説明

粘性液の供給方法

【課題】他の箇所よりも内径が小さい縮径部を有する粘性液貯留容器に粘性液が貯留されている場合であっても、粘性液を残すことなく汲み上げて供給することが可能な粘性液の供給方法の提供を目的とする。
【解決手段】粘性液供給装置10においては、粘性液貯留容器Bの内部空間において最も断面積が大きい部分の内径よりも外径が大きく連続気泡を備えた通気性構造体40が用いられる。粘性液貯留容器Bから粘性液を汲み上げる際には、先ず準備工程において導出管30が液中に差し込まれ、通気性構造体40及びプレート部材50が粘性液上に配置される。また、粘性液貯留容器Bは、圧力容器20内に設置される。その後、導出工程において圧力容器20内を加圧雰囲気とすると、通気性構造体40によって粘性液貯留容器Bの内壁面に付着している粘性液が掻き落とされると共に、導出管30を介して粘性液を外部に導出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、他の箇所よりも内径が小さい縮径部を有する粘性液貯留容器に貯留されている粘性液を汲み上げて供給する粘性液の供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドラム缶あるいはペール缶等の容器に収容されている粘性液を汲み上げ、移送するための方法として、下記特許文献1に開示されている汲み上げ装置等を用いる方法が提供されている。特許文献1に開示されている汲み上げ装置は、吸込ノズル下端に設けられた吸込口部の周囲に取り付けられる板状のフォロープレートを有している。この汲み上げ装置は、フォロープレートを容器内に挿入し、フォロープレートを昇降装置を介して下降させながらポンプを運転することにより、容器内に貯留されている粘性液を吸い上げて移送することができる構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4062287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した汲み上げ装置においては、上下方向に開口面積が略均一であるドラム缶あるいはペール缶等の容器から粘性液を汲み上げることが想定されている。しかしながら、図9(a)〜(c)に示すように、首の部分において他の部位よりも開口面積が縮小した、いわゆるボトルネック形状の容器等に粘性液が収容されていることがある。このような容器から粘性液を汲み上げるために上記特許文献1に開示されている汲み上げ装置を用いる場合には、図9(a)に示すように、フォロープレートの大きさを首の部分のように最も開口面積が小さい部分を通過可能な大きさとせねばならない。このようなフォロープレートを用いた場合には、図9(b)に示すように、開口面積がフォロープレートの面積よりも大きい部分においては、容器の内壁面に付着した粘性液を掻き落とすことができず、粘性液を残存させることなく汲み上げられないという問題が生じうる。
【0005】
また、図9(c)に示すように、粘性液を汲み上げるための配管を容器内に差し込んだ場合には、配管の周囲に存在する粘性液が優先的に汲み上げられ、配管の周りにエア筋と称される空洞部分が形成される。このような状態になると、配管に対して粘性液が供給されない状態になり、大部分の粘性液が容器内に残されたまま汲み上げられない状態になってしまう。
【0006】
そこで、本発明は、他の箇所よりも内径が小さい縮径部を有する粘性液貯留容器に粘性液が貯留されている場合であっても、粘性液を残すことなく汲み上げて供給することが可能な粘性液の供給方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決すべく提供される本発明の粘性液の供給方法は、他の箇所よりも内径が小さい縮径部を有する粘性液貯留容器に差し込まれた導出管を介して前記粘性液貯留容器内に収容されている粘性液を外部に導出し、供給するものである。本発明においては、前記粘性液貯留容器の内部空間において最も断面積が大きい部分の内径よりも外径が大きく少なくとも厚み方向に連続した通気経路を備えており、少なくとも径方向への伸縮性を有する通気性構造体が用いられる。本発明の粘性液の供給方法は、前記導出管を前記粘性液貯留容器内の粘性液中に差し込み、前記通気性構造体を前記粘性液上に配置する準備工程と、前記準備工程において前記粘性液中に差し込まれた導出管内と、前記粘性液の液面との間に差圧が発生する圧力条件とすることにより、前記導出管を介して粘性液を外部に導出する導出工程とを有することを特徴としている。
【0008】
本発明の粘性液の供給方法においては、粘性液貯留容器の内部空間において最も断面積が大きい部分の内径よりも外径が大きく少なくとも厚み方向に連続した通気経路を備えた通気性構造体が用いられる。本発明において使用される通気性構造体には、例えばスポンジ等を好適に使用可能である。また、本発明において通気性構造体としてスポンジを用いる場合には、ゴムあるいはウレタン等の樹脂を多孔性の構造にした合成スポンジ、海綿から製造された天然スポンジ、メラミン樹脂を主原料として製造されたメラミンスポンジ、ゴムを主原料として製造されたゴムスポンジ等を好適に用いることが可能である。本発明に使用可能なスポンジは、セルと称される気泡構造を多数有する、いわゆる連続気泡型と称されるものであり、隣接するセル同士が連続した構造とされている。本発明に使用可能なスポンジは、セル同士が連通しているため、空気及び液体を通す性質を有する。
【0009】
本発明に用いる通気性構造体は、スポンジに限定されるものではなく、例えば微細なメッシュを有する布、不織布等を重ね合わせる等して通気経路を形成したものを、少なくとも径方向に向けて自由に伸縮可能としたものによって構成することも可能である。このようなものを通気性構造体として用いた場合についても、スポンジを通気性構造体として用いた場合と同様の作用効果が得られる。
【0010】
本発明において用いられる通気性構造体は、少なくとも径方向に収縮可能なものではあるが、少なくとも厚み方向に連続した通気経路を備えており通気性を有するものである。そのため、粘性液貯留容器を加圧雰囲気に配置する等して、粘性液中に差し込まれた導出管内と粘性液の液面との間に差圧が発生する圧力条件下においても、通気性構造体は過度に萎まない。本発明の粘性液の供給方法においては、準備工程において導出管が粘性液中に差し込まれると共に、通気性構造体が粘性液上に配置される。その後、導出工程において前記粘性液中に差し込まれた導出管内と前記粘性液の液面との間に差圧が発生する圧力条件とすることにより、導出管を介して粘性液が汲み出され、外部に供給される。また、通気性構造体は、粘性液の液面と共に粘性液貯留容器の底側に向かって移動する。これにより、粘性液貯留容器内に貯留されている粘性液を、部位によらず略均一に減少させることが可能となる。従って、上述したエア筋等の空洞が形成されることを防止し、汲み出し不良を回避しうる。
【0011】
また、本発明において用いられている通気性構造体は、少なくとも径方向への伸縮性を有するものである。そのため、粘性液の液面と共に通気性構造体が粘性液貯留容器の底側に向けて移動するのに連れて、通気性構造体が粘性液貯留容器の内壁面に沿う形状に逐次、形状変化する。これにより、粘性液貯留容器の内壁面に付着している粘性液が、通気性構造体によって掻き落とされる。従って、本発明の粘性液の供給方法によれば、粘性液貯留容器内に存在する粘性液を残すことなく汲み上げ、外部に供給することが可能となる。
【0012】
本発明の粘性液の供給方法は、前記通気性構造体を前記粘性液の液面の下降方向に案内する案内手段が前記準備工程において準備され、前記導出工程において、前記通気性構造体が前記案内手段によって案内されて下降するものであることが好ましい。
【0013】
本発明の粘性液の供給方法においては、案内手段によって粘性液の液面の下降方向に通気性構造体が案内されるため、導出工程において通気性構造体の姿勢を安定させることが可能である。これにより、より一層確実に粘性液の液面を略均一に低下させることが可能となり、粘性液を安定して供給することが可能となる。また、通気性構造体の姿勢を安定化させることにより、粘性液貯留容器の内壁面に対して通気性構造体を確実に接触させることが可能となり、粘性液の掻き落としムラが生じにくく、粘性液が粘性液貯留容器内に付着したまま残存することを防止できる。
【0014】
本発明の粘性液の供給方法においては、前記通気性構造体に前記導出管を挿入可能な貫通孔が設けられており、前記貫通孔に挿入された前記導出管が案内手段とされることが好ましい。
【0015】
本発明の粘性液の供給方法においては、通気性構造体に設けられた貫通孔に導出管が差し込まれ、導出管に案内されて粘性液の液面と共に通気性構造体が下降することになる。そのため、本発明の粘性液の供給方法においては、導出管の他に案内手段を別途設ける必要がなく、その分だけ準備工程における準備が容易になり、使用する器具類の数量を最小限に抑制することができる。
【0016】
本発明の粘性液の供給方法においては、前記導出管を案内可能なスリーブが、前記貫通孔に装着されていることが好ましい。
【0017】
上述したように通気性構造体の貫通孔にスリーブを装着しておくことにより、粘性液の液面低下に伴って通気性構造体をスムーズに下降させることが可能となる。これにより、通気性構造体によって粘性液を部位によらず略均一に減少させる効果、及び粘性液貯留容器の内壁面から粘性液を掻き落とす効果が確実に得られる。
【0018】
本発明の粘性液の供給方法は、前記通気性構造体と一体化され、外径が前記縮径部の内径以下であるプレート部材が用いられ、前記準備工程において、前記プレート部材が、前記粘性液貯留容器内に収容されている粘性液の液面に沿う姿勢で配置されるものであることが好ましい。
【0019】
本発明の粘性液の供給方法において用いられる通気性構造体は、プレート部材と一体化されたものであるため、導出工程において通気性構造体を略一定の姿勢で粘性液貯留容器の底側に向けて降下させることが可能である。これにより、本発明の粘性液の供給方法においては、粘性液貯留容器の内壁面に付着している粘性液を通気性構造体によって確実に掻き落とすことが可能となる。また、通気性構造体と共にプレート部材が下降することにより、粘性液を部位によらず略均一に減少させる効果も向上する。従って、本発明の粘性液の供給方法によれば、粘性液貯留容器に貯留されている粘性液を残すことなく外部に導出させることが可能となる。
【0020】
また、本発明において使用されるプレート部材は、通気性構造体よりも外径が小さい。そのため、プレート部材を通気性構造体と一体化すると、通気性構造体の中央部分がプレート部材によって補強され変形しにくくなる一方で、通気性構造体の外周部分においては中央部分よりも粘性液貯留容器の内壁面に沿って変形あるいは撓みを生じやすくなる。これにより、粘性液貯留容器の内壁面に付着している粘性液を通気性構造体によって掻き取る効果がより一層高まる。
【0021】
ここで、上述したようにして通気性構造体によって粘性液を掻き落とした場合、通気性構造体を粘性液貯留容器から取り出す際には、通気性構造体の外周面等に付着している粘性液の影響によって相応の摩擦力等が作用し、通気性構造体を取り出す作業に手間を要する可能性がある。かかる問題に対処すべく、本発明の粘性液の供給方法においては、前記通気性構造体の天面側にフックが設けられていることが好ましい。
【0022】
上述したようなフックを設けることにより、粘性液貯留容器から通気性構造体を取り出す作業を容易に実施することが可能となる。
【0023】
本発明の粘性液の供給方法は、前記導出管に対して吐出装置を接続し、前記導出管を介して導出された粘性液を前記吐出装置に供給するものであっても良い。
【0024】
本発明の粘性液の供給方法によれば、粘性液貯留容器内に貯留されている粘性液を導出管を介して吐出装置に安定供給することが可能である。
【0025】
本発明の粘性液の供給方法において、上述した前記吐出装置は、一軸偏心ねじポンプであることが好ましい。
【0026】
本発明の粘性液の供給方法において吐出装置として採用されている一軸偏心ねじポンプは、圧送対象である流動物が安定供給される限り、吐出圧及び吐出量を安定状態で吐出させることが可能である。また、本発明の粘性液の供給方法においては、吐出装置に対して粘性液を安定供給することができる。従って、本発明の粘性液の供給方法によれば、吐出装置から所望の吐出圧及び吐出量で吐出させることが可能である。
【0027】
また、本発明の粘性液の供給方法は、内部雰囲気を加圧状態とすることが可能な圧力容器が用いられ、前記導出工程において前記圧力容器内に前記粘性液貯留容器が配置され、前記粘性液貯留容器が加圧雰囲気下に設置されることにより、前記粘性液中に差し込まれた導出管内と、前記粘性液の液面との間に差圧が発生する圧力条件とされるものであっても良い。
【0028】
本発明の粘性液の供給方法によれば、圧力容器内に粘性液貯留容器を配置することにより、通気性構造体に対して部位によらず略均一の圧力を作用させることが可能であり、粘性液の液面低下と連動して通気性構造体が部位によらず略均一に下降する。これにより、粘性液貯留容器内に存在する粘性液を確実に掻き落とし、残すことなく外部に導出させることが可能となる。
【0029】
上述した粘性液の供給方法において用いられる圧力容器は、卓上に設置可能なものであってもよい。
【0030】
かかる構成によれば、容量が小さい粘性液貯留容器に粘性液が貯留されている場合であっても、上述した粘性液の供給方法によって粘性液を粘性液貯留容器から取り出して利用可能であり、作業者の利便性をより一層向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、他の箇所よりも内径が小さい縮径部を有する粘性液貯留容器に粘性液が貯留されている場合であっても、粘性液を残すことなく汲み上げて供給することが可能な粘性液の供給方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態に係る粘性液の供給方法に用いられる粘性液供給装置を吐出装置に接続した状態を模式的に示した説明図である。
【図2】(a)は準備工程において通気性構造体及びプレート部材を導出管と共に粘性液貯留容器セットした状態を示す断面図であり、(b)は導出工程において粘性液を取り出した状態を示す断面図である。
【図3】通気性構造体に対するプレート部材の取り付け状態を示す分解斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る粘性液の供給方法に用いられる吐出装置の内部構造を示す断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る粘性液の供給方法のフローチャートである。
【図6】(a),(b)はそれぞれプレート部材に代えて使用可能なスリーブ及びフックを示す断面図であり、(b),(d)はそれぞれプレート部材に代えてスリーブを用いた構成を示す断面図である。
【図7】(a)〜(d)は通気性構造体の一例を示す断面図である。
【図8】(a),(b)は変形例に係る吐出装置を模式的に示した説明図である。
【図9】(a)〜(c)は従来技術における問題点を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の一実施形態に係る粘性液の供給方法について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明においては、粘性液の供給方法に用いる粘性液供給装置10の構成を説明し、その後に本方法の詳細を説明する。
【0034】
≪粘性液供給装置10について≫
粘性液供給装置10は、例えば図1に示すように、首の部分の開口面積が他の部位よりも縮小した、いわゆるボトルネック形状の粘性液貯留容器Bから粘性液を汲み上げて導出するものである。粘性液供給装置10は、粘性液を外部に設けられた吐出装置100に供給する等の目的で使用することができる。
【0035】
粘性液供給装置10は、圧力容器20と、導出管30と、通気性構造体40と、プレート部材50とを備えている。圧力容器20は、粘性液貯留容器Bを収容可能な収容部22を有する。圧力容器20は、収容部22に接続された配管24を有し、配管24を介して高圧空気を導入することにより収容部22の内部雰囲気を加圧状態とすることができる。
【0036】
導出管30は、圧力容器20内に設置された粘性液貯留容器Bから粘性液を取り出すための配管である。導出管30は、収容部22の内外を連通するように取り付けられており、一端側が圧力容器20の天面側から下方に向けて突出している。また、導出管30の他端側は、圧力容器20の外側に取り出されており、粘性液の供給先である吐出装置100等に対して直接的あるいは間接的に接続可能とされている。
【0037】
通気性構造体40は、通気経路が少なくとも天面42側から底面44側に向けて連続するように形成されたものである。具体的には、前述した通気経路が連続気泡によって形成された連続気泡型と称されるスポンジによって構成されており、弾性を有し、自由に収縮可能とされている。通気性構造体40として用いるスポンジは、ゴムあるいはウレタン等の樹脂を多孔性の構造にした合成スポンジ、海綿から製造された天然スポンジ、メラミン樹脂を主原料として製造されたメラミンスポンジ、ゴムを主原料として製造されたゴムスポンジ等、いかなる材質によって構成されたものであっても良いが、粘性液貯留容器Bの内壁面の形状変化に追従して変形するのに適した弾性を有するものであることが好ましい。本実施形態においては、通気性構造体40として、ゴムあるいはウレタン等の樹脂素材を多孔性の構造にした合成スポンジが用いられている。
【0038】
通気性構造体40は、セルと称される気泡構造を多数有し、隣接するセル同士が連通していることから、少なくとも天面42側から底面44側に向かう方向への通気性を有する。そのため、粘性液の液面上に底面44が沿うように通気性構造体40を配置することにより、天面42に作用する圧力を略そのまま液面に作用させることができる。また、通気性構造体40は、少なくとも径方向に収縮可能とされているため、粘性液供給容器Bの断面形状に合わせて形状変化することが可能である。本実施形態においては、粘性液貯留容器Bの胴体部b及び首部n(縮径部)のいずれにおいても断面形状が略円形であることから、通気性構造体40として図3に示すようなドーナツ型のものが採用されている。
【0039】
通気性構造体40は、粘性液貯留容器Bの内部空間において最も断面積が大きい部分の内径よりも外径が大きいものとされている。具体的には、図1,図2に示すような粘性液貯留容器Bから粘性液を取り出す場合には、胴体部bが略円筒形であり上下方向に断面積がほとんど変化しない形状とされていることから、胴体部bの中間部分が粘性液貯留容器Bの内部空間において最も断面積が大きい部分に相当する。そのため、本実施形態においては、胴体部bの中間部分の内径よりも大きな外径を有する通気性構造体40が用いられている。
【0040】
通気性構造体40には、天面42から底面44に向けて貫通した貫通孔46が設けられている。貫通孔46は、通気性構造体40のいかなる場所に設けられていても良いが、本実施形態においては通気性構造体40の天面42及び底面44の略中心位置に設けられている。貫通孔46は、後に詳述するプレート部材50に形成されているスリーブ部54を介して導出管30が差し込まれる部分である。
【0041】
通気性構造体40の天面42側には、フック48が設けられている。フック48としては、金属あるいは樹脂等によって形成されたものの他、布地や紐を環状としたもの等を用いることができる。本実施形態においては、フック48として金属あるいは樹脂を環状に湾曲させたものが用いられている。また、フック48は、後に詳述するプレート部材50等、通気性構造体40と共に用いられる他部材に固定する他、通気性構造体40に対して接着あるいは縫製等により直接的に固定する等して取り付けることが可能である。本実施形態においては、通気性構造体40を天面42側から底面44側に貫通し、後に詳述するプレート部材50に接続することにより取り付けられている。
【0042】
図2及び図3に示すように、プレート部材50は、通気性構造体40に対して接着等により一体化されている。プレート部材50は、通気性構造体40の天面42側あるいは底面44側のいずれに設けられても良いが、本実施形態においては底面44側に設けられている。プレート部材50は、略円盤状のプレート部52と、スリーブ部54とを有する。プレート部52は、外径が粘性液貯留容器Bにおいて最も断面積が小さい部分、すなわち首部nの内径以下とされている。そのため、プレート部52は、粘性液貯留容器Bの壁面に接触することなく、安定した姿勢を保つことが可能である。また、プレート部52は、スリーブ部54の効果により、平行な姿勢を保つことが可能である。従って、プレート部52は、粘性液貯留容器Bの底面に対して略平行(水平)な姿勢を維持したまま首部nを通過し、胴体部b内に侵入することが可能である。また、通気性構造体40の底面44側にプレート部材50を設ける本例においては、プレート部52に、通気性構造体40を貫通したフック48の端部が固定されている。
【0043】
スリーブ部54は、プレート部52に立設された筒状の部分である。スリーブ部54は、プレート部52のいかなる場所に設けられていても良い。本実施形態においては、上述したように通気性構造体40の略中央部に貫通孔46が設けられていることを考慮し、これにあわせてプレート部52の略中央にスリーブ部54が立設されている。このように貫通孔46の位置に合わせてスリーブ部54を設けることにより、通気性構造体40及びプレート部52軸心を導出管30の軸心と合致させる調芯機能を持たせることが可能となる。
【0044】
スリーブ部54の内径は、導出管30を略隙間なく挿入可能な大きさとされている。そのため、スリーブ部54に対して導出管30を差し込むことにより、プレート部材50を水平な姿勢に維持させつつ、導出管30に沿う方向に自由に移動させることが可能である。すなわち、スリーブ部54は、導出管30と同様に、通気性構造体40を上下方向に案内する手段として機能する。また、スリーブ部54の外径は、通気性構造体40に設けられている貫通孔46の内径と略同一とされている。そのため、プレート部材50は、貫通孔46に対してスリーブ部54を通気性構造体40の底面44側から差し込むことにより、通気性構造体40と一体化することができる。
【0045】
≪吐出装置100について≫
図1に示すように、吐出装置100は、導出管30の一端側に対して直接的あるいは間接的に接続されている。吐出装置100は、導出管30によって粘性液貯留容器Bから導出され、供給されてきた粘性液を吐出圧及び吐出量の吐出状態を調整しつつ吐出させることができる。本実施形態において例示する吐出装置100は、図4に示すように、一軸偏心ねじポンプ機構110を主要部とするディスペンサである。
【0046】
一軸偏心ねじポンプ機構110は、いわゆる回転容積型のポンプ機構である。図4に示すように、一軸偏心ねじポンプ110は、ケーシング152の内部にステータ166、ロータ172、及び動力伝達機構178等を収容した構成とされている。ケーシング152は、金属製で筒状の部材であり、長手方向一端側に第一開口部154が設けられている。また、ケーシング152の外周部分には、第二開口部164が設けられている。第二開口部164は、ケーシング152の長手方向中間部分に位置する中間部160においてケーシング152の内部空間に連通している。
【0047】
第一開口部154及び第二開口部164は、それぞれポンプ機構110の吸込口および吐出口として機能する部分である。本実施形態においては、ロータ172を正方向に回転させることにより、第一開口部154を吐出口、第二開口部164を吸込口として機能させることにより吐出装置100が使用される。また、導出管30は、第二開口部164に対して直接的あるいは間接的に接続されている。
【0048】
ステータ166は、ゴム等の弾性体、又は樹脂等によって形成された略円筒形の外観形状を有する部材である。ステータ166の内周壁170は、n条で単段あるいは多段の雌ネジ形状とされている。本実施形態においては、ステータ166は、2条で多段の雌ねじ形状とされている。また、ステータ166の貫通孔168は、ステータ166の長手方向のいずれの位置において断面視しても、その断面形状(開口形状)が略長円形となるように形成されている。
【0049】
ロータ172は、金属製の軸体であり、n−1条で単段あるいは多段の雌ネジ形状とされている。本実施形態においては、ロータ172は、1条で偏心した雄ねじ形状とされている。ロータ172は、長手方向のいずれの位置で断面視しても、その断面形状が略真円形となるように形成されている。ロータ172は、上述したステータ166に形成された貫通孔168に挿通され、貫通孔168の内部において自由に偏心回転可能とされている。
【0050】
ロータ172をステータ166に対して挿通すると、ロータ172の外周壁174とステータ166の内周壁170とが両者の接線で密接した状態になり、ステータ166の内周壁170とロータ172の外周壁との間に流体搬送路176(キャビティ)が形成される。流体搬送路176は、ステータ166やロータ172の長手方向に向けて螺旋状に伸びている。
【0051】
流体搬送路176は、ロータ172をステータ166の貫通孔168内において回転させると、ステータ166内を回転しながらステータ166の長手方向に進む。そのため、ロータ172を回転させると、ステータ166の一端側から流体搬送路176内に流体を吸い込むと共に、この流体を流体搬送路176内に閉じこめた状態でステータ166の他端側に向けて移送し、ステータ166の他端側において吐出させることが可能である。本実施形態のポンプ機構110は、ロータ172を正方向に回転させることにより使用され、第二開口部164から吸い込んだ粘性液を圧送し、第一開口部154から吐出することが可能とされている。
【0052】
動力伝達機構178は、ポンプ駆動機196から上述したロータ172に対して動力を伝達するためのものである。動力伝達機構178は、動力伝達部180と偏心回転部182とを有する。動力伝達部180は、ケーシング152の長手方向の一端側に設けられている。
【0053】
また、偏心回転部182は、動力伝達部180とステータ取付部156との間に形成された中間部160に設けられている。偏心回転部182は、動力伝達部180とロータ172とを動力伝達可能なように接続する部分である。偏心回転部182は、従来公知のカップリングロッドや、スクリューロッドなどによって構成された連結軸188と、従来公知のユニバーサルジョイントなどによって構成された連結体194,198とを有する。そのため、偏心回転部182は、ポンプ駆動機196を作動させることにより発生した回転動力をロータ172に伝達させ、ロータ172を偏心回転させることが可能である。
【0054】
≪粘性液供給装置10による粘性液の供給方法について≫
続いて、粘性液供給装置10によって粘性液を粘性液貯留容器Bから吐出装置100に供給する供給方法について、各工程の概略を説明し、その後に一連の供給方向について順を追って説明する。粘性液供給装置10による粘性液の供給方法は、図5に示すように、準備工程及び導出工程の2工程に大別される。準備工程は、粘性液貯留容器Bに対して粘性液供給装置10をセットし、粘性液を粘性液貯留容器Bから導出するための準備を行う工程である。また、導出工程は、粘性液供給装置10を作動させ、吐出装置100に向けて粘性液を供給する工程である。
【0055】
さらに具体的に説明すると、準備工程においては、粘性液貯留容器Bが圧力容器20の収容部22内に設置される。また、導出管30に対して通気性構造体40が装着される。この際、通気性構造体40と一緒に導出管30を粘性液貯留容器B内の粘性液中に差し込んだ際に、通気性構造体40と一体化されているプレート部材50のプレート部52が粘性液貯留容器Bの底面側に向く姿勢とされる。導出管30は、通気性構造体40の貫通孔46内に存在しているスリーブ部54に差し込まれる。これにより、通気性構造体40が導出管30に対して自由にスライド可能なように装着された状態になる。
【0056】
上述したようにして通気性構造体40が導出管30に装着されると、導出管30が首部nから粘性液貯留容器Bの底面に対して略垂直方向に挿入され、粘性液貯留容器B内の粘性液中に差し込まれた状態になる。また、作業者が手などで通気性構造体40を収縮させることにより、首部nから粘性液貯留容器B内に通気性構造体40を導入する。粘性液貯留容器B内に通気性構造体40を導入した後、作業者が手を離す等して通気性構造体40に作用していた収縮力が解除されると、通気性構造体40が膨張する。これにより、通気性構造体40の外周面45が粘性液貯留容器Bの内周面に接触した状態になる。また、通気性構造体40及びプレート部材50が粘性液上において液面に沿う姿勢で配置された状態になる。
【0057】
導出工程においては、圧力容器20の収容部22内の気圧を上昇させることにより、準備工程において準備された粘性液貯留容器Bが加圧雰囲気下に配置された状態とされる。これにより、上述した導出工程において粘性液貯留容器B内の粘性液中に差し込まれた導出管30内と、粘性液の液面との間に差圧が発生する圧力条件となる。
【0058】
上記したような圧力条件下においては、通気性構造体40及びこれと一体化されたプレート部材50が、導出管30を案内手段として粘性液貯留容器Bの底面側に向けて下降する。通気性構造体40及びプレート部材50の下降に伴い、粘性液が導出管30を介して粘性液貯留容器Bの外部に導出される。また、通気性構造体40の下降する際には、通気性構造体40が、弾性力(復元力)によって粘性液貯留容器Bの内周面に沿うように膨張あるいは収縮する。従って、粘性液貯留容器Bの内周面に付着している粘性液が、下方に向けて移動すること通気性構造体40によってそぎ落とされる。
【0059】
導出工程においては、収容部22内の気圧調整を行うことにより、通気性構造体40及びプレート部材50の進行速度(下降速度)を調整し、導出管30を介して吐出装置100に供給される粘性液の供給量を調整することができる。また、吐出装置100においては、ポンプ駆動機196の出力調整を行いロータ172の回転数を調整することにより、粘性液の吐出量を調整することができる。従って、吐出装置100において必要とされる粘性液の吐出量に基づき、収容部22内の気圧調整、及びロータ172の回転数調整を同期させて実施することにより、吐出装置100における粘性液の供給状態及び吐出状態を最適化することができる。
【0060】
続いて、図5のフローチャートを参照しつつ、粘性液の供給方法の実施手順を説明する。本実施形態の粘性液の供給方法においては、先ず準備工程としてステップ1において通気性構造体40及びプレート部材50を導出管30に対してセットし、粘性液貯留容器B内に設置する作業と、粘性液貯留容器Bを圧力容器20の収容部22内に設置する作業とが行われる。その後、作業工程は、ステップ2以降の導出工程に進む。
【0061】
作業工程がステップ2に進むと、吐出装置100における粘性液の供給要求の有無が確認される。ここで、吐出装置100に対して粘性液を供給すべき状況である場合には、作業工程がステップ3に進み、粘性液の供給が不要である場合にはステップ2において待機状態になる。作業工程がステップ3に進行すると、粘性液供給装置10から吐出装置100に対する粘性液の供給量の調整、及び吐出装置100における粘性液の吐出量の調整が行われる。具体的には、吐出装置100におけるロータ172の回転数制御を行うことにより、粘性液の吐出量の調整が行われる。このような制御を実施することにより、吐出装置100における粘性液の受給バランスが均衡した状態になり、吐出量及び吐出圧が安定した状態で粘性液が吐出される。
【0062】
吐出装置100における粘性液の吐出作業が開始されると、作業工程がステップ4に進み、吐出装置100における粘性液の吐出要求が停止しているか否かが確認される。粘性液の吐出要求が停止している場合には、作業工程がステップ6に進み、粘性液供給装置10から吐出装置100への粘性液の供給が停止されると共に、吐出装置100における粘性液の吐出が停止される。
【0063】
一方、ステップ4において引き続き粘性液の吐出要求がある場合には、作業工程がステップ5に進み、通気性構造体40及びプレート部材50が粘性液貯留容器Bの下限(底)に到達したか否かが確認される。通気性構造体40及びプレート部材50が底に到達したか否かについては、圧力センサ等、何らかの検知手段(下限到達検知手段)によって検知する他、作業者の視認等によって確認することとしてもよい。ステップ5において通気性構造体40及びプレート部材50が底に到達したことが確認された場合には、粘性液が粘性液貯留容器B内に残存していないものと想定されるため、作業工程がステップ6に進められ、粘性液供給装置10から吐出装置100への粘性液の供給、及び吐出装置100における粘性液の吐出が停止される。一方、通気性構造体40及びプレート部材50が未だ底に到達していない場合には、粘性液が粘性液貯留容器B内に残存している。そのため、作業工程がステップ3に戻され、引き続き粘性液の供給及び吐出が継続される。
【0064】
上述したように、本実施形態の粘性液の供給方法においては、粘性液貯留容器Bの胴体部bの内径よりも外径が大きく連続気泡を備えた通気性構造体40が粘性液の液面上に設置される。そのため、準備工程において準備した粘性液貯留容器Bを加圧雰囲気下に設置すると、通気性構造体40が粘性液の液面と共に粘性液貯留容器Bの底側に向かって移動し、粘性液が導出管30を介してスムーズに汲み出される。また、通気性構造体40が粘性液の液面と共に粘性液貯留容器Bの底側に向かって移動するため、粘性液貯留容器B内において粘性液が部位によらず略均一に減少する。これにより、エア筋と称される空洞が導出管30の周りに形成される等の不具合を防止し、汲み出し不良を回避しうる。
【0065】
また、通気性構造体40は、粘性液貯留容器Bの内周面に沿って収縮可能であるものの、連続気泡を備えたものであるため加圧雰囲気下において過度に収縮等しない。これにより、粘性液の液面と共に通気性構造体40が粘性液貯留容器Bの底側に向けて移動する際に、通気性構造体40が粘性液貯留容器Bの内壁面に沿う形状となるように逐次、膨張あるいは収縮する。従って、粘性液貯留容器Bの内周面に付着している粘性液が、通気性構造体40によって掻き落とされ、導出管30を介して残すことなく汲み上げられる。
【0066】
本実施形態の粘性液の供給方法においては、粘性液に差し込まれる導出管30が通気性構造体40の案内手段として機能し、液面低下に伴って通気性構造体40が導出管30に沿って下降する。そのため、導出工程において常に安定した姿勢で通気性構造体40を下降させることが可能である。これにより、粘性液を部位によらず略均一に導出させることが可能となる。また、通気性構造体40の姿勢を安定させることにより、粘性液貯留容器Bの内壁面に対して通気性構造体40の外周面45が確実に接触させることが可能となり、粘性液の掻き落とし効果も向上させることが可能となる。従って、導出管30を通気性構造体40の案内手段として利用することにより、粘性液の導出状態をより一層安定化させることが可能となる。
【0067】
また、上述したようにプレート部材50のスリーブ部54を通気性構造体40の貫通孔46内に装着しておくことにより、粘性液の液面低下に伴って通気性構造体40をスムーズかつ姿勢を安定させた状態で下降させることが可能となる。これにより、通気性構造体40による粘性液の掻き落とし効果をより一層確実なものとすることが可能となる。なお、本実施形態においては、スリーブ部54をプレート部材50の一部として形成した構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、プレート部材50とは別の部材して構成されても良い。
【0068】
具体的には、プレート部材50を設ける代わりに、図6(a)に示すようなスリーブ60を図6(b)に示すように通気性構造体40に装着しても良い。スリーブ60は、上下端にフランジ部62,64を有する。フランジ部62,64の大小関係はいかなるものであっても良いが、図6(a)に示す例においては下端側のフランジ部64の外径が上端側のフランジ部62の外径よりも大きい。スリーブ60は、通気性構造体40の貫通孔46内に挿入することにより装着される。また、フック48が、通気性構造体40の天面42から底面44に向けて差し込まれ、下端側のフランジ部64に接続される。このような構成とすることにより、プレート部材50を用いた場合と同様に通気性構造体40の下降状態を安定化させることが可能である。
【0069】
また、プレート部材50の代わりに、図6(c)に示すようなスリーブ70を図6(d)に示すように通気性構造体40に装着しても良い。スリーブ70は、上下端にフランジ部72,74を有し、通気性構造体40の貫通孔46内に挿入することにより装着される点においてスリーブ60と同様である。一方、スリーブ70は、上端側のフランジ部72の外径が下端側のフランジ部74の外径よりも大きい点、及び上端側のフランジ部72に対してフック48が接続される点においてスリーブ60と相違する。スリーブ70をプレート部材50に代えて用いた場合についても、通気性構造体40の下降状態を安定化させることが可能である。また、スリーブ70を用いた場合には、通気性構造体40の天面42側に露出したフランジ部72にフック48を接続することが可能であり、フック48の取り付け作業がより一層容易になる。なお、本発明はこれに限定される訳ではなく、プレート部材50のスリーブ部54、あるいはスリーブ60,70を設けるまでもなく通気性構造体40の下降状態を安定化させることが可能であると想定される場合等においては、スリーブ部54あるいはスリーブ60,70を設けない構成としても良い。
【0070】
本実施形態においては、通気性構造体40と共にプレート部材50を設ける構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、プレート部材50を設けないこととしても良い。かかる構成とした場合についても、通気性構造体40が液面と共に移動することにより、粘性液を掻き落とす効果が十分得られる。
【0071】
上述したように導出管30を通気性構造体40の案内手段として用いた場合には、導出管30の他に案内手段を別途設ける必要がなく、その分だけ粘性液供給装置10の装置構成がシンプルなものとなる。従って、導出管30を案内手段として用いることにより、準備工程における準備及びメンテナンスをより一層容易化することができる。なお、本実施形態においては、導出管30を通気性構造体40の案内手段として用いる例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、通気性構造体40を案内するための案内手段を導出管30に加えて、あるいは導出管30に代えて設けることも可能である。
【0072】
また、粘性液供給装置10においては、通気性構造体40とプレート部材50とが一体化されており、通気性構造体40の中央部分がプレート部材50によって補強されて変形しにくい。そのため、通気性構造体40を案内手段たる導出管30に沿ってスムーズかつ略一定の姿勢でスムーズに下降させることが可能である。また、プレート部材50の外径が通気性構造体40の外径よりも小さいため、通気性構造体40の外周部分は中央部分よりも変形や撓みを生じやすい。そのため、粘性液の汲み上げに際して、通気性構造体40が粘性液貯留容器Bの内壁面に沿って下降する際に、通気性構造体40の外周部分が粘性液貯留容器Bの内周面に沿って撓んで湾曲した状態になり、この湾曲に反して通気性構造体40が元の状態に戻ろうとする復元力の影響により粘性液の掻き落とし効果が向上する。なお、本実施形態においては、通気性構造体40の中央部にプレート部材50を取り付けることにより、通気性構造体40の中央部及び外周部の強度を異ならせた構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の方策により部位によって強度を異ならせることとしても良い。
【0073】
また、本実施形態において例示した通気性構造体40は、図3あるいは図7(a)に示すようにドーナツ型の外観形状を有するものであるが、楕円形、矩形、あるいは多角形等、いかなる外観形状を有するものであっても良い。具体的には、通気性構造体40は、粘性液貯留容器Bの形状等を考慮し適宜の形状とすることが可能である。また、通気性構造体40は、本実施形態において例示したもののように天面42側から底面44側に向けて略鉛直に外周面45が形成されたものに代えて、図7(b),(c)に示すように外周面45が天面42側から底面44側に向けて傾斜したもの、あるいは図7(d)に示すように外周面45に凹凸が形成されたもの等とすることが可能である。外周面45の傾斜あるいは形状を図7(b)〜(d)に示すような形状とすることにより、粘性液の掻き落とし効果をより一層向上させることが可能となる。
【0074】
また、上述した通気性構造体40は、天面42側にフック48が設けられたものであるため、粘性液の汲み上げが完了した後、粘性液貯留容器Bから通気性構造体40及びプレート部材50を取り出す作業を容易に実施することができる。なお、本実施形態においては、フック48を設けることにより、通気性構造体40及びプレート部材50を容易に取り出し可能とした構成を例示したが、粘性液貯留容器Bの首部nの開口径が広い等の事情で通気性構造体40を容易に取り出すことが可能である場合には、フック48を設けない構成としても良い。かかる構成とすることにより、装置構成をより一層シンプルなものとすることが可能となる。また、フック48に代えて、通気性構造体40を粘性液貯留容器Bから取り出し可能とする構成を設けてもよい。具体的には、導出管30の先端部分に通気性構造体40及びプレート部材50の抜け止め部材を設けておくことにより、導出管30を粘性液貯留容器Bから引き抜く際に通気性構造体40及びプレート部材50を一緒に取り出すことが可能となる。
【0075】
本実施形態の粘性液の供給方法によれば、首部n等の開口面積が他よりも小さい部分を有する粘性液貯留容器Bに粘性液が貯留されている場合であっても、導出管30を介してスムーズかつ確実に粘性液を汲み上げ、吐出装置100に安定供給することができる。そのため、吐出装置100において粘性液の供給不良に伴う吐出不良が発生することを防止できる。また、上述したように吐出装置100として一軸偏心ねじポンプからなるポンプ機構110を備えたものを採用することにより、粘性液が安定供給される限り、ロータ172の回転速度を調整することにより、吐出装置100における粘性液の吐出量をコントロールし、脈動させることなく粘性液を吐出させることが可能となる。
【0076】
上述した吐出装置100は、さらに他の装置に搭載されるものであっても良い。具体的には、吐出装置100を産業用ロボット(移動装置)等に搭載しても良い。また、吐出装置100を産業用ロボットに搭載する場合には、粘性液供給装置10から吐出装置100に対する粘性液の供給制御を、産業用ロボットの移動制御、あるいは吐出装置100における粘性液の吐出制御のいずれか一方又は双方と連動するように制御することも可能である。
【0077】
なお、本実施形態においては、吐出装置100としてポンプ機構110を備えたものを採用した構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、図8(a)に示すように、いわゆるハンドガンタイプの吐出装置200を上述した吐出装置100に代えて用いても良い。吐出装置200は、レバー202を握ることにより吐出口204から粘性液を吐出させ、レバー202を放すことにより粘性液の吐出を中止可能なものである。そのため、レバー202の操作により吐出口204から粘性液が吐出されるのに合わせて粘性液供給装置10から逐次、吐出装置202に対して粘性液を供給することにより、吐出装置200によって塗布等するために必要な粘性液を絶やすことなく供給することが可能となる。
【0078】
また、図8(b)に示すように、先端部に吐出口304を有するチューブ状の吐出装置300を吐出装置100に代えて採用してもよい。吐出装置300は、粘性液を溜めておくことが可能なチューブ本体部302を有し、チューブ本体部302を作業者が握る等して圧縮することにより、粘性液を吐出口304から吐出させることが可能なものである。吐出装置300を吐出装置100に代えて採用した場合についても、導出管30を介して取り出された粘性液をチューブ本体部302内に逐次供給することにより、粘性液貯留容器Bから取り出された粘性液を塗布等に使用することができる。
【0079】
本実施形態の粘性液の供給方法においては、圧力容器20内において粘性液貯留容器Bの略全体が加圧雰囲気下に配置されるため、通気性構造体40に対して部位によらず略均一の圧力が作用する。そのため、粘性液貯留容器Bから粘性液を汲み上げる際には、粘性液の液面低下と連動して通気性構造体40が部位によらず略均一に下降する。従って、本実施形態の粘性液の供給方法によれば、粘性液貯留容器B内に存在する粘性液を確実に掻き落とし、残すことなく外部に設けられた吐出装置100等に供給することが可能となる。
【0080】
本実施形態において用いた圧力容器20は、いかなる大きさのものであっても良いが、例えば卓上に設置可能な程度の大きさのものとすることが可能である。このような圧力容器20を用いれば、容量が小さい粘性液貯留容器Bであっても、本実施形態において例示した粘性液の供給方法によって粘性液を粘性液貯留容器Bから取り出し、利用することが可能となり、作業者の利便性を向上させることが可能となる。
【0081】
また、本実施形態においては、加圧状態とされた圧力容器20内に粘性液貯留容器Bを配置し、粘性液中に差し込まれた導出管30内と、粘性液の液面との間に差圧が発生する圧力条件とする構成を例示したが、本発明はこれに限定される訳ではない。すなわち、導出管30内と、粘性液の液面との間に通気性構造体40が粘性液貯留容器B内を液面低下方向に推進させることが可能な程度の差圧が発生するのであれば、必ずしも圧力容器20を用いて加圧雰囲気を形成する必要はない。具体的には、導出管30に対して接続される吐出装置100等が粘性液を吸引する能力を有するものである等して、導出管30の内圧を粘性液の液面に作用する圧力よりも低圧にすることができる場合には、圧力容器20を設け無くても良い。かかる構成とすることにより、圧力容器20の分だけ装置構成を簡素化することが可能となる。
【0082】
本実施形態の粘性液の供給方法に用いる粘性液供給装置10は、上述した構成に限定されるものではなく、さらに他の構成を加える等したものであっても良い。具体的には、粘性液供給装置10は、通気性構造体40が粘性液貯留容器Bの底に到達したことを検知可能な検知手段(下限到達検知手段)を設けたものであっても良い。さらに詳細には、例えば磁石を通気性構造体40あるいはプレート部材50に取り付けておき、圧力容器の外部あるいは内部において磁力変化を捉えることにより通気性構造体40の位置を検知することとしても良い。
【0083】
また、本実施形態においては、粘性液貯留容器Bの例として寸胴型の胴体部bの上端に首部nを有するものを例示したが、本発明の粘性液の供給方法に用いられる粘性液貯留容器Bの形状は上述したものに限定される訳ではない。具体的には、胴体部bの中間部分にくびれを有するもの等、液面の低下方向に向けて断面積が断続的あるいは連続的に変化する様々な形状の粘性液貯留容器Bを用いることが可能である。
【0084】
本実施形態においては、通気性構造体40として連続気泡型のスポンジを用いた例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、上述したスポンジに設けられた連続気泡と同様に少なくとも厚み方向に連続した通気経路を有し、少なくとも粘性液貯留容器Bの内壁面の形状変化に追従して適宜径方向に伸縮可能なものを用いることが可能である。具体的には、微細なメッシュを有する布、不織布等を重ね合わせる等して通気経路を形成したものを基材とし、この基材を少なくとも径方向に向けて自由に伸縮可能とする伸縮機構を設けたものを通気性構造体40として利用することが可能である。このようなものを通気性構造体40として用いた場合についても、スポンジを通気性構造体40として用いた場合と同様の作用効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の粘性液の供給方法は、グリースなどのように粘性が高い液体が、首部がすぼんだ容器等に収容されている場合に、粘性液を容器の内壁面等に残存させることなく汲み上げて供給する用途に好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0086】
10 粘性液供給装置
20 圧力容器
22 収容部
24 配管
30 導出管(案内手段)
40 通気性構造体
42 天面
44 底面
46 貫通孔
48 フック
50 プレート部材
52 プレート部
54 スリーブ部
100,200,300 吐出装置
110 ポンプ機構
B 粘性液貯留容器
b 胴体部
n 首部(縮径部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
他の箇所よりも内径が小さい縮径部を有する粘性液貯留容器に差し込まれた導出管を介して前記粘性液貯留容器内に収容されている粘性液を外部に導出し、供給する粘性液の供給方法であって、
前記粘性液貯留容器の内部空間において最も断面積が大きい部分の内径よりも外径が大きく少なくとも厚み方向に連続した通気経路を備えており、少なくとも径方向への伸縮性を有する通気性構造体が用いられ、
前記導出管を前記粘性液貯留容器内の粘性液中に差し込み、前記通気性構造体を前記粘性液上に配置する準備工程と、
前記準備工程において前記粘性液中に差し込まれた導出管内と、前記粘性液の液面との間に差圧が発生する圧力条件とすることにより、前記導出管を介して粘性液を外部に導出する導出工程とを有することを特徴とする粘性液の供給方法。
【請求項2】
前記通気性構造体を前記粘性液の液面の下降方向に案内する案内手段が前記準備工程において準備され、
前記導出工程において、前記通気性構造体が前記案内手段によって案内されて下降することを特徴とする請求項1に記載の粘性液の供給方法。
【請求項3】
前記通気性構造体に前記導出管を挿入可能な貫通孔が設けられており、
前記貫通孔に挿入された前記導出管が案内手段とされることを特徴とする請求項2に記載の粘性液の供給方法。
【請求項4】
前記導出管を案内可能なスリーブが、前記貫通孔に装着されていることを特徴とする請求項3に記載の粘性液の供給方法。
【請求項5】
前記通気性構造体と一体化され、外径が前記縮径部の内径以下であるプレート部材が用いられ、
前記準備工程において、前記プレート部材が、前記粘性液貯留容器内に収容されている粘性液の液面に沿う姿勢で配置されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の粘性液の供給方法。
【請求項6】
前記通気性構造体の天面側にフックが設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の粘性液の供給方法。
【請求項7】
前記導出管に対して吐出装置が接続されており、
前記導出管を介して導出された粘性液が前記吐出装置に供給されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の粘性液の供給方法。
【請求項8】
前記吐出装置が、一軸偏心ねじポンプであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の粘性液の供給方法。
【請求項9】
内部雰囲気を加圧状態とすることが可能な圧力容器が用いられ、
前記導出工程において前記圧力容器内に前記粘性液貯留容器が配置され、前記粘性液貯留容器が加圧雰囲気下に設置されることにより、前記粘性液中に差し込まれた導出管内と、前記粘性液の液面との間に差圧が発生する圧力条件とされることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の粘性液の供給方法。
【請求項10】
圧力容器が、卓上に設置可能なものであることを特徴とする請求項9に記載の粘性液の供給方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−255344(P2012−255344A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127404(P2011−127404)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000239758)兵神装備株式会社 (76)
【Fターム(参考)】