説明

粘着テープ

【課題】被着体の凹凸を十分に埋めることのできる段差追従性を有し、かつ、凹凸を十分に埋めた状態を経時的に保持し得る粘着テープを提供する。
【解決手段】粘着剤層10の20℃における貯蔵弾性率が0.5×10Pa〜1.0×10Paであり、該粘着剤層の20℃〜80℃における損失正接tanδが0.1以上である粘着剤層と基材層20とを備えた粘着テープ。更に、前記粘着剤層が、メタロセン触媒を用いて重合された非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体を含み、該プロピレン−(1−ブテン)共重合体の重量平均分子量(Mw)が、200,000以上であり、該プロピレン−(1−ブテン)共重合体の分子量分布(Mw/Mn)が、2以下である粘着テープ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン、ガリウム、砒素などからなる半導体ウエハは、大径の状態で製造され、表面にパターンを形成した後、裏面を研削して、通常、ウエハの厚さを100〜600μm程度まで薄くし、さらに素子小片に切断分離(ダイシング)され、さらにマウント工程に移される。
【0003】
半導体ウエハの裏面を研削する工程(裏面研削工程)においては、半導体ウエハの表面(パターン面)を保護するために粘着テープが用いられている。当該粘着テープは、通常、裏面研削工程後に剥離される。このような目的で用いられる粘着テープは、裏面研削工程中に剥離しない程度の粘着力が必要である一方、裏面研削工程後には、容易に剥離でき、また半導体ウエハを破損しない程度の低い粘着力であることが要求される。従来、このような粘着テープとして、基材上に粘着剤が塗布された粘着テープが用いられ、例えば、ポリエチレン系樹脂を含む基材上に、アクリル系粘着剤が塗布された粘着剤層を設けた粘着テープが提案されている(特許文献1)。
【0004】
しかし、このような従来の粘着テープは、半導体ウエハのパターン面の凹凸を十分に埋めることができないか、あるいは貼着直後は埋めていたとしても、時間経過とともに粘着テープが浮いて、裏面研削工程に供される際にはやはりパターン面の凹凸を十分に埋めることができていない。このように半導体ウエハのパターン面が十分に埋められていない場合、研削時に半導体ウエハにかかる圧力が不均一となり、半導体ウエハの裏面にパターン面の凹凸の影響がでて、平滑に研削できないという問題が生じたり、半導体ウエハに割れが生じるという問題が生じる。実際の工程においては、粘着テープを貼着した半導体ウエハは、貼着後、所定時間経過してから裏面研削工程に供されることが多く、上記のように時間経過とともに粘着テープが浮いてくる場合も、同様の問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開WO2007/116856号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、被着体の凹凸を十分に埋めることのできる段差追従性を有し、かつ、凹凸を十分に埋めた状態を経時的に保持し得る粘着テープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の粘着テープは、粘着剤層と基材層とを備え、該粘着剤層の20℃における貯蔵弾性率が0.5×10Pa〜1.0×10Paであり、該粘着剤層の20℃〜80℃における損失正接tanδが0.1以上である。
好ましい実施形態においては、前記粘着剤層が、メタロセン触媒を用いて重合された非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体を含み、該非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体の重量平均分子量(Mw)が、200,000以上であり、該非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体の分子量分布(Mw/Mn)が、2以下である。
好ましい実施形態においては、シリコン製半導体ミラーウエハのミラー面に対する、JIS−Z−0237で規定される180°引き剥がし粘着力が0.2N/20mm〜3.0N/20mmである。
好ましい実施形態においては、本発明の粘着テープは、粘着剤層形成材料と基材層形成材料とを共押し出し成形して得られる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、特定の貯蔵弾性率および損失正接tanδを有する粘着剤層を備えることにより、被着体の凹凸を十分に埋めることのできる段差追従性を有し、かつ、凹凸を十分に埋めた状態を経時的に保持し得る粘着テープを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の好ましい実施形態による粘着テープの概略断面図である。
【図2】本発明の粘着テープの段差追従性の指標となる「浮き幅」を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
A.粘着テープの全体構成
図1は、本発明の好ましい実施形態による粘着テープの概略断面図である。粘着テープ100は、粘着剤層10と基材層20とを備える。
【0011】
粘着テープ100の厚みは、好ましくは25μm〜500μmであり、さらに好ましくは60μm〜300μmであり、特に好ましくは130μm〜265μmである。
【0012】
粘着剤層10の厚みは、好ましくは20μm〜100μmであり、さらに好ましくは30μm〜65μmである。
【0013】
基材層20の厚みは、好ましくは5μm〜400μmであり、さらに好ましくは10μm〜300μmであり、特に好ましくは30μm〜200μmである。
【0014】
本発明の粘着テープは、さらに任意の適切な他の層を備え得る。他の層としては、例えば、基材層の粘着剤とは反対側に備えられ、粘着テープに耐熱性を付与し得る表面層が挙げられる。
【0015】
本発明の粘着テープは、セパレータにより保護されて提供され得る。本発明の粘着テープは、セパレータにより保護された状態で、ロール状に巻き取ることができる。セパレータは、実用に供するまで粘着テープを保護する保護材としての機能を有する。セパレータとしては、例えば、シリコン系剥離剤、フッ素系剥離剤、長鎖アルキルアクリレート系剥離剤等の剥離剤により表面コートされたプラスチック(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレン)フィルム、非極性材料(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン)により形成されたフィルム、不織布または紙などが挙げられる。
【0016】
本発明の粘着テープは、例えば、セパレータにより保護されていない場合、粘着剤層とは反対側の最外層に、背面処理を行っていても良い。背面処理は、例えば、シリコン系剥離剤や長鎖アルキルアクリレート系剥離剤等の剥離剤を用いて行うことができる。本発明の粘着テープは、背面処理を行うことにより、ロール状に巻き取ることができる。
【0017】
本発明の粘着テープのシリコン製半導体ミラーウエハのミラー面に対する、JIS−Z−0237で規定される180°引き剥がし粘着力は、好ましくは0.2N/20mm〜3.0N/20mmであり、さらに好ましくは0.4N/20mm〜2.5N/20mmであり、特に好ましくは0.4N/20mm〜2.0N/20mmである。このような範囲であれば、粘着性と剥離性が両立でき、例えば、半導体ウエハの裏面研削工程における研削加工中には剥離せず、研削加工後には容易に剥離することができる粘着テープを得ることができる。なお、本明細書において、上記粘着力は、粘着テープ製造後、50℃で2日間エージングした後に、JIS−Z−0237に準じた方法(貼り合わせ条件:2kgローラー1往復、剥離速度:300mm/min、剥離角度180°)により測定した粘着力をいう。
【0018】
本明細書において、粘着テープの段差追従性の指標として、「浮き幅」を用いる。「浮き幅」とは、図2に示すように、段差xを有する被着体200に粘着テープ100を貼着した際に、当該粘着テープが浮いて被着体200と接さない部分の幅aを意味する。当該浮き幅が小さいということは、粘着テープが段差追従性に優れ被着体の凹凸を良好に埋め得ることを意味する。
【0019】
本発明の粘着テープをシリコン製半導体ミラーウエハに貼着した際の、貼着直後における、本発明の粘着テープの段差30μmの被着体に対する浮き幅は、好ましくは420μm以下であり、さらに好ましくは5μm〜300μmであり、特に好ましくは10μm〜220μmである。本発明の粘着テープは、浮き幅が小さく、すなわち、被着体の凹凸(例えば、半導体ウエハのパターン)に対して追従性がよく、当該凹凸を良好に埋めることができる。このような粘着テープが半導体ウエハ加工時のパターン面保護に用いられる場合、裏面研削工程時に、半導体ウエハに圧力が均一にかかり、半導体ウエハの裏面にパターン面の凹凸の影響がでることなく、平滑に研削することができる。また、半導体ウエハの割れを防止することができる。さらに、半導体ウエハと粘着テープとの間に研削水が浸入することを防止することができる。
【0020】
本発明の粘着テープをシリコン製半導体ミラーウエハに貼着した際の、貼着後の1時間における、段差30μmに対する浮き幅の増加量は、好ましくは10%以内であり、さらに好ましくは5%以内である。このような範囲であれば、粘着テープを半導体ウエハに貼着した後、所定時間経過してから、半導体ウエハが裏面研削工程に供される場合にも、半導体ウエハのパターン面の凹凸を良好に埋めた状態を維持し、上記のように平滑に裏面を研削し得、また、半導体ウエハの割れを防ぐことができる。上記粘着テープは、貼着してから1時間経過した以降は、浮き幅が増加しないことが特に好ましい。
【0021】
本発明の粘着テープをシリコン製半導体ミラーウエハに貼着した際の、貼着して1時間経過後における、本発明の粘着テープの段差30μmの被着体に対する浮き幅は、好ましくは470μm以下であり、さらに好ましくは10μm〜350μmであり、特に好ましくは20μm〜300μmであり、最も好ましくは30μm〜250μmである。
【0022】
B.粘着剤層
上記粘着剤層の20℃における貯蔵弾性率(G’)は、0.5×10Pa〜1.0×10Paであり、好ましくは0.8×10Pa〜3.0×10Paである。上記粘着剤層の貯蔵弾性率(G’)がこのような範囲であれば、段差追従性に優れる粘着テープを得ることができる。より具体的には、上記のように浮き幅の小さい粘着テープを得ることができる。このような粘着テープを半導体ウエハの加工における裏面研削工程に用いれば、上記のように、平滑に裏面を研削し得、また、半導体ウエハの割れを防ぐことができる。また、上記粘着剤層の貯蔵弾性率(G’)が上記範囲であれば、表面に凹凸を有する被着体に対する十分な粘着力と適度な剥離性とを両立し得る粘着テープを得ることができる。なお、本発明における貯蔵弾性率(G’)は、動的粘弾性スペクトル測定により、測定することができる。
【0023】
上記粘着剤層の20℃〜80℃における損失正接tanδは、0.1以上であり、好ましくは0.2以上であり、さらに好ましくは0.2〜1である。粘着剤層の20℃における損失正接tanδは、好ましくは0.1〜0.5であり、さらに好ましくは0.1〜0.25である。粘着剤層の80℃における損失正接tanδは、好ましくは0.2〜1.0であり、さらに好ましくは0.45〜1であり、特に好ましくは0.5〜1である。
【0024】
このように、高温領域において高い損失正接tanδを有する粘着剤層は、高温領域において粘着力が高く、かつ、変形し難い。ここで、高温領域での粘着剤層の変形し難さは、時間−温度換算則の理論により、室温下で時間経過とともに生じる粘着剤層の緩やかな変形に置き換えて考察することができる。すなわち、上記のように高温領域で高い損失正接tanδを有する粘着剤層は、室温下での緩やかな変形(具体的には、浮き幅が時間経過とともに増加する現象)が抑制されていると考えられる。したがって、上記粘着剤層の損失正接tanδが上記のような範囲であれば、貼着してから所定時間経過後も、浮き幅の小さい、すなわち、被着体の凹凸を良好に埋めた状態を維持し得る粘着テープを得ることができる。
【0025】
上記粘着剤層を構成する材料としては、上記所望の特性が得られる限りにおいて任意の適切な材料が採用され得る。代表的には、粘着剤層は、ポリオレフィン系樹脂を含む。
【0026】
上記粘着剤層は、好ましくは、非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体を含む。このような粘着剤層であれば、基材層との共押し出し成形により粘着テープを製造することが可能であり、少ない工程数で、かつ、有機溶剤を使用することなく粘着テープを得ることができる。なお、本明細書において、「非晶質」とは、結晶質のように明確な融点を有さない性質をいう。
【0027】
上記非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体は、メタロセン触媒を用いて、プロピレンと1−ブテンとを重合することにより得ることができる。より詳細には、非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体は、例えば、メタロセン触媒を用いてプロピレンと1−ブテンとを重合させる重合工程を行い、当該重合工程の後、触媒残さ除去工程、異物除去工程等の後処理工程を行うことにより、得ることができる。非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体は、このような工程を経て、例えば、パウダー状、ペレット状等の形状で得られる。メタロセン触媒としては、例えば、メタロセン化合物とアルミノキサンとを含むメタロセン均一混合触媒、微粒子状の担体上にメタロセン化合物が担持されたメタロセン担持型触媒等が挙げられる。
【0028】
上記のようにメタロセン触媒を用いて重合された非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体は、狭い分子量分布を示す。上記非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは2以下であり、さらに好ましくは1.1〜2であり、特に好ましくは1.2〜1.9である。分子量分布が狭い非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体は低分子量成分が少ないので、このような非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体を用いれば、低分子量成分のブリードによる被着体の汚染を防止し得る粘着テープを得ることができる。このような粘着テープは、例えば、半導体ウエハ加工用として好適に用いられる。
【0029】
上記非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体における、プロピレン由来の構成単位の含有割合は、好ましくは80モル%〜99モル%、さらに好ましくは85モル%〜99モル%であり、特に好ましくは90モル%〜99モル%である。
【0030】
上記非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体における、1−ブテン由来の構成単位の含有割合は、好ましくは1モル%〜15モル%、さらに好ましくは1モル%〜10モル%である。このような範囲であれば、靭性と柔軟性とのバランスに優れ、上記浮き幅の小さい粘着テープを得ることができる。
【0031】
上記非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体は、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよい。
【0032】
上記非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは200,000以上であり、さらに好ましくは200,000〜500,000であり、特に好ましくは200,000〜300,000である。非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体の重量平均分子量(Mw)がこのような範囲であれば、一般的なスチレン系熱可塑性樹脂、アクリル系熱可塑性樹脂(Mwが100,000以下)と比較して、低分子量成分が少なく、被着体の汚染を防止し得る粘着テープを得ることができる。また、共押し出し成形の際、加工不良なく粘着剤層を形成することができ、かつ、適切な粘着力を得ることができる。
【0033】
上記非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体の230℃、2.16kfgfにおけるメルトフローレートは、好ましくは1g/10min〜50g/10minであり、さらに好ましくは5g/10min〜30g/10minであり、特に好ましくは5g/10min〜20g/10minである。非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体のメルトフローレートがこのような範囲であれば、共押し出し成形により、加工不良なく厚みの均一な粘着剤層を形成することができる。メルトフローレートは、JISK7210に準じた方法により測定することができる。
【0034】
上記非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体は、本発明の効果を損なわない範囲で、さらにその他のモノマー由来の構成単位を含んでいてもよい。その他のモノマーとしては、例えば、エチレン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィンが挙げられる。
【0035】
好ましくは、上記粘着剤層は、F、Cl、Br、NO、NO、SO2−、Li、Na、K、Mg2+、Ca2+、NHを実質的に含まない。被着体を当該イオンで汚染することを防止することができるからである。このような粘着剤層を備える粘着テープは、例えば、半導体ウエハ加工用に用いられる場合、回路の断線または短絡等を生じさせることがない。上記イオンを含まない粘着剤層は、例えば、当該粘着剤層に含まれる非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体を上記のようにメタロセン触媒を用いて溶液重合することにより得ることができる。当該メタロセン触媒を用いた溶液重合においては、非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体は、重合溶媒とは異なる貧溶媒を用いて析出単離(再沈殿法)を繰り返して、精製することができるので、上記イオンを含まない粘着剤層を得ることができる。なお、本明細書において、「F、Cl、Br、NO、NO、SO2−、Li、Na、K、Mg2+、Ca2+、NHを実質的に含まない」とは、標準的なイオンクロマトグラフ分析(例えば、ダイオネクス社製、商品名「DX−320」、「DX−500」を用いたイオンクロマトグラフ分析)において検出限界未満であることをいう。具体的には、粘着剤層1gに対して、F、Cl、Br、NO、NO、SO2−およびKがそれぞれ0.49μg以下、LiおよびNaがそれぞれ0.20μg以下、Mg2+およびCa2+がそれぞれ0.97μg以下、NHが0.5μg以下である場合をいう。
【0036】
上記粘着剤層は、粘着剤層の粘着力(結果として、上記粘着テープの粘着力)および上記貯蔵弾性率を調整するために、結晶性ポリプロピレン系樹脂を含んでいてもよい。結晶性ポリプロピレン系樹脂を含有することにより、上記粘着力を低下させ、上記貯蔵弾性率を増加させることができる。結晶性ポリプロピレン系樹脂の含有割合は、所望とする粘着力および貯蔵弾性率に応じて任意の適切な割合に設定され得る。結晶性ポリプロピレン系樹脂の含有割合は、好ましくは、上記非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体と当該結晶性ポリプロピレン系樹脂との合計重量に対して、好ましくは0重量%〜45重量%であり、さらに好ましくは0重量%〜40重量%であり、特に好ましくは0重量%〜20重量%である。
【0037】
上記結晶性ポリプロピレン系樹脂は、ホモポリプロピレンであってもよく、プロピレンと、プロピレンと共重合可能なモノマーとにより得られる共重合体であってもよい。プロピレンと共重合可能なモノマーとしては、例えば、例えば、エチレン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン等が挙げられる。
【0038】
上記結晶性ポリプロピレン系樹脂は、好ましくは、上記非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体同様、メタロセン触媒を用いて重合することにより得られる。このようにして得られた結晶性ポリプロピレン系樹脂を用いれば、低分子量成分のブリードによる被着体の汚染を防止することができる。
【0039】
上記結晶性ポリプロピレン系樹脂の結晶化度は、好ましくは10%以上、さらに好ましくは20%以上である。結晶化度は、代表的には、示差走査熱量分析(DSC)またはX線回折により求められる。
【0040】
上記粘着剤層は、本発明の効果を損なわない範囲で、さらにその他の成分を含んでいてもよい。当該その他の成分としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤等が挙げられる。その他の成分の種類および使用量は、目的に応じて適切に選択され得る。
【0041】
C.基材層
上記基材層を構成する材料としては、任意の適切な材料が採用され得る。基材層を構成する材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂;ポリイミド(PI);エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA);ポリエーテルエーテルケトン(PEEK);ポリ塩化ビニル(PVC)等のポリ塩化ビニル系樹脂;ポリスチレン系樹脂;アクリル系樹脂;フッ素系樹脂;セルロース系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;金属;紙等が挙げられる。基材層は、同種または異種の材料からなる多層構造であってもよい。
【0042】
上記基材層は、本発明の効果を損なわない範囲で、さらにその他の成分を含んでいてもよい。当該その他の成分としては、例えば、上記B項で説明した粘着剤層に含まれ得るその他の成分と同様の成分が用いられ得る。
【0043】
D.粘着テープの製造方法
本発明の粘着テープは、好ましくは、上記粘着剤層および上記基材層の形成材料が共押し出し成形されて製造される。共押し出し成形により、層間の接着性が良好な粘着テープを、少ない工程数で、かつ、有機溶剤を使用することなく製造することができる。
【0044】
上記共押し出し成形において、上記粘着剤層および上記基材層の形成材料は、上記の各層の成分を任意の適切な方法で混合した材料が用いられ得る。
【0045】
上記共押し出し成形の具体的方法としては、例えば、ダイスに連結した少なくとも2台の押出し機のうち、1台に粘着剤層形成材料を、別の1台に基材層形成材料を、それぞれ供給し、溶融後、押出し、タッチロール成形法により引き取り、積層体を成形する方法が挙げられる。押し出しの際、各形成材料が合流する部分は、ダイス出口(ダイスリップ)に近いほど好ましい。ダイス内で各形成材料の合流不良が生じ難いからである。したがって、上記ダイスとしては、マルチマニホールド形式のダイスが好ましく用いられる。なお、合流不良が生じた場合、合流ムラ等の外観不良、具体的には押し出された粘着剤層と基材層との間で波状の外観ムラが発生して好ましくない。また、合流不良は、例えば、異種形成材料のダイス内における流動性(溶融粘度)の差が大きいこと、および各層の形成材料のせん断速度の差が大きいことを原因として生じるので、マルチマニホールド形式のダイスを用いれば、流動性の差がある異種形成材料について、他の形式(例えば、フィードブロック形式)よりも、材料選択の範囲が拡がる。各形成材料の溶融に用いる押出し機のスクリュータイプは単軸または2軸であってもよい。押し出し機は、3台以上であってもよい。押し出し機が3台以上の場合、さらにその他の層の形成材料を供給することができる。また、3台以上の押し出し機を用いて、2層構造(基材層+粘着剤層)の粘着テープを製造する場合、同一の形成材料を隣り合う2台以上の押し出し機に供給すればよく、例えば、3台の押し出し機を用いる場合は、隣り合う2台の押し出し機に同一の形成材料が供給され得る。
【0046】
上記共押し出し成形における成形温度は、好ましくは160℃〜220℃であり、さらに好ましくは170℃〜200℃である。このような範囲であれば、成形安定性に優れる。
【0047】
上記粘着剤層形成材料と上記基材層形成材料との、温度180℃、せん断速度100sec−1におけるせん断粘度の差(粘着剤形成材料−基材層形成材料)は、好ましくは−150Pa・s〜600Pa・sであり、さらに好ましくは−100Pa・s〜550Pa・sであり、特に好ましくは−50Pa・s〜500Pa・sである。このような範囲であれば、上記粘着剤形成材料および基材層形成材料のダイス内での流動性が近く、合流不良の発生を防止することができる。なお、せん断粘度は、ツインキャピラリー型の伸長粘度計により測定することができる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。また、実施例において、特に明記しない限り、「部」および「%」は重量基準である。
【0049】
[実施例1]
粘着剤層形成材料として、メタロセン触媒により重合した非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体(住友化学社製、商品名「タフセレンH5002」:プロピレン由来の構成単位90モル%/1−ブテン由来の構成単位10モル%、Mw=230,000、Mw/Mn=1.8)を用いた。
基材層形成材料として、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)(三井デュポン社製、商品名「エバフレックスP−1007」)を用いた。
上記粘着剤形成材料と、基材層形成材料とをそれぞれの押し出し機に投入し、Tダイ溶融共押し出し(押し出し機:ジー・エム・エンジニアリング社製、商品名「GM30−28」/Tダイ:フィードブロック方式;押出温度180℃)を行い、溶融状態の樹脂とタッチロール成形部へ通紙したSi塗布PETセパレータ(三菱化学社製、商品名「ダイアホイルMRF」:38μm)とを積層した後、冷却し、粘着剤層の厚みが45μm、基材層の厚みが160μmの粘着テープを得た。なお、各層の厚みは、Tダイ出口の形状により制御した。
【0050】
[実施例2]
粘着剤層形成材料として、メタロセン触媒により重合した非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体(住友化学社製、商品名「タフセレンH5002」:プロピレン由来の構成単位90モル%/1−ブテン由来の構成単位10モル%、Mw=230,000、Mw/Mn=1.8)80部と、メタロセン触媒により重合した結晶性ポリプロピレン系樹脂(日本ポリプロピレン社製、商品名「WINTEC WFX4」、Mw=363,000、Mw/Mn=2.87)20部との混合物を用いた。
基材層形成材料として、エチレン−酢酸ビニル共重合体(三井デュポン社製、商品名「エバフレックスP−1007」)を用いた。
上記粘着剤形成材料と、基材層形成材料とをそれぞれの押し出し機に投入し、Tダイ溶融共押し出し(押し出し機:ジー・エム・エンジニアリング社製、商品名「GM30−28」/Tダイ:フィードブロック方式;押出温度180℃)を行い、溶融状態の樹脂とタッチロール成形部へ通紙したSi塗布PETセパレータ(三菱化学社製、商品名「ダイアホイルMRF」:38μm)とを積層した後、冷却し、粘着剤層の厚みが45μm、基材層の厚みが160μmの粘着テープを得た。
【0051】
[実施例3]
非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体の混合量を80部に代えて60部とし、結晶性ポリプロピレン系樹脂の混合量を20部に代えて40部とした以外は、実施例2と同様にして粘着テープを得た。
【0052】
[比較例1]
非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体の混合量を80部に代えて50部とし、結晶性ポリプロピレン系樹脂の混合量を20部に代えて50部とした以外は、実施例2と同様にして粘着テープを得た。
【0053】
[比較例2]
アクリル酸ブチル100部とアクリル酸5部とを共重合して得られた共重合体(重量平均分子量:900,000、固形分:20%)100部、架橋剤としてイソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン社製、商品名「コロネートL」)2部、エポキシ系架橋剤(三菱ガス社製、商品名「テトラッドC」)1部とを配合して粘着剤層形成材料を調製した。
シリコン剥離処理したポリエステルフィルム(厚み:38μm)に、当該粘着剤層形成材料を、乾燥後の厚みが45μmとなるように塗布し、120℃で2分間乾燥して、アクリル系粘着剤を得た。
その後、エチレン−酢酸ビニル共重合体を形成材料とする基材層(厚み:160μm)に上記アクリル系粘着剤を転写して、粘着テープを得た。
【0054】
[評価]
実施例および比較例で得られた粘着テープを以下の評価に供した。結果を表1に示す。
(1)粘着力(剥離速度300mm/min)
得られた粘着テープを50℃にて2日間エージングした後、4インチ半導体ウエハのミラー面(シリコン製)、JIS Z 0237(2000)に準じた方法(貼り合わせ条件:2kgローラー1往復、剥離速度:300mm/min、剥離角度180°)により測定した。
(2)浮き幅
半導体ウエハ(シリコン製)上に、厚さ30μm幅2cmのアルミプレートを置いた。このアルミプレートを横切るように、長さ10cm幅2cmにカットした粘着テープを貼りつけ(2kgローラー1往復)、段差30μmに対する浮き幅を顕微鏡にて観察して測定した。浮き幅は、粘着テープ貼りつけ直後、および貼りつけて1時間経過後について測定した。
(3)貯蔵弾性率(G’)
粘着剤層の貯蔵弾性率は、動的粘弾性スペクトル測定器(レオメトリックサイエンティフィック社製、商品名「ARES」)を用いて、周波数10Hz、昇温速度5℃/分で−50℃〜100℃の範囲で測定した。
(4)損失正接tanδ
上記貯蔵弾性率(G’)と同様の条件にて、貯蔵弾性率(G’)および損失弾性率(G’’)を測定し、下記式により粘着剤層の20℃および80℃における損失正接tanδを算出した。
損失正接tanδ=損失弾性率(G’’)/貯蔵弾性率(G’)
【0055】
(5)分子量測定
実施例および比較例1で用いたメタロセン触媒により重合した非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体(住友化学社製、商品名「タフセレンH5002」)、比較例3で用いた共重合体の分子量は、以下のようにして測定した。すなわち、試料を1.0g/lのTHF溶液に調整して一晩静置した後、孔径0.45μmのメンブランフィルターでろ過し、得られたろ液をTOSOH社製のHLC−8120GPCにて、以下の条件で測定し、ポリスチレン換算により算出した。
カラム:TSKgel SuperHZM−H/HZ4000/HZ3000/HZ2000
カラムサイズ:6.0mmI.D.×150mm
カラム温度:40℃
溶離液:THF
流量:0.6ml/min
注入量:20μl
検出器:RI (示差屈折率検出器)
また、実施例2〜3および比較例1で用いたメタロセン触媒により重合した結晶性ポリプロピレン系樹脂(日本ポリプロピレン社製、商品名「WINTEC WFX4」)の分子量は、以下のようにして測定した。すなわち、試料を0.10%(w/w)o−ジクロロベンゼン溶液を調整して、140℃で溶解した後、その溶液を孔径が1.0μmの焼結フィルターでろ過し、得られたろ液をWaters社製ゲル浸透クロマトグラフAlliance GPC 2000型にて、以下の条件で測定し、ポリスチレン換算により算出した。
カラム:TSKgel GMH−HT,TSKgel GMH−HTL
カラムサイズ:7.5mmI.D.×300mmそれぞれ2本
カラム温度:140℃
溶離液:o−ジクロロベンゼン
流量:1.0ml/min
注入量:0.4ml
検出器:RI (示差屈折率検出器)
【0056】
【表1】

【0057】
表1から明らかなように、本発明の粘着テープは、粘着剤層が特定の貯蔵弾性率を有することにより浮き幅が小さく、また、特定の損失正接tanδを有することにより浮き幅の増加率が小さい。このような粘着テープは、被着体の凹凸(例えば、半導体ウエハのパターン)に対して追従性がよく、当該凹凸を良好に埋めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の粘着テープは、例えば、半導体装置製造の際のワーク(半導体ウエハ等)の保護に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0059】
10 粘着剤層
20 基材層
100 粘着テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤層と基材層とを備え、
該粘着剤層の20℃における貯蔵弾性率が0.5×10Pa〜1.0×10Paであり、該粘着剤層の20℃〜80℃における損失正接tanδが0.1以上である、粘着テープ。
【請求項2】
前記粘着剤層が、メタロセン触媒を用いて重合された非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体を含み、該非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体の重量平均分子量(Mw)が、200,000以上であり、該非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体の分子量分布(Mw/Mn)が、2以下である、請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項3】
シリコン製半導体ミラーウエハのミラー面に対する、JIS−Z−0237で規定される180°引き剥がし粘着力が0.2N/20mm〜3.0N/20mmである、請求項1または2に記載の粘着テープ。
【請求項4】
粘着剤層形成材料と基材層形成材料とを共押し出し成形して得られる、請求項1から3のいずれかに記載の粘着テープ。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−193295(P2012−193295A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58944(P2011−58944)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】