説明

粘着シート

【課題】被着体に対してより一層消費者・購買者の目を引くような美観性・装飾性を付与しつつ、観察する角度にかかわらず高い隠ぺい性を有する粘着シートを提供する。
【解決手段】多層積層ポリエステルフィルムからなるシート状基材12と、シート状基材12の一方の面に配置され、粘着剤を含有する粘着剤層13とを有し、JISK5600−4−1:1999により規定される隠ぺい率が80%以上である粘着シート10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被着体に対して美観性・装飾性を付与したり、各種情報を付与したりするといった種々の目的で、粘着シートが広く用いられている。粘着シートは、通常、美観性・装飾性を発揮したり各種情報を提示したりするための基材と、基材を被着面と接着させるための粘着剤層とが積層されてなる構成を有する(例えば、特許文献1を参照)。基材の表面には、場合によっては印刷層が設けられることもある。
【0003】
ここで、粘着シートによって被着面に対して付与される美観性・装飾性は、主として粘着シートを構成する基材(場合によっては基材表面に配置された印刷層)の有する色調・模様などによって規定される。
【0004】
しかしながら、従来提案されている粘着シートを構成する基材や印刷層によって付与される美観性・装飾性は、粘着シートを様々な方向・角度から観察した場合に変化するものではない。
【0005】
これに対し、各種の被着体に対して粘着シートを貼付することにより、当該被着体に対して消費者・購買者の目を引くような美観性・装飾性を付与することができれば、当該被着体(例えば、各種商品)のマーケティング戦略の観点からも非常に好ましいことである。従来提案されている粘着シートでは、消費者・購買者の目を引くような美観性・装飾性を付与するという点では不十分な点が多く、さらなる改良の余地が存在するのが現状である。
【0006】
また、従来提案されている粘着シートについては、被着面が種々の色調・模様を有する場合に、粘着シートの色調が当該被着面の色調・模様によって受ける影響について十分に考慮が払われていない。具体的には、粘着シート自体の隠ぺい性が低い場合に、粘着シートによって提供されている模様や文字等の情報の色調が被着体の色調・模様の影響を受けてしまい、当初意図していた情報が充分に視認されなくなってしまうという問題がある。
【0007】
なお、特許文献2には、一般的な意味での粘着シートとは異なる技術ではあるが、多層構造フィルム体の一面側に着色透明の粘着剤層および無着色透明の樹脂フィルム層を順次積層し、他面側に透視性の粘着剤層を積層した構成を有する装飾用シートが開示されている。この装飾用シートは、専ら窓ガラスに貼付することを意図したものである。具体的には、透視性の粘着剤層を介して窓ガラスの室内側に貼付することで、多層構造フィルム体が呈する銀色等の色調に起因する不快感・違和感を着色粘着剤層によって緩和し、室内を落ち着いた色にすることを目的としている。なお、かような目的を達成するため、多層構造フィルム体が呈する色を視認する側に、着色「透明」の粘着剤層を配置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−108011号公報
【特許文献2】特開2004−82373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述した従来技術における現状に鑑みなされたものであり、被着体に対してより一層消費者・購買者の目を引くような美観性・装飾性を付与しつつ、観察する角度にかかわらず高い隠ぺい性を有する粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行なった。その過程で、多層積層ポリエステルフィルムを粘着シートのシート状基材として用いることを試みた。そして最終的に、前記シート状基材に粘着剤層が積層されてなる粘着シートの隠ぺい率を所定値以上の値とすることで上記課題が解決されうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明の粘着シートは、多層積層ポリエステルフィルムからなるシート状基材と、シート状基材の一方の面に配置され、粘着剤を含有する粘着剤層とを有する。そして、本発明の粘着シートは、JIS K5600−4−1:1999により規定される隠ぺい率が70%以上である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の粘着シートによれば、被着体に対してより一層消費者・購買者の目を引くような美観性・装飾性を付与しつつ、観察する角度にかかわらず高い隠ぺい性を有する粘着シートが提供されうる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態の粘着シートの断面図である。
【図2】参考例1において、3種類の多層積層ポリエステルフィルムおよび透明単層ポリエステルフィルムについて、波長400〜700nmの範囲の分光反射率を測定した結果を示すグラフである。
【図3】一般的なカーボン粒子(カーボンブラック)の構造を示す模式図である(三菱化学株式会社のウェブサイト(http://www.carbonblack.jp/cb/tokusei.html)より引用)。
【図4】参考例2において、多層積層ポリエステルフィルムであるMLF−13.0に入射する光の角度(入射角)を45°および30°としたそれぞれの場合の、鏡面反射光の絶対反射率を測定した結果を示すグラフである。
【図5】参考例2において、多層積層ポリエステルフィルムであるMLF−16.5に入射する光の角度(入射角)を45°および30°としたそれぞれの場合の、鏡面反射光の絶対反射率を測定した結果を示すグラフである。
【図6】参考例2において、多層積層ポリエステルフィルムであるMLF−19.0に入射する光の角度(入射角)を45°および30°としたそれぞれの場合の、鏡面反射光の絶対反射率を測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0015】
<第1実施形態>
図1は、本発明の一実施形態の粘着シートの断面図である。図1に示すように、粘着シート10は、まず、粘着シート本体11を有する。この粘着シート本体11は、シート状基材12と、粘着剤層13とが積層されてなる。本実施形態の粘着シート10では、粘着シート本体11に、剥離シート14がさらに積層されている。以下、粘着シート10の構成部材について、順に説明する。
【0016】
[シート状基材]
図1に示す形態において、シート状基材12は、多層積層ポリエステルフィルムからなる(多層積層構造については図示せず)。当該フィルムは、ポリエステルからなる層が多数積層された構造を有する。
【0017】
シート状基材12を構成する多層積層ポリエステルフィルムの構成は、例えば特開2005−59332号公報に記載されている。シート状基材を構成する多層積層ポリエステルフィルムとしては、市販品を購入することにより用いてもよいし、自ら製造したものを用いてもよい。多層積層ポリエステルフィルムの市販品としては、帝人デュポンフィルム株式会社により販売されている、多層フィルム:テイジン(登録商標)テトロン(登録商標)フィルムMLFシリーズの、MLF−13.0、MLF−16.5、およびMLF−19.0が挙げられる。これらのMLFシリーズは、それぞれ、異なる波長領域に反射域を有する。図2は、上述したMLFシリーズの3種類の市販品について、波長400〜700nmの範囲の分光反射率を測定した結果を示すグラフである。なお、この分光反射率は、後述する参考例1に記載のように、多層積層ポリエステルフィルムの主表面の法線に対して8°の角度で光を入射して測定される、鏡面反射光および拡散反射光を合わせた全反射光の相対反射率である。本明細書に記載の「分光反射率」はいずれも、同様の概念を有し同様の測定方法(後述する参考例1を参照)により測定される値を意味するものとする。図2に示すように、MLF−13.0は、波長400〜480nmに反射率30%以上の反射領域を示し、MLF−16.5は、波長480〜580nmに反射率30%以上の反射領域を示し、MLF−19.0は、波長580〜680nmに反射率30%以上の反射領域を示す。ここで、「波長○○〜○○nmに反射率30%以上の反射領域を示す」とは、反射率30%以上の領域が波長○○〜○○nmの少なくとも一部に存在することを意味する。したがって、波長○○〜○○nmのすべてにわたって反射率30%以上の領域が存在することを意味するものではない。なお、場合によっては、これら以外の市販品が用いられてももちろんよい。
【0018】
当該フィルムを自ら製造する手法の一例として、具体的には、特開2005−59332号公報に記載されているように、組成の異なるポリエステル組成物から構成され屈折率の異なる2つの層(以下、屈折率の大きい層を「第1の層」とも称し、屈折率の小さい層を「第2の層」とも称する)を交互に積層するという手法が例示される。ここで、第1の層および第2の層のそれぞれの1層の厚みは、0.05〜0.5μm程度である。また、第1の層および第2の層の総積層数は、例えば11〜300層程度であり、好ましくは100〜200層である。そして、シート状基材12の厚みは、好ましくは6〜100μmであり、より好ましくは12〜25μmである。
【0019】
第1の層および第2の層の厚みを変化させることにより、図2に示すグラフにおける反射率30%以上を示す波長を変化させることが可能である。具体的には、第1の層および第2の層の厚みを大きくすることで、反射率30%以上を示す波長を長波長側へとシフトさせることができる。より詳細には、多層積層ポリエステルフィルムの波長400〜700nmの範囲の分光反射率曲線における反射率30%以上を示す波長を波長400〜480nmに位置させ、反射光を青色にするには、交互に積層される第1の層および第2の層の厚みを60〜70nm程度とすればよい。同様に、反射率30%以上を示す波長を波長480〜580nmに位置させ、反射光を緑色にするには、第1の層および第2の層の厚みを70〜85nm程度とすればよい。さらに、反射率30%以上を示す波長を波長580〜680nmに位置させ、反射光を赤色にするには、第1の層および第2の層の厚みを85〜100nm程度とすればよい。これらの好ましい厚みは、薄膜に入射した光の反射光の干渉について成立する下記数式1から算出されうる。
【0020】
【数1】

【0021】
式中、dは薄膜の厚み(nm)であり、nは屈折率であり、λは反射率が高くなる波長(nm)であり、θは入射角(薄膜に対する法線からの角度)(°)である。
【0022】
上述した反射率が高くなる波長の測定は、フィルムの主表面の法線の方向から入射された光の場合、θ≒0(°)(すなわち、cosθ≒1)である。そして、多層積層フィルムの構成材料であるポリエステルの屈折率は約1.7であるため、これらの値を上記数式1に代入すると、λ≒6.8dとなる。上述した厚みの好ましい範囲は、この式から算出されうるのである。
【0023】
シート状基材12の粘着剤層13と反対側の面には、例えば、文字、記号、図形、バーコード等の表示が印刷により付されてもよい。すなわち、この表面は、表示適性面(印刷適性面)を構成しうる。この印刷適性面には、例えば、エンボス加工、サンドマット処理等により微小な凹凸を形成したり、あるいは各種樹脂層を設けて、印刷適性を向上させることができる。
【0024】
[粘着剤層]
粘着剤層13は、粘着剤(図示せず)を含む。本実施形態の粘着シート10は、粘着剤層13に含有される粘着剤がカーボン粒子を含む点に特徴を有する。カーボン粒子として、後述する実施例においては、三菱化学株式会社製のカーボンブラックMA230(固形分98.8%、粒子径30nm)を用いた。
【0025】
かような構成を有することにより、本実施形態の粘着シート10において、粘着剤層13は黒色を呈する。「黒色」の好ましい形態をより定量的に規定すれば、本実施形態の粘着シート10は、反射濃度が0.5以上である。「反射濃度」は、光学濃度の1種であり、反射率(=反射面からの反射光量/反射面への入射光量)を用いて、「−log10(反射率)」として定義される。例えば、反射率が10%のとき、反射濃度は(−log10(0.1))=1と算出され、反射率が1%のとき、反射濃度は(−log10(0.01))=2と算出される。逆に、反射濃度が0.5以上となる場合の反射率は、(1/10)1/2(=約31.6%)以下である。なお、本願における「反射濃度」の値としては、後述する実施例に記載の手法により測定される値を採用するものとする。この反射濃度は、好ましくは0.8以上であり、より好ましくは1.0以上であり、さらに好ましくは1.3以上であり、特に好ましくは1.7以上であり、最も好ましくは2.0以上である。
【0026】
本実施形態の粘着シート10は、粘着剤層13が黒色を呈し、かつ、反射濃度が0.5以上となっていることで、高い隠ぺい性を示す。「隠ぺい性」をより定量的に規定すれば、本実施形態の粘着シートの隠ぺい率は、70%以上である。「隠ぺい率」は、下地の色を遮蔽する能力を示す指標であり、JIS K5600−4−1:1999により規定される。なお、本願における「隠ぺい率」の値としては、後述する実施例に記載の手法により測定される値を採用するものとする。後述する実施例に記載のように、本願では、入射角が8°の場合の隠ぺい率および入射角が45°の場合の隠ぺい率がそれぞれ測定されるが、これらの隠ぺい率のうち高くない方の値が本願における「隠ぺい率」となる。したがって、「粘着シートの隠ぺい率が70%以上」とは、入射角が8°の場合の隠ぺい率および入射角が45°の場合の隠ぺい率の双方が70%以上となることを意味する。この隠ぺい率は、好ましくは75%以上であり、より好ましくは78%以上である。
【0027】
上述のように反射濃度を高く制御することによって粘着シート10に高い隠ぺい性が付与されるのは、黒色の粘着剤層13の存在によって、粘着シート10の全光線透過率が低下するためである。かような観点から、好ましい形態として、粘着剤層13が黒色を呈する場合における粘着シート10の全光線透過率の値は、好ましくは10%以下であり、より好ましくは8%以下である。なお、「全光線透過率」は、JIS K7361−1:1997により規定される値であり、平行透過光および拡散透過光を合わせた全透過光について測定される透過率である。
【0028】
以下、本実施形態の粘着シート10を構成する粘着剤層13の構成材料について、より詳細に説明する。
【0029】
(カーボン粒子)
本実施形態では、粘着剤層13を黒色とし、粘着シート10の隠ぺい率を向上させるための手段として、カーボン粒子であるカーボンブラックを粘着剤に添加している。カーボンブラックとしては、オイルファーネスブラック、チャネルブラック、ランプブラック、サーマルブラック、アセチレンブラックなど各種のものが知られている。本実施形態では、いずれのものも用いられうる。
【0030】
用いられるカーボン粒子の平均粒子径の値について特に制限はなく、上述した隠ぺい率(並びに、好ましくは反射濃度および/または全光線透過率)を達成しうる形態であれば適宜採用されうる。一例として、カーボン粒子の平均粒子径は、好ましくは10〜100nmであり、より好ましくは20〜80nmであり、特に好ましくは25〜70nmである。なお、カーボン粒子の平均粒子径の値は、例えば、電子顕微鏡により撮影された写真から、数〜数十個のカーボン粒子を無作為に選択し、選択された個々のカーボン粒子の粒子径(輪郭線上の任意の2点間を結ぶ最大長)から算術平均値を算出することにより得ることができる。図3は、一般的なカーボン粒子(カーボンブラック)の構造を示す模式図である(三菱化学株式会社のウェブサイト(http://www.carbonblack.jp/cb/tokusei.html)より引用)。図3に示すように、カーボン粒子(カーボンブラック)は表面にカルボキシル基(−COOH基)やヒドロキシル基(−OH基)などの官能基を有しており、ストラクチャーと称される構造を有する。カーボン粒子の粘着剤(後述)中での分散性は、図3に示すストラクチャー構造に依存して変動しうる。このため、粘着剤層13に用いられる粘着剤の種類を考慮して、それに適したストラクチャーを有するカーボン粒子を適宜選定することが好ましい。
【0031】
粘着剤層13に含有される粘着剤におけるカーボン粒子の含有量は特に制限されず、所望の隠ぺい率を達成可能な量で適宜設定されうる。一例として、粘着剤におけるカーボン粒子の含有量は、後述する粘着剤のベースポリマー100質量部に対して、好ましくは1〜30質量部であり、より好ましくは5〜20質量部であり、さらに好ましくは10〜15質量部である。
【0032】
(粘着剤)
粘着剤層13に含まれる粘着剤(主剤)の具体的な構成については、上述した粘着シート10の隠ぺい率に悪影響を及ぼすものでない限り、特に制限なく採用されうる。粘着剤層13に含まれる粘着剤(主剤)の一例としては、(メタ)アクリル酸エステル系(共)重合体からなるベースポリマーと、架橋剤とを含有するものが挙げられる。以下、かような形態を例に挙げてより詳細に説明するが、場合によっては、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤などが粘着剤(主剤)として用いられてももちろんよい。
【0033】
(メタ)アクリル酸エステル系(共)重合体を構成する(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸とモノアルコールとのエステルであって、当該モノアルコールの有するアルキル基がn−オクチル基、イソオクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ブチル基、イソブチル基、メチル基、エチル基、イソプロピル基などであるものが挙げられる。なお、(メタ)アクリル酸エステル系(共)重合体は、これらの(メタ)アクリル酸エステルの1種または2種以上を含みうる。
【0034】
(メタ)アクリル酸エステル系(共)重合体の全繰り返し単位に占める上述した(メタ)アクリル酸エステル由来の繰り返し単位の割合は、全繰り返し単位100モル%に対して、好ましくは30〜99モル%であり、より好ましくは50〜95モル%である。
【0035】
また、(メタ)アクリル酸エステル系(共)重合体は、上述したもの以外の成分として、カルボキシル基、ヒドロキシル基、グリシジル基等の有機官能基を有する(メタ)アクリル酸系単量体由来の繰り返し単位を含んでもよい。かような成分としては、(メタ)アクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル系(共)重合体の全繰り返し単位に占めるこれらの繰り返し単位の割合は、全繰り返し単位100モル%に対して、好ましくは0.01〜15モル%であり、より好ましくは0.3〜10モル%である。
【0036】
粘着剤(主剤)の凝集力を高める目的で、コモノマー成分として酢酸ビニルや(メタ)アクリル酸メチル等を適宜共重合することも可能である。また、粘着力を高める目的で粘着付与剤を添加することも可能である。
【0037】
粘着剤に含有される架橋剤についても、特に制限はない。ただし、粘着剤層13の黄変を防止するという観点から、好ましくは、脂肪族イソシアネート化合物、脂環式イソシアネート化合物、エポキシ化合物、または金属キレート化合物が架橋剤として用いられる。これらの架橋剤は1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。なお、場合によっては、これら以外の従来公知の架橋剤が用いられてももちろんよい。
【0038】
上述した各種架橋剤の具体的な形態についても特に制限はなく、従来公知の知見が適宜参照されうる。架橋剤の一例を挙げると、脂肪族イソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、また、脂環式イソシアネート化合物としては、イソホロンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。これらのイソシアネート化合物は、上述した化合物のビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油などの低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などの形態で用いられてもよい。エポキシ化合物としては、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンなどが挙げられる。また、金属キレート化合物としては、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナト)チタンなどが挙げられる。
【0039】
粘着剤における架橋剤の含有量について特に制限はないが、上述した(メタ)アクリル酸系(共)重合体100質量部に対して、好ましくは0.001〜15質量部であり、より好ましくは0.1〜10質量部である。
【0040】
以上、粘着剤(主剤)の一例として、(メタ)アクリル酸エステル系(共)重合体からなるベースポリマーと、架橋剤とを含有するものを例に挙げて説明したが、その他の従来公知の形態が用いられてももちろんよい。
【0041】
粘着剤層13の厚みは特に制限されないが、好ましくは5〜100μmであり、より好ましくは15〜50μmである。粘着剤層13の厚みは、被着体の表面(被着面)の凹凸の大きさにより適宜選択して設定される。
【0042】
粘着剤層13は、従来公知のその他の添加剤をさらに含みうる。かような添加剤としては、例えば、粘着付与剤、充填剤、酸化防止剤などが挙げられる。粘着付与剤としては、例えば、ロジン系樹脂、ポリテルペン系樹脂などの天然樹脂、C5系、C9系、ジシクロペンタジエン系などの石油樹脂、クマロンインデン樹脂、キシレン樹脂などの合成樹脂などが挙げられる。充填剤としては、例えば、亜鉛華、シリカ、炭酸カルシウムなどが挙げられる。なお、二酸化チタンもまた、充填剤として機能しうる。
【0043】
[剥離シート]
剥離シート14は、粘着シート10の使用前において、粘着剤層13を保護し、粘着性の低下を防止する機能を有する層である。そして、剥離シート14は、粘着シート10の使用時には剥離される。
【0044】
剥離シート14の具体的な形態は特に制限されず、従来公知の知見が適宜参照されうる。剥離シート14は一般的に、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンフィルムなどのプラスチックフィルム;グラシン紙、クラフト紙、クレーコート紙などの紙といった材料を基材として構成される。これらの基材の厚みは、通常10〜400μm程度である。また、剥離シート14の表面には、粘着剤層13の剥離性を向上させるためのシリコーンなどから構成される剥離剤からなる層(図示せず)が設けられる。当該層の厚みは、通常0.01〜5μm程度である。
【0045】
本実施形態の粘着シート10の製造方法について特に制限はなく、粘着シートの製造に関する従来公知の手法が適宜参照されうる。一例として、例えば、粘着剤をシート状基材に塗工し、乾燥させるといった処理を行なって粘着剤層を形成するという手法が用いられうる。剥離シートを設ける場合には、これにさらに剥離シートを貼り合わせればよい。また、剥離シートを設ける場合には、剥離シートに予め粘着剤を塗工することで粘着剤層を形成し、これにシート状基材を貼り合わせるという手法が用いられてもよい。
【0046】
本実施形態の粘着シート10によれば、剥離シート14を剥離して被着体に貼付した際に、被着体に対してより一層消費者・購買者の目を引くような美観性・装飾性を付与することが可能となる。具体的には、見る角度が変わると見える色が変化するという驚くべき機能を付与することが可能となった。より詳細には、シート状基材を構成する多層積層ポリエステルフィルムを構成する多数の層の界面において反射して見える光の波長が、見る角度が変わると変化し(具体的には、法線に対する入射角が大きくなると反射光の波長が短波長側にシフトし)、見える色が変化することが判明したのである。
【0047】
また、図2に示すように、本実施形態においてシート状基材12として用いられる多層積層ポリエステルフィルムは所定の波長領域に大きい反射率を示す。この反射率の大きい領域の波長が鏡面反射するように(例えば、蛍光灯下において蛍光灯の光が映り込むように)当該多層積層ポリエステルフィルムを見た場合には、当該フィルムで鏡面反射する光のみが視認され、当該フィルムを透過する光を視認することはない。その結果、かような見方をする場合には、隠ぺい性が発揮されることになる。しかしながら、上記所定の波長が鏡面反射しないように当該フィルムを見た場合には、当該フィルムを透過する光も視認されうる。このため、本願のような構成としない限りは、当該フィルムを用いた粘着シートにおいて隠ぺい性が発揮されることはない。
【0048】
これに対し、本実施形態の粘着シート10によれば、粘着剤層13の構成に工夫を施すことによって、優れた隠ぺい性が発揮されうるように構成されている。
【0049】
なお、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきである。すなわち、本発明の粘着シートの特徴の1つは、隠ぺい率が70%以上である点である。したがって、粘着シート10の隠ぺい率を70%以上とするための具体的な手段については何ら制限されず、上述した以外の形態(例えば、後述する第2実施形態など)ももちろん採用されうる。
【0050】
<第2実施形態>
本実施形態の粘着シート10は、図示すると第1実施形態と同様に図1のような構成を有する。ただし、本実施形態の粘着シート10では、粘着シート10に対して隠ぺい性を付与するための手段が異なる。具体的には、第1実施形態において隠ぺい性付与手段として用いられていたカーボン粒子に代えて、本実施形態では、二酸化チタン(TiO)粒子が用いられている。なお、二酸化チタン(TiO)粒子として、後述する実施例においては、石原産業株式会社製のタイペーク(登録商標)R−980(固形分93%、粒子径240nm)を用いた。
【0051】
かような構成を有することにより、本実施形態の粘着シート10において、粘着剤層13は白色を呈する。「白色」の好ましい形態をより定量的に規定すれば、本実施形態の粘着シート10は、白色度が50%以上である。「白色度」とは、物品の白さを表す指標であり、JIS P8148:2001によりISO白色度として規定される。この白色度は、好ましくは60%以上であり、より好ましくは70%以上である。
【0052】
本実施形態の粘着シート10は、粘着剤層13が白色を呈し、かつ、白色度が50%以上となっていることで、高い隠ぺい性を示す。「隠ぺい性」の指標として「隠ぺい率」が採用されうる点については上述した第1実施形態と同様であり、その好ましい形態についても上述した第1実施形態と同様である。したがって、これらの詳細な説明については記載を省略する。
【0053】
上述のように白色度を高く制御することによって粘着シート10に高い隠ぺい性が付与されるのは、白色の粘着剤層13の存在によって、粘着剤層13に入射した光が散乱される度合が大きくなる(すなわち、粘着シート10のヘーズ(Haze)が高くなる)ためである。かような観点から、好ましい形態として、粘着剤層13が白色を呈する場合における粘着シート10のヘーズ(Haze)の値は、好ましくは50以上であり、より好ましくは60以上であり、さらに好ましくは70以上である。なお、「ヘーズ(Haze)」は、JIS K7136:2000により規定される値である。
【0054】
本実施形態の粘着シート10を構成する粘着剤層13の構成材料については、第1実施形態のカーボン粒子に代えて二酸化チタン(TiO)粒子が用いられる点のみが異なる。以下、本実施形態の粘着シート10の粘着剤層13に用いられる二酸化チタン粒子の具体的な構成について、より詳細に説明する。
【0055】
(二酸化チタン粒子)
二酸化チタンは、「酸化チタン(IV)」や「チタニア」とも称され、「TiO」で表される組成式を有する無機化合物である。「チタン白」とも称されていることからわかるように、極めて高い白色度を示し、白色顔料として用いられうる。二酸化チタンは、その結晶構造に応じて、ルチル型、アナターゼ型、およびブルカイト型に分類されるが、本実施形態においてはいずれが用いられてもよい。ただし、(1)ルチル型は他のものよりも安定であって隠ぺい力が高いこと、(2)アナターゼ型は光触媒活性を有するために粘着剤層において粘着剤と反応してこれを劣化させる可能性があること、などを考慮すると、ルチル型がより好ましく用いられうる。
【0056】
好ましい形態として、二酸化チタン粒子は、各種の材料で表面が処理/被覆されたものでありうる。例えば、粘着剤層における粘着剤の劣化防止を目的として、二酸化チタン粒子の光触媒活性を低下させるべく、二酸化チタン粒子の表面はアルミナ、シリカといった無機化合物によって被覆されうる。また、製造時における分散媒や粘着剤への分散性を向上させる目的で、二酸化チタン粒子の表面はシリコーンやカルボン酸などによって被覆されうる。
【0057】
なお、二酸化チタンの製造方法としては、硫酸法や塩素法、その他フッ酸法,塩化チタンカリ法,四塩化チタン水溶液法,アルコキシド加水分解法など多数の製法が知られている。ただし、一部の微粒子二酸化チタンを除いて、工業的に実用化されているのは硫酸法および塩素法のみである。本実施形態において、二酸化チタンの形態はその製造方法によって何ら制限を受けるものではない。なお、二酸化チタン粒子の市販品が存在する場合には、それを購入したものを用いてももちろんよい。
【0058】
二酸化チタン粒子の粒子径について特に制限はなく、上述した隠ぺい率(並びに、好ましくは白色度および/またはヘーズ)を達成しうる形態であれば適宜採用されうる。一例として、二酸化チタン粒子の平均粒子径は、好ましくは200〜350nmであり、より好ましくは210〜300nmであり、さらに好ましくは230〜280nmである。二酸化チタン粒子の平均粒子径がかような範囲内の値であれば、可視光線(400〜700nm)の波長の1/2程度であるため、可視光線を効果的に散乱させることができ、高い隠ぺい性を発揮することが可能となる。なお、二酸化チタン粒子の平均粒子径の値は、例えば、電子顕微鏡により撮影された写真から、数〜数十個の二酸化チタン粒子を無作為に選択し、選択された個々の二酸化チタン粒子の粒子径(輪郭線上の任意の2点間を結ぶ最大長)から算術平均値を算出することにより得ることができる。
【0059】
本実施形態において、粘着剤層13における二酸化チタン粒子の含有量は特に制限されず、所望の隠ぺい率を達成可能な量で適宜設定されうる。一例として、粘着剤層13における二酸化チタン粒子の含有量は、上述した粘着剤のベースポリマー100質量部に対して、好ましくは10〜50質量部であり、より好ましくは20〜40質量部であり、さらに好ましくは25〜30質量部である。
【0060】
[用途]
本発明の実施形態に係る粘着シートは上述したような作用効果を示すことから、当該シートが各種商品等のラベルなどに適用された際には、より一層消費者・購買者の目を引くような美観性・装飾性が付与されることとなる。このような美観性・装飾性の付与は、各種商品等のマーケティング戦略をパッケージング面から強力にサポートすることが期待される。そして、本発明の実施形態に係る粘着シートは、観察する角度にかかわらず高い隠ぺい性を有する。なお、本発明の粘着シートが適用される対象となる商品等の具体的な形態に特に制限はなく、例えば、食品、化粧品、銘板、改ざん防止が必要な商品などの商品に適用されうる。
【実施例】
【0061】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、下記の実施例のみに限定されるべきではない。
【0062】
<参考例1>
多層積層ポリエステルフィルムとして、多層フィルム:テイジン(登録商標)テトロン(登録商標)フィルムMLFシリーズの、MLF−13.0、MLF−16.5、およびMLF−19.0(いずれも帝人デュポンフィルム株式会社製)の3種類を準備した。
【0063】
これら3種類の多層積層ポリエステルフィルムについて、波長400〜700nmの範囲の分光反射率を測定した。これらの測定には、分光光度計UV−3600(株式会社島津製作所製)を用いた。そして、多層積層ポリエステルフィルムの主表面の法線に対して8°の角度で光を入射し、鏡面反射光および拡散反射光を合わせた全反射光の相対反射率を測定した。なお、法線に対して0°ではなく8°の角度で(すなわち、法線からわずかにずらして)光を入射したのは、0°の角度で入射すると光源に対して鏡面反射してしまい、鏡面反射光を検出することができないためである。
【0064】
これらの結果について、分光反射率の結果を図2に示す。また、これらの結果をまとめて下記の表1に示す。なお、図2に示す「PET25」とは、透明単層ポリエステルフィルムであるルミラー(登録商標)T−60(東レ株式会社製)(厚み25μm)について同様の測定を行なった結果である。図2に示すように、「PET25」では特に光の選択的な反射は検出されなかった。
【0065】
【表1】

【0066】
図2および表1に示すように、MLF−13.0では、400〜480nmの波長が反射された結果、反射光は青色を示した。また、MLF−16.5では、480〜580nmの波長が反射された結果、反射光は緑色を示した。さらに、MLF−19.0では、580〜680nmの波長が反射された結果、反射光は赤色を示した。
【0067】
<参考例2>
多層積層フィルムに入射する光の角度(入射角)を45°および30°としたそれぞれの場合の、鏡面反射光の絶対反射率を測定した。なお、入射角が45°および30°の場合における絶対反射率の値は、分光光度計UV−3600(株式会社島津製作所製)に絶対反射率測定装置ISR−3145、ISR−3130(株式会社島津製作所製)をそれぞれ取り付けて、測定した。
【0068】
上記測定の結果を、MLF−13.0、MLF−16.5、およびMLF−19.0のそれぞれについて、図4〜図6に示す。図4〜図6に示すように、いずれの多層積層フィルムを用いた場合であっても、入射角が30°の場合の絶対反射率と比較して、入射角が45°の場合の絶対反射率では反射する波長が短波長側にシフトする、すなわち、色調が変わって見えることがわかる。
【0069】
[製造例1:黒色粘着剤の製造]
アクリル系粘着剤であるオリバイン(登録商標)BPS1109(東洋インキ製造株式会社製、固形分40%)100質量部に対して、イソシアネート系架橋剤であるコロネート(登録商標)L(日本ポリウレタン工業株式会社製、固形分75%)1.5質量部、および、黒色顔料であるMA230(三菱化学株式会社製、固形分98.8%、粒子径30nm)5質量部を混合して、黒色粘着剤を得た。
【0070】
[製造例2:白色粘着剤の製造]
黒色顔料を白色顔料であるタイペーク(登録商標)R−980(石原産業株式会社製、固形分93%、粒子径240nm)12質量部に変えたこと以外は、上述した製造例1と同様の手法により、白色粘着剤を得た。
【0071】
[製造例3:無色粘着剤の製造]
黒色顔料を混合しなかったこと以外は、上述した製造例1と同様の手法により、無色粘着剤を得た。
【0072】
[実施例1:MLF−13.0]
[実施例1−1:黒色粘着剤]
厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムにシリコーンを塗布した剥離シートのシリコーン塗布面に、上述した製造例1において得られた黒色粘着剤を塗布し、厚さ20μmの粘着剤層を形成した。次いで、シート状基材として多層積層ポリエステルフィルムであるテイジン(登録商標)テトロン(登録商標)フィルム MLF−13.0(帝人デュポンフィルム株式会社製)を粘着剤層の表面に貼り合わせて、粘着剤層が黒色粘着剤を含む粘着シートを得た。
【0073】
[実施例1−2:白色粘着剤]
粘着剤として、上述した製造例2において得られた白色粘着剤を用いたこと以外は、上述した実施例1−1と同様の手法により、粘着剤層が白色粘着剤を含む粘着シートを得た。
【0074】
[比較例1:無色粘着剤)]
粘着剤として、上述した製造例3において得られた無色粘着剤を用いたこと以外は、上述した実施例1−1と同様の手法により、粘着剤層が無色粘着剤を含む粘着シートを得た。
【0075】
[実施例2:MLF−16.5]
[実施例2−1:黒色粘着剤]
シート状基材として、多層積層ポリエステルフィルムであるテイジン(登録商標)テトロン(登録商標)フィルム MLF−16.5(帝人デュポンフィルム株式会社製)を用いたこと以外は、上述した実施例1−1と同様の手法により、粘着剤層が黒色粘着剤を含む粘着シートを得た。
【0076】
[実施例2−2:白色粘着剤]
粘着剤として、上述した製造例2において得られた粘着剤を用いたこと以外は、上述した実施例2−1と同様の手法により、粘着剤層が白色粘着剤を含む粘着シートを得た。
【0077】
[比較例2:無色粘着剤)]
粘着剤として、上述した製造例3において得られた粘着剤を用いたこと以外は、上述した実施例2−1と同様の手法により、粘着剤層が無色粘着剤を含む粘着シートを得た。
【0078】
[実施例3:MLF−19.0]
[実施例3−1:黒色粘着剤]
シート状基材として、多層積層ポリエステルフィルムであるテイジン(登録商標)テトロン(登録商標)フィルム MLF−19.0(帝人デュポンフィルム株式会社製)を用いたこと以外は、上述した実施例1−1と同様の手法により、粘着剤層が黒色粘着剤を含む粘着シートを得た。
【0079】
[実施例3−2:白色粘着剤]
粘着剤として、上述した製造例2において得られた白色粘着剤を用いたこと以外は、上述した実施例3−1と同様の手法により、粘着剤層が白色粘着剤を含む粘着シートを得た。
【0080】
[比較例3:無色粘着剤)]
粘着剤として、上述した製造例3において得られた無色粘着剤を用いたこと以外は、上述した実施例3−1と同様の手法により、粘着剤層が無色粘着剤を含む粘着シートを得た。
【0081】
[評価]
上述した実施例・比較例において得られた粘着シートについて、以下の評価を行った。なお、実施例1−1および1−2、並びに比較例1で得られた粘着シートについての測定結果を下記の表2に示す。また、実施例2−1および2−2、並びに比較例2で得られた粘着シートについての測定結果を下記の表3に示す。さらに、実施例3−1および3−2、並びに比較例3で得られた粘着シートについての測定結果を下記の表4に示す。
【0082】
(1)隠ぺい率
粘着シートから剥離シートを剥がし、粘着シート本体を隠ぺい率試験紙の白色部および黒色部にそれぞれ貼付し、白色部のY値であるY、黒色部のY値であるYをそれぞれ測定し、入射角が8°および45°の場合の隠ぺい率Y/Y(%)をそれぞれ算出した。隠ぺい率の測定については、JIS K5600−4−1:1999(塗料一般試験方法−第4部:塗膜の視覚特性−第1節:隠ぺい力(淡彩色塗料用))に準拠した。
【0083】
より具体的には、入射角8°の隠ぺい率は、8°の鏡面反射光および拡散反射光を合わせた全反射光の相対反射率に、JIS Z8722:2009(光の測定方法−反射及び透過物体色)に規定された重価係数を乗じて算出したY値を用いて算出した。また、入射角8°の全反射光の相対反射率は、分光光度計UV−3600(株式会社島津製作所製)を用いて測定した。
【0084】
一方、入射角45°の隠ぺい率は、45°の鏡面反射光の絶対反射率に、JIS Z8722:2009(色の測定方法−反射及び透過物体色)に規定された重価係数を乗じて算出したY値を使って算出した。また、入射角45°の鏡面反射光の絶対反射率は、分光光度計UV−3600に絶対反射率測定装置ASR−3145(株式会社島津製作所製)を取り付けて測定した。
【0085】
(2)白色度
粘着シートから剥離シートを剥がし、粘着シート本体の粘着剤層の側から光束を入射し、反射法によりISO白色度を測定した。ISO白色度の測定については、JIS P8148:2001(紙・板紙及びパルプ−ISO白色度(拡散青色反射率)の測定方法)に準拠して行い、色差計SQ2000(日本電色工業株式会社製)を用いて測定した。
【0086】
(3)反射濃度
粘着シートから剥離シートを剥がし、粘着シート本体の粘着剤層の側から光束を入射し、反射濃度を測定した。反射濃度の値は、反射濃度計RD−918(グレタグマクベス社製)を用いて測定した。
【0087】
(4)全光線透過率
粘着シートから剥離シートを剥がし、粘着シート本体のシート状基材の側から光束を入射して全光線透過率を測定した。全光線透過率の測定については、JIS K7361−1:1997(プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法−第1部:シングルビーム法)に準拠して行い、濁度計NDH2000(日本電色工業株式会社製)を用いて測定した。
(5)ヘーズ
粘着シートから剥離シートを剥がし、粘着シート本体のシート状基材の側から光束を入射してヘーズを測定した。ヘーズの測定については、JIS K7136:2000(プラスチック−透明材料のヘーズの求め方)に準拠して行い、濁度計NDH2000(日本電色工業株式会社製)を用いて測定した。
【0088】
【表2】

【0089】
【表3】

【0090】
【表4】

【0091】
表2〜表4に示すように、45°の隠ぺい率(入射角が45°で、鏡面反射光から測定した値)は、無色の粘着剤を用いた場合であっても高い値を示す。一方、8°の隠ぺい率(入射角が8°で、鏡面反射光と拡散反射光を合わせた全反射光から測定した値)は、無色の粘着剤を用いた場合には小さな値を示すことがわかる。
【0092】
鏡面反射光は多層積層ポリエステルフィルムで鏡面反射した光であるため、45°の隠ぺい率のように、鏡面反射光だけから隠ぺい率を測定すると、無色の粘着剤であっても高い隠ぺい率を示す。拡散反射光は多層積層ポリエステルフィルムを透過し、隠ぺい性試験紙の表面で拡散反射した光であるため、8°の隠ぺい率のように、拡散反射光を含めて隠ぺい率を測定すると、無色の粘着剤は、低い隠ぺい性を示すのである。
【0093】
これに対して、反射濃度が高い黒色粘着剤を用いた場合、および、ISO白色度が高い白色粘着剤を用いた場合には、8°の隠ぺい率であっても高い値が維持されていることがわかる。
【0094】
このように、本発明の粘着シートによれば、観察する角度にかかわらず極めて高い隠ぺい率が達成されうる。すなわち、本発明によれば、被着体に対する隠ぺい性に優れた粘着シートが提供されうる。なお、粘着シートに限ったことではないが、高い隠ぺい性と対になる概念として、「透明」という概念がある。ここで、ある物品がいわゆる「透明」であるためには、まず、全光線透過率が高いことが必要とされる。ただし、全光線透過率が高ければ必ず「透明」になるとは限らず、高い全光線透過率に加えて、ヘーズが低い(すなわち、光を散乱しにくい)という性質もまた、「透明」であるためには要求される物性である。
【0095】
以上の技術常識を踏まえた上で、本発明による高い隠ぺい性発現のメカニズムを考察すると、黒色粘着剤を用いた実施形態においては、全光線透過率が低下することで、反射濃度が高くなり、その結果として隠ぺい率が高くなるものと推測される。一方、白色粘着剤を用いた実施形態において、全光線透過率はある程度低下するものの、黒色粘着剤の場合ほどは低下しない。にもかかわらず高い隠ぺい率が達成されるのは、白色粘着剤に添加された白色顔料(実施例では二酸化チタン)が光を散乱することでヘーズが高くなることによるものと推測される。これらの推測に基づけば、本発明の粘着シートにおいて高い隠ぺい率を達成する目的で使用可能な粘着剤の色は黒色・白色に限定されないことが理解されうるであろう。換言すれば、粘着シートの全光線透過率を低下させるか、粘着シートのヘーズを高めるか、の少なくとも一方の機能を発揮しうる限り、いかなる構成も採用されうるのである。
【符号の説明】
【0096】
10 粘着シート、
11 粘着シート本体、
12 シート状基材、
13 粘着剤層、
14 剥離シート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層積層ポリエステルフィルムからなるシート状基材と、
前記シート状基材の一方の面に配置され、粘着剤を含有する粘着剤層と、
を有し、
JIS K5600−4−1:1999により規定される隠ぺい率が70%以上である、粘着シート。
【請求項2】
反射濃度が0.5以上である、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記粘着剤が平均粒子径10〜100nmのカーボン粒子を含む、請求項1または2に記載の粘着シート。
【請求項4】
JIS P8148:2001により規定される白色度が50%以上である、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項5】
前記粘着剤が平均粒子径200〜350nmの二酸化チタン粒子を含む、請求項1または4に記載の粘着シート。
【請求項6】
前記多層積層ポリエステルフィルムの、波長400〜700nmの範囲の分光反射率曲線における反射率30%以上を示す波長が、波長400〜480nmに位置する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項7】
前記多層積層ポリエステルフィルムの、波長400〜700nmの範囲の分光反射率曲線における反射率30%以上を示す波長が、波長480〜580nmに位置する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項8】
前記多層積層ポリエステルフィルムの、波長400〜700nmの範囲の分光反射率曲線における反射率30%以上を示す波長が、波長580〜680nmに位置する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項9】
前記粘着剤層の前記シート状基材とは反対側の面に剥離シートがさらに積層されてなる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の粘着シート。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−57839(P2011−57839A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−208617(P2009−208617)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】