説明

粘着テープ

【課題】高い耐熱性を有し、光を照射することにより被着体を損傷することなく容易に剥がすことができる粘着テープを提供する。
【解決手段】基材の少なくとも一方の面に粘着剤層を有する粘着テープであって、前記粘着剤層は、ビニル基、アリル基又は下記式(1)で表される基を重合性反応基として2個以上有する光硬化型粘着剤を主成分とし、アジド化合物を含有する粘着テープ。
【化1】


式中、R、Rはアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、水素原子、又はハロゲン原子を表す。また、RとRとは同一であっても異なっていてもよい。更に、RとRとは結合した構造であってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い耐熱性を有し、光を照射することにより被着体を損傷することなく容易に剥がすことができる粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
粘着テープに求められる性能はその用途により様々であるが、用途によっては、必要な間だけ強固に被着体に接着して固定できる一方で、使用後には容易に剥がせることが要求されることがある。
例えば、ICチップの製造工程において、高純度なシリコン単結晶等から切り出した厚膜ウエハを所定の厚さにまで研削して薄膜ウエハとする場合に、厚膜ウエハを支持板に接着して補強することにより、効率よく作業を進めることが提案されている。このとき厚膜ウエハと支持板とを接着するための両面粘着テープとしては、研削工程中には強固に接着する一方で、研削工程終了後には得られた薄膜ウエハを損傷することなく支持板から剥がせることが求められる。また、同様にICチップの製造方法において、研削済のウエハをダイシングする際に用いるダイシングテープにも、ダイシング工程中には強固に接着する一方で、ダイシング工程終了後には得られたICチップを損傷することなくダイシングテープから剥がせることが求められる。
【0003】
粘着テープを剥がす方法としては、例えば、物理的な力を加えて引き剥がすことが考えられる。しかしながら、この方法では被着体が軟弱な場合には重大な損傷を与えてしまうことがある。また、粘着剤を溶解できる溶剤を用いて粘着テープを剥がす方法も考えられる。しかしながら、この方法も被着体が溶剤によって侵されるものである場合には用いることができない。
このように、いったん接着に用いた粘着テープは、接着力が強固であるほど、被着体を損傷することなく剥がすことが困難であるという問題点があった。
【0004】
これに対して特許文献1には、光硬化型の粘着剤中に光を照射することにより気体を発生する気体発生剤を含有した粘着剤層を有する両面粘着テープを介してウエハを支持板に固定し、この状態でウエハの研削等の工程を行うICチップの製造方法が開示されている。このような両面粘着テープに光を照射すると、光照射により粘着剤が硬化して弾性率が上昇する一方、気体発生剤から気体が発生する。弾性率が上昇した粘着剤層中で発生した気体は、高い効率で粘着剤層から放出されて、接着面の少なくとも一部を剥離する。従って、このような両面粘着テープを用いれば、極めて破損しやすい極薄のICチップを製造する場合であっても、両面粘着テープに光を照射することにより、容易にかつ破損させることなくウエハから両面粘着テープを剥離することができる。
【0005】
特許文献1に記載された両面粘着テープにおいては、気体発生剤として特にアゾ化合物が好ましい旨が記載されている。これは、アゾ化合物は取扱いが極めて容易であること、連鎖反応を起こして爆発的に気体を発生することもないため被着体を損傷する危険性がないこと、紫外線の照射を中断すれば気体の発生も中断できることから用途に合わせた接着性の制御が可能であること等の種々の利点があることによる。しかしながら、アゾ化合物は、150℃程度の熱により分解してしまうことから、耐熱性の面では必ずしも充分ではなかった。例えば、上述のICチップの製造方法においては、近年スパッタリングによる金属薄膜形成工程等を行うこともあり、このような工程においてはウエハの表面温度が150℃を超えることも珍しくない。このような高温工程を経る場合には、従来のアゾ化合物を用いた粘着テープでは所期の剥離性を発揮できないこともあった。
【0006】
これに対して、特許文献1には、気体発生剤としてアジド化合物も記載されている。また、特許文献2にも、アジド化合物を含有する剥離性の高い半導体固定用粘着剤が記載されている。アジド化合物は、アゾ化合物に比べて耐熱性に優れることから、アジド化合物を用いれば高温工程を有する用途に使用しても、充分な剥離性能が得られることが期待された。しかしながら、実際には、アジド化合物を用いても充分な剥離性能が得られないという問題があった。
【特許文献1】特開2003−231872号公報
【特許文献2】特開2001−200234号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、高い耐熱性を有し、光を照射することにより被着体を損傷することなく容易に剥がすことができる粘着テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、基材の少なくとも一方の面に粘着剤層を有する粘着テープであって、前記粘着剤層は、ビニル基、アリル基又は下記式(1)で表される基を重合性反応基として2個以上有する光硬化型粘着剤を主成分とし、アジド化合物を含有する粘着テープである。
【0009】
【化1】

式中、R、Rはアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、水素原子、又はハロゲン原子を表す。また、RとRとは同一であっても異なっていてもよい。更に、RとRとは結合した構造であってもよい。
【0010】
以下に本発明を詳述する。
【0011】
気体発生剤を含有する粘着テープにおいて充分な剥離性を発揮させるためには、気体発生時に粘着剤層が硬化しており、発生した気体が高い効率で接着界面に放出されることが重要である。紫外線硬化型粘着剤としては、反応効率に優れることから、(メタ)アクリレート基を重合性反応基とする(メタ)アクリル樹脂が用いられるのが技術常識であった。特許文献1、2においても、少なくとも実施例においては(メタ)アクリル樹脂が用いられている。
本発明者らは、鋭意検討の結果、(メタ)アクリル樹脂にアジド化合物を含有させた場合には、アジド化合物が(メタ)アクリレート基と反応することにより気体発生性能を失ってしまうことを見出した。更に鋭意検討の結果、ビニル基、アリル基又は上記式(1)で表される基(以下、マレイミド基ともいう)を重合性反応基とする光硬化型粘着剤ではアジド化合物との反応性が低く、アジド化合物の気体発生性能を阻害しないことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
本発明の粘着テープは、基材の少なくとも一方の面に粘着剤層を有するものである。
上記粘着剤層は、ビニル基、アリル基又はマレイミド基を重合性反応基として2個以上有する光硬化型粘着剤を主成分とし、アジド化合物を含有する。
【0013】
上記光硬化型粘着剤としては、ビニル基、アリル基又はマレイミド基を重合性反応基とするものであって(メタ)アクリレート基を有しないものであれば特に限定されず、例えば、
ビニル基、アリル基又はマレイミド基を有するモノマーからなる光硬化型粘着剤;ビニル基、アリル基又はマレイミド基を有するオリゴマーからなる光硬化型粘着剤;(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、オレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、天然ゴム、合成ゴム等の主鎖からなり、ビニル基、アリル基又はマレイミド基を主鎖末端及び/又は側鎖有するポリマーからなる光硬化型粘着剤;これらのモノマー、オリゴマー、ポリマーとその他の(メタ)アクリル、エポキシ、ウレタン、ポリエステル、オレフィン、塩化ビニル、天然ゴム、合成ゴム等のオリゴマーやポリマーとの混合物からなる光硬化型粘着剤等が挙げられる。
また、ビニル基、アリル基又はマレイミド基の官能基は単一種でなく、複数の官能基が含まれていてもよい。
【0014】
上記アジド化合物としては特に限定されず、例えば、3−アジドメチル−3−メチルオキセタン、テレフタルアジド、p−tert−ブチルベンズアジド;3−アジドメチル−3−メチルオキセタンを開環重合することにより得られるグリシジルアジドポリマー(GAP)等のアジド基を有するポリマー等が挙げられる。これらのアジド化合物は、主に波長400nm以下の紫外線領域の光を照射することにより窒素ガスを発生する。
【0015】
上記アジド化合物は、上記粘着剤層中に溶解していることが好ましい。上記アジド化合物が粘着剤層中に溶解していることにより、刺激を与えたときにアジド化合物から発生した気体が効率よく粘着剤層の外に放出される。上記アジド化合物が粘着剤層中に粒子として存在すると、粘着剤層が発泡して気体が粘着剤層の外に放出されなかったり、気体を発生させる刺激として光を照射したときに粒子の界面で光が散乱して気体発生効率が低くなってしまったり、粘着剤層の表面平滑性が悪くなったりすることがある。
なお、上記アジド化合物が粘着剤層中に溶解していることは、電子顕微鏡により粘着剤層を観察したときにアジド化合物の粒子が見あたらないことにより確認することができる。
【0016】
上記アジド化合物を粘着剤層中に溶解させるためには、上記粘着剤層を構成する粘着剤に溶解するアジド化合物を選択すればよい。なお、粘着剤に溶解しないアジド化合物を選択する場合には、例えば、分散機を用いたり、分散剤を併用したりすることにより粘着剤層中にアジド化合物をできるかぎり微分散させることが好ましい。粘着剤層中にアジド化合物を微分散させるためには、気体発生剤は、微小な粒子であることが好ましく、更に、これらの微粒子は、例えば、分散機や混練装置等を用いて必要に応じてより細かい微粒子とすることが好ましい。即ち、電子顕微鏡により上記粘着剤層を観察したときに気体発生剤を確認することができない状態まで分散させることがより好ましい。
【0017】
上記アジド化合物の含有量としては特に限定されないが、上記光硬化型粘着剤100重量部に対する好ましい下限が1重量部、好ましい上限は200重量部である。1重量部未満であると、充分な剥離圧力が得られず剥離できないことがあり、200重量部を超えると粘着剤物性に悪影響を及ぼすことがある。より好ましい下限は3重量部、より好ましい上限は100重量部である。
【0018】
上記粘着剤層には、以上の成分のほか、粘着剤としての凝集力の調節を図る目的で、所望によりイソシアネート化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物等の一般の粘着剤に配合される各種の多官能性化合物を適宜配合してもよい。また、帯電防止剤、可塑剤、樹脂、界面活性剤、ワックス、微粒子充填剤等の公知の添加剤を加えることもできる。
また、樹脂の安定性を高めるために熱安定剤、酸化防止剤を配合させてもよい。このような添加剤としては、例えばフェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、有機スズ系安定剤、鉛系安定剤等が挙げられる。これらの添加剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0019】
上記粘着剤層には、また、樹脂の光硬化性をより効果的に発現させるために光重合開始剤を配合させてもよい。このような光重合開始剤としては、例えば、メトキシアセトフェノン等のアセトフェノン誘導体化合物;ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジエチルケタール等のケタール誘導体化合物;フォスフィンオキシド誘導体化合物;ビス(η5−シクロペンタジエニル)チタノセン誘導体化合物、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、クロロチオキサントン、トデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシメチルフェニルプロパン等の光ラジカル重合開始剤が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記光重合開始剤は、上記光硬化型粘着剤がビニル基又はアリル基を重合性反応基として有する場合には、必須である。一方、上記光硬化型粘着剤がマレイミド基を重合性反応基として有する場合には、必須ではない。光重合開始剤を併用しない場合には、光照射時に該光重合開始剤の分解物に起因する臭いが発生しない等の利点もある。
【0020】
上記粘着剤層には、更に、アジド化合物への光による刺激を増幅させる目的、又は、樹脂の光硬化性をより効果的に発現させる目的により光増感剤を配合してもよい。かかる光増感剤を配合することによってより少ない光の照射により気体を放出させることができる。また、光増感剤を配合することによってより広い波長領域の光により気体を放出させることができるので、被着体がポリアミド等のアジド化合物から気体を発生させる波長の光を透過しないものであっても、被着体越しに光を照射して気体を発生させることができ被着体の選択の幅が広がる。
上記光増感剤としては特に限定されないが、例えば、チオキサントン増感剤等が好適である。
【0021】
本発明の粘着テープは、一方の面にのみ粘着剤層が形成された片面粘着テープであってもよく、両面に粘着剤層が形成された両面粘着テープであってもよい。なお、両面粘着テープの場合、アジド化合物は一方の粘着剤層にのみ含有されていてもよく、両方の粘着剤層に含有されていてもよい。
【0022】
上記基材としては特に限定されないが、光を透過又は通過するものであることが好ましく、例えば、アクリル、オレフィン、ポリカーボネート、塩化ビニル、ABS、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、ウレタン、ポリイミド等の透明な樹脂からなるシート、網目状の構造を有するシート、孔が開けられたシート等が挙げられる。
【0023】
本発明の粘着テープを製造する方法としては特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート等の基材上に、上記アジド化合物等を含有する粘着剤等をドクターナイフやスピンコーター等を用いて塗工する等の従来公知の方法を用いることができる。
【0024】
本発明の粘着テープは、被着体が軟弱で破損しやすいものであっても破損させることなく、刺激を与えることにより容易に剥離することができる。また、耐熱性が高くスパッタリング等の高温工程に供した場合にも剥離性能を失うことがない。
本発明の粘着テープは、特にスパッタリング等の高温工程を有するICチップの製造において、研削工程においてウエハを支持板に固定するための両面粘着テープや、ダイシング工程においてウエハを固定するためのダイシングテープに好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、高い耐熱性を有し、光を照射することにより被着体を損傷することなく容易に剥がすことができる粘着テープを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0027】
(実施例1)
<ビニル基を重合性反応基とする光硬化型粘着剤の調製>
下記の化合物を酢酸エチルに溶解させ、紫外線を照射して重合を行い、重量平均分子量40万のアクリル共重合体(1)を得た。
・ブチルアクリレート 79重量部
・エチルアクリレート 15重量部
・アクリル酸 1重量部
・2−ヒドロキシエチルアクリレート 5重量部
・光重合開始剤 0.2重量部(イルガキュア651、50%酢酸エチル溶液)
・ラウリルメルカプタン 0.01重量部
得られたアクリル共重合体(1)を含む酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、ジメチルメタ−イソプロペニルベンジルイソシアネート4.5重量部、反応触媒としてジ−n−ブチル錫ラウレート0.2重量部を加えて反応させポリマー主鎖にビニル基がグラフトされたアクリル共重合体(2)を得た。
更に、反応後のアクリル共重合体(2)を含む酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、ベンゾフェノン0.5重量部、ポリイソシアネート0.3重量部、グリシジルアジドポリマー(GAP5003;日本油脂社製)を10重量部、2,4−ジエチルチオキサントン5重量部を混合して、アジド化合物を含有する光硬化型粘着剤(1)の酢酸エチル溶液を調製した。
更に、反応後のアクリル共重合体(2)を含む酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、ベンゾフェノン0.5重量部、ポリイソシアネート0.3重量部を混合して、光硬化型粘着剤(1’)の酢酸エチル溶液を調製した。
【0028】
<両面粘着テープの作製>
光硬化型粘着剤(1)の酢酸エチル溶液を、両面にコロナ処理を施した厚さ38μmの透明なポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムのコロナ処理を施した面上に乾燥皮膜の厚さが約30μmとなるようにドクターナイフで塗工し、110℃、5分間加熱して溶剤を揮発させ塗工溶液を乾燥させた。乾燥後の粘着剤層は乾燥状態で粘着性を示した。乾燥後の光硬化型粘着剤(1)層の表面に離型処理が施されたPETフィルムをラミネートした。
次に、光硬化型粘着剤(1’)の酢酸エチル溶液を、表面に離型処理が施されたPETフィルムの上に乾燥皮膜の厚さが約50μmとなるようにドクターナイフで塗工し110℃、5分間加熱して溶剤を揮発させ塗工溶液を乾燥させた。乾燥後の粘着剤層は乾燥状態で粘着性を示した。
次いで、光硬化型粘着剤(1)層を設けたコロナ処理を施したPETフィルムの光硬化型粘着剤(1)層のないコロナ処理を施した面と、光硬化型粘着剤(1’)層を設けた離型処理が施されたPETフィルムの光硬化型粘着剤(1’)層の面とを貼り合わせた。その後、40℃、3日間静置して養生を行った。これにより両面に粘着剤層が設けられ、その表面が離型処理が施されたPETフィルムで保護された両面粘着テープを得た。
【0029】
(実施例2)
<アリル基を重合性反応基とする光硬化型粘着剤の調製>
下記の化合物を酢酸エチルに溶解させ、紫外線を照射して重合を行い、重量平均分子量40万のアクリル共重合体(3)を得た。
・ブチルアクリレート 80.5重量部
・エチルアクリレート 15重量部
・アクリル酸 2重量部
・2−ヒドロキシエチルアクリレート 2.5重量部
・光重合開始剤 0.2重量部(イルガキュア651、50%酢酸エチル溶液)
・ラウリルメルカプタン 0.01重量部
得られたアクリル共重合体(3)を含む酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、アリルグリシジルエーテル2.5重量部、反応触媒としてトリエチルアミン0.2重量部を加えて反応させポリマー主鎖にアリルル基がグラフトされたアクリル共重合体(4)を得た。
更に、反応後のアクリル共重合体(4)を含む酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、ベンゾフェノン0.5重量部、ポリイソシアネート0.3重量部、グリシジルアジドポリマー(GAP5003;日本油脂社製)を10重量部、2,4−ジエチルチオキサントン5重量部を混合して、アジド化合物を含有する光硬化型粘着剤(2)の酢酸エチル溶液を調製した。
更に、反応後のアクリル共重合体(4)を含む酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、ベンゾフェノン0.5重量部、ポリイソシアネート0.3重量部を混合して、光硬化型粘着剤(2’)の酢酸エチル溶液を調製した。
【0030】
<両面粘着テープの作製>
光硬化型粘着剤(2)の酢酸エチル溶液を、両面にコロナ処理を施した厚さ38μmの透明なポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムのコロナ処理を施した面上に乾燥皮膜の厚さが約30μmとなるようにドクターナイフで塗工し、110℃、5分間加熱して溶剤を揮発させ塗工溶液を乾燥させた。乾燥後の粘着剤層は乾燥状態で粘着性を示した。乾燥後の光硬化型粘着剤(2)層の表面に離型処理が施されたPETフィルムをラミネートした。
次に、光硬化型粘着剤(2’)の酢酸エチル溶液を、表面に離型処理が施されたPETフィルムの上に乾燥皮膜の厚さが約50μmとなるようにドクターナイフで塗工し110℃、5分間加熱して溶剤を揮発させ塗工溶液を乾燥させた。乾燥後の粘着剤層は乾燥状態で粘着性を示した。
次いで、光硬化型粘着剤(2)層を設けたコロナ処理を施したPETフィルムの光硬化型粘着剤(2)層のないコロナ処理を施した面と、光硬化型粘着剤(2’)層を設けた離型処理が施されたPETフィルムの光硬化型粘着剤(2’)層の面とを貼り合わせた。その後、40℃、3日間静置して養生を行った。これにより両面に粘着剤層が設けられ、その表面が離型処理が施されたPETフィルムで保護された両面粘着テープを得た。
【0031】
(実施例3)
<マレイミド基を重合性反応基とする光硬化型粘着剤の調製>
下記の化合物を酢酸エチルに溶解させ、混合溶液の沸点にて熱重合を行い、重量平均分子量15万のアクリル共重合体(5)を得た。
・ブチルアクリレート 85重量部
・アクリル酸 4.5重量部
・2−ヒドロキシエチルアクリレート 0.5重量部
・(3,4,5,6−Tetrahydrophthalimide)ethyl acrylate 10重量部
・1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン 0.04重量部
・ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル) 0.42重量部
・ラウリルメルカプタン 0.1重量部
更に、反応後のアクリル共重合体(5)を含む酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、ポリイソシアネート0.3重量部、グリシジルアジドポリマー(GAP5003;日本油脂社製)を10重量部、2,4−ジエチルチオキサントン5重量部を混合して、アジド化合物を含有する光硬化型粘着剤(3)の酢酸エチル溶液を調製した。
更に、反応後のアクリル共重合体(5)を含む酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、ポリイソシアネート0.3重量部を混合して、光硬化型粘着剤(3’)の酢酸エチル溶液を調製した。
【0032】
<両面粘着テープの作製>
光硬化型粘着剤(3)の酢酸エチル溶液を、両面にコロナ処理を施した厚さ38μmの透明なポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムのコロナ処理を施した面上に乾燥皮膜の厚さが約30μmとなるようにドクターナイフで塗工し、110℃、5分間加熱して溶剤を揮発させ塗工溶液を乾燥させた。乾燥後の粘着剤層は乾燥状態で粘着性を示した。乾燥後の光硬化型粘着剤(3)層の表面に離型処理が施されたPETフィルムをラミネートした。
次に、光硬化型粘着剤(3’)の酢酸エチル溶液を、表面に離型処理が施されたPETフィルムの上に乾燥皮膜の厚さが約50μmとなるようにドクターナイフで塗工し110℃、5分間加熱して溶剤を揮発させ塗工溶液を乾燥させた。乾燥後の粘着剤層は乾燥状態で粘着性を示した。
次いで、光硬化型粘着剤(3)層を設けたコロナ処理を施したPETフィルムの光硬化型粘着剤(3)層のないコロナ処理を施した面と、光硬化型粘着剤(3’)層を設けた離型処理が施されたPETフィルムの光硬化型粘着剤(3’)層の面とを貼り合わせた。その後、40℃、3日間静置して養生を行った。これにより両面に粘着剤層が設けられ、その表面が離型処理が施されたPETフィルムで保護された両面粘着テープを得た。
【0033】
(比較例1)
<メタアクリレート基を重合性反応基とする光硬化型粘着剤の調製>
下記の化合物を酢酸エチルに溶解させ、紫外線を照射して重合を行い、重量平均分子量70万のアクリル共重合体を得た。
得られたアクリル共重合体を含む酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、2−イソシアナトエチルメタクリレート3.5重量部を加えて反応させ、更に、反応後の酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、ウレタンアクリレート(10官能)(新中村化学工業社製、NKオリゴU324A)30重量部、ポリイソシアネート0.5重量部、光重合開始剤(イルガキュア651)0.1重量部を混合し(メタ)アクリレート基を重合性反応基とする光硬化型粘着剤(4)の酢酸エチル溶液を調製した。
・イソボロニルアクリレート 80重量部
・2−エチルヘキシルアクリレート 20重量部
・アクリル酸 1重量部
・2−ヒドロキシエチルアクリレート 5重量部
・光重合開始剤 0.2重量部(イルガキュア651、50%酢酸エチル溶液)
・ラウリルメルカプタン 0.01重量部
【0034】
光硬化型粘着剤(4)の酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、グリシジルアジドポリマー(GAP5003;日本油脂社製)を10重量部、2,4−ジエチルチオキサントン5重量部を混合して、アジド化合物を含有する光硬化型粘着剤(4’)の酢酸エチル溶液を調製した。
【0035】
<両面粘着テープの作製>
光硬化型粘着剤(4’)の酢酸エチル溶液を、両面にコロナ処理を施した厚さ38μmの透明なポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムのコロナ処理を施した面上に乾燥皮膜の厚さが約30μmとなるようにドクターナイフで塗工し、110℃、5分間加熱して溶剤を揮発させ塗工溶液を乾燥させた。乾燥後の粘着剤層は乾燥状態で粘着性を示した。乾燥後の光硬化型粘着剤(4’)層の表面に離型処理が施されたPETフィルムをラミネートした。
次に、光硬化型粘着剤(4)の酢酸エチル溶液を、表面に離型処理が施されたPETフィルムの上に乾燥皮膜の厚さが約50μmとなるようにドクターナイフで塗工し110℃、5分間加熱して溶剤を揮発させ塗工溶液を乾燥させた。乾燥後の粘着剤層は乾燥状態で粘着性を示した。
次いで、光硬化型粘着剤(4’)層を設けたコロナ処理を施したPETフィルムの光硬化型粘着剤(4’)層のないコロナ処理を施した面と、光硬化型粘着剤(4)層を設けた離型処理が施されたPETフィルムの光硬化型粘着剤(4)層の面とを貼り合わせた。その後、40℃、3日間静置して養生を行った。これにより両面に粘着剤層が設けられ、その表面が離型処理が施されたPETフィルムで保護された両面粘着テープを得た。
【0036】
(比較例2)
比較例1で調製した光硬化型粘着剤(4)の酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)10重量部、2,4−ジエチルチオキサントン3.6重量部、イルガキュア4重量部及びポリイソシアネート0.5重量部を混合して、気体発生剤を含有する粘着剤(4’’)を調製した。
【0037】
<両面粘着テープの作製>
光硬化型粘着剤(4’’)の酢酸エチル溶液を、両面にコロナ処理を施した厚さ38μmの透明なポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムのコロナ処理を施した面上に乾燥皮膜の厚さが約30μmとなるようにドクターナイフで塗工し、110℃、5分間加熱して溶剤を揮発させ塗工溶液を乾燥させた。乾燥後の粘着剤層は乾燥状態で粘着性を示した。乾燥後の光硬化型粘着剤(4’’)層の表面に離型処理が施されたPETフィルムをラミネートした。
次に、光硬化型粘着剤(4)の酢酸エチル溶液を、表面に離型処理が施されたPETフィルムの上に乾燥皮膜の厚さが約50μmとなるようにドクターナイフで塗工し110℃、5分間加熱して溶剤を揮発させ塗工溶液を乾燥させた。乾燥後の粘着剤層は乾燥状態で粘着性を示した。
次いで、光硬化型粘着剤(4’’)層を設けたコロナ処理を施したPETフィルムの光硬化型粘着剤(4’’)層のないコロナ処理を施した面と、光硬化型粘着剤(4)層を設けた離型処理が施されたPETフィルムの光硬化型粘着剤(4)層の面とを貼り合わせた。その後、40℃、3日間静置して養生を行った。これにより両面に粘着剤層が設けられ、その表面が離型処理が施されたPETフィルムで保護された両面粘着テープを得た。
【0038】
(評価)
実施例1〜3及び比較例1、2で作製した両面粘着テープについて、以下の方法により外観の評価及び剥離性の評価を行った。
評価は、ガラスとシリコンウエハを各両面粘着テープを用いて貼り合わせたサンプルを、80℃又は180℃のオーブン中で1時間加熱した後で行った。
【0039】
両面粘着テープのアジド化合物又はアゾ化合物を含有しない側の層を保護するPETフィルムを剥がし、直径20cm、厚さ約750μmのシリコンウエハに貼り付け、一方、アジド化合物又はアゾ化合物を含有する側の層を保護するPETフィルムを剥がし、直径20.4cmのガラス板を真空プレス機を用いて粘着剤層に貼り付けて被着体を作製した。
この被着体をシリコンウエハ側が下になるように設置した後、ガラス板側から超高圧水銀灯を用いて、波長365nmの紫外線をガラス板表面への照射強度が40mW/cmとなるよう照度を調節して照射した。
外観の評価について、ガラス側から目視により観察して、気泡発生、剥離等の異常がない場合を○、気泡発生、剥離等の異常が発生している場合を×とした。
剥離性の評価について、ガラス側から目視により観察して、ガラス板と両面粘着テープとが完全に剥離した場合を〇、剥離しない場合を×とした。ガラス板が剥離できたサンプルでは、ウエハ上に残った両面テープは簡単に引き剥がすことができた。
【0040】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明によれば、高い耐熱性を有し、光を照射することにより被着体を損傷することなく容易に剥がすことができる粘着テープを提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の少なくとも一方の面に粘着剤層を有する粘着テープであって、
前記粘着剤層は、ビニル基、アリル基又は下記式(1)で表される基を重合性反応基として2個以上有する光硬化型粘着剤を主成分とし、アジド化合物を含有する
ことを特徴とする粘着テープ。
【化1】

式中、R、Rはアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、水素原子、又はハロゲン原子を表す。また、RとRとは同一であっても異なっていてもよい。更に、RとRとは結合した構造であってもよい。

【公開番号】特開2007−238801(P2007−238801A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−64013(P2006−64013)
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】