説明

粘着フィルム

【課題】
表面が平滑な被着体に対しても、適度な粘着強度と安定した剥離性を有し、粘着強度の経時変化の少ない粘着フィルムを提供する。
【解決手段】
基材層及び粘着層からなる粘着フィルムにおいて、前記粘着層がメタロセン系触媒の存在下で製造された密度0.88〜0.91g/cm3のエチレン−α−オレフィン共重合体85〜99質量%及びスチレン−イソブチレン系ブロック系共重合体1〜5質量%からなり、前記基材層が低密度ポリエチレン樹脂からなり、かつ、厚さの割合が前記基材層:前記粘着層=70〜90:10〜30であることを特徴とする粘着フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着フィルムに関し、さらに詳しくは、金属、ガラス、プラスチックなどの成形品、加工品、塗装物等、特に表面粗度の低い被着面に対して粘着させることで、被着面の傷や汚れを防護し、使用時には容易に剥離することができる粘着フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
(背景技術)表面に装飾や艶を有する被着体では、使用時まで表面を防護するために粘着フィルムが仮着され、運搬や保管などの後、粘着フィルムを剥離して使用される。例えば、合成樹脂板、金属板、化粧合板や、各種銘板などの様々な被着体がある。
このために、粘着フィルムには、被着体表面に対する適度の粘着性、表面を傷付けない程度の柔軟性、耐食性および環境に対する抵抗性を必要とする。
また、粘着フィルムは大量に消費され、使用後は剥離されて廃棄されるので安価に製造でき、かつ、使用後に焼却処理しても環境負荷の低いことも要求される。
さらに、これらの物性が経時や温度によって変化が少なく、塗装板の加工時にも伸び、スクラッチ、機械的強度、耐熱性も必要である。
従来、被着体には、意匠性などが付与された場合や、表面に凹凸がある場合や、また汚れ防止加工処理が施されている場合が多く、プラスチックフィルムに粘着剤を塗布した粘着フィルムを用いるのが一般的である。
また、粘着フィルムは、通常、数百〜数千mの長さをロール状に巻き上げた巻取状態で製造され、後加工、保管、流通されるが、この粘着フィルムを巻取状からの巻き戻す際に、基材層と隣接する粘着層の間の剥離性が悪いと、巻き戻しにくく、甚だしい場合には粘着層が接する基材層側の表面に移行し残存したり、粘着フィルムが破断してしまう。
また、この粘着フィルムは、屋内屋外暴露や高温保存下においては、その粘着強度が経時変化によって上昇し、剥離が困難となる場合があった。
よって、特に、表面が平滑な被着体に対して適度な粘着強度と安定した剥離性を有し、強度の経時変化の少ない粘着フィルムが求められている。
【0003】
(先行技術) 而して、適度な粘着強度(剥離強度)と剥離時に剥離速度を変えても安定した剥離強度を有し(剥離速度依存性が少ない)、粘着強度の経時変化の少ない粘着フィルムとしては、非晶性オレフィン共重合体(a);20〜80質量部、結晶性オレフィン系重合体(b);3〜30質量部およびスチレン系ブロックまたは結晶性オレフィンブロックを有するブロック共重合体(c);10〜50質量部〔(a)(b)および(c)の合計で100質量部とする〕からなる粘着層を有し、当該粘着層の表面がRa=4.5μmのメタクリル樹脂の製樹脂板からなる被着面に対する粘着強度が450〜800N/50mmであるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、初期接着性および屋外暴露後や高温保存後における経時においても剥離性を満足しうる良好な接着性を有し、屋外暴露後や高温保存後における剥離性にも優れ、かつ良好な応力緩和性を有する粘着剤層を形成しうる粘着剤からなる粘着剤層が、基材の少なくとも片面に形成されている粘着シートとしては、(A)プロピレン、炭素数4〜12のα−オレフィンおよびエチレンを共重合成分として含むプロピレン系共重合体、ならびに、(B)エチレン−酢酸ビニル共重合体、結晶性オレフィンブロックを有するC−B−C型熱可塑性エラストマーの水素添加物、ホモポリプロピレン、エチレン/α−オレフィン二元共重合体、プロピレン/α−オレフィン二元共重合体、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンおよび線状(リニア)低密度ポリエチレンから選択されるいずれか少なくとも1種以上の樹脂、を含有してなる粘着剤を用いることが知られている(例えば、特許文献2参照)。
さらに、高剛性で耐熱性が高く、このため高温使用時のフィルムのしわや縮みがなく、かつ巻戻時のブロッキング力が小さく、しかも初期粘着力が高く貼付後の粘着強度の経時変化が小さい低コストの表面保護フィルムとしては、基材層の片側に表面層、反対側に粘着層が積層されたフィルムとしてロール状に巻かれて製品とされ、使用に際して巻戻し、粘着層の粘着力により被着体に貼着され、かつ剥離が可能な表面保護フィルムであって、基材層がポリプロピレンを主成分とする樹脂からなり、表面層がポリエチレンを主成分とする樹脂からなり、粘着層が炭素数2〜12のα−オレフィンの共重合体を主成分とする粘着材からなるフィルムの巻戻力が200g/25mm以下である表面保護フィルムが知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−76127号公報
【特許文献2】特開2002−226814号公報
【特許文献3】特開平11−21519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1〜3に記載されている粘着フィルムは、屋内屋外暴露や高温保存下において粘着強度の経時変化による上昇があり、剥離が困難となる恐れがあるという問題点があった。
そこで、上記のような問題点を解決するために、本発明の目的は、表面が平滑な被着体に対しても、適度な粘着強度と安定した剥離性を有し、粘着強度の経時変化の少ない粘着フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記の課題を解決するために、鋭意研究を進めた結果、以下に示す粘着フィルムを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、請求項1の発明に係わる粘着フィルムは、基材層及び粘着層からなる粘着フィルムにおいて、前記粘着層がメタロセン系触媒の存在下で製造された密度0.88〜0.91g/cm3のエチレン−α−オレフィン共重合体85〜99質量%及びスチレン−イソブチレン系ブロック共重合体1〜5質量%からなり、前記基材層が低密度ポリエチレン樹脂からなり、かつ、厚さの割合が前記基材層:前記粘着層=70〜90:10〜30であるように、したものである。
また、請求項2の発明に係わる粘着フィルムは、上記スチレン−イソブチレン系ブロック共重合体が、ビニル芳香族化合物重合体ブロック(A)、イソブチレン重合体もしくはビニル芳香族化合物とイソブチレンのランダム共重合ブロック(B)、ビニル系芳香族化合物とイソブチレンのうちビニル芳香族化合物が漸増するテーパーブロック(C)、の少なくともブロック(A)とブロック(B)とを含む(A)−(B)ブロック共重合体、(A)−(B)−(A)ブロック共重合体、(A)−(B)−(C)ブロック共重合体から選択したブロック共重合体のいずれか、または複数から構成され、かつ上記ビニル芳香族化合物が、スチレン及び/又はα−メチルスチレンであるように、したものである。
更にまた、請求項3の発明に係わる粘着フィルムは、上記基材層が中間層及び背面層からなり、前記中間層の厚みが全体厚さの50%以上を占め、該中間層に着色剤が添加され、かつ、インフレーション法による製造されてなるように、したものである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1〜2の本発明によれば、製造や後加工では巻き戻し易く、屋内屋外暴露や高温保存下においても、その粘着強度が経時変化による上昇がなく、剥離性が良好となることを見出した。
特に、表面が平滑な被着体に対してでも、適度な粘着強度と安定した剥離性を有し、強度の経時変化の少ない粘着フィルムが提供される。
尚、本発明の粘着フィルムによれば、初期粘着力、及び高温下や長期間の保存においても、粘着力としては、平滑なメタクリル樹脂面に対する粘着強度を0.05〜0.5N/25mmの範囲内とすることができるため、平滑な被着体に対してでも、適度な粘着強度と安定した剥離性を有し、強度の経時変化の少ない粘着フィルムが提供される。
また、巻き戻し力についても、本発明の粘着フィルムによれば、0.1N/25mm未満とすることができるため、製造や後加工等での巻き戻しをし易くすることができる粘着フィルムが提供される。
また、請求項3の本発明によれば、より低温度で製造でき、材料の架橋や酸化が抑制されるため、フィッシュアイ(フィルム製造の際、未溶融や組成物の練り込みムラなどから発生する異物のこと)などの少ない、外観のよい粘着フィルムが提供される。
更にまた、成膜と同時に着色できるので、製造コストが抑えられ、中間層を着色することで、他への色移りがなく、かつ、被着体への貼り忘れや、使用時の剥離忘れを防止することができる粘着フィルムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の1実施例を示す粘着フィルムの断面図である。
【図2】本発明の1実施例を示す粘着フィルムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。
(粘着フィルム)
本発明の粘着フィルム10は、図1に示すように、粘着層13及び基材層11からなる。粘着層13は、メタロセン系触媒の存在下で製造された密度0.88〜0.91g/cm3のエチレン−α−オレフィン共重合体85〜99質量%及びスチレン−イソブチレン系ブロック共重合体1〜5質量%からなり、基材層11は、低密度ポリエチレン樹脂からなる。
【0010】
(基材層)
基材層11としては、低密度ポリエチレン樹脂を用いる。
基材層11に低密度ポリエチレン樹脂を用いることで、粘着層と基材層の剥離力を安定化させることができる。
低密度ポリエチレン樹脂としては、例えば、連続反応装置等を用いて、圧力、1200〜3000atm、温度、130〜350℃等の高圧高温下で、開始剤としては、酸素あるいは有機過酸化物等を使用し、まず、段階的圧縮、ラジカル開始剤の導入、エチレンの部分的重合、ポリエチレンからエチレンの分離、溶融ポリエチレンの押し出し、最後にエチレンの冷却等の工程を経て、重合時間を短くして製造される高圧法低密度ポリエチレンを使用することができる。なお、本発明において、上記のような高圧法低密度ポリエチレンとしては、エチレンの単独重合体、あるいは、エチレンと、例えば、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、デセン等のα−オレフィンとの共重合体等を使用することができる。而して、本発明において、上記の高圧法低密度ポリエチレンの物性としては、例えば、密度、0.905〜0.935g/cm3 、メルトフロ−レ−ト(MFR)、0.1〜3.0g/10分位の特性を有するものを使用することが好ましいものである。なお、本発明においては、上記の高圧法低密度ポリエチレンには、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤(脂肪酸アミド等)、難燃化剤、無機ないし有機充填剤、染料、顔料等を任意に添加して使用することができる。
また、基材層11としては、図2に示すように、複数層としてもよく、例えば、背面層21と中間層23の2層としてもよい。
好ましくは、中間層23の厚さを基材層厚さの50%以上を占めさせるようにして、該中間層23に着色剤がを添加することで、成膜と同時に着色できるので、一石二鳥である。
また、中間層を着色することで、粘着フィルム10の貼り忘れや、剥離を忘れるのを防止することができる。
【0011】
(粘着層)
粘着層13は、メタロセン系触媒の存在下で製造された密度0.88〜0.91g/cm3のエチレン−α−オレフィン共重合体85〜99質量%及びスチレン−イソブチレン系ブロック共重合体1〜5質量%からなる。
【0012】
(エチレン−α−オレフィン共重合体)
粘着層13に用いる、エチレン−α−オレフィン共重合体としては、メタロセン触媒の存在下で製造されたエチレンと炭素数3〜8のα−オレフィンとの共重合体で、密度0.88〜0.91g/cm3の範囲のものを好適に利用できる。
密度が0.88g/cm3を下回ると巻き戻し力が強くなり、密度が0.91g/cm3を超えると粘着力が不足するので好ましくないからである。
このようなエチレン−α−オレフィン共重合体としては、ダウ・ケミカル社のアフニティ、日本ポリエチレン社のカーネル、宇部興産のユメリット等が市販されており、それらを単独で、又はブレンドして用いることができる。
また、メタロセン触媒下で製造されたエチレン−α−オレフィン共重合体に、他のポリエチレン成分、例えば低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレンを添加することも可能である。
尚、メタロセン系触媒の存在下で製造されたエチレン−α−オレフィン共重合体を粘着層13に用いることで、適度な粘着力と経時安定性を得ることができる。
【0013】
(スチレン−イソブチレンブロック共重合体)
粘着層13に用いるスチレン−イソブチレン系ブロック共重合体は、ハードセグメントがポリスチレン系化合物、ソフトセグメントがポリイソブチレンで構成されるスチレン−イソブチレン系ブロック共重合体である。ソフトセグメントをイソブチレンとすることでソフトセグメントに二重結合を含まない。
また、スチレン−イソブチレン系ブロック共重合体に用いられるビニル芳香族化合物は、スチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルピリジン等が挙げられ、特にスチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
【0014】
スチレン−イソブチレン系ブロック共重合体として、上記ビニル芳香族化合物重合体ブロック(A)、イソブチレン系重合体、又はビニル芳香族化合物とイソブチレンとのランダム共重合体ブロック(B)、ビニル芳香族化合物とイソブチレンのうちビニル芳香族化合物が漸増するテーパーブロック(C)の少なくとも(A)と(B)とを含むブロック共重合体である。ここで、スチレン−イソブチレン系ブロック共重合体としては、(A)−(B)、(A)−(B)−(A)、あるいは、(A)−(B)−(C)の構成が好ましい。また、ブロック(A)とブロック(B)とは、必ずしも明確に区別される必要はなく、ブロック(A)からブロック(B)に移行するにしたがい、ビニル芳香族化合物が漸減するようなテーパー部分をもつ構成でもよい。
このようなスチレン−イソブチレン系ブロック共重合体として、カネカ社のシブスター等を挙げることができる。
【0015】
二重結合を含む化合物は、熱や経時によって分解や老化が進むことは周知であり、特に二重結合を多く含む生ゴムでは老化が著しく早い。即ち、耐熱安定性(耐熱老化性)および耐候性等が悪いと、黄変が発生して、外観が悪くなるばかりか、粘着強度も変動する。
しかしながら、本願発明の粘着層13は、ソフトセグメント部分に二重結合を含まないため、従来のスチレン−ブタジエン−スチレン、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー等の不飽和型や水添型の粘着材と比べて、耐熱安定性や耐候性に優れており、黄変や粘着強度の変動を抑えることができる。
また、上記のようなスチレン−イソブチレン系ブロック共重合体を、メタロセン触媒の存在下で重合されたエチレン−α−オレフィン共重合体に1〜5質量%添加した粘着層組成とすることで、平滑なメタクリル樹脂面に対する粘着強度を0.05〜0.5N/25mmの範囲内で安定化させることができ、巻き戻し力も0.1N/25mm未満のものを製造できる。
更にまた、高温保存下における粘着強度の上昇や、耐候性不足による粘着強度の劣化や着色を防止することができる。
【0016】
(厚さ)
本発明の粘着フィルム10は、基本的には粘着層および基材層の2層構成からなるフィルムで、フィルム全体の厚みは、40μm〜120μmの範囲が好適である。
40μm未満では、貼合時及び剥離時の剛性が不足し、120μmを超えるとコスト高となり好ましくないからである。
また、粘着層の厚みとしては、全体厚みの10〜30%の範囲内が好ましい。
粘着層の厚みが、全体厚みの10%未満の場合、粘着層の厚みのばらつきにより部分的に粘着強度の強弱を生じる可能性があり、好ましくなく、また、全体の30%を超えると、フィルムの剛性が不足するため好ましくないからである。
【0017】
(製造方法)
なお、本発明の粘着フィルム10は、インフレーション法による製膜が好ましい。
一般的にTダイ法は、インフレーション法よりも製膜温度が高めとなるため、粘着層及び基材層に用いるポリエチレン成分の架橋が促進される場合や、また水添ジエン系共重合体中の共役ジエン不飽和分の酸化が促進される場合がある。このポリエチレンの架橋や、水添ジエン系共重合体の酸化は、フィッシュアイの原因となり、好ましくないからである。
【0018】
(粘着力の経時変化)
また、粘着層がEVA、スチレン系ブロック共重合体若しくはその水添物のようなエラストマーからなる従来の粘着フィルムでは、高温下や長期間の保存において経時変化し、粘着力が上昇して被着体からの剥離が困難となったり、剥離後の被着体の表面に粘着剤が残ったりすることが多かった。
このために、本発明では、初期粘着力、及び高温下や長期間の保存においても、粘着力としては、平滑なメタクリル樹脂面に対する粘着強度を0.05〜0.5N/25mmの範囲内とすることが好ましい。
【0019】
(巻き戻し力)
また、粘着フィルム10は、通常、ロール状に巻き取っておき、再度巻き戻して使用する。巻き戻する時に、巻き戻し力(粘着層と隣接する基材層との剥離力)は、0.1N/25mm未満とすることが好ましい。
巻き戻し力が増加してしまうと、使用時に巻き戻ししにくくなり、取扱い性が悪く、著しい場合には粘着フィルムが破断してしまうからである。
【実施例】
【0020】
以下、実施例及び比較例により、本発明を更に詳細に説明するが、これに限定されるものではない。なお、溶媒を除き、各層の各組成物は固形分換算の質量部である。
【0021】
(実施例1)65mmφ押出機、90mmφ押出機、65mmφ押出機を用いて、下記の粘着層13、中間層23及び背面層21を押出し、多層インフレーション法により、粘着層13、中間層23及び背面層21の厚さを下記のようにして、全体厚みが50μの実施例1の粘着フィルム10を得た。
・粘着層10μ(65mmφ押出機)
日本ポリエチレン カーネルKF360T
(密度0.898g/cm3) 98質量部
カネカ シブスター072T 2質量部
・中間層30μ(90mmφ押出機)
住友化学 F425P 100質量部
・背面層10μ(65mmφ押出機)
住友化学 F425P 100質量部
【0022】
(実施例2)下記の粘着層13、中間層23及び背面層21を用い、それぞれ下記の厚さとする以外は、実施例1と同様にして、実施例2の粘着フィルム10を得た。
・粘着層7μ(65mmφ押出機)
日本ポリエチレン カーネルKF360T
(密度0.898g/cm3) 98質量部
カネカ シブスター072T 2質量部
・中間層30μ(90mmφ押出機)
住友化学 F425P 100質量部
・背面層13μ(65mmφ押出機)
住友化学 F425P 100質量部
【0023】
(実施例3)下記の粘着層13、中間層23及び背面層21を用い、それぞれ下記の厚さとする以外は、実施例1と同様にして、実施例3の粘着フィルム10を得た。
・粘着層10μ(65mmφ押出機)
宇部興産 ユメリット0540F
(密度0.904g/cm3) 97質量部
カネカ シブスター072T 3質量部
・中間層30μ(90mmφ押出機)
三菱化学 LF547 100質量部
大日精化 PE−M E7608(ライトブルー) 3質量部
・背面層10μ(65mmφ押出機)
三菱化学 LF547 100質量部
【0024】
(比較例1)下記の粘着層13、中間層23及び背面層21を用い、それぞれ下記の厚さとする以外は、実施例1と同様にして、比較例1の粘着フィルム10を得た。
・粘着層10μ(65mmφ押出機)
三井デュポン V5714(VA16%のEVA) 100質量部
・中間層30μ(90mmφ押出機)
住友化学 F425P 100質量部
・背面層10μ(65mmφ押出機)
住友化学 F425P 100質量部
【0025】
(比較例2)下記の粘着層13、中間層23及び背面層21を用い、それぞれ下記の厚さとする以外は、実施例1と同様にして、比較例2の粘着フィルム10を得た。
・粘着層7μ(65mmφ押出機)
日本ポリエチレン カーネルKF360T
(密度0.898g/cm3) 90質量部
クレイトンポリマー クレイトンMD6649 10質量部
・中間層30μ(90mmφ押出機)
住友化学 F425P 100質量部
・背面層13μ(65mmφ押出機)
住友化学 F425P 100質量部
【0026】
(比較例3)下記の粘着層13、中間層23及び背面層21を用い、それぞれ下記の厚さとする以外は、実施例1と同様にして、比較例3の粘着フィルム10を得た。
・粘着層10μ(65mmφ押出機)
宇部興産 ユメリット1540F
(密度0.913g/cm3) 100質量部
・中間層30μ(90mmφ押出機)
三菱化学 LF547 100質量部
・背面層10μ(65mmφ押出機)
三菱化学 LF547 100質量部
【0027】
なお、住友化学社製のF425P、三菱化学社製のLF547は、いずれもLDPE(低密度ポリエチレン)である。
大日精化社製のPE−M E7608(ライトブルー)は、着色剤マスターバッチである。
日本ポリエチレン社製のカーネルKF360T、宇部興産社製のユメリット0540F、宇部興産社製のユメリット1540Fは、いずれもメタロセン系触媒の存在下で製造されたエチレン−α−オレフィン共重合体である。
カネカ社のシブスター072Tは、(A)がスチレンで、(B)がイソブチレンの(A)−(B)−(A)のブロック共重合体である。
クレイトンポリマー社製のクレイトンMD6649は、(A)がスチレンで、(B)がブタジエンの(A)−(B)−(A)ブロック共重合体を水素添加した樹脂である。
三井デュポン社製のV5714(VA16%のEVA)は、酢酸ビニル16W%のエチレン−酢酸ビニル共重合体である。
【0028】
(評価方法)
評価は、初期粘着力、保存後の粘着力、巻き戻し力で行った。
(初期粘着力;試験方法)
厚み3mmのアクリル板(メタクリル板)及び180μのポリエステルシート(東洋紡A4100、PET)に、実施例1〜3及び比較例1〜3の粘着フィルム10をJIS Z0237に規定されたゴムロール(重さ2kg、幅45mm、ロール径95mm、ゴム硬度80±5Hs)を用い、1往復圧着し、1時間後の剥離強度を300mm/minの引張り速度で測定し、初期粘着力とした。
【0029】
(保存後の粘着力;試験方法)
上記の初期粘着力;試験方法で得られた実施例1〜3及び比較例1〜3の粘着フィルム10を、アクリル板(メタクリル板)及びPETシートに貼り付けた状態で、23℃×7日間及び50℃×7日間保存し、保存後の剥離強度を測定した。なお、50℃×7日保存のものは、23℃で1時間冷却した後、剥離強度を300mm/minの引張り速度で測定した。
【0030】
(巻き戻し力)
実施例1〜3及び比較例1〜3の粘着フィルム10のそれぞれの巻き取りをフィルムが10枚以上重なった状態で切り出し、25mm幅の短冊状にカットして、粘着フィルムの粘着力層面と隣接する粘着フィルムの基材層との剥離強度を300mm/minの引張り速度で測定し、巻き戻し力とした。
初期粘着力、保存後の粘着力、巻き戻し力のそれぞれの結果を表1に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
(評価結果)
実施例1〜3では、23℃及び50℃での7日間の保存後でも、初期粘着力からの増減は、対アクリル板及びPETシートにおいても極めて少なく、巻き戻し力は0.03〜0.04N/25mmと良好に作業することができた。
比較例1では、23℃での7日間の保存後では、初期粘着力からの増加が小さいが、50℃での7日間の保存後では増加が大きく、保管条件により剥離が困難となる場合があると考えられた。巻き戻し力は0.04N/25mmと作業することができる範囲であった。
比較例2では、初期粘着力も大きく、また、23℃での7日間の保存後では、初期粘着力からの増加が小さいが、50℃での7日間の保存後では大きく増加した。巻き戻し力は0.18N/25mmと作業はできるが、機械への負荷や効率が著しく低下する。
比較例3では、アクリル板及びPETシートへ粘着せず、粘着フィルムとして機能しなかった。
以上の結果より明らかなように、本発明の粘着フィルム10は、剥離性、巻き戻し性、保存性ともに良好であり、産業上寄与すること大である。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の粘着フィルムの主なる用途としては、建材、日用品、ステーショナリー、家電製品、自動車、各種ディスプレーなどの製品や部材の表面に粘着させて、運搬、保管、加工等の塗装面の傷や汚れを防護し、使用時には剥離することができるものである。
しかしながら、被着面に粘着することで、運搬、保管、加工等の塗装面の傷や汚れを防護し、使用時には剥離することを必要とする用途であれば、特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0034】
10:粘着フィルム
11:基材層
13:粘着層
21:背面層
23:中間層




【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層及び粘着層からなる粘着フィルムにおいて、前記粘着層がメタロセン系触媒の存在下で製造された密度0.88〜0.91g/cm3のエチレン−α−オレフィン共重合体85〜99質量%及びスチレン−イソブチレン系ブロック共重合体1〜5質量%からなり、前記基材層が低密度ポリエチレン樹脂からなり、かつ、厚さの割合が前記基材層:前記粘着層=70〜90:10〜30であることを特徴とする粘着フィルム。
【請求項2】
上記スチレン−イソブチレン系ブロック共重合体が、ビニル芳香族化合物重合体ブロック(A)、イソブチレン重合体もしくはビニル芳香族化合物とイソブチレンのランダム共重合ブロック(B)、ビニル系芳香族化合物とイソブチレンのうちビニル芳香族化合物が漸増するテーパーブロック(C)、の少なくともブロック(A)とブロック(B)とを含む(A)−(B)ブロック共重合体、(A)−(B)−(A)ブロック共重合体、(A)−(B)−(C)ブロック共重合体から選択したブロック共重合体のいずれか、または複数から構成され、かつ上記ビニル芳香族化合物が、スチレン及び/又はα−メチルスチレンであることを特徴とする請求項1記載の粘着フィルム。
【請求項3】
上記基材層が中間層及び背面層からなり、前記中間層の厚みが前記基材層の厚さの50%以上を占め、該中間層に着色剤が添加され、かつ、インフレーション法により製造されてなることを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項に記載の粘着フィルム。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−74162(P2011−74162A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−225563(P2009−225563)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】