの範囲を減少させる。
【0027】
この理由は、材料ストレスの発生に関連する1つの大きい製品ストランドを4本の小さい製品ストランドに変えるプロセスが、本発明に従う型装置1において2ステップで本質的に行われることにある。第1ステップでは、刃先5aで大きい製品ストランドが4本の小さい部分ストランドにカットされる。次いで、第2ステップでは、4本の部分ストランドが円錐形入口領域2aで広げられる。第1ステップ(刃先5aでのカッティング)の直後で、第2ステップ(入口領域2aでの拡大)の前に、材料が分離壁5に沿って滑ると、部分的な緩和(ストレス減少、ポテンシャルエネルギーの低下)が材料において起こる。次いで製品が円錐形入口領域2aにおいて広げられると、材料ストレスも発生し、少なくとも部分的な緩和が隣接する円筒出口領域2cで再び生じる。結局、4本の小さい製品ストランドに分けられた粘弾性材料は、実質的にストレスのないまま型管2の出口開口4から出る。それで、4本の出て行く製品ストランドは顕著な変形(例えば、縮れ)を受けない。製品は刃先のためにはるかに小さい製品せん断力で裂けるので、本発明に従う型装置1の流れ抵抗も確実に減少する。
【0028】
従って、本発明に従う型装置1により、従来の型装置に対して低めの圧力差、すなわち型装置1に沿う製品の低めの圧力勾配で操作が可能になる。一方、出て行く部分製品ストランドの形状記憶を実質的に完全に「消去する」。
【0029】
図3は、軸方向の製品運搬方向Fに沿う麺製造に用いられる特にパスタのために設計された型管2を通る断面を示す。この型管2は図1で示された型管2と交換して用いられる。図1の型管2の円筒出口領域2cに代えて、入口領域2aには、ベル状に広がった出口領域2cが続いた比較的短い円筒内部領域2bが下流側に続いている。この出口領域2cは、出口開口4(図1参照)の端と、型管2の内部2bの垂直接線から出口領域2cの下流端での水平接線への湾曲した連続移行部を交換する。出口広がりの曲率半径Rは出口開口4に向かって連続的に減少する。すなわち、出口開口4に向かって先細りしたベル状広がり部分が存在する。
【0030】
例えば、ポリマーやパスタなどの粘弾性材料が図1について記述したように本発明に従う型装置1の型管2に当たる場合、4つの部分流れに分かれた製品流れが4本の型管2を押し通される(図1及び2参照)。図1にあるように、材料が型管2に入り、入口領域2aで成形される際、ストレスが材料内で生じる。次いで、ここでも、材料内で大きくなり、また第1ステップ(刃先5aでのカット)及び/又は第2ステップ(入口領域2aでの拡大)の際にまだ緩められていないストレスが、広がった出口領域2cにおいて実質的に完全に緩められる。従って、この型の幾何学形状でも、幾つかの小さい製品ストランドは実質的にストレスなくそれぞれの型管2から出る。ここで、広げられた出口領域2cの1つの特別な利点は、それにより製品が軸方向と半径方向の両方で緩和することである。これにより、円筒出口領域2cにおける鋭利なエッジの出口開口4があれば実質的に常に生じる型管2から出る粘弾性製品ストランドの表面のフルーティング(「シャークスキン」)が防がれる(図1参照)。
【0031】
製品運搬方向Fに沿う粘弾性材料の最大流速vに加えて、刃先5aの軸方向長さLと出口領域2cの軸方向長さLにより本質的に形成される図1及び3に示された緩和領域の軸方向長さは、そこで先に生じたストレスを和らげるため、材料がそれぞれの緩和領域を通過する際材料に十分な時間を与えるように、製品材料の緩和時間TRELAXに合わせられるのが好ましい(すなわち、v×TRELAX<L、又はv×TRELAX<L)。
【0032】
刃先5aを具備した型装置1において図3のベル状出口領域2cと円錐形入口領域2aを備えた型管2を用いることにより、型装置1に沿う製品の低めの圧力勾配と、出る部分製品ストランドの体積形状記憶の実質的に完全な「消去」が可能になるだけでなく、これら製品ストランドの表面形状記憶の「消去」も可能になる。
【0033】
型管のベル状出口領域2cの別な利点は、それにより、型管2内に存在する放物線状の速度プロファイルを有する流れから、型管2の外側に存在する一定の速度プロファイルを有する「流れ」へのスムーズな移行、すなわち、移動するストランドが可能になることである。これにより、型管2から出るストランドの表面の引き裂けが防がれる。
【0034】
図4は、軸方向の製品運搬方向Fに沿う、特に麺製造で用いられるパスタのために作られた本発明に従う別な型管2の断面図である。入口開口3に隣接する型管2の入口領域2aはベルの形状に広がっているのに対し、出口領域2cは円筒形である。入口広がりの曲率半径Rは入口開口3で最小であり、型管2に沿う浸透深さが増すに連れて大きくなり、最終的に接線方向に円筒出口領域2cに移行する。
【0035】
ベル状出口領域と同様に、ベルの形状に広がった入口領域2aは、製品が慎重に加工されるのを保証する。しばしば製品の引き裂けを生じさせる急な速度変化は、ベル状に広がった入口領域2aでのスムーズな加速によりなくなり、この場合にも、型管2の上流の一定速度プロファイルを有する流れから型管2内の放物線状の速度プロファイルを有する流れへのスムーズな移行が保証される。
【0036】
図5は、軸方向の製品運搬方向Fに沿う従来技術の型管2の断面図である。型管は、入口開口3から出口開口4まで一定の半径Rを有する円筒として設計されている。
【0037】
図6は、軸方向の製品運搬方向Fに沿う従来技術の別な型管2の断面図である。入口領域2aは本発明に比べてかなり大きめの広がり角度αを有し、本発明におけるよりもはるかに短い長さLを有する。
【0038】
図7は、図1及び2に示された本発明に従う型装置の第1実施形態の半分の斜視図である。平らなショルダー面が、型管2の入口開口3とそれぞれの刃先5aを有する分離壁5との間で運搬方向Fと垂直に延びる。運搬方向Fに対して傾いて延びる刃先5aは、平らなショルダー面8により引き起こされる流れ抵抗を著しく減少させる。図7に示される実施形態は、回転工具による機械加工により特別有利に作成される。
【0039】
図8は、本発明に従う型装置の第2実施形態の図7に対応する斜視図である。しかしながら、それは、型管2の入口開口3と図7における第1実施形態の平らなショルダー面8とが一重に湾曲した移行面9で形成される点で、図7の第1実施形態と異なる。これは、この第2実施形態に従う型装置の流れ抵抗をさらに減少させるのに役立つ。
【0040】
図9は、本発明に従う型装置の第3実施形態の図7及び8に対応する斜視図を示す。ここでは、二重に湾曲した移行面10が図8における一重に湾曲した移行面9に代えて用いられ、図7の実施形態の型管2の入口開口3及び平らなショルダー面8に取って代わっている。
【0041】
加工すべき粘弾性材料の種類によって、一重に湾曲した移行面9又は二重に湾曲した移行面10が、図7に示された実施形態に対して流れ抵抗のさらなる減少を実現する。図7の実施形態は好ましくは回転工具による機械加工により作成されるのに対し、図8及び9の実施形態は好ましくは鋳造方法により製作される。刃先5aを有する分離壁5は、図7の実施形態の事後に機械加工された型ボディに挿入される。図8及び9の実施形態では、分離壁5は型ボディを鋳造するときに既に作られ、型ボディと一体化するか、図7と同様に事後に鋳造型ボディに組み込まれる。
【0042】
型ボディのための好ましい材料は金属又はプラスチック、特に内面テフロン(登録商標)コーティングを有する材料であるのに対し、分離壁は金属でできているのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】軸方向の製品運搬方向Fに沿う本発明に従う型装置の断面図である。
【図2】製品運搬方向Fに沿う図1における本発明に従う型装置の平面図である。
【図3】軸方向の製品運搬方向Fに沿う本発明に従う型の管の断面図である。
【図4】軸方向の製品運搬方向Fに沿う本発明に従う別な型の管の断面図である。
【図5】軸方向の製品運搬方向Fに沿う従来技術に従う型の管の断面図である。
【図6】軸方向の製品運搬方向Fに沿う本発明に従う別な型の管の断面図である。
【図7】図1及び2に示された本発明に従う型装置の第1実施形態の半分の斜視図である。
【図8】本発明に従う型装置の第2実施形態の図7に対応する斜視図である。
【図9】本発明に従う型装置の第3実施形態の図7及び8に対応する斜視図である。
【符号の説明】
【0044】
1 型装置
2 型管
2a 型管の入口領域
2b 型管の内部領域
2c 型管の出口領域
3 型管の入口開口
4 型管の出口開口
5 分離壁
5a 刃先
7 ケーシング
8 平らなショルダー面
9 一重に湾曲した移行面
10 二重に湾曲した移行面
F 運搬方向
刃先の軸方向長さ
入口広がりの軸方向長さ
出口広がりの軸方向長さ
型管断面の曲率半径
入口広がりの曲率半径
出口広がりの曲率半径
粘弾性材料の流速
α 広がり角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つのそれぞれの入口開口(3)の型装置(1)を通ってそれぞれの出口開口(4)に延びる幾つかの相互に平行で同一の型管(2)を有する、特にポリマー、パスタなどの粘弾性材料のストランド押出しのための型装置(1)にして、
それぞれの型管(2)は、型管を通る材料の軸方向運搬方向Fに、型管(2)の上流端に入口領域(2a)と型管(2)の下流端に出口領域(2c)を有し、入口開口(3)は互いに隣接している型装置において、
分離壁(5)が、2つのそれぞれ隣接した入口開口(3)の間で型ボディ(1)の上流端において軸方向運搬方向Fと平行に延び、
分離壁の上流端が刃先(5a)を有する
ことを特徴とする型装置。
【請求項2】
隣接するそれぞれの入口開口(3)の入口領域(2a)から上流に位置する領域は、軸方向運搬方向Fに平行に延びる分離壁(5)により完全に囲まれており、その上流端はそれぞれ刃先(5a)として設計されていることを特徴とする請求項1に記載の型装置。
【請求項3】
刃先(5a)が軸方向運搬方向Fに対して90°異なった角度を形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の型装置。
【請求項4】
出口領域(2c)が、軸方向運搬方向Fに沿う長さLにわたって型管内部領域から出口開口に向かってベルの形状で広がっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の型装置。
【請求項5】
軸方向運搬方向Fと型出口領域の内壁の間で測定される出口広がりの広がり角度が、軸方向運搬方向Fに沿って連続的に増大することを特徴とする請求項4に記載の型装置。
【請求項6】
広がり角度の増加が軸方向運搬方向Fに沿って連続的に増大することを特徴とする請求項4又は5に記載の型装置。
【請求項7】
広がり角度が型内部の0°から型ボディ(1)の下流端における90°まで増大することを特徴とする請求項6に記載の型装置。
【請求項8】
広がりが縦断面で見て円弧の軌跡を描くことを特徴とする請求項7に記載の型装置。
【請求項9】
広がりの円弧の曲率半径Rが型管内部領域の半径Rより大きいことを特徴とする請求項8に記載の型装置。
【請求項10】
出口領域(2c)の型管内壁が、軸方向に沿う長さLにわたって残りの型管内壁より高い表面粗さを有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の型装置。
【請求項11】
粗い領域の軸方向長さLが出口の軸方向長さLより短く、入口の軸方向長さLより短いことを特徴とする請求項10に記載の型装置。
【請求項12】
入口領域(2a)が、長さLに沿って軸方向運搬方向Fと反対に内部領域から入口開口(3)に向かって広がり、
軸方向運搬方向Fと管の入口領域(2a)の内壁の間で測定される入口広がりの拡がり角度が5〜45°、特に8〜25°である
ことを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の型装置。
【請求項13】
広がり角度が内部領域から入口開口(3)まで一定であり、円錐形広がりを形成することを特徴とする請求項12に記載の型装置。
【請求項14】
型管(2)が全長にわたって円形断面を有することを特徴とする請求項12又は13に記載の型装置。
【請求項15】
管の入口領域の軸方向長さLが、型管(2)の全長の50〜80%になることを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載の型装置。
【請求項16】
型管(2)の内壁の少なくとも一部の領域がテフロン(登録商標)から成ることを特徴とする請求項1〜15のいずれか一項に記載の型装置。
【請求項17】
粘弾性材料が型装置の上流端と下流端の間の圧力勾配Δpで型装置を押し通される、請求項1〜16のいずれか一項に記載の型装置を用いた、特にポリマー、パスタなどの粘弾性材料のストランド押出し方法にして、
少なくとも一部のストランド押出しに必要な材料成形が行われる型装置(1)のそれぞれの軸方向部分領域(5,2a,2c)での運搬方向Fに沿う粘弾性材料の流速vにより、条件v<L/TRELAXが満たされるように、圧力勾配Δpが型装置(1)の幾何学形状に調節され、
RELAXは粘弾性材料の緩和時間であり、L(=L,L,L)は型装置(1)のそれぞれの軸方向部分領域の軸方向長さであることを特徴とする方法。
【請求項18】
型管内の運搬方向Fに沿う粘弾性材料の流速vがv>L/TRELAXを満たし、TRELAXは粘弾性材料の緩和時間であり、Lは粗い領域の軸方向長さであることを特徴とする請求項17に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2006−523441(P2006−523441A)
【公表日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504143(P2006−504143)
【出願日】平成16年2月6日(2004.2.6)
【国際出願番号】PCT/CH2004/000068
【国際公開番号】WO2004/080692
【国際公開日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【出願人】(505199234)ビューラー アーゲー (6)
【Fターム(参考)】