説明

粘着体及び剥離シート

【課題】剥離シートのシリコーン系粘着剤に対する剥離性能を良好にし、かつ耐ブロッキング性を良好にする。
【解決手段】剥離シートは、基材と、基材上に設けられた剥離剤組成物の硬化物からなる剥離層とを備える。剥離剤組成物は、ポリエステル樹脂(A)と、下記一般式(1)で表される構成単位を含むアクリル系ポリマー(B)と、架橋剤(C)とを含有する。ポリエステル樹脂(A)の配合量をA質量部とし、アクリル系ポリマー(B)の配合量をB質量部としたとき、質量比A/Bを50/50〜95/5とする。


(一般式(1)において、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは炭素数12〜16のアルキル基を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着層がシリコーン系粘着剤から形成された粘着体、及びその粘着体に用いられる剥離シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基材と、基材の上に設けられた粘着層とを備え、粘着層がシリコーン系粘着剤から形成された粘着シートが知られている。このような粘着シートは、シリコーン系粘着剤が耐熱性、耐寒性、耐候性、電気絶縁性、耐薬品性に優れることから、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ウレタン系粘着剤、エポキシ系粘着剤などでは変質、劣化してしまう厳しい環境下でも使用可能である。
【0003】
粘着シートは、被着体に貼付される前においては、粘着層表面に剥離シートが貼着されており、その剥離シートによって粘着層が保護されるのが一般的である。そして、剥離シートの表面(すなわち、粘着層との接触面)には、剥離シートを剥がす際の剥離性を向上させるために、剥離層が設けられる。
【0004】
剥離層の構成材料は、一般的な粘着加工品に対してはシリコーン系剥離剤が使用される。しかし、通常のシリコーン系剥離剤は、シリコーン系粘着剤から構成される粘着層に対しては、強く粘着して剥離不良等を生じさせるため、代替的にフッ素系ポリマーをベースとしたフルオロシリコーン系剥離剤が使用されることが知られている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平4−76391号公報
【特許文献2】特開平9−176491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、フルオロシリコーン系剥離剤は、剥離特性に優れるが、比較的高価であり、また、フッ素系ポリマーを溶解等するために、比較的高価なフッ素系溶剤を使用する必要があり、コスト的な問題がある。また、フッ素系溶剤は、大気放出された場合、オゾン層破壊の原因となるため、環境負荷が大きいという問題もある。そのため、シリコーン系粘着剤を使用した粘着シートは、工業材料として汎用化するのが容易ではない。
【0007】
また、剥離シートは、製造された後に、ロール状に巻き取られて保管されるのが一般的である。しかし、剥離剤の構成材料によっては、ロール状で保管される際に剥離シートの両面間でくっつくいわゆるブロッキングが発生する場合があり、汎用化するには、ブロッキングの発生を抑制することも必要である。
【0008】
そこで、本発明は、比較的高価で環境負荷の大きいフルオロシリコーン系剥離剤を使用することなく、剥離シートの耐ブロッキング性を優れたものとしつつ、シリコーン系粘着剤から形成された粘着層に対する剥離シートの剥離性能を良好にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る粘着体は、基材と、基材上に設けられた剥離剤組成物の硬化物からなる剥離層とを備える剥離シートと、剥離層の上に設けられたシリコーン系粘着剤を含有する粘着層とを備え、剥離剤組成物が、ポリエステル樹脂(A)と、下記一般式(1)で表される構成単位を含むアクリル系ポリマー(B)と、架橋剤(C)とを含有し、ポリエステル樹脂(A)の配合量をA質量部とし、アクリル系ポリマー(B)の配合量をB質量部としたとき、質量比A/Bが、50/50〜95/5の範囲であることを特徴とする。
【化1】

(一般式(1)において、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは炭素数12〜16のアルキル基を示す。)
【0010】
アクリル系ポリマー(B)は、さらに水酸基、アミノ基、及びカルボキシル基から成る群から選択される官能基を有する構成単位を含むことが好ましい。ポリエステル樹脂(A)の数平均分子量は例えば、500〜10000である。アクリル系ポリマー(B)の質量平均分子量は例えば、70000〜2000000である。またポリエステル樹脂(A)は、水酸基を有することが好ましい。
【0011】
架橋剤(C)は例えば、多官能アミノ化合物、多官能イソシアネート化合物、多官能エポキシ化合物、又は多官能金属化合物である。架橋剤(C)の配合量は、ポリエステル樹脂(A)とアクリル系ポリマー(B)の合計量100質量部に対して、1〜30質量部であることが好ましい。
【0012】
本発明に係る剥離シートは、シリコーン系粘着剤を含有する粘着層に対して使用される剥離シートであって、基材と、基材上に設けられた剥離剤組成物の硬化物からなる剥離層とを備え、剥離剤組成物が、ポリエステル樹脂(A)と、下記一般式(1)で表される構成単位を含むアクリル系ポリマー(B)と、架橋剤(C)とを含有し、ポリエステル樹脂(A)の配合量をA質量部とし、アクリル系ポリマー(B)の配合量をB質量部としたとき、質量比A/Bが、50/50〜95/5の範囲であることを特徴とする。
【化2】

(一般式(1)において、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは炭素数12〜16のアルキル基を示す。)
【発明の効果】
【0013】
本発明では、フルオロシリコーン系剥離剤を使用しなくても、シリコーン系粘着剤から形成された粘着層に対する剥離シートの剥離性能を良好にし、かつ剥離シートの耐ブロッキング性も優れたものにすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下本発明について実施形態を用いてさらに詳細に説明する。
まず、本発明の一実施形態における剥離シート及び粘着体の概略について説明する。剥離シートは、基材と、基材の上に形成され、剥離剤組成物の硬化物から成る剥離層とを備え、シリコーン系粘着剤を含有する粘着層に対して使用されるものである。また、粘着体は、上記剥離シートと、その剥離シートの剥離層の上に形成されたシリコーン系粘着剤を含有する粘着層とを備えるものである。剥離シートは、粘着層を保護するためのものであって、粘着層が被着体に貼着される前に、粘着層から剥がされる。
【0015】
次に、上記した粘着体や剥離シートに使用される剥離剤組成物について説明する。剥離剤組成物は、以下で詳述するポリエステル樹脂(A)と、アクリル系ポリマー(B)と、架橋剤(C)とを含有するものである。
【0016】
ポリエステル樹脂(A)としては、特に限定されず、ポリエステル樹脂として知られている公知のものの中から適宜選択して用いることができる。具体的なポリエステル樹脂としては、多価アルコールと多塩基酸との縮合反応によって得られる樹脂であって、二塩基酸と二価アルコールとの縮合物若しくは不乾性油脂肪酸等で変性したものである不転化性ポリエステル樹脂、及び二塩基酸と三価以上のアルコールとの縮合物である転化性ポリエステル樹脂等が挙げられ、本発明においては、これらのうちいずれも使用することができる。
【0017】
ポリエステル樹脂の原料として用いられる多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどの二価アルコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどの三価アルコール、ジグリセリン、トリグリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、マンニット、ソルビット等の四価以上の多価アルコールが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
また、多塩基酸としては、例えば無水フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水トリメット酸等の芳香族多塩基酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族飽和多塩基酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水シトラコン酸等の脂肪族不飽和多塩基酸、シクロペンタジエン−無水マレイン酸付加物、テルペン−無水マレイン酸付加物、ロジン−無水マレイン酸付加物等のディールズ・アルダー反応による多塩基酸等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
さらに、変性剤である不乾性油脂肪酸等としては、例えばオクチル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸、エレオステアリン酸、リシノレイン酸、脱水リシノレイン酸、あるいはヤシ油、アマニ油、キリ油、ヒマシ油、脱水ヒマシ油、大豆油、サフラワー油、およびこれらの脂肪酸等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、ポリエステル樹脂としても、1種を単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
ポリエステル樹脂(A)は、架橋反応の基点となる水酸基、カルボキシル基、アミノ基等の活性水素基を有していることが好ましく、水酸基を有していることが特に好ましい。そして、ポリエステル樹脂(A)の水酸基価は、5〜500mgKOH/gであることが好ましく、10〜300mgKOH/gであることがより好ましい。
【0021】
また、ポリエステル樹脂(A)の数平均分子量は、500〜10000であることが好ましく、1000〜5000であることがより好ましい。ポリエステル樹脂(A)は、数平均分子量がこのように比較的低いことにより、剥離剤組成物が架橋剤(C)で架橋されたときの網目構造が密になりやすく、アクリル系ポリマー(B)の後述する剥離面への偏析が起こりやすくなる。
【0022】
アクリル系ポリマー(B)は、下記一般式(1)で表される構成単位を含むものである。
【化3】

(一般式(1)において、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは炭素数12〜16のアルキル基を示す。)
【0023】
アルキル基Rの炭素数が12未満になると一般的にアクリル系ポリマー(B)に離型性を発現させることが難しく、また16を超えると結晶性が高くなること等により剥離力が高くなり過ぎ、剥離剤の剥離性能が低下する。そのため、アクリル系ポリマー(B)が炭素数12〜16の長鎖アルキル基を有することにより、剥離剤の剥離性能は優れたものとなる。なお、一般式(1)において、Rは剥離性能を良好にするために直鎖のアルキル基であることが好ましく、またRの炭素数は12〜14であったほうが良い。
【0024】
一般式(1)の構成単位を形成するための単量体としては、エステル部分が炭素数12〜16の長鎖アルキル基である(メタ)アクリル酸エステルが挙げられ、具体的にはラウリル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0025】
アクリル系ポリマー(B)における一般式(1)で表される構成単位の含有量は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが特に好ましい。
【0026】
アクリル系ポリマー(B)は、架橋剤(C)と反応するために、反応性官能基を含有するビニルモノマーから導かれる構成単位を含有していても良い。この場合、アクリル系ポリマー(B)における反応性官能基を含有するビニルモノマーから導かれる構成単位の含有量は、0.01〜20質量%であることが好ましく、0.1〜10質量%であることがより好ましく、0.2〜5質量%であることが特に好ましい。また、反応性官能基としては、例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基などが挙げられる。このような反応性官能基は、1種単独で含有されても良く、2種以上が含有されていても良い。これら官能基の中では、水酸基、アミノ基、カルボキシル基が好ましい。また、アクリル系ポリマー(B)は、反応性官能基を含有するビニルモノマーから導かれる構成単位を含有する場合、その一次構造はランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。
【0027】
このように反応性官能基を有するビニルモノマーを用いることにより、剥離剤の粘着剤に対する剥離力を制御することができる。例えば軽剥離性が要求される用途では、反応性官能基を有するビニルモノマーの割合を少なくすることで、剥離剤を軽剥離化することができる。
【0028】
上記した反応性官能基を含有するビニルモノマーとしては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート;1,4−ジ(メタ)アクリロキシエチルピロメリット酸、4−(メタ)アクリロキシエチルトリメリット酸、2−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸等のカルボキシル基含有(メタ)アクリレート;アミノエチル(メタ)アクリレート、エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、エチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等の第1級〜第2級アミノ基含有(メタ)アクリレート;2−(メチルチオ)エチルメタクリレート等のチオール基含有(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステルや、N−(メタ)アクリロイル−p−アミノ安息香酸、N−(メタ)アクリロイル−5−アミノサリチル酸、アクリル酸、メタクリル酸等の(メタ)アクリル酸エステル以外のアクリルモノマーが挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0029】
また、アクリル系ポリマー(B)は、上記構成単位以外に、下記一般式(2)で表される構成単位を含有していても良い。アクリル系ポリマー(B)における一般式(2)で表される構成単位の含有量は、0〜20質量%である。
【化4】

(一般式(2)において、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは炭素数1〜11のアルキル基を示し、該アルキル基は、フッ素原子、酸素原子、または窒素原子を含んでいても良い。)
【0030】
アクリル系ポリマー(B)の質量平均分子量は、70000〜2000000であることが好ましく、100000〜1000000であることがより好ましい。質量平均分子量をこのような範囲にすることにより、アクリル系ポリマー(B)の後述する剥離面への偏析を起こりやすくし、剥離剤の剥離性能を良好にすることができる。
【0031】
剥離剤組成物において、ポリエステル樹脂(A)の配合量をA質量部とし、アクリル系ポリマー(B)の配合量をB質量部としたとき、質量比A/Bは、50/50〜95/5の範囲である。質量比A/Bは、上記範囲よりポリエステル樹脂(A)の割合を多くすると、アクリルポリマー(B)の剥離面における偏析が少なくなり、剥離剤の剥離性能を良好なものとすることができない。一方、上記した範囲よりアクリルポリマー(B)の割合を多くすると、ブロッキングが発生しやすくなる。質量比A/Bは、より良好な剥離性能や耐ブロッキング性を得るためには、60/40〜90/10であることが好ましい。
【0032】
架橋剤(C)は、多官能アミノ化合物、多官能イソシアネート化合物、多官能エポキシ化合物、又は多官能金属化合物であることが好ましい。架橋剤(C)は、例えばポリエステル樹脂(A)やアクリル系ポリマー(B)の反応性官能基等と反応することにより、剥離剤を硬化させて硬化被膜を形成するものである。
【0033】
上記多官能アミノ化合物としては、例えば、メチル化メラミン樹脂、ブチル化メラミン樹脂等のメラミン樹脂;メチル化尿素樹脂、ブチル化尿素樹脂等の尿素樹脂;メチル化ベンゾグアナミン樹脂、ブチル化ベンゾグアナミン樹脂等のベンゾグアナミン樹脂;エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、N,N’−ジフェニルエチレンジアミン、p−キシリレンジアミン等のジアミン類などが挙げられる。
【0034】
上記多官能イソシアネート化合物としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリメチロールプロパン(TMP)アダクトTDI、TMPアダクトHDI、TMPアダクトIPDI 、TMPアダクトXDIなどが挙げられる。
【0035】
上記多官能エポキシ化合物としては、例えば、N,N,N’,N’−テトラグリシジルメタキシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンなどが挙げられる。
【0036】
上記多官能金属化合物としては、例えば、アルミニウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート等のアルミキレート化合物; チタンテトラアセチルアセトナート、チタンアセチルアセトナート、チタンオクチレングリコレート、テトライソプロポキシチタン、テトラメトキシチタン等のチタンキレート化合物;トリメトキシアルミニウムなどが挙げられる。
【0037】
架橋剤(C)の配合量は、ポリエステル樹脂(A)とアクリル系ポリマー(B)の合計量100質量部に対して、1〜30質量部であることが好ましく、1〜20質量部であることが特に好ましい。また、剥離剤組成物には、所望により塩酸、p−トルエンスルホン酸などの公知の酸性触媒が加えられていても良い。
【0038】
次に、上記した剥離シート及び粘着体について、剥離剤組成物以外の構成を説明する。粘着層は、シリコーン系粘着剤によって形成されていれば特に制限はなく、そのシリコーン系粘着剤としては、例えばポリオルガノシロキサンを主成分とする粘着剤を使用できる。シリコーン系粘着剤は、生ゴム状のポリオルガノシロキサンとポリオルガノシロキサンレジンとを含むシリコーン樹脂、及びベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物(重合開始剤)からなる過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤であっても良いし、ケイ素原子に結合したアルケニル基を有する生ゴム状のポリオルガノシロキサンとポリオルガノシロキサンレジンとを含有するシリコーン樹脂、ヒドロシリル基(SiH基)含有の架橋剤、及び白金系の硬化触媒からなる付加反応型シリコーン系粘着剤であっても良い。
【0039】
剥離シートの基材としては、通常用いられている基材であれば、特に制限されることなく用いることができ、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、トリアセチルセルロース、ポリノルボルネンなどの樹脂からなる樹脂フィルム;上質紙、無塵紙、グラシン紙、クレーコート紙、樹脂コート紙、ラミネート紙(ポリエチレンラミネート紙、ポリプロピレンラミネート紙等)などの紙;不織布、金属箔などが挙げられる。これらの中でも、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルムが、耐熱性や強度、剥離層との密着性等の観点から特に好ましい。
【0040】
基材の厚さは、各種用途や基材などに応じて異なるが、例えば樹脂フィルムを基材として用いた場合、通常、5〜300μm 、好ましくは20〜200μm程度であり、紙基材を用いた場合、通常、坪量として20〜450g/m、好ましくは40〜220g/m程度である。剥離層の厚さは、例えば50nm〜2μmであるが、基材として樹脂フィルムを用いた場合には50〜300nmであることが好ましく、基材として紙基材を用いた場合には0.3μm〜2μmであることが好ましい。
【0041】
また、粘着体は、粘着層の上に設けられた、粘着層を支持する支持体をさらに備えていても良い。支持体としては、特に制限はないが、上記した剥離シートの基材として例示されたものを使用できる。なお、剥離シートや粘着体は、例えば製造された後ロール状に巻き取られて保管される。
【0042】
剥離シートにおける剥離層は、例えば、有機溶剤等で希釈した剥離剤組成物を基材上に塗布した後、加熱乾燥等により硬化して形成する。また、粘着体の製造においては例えば、まず、粘着剤の溶液を支持体上に塗布した後加熱乾燥等することにより、支持体の上に粘着層が形成された粘着シートを作製する。次いで、その粘着シートを、粘着層と剥離層とが接触するように、剥離シートに貼り合わせることによって、粘着体を作製する。ただし、粘着体は、剥離層上に、例えば粘着剤の溶液を塗布した後加熱乾燥等して粘着層を形成することにより作製しても良い。この場合、粘着層の上には、さらに支持体を重ねても良い。
【0043】
以上のように本実施形態では、剥離層が、シリコーン系粘着剤に強く粘着しないポリエステル樹脂(A)とアクリル系ポリマー(B)とを主剤とする非シリコーン系剥離剤から形成されるため、剥離シートを剥離層から剥離するときの剥離性能を良好にすることができる。
【0044】
また、本実施形態では、剥離剤組成物を硬化して形成した剥離層は、その表面(剥離面)付近に、アクリル系ポリマー(B)に由来する成分が偏析することとなる。このような偏析は、ポリエステル樹脂(A)と分子構造、極性、分子量等の異なるアクリル系ポリマー(B)が、剥離層が硬化されるとき等に表面付近に押し上げられることにより生じるものと考えられる。
【0045】
アクリル系ポリマー(B)は、上記偏析により、本実施形態のように添加量が少なくてもその離型性能を十分に発揮し、剥離層の剥離性能を良好にすることができる。そして、少ないアクリル系ポリマー(B)で剥離層の良好な剥離性能を維持しつつ、配合量の多いポリエステル樹脂(A)により、耐ブロッキング性能を向上させることができる。さらには、配合量の多いポリエステル樹脂(A)により、剥離層と基材との密着性も良好にすることができる。また、剥離層は、ポリエステル樹脂(A)と、アクリル系ポリマー(B)とによって形成されたことにより、その耐熱性も良好なものとなる。
【0046】
なお、本明細書において、数平均分子量(Mn)及び質量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定したポリスチレン換算の値である。
(測定条件)
GPC測定装置:東ソー(株)製HLC−8020
GPCカラム(以下の順に通過):TSK guard column HXL−H、TSK gel GMHXL(×2)、TSK gel G2000HXL(東ソー(株)製)
測定溶媒:テトラヒドロフラン 測定温度:40℃
【実施例】
【0047】
次に、本発明について実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明は下記で述べる実施例によって限定されるものではない。
【0048】
[実施例1]
攪拌機、窒素導入管、温度計及び冷却管を備えた1リットルのフラスコに、ラウリルアクリレート(LA)99質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)1質量部、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2質量部、トルエン100質量部、酢酸エチル100質量部を添加し、窒素気流下、80℃で2時間重合反応を行うことにより、LA−HEA共重合体(以下、「ポリマーA」という)の溶液(固形分30質量%)を得た。得られたポリマーAの質量平均分子量は110000であった。また、ポリエステル樹脂(東洋紡績社製、商品名「バイロン220」、数平均分子量(Mn):3000、水酸基価:50mgKOH/g)をトルエンに溶解し、35質量%濃度のポリエステル樹脂溶液を作製した。
【0049】
ポリエステル樹脂溶液68質量部(固形分換算)と、ポリマーAの溶液32質量部(固形分換算)と、架橋剤としてのメラミン樹脂(寿化工社製、商品名「TF200」、固形分80質量%)7質量部(固形分換算)と、トルエン:メチルエチルケトン(MEK)=30:70(質量比)の混合溶媒2115質量部とを混合し攪拌した後、さらに触媒としてのp−トルエンスルホン酸のメタノール溶液(p−トルエンスルホン酸50質量%含有)を2.8質量部添加、攪拌して固形分濃度2.5質量%の塗工液1を得た。得られた塗工液1を、基材としての厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、マイヤーバーを用いて乾燥後の厚さが150nmとなるように塗布した後、150℃で1分間乾燥させ硬化させることにより基材の上に剥離層を形成し、基材及び剥離層から成る剥離シートを得た。
【0050】
[実施例2]
塗工液1の配合を、ポリエステル樹脂溶液81質量部(固形分換算)、ポリマーAの溶液19質量部(固形分換算)、メラミン樹脂7質量部(固形分換算)に変更して得た塗工液2(固形分濃度2.5質量%に調製)を用いて剥離層を形成した点を除いて、実施例1と同様にして剥離シートを得た。
【0051】
[実施例3]
塗工液1の配合を、ポリエステル樹脂溶液90質量部(固形分換算)、ポリマーAの溶液10質量部(固形分換算)、メラミン樹脂7質量部(固形分換算)に変更して得た塗工液3(固形分濃度2.5質量%に調製)を用いて剥離層を形成した点を除いて、実施例1と同様にして剥離シートを得た。
【0052】
[実施例4]
攪拌機、窒素導入管、温度計及び冷却管を備えた1リットルのフラスコに、LA97質量部、HEA3質量部、AIBN0.2質量部、トルエン100質量部、酢酸エチル100質量部を添加し、窒素気流下、80℃で2時間重合反応を行うことにより、LA−HEA共重合体(以下、「ポリマーB」という)の溶液(固形分30質量%)を得た。得られたポリマーBの質量平均分子量は110000であった。そして、塗工液1の配合においてポリマーAの溶液をポリマーBの溶液に変更して得た塗工液4(固形分濃度2.5質量%に調製)を用いて、剥離層を形成した点を除いて、実施例1と同様にして剥離シートを得た。
【0053】
[実施例5]
攪拌機、窒素導入管、温度計及び冷却管を備えた1リットルのフラスコに、ミリスチルアクリレート(MyA)99質量部、HEA1質量部、AIBN0.2質量部、トルエン100質量部、酢酸エチル100質量部を添加し、窒素気流下、80℃で2時間重合反応を行うことにより、MyA−HEA共重合体(以下、「ポリマーC」という)の溶液(固形分30質量%)を得た。得られたポリマーCの質量平均分子量は140000であった。そして、塗工液1の配合においてポリマーAの溶液をポリマーCの溶液に変更して得た塗工液5(固形分濃度2.5質量%に調製)を用いて、剥離層を形成した点を除いて、実施例1と同様にして剥離シートを得た。
【0054】
[実施例6]
攪拌機、窒素導入管、温度計及び冷却管を備えた1リットルのフラスコに、LA99質量部、HEA1質量部、AIBN0.073質量部、トルエン100質量部、酢酸エチル100質量部を添加し、窒素気流下、70℃で5時間重合反応を行うことにより、LA−HEA共重合体(以下、「ポリマーD」という)の溶液(固形分30質量%)を得た。得られたポリマーDの質量平均分子量は400000であった。そして、塗工液1の配合においてポリマーAの溶液をポリマーDの溶液に変更して得た塗工液6(固形分濃度2.5質量%に調製)を用いて、剥離層を形成した点を除いて、実施例1と同様にして剥離シートを得た。
【0055】
[実施例7]
攪拌機、窒素導入管、温度計及び冷却管を備えた1リットルのフラスコに、LA99質量部、HEA1質量部、AIBN0.2質量部、トルエン100質量部、酢酸エチル100質量部を添加し、窒素気流下、80℃で18時間重合反応を行うことにより、LA−HEA共重合体(以下、「ポリマーE」という)の溶液(固形分30質量%)を得た。得られたポリマーEの質量平均分子量は870000であった。そして、塗工液1の配合においてポリマーAの溶液をポリマーEの溶液に変更して得た塗工液7(固形分濃度2.5質量%に調製)を用いて、剥離層を形成した点を除いて、実施例1と同様にして剥離シートを得た。
【0056】
[実施例8]
攪拌機、窒素導入管、温度計及び冷却管を備えた1リットルのフラスコに、LA99質量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)1質量部、AIBN0.073質量部、トルエン100質量部、酢酸エチル100質量部を添加し、窒素気流下、80℃で2時間重合反応を行うことにより、LA−4HBA共重合体(以下、「ポリマーF」という)の溶液(固形分30質量%)を得た。得られたポリマーFの質量平均分子量は130000であった。そして、塗工液1の配合においてポリマーAの溶液をポリマーFの溶液に変更して得た塗工液8を用いて、剥離層を形成した点を除いて、実施例1と同様にして剥離シートを得た。
【0057】
[実施例9]
攪拌機、窒素導入管、温度計及び冷却管を備えた1リットルのフラスコに、MyA99質量部、4HBA1質量部、AIBN0.063質量部、酢酸エチル200質量部を添加し、窒素気流下、80℃で2時間重合反応を行うことにより、MyA−4HBA共重合体(以下、「ポリマーG」という)の溶液(固形分30質量%)を得た。得られたポリマーGの質量平均分子量は210000であった。そして、塗工液1の配合においてポリマーAの溶液をポリマーGの溶液に変更して得た塗工液9を用いて、剥離層を形成した点を除いて、実施例1と同様にして剥離シートを得た。
【0058】
[実施例10]
攪拌機、窒素導入管、温度計及び冷却管を備えた1リットルのフラスコに、MyA99質量部、HEA1質量部、AIBN0.09質量部、トルエン100質量部、酢酸エチル100質量部を添加し、窒素気流下、80℃で2時間重合反応を行うことにより、MyA−HEA共重合体(以下、「ポリマーH」という)の溶液(固形分30質量%)を得た。得られたポリマーHの質量平均分子量は270000であった。そして、塗工液1の配合においてポリマーAの溶液をポリマーHの溶液に変更して得た塗工液10を用いて、剥離層を形成した点を除いて、実施例1と同様にして剥離シートを得た。
【0059】
[実施例11]
攪拌機、窒素導入管、温度計及び冷却管を備えた1リットルのフラスコに、MyA99質量部、HEA1質量部、AIBN0.063質量部、酢酸エチル200質量部を添加し、窒素気流下、80℃で2時間重合反応を行うことにより、MyA−HEA共重合体(以下、「ポリマーI」という)の溶液(固形分30質量%)を得た。得られたポリマーIの質量平均分子量は480000であった。そして、塗工液1の配合においてポリマーAの溶液をポリマーIの溶液に変更して得た塗工液11を用いて、剥離層を形成した点を除いて、実施例1と同様にして剥離シートを得た。
【0060】
[実施例12]
塗工液1の配合を、ポリエステル樹脂溶液65質量部(固形分換算)、ポリマーAの溶液35質量部(固形分換算)、メラミン樹脂16質量部(固形分換算)に変更して得た塗工液12(固形分濃度2.5質量%に調製)を用いて剥離層を形成した点を除いて、実施例1と同様にして剥離シートを得た。
【0061】
[実施例13]
塗工液1の配合を、ポリエステル樹脂溶液65質量部(固形分換算)、ポリマーCの溶液35質量部(固形分換算)、メラミン樹脂16質量部(固形分換算)に変更して得た塗工液13(固形分濃度2.5質量%に調製)を用いて剥離層を形成した点を除いて、実施例1と同様にして剥離シートを得た。
【0062】
[比較例1]
塗工液1の配合を、ポリエステル樹脂溶液46質量部(固形分換算)、ポリマーAの溶液54質量部(固形分換算)、メラミン樹脂7質量部(固形分換算)に変更して得た塗工液14(固形分濃度2.5質量%に調製)を用いて剥離層を形成した点を除いて、実施例1と同様にして剥離シートを得た。
【0063】
[比較例2]
塗工液1の配合を、ポリエステル樹脂溶液99質量部(固形分換算)、ポリマーAの溶液1質量部(固形分換算)、メラミン樹脂7質量部(固形分換算)に変更して得た塗工液15(固形分濃度2.5質量%に調製)を用いて剥離層を形成した点を除いて、実施例1と同様にして剥離シートを得た。
【0064】
[比較例3]
攪拌機、窒素導入管、温度計及び冷却管を備えた1リットルのフラスコに、ステアリルアクリレート(StA)99質量部、HEA1質量部、AIBN0.2質量部、トルエン100質量部を添加し、窒素気流下、80℃で2時間重合反応を行うことにより、StA−HEA共重合体(以下、「ポリマーJ」という)の溶液(固形分50質量%)を得た。得られたポリマーJの質量平均分子量は100000であった。そして、塗工液1の配合においてポリマーAの溶液をポリマーJの溶液に変更して得た塗工液16(固形分濃度2.5質量%に調製)を用いて、剥離層を形成した点を除いて、実施例1と同様にして剥離シートを得た。
【0065】
[比較例4]
シリコーン系剥離剤(信越化学社製、商品名「KS−847H」、固形分30質量%)100質量部を、トルエンで希釈して固形分濃度1.5質量%とした後、さらに白金触媒(信越化学社製、商品名「PL−50T」)1質量部を添加し、塗工液17を得た。得られた塗工液17を、基材としての厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、マイヤーバーを用いて乾燥後の厚さが100nmとなるように塗布した後、120℃で1分間乾燥させ硬化させることにより基材の上に剥離層を形成し、基材及び剥離層から成る剥離シートを得た。
【0066】
[参考例]
フルオロシリコーン系剥離剤(東レ・ダウコーニング社製、商品名「シロテックス3062」、固形分濃度10質量%)100質量部と、架橋剤(東レ・ダウコーニング社製、商品名「キャタリスト D」、固形分100質量%)0.5質量部を混合した後、トルエンで希釈し固形分濃度5質量%としたものに、さらに白金触媒(東レ・ダウコーニング社製、商品名「SRX−212」)2質量部を添加し、塗工液18を得た。得られた塗工液18を、基材としての厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、マイヤーバーを用いて乾燥後の厚さが200nmとなるように塗布した後、140℃で1分間乾燥させ硬化させることにより基材の上に剥離層を形成し、基材及び剥離層から成る剥離シートを得た。
【0067】
[粘着体の作製]
シリコーン系粘着剤(東レ・ダウコーニング社製、商品名「SH4280」)100質量部、ベンゾイルパーオキサイド系重合開始剤(東レ・ダウコーニング社製、商品名「RC−13」)1.2質量部、m−トルオイルパーオキサイド系重合開始剤とベンゾイルパーオキサイド系重合開始剤の混合物(日油社製、商品名「ナイパーBMT−K−40」)3質量部、及びトルエン100質量部を混合して過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤溶液を得た。この粘着剤溶液を、支持体としての厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上にアプリケーターにより塗工した後、80℃で3分間加熱して乾燥し、次いで140℃で3分間加熱して乾燥し硬化させて、厚さ50μmの粘着層を形成し、支持体と粘着層から成る粘着シートを得た。次いで、この粘着シートを、各実施例、比較例及び参考例それぞれで得た剥離シートに、粘着シートの粘着層と剥離シートの剥離層とが密着するように、貼り合わせて粘着体を得た。
【0068】
[評価方法]
[剥離力測定]
各実施例、比較例及び参考例の剥離シートから得た各粘着体を、70℃で3日間放置し、その放置後の粘着体を用いて剥離力の測定を行った。剥離力の測定は、JIS−Z0237に準拠し、粘着体を幅20mm、長さ200mmに裁断し、引張試験機を用いて、支持体及び粘着層から成る粘着シートを固定した状態で、剥離シートを300mm/分の速度で180°方向に引っ張ることにより、剥離力を測定した。
【0069】
[耐ブロッキング性評価]
各実施例、比較例及び参考例で得られた剥離シートについて、幅20mm、長さ18cmに裁断した2枚の剥離シートを、長さ方向に3cmずらし、かつ剥離層表面と基材表面とが接触するように重ねた。次に、この重ね合わせた2枚の剥離シートに、100g/cmの荷重をかけた状態で60℃の環境下で24時間放置した。その後、2枚の剥離シートのうちの一方の剥離シートを固定し、引張試験機により他方の剥離シートを60mm/分の速度で反対方向に引っ張り、引張せん断力を測定し、以下の3段階の基準に従い評価した。
◎:引張せん断力が、1Nよりも小さく、スムーズに剥離できるレベルである。
○:引張せん断力が、1N以上5N未満であり、ブロッキングがやや見られるが実用上問題ないレベルである。
×:引張せん断力が、5N以上であり、ブロッキングが顕著に見られるレベルである。
【0070】
[配合表]
【表1】

【0071】
[評価結果]
【表2】

【0072】
以上のように、本発明の実施例1〜13においては、フルオロシリコーン系剥離剤を用いたものと同様に、剥離シートの耐ブロッキング性を優れたものとしつつ、シリコーン系粘着剤に対する剥離性能を良好にすることができた。一方、比較例1、2では、剥離剤のアクリル系ポリマー(B)の配合量を多くし又は少なくし過ぎたため、ブロッキングが生じ又は剥離不良が生じて、良好な性能を有する剥離シートを得ることができなかった。また、比較例3では、アクリル系ポリマー(B)が、炭素数が16を超えるアルキル基を有したため、剥離力が大きくなりすぎ、良好な剥離性能を有する剥離シートを得ることができなかった。さらに、比較例4では、シリコーン系粘着剤と強く粘着するシリコーン系剥離剤を使用したため、剥離不良が生じた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材上に設けられた剥離剤組成物の硬化物からなる剥離層とを備える剥離シートと、
前記剥離層の上に設けられたシリコーン系粘着剤を含有する粘着層とを備え、
前記剥離剤組成物が、ポリエステル樹脂(A)と、下記一般式(1)で表される構成単位を含むアクリル系ポリマー(B)と、架橋剤(C)とを含有し、
前記ポリエステル樹脂(A)の配合量をA質量部とし、前記アクリル系ポリマー(B)の配合量をB質量部としたとき、質量比A/Bが、50/50〜95/5の範囲であることを特徴とする粘着体。
【化1】

(一般式(1)において、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは炭素数12〜16のアルキル基を示す。)
【請求項2】
前記アクリル系ポリマー(B)が、さらに水酸基、アミノ基、及びカルボキシル基から成る群から選択される官能基を有する構成単位を含むことを特徴とする請求項1に記載の粘着体。
【請求項3】
前記ポリエステル樹脂(A)の数平均分子量が、500〜10000であることを特徴とする請求項1に記載の粘着体。
【請求項4】
前記アクリル系ポリマー(B)の質量平均分子量が、70000〜2000000であることを特徴とする請求項1に記載の粘着体。
【請求項5】
前記ポリエステル樹脂(A)が、水酸基を有することを特徴とする請求項1に記載の粘着体。
【請求項6】
前記架橋剤(C)が、多官能アミノ化合物、多官能イソシアネート化合物、多官能エポキシ化合物、又は多官能金属化合物であることを特徴とする請求項1に記載の粘着体。
【請求項7】
前記架橋剤(C)の配合量が、前記ポリエステル樹脂(A)と前記アクリル系ポリマー(B)の合計量100質量部に対して、1〜30質量部であることを特徴とする請求項1に記載の粘着体。
【請求項8】
シリコーン系粘着剤を含有する粘着層に対して使用される剥離シートであって、
基材と、前記基材上に設けられた剥離剤組成物の硬化物からなる剥離層とを備え、
前記剥離剤組成物が、ポリエステル樹脂(A)と、下記一般式(1)で表される構成単位を含むアクリル系ポリマー(B)と、架橋剤(C)とを含有し、
前記ポリエステル樹脂(A)の配合量をA質量部とし、前記アクリル系ポリマー(B)の配合量をB質量部としたとき、質量比A/Bが、50/50〜95/5の範囲であることを特徴とする剥離シート。
【化2】

(一般式(1)において、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは炭素数12〜16のアルキル基を示す。)

【公開番号】特開2012−72372(P2012−72372A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183591(P2011−183591)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】