説明

粘性液状物中の磁性異物検出方法

【課題】非磁性容器内に粘性液状物を入れた製品の製造ラインにおいて、粘性液状物の磁性異物を高感度で検出できる粘性液状物中の磁性異物検出方法を提供する。
【解決手段】非磁性容器内に粘性液状物を入れた製品bの移送中に、粘性液状物中磁性異物を電磁的に検出する方法であり、移送路の途中に容器底の外面に臨んで磁気センサーsを設置し、該磁気センサーsよりも上流側に前記磁性異物を容器底面側に強制的に移動させる強制的移動手段cを設け、前記磁性異物を容器内底面側に強制的に移動させた状態で前記磁気センサーsにより検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非磁性容器内に粘性液状物を入れた製品、例えばヨーグルトやレトルトカレーの製造工程中に粘性液状物に侵入した磁性異物を検出する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヨーグルトやレトルトカレー等の製造におけるコンベヤラインでは、容器に内容物を充填した後、キャップや蓋で閉封するまでの間に製造装置の部品、例えばベアリング、ボルト・ナットやネジまたは機械部品の破片等の異物が侵入した事例が報告されている。
従来、前記異物が侵入した不良製品の検出には、渦流方式の金属探知機が使用されている。
この方式では、移送路を挾んで送信コイルと一対の受信コイルとを配設し、この一対の受信コイルを差動的に接続している。従って、金属異物の侵入のない正常な製品の走行に対しては両受信コイルの出力が同じとなってその差動出力が0となる。他方、金属異物が侵入した不良製品の走行に対しては、金属異物に流れる渦電流のために貫通磁束が金属異物の通過位置変位に伴い変化し、その結果一対の受信コイルの差動出力が変化する。この差動出力の変化から不良製品が通過することを検出し、この不良製品をコンベヤラインから排除している。
しかしながら、この渦流方式金属探知法の使用では、容器が金属複合タイプの場合、例えばアルミ蒸着紙容器やアルミ箔ラミネート紙容器の場合、アルミが導電性であって渦電流が流れ、アルミ蒸着膜やアルミ箔によっても貫通磁束が変化されるから。高精度の金属異物検出は困難である。
【0003】
前記製造工程中に容器内に侵入する金属異物は、製造装置の部品であるベアリング、ボルト・ナットやネジ等であって鉄若しくはフェライト系ステンレスであり、磁性金属であって加工歪や使用中の歪や地磁気のために相当に磁化されている。磁性の弱いオーステナイト系ステンレス部品であっても、破片では厳しい塑性変形のためにある程度磁化されている。
【0004】
そこで、前記製品中の容器内金属異物を磁化物としてとらえて磁気的に検出することが考えられる。
従来、前記の製造ラインにおいて、製品に侵入した金属異物を帯磁手段により磁化し、この磁化異物を磁気インピーダンス効果センサーにより検出して製造ラインから排除することが提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2006−98117号公報 この検出方法によれば、容器が非磁性である以上、その容器に対する磁気インピーダンス効果センサーの応答がなく、容器がアルミ複合構造等の導電性であっても問題はない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者の鋭意検討結果によれば、容器の内容物がヨーグルトやレトルトカレー等の粘性液状物の場合、前記帯磁処理のみでは、磁性異物の確実な検出は困難であり、その理由は次の通りである。
すなわち、帯磁のための磁界には、後述する電磁的吸引に必要な磁気勾配を必要とせず、単なる帯磁処理では、有効な電磁的吸引が達成されない。また、帯磁は極く短時間で完結されるが、かかる短時間では高粘度液中での磁性異物の有効な移動は達成されない。
従って、磁性異物が内容物の高粘性のために殆ど沈降されず、その結果、異物が帯磁物であっても、その異物検出時での異物と磁気センサーとの距離が大となる。
帯磁異物の磁気モーメントをMとし、その異物の磁気的中心から距離R、角度φの位置pに磁気インピーダンス効果素子が存在するとすると、その位置pでの磁界強度Hは
H=M(1+3cosφ)1/2/(4πμ
で与えられ、磁気インピーダンス効果素子への入力磁界が距離Rの三乗に反比例し、磁気センサーに作用する帯磁異物の磁気モーメントによる磁界強度Hが弱いから、適確な検出が困難になる。
【0006】
本発明の目的は、非磁性容器内に粘性液状物を入れた製品の製造ラインにおいて、粘性液状物の磁性異物を高感度で検出できる粘性液状物中の磁性異物検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る粘性液状物中の磁性異物検出方法は、非磁性容器内に粘性液状物を入れた製品の移送中に、粘性液状物中磁性異物を電磁的に検出する方法であり、移送路の途中に容器底の外面に臨んで磁気センサーを設置し、該磁気センサーよりも上流側に前記磁性異物を容器底面側に強制的に移動させる強制的移動手段を設け、前記磁性異物を容器内底面側に強制的に移動させた状態で前記磁気センサーにより検出することを特徴とする。
請求項2に係る粘性液状物中の磁性異物検出方法では、請求項1に係る粘性液状物中の磁性異物検出方法において、磁性異物が磁化された磁性体である。
請求項3に係る粘性液状物中の磁性異物検出方法では、請求項1または2に係る粘性液状物中の磁性異物検出方法において、強制的移動手段が磁気勾配に基づく電磁的吸引手段であることを特徴とする。
請求項4に係る粘性液状物中の磁性異物検出方法では、請求項1〜3の何れかに係る粘性液状物中の磁性異物検出方法において、磁気センサーとして、2個の磁気インピーダンス効果素子を間隔を隔てて設け、これらの磁気インピーダンス効果素子の出力を差動増幅する差動式磁気インピーダンス効果センサーを使用することを特徴とする。
請求項5に係る粘性液状物中の磁性異物検出方法では、請求項4に係る粘性液状物中の磁性異物検出方法において、2個の磁気インピーダンス効果素子が磁気インピーダンス効果素子の感磁軸から90°の方向に隔離されている。
請求項6に係る粘性液状物中の磁性異物検出方法では、請求項4または5に係る粘性液状物中の磁性異物検出方法において、磁気インピーダンス効果素子に代え、MR素子、ホール効果素子、フラックスゲート素子またはSQUIDの何れかを使用することを特徴とする。
請求項7に係る粘性液状物中の磁性異物検出方法では、請求項1〜6の何れかに係る粘性液状物中の磁性異物検出方法において、粘性液状物が食品である。
【発明の効果】
【0008】
容器の内容物が高粘性液状物であっても、容器内侵入磁性異物に容器内底面側に向けて電磁力が加えられてその異物の当該底面側への移動が促されるから、その製品の移送が進んでその製品が磁気センサーに達したときのそのセンサーと前記異物との距離がそれだけ短くされ、高感度の異物検出が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明において使用される製造ラインを示す図面である。
図1において、aはベルトコンベヤ、bは非磁性容器に高粘性液状物を入れた製品である。
非磁性容器としては、紙容器、プラスチック容器、ガラス容器の他、アルミ蒸着やアルミラミネート等の非磁性金属複合容器等が使用される。製品としては、ヨーグルトやレトルトカレーを例示できる。
この製造ラインにおいては、容器内に粘性液状物を充填した後容器を閉封するまでに、容器内に製造装置の部品であるベアリング、ボルト・ナット、ネジや製造装置の破片等の磁性金属異物が落下侵入することがあり得る。
cは容器内に侵入した磁性異物に容器内底面に向かう電磁力を作用させる直流勾配磁気手段である。
図2はその直流勾配磁気手段の一例を示し、異物eの体積をQ、体積磁化率をη、磁界の強さをH(y)とすると(yは容器内底面からの距離)、磁性異物eに作用する電磁力Fは
F=ηQH(y)dH(y)/dy
で与えられる。
製品がこの直流勾配磁気手段を移行する間、容器内の磁性異物が容器内底面に向かう電磁力を受け、直流勾配磁気手段の終端で磁性異物が容器内底面乃至は底面近傍に到達する。
電磁力を受けている間、磁性異物の運動は、異物の降下速度をv、異物の重量をm、重力加速度をg、異物の垂直投影面積をS、電磁的吸引力をFとすると
mdv/dt=g+F−Skv
で論じられ(kは粘性抵抗係数)、異物の初期高さをhとすると、異物が容器内底面に達するのに要する時間Tは、
【数1】

で与えられる。
直流勾配磁気手段の磁場の巾Wとコンベヤ速度Vとの間には、W=VTの関係が与えられている。
この直流勾配磁気手段を通過した製品中の磁性異物は前記磁場により磁化されている。 直流勾配磁気手段による強制的沈降に費やされる時間Tが、通常の帯磁手段による帯磁に費やされる時間よりも長いから、直流勾配磁気手段による磁化率は通常の帯磁手段による磁化率よりも大である。
【0010】
図1において、sは磁気センサーであり、通過する製品の容器の底外面が近接する位置に配設されている。この磁気センサーには、磁気インピーダンス効果センサーを用いることができる。
【0011】
図3は磁気インピーダンス効果センサーの一例の回路図を示している。
図3において、1は磁気インピーダンス効果素子であり、自発磁化の方向がワイヤ周方向に対し互いに逆方向の磁区が交互に磁壁で隔てられた構成の外殻部を有する、零磁歪乃至は負磁歪のアモルファス合金ワイヤが使用される。かかる零磁歪乃至は負磁歪のアモルファス磁性ワイヤに高周波励磁電流を流したときに発生するワイヤ両端間出力電圧中のインダクタンス電圧分は、ワイヤの横断面内に生じる円周方向磁束によって上記の円周方向に易磁化性の外殻部が円周方向に磁化されることに起因して発生する。従って、周方向透磁率μθは同外殻部の円周方向の磁化に依存する。而るに、この通電中のアモルファスワイヤの軸方向に信号磁界を作用させると、上記通電による円周方向磁束と信号磁界磁束との合成により、上記円周方向に易磁化性を有する外殻部に作用する磁束の方向が円周方向からずれ、それだけ円周方向への磁化が生じ難くなり、上記周方向透磁率μθが変化し、上記インダクタンス電圧分が変動することになる。この変動現象は磁気インダクタンス効果と称され、これは上記高周波励磁電流(搬送波)が信号磁界(信号波)で変調される現象ということができる。更に、上記通電電流の周波数がMHzオ−ダになると、高周波表皮効果が大きく現れ、表皮深さδ=(2ρ/wμθ1/2(μθは前記した通り円周方向透磁率、ρは電気抵抗率、wは角周波数をそれぞれ示す)がμθにより変化し、このμθが前記した通り、信号磁界によって変化するので、ワイヤ両端間出力電圧中の抵抗電圧分も信号磁界で変動するようになる。この変動現象は磁気インピーダンス効果と称され、これは上記高周波励磁電流(搬送波)が信号磁界(信号波)で変調される現象ということができる。
【0012】
図3において、2は磁気インピーダンス効果素子に高周波励磁電流を加えるための高周波電流源回路、3は磁気インピーダンス効果素子の軸方向に作用する信号磁界(信号波)で前記高周波励磁電流(搬送波)を変調させた被変調波を復調する検波回路、4は復調波を増幅する増幅回路、5は出力端、6は負帰還用巻線、7はバイアス磁界用巻線である。
【0013】
磁気インピーダンス効果素子1においては、前記した通り励磁電流に基づく円周方向磁束と信号磁界による軸方向磁束との合成により、円周方向に易磁化性を有する外殻部に作用する磁束の方向が円周方向からずらされるために、周方向透磁率μθが変化し、インダクタンスが変動され、この円周方向透磁率μθの高周波表皮効果の表皮深さの変化でインピーダンスが変動される。従って、信号磁界の±により上記合成磁界による周方向ずれφも±φになるが、周方向の磁界の減少倍率cos(±φ)は変わらず、従ってμθの減少度は信号磁界の方向の正負によっては変化されない。従って、信号磁界−出力特性は、図4の(イ)のように信号磁界をx軸に、出力をy軸にとると、y軸に対してほぼ左右対称となる。この信号磁界−出力特性は非線形である。非線形特性では、不安定であり、高感度の測定も困難である。そこで、負帰還用巻線で負帰還をかけて図4の(ロ)に示すように出力特性を直線化している。しかし、この出力特性では、信号磁界の極性判別を行ない得ないので、バイアス用巻線7でバイアス磁界をかけ、図4の(ハ)に示すように極性判別可能としている。すなわち、図4の(ロ)の特性を、図4の(ハ)に示すようにバイアス磁界−Hbによりx軸のマイナス方向に移動させ、信号磁界の最大検出範囲を単斜め線領域の範囲内−Hmax〜+Hmaxに納めている。
【0014】
上記磁気インピーダンス効果素子1としては、遷移金属と非金属の合金で非金属が10〜30原子%組成のもの、特に遷移金属と非金属との合金で非金属量が10〜30原子%を占め、遷移金属がFeとCoで非金属がBとSiであるかまたは遷移金属がFeで非金属がBとSiである組成のものを使用することができ、例えば、組成Co70.515Si10Fe4.5、長さ2000μm〜6000μm、外径30μm〜50μmφのものを使用できる。 磁気インピーダンス効果素子1には、零磁歪乃至は負磁歪のアモルファスワイヤの外、アモルファスリボン、アモルファススパッタ膜等も使用できる。
【0015】
上記において、高周波励磁電流には、例えば連続正弦波、パルス波、三角波等の通常の高周波を使用でき、高周波励磁電流源としては、例えばハートレー発振回路、コルピッツ発振回路、コレクタ同調発振回路、ベース同調発振回路のような通常の発振回路の外、水晶発振器の矩形波出力を直流分カットコンデンサを経て積分回路で積分しこの積分出力の三角波を増幅回路で増幅する三角波発生器、CMOS−ICを発振部として使用した三角波発生器等を使用できる。
【0016】
上記の検波回路としては、例えば被変調波を演算増幅回路で半波整流しこの半波整流波を並列RC回路またはRCローパスフィルターで処理して半波整流波の包絡線出力を得る構成、被変調波をダイオードで半波整流しこの半波整流波を並列RC回路またはRCローパスフィルターで処理して半波整流波の包絡線出力を得る構成等を使用できる。
また、被変調波(周波数fs)に同調させた周波数fsの方形波を被変調波に乗算して信号波をサンプリングする同調検波を使用することができる。
上記の実施例では、被変調波の復調によって被検出磁界を取り出しているが、これに限定されず、磁気インピーダンス効果素子に作用する信号磁界(信号波)で変調された高周波励磁電流波(搬送波)から信号磁界を検波し得るものであれば、適宜の検波手段を使用できる。
【0017】
前記負帰還用巻線及びバイアス磁界用巻線は磁気インピーダンス効果素子に巻き付けることができる。また、図5に示すように磁気インピーダンス効果素子とループ磁気回路を構成する鉄芯に負帰還用巻線及びバイアス磁界用巻線を巻き付けることもできる。 図5の(イ)は鉄芯巻線付き磁気インピーダンス効果ユニットの一例を示す側面図、図5の(ロ)は同じく底面図、図5の(ハ)は図5の(ロ)におけるハ−ハ断面図である。
図5において、100は基板チップであり、例えばセラミックス板を使用できる。101は基板片の片面に設けた電極であり、磁気インピーダンス効果素子接続用突部102を備えている。この電極は導電ペースト、例えば銀ペーストの印刷・焼付けにより設けることができる。1xは電極101,101の突部102,102間にはんだ付けや溶接により接続した磁気インピーダンス効果素子であり、前記した通り零磁歪乃至負磁歪のアモルファスワイヤ、アモルファスリボン、スパッタ膜等を使用できる。103は鉄やフェライト等からなるC型鉄芯、6xはC型鉄芯に巻装した負帰還用巻線、7xは同じくバイアス磁界用巻線であり、磁気インピーダンス効果素子1xとC型鉄芯103とでループ磁気回路を構成するように、C型鉄芯103の両端を基板片100の他面に接着剤等で固定してある。鉄芯材料としては、残留磁束密度の小さい磁性体であればよく、例えば、パーマロイ、フェライト、鉄、アモルファス磁性合金の他、磁性体粉末混合プラスチック等を挙げることができる。
【0018】
前記磁気インピーダンス効果センサには、図6に示すような差動式を用いることもできる。
図6において、1a,1bは一対の磁気インピーダンス効果素子であり、それぞれ負帰還用巻線6a,6b及びバイアス磁界用巻線7a,7bを備えている。
2は磁気インピーダンス効果素子に高周波励磁電流を加えるための高周波電流源回路、3a,3bは各磁気インピーダンス効果素子1a,1bの軸方向に作用する信号磁界Hex(信号波)で前記高周波励磁電流(搬送波)を変調させた被変調波を復調する検波回路、4は両検波出力を差動増幅して検出出力を得るための演算差動増幅器である。60は差動増幅器4の出力を各負帰還用巻線6a,6bに対し負帰還させるための負帰還回路である。5は検出出力端である。
【0019】
図6の差動式センサにおいては、各磁気インピーダンス効果素子1a、1bが磁気インピーダンス効果素子の感磁軸から90度の方向に所定の間隔で離隔されており、各磁気インピーダンス効果素子に作用する信号磁界の位相が異なるために、差動出力に急峻な変化点が生じる。
この差動式によれば、地磁気や近傍設置の磁性体構造物からの残留磁気による外部ノイズや差動各サイドの温度変化等に起因するノイズ等が差動増幅器に同相で入力されるから、ノイズを良好に排除できる。
この差動式磁気インピーダンス効果センサーにおいて、各磁気インピーダンス効果素子1a,1bの軸方向に作用する信号磁界をHa、Hbとすると、差動検出出力はVout
out=k(Ha−Hb)
で与えられる。
【0020】
図1において、1a,1bは差動式磁気インピーダンス効果センサーの磁気インピーダンス効果素子を示し、コンベヤ移送方向に距離Lを隔てて配設されている。
図7に示すように、帯磁された磁性異物を製品の移送方向nに対して直角方向の磁気モーメントMの磁気ダイポールと見做し、磁気インピーダンス効果素子1の向きがその磁気ダイポールの方向と一致し、磁気インピーダンス効果素子の中心が磁気ダイポールに対して距離R、角度φの位置oに存在するとすると、磁気ダイポールによる位置oでの磁界強度Hは、
H=M(1+3cosφ)1/2/(4πμ
で与えられる。
図7から明らかな通り、この磁界Hの磁気インピーダンス効果素子の軸方向成分Hは、
=Hcos(φ+θ)=H(cosφcosθ−sinφsinθ)
で与えられ
sinθ=sinφ/(1+3cosφ)1/2
cosθ=2cosφ/(1+3cosφ)1/2
の関係があるから
Hm=M(3cosφ−1)/(4πμ
で与えられる。
【0021】
前記磁気ダイポールすなわち磁化異物が一の磁気インピーダンス効果素子上を通過するときにRが最小となって1/(4πμ)が最大となり、φが0になって(1+3cosφ)が最大となる。これに対して、磁化異物と一の磁気インピーダンス効果素子との間が遠いほどR→∞となって1/(4πμ)→0となり、φ→±90°になって(-1+3cosφ)→-1となる。
一の磁気インピーダンス効果素子の検出出力を図示すると、図8の(イ)のようになり、距離Lを隔てた他の磁気インピーダンス効果素子〔その出力を(ロ)で示す〕との差動による検出出力は図8の(ハ)のようになる。
従って、磁化異物の侵入を受けた製品が一対の差動式磁気インピーダンス効果素子を通過する際、検出出力がその不良製品の通過位置に応じて正→負に急峻に変化し、その中間で0になるのを明確に検知でき、両磁気インピーダンス効果素子間の中央に不良製品排除手段を設けておき、前記差動検出出力が0になったときに、その排除手段を動作させるようにすれば磁性異物が粘性液状物内に侵入した不良製品を確実に排除できる。
この場合、排除手段は前記検出出力0を検知し、この検知で自動的に動作される。
勿論、差動検出方式とすることにより、地磁気や近傍設置の磁性体構造物からの残留磁気による外部ノイズの影響を排除できる。
【0022】
上記磁性異物を容器底面側に強制的に移動させる強制的移動手段には、加振手段を用いることもできる。また、加振と前記電磁的吸引を併用することもできる。
また、前記差動式磁気インピーダンス効果センサーにおける2個の磁気インピーダンス効果素子はコンベヤベルトを挾んでコンベヤ走行方向に直角方向に隔離して配設することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明において使用される製造ラインを示す図面である。
【図2】本発明において使用される電磁的吸引手段を示す図面である。
【図3】本発明において使用される磁気インピーダンス効果センサーを示す図面である。
【図4】磁気インピーダンス効果センサーの出力特性を示す図面である。
【図5】前記磁気インピーダンス効果センサーにおいて使用される鉄芯巻線付き磁気インピーダンス効果ユニットを示す図面である。
【図6】本発明において使用される差動式磁気インピーダンス効果センサーを示す図面である。
【図7】前記磁気インピーダンス効果センサーの磁気インピーダンス効果素子に磁化異物の磁気モーメントにより作用する磁界を示す図面である。
【図8】本発明における差動式磁気インピーダンス効果センサーの出力を示す図面である。
【符号の説明】
【0024】
a ベルトコンベヤ
b 容器内に粘性液状物を入れた製品
c 電磁的吸引手段
s 磁気センサー
1 磁気インピーダンス効果素子
1a,1b 一対の磁気インピーダンス効果素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性容器内に粘性液状物を入れた製品の移送中に、粘性液状物中磁性異物を電磁的に検出する方法であり、移送路の途中に容器底の外面に臨んで磁気センサーを設置し、該磁気センサーよりも上流側に前記磁性異物を容器底面側に強制的に移動させる強制的移動手段を設け、前記磁性異物を容器内底面側に強制的に移動させた状態で前記磁気センサーにより検出することを特徴とする粘性液状物中の磁性異物検出方法。
【請求項2】
磁性異物が磁化された磁性体である請求項1記載の粘性液状物中の磁性異物検出方法。
【請求項3】
強制的移動手段が磁気勾配に基づく電磁的吸引手段であることを特徴とする請求項1または2記載の粘性液状物中の磁性異物検出方法。
【請求項4】
磁気センサーとして、2個の磁気インピーダンス効果素子を間隔を隔てて設け、これらの磁気インピーダンス効果素子の出力を差動増幅する差動式磁気インピーダンス効果センサーを使用することを特徴とする請求項1〜3何れか記載の粘性液状物中の磁性異物検出方法。
【請求項5】
2個の磁気インピーダンス効果素子が磁気インピーダンス効果素子の感磁軸から90°の方向に隔離されている請求項4記載の粘性液状物中の磁性異物検出方法。
【請求項6】
磁気インピーダンス効果素子に代え、MR素子、ホール効果素子、フラックスゲート素子またはSQUIDの何れかを使用することを特徴とする請求項4または5記載の粘性液状物中の磁性異物検出方法。
【請求項7】
粘性液状物が食品である請求項1〜6何れか記載の粘性液状物中の磁性異物検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−26192(P2008−26192A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−200155(P2006−200155)
【出願日】平成18年7月24日(2006.7.24)
【出願人】(000225337)内橋エステック株式会社 (115)
【Fターム(参考)】