説明

粘接着剤組成物及び粘接着シート

【課題】酸を発生させることなく、低温での硬化させることができ、且つ、可使時間の調整が可能で作業性の良い、粘接着剤組成物及び粘接着シートを提供する。
【解決手段】本発明の粘接着剤組成物は、光照射後の加熱により塩基を発生する塩基発生剤と、分子中にエポキシ基を少なくとも1個以上有する硬化性化合物と、ガラス転移温度(Tg)が−10〜30℃である熱可塑性樹脂と、を含有し、前記熱可塑性樹脂の含有量が、前記硬化性化合物100質量部に対して10〜300質量部であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘接着剤組成物及び粘接着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
光硬化で主に用いられている硬化システムとしては、ラジカルによる硬化と、カチオンによる硬化とがある。ラジカルによる硬化では、光ラジカル発生剤と(メタ)アクリレート樹脂等のラジカル重合性樹脂とを用いる。光照射により光ラジカル発生剤がラジカルを発生し、そのラジカルによりラジカル重合性樹脂が硬化される。このラジカルによる硬化では、一般に、得られる接着力が低く、硬化収縮が大きく、耐熱性が悪い。カチオンによる硬化では、光酸発生剤とエポキシ樹脂等のカチオン重合性樹脂とを用いる。光照射により光酸発生剤が酸を発生し、その酸によりカチオン重合性樹脂が硬化される。このカチオンによる硬化では、高い接着力が得られ、硬化収縮も小さいが、酸が発生するため、金属箔等の腐食を引き起こすという問題を有する。
【0003】
上記のようなラジカルやカチオンによる硬化の問題を解決する手段の1つとして、近年、光照射により塩基性化合物を発生する光塩基発生剤を用いるアニオンによる硬化の研究が行われている。アニオンによる硬化では、光塩基発生剤とエポキシ樹脂等の塩基重合性樹脂とを用いる。ところが、従来の光塩基発生剤は、塩基性化合物の発生効率が悪く、また、発生する塩基性化合物が第1級又は第2級アミンであるため塩基性が低く、エポキシ樹脂等の塩基重合性樹脂を十分に硬化するための触媒活性を有していない。
【0004】
そこで、本発明者が研究を行ったところ、ある特定の塩基発生剤によれば、上記問題を解決できることを見出した(特許文献1参照)。この塩基発生剤によれば、光照射と加熱とにより、塩基重合性樹脂を十分に硬化可能な触媒活性を有する塩基を発生させることができる。なお、特許文献1において本発明者は、この塩基発生剤をパターン形成用の感光性樹脂組成物に含有させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−106233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、一般に、光硬化型の粘接着剤組成物には、可使時間が長く、また、被着体を腐食させる酸を発生させずに低温にて硬化できる特性が求められている。かかる特性を有する光硬化型の粘接着剤組成物は、従来、知られていない。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、酸を発生させずに低温で硬化し、且つ、可使時間の調整が可能で作業性の良い、粘接着剤組成物及び粘接着シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
具体的には、本発明では、以下のようなものを提供する。
【0009】
(1) 光照射後の加熱により塩基を発生する塩基発生剤と、分子中にエポキシ基を少なくとも1個以上有する硬化性化合物と、ガラス転移温度(Tg)が−10〜30℃である熱可塑性樹脂と、を含有し、
上記熱可塑性樹脂の含有量が、上記硬化性化合物100質量部に対して10〜300質量部であることを特徴とする粘接着剤組成物。
【0010】
(2) 上記塩基発生剤は、少なくとも2個以上のアミノ基を有する塩基を発生する(1)に記載の粘接着剤組成物。
【0011】
(3) 上記硬化性化合物は、エポキシ系樹脂である(1)又は(2)に記載の粘接着剤組成物。
【0012】
(4) 上記塩基発生剤は、下記一般式(I)で表される(1)〜(3)いずれかに記載の粘接着剤組成物。
【化1】

(式中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は1価の有機基を表す。R及びRは、それらが結合して環状構造を形成していてもよい。ただし、R及びRのうち、少なくとも1つは1価の有機基を表す。R〜Rは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子又は有機基を表す。R〜Rは、それらの2つ以上が結合して環状構造を形成していてもよい。)
【0013】
(5) (1)〜(4)いずれかに記載の粘接着剤組成物からなる粘接着剤層を少なくとも有する粘接着シート。
【発明の効果】
【0014】
本発明の粘接着剤組成物によれば、酸を発生させることなく、低温での硬化させることができ、且つ、可使時間の調整が可能で、作業性の良い粘接着剤組成物及び粘接着シートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0016】
[粘接着剤組成物]
本発明の粘接着剤組成物は、光照射後の加熱により塩基を発生する塩基発生剤と、分子中にエポキシ基を少なくとも1個以上有する硬化性化合物と、ガラス転移温度(Tg)が−10〜30℃である熱可塑性樹脂と、を含有し、上記熱可塑性樹脂の含有量が、上記硬化性化合物100質量部に対して10〜300質量部であることを特徴とする。以下、塩基発生剤、硬化性化合物、熱可塑性樹脂、その他の成分について順に説明する。
【0017】
<塩基発生剤>
本発明の粘接着剤組成物に含まれる塩基発生剤は、光照射後の加熱により塩基を発生する。このような塩基発生剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、下記一般式(I)で表される塩基発生剤が好ましい。この塩基発生剤は、例えば、上記の特許文献1に記載されている。
【化2】

【0018】
上記一般式(I)で表される塩基発生剤は、光塩基発生剤の一種であり、光照射後に、適宜加熱することにより、塩基の発生が促進される。上記一般式(I)で表される塩基発生剤は、光照射と加熱とを組み合わせることにより、少ない光照射量で、効率的に塩基を発生することが可能である。なお、光塩基発生剤とは、常温常圧の通常の条件下では活性を示さないが、外部刺激として光が加えられると、塩基を発生する剤をいう。
【0019】
上記一般式(I)で表される塩基発生剤は、上記特定構造を有するため、光が照射されることにより、一般式(I)中の(−CH=CH−C(=O)−)部分がシス体へと異性化し、更に加熱によって環化し、塩基であるアミン、NHRを生成する。そして、生成したアミンによってエポキシ基が開環し、アミンと付加重合する。
【0020】
上記一般式(I)において、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は1価の有機基であるが、R及びRのうち少なくとも1つは1価の有機基である。また、NHRは、塩基(本発明においては、「塩基性物質」を単に、塩基という。)であるが、R及びRは、それぞれ、アミノ基を含まない有機基であることが好ましい。R及びRに、アミノ基が含まれると塩基発生剤自体が塩基となり、エポキシ基と反応し、経時安定性が損なわれるおそれがある。
【0021】
1価の有機基としては、飽和又は不飽和アルキル基、飽和又は不飽和シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、飽和又は不飽和ハロゲン化アルキル基等が挙げられる。これらの有機基は、当該有機基中にヘテロ原子等の炭化水素基以外の結合や置換基を含んでいてもよく、また、直鎖状であっても分岐状であってもよい。
【0022】
また、R及びRは、それらが結合して環状構造を形成していてもよい。環状構造は、飽和又は不飽和の脂環式炭化水素、複素環、及び縮合環、並びに当該脂環式炭化水素、複素環、及び縮合環からなる群より選択される2種以上が組み合されてなる構造であってもよい。
【0023】
上記R及びRの有機基中の炭化水素基以外の結合としては、特に限定されるものではなく、例えば、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、チオカルボニル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、イミノ結合(−N=C(−R)−,−C(=NR)−:ここでRは水素原子又は1価の有機基)、カーボネート結合、スルホニル結合等が挙げられる。
【0024】
上記R及びRの有機基中の炭化水素基以外の置換基としては、特に限定されるものではなく、例えば、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、シアノ基、シリル基、シラノール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、ニトロ基、カルボキシル基、アシル基、アシルオキシ基、スルフィノ基、スルホ基、飽和又は不飽和アルキルエーテル基、飽和又は不飽和アルキルチオエーテル基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アミノ基(−NH,−NHR,−NRR’:ここで、R及びR’は、それぞれ独立に炭化水素基)等が挙げられる。これらの基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよい。
【0025】
生成するアミンは、NHRであるため、1級アミン、2級アミンである。また、アミンには、それぞれ脂肪族アミン及び芳香族アミンがある。
【0026】
脂肪族1級アミンとしては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、ペンチルアミン、イソアミルアミン、tert−ペンチルアミン、シクロペンチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ヘプチルアミン、シクロヘプタンアミン、オクチルアミン、2−オクタンアミン、2,4,4−トリメチルペンタン−2−アミン、シクロオクチルアミン等が挙げられる。
【0027】
芳香族1級アミンとしては、例えば、アニリン、2−アミノフェノール、3−アミノフェノール、4−アミノフェノール等が挙げられる。
【0028】
脂肪族2級アミンとしては、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、エチルメチルアミン、アジリジン、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、アゼパン、アゾカン、メチルアジリジン、ジメチルアジリジン、メチルアゼチジン、ジメチルアゼチジン、トリメチルアゼチジン、メチルピロリジン、ジメチルピロリジン、トリメチルピロリジン、テトラメチルピロリジン、メチルピペリジン、ジメチルピペリジン、トリメチルピペリジン、テトラメチルピペリジン、ペンタメチルピペリジン等が挙げられ、これらの中でも脂環式アミンが好ましい。
【0029】
芳香族2級アミンとしては、例えば、メチルアニリン、ジフェニルアミン、N−フェニル−1−ナフチルアミン等が挙げられる。
【0030】
更に、生成するNHRは、アミド結合を形成可能なNH基を1つだけ有するモノアミン等の塩基だけでなく、ジアミン、トリアミン、テトラアミン等のアミド結合を形成可能なNH基を2つ以上有する塩基であってもよいが、本発明では、付加重合した硬化物の物性や硬化後の接着強度の観点からジアミン以上であることが好ましい。
【0031】
生成するNHRがNH基を2つ以上有する塩基の場合、上記一般式(I)のR及び/又はRの1つ以上の末端に、アミド結合を形成可能なNH基を有する塩基を光照射と加熱とにより発生するような光潜在性部位が更に結合している構造が挙げられる。上記光潜在性部位としては、上記一般式(I)のR及び/又はRの1つ以上の末端に、上記一般式(I)のR及び/又はRを除いた残基が更に結合している構造が挙げられる。
【0032】
ジアミン以上のアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン等の直鎖状脂肪族アルキレンジアミン;1−ブチル−1,2−エタンジアミン、1,1−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、1−エチル−1,4−ブタンジアミン、1,2−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、1,3−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、1,4−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、2,3−ジメチル−1,4−ブタンジアミン等の分岐状脂肪族アルキレンジアミン;シクロヘキサンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジメチルアミン、トリシクロデカンジメチルアミン、メンセンジアミン等の脂環式ジアミン;p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン等の芳香族ジアミン;ベンゼントリアミン、メラミン、2,4,6−トリアミノピリミジン等のトリアミン;2,4,5,6−テトラアミノピリミジン等のテトラアミン等を挙げられる。
【0033】
更に好ましくは、上記の塩基発生剤から発生する塩基は、透湿バリア性の観点から第1級ジアミンであり、上記第1級ジアミンは、炭素数1〜6の脂肪族アルキレンジアミン、又は、芳香環が2個以下であって、且つ、側鎖の炭素数が1個以下である芳香族ジアミンである。
【0034】
光照射後の加熱により塩基を発生する塩基発生剤としては、特に、下記一般式(II)で表される塩基発生剤が好ましい。
【化3】

【0035】
ここで、R11は、炭素数1〜6のアルキレン基、又は、−C−R12−C−である。R12は、フェニレン基又はナフチレン基であり、フェニレン基であることが好ましい。また、R〜R10は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は有機基である。
【0036】
上記一般式(II)で表される塩基発生剤の合成方法を、R11がn−ヘキシレン基である下記一般式(III)で表される塩基発生剤を例に挙げて説明する。なお、上記一般式(II)で表される塩基発生剤の合成方法はこれに限定されるものではなく、複数の従来公知の方法にて合成することができる。
【化4】

【0037】
上記一般式(III)で表される塩基発生剤は、例えば、以下の方法にて合成することができる。まず、エトキシカルボニルメチル(トリフェニル)ホスホニウムブロミド及び2−ヒドロキシ−4−メトキシベンズアルデヒドをメタノールに溶解し、これに炭酸カリウムのメタノール溶液をゆっくりと滴下し、撹拌する。TLCにより反応の終了を確認した後、ろ過を行い、炭酸カリウムを除き、減圧濃縮する。濃縮後、水酸化ナトリウム水溶液を加え、撹拌する。反応終了後、ろ過によりトリフェニルホスフィンオキシドを除いた後、濃塩酸を滴下し、反応液を酸性にする。沈殿物をろ過により集め、少量のクロロホルムで洗浄することにより、2−ヒドロキシ−4−メトキシケイ皮酸を得る。次いで、窒素雰囲気下、上記にて得られた2−ヒドロキシ−4−メトキシケイ皮酸を脱水テトラヒドロフランに溶解し、氷浴下で1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩を加える。その後、1,6−ジアミノヘキサンを加え、終夜で撹拌する。反応終了後、反応溶液を濃縮し、水に溶解する。クロロホルムで抽出し、炭酸水素水溶液、塩酸、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥を行った後、濃縮することにより、上記一般式(III)で表される塩基発生剤を得ることができる。なお、合成された上記一般式(III)で表される塩基発生剤は、塩基として1,6−ジアミノヘキサンを発生する。
【0038】
このように、所望の塩基を発生する塩基発生剤は、容易に合成することができる。例えば、塩基として1,4−ジアミノブタンを発生させたい場合には、R11がn−ブチレン基である上記一般式(II)で表される塩基発生剤を合成すればよく、その際には、上記合成方法において1,6−ジアミノヘキサンの代わりに1,4−ジアミノブタンを加えればよい。
【0039】
上記一般式(I)のR〜Rや上記一般式(II)のR〜R10は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン又は1価の有機基である。ここで、上記一般式(I)のR〜Rの2つ以上が結合して環状構造を形成していてもよく、ヘテロ原子の結合を含んでいてもよい。また、上記一般式(II)のR〜Rの2つ以上や、R〜R10の2つ以上が結合して環状構造を形成していてもよく、ヘテロ原子の結合を含んでいてもよい。ハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素等が挙げられる。1価の有機基としては、特に限定されるものではなく、飽和又は不飽和アルキル基、飽和又は不飽和シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、飽和又は不飽和ハロゲン化アルキル基等が挙げられる。これらの有機基は、当該有機基中にヘテロ原子等の炭化水素基以外の結合や置換基を含んでいてもよく、また、直鎖状であっても分岐状であってもよい。
【0040】
上記一般式(I)のR〜Rや上記一般式(II)のR〜R10の有機基中の炭化水素基以外の結合としては、特に限定されるものではなく、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、チオカルボニル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、カーボネート結合、スルホニル結合等が挙げられる。
【0041】
上記一般式(I)のR〜Rや上記一般式(II)のR〜R10の有機基中の炭化水素基以外の置換基としては、特に限定されるものではなく、例えば、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、シアノ基、シリル基、シラノール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、ニトロ基、カルボキシル基、アシル基、アシルオキシ基、スルフィノ基、スルホ基、飽和又は不飽和アルキルエーテル基、飽和又は不飽和アルキルチオエーテル基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アミノ基(−NH,−NHR,−NRR’:ここで、R及びR’は、それぞれ独立に炭化水素基)等が挙げられる。これらの基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよい。なお、これらの中でも、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、シアノ基、シリル基、シラノール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、ニトロ基、アシル基、アシルオキシ基、飽和又は不飽和アルキルエーテル基、飽和又は不飽和アルキルチオエーテル基、アリールエーテル基、及びアリールチオエーテル基が好ましい。
【0042】
また、上記一般式(I)のR〜Rの2つ以上や、上記一般式(II)のR〜Rの2つ以上、上記一般式(II)のR〜R10の2つ以上が結合して環状構造を形成して環状構造になっていてもよい。環状構造は、飽和又は不飽和の脂環式炭化水素、複素環、及び縮合環、並びに当該脂環式炭化水素、複素環、及び縮合環からなる群より選択される2種以上が組み合されてなる構造であってもよい。例えば、R〜Rは、それらの2つ以上が結合して、R〜Rが結合しているベンゼン環の原子を共有してナフタレン、アントラセン、フェナントレン、インデン等の縮合環を形成していてもよい。
【0043】
また、上記一般式(I)のR〜Rや上記一般式(II)のR〜R10に置換基を1つ以上導入することにより、吸収する光の波長を調整することが可能であり、置換基を導入することで所望の波長を吸収させるようにすることもできる。例えば、芳香族環の共役鎖を伸ばすような置換基を導入することにより、吸収波長を長波長にシフトすることができる。
【0044】
所望の波長に吸収波長をシフトさせるために、どのような置換基を導入したらよいかという指針としては、Interpretation of the Ultraviolet Spectra of Natural Products(A.I.Scott 1964)や、有機化合物のスペクトルによる同定法第5版(R.M.Silverstein 1993)に記載の表が参考として挙げられる。
【0045】
上記一般式(I)のR〜Rや上記一般式(II)のR〜R10は、具体的には、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数4〜13のシクロアルキル基、炭素数4〜13のシクロアルケニル基、炭素数7〜16のアリールオキシアルキル基(−ROAr)、炭素数7〜20のアラルキル基、シアノ基をもつ炭素数2〜11のアルキル基、水酸基をもつ炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数2〜11のアミド基、炭素数1〜10のアルキルチオ基(−SR)、炭素数1〜10のアシル基、炭素数2〜11のエステル基、炭素数6〜20のアリール基、電子供与性基及び/又は電子吸引性基が置換した炭素数6〜20のアリール基、電子供与性基及び/又は電子吸引性基が置換したベンジル基、シアノ基、及びメチルチオ基(−SCH)等が好ましい。なお、上記のアルキル部分は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよい。また、R〜Rは、それらの2つ以上が結合して、R〜Rが結合しているベンゼン環の原子を共有してナフタレン、アントラセン、フェナントレン、インデン等の縮合環を形成している場合も、吸収波長が長波長化する点から好ましい。
【0046】
上記一般式(I)、(II)で表される構造は、トランス体及び/又はシス体であり、トランス体のみを用いてもよいし、トランス体とシス体の混合物を用いてもよい。
【0047】
一般に、光塩基発生剤は、光照射によりその化学構造が分解し、塩基(アミン)を発生するが、本発明の粘接着剤組成物に含まれる塩基発生剤は、光照射後の加熱により塩基を発生する。例えば、上記一般式(I)、(II)で表される塩基発生剤では、光が照射されることにより、シス−トランス変異し、加熱することによりフェノール性水酸基の部分が消失環化し、塩基が発生する。すなわち、光照射した後、加熱しなければ、塩基を発生しないため、後述する分子中にエポキシ基を少なくとも1個以上有する硬化性化合物と共存させても硬化反応が進行しない。したがって、硬化性化合物の貯蔵安定性が低下することがないので、例えば、光酸発生剤を使用する場合のように、硬化遅延剤により硬化の進行を調整する必要がない。硬化遅延剤には、親水性のある材料を使用するため、硬化物に親水性のある材料が残り、透湿バリア性が低下する原因となるが、光照射した後、加熱しなければ、塩基を発生しない塩基発生剤を使用した場合には、そのようなおそれが生じない。また、ラジカルによる硬化やカチオンによる硬化では、光照射後すぐに硬化が進行するため、可使時間が短く作業性に劣るが、本発明の粘接着剤組成物では、光照射後の加熱により塩基を発生する塩基発生剤を含有するので、光照射後の加熱を調整することで、可使時間の調整が可能となり、作業性が良好となる。この点が、本発明の組成物を粘接着剤として用いることの利点となっている。
【0048】
本発明の樹脂組成物における光塩基発生剤の含有量は、後述する硬化性化合物100質量部に対して10〜200質量部であることが好ましく、10〜150質量部であることがより好ましい。光塩基発生剤の含有量が10質量部未満であると、発生する塩基が当量よりも少なくなり、硬化が十分に進行しない場合があるため、好ましくない。200質量部を超えると、光照射により塩基が過剰に発生し一部の塩基が硬化性化合物の官能基と反応しなかったり、更に十分な接着強度が得られなかったりする場合があるため好ましくない。
【0049】
<硬化性化合物>
本発明の粘接着剤組成物は、分子中にエポキシ基を少なくとも1個以上有する硬化性化合物を含有する。分子内に少なくとも1個のエポキシ基を有する硬化性化合物によれば、接着強度の強い硬化物を得ることができる。
【0050】
分子内にエポキシ基を少なくとも1個以上有する硬化性化合物としては、特に限定されるものではなく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、多官能性エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂等のアルコール型エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、エポキシ基含有アクリル樹脂等が挙げられる。これらは単独又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、エポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂が、分子量の異なるグレードのものを広く入手可能で、粘接着性や反応性などを任意に設定できるという点においてより好ましい。また、トリアジン核を骨格に有するエポキシ樹脂は、該エポキシ樹脂を含有する粘接着剤組成物からなる塗工液を塗布後、乾燥(100℃,10分間)した際に均一膜を形成し、室温になった際に離型PETからの剥離を容易にするという点において好ましい。
【0051】
上記硬化性化合物は、短時間での硬化を実現するために、反応性が高く、且つ、エポキシ当量が低いことが好ましい。例えば、エポキシ当量が100〜500g/eq.範囲内であることが好ましい。ここで、エポキシ当量とは、JIS K7236に準拠した方法により測定した1グラム当量のエポキシ基を含む樹脂のグラム数である。
【0052】
上記硬化性化合物の市販品としては、例えば、DIC株式会社製の「EPICLON EXA−835LV」、「EPICLON 850S」、「EPICLON N740」、「EPICLON EXA−830CRP」、「EPICLON EXA−830LVP」、「EPICLON HP−820」、三菱化学株式会社製の「jER 828」、「jER 806」、「jER 1001」、「jER 801N」、「jER 807」、「jER 152」、「jER 604」、「jER 630」、「jER 871」、「jER YX8000」、「jER YX8034」、「jER YX4000」、日本触媒株式会社製の「アクリセット BPA−328」、日産化学株式会社製の「TEPIC SP」、株式会社ADEKA製のEP4100シリーズ、EP4000シリーズ、EPUシリーズ、ダイセル化学工業株式会社製のセロキサイドシリーズ、エポリードシリーズ、EHPEシリーズ、東都化成株式会社製のYDシリーズ、YDFシリーズ、YDCNシリーズ、YDBシリーズ、ナガセケムテックス株式会社製のデナコールシリーズ、共栄社化学株式会社製のエポライトシリーズ等が挙げられる。
【0053】
上記硬化性化合物の質量平均分子量は、例えば、100〜1000の範囲内のものが好適である。上記硬化性化合物の質量平均分子量が100未満であると、硬化物の膜物性が低下する場合があり、1000を超えると、高粘度であるか、又は、固形であるため、取り扱い難くなる場合がある。ここで、質量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した際のポリスチレン換算の値である。
【0054】
<熱可塑性樹脂>
本発明の粘接着剤組成物に含まれる熱可塑性樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が−10〜30℃であり、0〜30℃であることが好ましい。熱可塑性樹脂の種類としては、特に限定されるものではなく、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂、天然ゴム系、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリビニルエーテル、ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、等の種々の汎用粘着剤、が挙げられる。これらは単独又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明の粘接着剤組成物では、アクリル樹脂及びポリエステル樹脂が、粘着材料の分野で幅広く用いられている材料であり、基材への粘着力を適当に制御することが可能であるため好ましい。
【0055】
アクリル樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、(メタ)アクリル酸及び/又はその種々の誘導体の重合体、共重合体が挙げられる。(メタ)アクリル酸誘導体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシルエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシルプロピル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシルアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の芳香族基を含有する(メタ)アクリル酸エステル、ジメチル(メタ)アクリル酸アミド等の(メタ)アクリル酸アミド、イミドアクリレートTO−1492(東亞合成工業製)等のイミド基を含有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基を含有する(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。また、上記共重合体は、上記(メタ)アクリル酸及び/又はその種々の誘導体と、アクリロニトリル、スチレン、ブタジエン、アリル誘導体等との共重合体も含まれる。これらの中でも、接着性の観点からエポキシ基を有するものが好ましい。該エポキシ基の導入は、エポキシ基を含有する(メタ)アクリル化合物を用いることにより行うことができる。なお、エポキシ基を有する重合体と、有しない重合体との混合物であってもよい。
【0056】
ポリエステル樹脂としては、例えば、多価カルボン酸成分と多価アルコール成分との反応生成物からなるポリエステル樹脂が挙げられる。上記多価カルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、パラフェニレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;トリメリット酸等の3価以上の芳香族多価カルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の5員環もしくは6員環を含む脂環式多価カルボン酸;コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、ドデカンジオン酸等の脂肪族多価カルボン酸等が挙げられる。これらは単独又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記多価アルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族ジオール;トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3価以上の多価アルコール;1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のエーテル構造を有する多価アルコール;ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリマーポリオール、ロジンオール等が挙げられる。これらは単独又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
上記熱可塑性樹脂は、質量平均分子量が10,000〜1,000,000の範囲内であることが好ましく、15,000〜850,000であることがより好ましい。上記熱可塑性樹脂の質量平均分子量が1,000,000を超えると、上記硬化性化合物との相溶性が悪くなる場合がある。ここで、質量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した際のポリスチレン換算の値である。
【0058】
本発明の粘接着剤組成物では、上記硬化性化合物100質量部に対して、上記熱可塑性樹脂を10〜300質量部含有し、50〜200質量部含有することが好ましい。上記範囲であれば、溶剤乾燥後、剥離フィルムから容易に剥離させることができる。なお、10質量部未満であると、剥離フィルムに対して糊残りが発生するため、好ましくない。また、300質量部を超えると、硬化した際の接着強度が不十分なものとなる。
【0059】
従来の熱可塑性樹脂を含まないエポキシ系粘着剤は、一般に液状であるため、塗布時に厚みにムラが生じたり、接着剤のはみ出しにより接合端部の美観が低下したり、硬化が完了するため治具で固定したりする必要があり、接着作業が煩雑とならざるを得なかった。しかしながら、本発明の粘接着剤組成物によれば、上記ガラス転移温度の熱可塑性樹脂を上記特定量含有するので、含有溶剤を乾燥した後の形態が液状とはならず、従来のエポキシ系粘着剤のような接着において煩雑な作業が発生することがなく、また、室温で剥離フィルムから容易に剥離させることが可能な粘接着剤層を有する粘着シートを形成することができる。
【0060】
<その他>
本発明の樹脂組成物は、その他、本発明の目的を損なわない範囲で必要に応じて、例えば、カップリング剤等の密着向上剤、レベリング剤等の各種添加剤を含有してもよい。例えば、界面接着性を向上させるために、シランカップリング剤を併用してもよい。アミノ基、エポキシ基、メルカプト基、フェノール性水酸基、カルボキシル基等のエポキシ基を反応しうる官能基を有するシランカップリング剤を併用することで、硬化物の強度や被着体への接着性を更に向上させることができる。また、接着強度を高めるために粘着付与樹脂を併用してもよく、せん断粘着強度を向上させるためにフィラーを併用してもよく、感光性を向上させるために光増感剤を併用してもよい。
【0061】
なお、エポキシ基と反応しうる官能基を有するシランカップリング剤を用いた場合には、硬化物の強度や被着体への接着性を更に高めることができる。上記エポキシ基と反応し得る官能基としては、例えば、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、メルカプト基、エポキシ基、カルボキシル基等が挙げられる。具体的には、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シラン類や、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等のメルカプト基含有シラン類や、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ結合含有シラン類や、β−カルボキシエチルトリエトキシシラン、β−カルボキシエチルフェニルビス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−β−(N−カルボキシメチルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のカルボキシシラン類等が挙げられる。これらは単独又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
上記シランカップリング剤は、上記硬化性化合物と熱可塑性樹脂との合計100重量部に対して、0.1〜12重量部含有することが好ましく、0.5〜10重量部含有することがより好ましい。
【0063】
粘着付与樹脂としては、例えば、ロジン系樹脂、変成ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、芳香族変成テルペン系樹脂、C5系又はC9系の石油系樹脂、クマロン樹脂等が挙げられる。特に、被着体がポリオレフィンの場合には、ロジン系樹脂や石油系樹脂を併用することにより、高い接着強度を発現することができる。
【0064】
フィラーとしては、例えば、シリカ、クレー、ガラスバルーン、アルミナバルーン、セラミックバルーン等の無機中空体や、ナイロンビーズ、アクリルビーズ、シリコンビーズ等の有機球状体や、塩化ビニリデンバルーン、アクリルバルーン等の有機中空体や、ガラス、ポリエステル、レーヨン、ナイロン、セルロース、アセテート等からなる単繊維等が挙げられる。
【0065】
光増感剤としては、例えば、アントラセン、ペリレン、コロネン、テトラセン、ベンズアントラセン、フェノチアジン、フラビン、アクリジン、ケトクマリン、チオキサントン誘導体、ベンゾフェノン、アセトフェノン、2−クロロチオキサンソン、2,4−ジメチルチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン等が挙げられる。
【0066】
また、本発明の粘接着剤組成物は、溶剤を含有していてもよい。溶剤を含有すると、塗工性を高めることができる。溶剤は、特に限定されるものではなく、例えば、芳香族炭化水素化合物、飽和又は不飽和炭化水素化合物、エーテル類、ケトン類、エステル類等が挙げられる。これらは単独又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
更に、本発明の粘接着剤組成物は、本発明の特性を損なわない範囲において顔料、染料等の着色剤、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム等の無機充填剤、銀等の導電性粒子、難燃剤、ホウ酸エステルやリン酸エステル、無機酸、有機酸等の保存性向上剤、アクリルゴムやシリコンゴム等の有機充填剤、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂やビスフェノールF型フェノキシ樹脂、ビスフェノールA・ビスフェノールF共重合型フェノキシ樹脂等の汎用フェノキシ樹脂、ポリメタクリレート樹脂類、ポリアクリレート樹脂類、ポリビニルブチラール樹脂、SBS樹脂及びそのエポキシ樹脂変性体等のポリマーや熱可塑性エラストマー、可塑剤、有機溶剤、酸化防止剤、消泡剤、カップリング剤、レベリング剤、レオロジーコントロール剤等の添加剤を適量配合してもよい。これらの添加により、樹脂強度、接着強さ、難燃性、熱伝導性、保存安定性、作業性等がより優れた組成物及びその硬化物を得ることができる。
【0068】
(光照射)
本発明の粘接着剤組成物は、光照射の後、加熱することにより硬化する。光照射に用いられる光としては、特に限定されるものではなく、例えば、マイクロ波、赤外線、可視光線、紫外線、X線、γ線等が挙げられる。これらの中でも、特に取り扱いが簡便であり、比較的高いエネルギーを得ることが可能な紫外線がより好適である。
【0069】
照射光としては、200〜450nmの波長域の光が好ましく、300〜450nmの波長域の光がより好ましい。光源は、特に限定されるものではなく、例えば、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、炭素アーク灯、水銀蒸気アーク、蛍光ランプ、アルゴングローランプ、ハロゲンランプ、白熱ランプ、低圧水銀灯、フラッシュUVランプ、ディープUVランプ、キセノンランプ、タングステンフィラメントランプ、太陽光等が挙げられる。これらの光源を用い、積算光量が0.5〜6J/cm、好ましくは1〜6J/cmの範囲となるように光を照射することにより、上記粘接着剤組成物を硬化させることができる。積算光量が0.5J/cm未満であると、硬化が不十分となるおそれがあり、6J/cm未満を超えると、作業時間が長くなるおそれがあるため、好ましくない。
【0070】
[粘接着シート]
本発明の粘接着シートは、上記粘接着剤組成物からなる粘接着剤層を少なくとも有することを特徴とする。すなわち、本発明の粘接着シートは、例えば、基材/粘接着剤層/剥離フィルムのように基材上に粘接着剤層が形成されている構成であってもよいし、剥離フィルム/粘接着剤層/剥離フィルムのように基材レス型の両面粘接着シートの構成であってもよい。上記粘接着剤組成物は、光照射前には粘着性を有するため、シート状に成形するに際して、離型処理された基材や剥離フィルム等の支持体に積層し、更に他面を同様に離型処理された保護材となる剥離フィルム等で積層被覆されることが好ましい。以下、基材、剥離フィルム、及び粘接着シートについて順に説明する。なお、粘接着とは、粘着又は接着のいずれも含む意味であり、粘着とは剥離を想定した一時的な接合、接着とは剥離を想定しない永久接合を通常意味し、本発明はいずれも含む概念である。
【0071】
<基材>
本発明の粘接着シートでは、基材は、特に限定されるものではなく、織布、編布、不織布、フィルム等の適宜の材料を選択することができるが、光照射可能であるという観点から透明であることが好ましい。ここで、透明とは、必ずしも無色透明である必要はなく、着色された透明であってもよく、可視領域(380〜780nm)における光透過率が80%以上であることをいう。なお、光透過率は、市販の分光光度計、例えば、島津製作所社製のUV−3100PCを用いて測定(JIS−Z8701準拠)することができる。基材として光を透過しない材料を選択した場合には、基材上に形成した粘接着剤層に、該粘接着剤層側から光を照射し、別の基材を上から張り合わせた後、加熱することで接着させることが可能となる。なお、塩基発生剤は酸を発生しないため、アルミや銅といった金属箔基材の使用も可能である。
【0072】
基材は、必要な強度、柔軟性、好ましくは上記のような光透過性を有していれば、特に限定されるものではなく、適宜選択することができる。一般的には、合成樹脂フィルムが用いられる。合成樹脂フィルムの材料としては、ポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリイミド系樹脂、フェノール系樹脂、ポリウレタン系樹脂等の公知の樹脂が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、単層であってもよいし、2層以上の積層体であってもよい。機械的強度の観点から、1軸延伸や2軸延伸した延伸フィルムが好ましい。なお、本発明では、上記合成樹脂の中でも、透明性、耐熱性、寸法安定性、剛性、柔軟性、積層適性、価格等の観点から、ポリエステル系樹脂やポリカーボネート系樹脂を用いることが特に好ましい。
【0073】
ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリテトラメチレンテレフタレート等が挙げられるが、この中でも、取り扱い易さ、低価格等の観点から、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0074】
基材の厚みは、特に限定されず、用途に応じて、適宜選択することができる。通常、12〜250μm程度であるが、好ましくは25〜250μmである。上記範囲であれば、機械的強度が十分であり、反り、弛み、破断等を生じ難く、作業性が良好であり、また、連続帯状で供給して加工することも可能である。なお、上記の厚さを超えると、過剰性能でコスト高になる場合がある。
【0075】
基材の形成方法は、特に限定されず、例えば、溶液流延法、溶融押出法、カレンダー法等の従来公知の製膜方法を用いることができる。また、上記方法によりあらかじめフィルム状に製膜された市販の基材を使用してもよい。
【0076】
なお、基材には濡れ性を向上させるために、その片面又は両面にコロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理、フレーム処理、プライマー処理、予熱処理、除塵埃処理、蒸着処理、アルカリ処理等の公知の易接着処理を施してもよい。
【0077】
<剥離フィルム>
本発明の粘接着シートでは、上記粘接着剤組成物からなる粘接着剤層の一方又は両方の面に剥離フィルムを備えていてもよい。本発明の粘接着シートでは、剥離フィルムは、剥離性を有する剥離部材からなり、粘接着剤層の表面を保護する機能を有し、使用に際して剥離除去されるものである。剥離部材は、必要な強度や柔軟性を有するものであれば、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン等の樹脂からなるフィルム又はそれらの発泡フィルムに、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル基含有カルバメート等の剥離剤で剥離処理したものを挙げることができる。剥離フィルムの厚みは、特に限定されないが、好ましくは12〜188μmである。
【0078】
[粘接着シートの製造方法]
本発明の粘接着剤組成物を使用した粘接着シートの製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いることができる。ここでは、上記剥離フィルム上に、上記粘接着剤組成物からなる粘接着剤層が形成されている構成の粘接着シートである場合について説明する。まず、上記光塩基発生剤と、上記硬化性化合物と、上記熱可塑性樹脂と、必要に応じて各種添加剤と、有機溶剤と、を混合撹拌した後、脱泡させて膜形成用塗工液を調製する。次いで、上記剥離フィルムの剥離処理面上に、上記塗工液をアプリケーター等により全面塗工し、粘接着剤層を形成する。そして、乾燥させ、上記粘接着剤層面上に、更に上記剥離フィルムの剥離処理面をラミネートすることにより、本発明の粘接着シートを形成することができる。
【0079】
粘接着剤組成物が固形である場合や、流動性があっても粘度が塗布に適さない程度に高い場合には、適宜、溶剤で希釈した上で、塗工後に乾燥することにより溶剤を除去するとよい。粘接着剤組成物が塗布できる程度に流動性のある液体の場合には、特に溶剤は不要である。
【0080】
上記剥離フィルム上に、上記粘接着剤層形成用塗工液を塗工する方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いることができる。印刷による形成方法としては、例えば、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法等が挙げられる。コーティングによる方法としては、例えば、ロールコート、リバースコート、コンマコート、ナイフコート、ダイコート、グラビアコート等が挙げられる。
【0081】
粘接着剤層の厚みは、特に限定されるものではなく、適宜選択することができる。好ましくは0.1〜500μm、より好ましくは1〜250μmである。上記範囲であれば、粘着物性が安定する。なお、厚みが1μm未満であると、接合部材の表面凹凸によって粘接着シートの粘接着性に影響を与える場合があり、500μmを超えると、硬化が十分進行しない、又は、硬化時間が長くなる場合がある。
【0082】
本発明の粘接着シートの厚みは、特に限定されるものではないが、1〜500μmであることが好ましく、10〜300μmであることがより好ましい。上記範囲であれば、適度な柔軟性を有するので、取り扱いが容易となる。
【0083】
本発明の粘接着シートは、粘接着剤組成物が塩基硬化型(アニオン硬化型)であり、酸の発生がない。そのため、被着対象が金属等であっても腐食のおそれがなく、被着対象を広範囲に選定することができる。
【0084】
また、本発明の粘接着シートは、光照射前は150℃程度まで加熱しても硬化しない。そのため、シート状態での長期保存が可能であり、未使用製品としての保存期間を長くすることができる。
【0085】
(硬化)
上記の粘接着シートを被着対象に貼り付けた後、その後の硬化のために加熱を行なう。加熱温度としては、30℃以上であることが好ましく、粘接着用途を考慮すると60〜100℃であることがより好ましい。また、加熱時間は、例えば、60〜100℃であれば、1時間程度加熱することにより硬化する。
【0086】
本発明の粘接着シートは、光照射前は加熱をするまでは硬化しないので、可使時間の調整が可能で作業性に優れる。そして、光照射後は100℃以下の低温で速やかに硬化が進行する。このため、耐熱性に乏しい箇所への粘接着が可能である。また、事前に光照射しておけば加熱のみで硬化するので、光透過性のない基材も適用可能であり、被着対象との関係でも光透過性を考慮する必要がないという、従来の粘接着シートでは達成できなかった優れた効果を奏するものである。
【実施例】
【0087】
以下、実施例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に何ら制限を受けるものではない。
【0088】
<合成例1:塩基発生剤A>
100mLフラスコにメタノール15mLを入れ、そこに炭酸カリウム2.00gを加えた。次いで、50mLフラスコにメタノール10mLを入れ、そこにエトキシカルボニルメチル(トリフェニル)ホスホニウムブロミド(東京化成工業(株)製)2.67g(6.2mmol)及び2−ヒドロキシ−4−メトキシベンズアルデヒド(東京化成工業(株)製)945mg(6.2mmol)を添加し、溶解させた後、よく撹拌した上記炭酸カリウムのメタノール溶液をゆっくりと滴下した。そして、3時間撹拌した後、TLCにより反応の終了を確認した。次いで、ろ過により炭酸カリウムを除き、減圧濃縮した。濃縮後、1Nの水酸化ナトリウム水溶液を50mL加えて、1時間撹拌した。反応終了後、ろ過によりトリフェニルホスフィンオキシドを除き、濃塩酸を滴下して反応液を酸性にした。沈殿物をろ過により集め、少量のクロロホルムで洗浄することにより2−ヒドロキシ−4−メトキシケイ皮酸を1.00g得た。続いて、窒素雰囲気下、100mL三口フラスコ中で、2−ヒドロキシ−4−メトキシケイ皮酸 619mg(3.19mmol)を脱水テトラヒドロフラン10mLに溶解し、氷浴下で1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(東京化成工業(株)製)0.73g(3.83mmol,1.2eq)を加えた。30分後に、ヘキサンジアミン(東京化成工業(株)製)176mg(1.52mmol、0.95eq)を加えた後、終夜で撹拌した。反応終了後、反応溶液を濃縮し、水に溶解した。クロロホルムで抽出した後、炭酸水素水溶液、1N塩酸、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、濃縮することにより、塩基発生剤Aを264mg得た。
【0089】
<実施例1>
硬化性化合物(商品名「エピクロン EXA−835LV」,ビスフェノールF型エポキシ樹脂,固形分:100%,エポキシ当量:160〜170g/eq.,質量平均分子量:320〜340,DIC社製)11質量部と、硬化性化合物(商品名「アクリセット BPA−328」,アクリルゴム分散ビスフェノールA型エポキシ樹脂,固形分:100%,エポキシ当量:220〜240g/eq.,質量平均分子量:360〜380,アクリルゴム:20phr含有,日本触媒社製)15質量部と、硬化性化合物(商品名「TEPIC SP」,トリアジン核を骨格にもつ3価のエポキシ化合物,固形分:100%,エポキシ当量:105g/eq.,質量平均分子量:300,約2μ粉体,日産化学社製)37質量部と、熱可塑性樹脂(商品名「テイサンレジンSG−P3」,エポキシ基含有アクリロニトリル系樹脂,固形分:15%,エポキシ当量:4760g/eq.,質量平均分子量:85万,Tg:12℃,ナガセケムテックス社製)37質量部と、光塩基発生剤A(発生塩基:ヘキサンジアミン)35質量部とを、撹拌機(製品名「T.K.ホモディスパー2.5型」,PRIMIX社製)を用いて混合撹拌した後、脱泡させて膜形成用塗工液を調製した。
【0090】
そして、剥離フィルム(商品名:SP−PET−03,片面にシリコーン系剥離剤による剥離処理が施されてなるポリエステルフィルム,膜厚:38μm,東セロ社製)の剥離処理面上に、上記膜形成用塗工液を塗工後の厚みが100μmとなるように、アプリケーターを用いて塗工した後、乾燥オーブンにて100℃で20分間乾燥させ、膜を形成した。次いで、得られた膜面に、剥離フィルム(商品名:SP−PET−03,片面にシリコーン系剥離剤による剥離処理が施されてなるポリエステルフィルム,膜厚:38μm,東セロ社製)の剥離処理面を、常温にて2kgのローラーを用いて貼付し、実施例1の粘接着剤組成物からなる粘接着剤層を有する粘接着シートを得た。
【0091】
<実施例2>
硬化性化合物(商品名「エピクロン EXA−835LV」,ビスフェノールF型エポキシ樹脂,固形分:100%,エポキシ当量:160〜170g/eq.,質量平均分子量:320〜340,DIC社製)20質量部と、熱可塑性樹脂(商品名「バイロン300」,高分子ポリエステル樹脂,固形分:100%,質量平均分子量:23000,Tg:7℃,東洋紡績社製)24質量部と、光塩基発生剤A(発生塩基:ヘキサンジアミン)12.4質量部と、メチルエチルケトン56質量部とを、撹拌機(製品名「T.K.ホモディスパー2.5型」,PRIMIX社製)を用いて混合撹拌した後、脱泡させて膜形成用塗工液を調製した以外は、実施例1と同様の方法にて、実施例2の粘接着剤組成物からなる粘接着剤層を有する粘接着シートを得た。
【0092】
<実施例3>
硬化性化合物(商品名「エピクロン EXA−835LV」,ビスフェノールF型エポキシ樹脂,固形分:100%,エポキシ当量:160〜170g/eq.,質量平均分子量:320〜340,DIC社製)20質量部と、熱可塑性樹脂(商品名「テイサンレジンSG−P3」,エポキシ基含有アクリロニトリル系樹脂,固形分:15%,エポキシ当量:4750g/eq.,質量平均分子量:85万,Tg:12℃,ナガセケムテックス社製)80質量部と、光塩基発生剤A(発生塩基:ヘキサンジアミン)12.4質量部とを、撹拌機(製品名「T.K.ホモディスパー2.5型」,PRIMIX社製)を用いて混合撹拌した後、脱泡させて膜形成用塗工液を調製した以外は、実施例1と同様の方法にて、実施例3の粘接着剤組成物からなる粘接着剤層を有する粘接着シートを得た。
【0093】
<実施例4>
硬化性化合物(商品名「エピクロン EXA−850S」,ビスフェノールA型エポキシ樹脂,固形分:100%,エポキシ当量:183〜193g/eq.,質量平均分子量:368〜388,DIC社製)20質量部と、熱可塑性樹脂(商品名「バイロン300」,高分子ポリエステル樹脂,固形分:100%,質量平均分子量:23000,Tg:7℃,東洋紡績社製)24質量部と、光塩基発生剤A(発生塩基:ヘキサンジアミン)10.7質量部と、メチルエチルケトン56質量部とを、撹拌機(製品名「T.K.ホモディスパー2.5型」,PRIMIX社製)を用いて混合撹拌した後、脱泡させて膜形成用塗工液を調製した以外は、実施例1と同様の方法にて、実施例4の粘接着剤組成物からなる粘接着剤層を有する粘接着シートを得た。
【0094】
<比較例1>
硬化性化合物(商品名「エピクロン EXA−835LV」,ビスフェノールF型エポキシ樹脂,固形分:100%,エポキシ当量:160〜170g/eq.,質量平均分子量:320〜340,DIC社製)100質量部と、光塩基発生剤A(発生塩基:ヘキサンジアミン)62質量部とを、撹拌機(製品名「T.K.ホモディスパー2.5型」,PRIMIX社製)を用いて混合撹拌した後、脱泡させて膜形成用塗工液を調製した以外は、実施例1と同様の方法にて、比較例1の粘接着剤組成物からなる粘接着剤層を有する粘接着シートを得た。
【0095】
<比較例2>
硬化性化合物(商品名「エピクロン EXA−835LV」,ビスフェノールF型エポキシ樹脂,固形分:100%,エポキシ当量:160〜170g/eq.,質量平均分子量:320〜340,DIC社製)20質量部と、熱可塑性樹脂(商品名「バイロン200」,高分子ポリエステル樹脂,固形分:100%,質量平均分子量:17000,Tg:67℃,東洋紡績社製)24質量部と、光塩基発生剤A(発生塩基:ヘキサンジアミン)12.4質量部と、メチルエチルケトン56質量部とを、撹拌機(製品名「T.K.ホモディスパー2.5型」,PRIMIX社製)を用いて混合撹拌した後、脱泡させて膜形成用塗工液を調製した以外は、実施例1と同様の方法にて、比較例2の粘接着剤組成物からなる粘接着剤層を有する粘接着シートを得た。
【0096】
<比較例3>
硬化性化合物(商品名「エピクロン EXA−835LV」,ビスフェノールF型エポキシ樹脂,固形分:100%,エポキシ当量:160〜170g/eq.,質量平均分子量:320〜340,DIC社製)60質量部と、熱可塑性樹脂(商品名「バイロン300」,高分子ポリエステル樹脂,固形分:100%,質量平均分子量:23000,Tg:7℃,東洋紡績社製)10質量部と、光塩基発生剤A(発生塩基:ヘキサンジアミン)37.2質量部と、メチルエチルケトン35質量部とを、撹拌機(製品名「T.K.ホモディスパー2.5型」,PRIMIX社製)を用いて混合撹拌した後、脱泡させて膜形成用塗工液を調製した以外は、実施例1と同様の方法にて、比較例3の粘接着剤組成物からなる粘接着剤層を有する粘接着シートを得た。
【0097】
[糊残りの確認]
実施例1〜4及び比較例1〜3の粘接着剤組成物からなる粘接着剤層を有する粘接着シートの一方の剥離フィルムを剥がし、該剥離フィルム上における糊残りの有無を目視にて確認した。結果を表1に示す。なお、評価基準は以下のとおりである。○:糊残りなし、△:わずかに糊残りあり、×:かなり糊残りあり。
【0098】
【表1】

【0099】
表1に示すように、実施例1〜4及び比較例2の粘接着剤組成物からなる粘接着剤層を有する粘接着シートでは、糊残りが認められなかったのに対して、比較例1、3の粘接着剤組成物からなる粘接着剤層を有する粘接着シートでは、かなり糊残りが認められた。
【0100】
<実施例5>
剥離フィルム(商品名:SP−PET−03,片面にシリコーン系剥離剤による剥離処理が施されてなるポリエステルフィルム,膜厚:38μm,東セロ社製)の剥離処理面上に、実施例1と同じ膜形成用塗工液を塗工後の厚みが100μmとなるように、アプリケーターを用いて塗工した後、乾燥オーブンにて100℃で20分間乾燥させ、膜を形成した。次いで、得られた膜面に、剥離フィルム(商品名:SP−PET−03,片面にシリコーン系剥離剤による剥離処理が施されてなるポリエステルフィルム,膜厚:38μm,東セロ社製)の剥離処理面をラミネートし、実施例5の粘接着剤組成物からなる粘接着剤層を有する粘接着シートを得た。
【0101】
<実施例6>
剥離フィルム(商品名:SP−PET−03,片面にシリコーン系剥離剤による剥離処理が施されてなるポリエステルフィルム,膜厚:38μm,東セロ社製)の剥離処理面上に、実施例2と同じ膜形成用塗工液を塗工後の厚みが100μmとなるように、アプリケーターを用いて塗工した後、乾燥オーブンにて100℃で20分間乾燥させ、膜を形成した。次いで、得られた膜面に、剥離フィルム(商品名:SP−PET−03,片面にシリコーン系剥離剤による剥離処理が施されてなるポリエステルフィルム,膜厚:38μm,東セロ社製)の剥離処理面をラミネートし、実施例6の粘接着剤組成物からなる粘接着剤層を有する粘接着シートを得た。
【0102】
<実施例7>
剥離フィルム(商品名:SP−PET−03,片面にシリコーン系剥離剤による剥離処理が施されてなるポリエステルフィルム,膜厚:38μm,東セロ社製)の剥離処理面上に、実施例3と同じ膜形成用塗工液を塗工後の厚みが100μmとなるように、アプリケーターを用いて塗工した後、乾燥オーブンにて100℃で20分間乾燥させ、膜を形成した。次いで、得られた膜面に、剥離フィルム(商品名:SP−PET−03,片面にシリコーン系剥離剤による剥離処理が施されてなるポリエステルフィルム,膜厚:38μm,東セロ社製)の剥離処理面をラミネートし、実施例7の粘接着剤組成物からなる粘接着剤層を有する粘接着シートを得た。
【0103】
<実施例8>
剥離フィルム(商品名:SP−PET−03,片面にシリコーン系剥離剤による剥離処理が施されてなるポリエステルフィルム,膜厚:38μm,東セロ社製)の剥離処理面上に、実施例4と同じ膜形成用塗工液を塗工後の厚みが100μmとなるように、アプリケーターを用いて塗工した後、乾燥オーブンにて100℃で20分間乾燥させ、膜を形成した。次いで、得られた膜面に、剥離フィルム(商品名:SP−PET−03,片面にシリコーン系剥離剤による剥離処理が施されてなるポリエステルフィルム,膜厚:38μm,東セロ社製)の剥離処理面をラミネートし、実施例8の粘接着剤組成物からなる粘接着剤層を有する粘接着シートを得た。
【0104】
<比較例4>
剥離フィルム(商品名:SP−PET−03,片面にシリコーン系剥離剤による剥離処理が施されてなるポリエステルフィルム,膜厚:38μm,東セロ社製)の剥離処理面上に、比較例1と同じ膜形成用塗工液を塗工後の厚みが100μmとなるように、アプリケーターを用いて塗工した後、乾燥オーブンにて100℃で20分間乾燥させ、膜を形成した。次いで、得られた膜面に、剥離フィルム(商品名:SP−PET−03,片面にシリコーン系剥離剤による剥離処理が施されてなるポリエステルフィルム,膜厚:38μm,東セロ社製)の剥離処理面をラミネートし、比較例4の粘接着剤組成物からなる粘接着剤層を有する粘接着シートを得た。
【0105】
<比較例5>
剥離フィルム(商品名:SP−PET−03,片面にシリコーン系剥離剤による剥離処理が施されてなるポリエステルフィルム,膜厚:38μm,東セロ社製)の剥離処理面上に、比較例2と同じ膜形成用塗工液を塗工後の厚みが100μmとなるように、アプリケーターを用いて塗工した後、乾燥オーブンにて100℃で20分間乾燥させ、膜を形成した。次いで、得られた膜面に、剥離フィルム(商品名:SP−PET−03,片面にシリコーン系剥離剤による剥離処理が施されてなるポリエステルフィルム,膜厚:38μm,東セロ社製)の剥離処理面をラミネートし、比較例5の粘接着剤組成物からなる粘接着剤層を有する粘接着シートを得た。
【0106】
<比較例6>
剥離フィルム(商品名:SP−PET−03,片面にシリコーン系剥離剤による剥離処理が施されてなるポリエステルフィルム,膜厚:38μm,東セロ社製)の剥離処理面上に、比較例3と同じ膜形成用塗工液を塗工後の厚みが100μmとなるように、アプリケーターを用いて塗工した後、乾燥オーブンにて100℃で20分間乾燥させ、膜を形成した。次いで、得られた膜面に、剥離フィルム(商品名:SP−PET−03,片面にシリコーン系剥離剤による剥離処理が施されてなるポリエステルフィルム,膜厚:38μm,東セロ社製)の剥離処理面をラミネートし、比較例6の粘接着剤組成物からなる粘接着剤層を有する粘接着シートを得た。
【0107】
[せん断粘着力の測定]
実施例5〜8及び比較例4〜6の粘接着剤組成物からなる粘接着剤層を有する粘接着シートを10mm×10mmに切断した後、一方の面の剥離フィルムを剥がし、ガラス板(幅15mm×長さ50mm×厚さ3mm)に貼り合わせた。次いで、他方の面の剥離フィルムを剥がし、粘接着面を暴露させてから該面に、紫外線照射装置(製品名「DRE−10/12QN」,Hバルブ使用,フュージョンUVシステムズジャパン社製)を用いて、波長300〜370nmの領域で光強度が2000mJとなるように紫外線を照射した。その後、紫外線を照射した粘接着面に上記と同じサイズのガラス板を、2kgのローラーを用いて圧着させた。そして、乾燥オーブンにて100℃で1時間加熱した後、1日間養生し、測定温度23℃、引っ張り速度50mm/minの条件(JIS K6850に準拠)にて測定した。結果を表2に示す。
【0108】
【表2】

【0109】
表2に示すように、実施例5〜8の粘接着剤組成物からなる粘接着剤層を有する粘接着シートでは、良好な粘着力を示した。これらに対して、比較例4及び6の粘接着剤組成物からなる粘接着剤層を有する粘接着シートは、剥離フィルムに糊残りが発生し、ガラス板に対して良好な粘接着剤層転移状態とならなかった。また、比較例5の粘接着剤組成物からなる粘接着剤層を有する粘接着シートは、ガラス板に対して粘着性を有していない状態であった。これは、ポリエステル樹脂のTgが高いためであると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光照射後の加熱により塩基を発生する塩基発生剤と、分子中にエポキシ基を少なくとも1個以上有する硬化性化合物と、ガラス転移温度(Tg)が−10〜30℃である熱可塑性樹脂と、を含有し、
前記熱可塑性樹脂の含有量が、前記硬化性化合物100質量部に対して10〜300質量部であることを特徴とする粘接着剤組成物。
【請求項2】
前記塩基発生剤は、少なくとも2個以上のアミノ基を有する塩基を発生する請求項1に記載の粘接着剤組成物。
【請求項3】
前記硬化性化合物は、エポキシ系樹脂である請求項1又は2に記載の粘接着剤組成物。
【請求項4】
前記塩基発生剤は、下記一般式(I)で表される請求項1〜3いずれかに記載の粘接着剤組成物。
【化1】

(式中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は1価の有機基を表す。R及びRは、それらが結合して環状構造を形成していてもよい。ただし、R及びRのうち、少なくとも1つは1価の有機基を表す。R〜Rは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子又は有機基を表す。R〜Rは、それらの2つ以上が結合して環状構造を形成していてもよい。)
【請求項5】
請求項1〜4いずれかに記載の粘接着剤組成物からなる粘接着剤層を少なくとも有する粘接着シート。

【公開番号】特開2012−82264(P2012−82264A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−227662(P2010−227662)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】