説明

粘着剤組成物、該粘着剤組成物を用いたプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタ、及びプラズマディスプレイパネル表示装置

【課題】セシウム・タングステン複合酸化物微粒子をアクリル系樹脂粘着剤に含有させてなる粘着剤組成物の耐湿熱性を向上させて、近赤外域の透過率の上昇を防止することで、長期間にわたり近赤外線の吸収能を維持できる粘着剤組成物を提供する。
【解決手段】粘着剤組成物は、アクリル酸アルキルエステルモノマーおよびメタクリル酸アルキルエステルモノマーよりなる群から選ばれるモノマーを含むモノマーを重合させて得られる重合体からなる(メタ)アクリル系樹脂粘着剤と、一般式CsxWyOz(Csはセシウム、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1.1、2.2≦z/y≦3.0)で表されるセシウム・タングステン複合酸化物微粒子と、金属不活性化剤などの透過率上昇抑制剤とを含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐湿熱性を向上させた粘着剤組成物、該粘着剤組成物を用いたプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタ、及び該複合フィルタとプラズマディスプレイパネルとを貼付したプラズマディスプレイパネル表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電気電子機器の機能高度化と利用増加に伴い、電磁気的なノイズ妨害(Electro Magnetic Interference;EMI)が増えた。陰極線管(CRTという)、プラズマディスプレイパネル(Plasma・Display・Panel;PDPという)などのディスプレイでも電磁波が発生する。PDPは、データ電極と蛍光層を有するガラスと、透明電極を有するガラスとの組合体であり、作動すると電磁波、近赤外線、及び熱が大量に発生する。
【0003】
通常、電磁波を遮蔽するためPDPの前面に、電磁波遮蔽用シートを含む前面板を設ける。ディスプレイ前面から発生する電磁波の遮蔽性は、30MHz〜1GHzにおいて30dB以上の機能が必要である。なお、本発明において単に電磁波と言った場合は、周波数が前記範囲を中心とするkHz〜GHz帯の電磁波を言い、赤外線、可視光線、紫外線、X線などを含まないものとする(例えば、赤外線帯域の周波数の電磁波は赤外線と呼称する。)。
電磁波遮蔽用シートの電磁波遮蔽層としては、電磁波遮蔽作用を十分に発揮することに加え適度な透明性(可視光透過性)を有することも必要なため、金属メッシュが多用される。電磁波遮蔽層として金属メッシュを用いる場合には、当該金属メッシュの凹凸を平坦化し、他の光学フィルムと貼り合わせるために、金属メッシュを粘着剤層で被覆する。
また、プラズマディスプレイ前面より発生する波長800〜1,100nmの近赤外線(以下、NIRとも称する)も、他のVTRなどの機器を誤作動させるので、遮蔽する必要がある。更に、プラズマディスプレイから放射する波長590nm付近の光(ネオン光)を遮断する機能、画像の色相調整を行って色再現性を向上させる機能、更には外光の不要な反射を抑える機能等が求められる。
【0004】
前記各機能を実現するために、電磁波遮蔽用シートに、近赤外線吸収フィルタ、反射防止フィルタ等の複数の光学フィルタとを積層して、画像表示装置から発生する不要な電磁波及び特定波長の光を遮蔽し、且つ画像表示装置に必要とされる各種機能を付与することができる板状の複合フィルタをプラズマディスプレイパネルの前面板として用いられている。
このような複合フィルタは、通常、硝子基板(プラズマディスプレイパネル自体の前面保護板用硝子基板、或いはこれと別個に設けるフィルタ用の硝子基板)の表裏両面に、透明樹脂基材を有するフィルタが多数貼り合わされて製造されるため、積層数や積層工程数が多く、裁断工程も硝子基板表面用のフィルタの裁断工程と硝子基板裏面用のフィルタの裁断工程との2工程必要で、生産効率上問題があった。また、基板の材料が硝子である為、重量、体積ともに嵩み、更には破損し易いという問題も有った。
近年、電磁波遮蔽用シートに、その他の光学フィルタフィルム、表面保護フィルム等の様々なフィルムを積層してなる、可撓性のシート状複合フィルタを、前面板用ガラス基板に貼付したり、或いは、プラズマディスプレイパネル表面のガラス基板に直接貼付して用いることが、検討されている。このシート状複合フィルタは、重くて嵩張る前面板が不要になるという利点がある。
また、複合フィルタの積層数をできるだけ少なくしつつ多数の光学フィルタ機能を付与するために、近赤外線吸収機能、ネオン光吸収機能、色調調整機能のような2以上の光学フィルタ機能を一つの層に付与したり、粘着剤層に近赤外線吸収機能等の光学フィルタ機能を付与することが試みられている。
【0005】
【特許文献1】特開2006−154516号公報
【特許文献2】特開2006−282736号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、粘着剤層として機能するような従来用いられてきたアクリル系粘着剤層に、有機系近赤外吸収剤(有機色素)を含有させると、当該有機系近赤外吸収剤が劣化して光学フィルタとしての分光特性が変化すると言う問題がある。
本発明者らは、アクリル系粘着剤層に近赤外線吸収剤として、セシウム・タングステン複合酸化物微粒子を含有させたところ、アクリル系粘着剤による分解を起こさずに、近赤外線吸収機能が長期安定して持続することを発見した。
しかし、セシウム・タングステン複合酸化物微粒子を含有するアクリル系粘着剤層を高温高湿環境下で保存する加速劣化試験を行なったところ、500〜1100nm付近で透過率の上昇が判明した。この波長領域での透過率上昇により可視域の変化が色味変化として現れ、一方、近赤外域の変化が、近赤外線吸収能の低下として現れ、問題となった。
【0007】
特許文献1には、基材内または/及び被膜内に、近赤外線吸収材料として複合タングステン酸化物の粒子を分散させたPDP用近赤外線吸収材フィルタが記載されている。特許文献1において、複合タングステン酸化物の粒子を分散させる被膜の材料として例示列挙されたもののなかには紫外線硬化樹脂、熱可塑性樹脂等と共に、粘着剤も含まれているが、実際に粘着剤層に複合タングステン酸化物の粒子を分散させた実施例は記載されていない。
また、複合タングステン酸化物は顔料であるため、複合タングステン酸化物の微粒子を分散させた層は着色する。従って、特許文献1に記載されているような近赤外線吸収フィルターをそのままディスプレイの前面に配置される場合のように、複合タングステン酸化物微粒子を分散させた層が、ディスプレイ前面に配置した際に表面付近に配置される層として用いられると、ディスプレイを消している時にディスプレイ前面が複合タングステン酸化物微粒子の色で着色したように見えるため使用者に好まれないという問題がある。
特許文献1には、複合タングステン酸化物微粒子が分散されている層を反射防止層の高屈折率層として用いることも記載されているが、この場合においても、最表面層となる反射防止層の低屈折率層は薄膜であるため、ディスプレイ前面に配置された場合にはディスプレイ前面が複合タングステン酸化物微粒子の色で着色したように見える。
【0008】
特許文献2には、タングステン酸化物微粒子、ヒンダードアミン系光安定剤、および樹脂を含有する赤外線遮断材料微粒子分散体が記載されている。しかし、特許文献2に記載された赤外線遮断材料微粒子分散体は、太陽光や電球等の外部光源から熱成分を除去、減少するための熱線遮断材料として用いられるものであり、PDP用近赤外線吸収材フィルタとして用いることは記載されていない。特許文献2の上記赤外線遮断材料微粒子分散体は、マトリックス成分である樹脂として粘着剤をマトリックス成分とすることは記載されておらず、実施例では紫外線硬化樹脂を用いている。
また、特許文献2の上記赤外線遮断材料微粒子分散体にヒンダードアミン系光安定剤を含有させる理由は、樹脂などの高分子材料に紫外線が照射されたときに紫外線のエネルギーによって高分子鎖が切断されて活性な有害ラジカルが発生し、高分子材料の劣化が連鎖的に進み、該有害ラジカルが、タングステン酸化物微粒子、または/及び、複合タングステン酸化物微粒子中のタングステンに対して還元的に作用して、新たに5価のタングステンが増加するに伴って、着色濃度が高くなることを防止するためである。
【0009】
本発明は、前記実状に鑑みて成し遂げられたものであり、その目的は、セシウム・タングステン複合酸化物微粒子をアクリル系樹脂粘着剤に含有させてなる粘着剤組成物の耐湿熱性を向上させて、長期間にわたり、透過率上昇による近赤外線吸収能の低下を防止する粘着剤組成物を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、上記粘着剤組成物を用いて、近赤外線吸収機能を長期間にわたり安定して維持できる粘着剤層を設けたプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタ、及び当該ディスプレイ用シート状複合フィルタが用いられているプラズマディスプレイパネル表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る粘着剤組成物は、アクリル酸アルキルエステルモノマーおよびメタクリル酸アルキルエステルモノマーよりなる群から選ばれるモノマーを含むモノマーを重合させて得られる重合体からなる(メタ)アクリル系樹脂粘着剤と、一般式CsxWyOz(Csはセシウム、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1.1、2.2≦z/y≦3.0)で表されるセシウム・タングステン複合酸化物微粒子と、有機系紫外線吸収剤、無機系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、リン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、ヒドロペルオキシド分解剤、金属不活性化剤から選ばれた少なくとも一種の透過率上昇抑制剤と、を含有することを特徴とする。
本発明に係る粘着剤組成物は、該樹脂粘着剤中のラジカル、セシウム・タングステン複合酸化物微粒子の触媒作用、及び/又は残存エッチング液などに起因して生じる近赤外域での透過率の上昇を前記透過率上昇抑制剤により防止して、近赤外線の吸収能を維持する。また、近赤外線吸収能が維持されると共に可視域での色味変化が防止される付随的効果も得られる。
【0011】
本発明に係る粘着剤組成物においては、前記金属不活性化剤が、サリチル酸誘導体、ヒドラジド誘導体、シュウ酸アミド誘導体、イオウ含有ホスファイトから選ばれた少なくとも一種の化合物を含むことが好ましい。
【0012】
本発明に係る粘着剤組成物においては、前記(メタ)アクリル系樹脂粘着剤のガラス転移温度(Tg)が−50〜20℃であることが好ましい。
本発明に係る粘着剤組成物においては、前記(メタ)アクリル系樹脂粘着剤の引張弾性率を算出する一例として、該(メタ)アクリル系樹脂粘着剤を(株)ユービーエム社製「Rheogel−E4000」により、チャック間距離20mm、幅5mm、歪み10μm、昇温速2℃/min、周波数10Hzという条件で、引張り貯蔵弾性率(弾性項)E’及び引張り損失弾性率(粘性項)E’’を測定する。そして、E*=√(E’+E’’)から引張弾性率E*を算出し、該引張弾性率E*が10〜10Paであることが好ましい。
本発明に係る粘着剤組成物においては、前記(メタ)アクリル系樹脂粘着剤の数平均分子量が30,000〜1,000,000であることが好ましい。
前記(メタ)アクリル系樹脂粘着剤が、前述した各数値範囲内の一つ以上を満たすことにより、粘着性により優れる(メタ)アクリル系樹脂粘着剤が得られる。
【0013】
本発明に係る粘着剤組成物においては、前記セシウム・タングステン複合酸化物微粒子の平均分散粒径が800nm以下であることが、該粘着剤組成物の可視域の透過率が高くなる点から好ましい。
本発明に係る粘着剤組成物においては、前記セシウム・タングステン複合酸化物微粒子が、六方晶、正方晶、立方晶のいずれか1種類以上の結晶構造を含むことが、光学特性の耐久性向上の点から好ましい。
本発明に係る粘着剤組成物においては、前記セシウム・タングステン複合酸化物微粒子の表面が、Si、Ti、Zr、Alから選択される1種類以上の元素を含有する酸化物で被覆されていることが、光学特性の耐久性向上の点から好ましい。
【0014】
本発明に係る粘着剤組成物においては、エポキシ系架橋剤及び/又はイソシアネート系架橋剤を含むことが、該粘着剤層の硬さを調整できる点から好ましい。
本発明に係る粘着剤組成物においては、金属石けん及び/又はハイドロタルサイトを含むことが、イオンの触媒作用に対して失活作用があるために好ましい。
【0015】
本発明に係るプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタの第一の態様は、プラズマディスプレイパネルの前面に配置されたガラス板に直接貼付されるためのプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタであって、
(A)第一の透明樹脂基材シートの一方の面に耐擦傷機能、反射防止機能、及び防眩機能より成る群から選択される1種以上の機能を有する1層以上の機能層を有する光学フィルタ、
(B)本発明に係る粘着剤組成物からなる近赤外線吸収層、
(C)第二の透明樹脂基材シートの一方の面に透視性導電層を備えた電磁波遮蔽シート、及び、
(D)粘着剤層、をこの順に有することを特徴とする。
【0016】
本発明に係るプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタの第一の態様は、当該近赤外線吸収層が本発明に係る粘着剤組成物からなるので、前記透過率上昇抑制剤によりベース樹脂である前記(メタ)アクリル系樹脂粘着剤の近赤外域での透過率の上昇を防止して近赤外線の吸収能を維持することで、長期安定性に優れた近赤外線吸収層を有する複合フィルタが得られる。
また、シート状複合フィルタの第一の態様においては、第一の透明樹脂基材シートの一面側に設けられた機能層、近赤外線吸収層、及び必要に応じて設けられる第二の粘着剤層を用いて、必要な光学フィルタ機能を複合化している。
従って、従来は多数含まれていた光学フィルタの透明樹脂基材シートやそれらを貼り合わせるための接着剤層又は粘着剤層を減らすことができる。その結果、本発明のプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタは、材料費が低減できる上、少ない積層数で厚みを薄くできるので複合フィルタとしての可撓性にも優れる。
また本発明のシート状複合フィルタの第一の態様は、各層の配置を最適化したので、貼り合わせ工程が極めて少ないので、生産効率に優れる。
さらに、本発明の複合フィルタは、前記セシウム・タングステン複合酸化物微粒子を含有する近赤外線吸収層の位置を最適化したため、複合フィルタ表面は該セシウム・タングステン複合酸化物微粒子の色味を帯びず、ディスプレイ前面に配置されてディスプレイを消している場合にディスプレイ前面が着色したように見えて使用者に好まれないという従来の問題を解消できる。
【0017】
本発明に係るプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタの第一の態様においては、前記透視性導電層は、周縁部の一部が露出していることが好ましい。このような実施形態の場合、接地のための剥離工程等を必要とせず、当該複合フィルタの貼付加工又は複合フィルタを形成するための接着加工と、該透視性導電層周縁の接地用領域の確保を一つの工程で同時に行うことができるため、更に工程数を減らすことができ、生産性が向上する。
本発明に係るプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタの第一の態様においては、前記透視性導電層が、導電性メッシュ層であることが好ましい。当該複合フィルタの貼付面或いは複合フィルタを形成するための接着面とすることができる粘着剤層又は近赤外線吸収層を、電磁波遮蔽シートの導電性メッシュ層面上に直接、導電性メッシュ層の凹凸を平坦化するように設ける。これにより、該複合フィルタの貼付加工又は複合フィルタ形成のための接着加工と、導電性メッシュ層の凹凸の平坦化を一つの工程で同時に行うことができるため、工程数や平坦化層を減らすことができる。
【0018】
本発明に係るプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタの第一の態様のうち好適な実施形態の一例としては、前記電磁波遮蔽シート(C)における導電性メッシュ層は、前記第二の透明樹脂基材シート側の面が黒化処理されており、前記粘着剤層(D)側に配置され、前記粘着剤層(D)が、前記導電性メッシュ層の凹凸を平坦化し、且つ該導電性メッシュ層の周縁部の一部を露出させており、且つ、前記光学フィルタ(A)の第一の透明樹脂基材シートの機能層を有しない面と、前記電磁波遮蔽シート(C)の第二の透明樹脂基材シートの導電性メッシュ層を有しない面とが、前記近赤外線吸収層(B)を介して積層されている実施形態が挙げられる。
【0019】
本発明に係るプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタの第一の態様のうち好適な実施形態の他の一例としては、前記電磁波遮蔽シート(C)における導電性メッシュ層は、前記第二の透明樹脂基材シートと反対側の面が黒化処理されており、前記近赤外線吸収層(B)側に配置され、前記粘着剤層(D)が、前記第二の透明樹脂基材シートの導電性メッシュ層を有しない面に配置され、前記光学フィルタ(A)の第一の透明樹脂基材シートの機能層を有しない面と、前記電磁波遮蔽シート(C)の導電性メッシュ層側の面とが、前記近赤外線吸収層(B)を介して積層され、該近赤外線吸収層(B)は前記導電性メッシュ層の凹凸を平坦化し、且つ該導電性メッシュ層の周縁部の一部を露出させている実施形態が挙げられる。
【0020】
本発明に係るプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタの第一の態様においては、前記粘着剤層(D)及び/又は前記近赤外線吸収層(B)に、ネオン光吸収剤及び/又は色補正色素が含まれることが好ましい。
該ネオン光吸収剤が含まれる場合には、少なくともディスプレイからのオレンジ色発光が抑制可能で、鮮やかな赤色を得ることができる。また、少なくとも波長380〜570nm若しくは610〜780nmに吸収極大を有する色補正色素が含まれる場合には、可視光の波長領域における透過率を調節することによって、画像の色バランスを補正したり、色純度を改善する機能を付与したりすることができる。
【0021】
本発明に係るプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタの第一の態様においては、前記光学フィルタ(A)中に紫外線吸収剤を含有することが、前記ネオン光吸収剤及び/又は前記色補正色素の劣化を効果的に防止する点から好ましい。
【0022】
本発明に係るプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタの第二の態様は、透明樹脂基材シートの一方の面に透視性導電層を備えた電磁波遮蔽シートの一方の面に、本発明に係る粘着剤組成物からなる近赤外線吸収層を備え、他方の面に耐擦傷機能、反射防止機能、及び防眩機能よりなる群から選択される1種以上の機能を有する表面保護層を備えることを特徴とする。
【0023】
本発明に係るプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタの第二の態様は、当該近赤外線吸収層が、本発明に係る粘着剤組成物からなるので、前記透過率上昇抑制剤によりベース樹脂である前記(メタ)アクリル系樹脂粘着剤の近赤外域での透過率の上昇を防止して近赤外線の吸収能を維持することで、長期安定性に優れた近赤外線吸収層を有する複合フィルタが得られる。
また、シート状複合フィルタの第二の態様においては、実質的に1つの透明樹脂基材シートとその両面を用いて、電磁波遮蔽機能以外に、近赤外線吸収機能、ネオン光吸収機能、色補正機能、及び、紫外線吸収機能、更には、反射防止機能、防眩機能、及び/又は耐擦傷機能等の各種機能を複合化している。
シート状複合フィルタの第二の態様は、透明樹脂基材シートを1枚しか含まないので、上述した第一の態様よりも、さらに積層数を減らすことができ、材料費の低減、複合フィルタとしての可撓性に優れている。また、第二の態様においては、前記光学フィルタと前記電磁波遮蔽シートにおける透明樹脂基材シート同士を貼り合わせる工程が不要である。
さらに、シート状複合フィルタの第二の態様は、上述した第一の態様と同様に、セシウム・タングステン複合酸化物微粒子を含有する近赤外線吸収層の位置を最適化したため、複合フィルタ表面は該セシウム・タングステン複合酸化物微粒子の色味を帯びず、ディスプレイ前面に配置されてディスプレイを消している場合にディスプレイ前面が着色したように見えて使用者に好まれないという従来の問題を解消できる。
【0024】
本発明に係るプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタの第二の態様においては、前記近赤外線吸収層は、さらにネオン光吸収剤及び/又は色補正色素を含有することが好ましい。該ネオン光吸収剤が含まれる場合には、少なくともディスプレイからのオレンジ色発光が抑制可能で、鮮やかな赤色を得ることができる。また、少なくとも波長380〜570nm若しくは610〜780nmに吸収極大を有する色補正色素が含まれる場合には、可視光の波長領域における透過率を調節することによって、画像の色バランスを補正したり、色純度を改善する機能を付与したりすることができる。
【0025】
本発明に係るプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタの第二の態様においては、前記透明樹脂基材シート及び/又は前記表面保護層に紫外線吸収剤を含有することが、前記ネオン光吸収剤及び/又は前記色補正色素の劣化を効果的に防止する点から好ましい。
【0026】
本発明に係るプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタの第二の態様においては、前記透視性導電層は、周縁部の一部が露出していることが好ましい。このような実施形態の場合、接地のための剥離工程等を必要とせず、複合フィルタの貼付加工又は表面保護層形成と、該透視性導電層周縁の接地用領域の確保を一つの工程で同時に行うことができるため、更に工程数を減らすことができ、生産性が向上する。
本発明に係るプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタの第二の態様においては、前記透視性導電層が、導電性メッシュ層であることが好ましい。表面保護層又は近赤外線吸収層を、電磁波遮蔽シートの導電性メッシュ層面上に直接、導電性メッシュ層の凹凸を平坦化するように設ける。これにより、導電性メッシュ層の凹凸の平坦化と、近赤外線吸収層の場合は更に複合フィルタの貼付加工とを一つの工程で同時に行うことができるため、工程数や平坦化層を減らすことができる。
【0027】
本発明に係るプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタの第二の態様のうち好適な実施形態の一例としては、前記電磁波遮蔽シートの前記導電性メッシュ層側の面に前記近赤外線吸収層を有し、前記電磁波遮蔽シートの前記透明樹脂基材シートの導電性メッシュ層を有しない面に前記表面保護層を有し、且つ、前記電磁波遮蔽シートにおける導電性メッシュ層は、前記透明樹脂基材シート側の面が黒化処理されている実施形態が挙げられる。
【0028】
本発明に係るプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタの第二の態様のうち好適な実施形態の他の一例としては、前記電磁波遮蔽シートの前記導電性メッシュ層側の面に前記表面保護層を有し、前記電磁波遮蔽シートの前記透明樹脂基材シートの導電性メッシュ層を有しない面に前記近赤外線吸収層を有し、且つ、前記電磁波遮蔽シートにおける導電性メッシュ層は、前記透明樹脂基材シート側と反対側の面が黒化処理されている実施形態が挙げられる。
【0029】
本発明に係るプラズマディスプレイ表示装置は、プラズマディスプレイの前面に、本発明に係るプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタが直接貼り付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明の粘着剤組成物によれば、セシウム・タングステン複合酸化物微粒子をアクリル系樹脂粘着剤に含有させてなる粘着剤組成物の耐湿熱性を向上させて、近赤外域での透過率の上昇を防止して近赤外線の吸収能を長期間にわたり安定して維持できる。
また、本発明によれば、上記粘着剤組成物を用いて、近赤外線吸収機能を長期間にわたり安定して維持できる粘着剤層を設けたプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタ、及び当該ディスプレイ用シート状複合フィルタが用いられているプラズマディスプレイパネル表示装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
I.粘着剤組成物
本発明に係る粘着剤組成物は、アクリル酸アルキルエステルモノマーおよびメタクリル酸アルキルエステルモノマーよりなる群から選ばれるモノマーを含むモノマーを重合させて得られる重合体からなる(メタ)アクリル系樹脂粘着剤と、一般式CsxWyOz(Csはセシウム、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1.1、2.2≦z/y≦3.0)で表されるセシウム・タングステン複合酸化物微粒子と、有機系紫外線吸収剤、無機系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、リン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、ヒドロペルオキシド分解剤、金属不活性化剤から選ばれた少なくとも一種の透過率上昇抑制剤とを含有することを特徴とする。
なお、本発明において透過率上昇抑制剤とは、500nm〜1100nm付近の透過率の上昇を抑制するものである。また、本発明において、該粘着剤組成物に更に他の成分を含有させても良い。
【0032】
本発明の粘着剤組成物は、PDP用シート状複合フィルタ中の近赤外線吸収層を形成する材料として好適に用いられる。粘着剤をベースとする近赤外線吸収層は粘着剤層としての機能を併せ持つので、複合フィルタの層数を減らし、生産性を向上できることに加え、光硬化性樹脂をベースとするものと比べて再剥離性(リワーク性)及び可撓性を有しているので、以下のような理由からPDP用シート状複合フィルタへの利用に適している。
PDP用シート状複合フィルタは、PDPパネルの前面や、PDP前面板の大面積高品質な硝子基板に直接貼付されるが、PDPパネルやPDP前面板は非常に高価である。そのため、PDP用シート状複合フィルタの貼付に失敗した場合には、当該複合フィルタをPDPパネルやPDP前面板から剥離し、PDPパネルやPDP前面板を再利用することが要求されている。PDP用シート状複合フィルタを、粘着剤層を介してPDPパネルやPDP前面板に貼付する場合には、UV硬化型接着剤を用いる場合と異なり、PDPパネルやPDP前面板を傷つけずに容易に剥離することができる。この点で、再剥離性が重要となる。
また、PDP用シート状複合フィルタは、大画面のPDPパネルやPDP前面板に貼付されるので、できるだけ薄く可撓性が高い方が取り扱いが容易である。この点で、可撓性が重要である。
以下、本発明の粘着剤組成物について詳しく説明する。
【0033】
(1)(メタ)アクリル系樹脂粘着剤
本発明においては、粘着剤組成物のベース材料(マトリックス)として、(メタ)アクリル系樹脂粘着剤を用いる。(メタ)アクリル系樹脂粘着剤は、粘着性、透明性、成膜性に優れるので、PDP用シート状複合フィルタの近赤外線吸収層のベース材料として適している。
ここで、粘着剤とは、接着剤の1種をいい、接着の際に室温下(例えば、15〜40℃)で、単に適度な、通常、軽く手で押圧する程度の加圧のみにより、表面の粘着性のみで接着可能なものをいう。粘着剤の接着力発現には、通常、加熱、加湿、放射線(紫外線や電子線等)照射といった圧力以外の物理的なエネルギー乃至作用が不要で、且つ重合反応等の化学反応も不要である。又、粘着剤は、接着後も再剥離可能な程度の接着力を経時的に維持し得るものである。
【0034】
ところで、ハードコート層などに用いられるUV硬化型アクリル樹脂は、架橋密度が高く、硬化後は流動性が見られない。一般的に、硬化後のUV硬化型アクリル樹脂はガラス転移温度(Tg)及び、引張弾性率(以下、圧縮弾性率も併せた意味で用いる)が高いことが知られている。例えば、ハードコート層用のUV硬化型アクリル樹脂のガラス転移温度は通常50〜110℃である。また、ハードコート層用のUV硬化型アクリル樹脂の引張弾性率は、通常10〜1010Paである。
【0035】
これに対し本発明に係る(メタ)アクリル系樹脂粘着剤のガラス転移温度(Tg)は、UV硬化型アクリル樹脂のガラス転移温度よりも低い。該(メタ)アクリル系樹脂粘着剤のガラス転移温度(Tg)は−50〜20℃であることが好ましく、−20〜10℃であることがより好ましい。
【0036】
本発明におけるガラス転移温度の第一の測定方法は、示差走査熱量計(例えば、NETZSCH社製、商品名DSC204 Phoenix)を用い、JIS K7121−1987に準拠して行うものである。測定方法は、例えば、測定開始温度は−50℃、測定終了温度は200℃、昇温および冷却速度は2℃/分、そして窒素雰囲気下で実施することができる。上記手順に従うDSC(示差走査熱量測定)により得られたDSC曲線において、各ベースラインの延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点の温度、すなわち中間点ガラス転移温度が本発明におけるガラス転移温度として特定される。
または、ガラス転移温度の第二の測定方法は、比熱測定と動的粘弾性測定とを組み合わせた測定方法から得られる結果を基準とする。測定方法の一例としては、(株)ユービーエム社製「Rheogel−E4000」を用い、測定条件はチャック間距離20mm、幅5mm、歪み10μm、昇温速2℃/min、周波数10Hzとする。E'を引張り貯蔵弾性率(弾性項)、E''を引張り損失弾性率(粘性項)としたとき、tanδ=E'/ E''とし、その最大値を示す値が動的粘弾性を基に算出したTg(℃)となる。
【0037】
また、本発明に係る(メタ)アクリル系樹脂粘着剤は、引張弾性率が10〜10Paであることが好ましく、10〜10であることがより好ましい。本発明に係る(メタ)アクリル系樹脂粘着剤は、前記UV硬化型アクリル樹脂より充分軟らかく、クラック(ひび割れ)も生じにくくまた流動性及び耐衝撃性にも優れることが分かる。なお、引張弾性率を算出する一例として、(株)ユービーエム社製「Rheogel−E4000」により、チャック間距離20mm、幅5mm、歪み10μm、昇温速2℃/min、周波数10Hzという条件で測定される値を用いる。
【0038】
近赤外線吸収層としての透明性は、高いほどよい。本発明に係る粘着剤組成物から近赤外線吸収層を形成したときに、可視光域380〜780nmにおける光線透過率が70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましくなる光透過性が得られるような粘着剤組成物及び膜厚で用いることが好ましい。
【0039】
(メタ)アクリル系樹脂粘着剤は、アクリル酸アルキルエステルモノマーおよびメタクリル酸アルキルエステルモノマーよりなる群より選ばれるモノマーを含むモノマーを重合させて得られる重合体からなる。
炭素原子数1〜18程度のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとカルボキシル基を有するモノマーとの共重合体や、炭素原子数1〜18程度のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの2種以上を用いた共重合体であるのが一般的である。
なお、本発明において(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸をいう。
【0040】
使用される(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸sec−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル及び(メタ)アクリル酸ラウリル等を挙げることができる。
また、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーは、(メタ)アクリル系樹脂粘着剤中に30〜99.5重量%の量で共重合されている。
【0041】
また、(メタ)アクリル系樹脂粘着剤を形成するカルボキシル基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、マレイン酸モノブチル及びβ−カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基を含有するモノマーを挙げることができる。
更に、本発明で用いられる(メタ)アクリル系樹脂粘着剤には、上記の他に、該(メタ)アクリル系樹脂粘着剤の特性を損なわない範囲内で他の官能基を有するモノマーが共重合されていても良い。他の官能基を有するモノマーの例としては、以下のものが挙げられる:
(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル及びアリルアルコール等の水酸基を含有するモノマー;
(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド及びN−エチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基を含有するモノマー;
N−メチロール(メタ)アクリルアミド及びジメチロール(メタ)アクリルアミド等のアミド基とメチロール基とを含有するモノマー;
アミノメチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びビニルピリジン等のアミノ基を含有するモノマーのような官能基を有するモノマー;
アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸グリシジルエーテルなどのエポキシ基含有モノマー。
この他にもフッ素置換(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリロニトリルなどのほか、スチレン及びメチルスチレンなどのビニル基含有芳香族化合物、酢酸ビニル、ハロゲン化ビニル化合物などを挙げることができる。
【0042】
さらに、本発明で用いられる(メタ)アクリル系樹脂粘着剤には、上記のような他の官能基を有するモノマーの他に、他のエチレン性二重結合を有するモノマーを使用することができる。
ここでエチレン性二重結合を有するモノマーの例としては、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジオクチル及びフマル酸ジブチル等のα,β−不飽和二塩基酸のジエステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;ビニルエーテル;スチレン、α−メチルスチレン及びビニルトルエン等のビニル芳香族化合物;(メタ)アクリロニトリル等を挙げることができる。
また、上記のようなエチレン性二重結合を有するモノマーの他に、エチレン性二重結合を2個以上有する化合物を併用することもできる。このような化合物の例としては、ジビニルベンゼン、ジアリルマレート、ジアリルフタレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド等を挙げることができる。
【0043】
さらに、上記のようなモノマーの他に、アルコキシアルキル鎖を有するモノマー等を使用することができる。(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルの例としては、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸4−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸3−エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−エトキシブチルなどを挙げることができる。
【0044】
また、(メタ)アクリル系樹脂粘着剤は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの単独重合体であっても良い。例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単独重合体としては、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、ポリ(メタ)アクリル酸オクチル等が挙げられる。
【0045】
アクリル酸エステル単位を2種以上含む共重合体としては、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エチル共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル共重合体等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステルと他の官能性モノマーとの共重合体としては、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−エチレン共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル−スチレン共重合体が挙げられる。
【0046】
(メタ)アクリル系共重合体は種々の方法で得ることができる。例えば、アゾ系化合物や過酸化物などの重合開始剤を用い溶液中で重合する溶液重合方法、エマルション重合方法や塊状重合方法、光開始剤を用いて光や放射線を照射して行う重合方法など慣用の重合方法を採用することができるが、処理工程が比較的簡単で且つ短時間で行える事から溶液重合により重合することが好ましい。
【0047】
溶液重合は、一般的に重合槽内に所定の有機溶媒、モノマー、重合開始剤、及び必要に応じて用いられる連鎖移動剤を仕込み、窒素気流下中又は有機溶媒の還流温度で、撹拌しながら数時間加熱反応させることにより行なわれる。この場合に、有機溶媒、モノマー、重合開始剤及び/又は連鎖移動剤の少なくとも一部を逐次添加しても良い。
溶液重合では、分解してラジカルを発生させる重合開始剤を用いて重合させる方法(ラジカル重合方法)を好適に採用することができる。このようなラジカル重合では、通常のラジカル重合に用いられる重合開始剤を使用することができる。
【0048】
なお、本発明における(メタ)アクリル系樹脂粘着剤の数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)によりポリスチレン換算分子量で求めたものである。例えば装置として東ソー株式会社製GPC装置「HLC−8020」を用い、分離カラムとして、東ソー株式会社製「TSKgel GMHXL」、「G4000HXL」および「G5000HXL」を直列に連結し、溶離剤としてテトラヒドロフランを用い、溶離剤流量:1.0mL/分、カラム温度:40℃、検出方法:示差屈折率(RI)として測定することができる。
本発明に係る(メタ)アクリル系樹脂粘着剤の数平均分子量(Mn)は、30,000〜1,000,000であることが好ましく、5万〜20万であることがより好ましい。また、分子量分布(Mw/Mn)は1.5〜15であることが好ましく、2.0〜10であることがより好ましい。
(メタ)アクリル系樹脂粘着剤の数平均分子量が3万未満であると流動性が大き過ぎて、近赤外線吸収層として形態を保持しにくいおそれが生じる。また、数平均分子量が100万を超えると粘着性が現れ難くなる。
【0049】
(メタ)アクリル系樹脂粘着剤の市販品としては、例えば、商品名:TU−41A(巴川製紙所製)、商品名:No.591、No.5915、No.5919M、CS9621、LA−50、LA−100、HJ−9210、No.595B(日東電工(株)製)、商品名:SKダインSK2094(綜研化学株式会社製)等が、ヘイズが低くなり、且つ、粘着力の点から、好適に用いられる。
【0050】
(2)セシウム・タングステン複合酸化物微粒子
本発明に係る粘着剤組成物の近赤外線吸収剤としては、耐熱性、耐湿性、耐光性が高いセシウム・タングステン複合酸化物微粒子が用いられるので、当該近赤外線吸収層は耐久性に優れ、耐熱性、耐湿性、耐光性が高いものとなる。セシウム・タングステン複合酸化物微粒子は、一般式CsxWyOz(Csはセシウム、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1.1、2.2≦z/y≦3.0)で表記される。
また、セシウム・タングステン複合酸化物微粒子の平均分散粒径は、近赤外線吸収層の透明性の点から800nm以下であることが好ましく、200nm以下であることがさらに好ましく、100nm以下であることが特に好ましい。なおここでの平均分散粒径は、体積平均粒径をいい、粒度分布・粒子径分布測定装置(例えば、日機装株式会社製、ナノトラック粒度分布測定装置)を用いて測定することができる。
【0051】
セシウム・タングステン複合酸化物微粒子は、六方晶、正方晶、立方晶の結晶構造を有する場合に耐久性に優れることから、該六方晶、正方晶、立方晶から選ばれる1つ以上の結晶構造を含むことが好ましく、特に、六方晶の結晶構造を持つものが好ましい。
添加されるCs元素の存在量xは、0.001≦x/y≦1.0であることがより好ましく、x/yは0.33付近であることがさらに好ましい。これは六方晶の結晶構造から理論的に算出されるxの値が0.33であり、この前後の添加量で好ましい光学特性が得られるからである。
一方、酸素の存在量zは、2.2≦z/y≦3.0が好ましい。例えば、Cs0.33WOなどを挙げることができるが、x、zが前記の範囲に収まるものであれば、有用な近赤外線吸収特性を得ることができる。
【0052】
このようなセシウム・タングステン複合酸化物微粒子は、一種のみ単独で使用してもよいが、組成比が異なる該セシウム・タングステン複合酸化物微粒子を混合して使用しても良い。また、前記セシウム・タングステン複合酸化物微粒子の表面を、Si、Ti、Zr、Alのいずれか1種類以上の元素を含有する酸化物で被覆することが、耐候性をより向上させることができる点から、好ましい。
【0053】
セシウム・タングステン複合酸化物微粒子の含有量は、粘着剤組成物中に、1〜25重量%であることが好ましい。含有量が1重量%以上であれば、十分な近赤外線吸収機能を発現でき、25重量%以下であれば、十分な量の可視光線を透過できる。
【0054】
(3)透過率上昇抑制剤
本発明で用いられる透過率上昇抑制剤、すなわち500nm〜1100nm付近の透過率の上昇を抑制する剤としては、有機系紫外線吸収剤、無機系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、リン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、ヒドロペルオキシド分解剤、金属不活性化剤から選ばれる化合物である。
当該透過率上昇抑制剤は、広い酸化防止機能を有する多機能酸化防止剤であり、更に耐湿熱性にも優れている。
本発明に係る粘着剤組成物中には近赤外線吸収剤として有機化合物ではなく、無機化合物であるセシウム・タングステン複合酸化物微粒子が含まれているので、(メタ)アクリル系樹脂粘着剤中の含有成分による近赤外線吸収剤の分解、劣化が抑えられ、耐熱性、耐湿性、耐光性の高い近赤外線吸収層が得られる。さらに、本発明においては、該(メタ)アクリル系樹脂粘着剤の近赤外域での透過率の上昇を防止するために、透過率上昇抑制剤を該粘着剤層中に含有させる。該樹脂の近赤外域の透過率の上昇は、該樹脂粘着剤中のラジカルによる分解劣化(酸化)、セシウム・タングステン複合酸化物微粒子の触媒作用による(メタ)アクリル系樹脂粘着剤の酸化、フォトリソグラフィー法を行った後の残存エッチング液による酸化などが原因であると考えられる。本発明に用いられる透過率上昇抑制剤は、高温高湿環境下で(メタ)アクリル系樹脂の近赤外域の透過率の上昇を防止する効果が高く、該(メタ)アクリル系樹脂粘着剤層の耐湿熱性が向上して、該粘着剤層を長期間使用しても該樹脂の近赤外線吸収能を長期に渡り維持できる粘着剤層を形成できる。
【0055】
本発明に係る粘着剤組成物からなる近赤外線吸収層は、700〜900nmの波長領域の光線透過率を従来の約10%から5%以下に低減すると共に(メタ)アクリル系樹脂の近赤外域での透過率の上昇を防止する。
以下、透過率上昇抑制剤として用いられる各化合物について説明する。
【0056】
(3−1)有機系及び無機系紫外線吸収剤
有機系紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物などが挙げられ、より具体的にはベンゾトリアゾール系化合物としては2−[2’−ヒドロキシ−5’−ビス(a,a−ジメチルベンジル)フェニル]−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチル−フェニル)−ベンゾトリアゾールなどが挙げられ、1,2,3−ベンゾトリアゾールを用いることが好ましい。また、ベンゾフェノン系化合物としては2,4−ジハイドロキシベンゾフェノン、2−ハイドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどが挙げられ、オクタベンゾンを用いることが好ましい。
【0057】
無機系紫外線吸収剤としては、例えば微粒子状の酸化亜鉛、酸化セリウムなどが挙げられる。
【0058】
粘着剤組成物に紫外線吸収剤を含有させることで、(メタ)アクリル系樹脂粘着剤へ紫外線照射される際の紫外線によるアクリルポリマーの分解劣化(酸化)が防止され、近赤外線吸収層の劣化をも防止できる。
本発明に係る粘着剤組成物中の(メタ)アクリル系樹脂粘着剤は、既に重合体となっており、紫外線照射工程を更に行う必要がないために該組成物中に紫外線吸収剤を含有させることが出来る。この点、近赤外線吸収層を形成するための組成物がUV硬化型バインダ樹脂を含有している場合には、紫外線吸収剤を含有させることができないため、本発明の粘着剤組成物との間に明確に組成上の違いがある。
粘着剤組成物中の紫外線吸収剤の含有量は0.02〜0.5重量%であることが好ましい。含有量が0.02重量%未満であると紫外線吸収が不十分で樹脂の劣化が大きい場合がある。また、0.5重量%を超えるとブリードアウトなどが生じるおそれがある。
【0059】
(3−2)ヒンダードアミン系光安定剤
本発明で用いられるヒンダードアミン系光安定剤(一般的にはHALSと称される)としては、2、2、6、6−テトラメチルピペリジン誘導体、または1、2、2、6、6−ペンタメチル−4−ピペリジン誘導体などが挙げられ、特に、ビス(2、2、6、6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、または4−ベンゾイルオキシ−2、2、6、6−テトラメチルピペリジン、またはビス(1、2、2、6、6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートを用いることが好ましい。
【0060】
(3−3)リン系酸化防止剤
本発明で用いられるリン系酸化防止剤とは、一般に3価のリン化合物が、イオン的にROOHをアルコールに分解して、5価リン化合物に変化するものである。
リン系酸化防止剤としては、(ADK STAB PEP−36)、(ADK STAB PEP−45)、(ADK STAB HP−10)、(Irgafos 38)、(Ultranox 641)、(Sandostab P−EPQ)、(GYS P−101)、(Irgafos 12)などが挙げられ、ペンタエリスリトールタイプである(ADK STAB PEP−8)、(ADK STAB PEP−24)、(ADK STAB PEP−36)を用いることが好ましい。
【0061】
(3−4)フェノール系酸化防止剤
本発明で用いられるフェノール系酸化防止剤としては、(2,6−ジーオーブチル−4−メチルフェノール)、(n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、(テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン)、(トリス(3,4−ジ−ブチル−4−ヒドロキシルベンジルイソシアヌレート)、(4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、(トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル) プロピオネート]、(3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)などが挙げられる。
【0062】
(3−5)イオウ系酸化防止剤
本発明で用いられるイオウ系酸化防止剤としては、(DLTDP)、(ADK STAB AO−412S)、(ADK STAB AO−23)などが挙げられ、(ADK STAB AO−412S)を用いることが好ましい。
【0063】
(3−6)金属不活性化剤
本発明で用いられる金属不活性化剤とは、一般に、重金属イオンとキレートを形成することに基づいて、そのレドックス電位を低下させるものである。
金属不活性化剤としては、サリチル酸誘導体、ヒドラジド誘導体、シュウ酸アミド誘導体、イオウ含有ホスファイトなどが挙げられ、(ヒドラジド誘導体)を用いることが好ましい。
【0064】
サリチル酸誘導体としては、(ADK STAB CDA−1)、(ADK STAB CDA−6)などが挙げられ、(ADK STAB CDA−1)を用いることが好ましい。また、ヒドラジド誘導体としては、(Irganox MD 1024)などが好ましく用いられる。
【0065】
シュウ酸アミド誘導体としては、(Naugard XL−1)が好ましく用いられ、またイオウ含有ホスファイトとしては、(Hostanox OSP−1)が好ましく用いられる。
【0066】
(4)架橋剤
粘着剤組成物には、エポキシ系化合物及び/又はイソシアネート系化合物などの架橋剤(硬化剤とも称される)を含有させることが好ましい。なお、イソシアネート系化合物にはキシレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンビスシクロヘキシルイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。架橋剤を含有させることで、近赤外線吸収層をある程度硬くすることで、凝集破壊(層間破壊とも称される)を防止してリワーク性を向上させる。
さらに、本発明に係る粘着剤組成物から作製される近赤外線吸収層は、軟らかい(メタ)アクリル系樹脂粘着剤を用いているためにクリープ変形が起きるおそれがある。そこで、架橋剤を粘着剤組成物に含有させることで、該粘着剤組成物中に架橋を生じさせて、近赤外線吸収層に所定の硬さを付与できる。これにより、粘着剤組成物から作製される近赤外線吸収層のクリープ変形を防止でき、近赤外線吸収層の形態を保持することができる。
【0067】
架橋剤の含有量は、0.2〜1.0重量%であることが好ましく、0.2〜0.4重量%であることがより好ましい。含有量が0.2重量%未満であると粘着剤組成物から作製される近赤外線吸収層を硬くする効果が発現しにくい場合がある。また、1.0重量%を超えると該近赤外線吸収層が硬くなり過ぎて粘着性が低減するおそれがある。
【0068】
(5)白濁防止補助剤
粘着剤組成物には、白濁防止補助剤を含有させることが好ましい。
前述したフォトリソグラフィー法の後には、塩化第二鉄に起因する塩素イオンが生じているおそれがある。また、(メタ)アクリル系樹脂粘着剤を重合する際に用いられる重金属である重合触媒が残存し、金属イオンが生じているおそれもある。更には、セシウム・タングステン複合酸化物微粒子からセシウムが脱離してセシウムイオンとして存在しているおそれもある。これらの塩素イオン、金属イオンは、透過率上昇抑制剤の作用を失活させるおそれがある。これらイオンの作用を阻害する目的で白濁防止補助剤を該粘着剤組成物中に含有させることが好ましい。
白濁防止補助剤としては、イオンの触媒作用に対して失活作用がある化合物であれば特に限定されないが、具体的には、金属石けん(例えば、ステアリン酸カルシウムなど)、ハイドロタルサイト(例えば水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムを核とした層状構造をもつ)などが挙げられる。含有量は0.1〜2.0重量%であることが好ましく、0.1〜0.5重量%であることがより好ましい。含有量が0.1重量%未満であるとカチオンの補足性が発現しないおそれがある。また、2.0重量%を超えると光透過性などの光学特性が悪化するおそれがある。
【0069】
(6)その他の成分
粘着剤組成物に更に含まれていても良いその他の成分としては、ネオン光吸収剤、色補正色素が挙げられる。ネオン光吸収剤及び/又は色補正色素を1種以上含有させることにより、複数の機能層の機能を1層で更に兼務することができるため、複合フィルタとしての総厚み、工程数、原価を低減することが可能となり、好ましい。
【0070】
(ネオン光吸収剤)
ネオン光吸収機能は、プラズマディスプレイパネルから放射されるネオン光即ちネオン原子の発光スペクトルを吸収するべく含有するものである。ネオン光の発光スペクトル帯域は波長550〜640nmのため、ネオン光吸収層として機能する場合の分光透過率は波長550nmにおいて50%以下、更に40%以下になるように設計することが好ましい。ネオン光吸収剤は、少なくとも550〜640nmの波長領域内に吸収極大を有する色素を用いることができる。
該色素の具体例としては、シアニン系、オキソノール系、メチン系、サブフタロシアニン系もしくはポルフィリン系等を挙げることができる。これらの中でもポルフィリン系が好ましい。その中でも特に、特許第3834479号公報に開示されるような、テトラアザポルフィリン系色素が、粘着剤においても分散性が良好で、且つ耐熱性、耐湿性、耐光性が良好な点から好ましい。
ネオン光吸収剤の含有量は、特に限定されないが、層中に、0.05〜5重量%であることが好ましい。含有量が0.05重量%以上であれば十分なネオン光吸収機能を発現でき、5重量%以下であれば、十分な量の可視光線を透過できる。
【0071】
(色補正色素)
また、色補正機能とは、パネルからの発光の色純度や色再現範囲、電源OFF時のディスプレイ色などの改善のためにディスプレイ用フィルタの色を調整するために含有するものである。
色補正色素として用いることのできる公知の色素としては、特開2000−275432号公報、特開2001−188121号公報、特開2001−350013号公報、特開2002−131530号公報等に記載の色素が好適に使用できる。更にこのほかにも、黄色光、赤色光、青色光等の可視光を吸収するアントラキノン系、ナフタレン系、アゾ系、フタロシアニン系、ピロメテン系、テトラアザポルフィリン系、スクアリリウム系、シアニン系等の色素を使用することができる。
色補正色素の含有量は、補正すべき色に合わせて適宜調整され、特に限定されない。通常、層中に0.01〜10重量%程度含有する。
【0072】
(その他の成分)
また、本発明の効果を損なわない限り、セシウム・タングステン複合酸化物微粒子以外の近赤外線吸収剤を含んでいても良い。例えば、複合タングステン酸化物、タングステン酸化物などの無機系近赤外線吸収剤や、フタロシアニン系化合物、ジイモニウム化合物等の有機系近赤外線吸収剤から適宜選択して用いられる。
その他、粘着剤組成物には、セシウム・タングステン複合酸化物微粒子の分散性を向上するための各種分散剤や、各種界面活性剤、シランカップリング剤等が含まれていても良い。
【0073】
(7)粘着剤組成物の作製
本発明に係る粘着剤組成物に用いられる(メタ)アクリル系樹脂粘着剤は、前述した(メタ)アクリル酸エステルモノマーおよびメタクリル酸エステルモノマーを含むモノマーを重合させることで得られる。重合は、通常熱ラジカルにより行う。
公知の撹拌機に(メタ)アクリル系樹脂粘着剤、セシウム・タングステン複合酸化物微粒子、金属不活性化剤などを投入する。そして、10〜60rpmの回転速度で撹拌翼を回転させて、20〜40分間撹拌しつつ、撹拌機の温度を20〜30℃となるように調整して、充分に均一となった粘着剤組成物を作製する。
【0074】
II.プラズマディスプレイ用シート状複合フィルタ
本発明に係るプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタの第一の態様は、
プラズマディスプレイパネルの前面に配置されたガラス板に直接貼付されるためのプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタであって、
(A)第一の透明樹脂基材シートの一方の面に耐擦傷機能、反射防止機能、及び防眩機能より成る群から選択される1種以上の機能を有する1層以上の機能層を有する光学フィルタ、
(B)本発明に係る粘着剤組成物からなる近赤外線吸収層、
(C)第二の透明樹脂基材シートの一方の面に透視性導電層を備えた電磁波遮蔽シート、及び、
(D)粘着剤層、をこの順に有することを特徴とする。
【0075】
本発明に係るプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタの第二の態様は、
透明樹脂基材シートの一方の面に透視性導電層を備えた電磁波遮蔽シートの一方の面に、本発明に係る粘着剤組成物からなる近赤外線吸収層を備え、他方の面に耐擦傷機能、反射防止機能、及び防眩機能よりなる群から選択される1種以上の機能を有する表面保護層を備えることを特徴とする。
【0076】
上記第一及び第二の態様において、電磁波遮蔽シートの透視性導電層とは、当該透視性導電層を通して、PDPの表示画像を観賞できる光透過性を有し、且つ、PDPから発生する電磁波を遮蔽できる導電性を有する層のことを意味する。透視性導電層としては、通常、銅、銅合金、その他の金属材料等の不透明性の導電性材料を用いて微細なメッシュパターン状に形成した導電性メッシュ層が用いられるが、ITO等の透明導電性材料を用いて非パターン状(ソリッド状)に形成した薄膜を用いることもできる。導電性メッシュ層を用いる場合には、外光反射を抑制するために、導電性メッシュ層の観察者側の面を黒化処理することが好ましい。以下の説明においては、透視性導電層として導電性メッシュ層を用いた例を説明する。
【0077】
本発明に係るプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタの層構成について第一の態様である第一乃至第七の実施形態については図1乃至図7を用い、第二の態様である第八及び第九の実施形態については図8及び図9を用いて説明する。
図1は、本発明に係るプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタの層構成の一例の断面図である。なお、図1以下の断面図において、説明の容易化のために、厚み方向(図の上下方向)を面方向(図の左右方向)の縮尺よりも大幅に拡大誇張して図示してある。本発明のプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタ1は、第一の透明樹脂基材シート11の一方の面12に耐擦傷機能、反射防止機能、及び防眩機能より成る群から選択される1種以上の機能を有する1層以上の機能層13を有する光学フィルタ10、本発明に係る(メタ)アクリル系樹脂粘着剤、セシウム・タングステン複合酸化物微粒子、及び透過率上昇抑制剤を含有する近赤外線吸収層20、第二の透明樹脂基材シート31の一方の面32に導電性メッシュ層34を備えた電磁波遮蔽シート30、粘着剤層40をこの順に有する。図1のように、前記導電性メッシュ層34は、周縁部の一部35が露出していることが好ましい。
【0078】
図1は、本発明に係る複合フィルタの好適な実施形態のうちの第一の実施形態であり、前記電磁波遮蔽シート30における導電性メッシュ層34は、前記第二の透明樹脂基材シート側の面が黒化処理されて黒化層33を有し、前記粘着剤層40側に配置され、前記粘着剤層40が、前記導電性メッシュ層34の凹凸を平坦化し、且つ前記導電性メッシュ層34の周縁部の一部35を露出させており、且つ、前記光学フィルタ10の第一の透明樹脂基材シート11の機能層を有しない面14と、前記電磁波遮蔽シート30の第二の透明樹脂基材シート31の導電性メッシュ層を有しない面37とが、近赤外線吸収層20を介して積層されている。すなわち、近赤外線吸収層20が、前記第一の透明樹脂基材シート11の機能層を有しない面14と、前記第二の透明樹脂基材シート31の導電性メッシュ層を有しない面37とを接合している。
【0079】
図2は、本発明に係る複合フィルタ1の好適な実施形態のうちの第二の実施形態であり、前記電磁波遮蔽シート30における導電性メッシュ層34は、第二の透明樹脂基材シート31と反対側の面が黒化処理されて黒化層33を有し、前記近赤外線吸収層20側に配置され、前記粘着剤層40が、前記第二の透明樹脂基材シート31の導電性メッシュ層34を有しない面37に配置され、前記第一の透明樹脂基材シート11の機能層13を有しない面14と、前記電磁波遮蔽シート30の導電性メッシュ層側の面32とが、近赤外線吸収層20を介して積層され、当該近赤外線吸収層20は前記導電性メッシュ層34の凹凸を平坦化し、且つ当該導電性メッシュ層の周縁部の一部35を露出させている。
【0080】
従来の近赤外線吸収剤は、ガラス基板、導電性メッシュ層、或いは、導電性メッシュ層と電磁波遮蔽シートの基材間の接着剤層に接触する層に含有されている場合には、劣化しやすいという問題があり、前記第二の実施形態のように導電性メッシュ層に直接積層することはできなかった。これに対し本発明においては近赤外線吸収剤としてセシウム・タングステン複合酸化物微粒子を用い、近赤外線吸収層20に透過率上昇抑制剤を含有させることにより、第二の実施形態のような構成であっても分光特性変化が起こり難い複合フィルタ1を実用化できる。
【0081】
第一及び第二の実施形態のように、近赤外線吸収層20がそれ自体1層のみで光学フィルタ10と電磁波遮蔽シート30を積層するための粘着剤層として機能する場合には、層数を減らすことができ、材料費が低減できる上、少ない積層数で厚みを薄くできるので複合フィルタ1としての可撓性にも優れる。また工程数を減らすことができ、より生産性が高いものである。
【0082】
また、図3、図4に示されるように、近赤外線吸収層20だけで光学フィルタ10と電磁波遮蔽シート30とを接合するのではなく、更に第二の粘着剤層41を有するような実施形態であっても良い。
図3は本発明に係る複合フィルタ1の好適な実施形態のうちの第三の実施形態であり、前記電磁波遮蔽シート30における導電性メッシュ層34は、第二の透明樹脂基材シート31側の面32が黒化処理されて黒化層33を有し、前記粘着剤層40側に配置され、前記粘着剤層40が、前記導電性メッシュ層34の凹凸を平坦化し、且つ当該導電性メッシュ層の周縁部の一部35を露出させており、且つ、前記光学フィルタ10の第一の透明樹脂基材シート11の機能層を有しない面14に前記近赤外線吸収層20を有し当該近赤外線吸収層の面と、前記電磁波遮蔽シート30の第二の透明樹脂基材シート31の導電性メッシュ層を有しない面37と、が第二の粘着剤層41を介して積層されている。
【0083】
図4は、本発明に係る複合フィルタ1の好適な実施形態のうちの第四の実施形態であり、前記電磁波遮蔽シート30における導電性メッシュ層34は、第二の透明樹脂基材シート31と反対側の面が黒化処理されて黒化層33を有し、前記近赤外線吸収層20側に配置され、前記粘着剤層40が、前記第二の透明樹脂基材シート31の導電性メッシュ層を有しない面37に配置され、前記光学フィルタ10の第一の透明樹脂基材シート11の機能層を有しない面14に前記近赤外線吸収層20を有し当該近赤外線吸収層側の面と、前記電磁波遮蔽シート30の導電性メッシュ層側の面32とが、第二の粘着剤層41を介して積層され、該第二の粘着剤層41は前記導電性メッシュ層34の凹凸を平坦化し、且つ当該導電性メッシュ層34の周縁部の一部35を露出させている。
【0084】
本発明に係るプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタ1においては、前記粘着剤層40、近赤外線吸収層20、及び/又は前記第二の粘着剤層41中に、ネオン光吸収剤及び/又は色補正色素が含まれることが好ましい。
また、本発明に係るプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタ1においては、ネオン光吸収剤及び/又は色補正色素が含まれ得る前記粘着剤層40、近赤外線吸収層20、及び/又は前記第二の粘着剤層41よりも観察者60側に配置される層中に紫外線吸収剤を含有することが好ましく、前記光学フィルタ10中に紫外線吸収剤を含有することが、ネオン光吸収剤及び/又は色補正色素が外界(日光、照明光)からの紫外線により劣化することをより効果的に防止する点から好ましい。
【0085】
図5は、本発明に係る複合フィルタ1の好適な実施形態のうちの第五の実施形態であり、図5における複合フィルタ1は、図1の層構成において、粘着剤層40がネオン光吸収剤及び/又は色補正色素を含有し、ネオン光吸収及び/又は色補正層2としても機能していると共に、第一の透明樹脂基材シート11が紫外線吸収剤を含有し、紫外線吸収層3としても機能している。
図5の構成において、粘着剤層40がネオン光吸収及び/又は色補正層2としても機能している代わりに、近赤外線吸収層20がネオン光吸収及び/又は色補正層2としても機能している態様であっても良い。また、粘着剤層40が色補正色素のみを含有し、ネオン光吸収剤は近赤外線吸収層20中に含有されている態様であっても良い。中でも、色補正色素は、粘着剤層40に含有されていることが好ましい。画像の色バランスを補正したり、色純度を改善したりする色補正機能は、通常、プラズマディスプレイ毎に細かく最適化が必要であるため、色補正色素は近赤外線吸収剤層とは異なる層に含有させる方が、生産性が向上する場合が多いからである。
【0086】
図6は、本発明に係る複合フィルタ1の好適な実施形態のうちの第六の実施形態であり、図6における複合フィルタ1は、光学フィルタ10が、第一の透明樹脂基材シート11の一方の面12に、紫外線吸収層3と、機能層13として反射防止層15とをこの順に有する場合であって、粘着剤層40がネオン光吸収剤及び/又は色補正色素を含有し、ネオン光吸収及び/又は色補正層2としても機能している。図6の構成において、粘着剤層40がネオン光吸収及び/又は色補正層2としても機能している代わりに、近赤外線吸収層20がネオン光吸収及び/又は色補正層2としても機能している態様であっても良い。また、粘着剤層40が色補正色素のみを含有し、ネオン光吸収剤は近赤外線吸収層20中に含有されている態様であっても良い。
【0087】
図7は、本発明に係る複合フィルタ1の好適な実施形態のうちの第七の実施形態であり、図7における複合フィルタ1は、光学フィルタ10が、第一の透明樹脂基材シート11の一方の面12に、耐擦傷機能(ハードコート)層16と紫外線吸収層3を兼ねている層、及び、反射防止層15をこの順に有する場合であって、粘着剤層40がネオン光吸収剤及び/又は色補正色素を含有し、ネオン光吸収及び/又は色補正層2としても機能している。図7の構成において、粘着剤層40がネオン光吸収及び/又は色補正層2としても機能している代わりに、近赤外線吸収層20がネオン光吸収及び/又は色補正層2としても機能している態様であっても良い。また、粘着剤層40が色補正色素のみを含有し、ネオン光吸収剤は近赤外線吸収層20中に含有されている態様であっても良い。
【0088】
図8は、本発明に係る複合フィルタ1の好適な実施形態のうちの第八の実施形態であり、図8における複合フィルタ1は、前記電磁波遮蔽シート30の前記導電性メッシュ層34側の面に粘着性を有する近赤外線吸収層20が形成され、前記電磁波遮蔽シート30の透明樹脂基材シート31の導電性メッシュ層を有しない面に耐擦傷機能、反射防止機能、及び防眩機能よりなる群から選択される1種以上の機能を有する表面保護層36が形成されており、且つ、前記電磁波遮蔽シートにおける導電性メッシュ層34は、前記透明樹脂基材シート31側の面に黒化層33が形成され、黒化処理されている。
【0089】
図9は、本発明に係る複合フィルタ1の好適な実施形態のうちの第九の実施形態であり、図9における複合フィルタ1は、前記電磁波遮蔽シート30の透明樹脂基材シート31側の導電性メッシュ層を有しない面に近赤外線吸収層20が形成され、前記電磁波遮蔽シート30の導電性メッシュ層34側の面に耐擦傷機能、反射防止機能、及び防眩機能よりなる群から選択される1種以上の機能を有する表面保護層36が形成されており、且つ、前記電磁波遮蔽シートにおける導電性メッシュ層は、前記透明樹脂基材シートと反対側の面が黒化処理されて黒化層33を有する。
【0090】
本発明のプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタ1は、第一の態様においては、第一の透明樹脂基材シート11の一面側に設けられた機能層13、近赤外線吸収層20及び必要に応じて設けられる第二の粘着剤層41を用いて必要な光学フィルタ機能を複合化しており、一方、第二の態様においては、実質的に1つの透明樹脂基材シート31とその両面を用いて、電磁波遮蔽機能以外に、近赤外線吸収機能、ネオン光吸収機能、色補正機能、及び、紫外線吸収機能、更には、反射防止機能、防眩機能、及び/又は耐擦傷機能等の各種機能を複合化している。そのため複合フィルタ1は、多数の透明樹脂基材シートを含む積層構成をとらない。
すなわち従来は、複合フィルタに含まれる光学フィルタ機能発現部分が各個に透明樹脂基材シートを有し、複合フィルタ内で多数の透明樹脂基材シートが含まれていた。これに対し、本発明のシート状複合フィルタ1に含まれる透明樹脂基材シートの数は、上記第一の態様では2枚であり、特に、第二の態様では1枚だけである。
従って、従来は多数含まれていた光学フィルタの透明樹脂基材シートやそれらを貼り合わせるための接着剤層又は粘着剤層を減らすことができる。その結果、本発明のプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタ1は、材料費が低減できる上、少ない積層数で厚みを薄くできるので複合フィルタとしての可撓性にも優れる。
特に、本発明のシート状複合フィルタ1の第二の態様は、極めて層数が少ないため、層数削減により界面反射を抑えることができるというメリットがある。
【0091】
また、電磁波遮蔽シート30の導電性メッシュ層34面上に別途平坦化層を設けることなく、近赤外線吸収層20又は粘着剤層40により導電性メッシュ層の凹凸を平坦化できる。例えば、図1の態様の場合は、直接粘着剤層40を、当該導電性メッシュ層の周縁部35の一部を露出させて、導電性メッシュ層の凹凸を平坦化するように設けているため、電磁波遮蔽シート30のメッシュ面の平坦化機能も有する該粘着剤層40が複合フィルタの貼付面となる。
また、導電性メッシュ層34の露出させた周縁部の一部35を接地用領域としてそのまま使用することができる。このようにして本発明は、複合フィルタの貼着加工と導電性メッシュ層の平坦化と導電性メッシュ層周縁の接地用領域の確保を一つの工程で同時に行うことができるため、工程数や平坦化層を減らすことができる。
【0092】
さらに、本発明のシート状複合フィルタ1は、各層の配置を最適化したので、貼り合わせ工程が極めて少ないか又は全く不要であり、生産効率に優れるという利点もある。
具体的には、第一の態様においては、前記光学フィルタ10と前記電磁波遮蔽シート30における各層の配置を最適化したので、貼り合わせ工程数は、該光学フィルタ10と該電磁波遮蔽シート30とを、近赤外線吸収層20又は粘着剤層40によって貼り合わせる、1回のみで複合フィルタ1を製造することが可能である。例えば、図1の場合は、光学フィルタ10と電磁波遮蔽シート30とを近赤外線吸収層20によって貼り合わせる。
一方、第二の態様においては、各層の配置を最適化したので、従来のように前記光学フィルタと前記電磁波遮蔽シートにおける透明樹脂基材シート同士を貼り合わせる工程が不要である。
【0093】
本発明に係るプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタは、第一及び第二の態様のいずれも、図示しない前面板に貼り付けることが出来る。該前面板はPDP前面のPDPガラス基板との間に一定間隔の空間が形成されるように離れて配置されている。また、当該シート状複合フィルタは、プラズマディスプレイパネル50の前面(観察者60側)に備えられているPDPガラス基板に直接貼り付けることも出来る。
すなわち、本発明において「プラズマディスプレイパネルの前面に配置されたガラス板」とは、前面板を構成するガラス板及びプラズマディスプレイパネル本体を構成するガラス板の両方を意味している。
【0094】
本発明の複合フィルタに設けられる近赤外線吸収層は、(メタ)アクリル系樹脂粘着剤をベース樹脂として用い、近赤外線吸収剤としてセシウム・タングステン複合酸化物微粒子、及び、ベース樹脂の近赤外域での透過率の上昇を防止する透過率上昇抑制剤を含有させてなるものである。
セシウム・タングステン複合酸化物微粒子は、耐熱性、耐湿性、耐光性が高いので、(メタ)アクリル系樹脂粘着剤に起因する分解、劣化が起こり難い。また、セシウム・タングステン複合酸化物微粒子は、波長800〜1,100nmの近赤外線帯域全般を吸収し得るので、劣化しやすい有機系近赤外線吸収剤を更に併用しなくても良い。さらに、透過率上昇抑制剤は、セシウム・タングステン複合酸化物微粒子の作用や、その他の要因によるベース樹脂の近赤外域での透過率の上昇を防止するため、長期安定性に優れた近赤外線吸収層が得られる。
【0095】
特に、近赤外線吸収剤の劣化防止のために、ディスプレイ表面等のガラス基板、導電性メッシュ層、或いは、導電性メッシュ層と電磁波遮蔽シートの基材間の接着剤層等から近赤外線吸収層を隔離する必要性がなくなり、設計の自由度が増加した結果、複合フィルタの層構成を簡素化することが可能となった。具体的には、本発明に係る複合フィルタ1のように電磁波遮蔽シート30の導電性メッシュ層34の反対側面に電磁波遮蔽機能、近赤外線吸収機能、ネオン光吸収機能、色補正機能、紫外線吸収機能、及び表面保護機能の各機能を少なくとも有する表面保護層36を設けるので、積層工程数を減らして生産効率に優れ、少ない積層数で厚みが薄く、複合フィルタとしての可撓性に優れ材料費も低減できる構成を実用化可能とした。
【0096】
本発明の複合フィルタ1は、前記セシウム・タングステン複合酸化物微粒子を含有する近赤外線吸収層20の位置を最適化したため、複合フィルタ表面はセシウム・タングステン複合酸化物微粒子の色味を帯びず、ディスプレイ前面に配置されてディスプレイを消している場合にディスプレイ前面が着色したように見えて使用者に好まれないという従来の問題を解消できる。また、反射防止層のような比較的薄膜として設けられる層にセシウム・タングステン複合酸化物微粒子を含有させると、層における微粒子密度が高くなって、ヘイズが高くなるという問題も発生するが、本発明のように粘着剤層を兼ねるような樹脂層に含有させると反射防止層に比べて層が厚いため、ヘイズが高くなることを抑制できるというメリットもある。
【0097】
以下、本発明に用いられる複合フィルタ1について、光学フィルタ(A)、近赤外線吸収層(B)、電磁波遮蔽シート(C)、粘着剤層(D)を説明し、最後に第二の粘着剤層及び表面保護層を説明する。
【0098】
1.光学フィルタ(A)
本発明に用いられる光学フィルタは、第一の透明樹脂基材シート11の一方の面に耐擦傷機能、反射防止機能、及び防眩機能より成る群から選択される1種以上の機能を有する1層以上の機能層を有するものである。本発明に用いられる光学フィルタは、各個に透明樹脂基材シートを有する機能フィルタが複数貼り合わされて形成されるものではなく、実質的に基材は透明樹脂基材シートが1つのみで、当該透明樹脂基材シートの両面に各機能層が塗工等の湿式成膜法やスパッタ等の乾式成膜法の手段により積層されているものである。ここで基材とは、機能フィルタを形成するために概ね支持体としてのみ機能する材をいう。
【0099】
本発明において用いられる光学フィルタの膜厚は、実質的に基材が1つであることから薄くすることができ、50〜300μmの範囲内であることが好ましく、100〜200μmの範囲内であることが更に好ましい。このような範囲にすることにより、連続帯状として最小直径が15cm以下のロール状に巻くことが可能となるため、連続帯状の光学フィルタと連続帯状の電磁波遮蔽シートを貼り合わせることが可能になり、生産効率が向上する。
【0100】
本発明において用いられる光学フィルタの層構成としては以下の態様が挙げられる。
1)耐擦傷機能を有する反射防止層/紫外線吸収層を兼用した第一の透明樹脂基材シート、
2)反射防止層/耐擦傷機能層/紫外線吸収層を兼用した第一の透明樹脂基材シート、
3)耐擦傷機能を有する防眩層/紫外線吸収層を兼用した第一の透明樹脂基材シート、
4)防眩層/耐擦傷機能層/紫外線吸収層を兼用した第一の透明樹脂基材シート、
5)耐擦傷機能を有する紫外線吸収層を兼用した反射防止層/第一の透明樹脂基材シート、
6)紫外線吸収層を兼用した反射防止層/耐擦傷機能層/第一の透明樹脂基材シート、
7)耐擦傷機能を有する紫外線吸収層を兼用した防眩層/第一の透明樹脂基材シート、
8)紫外線吸収層を兼用した防眩層/耐擦傷機能層/第一の透明樹脂基材シート、
9)耐擦傷機能を有する反射防止層/紫外線吸収層/第一の透明樹脂基材シート、
10)反射防止層/紫外線吸収層を兼用した耐擦傷機能層/第一の透明樹脂基材シート、
11)反射防止層/紫外線吸収層/耐擦傷機能層/第一の透明樹脂基材シート、
12)耐擦傷機能を有する防眩層/紫外線吸収層/第一の透明樹脂基材シート、
13)防眩層/紫外線吸収層を兼用した耐擦傷機能層/第一の透明樹脂基材シート、
14)防眩層/紫外線吸収層/耐擦傷機能層/第一の透明樹脂基材シート、
15)反射防止層/第一の透明樹脂基材シート/紫外線吸収層、
中でも必要な光学機能を少ない積層数で得られる点から、前記態様1)、3)、5)、7)が好ましい。
尚、「/」はその左右の層が積層一体化されている事を示す。
【0101】
(1)第一の透明樹脂基材シート
第一の透明樹脂基材シート11は、機械的強度と共に光透過性を有すれば、その他、耐熱性等も適宜勘案した上で、用途に応じたものを選択すれば良い。透明樹脂基材シートの透明性が高いほどよいが、可視光域380〜780nmにおける光線透過率が70%以上となるものが好ましく、80%以上となるものがより好ましい。なお、光線透過率の測定は、紫外可視分光光度計(例えば、(株)島津製作所製 UV−3100PC)を用い、室温、大気中で測定した値を用いることができる。
【0102】
前記透明樹脂基材シートの材料となる樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、テレフタル酸−イソフタル酸−エチレングリコール共重合体、テレフタル酸−シクロヘキサンジメタノール−エチレングリコール共重合体などのポリエステル系樹脂、ナイロン6などのポリアミド系樹脂、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体などのスチレン系樹脂、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂、イミド系樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
【0103】
なお、これら樹脂は、単独、又は複数種類の混合樹脂(ポリマーアロイを含む)として用いられ、また、単層、又は2層以上の積層体として用いられる。また、1軸延伸や2軸延伸した延伸シートが機械的強度の点でより好ましい。
これら樹脂中には、必要に応じて適宜、紫外線吸収剤、ネオン光吸収剤、色補正色素、充填剤、可塑剤、帯電防止剤などの添加剤を加えても良い。また、近赤外線吸収剤として、前述したセシウム・タングステン複合酸化物微粒子を含有していても良い。
【0104】
なお、第一の透明樹脂基材シートの厚さは、用途に応じたものとすれば良く特に制限は無く、通常12〜500μm程度であることが好ましく、50〜200μmであることがより好ましく、50〜125μmであることが更に好ましい。前記未満の厚さとなると機械的強度が不足して反りや破断などが起こり、前記を超える厚さとなると過剰性能でコスト高となる上、薄型化が難しくなる。
また、電磁波遮蔽シートを連続的に製造し生産性を向上できる点では、第一の透明樹脂基材シートは、導電性メッシュ層形成等の少なくとも製造初期の段階においては、連続帯状のシートの形態で取り扱うのが好ましい。
【0105】
この様な点で、第一の透明樹脂基材シートとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂シートが、透明性、耐熱性、コスト等の点で好ましく、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートシートを用いることが最適である。
なお、透明樹脂基材シートの表面に、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理、フレーム処理、プライマー処理、予熱処理、除塵埃処理、蒸着処理、アルカリ処理、などの公知の易接着処理を適宜行ってもよい。
【0106】
(2)耐擦傷機能(ハードコート)層
耐擦傷機能(ハードコート)層は、JIS K5600−5−4(1999)で規定される鉛筆硬度試験で「H」以上の硬度を示すものであることが好ましく、このような硬度と前記第一の透明樹脂基材シートと同様な透明性を実現できるものであれば、材料は特に限定されない。
耐擦傷機能(ハードコート)層は、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレートプレポリマー、或いは、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレートモノマーを単独で或いはこれらの中から2種以上選択して組み合わせて配合した電離放射線硬化性樹脂を用いた塗膜として形成することができる。
ここで、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。耐擦傷機能層は、前記材料を必要に応じて溶剤で希釈して前記第一の透明樹脂基材シート上に塗工する等の湿式成膜法により形成することができる。
【0107】
(3)反射防止層
反射防止層(Anti Reflection層、略称してAR層)は、低屈折率層の単層、或いは、低屈折率層と高屈折率層とを、該低屈折率層が最上層に位置する様に交互に積層した多層構成が一般的であり、蒸着やスパッタ等の乾式成膜法で、或いは塗工等の湿式成膜法も利用して形成することができる。なお、低屈折率層にはケイ素酸化物、フッ化マグネシウム、フッ素含有樹脂等が用いられ、高屈折率層には、酸化チタン、硫化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ等が用いられる。尚、ここで高(低)屈折率層とは、該層と隣接する層(例えば、第二の透明樹脂基材シート、或いは低(高)屈折率層)と比較して該層の屈折率が相対的に高い(低い)という意味である。
反射防止層に更に耐擦傷機能を付与する場合には、耐擦傷機能(ハードコート)層の項で記載したような硬度の高い材料を適宜用いて形成する。
【0108】
(4)防眩層
防眩層(Anti Glare層、略称してAG層)は、樹脂バインダ中にシリカなどの無機フィラーを添加した塗膜形成や、或いは賦形版等を用いた賦形加工により、層表面に外光を乱反射する微細凹凸を設けた層として形成することができる。樹脂バインダの樹脂としては、表面層として表面強度が望まれる関係上、硬化性アクリル樹脂や、前記ハードコート層同様に電離放射線硬化性樹脂等が好適には使用される。
【0109】
(5)紫外線吸収層
本発明において、紫外線吸収層は、独立した層であっても良いし、他の機能層に紫外線吸収剤を含有させた、他の機能層と紫外線吸収層を兼ねる層であっても良いし、或いは第一の透明樹脂基材シート中に紫外線吸収剤を含有させたものであっても良い。紫外線吸収剤を含有させた透明樹脂基材としては、例えば、帝人(株)製 「テトロンフィルムHBタイプ」(商品名)が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物等の有機系化合物、微粒子状の酸化亜鉛、酸化セリウム等からなる無機系化合物からなるものが挙げられる。独立した層とする場合に用いられるバインダ樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂が挙げられる。
【0110】
(6)その他の層
その他の層としては、例えば、ネオン光吸収層、色補正層、防汚層等が挙げられる。しかしながら、ネオン光吸収層、色補正層は、生産効率の点から、単独の層として形成されるよりも、前述のように、粘着剤層や近赤外線吸収層など他の層にネオン光吸収剤や色補正色素を含有させて、ネオン光吸収層、色補正層を兼用する層とする方が好ましい。単独の層として形成される場合であっても、ネオン光吸収剤や色補正色素としては、後述のようなものを用いることが出来る。
防汚層は、一般的に、撥水性、撥油性のコートで、シロキサン系、フッ素化アルキルシリル化合物などが適用できる。撥水性塗料として用いられるフッ素系或いはシリコーン系樹脂を好適に用いることができる。例えば、反射防止層の低屈折率層をSiOにより形成した場合には、フルオロシリケート系撥水性塗料が好ましく用いられる。
【0111】
2.近赤外線吸収層(B)
近赤外線吸収層20は、前述した粘着剤組成物を用いて形成される。前記第二及び第八の実施形態のように、導電性メッシュ層34上に近赤外線吸収層20を設ける場合には、当該近赤外線吸収層20は、前記導電性メッシュ層34の凹凸を平坦化し、且つ前記導電性メッシュ層の周縁部の一部を露出させるように、導電性メッシュ層34上に設けられ、導電性メッシュ層の平坦化層も兼務する。
当該近赤外線吸収層が、導電性メッシュ層の凹凸の平坦化層としても機能する場合には、本発明に係る粘着剤組成物を導電性メッシュ層上に塗工又は貼合した後に、導電性メッシュ層の凹凸内に空気が入らないように適当な圧力を付与して凹凸部分を完全に埋めつつ、近赤外線吸収層表面を平坦化させることにより透明性が高いものを得る。この場合には、金属メッシュ近傍では、透過率上昇抑制剤が劣化しやすいために、前述した白濁防止補助剤を予め粘着剤組成物中に含有させておくことが、特に好ましい。
【0112】
近赤外線吸収層は、プラズマディスプレイパネルがキセノンガス放電を利用して発光する際に生じる近赤外線領域、即ち、800nm〜1100nmの波長域を吸収するものであり、該帯域の近赤外線の透過率が20%以下、更に15%以下であることが好ましい。
【0113】
本発明において近赤外線吸収層は、表面平滑な硝子板に対する剥離抵抗値が5〜30N/25mmであることが好ましく、5〜25N/25mmであることが更に好ましく、5〜15N/25mmであることが特に好ましい。
なお、表面平滑な硝子板としては、例えば具体的には通常のフロートガラスをはじめ、液晶用又はPDP用パネルで使用するガラスなどが挙げられる。
前記剥離抵抗値が前記範囲内の場合、得られる複合フィルタの電磁波遮蔽シート−光学フィルタ界面で経時で自然剥離したり、気泡が生じたりするおそれがない。また、得られる複合フィルタとディスプレイとを貼り合わせる際に、何らかの不具合が生じた場合に、光学フィルタのみを再剥離し、再び光学フィルタを貼り合わせる必要が生じるが、前記剥離抵抗値が前記範囲内の場合、光学フィルタを再剥離する際に、凝集破壊及び/又は界面破壊を起こすことなく、容易に剥離することが可能である。
【0114】
前記表面平滑な硝子板に対する剥離抵抗値は、以下のようにして測定することができる。厚さ100μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面に近赤外線吸収層の塗工量が25g/mとなるように粘着剤組成物を塗工した物を、長さ150mm、幅25mmに切り抜いて、その近赤外線吸収層側が硝子板側を向くようにして硝子板に貼り、引張り試験機により、該硝子板と該PETフィルムとを両者の角度が180°となる方向に引張速度200mm/分で、20〜25℃の雰囲気中で該PETフィルムを引張って、剥離時抵抗力として測定することができる。
【0115】
本発明において、近赤外線吸収層の膜厚は、近赤外線吸収機能や近赤外線吸収層に更に追加される機能により適宜調節するが、通常の厚さは3〜50μm程度である。例えば、導電性メッシュ層の平坦化層としても機能させる場合は、5〜40μmの範囲内であることがメッシュの凹凸を良好に平坦化する点から好ましい。また、耐衝撃層としても機能させる場合、特にその厚さを、後述する粘着剤層との合計で50〜5000μmとなるようにすることが好ましい。
【0116】
このような場合、下記の衝撃試験による破壊エネルギーが0.5J以上、好ましくは0.6J以上という耐衝撃性を有することが望ましい。ここで衝撃試験は、図15に示す衝撃試験装置を用いて行い、直径50.8mmの鋼球95(質量534g)(JIS B1501 玉軸受用鋼球に規定されたもの)を電磁石94から落下させたときの、破壊エネルギーを測定して行う。鋼球の落下高さを変えることで破壊エネルギーを変化させることができる。試験台91としてステンレス鋼板を用いる。該試験台91上に、本発明の近赤外線吸収層93が積層された表示装置用の前面ガラス板92として例えば旭硝子社製の高歪点ガラス板(PD−200:商品名、厚み2.8mm)を載置する。なお、PD−200は、プラズマディスプレイメーカー各社が共通に使用しているプラズマディスプレイ用の前面ガラス板である。
【0117】
3.電磁波遮蔽シート(C)
本発明に用いられる電磁波遮蔽シートは、前記第一の態様の第二の透明樹脂基材シート(図1乃至図7参照)又は第二の態様の透明樹脂基材シート(図8及び図9参照。以下、単に透明樹脂基材シートと称する場合がある。)31の一方の面に導電性メッシュ層を備えたものである。当該導電性メッシュ層は、前記近赤外線吸収層(B)か後述する粘着剤層(D)或いは第二の粘着剤層によって、前記導電性メッシュ層の凹凸が平坦化される。
本発明に用いられる電磁波遮蔽シートの一例を図10に示す。図10(A)は、本発明に用いられる電磁波遮蔽シートの一例の平面図であり、図10(B)は、本発明に用いられる電磁波遮蔽シートの一例の断面図である。
本発明に用いられる電磁波遮蔽用シート30における導電性メッシュ層は、図10(A)の平面図で概念的に例示する導電性メッシュ層34のように、その平面方向において、メッシュ状領域101以外に、該メッシュ状領域101の周縁部の少なくとも一部に非メッシュ状領域102を備えた層とするのが、接地をとり易い点でより好ましい。
【0118】
メッシュ状領域101は、適用されるディスプレイの画像表示領域を全て覆うことが可能な寸法及び形状を有し、適用されるディスプレイの画像表示領域に対峙する部分70が必ず含まれる。当該ディスプレイの画像表示領域に対峙する部分70の外の領域となる外縁部は、メッシュ状領域101が含まれても良いし、非メッシュ状領域102のみからなっても良い。非メッシュ状領域102は、通常、メッシュ状領域101と同じ層構成を有しながら開口部を形成しないものであり、接地用領域としてディスプレイへ設置した場合にアース(接地)をとり易いために設けられる。なお、接地用領域は基本的にはメッシュは不要だが、接地用領域の反り防止等の目的から、開口部から成るメッシュが存在しても良い。
接地用領域(図10(A)の例では、非メッシュ状領域102に相当)は、通常四角形のディスプレイの画像表示領域に対峙する部分70の外の領域となる外縁部である画像表示に影響しない部分に、四辺周囲の額縁状に設けられることが多いが、メッシュ状領域101の全周囲でなくても、周囲の一部に設ける形態でもよく、三辺、二辺、或いは一辺のみに設ける形態でも良い。
本発明に用いられる電磁波遮蔽シート30は、更に、当該導電性メッシュ層34上に導電性メッシュ層の凹凸を平坦化させるように設けられた、粘着剤層40(又は近赤外線吸収層20)を有する。粘着剤層40(又は近赤外線吸収層20)は、図10(A)に示すように、少なくとも通常四角形のディスプレイの画像表示領域に対峙する部分70を全て覆い、且つ、前記導電性メッシュ層の周縁部の一部を露出させるように積層されていることが好ましく、非メッシュ状領域102のうち、四辺周囲の額縁状に接地用領域を露出するように設けられることが好ましい。
【0119】
図10(B)に示すように、本発明に用いられる電磁波遮蔽用シート30は、厚み方向においては、透明樹脂基材シート31の一方の面に、メッシュ状領域101と非メッシュ状領域102を有する導電性メッシュ層34、及び導電性メッシュ層34の凹凸を平坦化させた粘着剤層40(又は近赤外線吸収層20)がこの順に少なくとも積層されて形成されている。当該導電性メッシュ層34は、透明樹脂基材シート31側の面に黒化層33を有していることが好ましい。導電性メッシュ層34と透明樹脂基材シート31との間には、導電性メッシュ層34を透明樹脂基材シート31に貼り付けるための接着剤層(図示せず)を有していても良い。導電性メッシュ層34には、黒化層33以外にも防錆層等の他の層を含んでいても良い。
また、本発明に用いられる電磁波遮蔽用シートは、導電性メッシュ層の表裏面上に、導電性を有しない層が更に積層されて形成されていても良い。当該導電性を有しない層としては、例えば、導電性を有しない防錆層や黒化層等が挙げられる。防錆層や黒化層等であっても、導電性を有する限り、本発明において導電性メッシュ層34に含まれる。導電体層の表裏面上に更に積層された導電性を有しない層は、導電性メッシュ層と一体となって、メッシュ状領域や接地用領域を形成する。
なお、図示している電磁波遮蔽シートは、いずれも枚葉化されたものであるが、本発明において電磁波遮蔽シートは、ディスプレイ前面に設置する前の段階では、枚葉シート2枚分以上の区画を含む連続帯状シートの状態であってもよい。そして、好ましくは、電磁波遮蔽シートと光学フィルタとを貼り合せる迄の段階では、電磁波遮蔽シート及び光学フィルタは共に連続帯状のシートの形態で加工することが、高生産性を確保する上で好ましい。
図11は本発明に用いられる粘着剤層又は近赤外線吸収層などが積層される前の電磁波遮蔽シート30の一例の斜視図である。メッシュ状領域101を形成している導電性メッシュ層34は、開口部103が密に配列したメッシュ状であり、該メッシュ状領域101は開口部103と枠をなしているライン部104から構成されている。導電性メッシュ層34の透明樹脂基材シート31側には黒化層33が形成されている。
【0120】
以下、本発明に用いられる電磁波遮蔽用シートについて、透明樹脂基材シート31から順に説明する。
(1)透明樹脂基材シート
電磁波遮蔽用シートに用いられる透明樹脂基材シート31は、機械的強度が弱いメッシュ層を補強するための支持体である。従って、機械的強度と共に光透過性を有すれば、その他、耐熱性等も適宜勘案した上で、用途に応じたものを選択使用すれば良い。
電磁波遮蔽用シートに用いられる透明樹脂基材シートとしては、光学フィルタに用いられる第一の透明樹脂基材シートにおいて記載したのと同様の透明樹脂基材シートを用いることができる。
【0121】
(2)導電性メッシュ層
導電性メッシュ層34は、電磁波遮蔽機能を担う層であり、またそれ自体は不透明性であるが、メッシュ状の形状で開口部を設けることで、電磁波遮蔽性能と光透過性を両立させている層である。
【0122】
(導電性メッシュ層)
導電性メッシュ層34は、一般的には金属箔をエッチングで形成した物が代表的であるが、これ以外のものでも、電磁波シールド性能に於いては意義を有する。従って、本発明では、導電性メッシュ層の材料及び形成方法は特に限定されるものでは無く、従来公知の光透過性の電磁波遮蔽シートに於ける各種導電性メッシュ層を適宜採用できるものである。例えば、印刷法やめっき法等を利用して透明樹脂基材シート上に最初からメッシュ状の形状で導電性メッシュ層を形成したもの、或いは、最初は該透明樹脂基材シート上に全面に、蒸着、スパッタ、めっき等の1或いは2以上の物理的或いは化学的形成手法を用いて導電体層を形成後、エッチング等でメッシュ状の形状にして導電性メッシュ層としたもの等でも構わない。
【0123】
なお、エッチングによる導電性メッシュ層は、透明樹脂基材シートに積層前の金属箔単体をエッチングでパターンニングしてメッシュ状の導電性メッシュ層とすることも可能である。この金属箔単体の導電性メッシュ層は、接着剤等で該透明樹脂基材シートに積層される。これらのなかでも、機械的強度が弱い導電性メッシュ層の取扱が容易で且つ生産性にも優れ、また、市販の金属箔を利用できる等の点で、金属箔を接着剤で該透明樹脂基材シートに積層した後、エッチングでメッシュ状に加工することが好ましい。
【0124】
導電性メッシュ層は、電磁波シールド性能を発現するに足る導電性を有する物質であれば、特に制限は無いが、通常は、導電性が良い点で金属層が好ましく、金属層は前記のように、蒸着、めっき、金属箔ラミネート等により形成することができる。金属層乃至は金属箔の金属材料としては、例えば、金、銀、銅、鉄、ニッケル、クロム等が挙げられる。また金属層の金属は合金でも良く、金属層は単層でも多層でも良い。例えば、鉄の場合には、低炭素リムド鋼や低炭素アルミキルド鋼などの低炭素鋼、Ni−Fe合金、インバー合金、等が好ましい。一方、金属が銅の場合は、金属材料は銅や銅合金となり、銅箔としては圧延銅箔や電解銅箔があるが、薄さ及びその均一性、黒化層との密着性等の点からは、電解銅箔が好ましい。
【0125】
なお、金属層による導電性メッシュ層の厚さは、1〜50μm程度であることが好ましく、2〜15μmであることがより好ましい。厚さがこれより薄くなり過ぎると電気抵抗上昇により十分な電磁波シールド性能を得難くなり、厚さがこれより厚くなり過ぎると高精細なメッシュ形状が得難くなり、メッシュ形状の均一性が低下する。
導電性メッシュ層の平坦化を行いやすく、平坦化を行った際に気泡の混入が少なく、透明性に優れた複合フィルタを得やすい点からは、導電性メッシュ層の厚さは2〜15μm程度であることが好ましい。
【0126】
また、導電性メッシュ層となる金属層の表裏面は、透明樹脂基材シートと接着積層させるための透明接着剤層等の隣接層との密着性向上が必要な場合は当該面を粗面とすると良い。表面粗さは、導電性メッシュ層となる金属層の表面の輪郭曲線として粗さ曲線を採用した時に、当該輪郭曲線の十点平均粗さRz(JIS B0601(1994年版))が0.5〜1.5μm程度であることが好ましい。
【0127】
(黒化処理)
黒化処理は前記導電性メッシュ層の面の光反射を防ぐためのものであり、黒化処理で形成された黒化処理面により、導電性メッシュ層面での外光反射による透視画像の黒レベルの低下を防いで、また、透視画像の明室コントラストを向上させて、ディスプレイの画像の視認性を向上するものである。黒化処理面は、導電性メッシュ層のライン部(線状部分)の全ての面に設けることが好ましいが、本発明では表裏両面のうち少なくとも観察者側であると共に外光入射側の面を黒化処理面とすることが好ましい。表裏両面や、側面(両側或いは片側)が更に黒化処理されていても良い。黒化層は、少なくとも観察者側に設ければ良いが、ディスプレイ面側にも設ける場合には、ディスプレイから発生する迷光を抑えられるので、さらに、画像の視認性が向上する。
黒化処理としては、黒化層は金属メッキ層面を粗化するか、全可視光スペクトルに亘って光吸収性を付与する(黒化する)か、或いは両者を併用するか、何れかにより行なう。具体的に黒化処理としては、導電性メッシュ層にメッキ等で黒化層を付加的に設ける他、エッチング等で表面から内部に向かって該表面を構成する層自体を黒化層に変化させても良い。
【0128】
本発明において黒化層33は、黒等の暗色を呈し、密着性等の基本的物性を満足するものであれば良く、公知の黒化層を適宜採用し得る。
従って、黒化層としては、金属等の無機材料、黒着色樹脂等の有機材料等を用いることができ、例えば無機材料としては、金属、合金、金属酸化物、金属硫化物の金属化合物等の金属系の層として形成する。金属系の層の形成法としては、従来公知の各種黒化処理法を適宜採用できる。なかでも、めっき法による黒化処理は密着性、均一性、容易性等で好ましい。めっき法の材料は、例えば、銅、コバルト、ニッケル、亜鉛、モリブデン、スズ、クロム等の金属や金属化合物等を用いる。
【0129】
該黒化層の好ましい黒濃度は0.6以上である。なお、黒濃度の測定方法は、COLOR CONTROL SYSTEMのGRETAG SPM100−11(キモト社製、商品名)を用いて、観察視野角10度、観察光源D50、照明タイプとして濃度標準ANSITに設定し、白色キャリブレイション後に、試験片を測定する。また、該黒化層の光線反射率としては5%以下が好ましい。光線反射率は、JIS−K7105に準拠して、ヘイズメーターHM150(村上色彩社製、商品名)を用いて測定する。また、反射率の測定に換えて、色差計により反射のY値で表わしてもよく、この際にはY値として10以下が好ましい。
【0130】
(防錆層)
導電性メッシュ層34としては、必要に応じ適宜その他の層の形成、乃至は処理を施しても良い。例えば、錆びに対する耐久性が不十分な場合は、防錆層を設けると良い。防錆層は、前述した黒化層と同様に、それがメッシュ層の形状的特徴であるメッシュ形状を維持する限り、導電性メッシュ層に含まれる構成層として本発明では捉える。
【0131】
防錆層は、それで被覆する導電性メッシュ層よりも錆び難いものであれば、金属等の無機材料、樹脂等の有機材料、或いはこれらの組合せ等、特に限定されるものではない。例えば、クロム、亜鉛、ニッケル、スズ、銅等の金属乃至は合金、或いは金属酸化物の金属化合物の層等である。これらは、公知のめっき法等で形成できる。なお、防錆層の厚さは通常0.001〜2μm程度であることが好ましく、0.01〜1μmであることがより好ましい。
【0132】
(メッシュ状領域及びメッシュ形状)
図10に示す電磁波遮蔽シート30において、導電体層のメッシュ状領域101は、適用されるディスプレイの画像表示領域70を全て覆うことが可能な寸法及び形状を有し、適用されるディスプレイの画像表示領域70に対峙する部分が必ず含まれる。ディスプレイの画像表示領域70に対峙する部分の外の領域となる外縁部は、メッシュ状領域101が含まれても良いし、接地用領域102のみからなっても良い。
接地用領域102は、通常、メッシュ状領域101と同じ層構成を有しながら開口部103を形成しないものであり、ディスプレイへ設置した場合にアース(接地)をとり易いために設けられる。なお、接地用領域102は、開口部103が形成されたメッシュ状であっても良い。接地用領域102は、通常四角形のディスプレイの画像表示領域70に対峙する部分の外の領域となる外縁部である画像表示に影響しない部分に、四辺周囲の額縁状に設けられることが多いが、メッシュ状領域の全周囲でなくても、周囲の一部に設ける形態でもよく、三辺、二辺、或いは一辺のみに設ける形態でも良い。額縁の幅は15〜100mm程度で、なかでも30〜40mmとするのが一般的である。
【0133】
なお、導電性メッシュ層34のメッシュ状としての形状は、任意で特に限定されないが、開口部の形状としては正方形が代表的である。開口部の形状は、例えば、正三角形等の三角形、正方形、長方形、菱形、台形等の四角形、六角形、等の多角形、或いは、円形、楕円形などが挙げられる。
メッシュ状領域101は、これら形状からなる複数の開口部103を有し、開口部103間は通常幅均一のライン状のライン部104からなる。通常は、開口部103及びライン部104とは全面で同一形状同一サイズである。具体的サイズを例示すれば、開口率及びメッシュの非視認性の点で、図11に示すように開口部103間のライン部104の幅Wは5〜100μmが良い。また、開口部103の開口幅は(ラインピッチP)−(ライン幅W)で表せ、本発明においては100μm〜500μmであることが好ましく、且つ開口率(開口部の面積の合計/メッシュ部の全面積)を60〜97%とするのが、光透過性と電磁波遮蔽性との両立性の点で好ましい。
なお、バイアス角度(メッシュのライン部と電磁波遮蔽シートの外周辺との成す角度)は、ディスプレイの画素ピッチや発光特性を考慮して、モアレが出難い角度に適宜設定すれば良い。
【0134】
本発明においては、最終的に得られるメッシュ状領域101におけるライン部104の総厚みHは、10μm以下とすることが好ましく、5μm以下とすることがさらに好ましく、3μm以下とすることが特に好ましい。なお、メッシュ状領域101のライン部104の高さHは、ライン部104を形成する層の厚みを全て含む総厚みをいう。
ライン部104の総厚みが大きすぎると、メッシュ状であるライン部104と開口部103の段差が大きくなり、粘着剤層又は近赤外線吸収層を積層する際に気泡が残留し易くなる。また、ライン部104の厚みが更に厚くなるとエッチング加工時のサイドエッチング等により所望する高精細なメッシュの形状が得られ難くなる。
これに対して、ライン部104の総厚みHを10μm以下とすることで、金属使用量の節約が可能となる。
【0135】
(接着剤層)
本発明において透明樹脂基材シートと金属箔とを接着するのに、図1〜図11の電磁波遮蔽シートにおいて図示していないが、接着剤層(又は粘着剤層)が用いられても良い。接着剤層を形成する接着剤としては、耐エッチング性を有するものを用いることが好ましい。
具体的には、ポリエステルウレタン、アクリルウレタン、ポリエーテルウレタン等のポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール単独もしくはその部分鹸化品、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。本発明に用いられる接着剤は、光硬化型であってもよく、また熱硬化型であってもよい。特に、透明樹脂基材シートとの密着性や、ネオン光吸収剤等との相溶性、分散性などの観点からポリウレタン樹脂、アクリル樹脂もしくはポリエステル樹脂が好ましい。また、接着剤層中にネオン光吸収剤及び/又は色補正色素を1種以上含有させてもよい。
この接着剤層の膜厚は、0.5μm〜50μmの範囲内であることが好ましく、1μm〜20μmであることがより好ましい。これにより、透明樹脂基材シート上に導電性メッシュ層を強固に接着することができ、また、導電性メッシュ層を形成するエッチングの際に該透明樹脂基材シートが塩化鉄等のエッチング液の影響を受けること等を防ぐことができるからである。
【0136】
4.粘着剤層(D)
本発明の複合フィルタにおいて粘着剤層は、複合フィルタのプラズマディスプレイパネルへの貼付面として機能する層である。よって、プラズマディスプレイ表面等の被着面に複合フィルタを貼着する工程において貼着位置がずれる等の不良を生じた場合に、再度当該複合フィルタを剥離して貼り直せる特性、所謂、リワーク性を求める場合には、当該粘着剤層の粘着力を最適化することにより、リワーク性が良好になる。
【0137】
隣接する前記電磁波遮蔽シートの導電性メッシュ層が当該粘着剤層(D)に接触する実施形態の場合には、当該粘着剤層(D)が導電性メッシュ層の凹凸を平坦化し、且つ前記導電性メッシュ層の周縁部の一部を露出させるように、導電性メッシュ層上に設けられる(例えば、図1、3参照。)。このように粘着剤層(D)が、導電性メッシュ層の平坦化層も兼務する場合には、当該粘着剤層は、適当な稀釈溶剤にて低粘度(通常は25℃で5Pa・s程度以下。C型粘度計での測定値)に稀釈した状態で導電性メッシュ層上に塗工することによって、導電性メッシュ層の凹凸内に空気が入らないように、凹凸部分を完全に埋めつつ、当該粘着剤層(D)表面が平坦化するように塗工され、透明性が高いものを得ることが好ましい。
更に、当該粘着剤層(D)は、前記近赤外線吸収層(B)において述べたのと同様に、前記粘着剤層に用いられる材料や厚みを最適化することにより、耐衝撃層としても機能するものである。
【0138】
粘着剤層(D)の構成材料である粘着性樹脂には、前記近赤外線吸収層(B)を作製する粘着剤組成物の樹脂や、前記電磁波遮蔽シートにおける接着剤層の構成材料である樹脂と同じ材料が用いられる。
【0139】
本発明において粘着剤層(D)は、充分な接着強度とリワーク性の観点から、上述した近赤外線吸収層と同様に表面平滑な硝子板に対する剥離抵抗値が5〜30N/25mmであることが好ましく、5〜25N/25mmであることが更に好ましく、5〜15N/25mmであることが特に好ましい。
【0140】
本発明において、粘着剤層(D)の膜厚は、通常乾燥時の厚さが5〜50μm程度である。例えば、導電性メッシュ層の平坦化層としても機能させる場合は、5〜40μmの範囲内であることがメッシュの凹凸を良好に平坦化する点から好ましい。また、耐衝撃層としても機能させる場合、特に乾燥時の厚さを、前記近赤外線吸収層との合計で50〜2,000μmとなるようにすることが好ましい。また、このような場合、前記の図15に示した衝撃試験による破壊エネルギーが0.5J以上、好ましくは0.6J以上という耐衝撃性を有することが望ましい。
粘着剤層(D)の厚みと、耐衝撃性を有する層の合計厚みを50〜2,000μmとすることで、耐衝撃性が得られる。本発明において粘着剤層(D)も柔らかい粘着剤から作製されるため、ある程度の耐衝撃性を有する。
【0141】
5.第二の粘着剤層
本発明の複合フィルタにおいて第二の粘着剤層41は、光学フィルタ10と電磁波遮蔽シート30とを貼り合わせたり(図3参照)、光学フィルタ10と電磁波遮蔽シート30とを貼り合わせると共に電磁波遮蔽シートの平坦化層として機能(図4参照)したりする層として複合フィルタに備えられている場合がある。
【0142】
第二の粘着剤層41の構成材料である粘着性樹脂には、前記近赤外線吸収層(B)を作製する粘着剤組成物の(メタ)アクリル系樹脂粘着剤や、前記電磁波遮蔽シートにおける接着剤層の構成材料である粘着性樹脂や、前記粘着剤層(D)において述べた粘着性樹脂と同じ材料が用いられる。
本発明において、第二の粘着剤層41の膜厚は、通常乾燥時の厚さが5〜50μm程度である。例えば、導電性メッシュ層の平坦化層としても機能させる場合は、5〜40μmの範囲内であることがメッシュの凹凸を良好に平坦化する点から好ましい。
【0143】
6.表面保護層
本発明の第二の態様である第八及び第九の実施形態で示した複合フィルタ(図8、9参照)1が備える表面保護層36は、電磁波遮蔽シート30の透明樹脂基材シート31の表面を保護する層であり、耐擦傷機能、反射防止機能、及び防眩機能よりなる群から選択される1種以上の機能を有するものである。表面保護層は単層の他、多層として形成してもよい。但し、本発明の2層以上の表面保護層間には基材は介しない。
プラズマディスプレイ表示装置表面での外来光の鏡面反射による背景の映り込み、画像の白化、及び画像コントラスト低下を低減する為の手段として、本発明の複合フィルタの最上層には、反射防止機能、防眩機能を付与することが好ましく、所謂防眩層及び/又は所謂反射防止層を形成することが好ましい。
また、複合フィルタに紫外線遮蔽機能をもたらす点から、表面保護層中に紫外線吸収剤を含有させても良い。
【0144】
以上、各層を例示して説明したが、本発明のプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタは、プラズマディスプレイパネルがキセノンガス放電を利用して発光する際に生じる近赤外線領域、即ち、800〜1100nmの波長域における光線透過率が30%以下であることが好ましく、20%以下であることが更に好ましく、10%以下であることが特に好ましい。
また、本発明のプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタは、プラズマディスプレイパネルがキセノンガス放電を利用して発光する際、ネオン原子が励起された後、基底状態に戻るときに発光するネオン光、即ち、570〜610nmの波長域における光線透過率が50%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましい。
また、本発明のプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタは、可視光領域で充分な光線透過率、すなわち可視光透過率20%以上、更に30%以上を有することが望ましい。
なお、本発明における光線透過率は、JIS Z8701に準拠して分光光度計(例えば、品番:UV−3100PC、会社名:株式会社島津製作所)にて測定することができる。
【0145】
本発明の複合フィルタは、優れた光学フィルタ機能の耐久性を有し、高温高湿下での長時間の使用によっても、当該近赤外線吸収層中の樹脂の近赤外域で透過率が上昇することを防止し近赤外線吸収能を長期に渡り安定的に維持できる。
具体的には、作製した複合フィルタの初期状態と、当該複合フィルタの常環境(23℃、湿度10%以下)、耐熱環境(80℃、湿度10%以下)、耐湿熱環境(60℃、湿度95%)の3条件下にて1000時間経過後との分光特性(透過率T、色度(x、y))を比較して、いずれも、380nm〜780nmでの透過率変化ΔTが20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、かつ780nm〜1000nmでの透過率変化ΔTが20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。
また、複合フィルタの色度(x、y)の変化ΔxおよびΔyは、いずれも0.03以下であることが好ましく、0.02以下であることがより好ましい。
【0146】
また、本発明に係るプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタの膜厚は、使用基材が薄膜のシートであり且つ実質上合計2層(光学フィルタの基材シートが1層、電磁波遮蔽シートの基材シートが1層)又は1層(電磁波遮蔽シートが1層のみ)であることから薄くすることができ、100〜2000μmの範囲内であることが好ましく、200〜500μmの範囲内であることが更に好ましい。このような範囲にすることにより、連続帯状として最小直径が15cm以下のロール状に巻くことが可能となるため生産効率が向上する。
【0147】
以上に述べた本発明に係るディスプレイ用シート状複合フィルタは、導電性メッシュ層の凹凸内に空気が入らないように、凹凸部分を完全に埋めつつ表面が平坦化するように塗工されることにより、且つ近赤外線吸収層もヘイズが少なくなるような(メタ)アクリル系樹脂粘着剤を適宜選択することにより、透明性が高いものが得られ、具体的にはヘイズが15以下、更に好ましくは10以下であることが望ましい。ここでヘイズは、JIS K7105−1981に準拠した方法により測定された値を意味する。
【0148】
III.プラズマディスプレイ用シート状複合フィルタの製造方法
本発明に係るプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタの第一の態様は、下記工程を含む第一の製造方法により製造することができる(図1、図12参照)。
(i)第一の透明樹脂基材シートの一方の面に、耐擦傷機能、反射防止機能、及び防眩機能及びより成る群から選択される1種以上の機能を有する1層以上の機能層を有する連続帯状の光学フィルタを準備する工程、
(ii)第二の透明樹脂基材シートの一方の面に、該第二の透明樹脂基材シート側の面が黒化処理されている導電性メッシュ層を少なくとも有する連続帯状の電磁波遮蔽シートを準備する工程、
(iii)前記(メタ)アクリル系樹脂粘着剤、CsxWyOz(但し、Csはセシウム、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1.1、2.2≦z/y≦3.0)で表されるセシウム・タングステン複合酸化物微粒子、及び透過率上昇抑制剤を含有する粘着剤組成物からなる近赤外線吸収層を準備する工程、
(iv)前記連続帯状の光学フィルタの第一の透明樹脂基材シートの前記機能層を積層してない面と、前記連続帯状の電磁波遮蔽シートの第二の透明樹脂基材シートの導電性メッシュ層を有しない面とを前記近赤外線吸収層を介して貼り合わせて、連続帯状の複合シートを得る工程、
(v)前記電磁波遮蔽シートの導電性メッシュ層面上に、該導電性メッシュ層の凹凸を平坦化し、且つ該導電性メッシュ層の周縁部の一部を露出させるように、粘着剤層を間欠塗工又は間欠貼合する工程、及び
(vi)前記連続帯状の複合シートを枚葉化する工程。
【0149】
以下、上記第一の製造方法について、工程毎に説明する。
(i)連続帯状の光学フィルタを準備する工程
工程(i)は、第一の透明樹脂基材シート11の一方の面に、耐擦傷機能、反射防止機能及び防眩機能より成る群から選択される1種以上の機能を有する1層以上の機能層13を有する連続帯状の光学フィルタ10を準備する工程である。
本発明において用いられる前記光学フィルタは、各個に基材を有する機能フィルタが複数貼り合わされて形成されるものではなく、実質的に基材は薄膜の第一の透明樹脂基材シート1層のみで、当該透明樹脂基材シートの両面に各機能層が塗工等の湿式成膜法やスパッタ等の乾式成膜法の手段により積層されているものである。
【0150】
湿式成膜法を用いる場合、前記光学フィルタの各層において述べたような構成材料を必要に応じて溶剤に希釈して層形成用塗工液を調製する。当該層形成用塗工液を、連続帯状の第一の透明樹脂基材シートの一方の面にグラビアリバース法等の各種塗工法により塗工(例えば10g/m)することにより形成することができる。塗工法としては、他にも後述の間欠塗工法において説明するのと同様の方法を用いることができる。
また、乾式成膜法を用いる場合、真空蒸着、スパッタリング、プラズマCVD、イオンプレーティング等による気相法が挙げられる。
【0151】
(ii)連続帯状の電磁波遮蔽シートを準備する工程
工程(ii)は、第二の透明樹脂基材シート31の一方の面に、当該透明樹脂基材シート側の面が黒化処理されている導電性メッシュ層34を少なくとも有する連続帯状の電磁波遮蔽シート30を準備する工程である。
第二の透明樹脂基材シートの一方の面へ、金属薄膜をスパッタ等により形成して導電処理層を形成し、その上に電解メッキにより金属メッキ層として金属層を形成した第二の透明樹脂基材シートを準備し、該金属メッキした該透明樹脂基材シートの金属メッキ層及び導電処理層を、フォトリソグラフィー法でメッシュ状とするパターニングを行う。
【0152】
第二の透明樹脂基材シート31上の金属箔(場合によっては黒化層33、防錆層(図示しない)を備える)をフォトリソグラフィー法でメッシュ状としメッシュ状領域101の導電体層を形成するパターニングについて説明する。
フォトリソグラフィー法は、帯状で連続して巻き取られたロール状の積層体(第二の透明樹脂基材シート31、接着剤層、金属箔。なお、以下の説明において第二の透明樹脂基材シート31上に少なくとも1層が形成されているものを積層体と称する)を加工して行く(巻取り加工、ロールツーロール加工という)ことが好ましい。積層体を連続的又は間欠的に搬送しながら、緩みなく伸張した状態で、マスキング、エッチング、レジスト剥離する。
【0153】
メッシュ状領域を形成するライン部(導電体層)上へ感光性レジストを塗布する。レジストの塗布は、巻取り加工では、帯状の積層体を連続又は間欠で搬送させながら、メッシュ状領域を形成する導電体層面へ、カゼイン(乳タンパク質)、PVA(ポリビニルアルコール)、ゼラチンなどのレジストをディッピング(浸漬)、カーテンコート、掛け流しなどの方法で行う。また、レジストは塗布ではなく、ドライフィルムレジストを用いてもよく、その場合には作業性を向上できる。
なお、感光性レジストのネガ型、ポジ型の何れも使用可である。感光性レジストがネガ型の場合は、フォトマスクのメッシュパターンはライン部(導電体層)が透明なものとする。又感光性レジストがポジ型の場合は、フォトマスクのメッシュパターンは開口部が透明なものとする。また、露光パターンとしては、電磁波遮蔽用シートとして所望のパターンであり、最低限メッシュ状領域のパターンから構成される。更に必要に応じて、メッシュ状領域の外周に接地用領域のパターンを追加する。
次に、マスキングは、レジストを乾燥した後に、所定のパターンを有するフォトマスクにて密着露光する。
露光した後にアルカリ水溶液や有機溶剤を用いて現像し、硬膜処理などを施し、ベーキングする。ベーキングはレジストがカゼインの場合、200℃〜300℃で行うが、第二の透明樹脂基材シートの反りを防止するために、できるだけ低温度が好ましい。
【0154】
ベーキングの後にエッチングを行う。エッチング液としては、エッチングを連続して行う本発明においては、循環使用が容易にできる塩化第二鉄、塩化第二銅の水溶液が好ましい。
また、エッチングは、帯状で連続する鋼材、特に厚み20μm以上80μm以下の薄板をエッチングするカラーTVのブラウン管用のシャドウマスクを製造する設備と、基本的に同様の工程である。即ち、シャドウマスクの既存の製造設備を流用でき、レジスト塗布からエッチングまでが一貫して連続生産できて、極めて効率が良い。
エッチング後は、水洗、アルカリ液によるレジスト剥離、洗浄を行ってから乾燥すればよい。以上のフォトリソグラフィー法に従うメッシュ加工により、導電体層がメッシュ状領域101に形成された電磁波遮蔽シート30が得られる。
【0155】
本発明に用いられる電磁波遮蔽シートにおいて、第一の実施形態のように第二の透明樹脂基材シート側の面が黒化処理されている導電性メッシュ層を作製する(図1参照)には、金属箔を該透明樹脂基材シートに積層する方法を用いる場合、金属箔を予め黒化処理し、黒化処理面を該透明樹脂基材シート側に必要に応じて接着剤等を用いて貼り合わせるようにする。また、メッキ法を用いる場合には、該透明樹脂基材シート上に黒化層をメッキにより形成した上に、更に金属層をメッキにより形成する方法等が挙げられる。
斜めから観察する場合の画像の視認性が良い点、粘着剤層又は近赤外線吸収層を形成する際に気泡混入が少ない点、工程が短く歩留りが良い点、低コストが可能である点などの点から、導電性メッシュ層の厚みを5μm程度以下と薄くする場合には、前述したメッキ法で行うことが好ましい。
【0156】
(iii)近赤外線吸収層を準備する工程
工程(iii)は、本発明に係る粘着剤組成物からなる粘着性に優れる近赤外線吸収層20を準備する工程である。
近赤外線吸収層は、前述したような(メタ)アクリル系樹脂粘着剤、セシウム・タングステン複合酸化物微粒子、及び透過率上昇抑制剤を少なくとも含有する粘着剤組成物を、前記第一の透明樹脂基材シート上又は第二の透明樹脂基材シート上に塗工又は貼合等の方法により形成する。粘着剤組成物は、前記セシウム・タングステン複合酸化物微粒子の分散を良好にするために、該セシウム・タングステン複合酸化物微粒子を、必要に応じて各種分散剤や、界面活性剤やシランカップリング剤を用いて、該セシウム・タングステン複合酸化物微粒子の分散状態を均一で良好にすることが好ましい。
【0157】
近赤外線吸収層は、離型処理されたPETフィルムなどの離型シート上に上述の粘着剤組成物を塗工又は貼合して形成しても良い。この場合、第一又は第二の透明樹脂基材シートに貼り合わせられるまで、当該離型シート上に形成された近赤外線吸収層を同様の離型シートを用いて上から保護しておくことが好ましい。
或いは、近赤外線吸収層は、前記セシウム・タングステン複合酸化物微粒子を均一に分散させた粘着剤組成物を押し出し成型することにより、形成されても良い。この場合も近赤外線吸収層の両面を離型シートにより保護しておくことが好ましい。
【0158】
(iv)近赤外線吸収層を介して貼り合わせて、連続帯状の複合シートを得る工程
工程(iv)は、前記連続帯状の光学フィルタ10の第一の透明樹脂基材シート11の光学機能層13を積層してない面14と、前記連続帯状の電磁波遮蔽シート30の第二の透明樹脂基材シート31の導電性メッシュ層34を積層してない面37とを、前記粘着性を有する近赤外線吸収層20を介して貼り合わせて、連続帯状の複合シートを得る工程である。
前記連続帯状の電磁波遮蔽シートと、前記連続帯状の光学フィルタとを近赤外線吸収層を介して貼り合わせる方法は、特に限定されない。
ここで、近赤外線吸収層20を介して貼り合わせる態様としては、図12(iv)に示すように、予め近赤外線吸収層20を、前記連続帯状の電磁波遮蔽シート30の第二の透明樹脂基材シート31の導電性メッシュ層を積層してない面37上に貼り合わせた上で、前記連続帯状の光学フィルタ10の第一の透明樹脂基材シートの光学機能層を積層してない面14と貼り合わせる態様が挙げられる。
或いは、予め近赤外線吸収層20を、前記連続帯状の光学フィルタ10の第一の透明樹脂基材シートの光学機能層を積層してない面14上に貼り合わせた上で、前記連続帯状の電磁波遮蔽シート30の第二の透明樹脂基材シート31の導電性メッシュ層を積層してない面37と貼り合わせる態様が挙げられる。
或いは、離型シートで両面挟まれた近赤外線吸収層20を用い、両面の離型シートを剥がしながら、前記連続帯状の光学フィルタ10の第一の透明樹脂基材シートの光学機能層を積層してない面14と前記連続帯状の電磁波遮蔽シート30の第二の透明樹脂基材シート31の導電性メッシュ層を積層してない面37とを同時に貼り合わせても良い。
【0159】
ラミネーターは、ロール式、平板式等、光学フィルタ及び電磁波遮蔽シートに対して加圧することができるものであればかまわないが、ロールツーロール方式に対応すること及び気泡の混入を防ぐことが容易である点や、連続生産が可能な点からロール式ラミネーターを用いることが好ましい。
積層時の加圧は特に限定されないが、例えばロール式ラミネーターを用いる場合、線圧で1〜20kgf/cmが好ましい。積層時の加圧部分の温度も特に限定されないが、設備負担の点からは低温であるほうが好ましく、20℃〜80℃であるほうが好ましい。但し、必要に応じて80℃以上に加熱しても良い。
【0160】
(v)粘着剤層を間欠塗工又は間欠貼合する工程
工程(v)は、前記電磁波遮蔽シート30の導電性メッシュ層34面上に、当該導電性メッシュ層の凹凸を平坦化し、且つ当該導電性メッシュ層の周縁部の一部を露出させるように、粘着剤層40を間欠塗工又は間欠貼合する工程である。
当該粘着剤層40は、図12(v)のように、導電性メッシュ層の凹凸内に空気が入らないように、凹凸部分を完全に埋めつつ、粘着剤層表面が平坦化するように塗工又は貼合されることが、複合フィルタの透明性を向上する点から好ましい。また、露出させる導電性メッシュ層の周縁部の一部としては、前述のように接地用領域として用いられる部分とすれば十分である。中でも粘着剤層は、前記導電性メッシュ層の周縁部4辺全てを露出させるように設けられることが好ましい。
【0161】
<間欠塗工>
まず、粘着剤層40の構成要素、すなわち粘着剤、及びネオン光吸収剤及び/又は色補正色素、その他必要に応じて添加剤を含有する粘着剤層形成用塗工液を準備する。
粘着剤層形成用塗工液は、前記導電性メッシュ層34上に積層時に流動性を有することが好ましい。このような場合は、電磁波遮蔽シートと粘着剤層の積層時にメッシュの開口部内の隅々にまで粘着剤層形成用塗工液が行き渡るため、開口部内に気泡が残留することを防止できる。従って、メッシュ面への平坦化工程を省略しながら、気泡の光散乱による複合フィルタの曇価(ヘイズ)が上昇するという不都合を回避でき、透明性の高い複合フィルタを生産効率良く得ることができる。
従って本発明における粘着剤層形成用塗工液が有する流動性は、該粘着剤層形成用塗工液が流入してメッシュ状領域開口部内の空気と置換し、該開口部を充填して粘着剤層となる程度の流動性とする。粘着剤層形成用塗工液は、25℃での粘度が1Pa・s以下であることが好ましく、5Pa・s以下程度であることが更に好ましい(C型粘度計での測定値。)。
【0162】
粘着剤層形成用塗工液が流動性を有するようにするには、粘着剤層を構成する材料を溶剤で希釈しても良いし、溶剤を含有することなくそれ自体室温で流動性を有する天然ゴムや合成樹脂、或いは反応モノマー中にその重合体が溶解しているようなシロップ型の粘着剤からなる粘着剤材料を用いても良い。また、適宜温度をかけることにより溶融して流動性を有するホットメルト型の粘着剤を用いても良い。
更に、室温で液状の重合反応性モノマーを含有する粘着剤層であって、積層後に光及び/又は熱により硬化させる形態をとる粘着剤層であっても良い。なお、粘着及び積層後に必要に応じて、粘着剤層の流動性を低下させる方法としては、例えば、希釈溶剤を乾燥させたり、予め粘着剤層中に架橋剤を添加し、加熱、紫外線照射等により、粘着剤を架橋乃至は重合せしめる方法など挙げられる。
【0163】
間欠塗工を行う方法としては、ロールコータ、ダイコータ、ブレードコータ、スクリーン印刷等が挙げられる。特に本発明において、粘着剤層形成用塗工液を前記流動性を有するように調製して用いる場合には、溶剤希釈が好ましく用いられる。
間欠塗工を行う場合には、生産速度を上げやすく、生産性をより向上し易いというメリットがある。
【0164】
<間欠貼合>
まず、粘着剤、及び場合に応じてネオン光吸収剤及び/又は色補正色素、その他必要に応じて添加剤を含有する粘着剤層を離型シート上に形成し、連続帯状の粘着剤層を得る。この場合の連続帯状の粘着剤層の幅は、貼り合わせる電磁波遮蔽シートの幅よりも小さく且つ導電性メッシュ層の幅よりも若干大きい幅に適宜調節することが好ましい。このようにすると、連続帯状の粘着剤層と連続帯状の電磁波遮蔽シートを貼り合わせた場合に、電磁波遮蔽シートにおける導電性メッシュ層の周縁のうち連続帯状の幅方向が露出して接地用領域となり得る。
導電性メッシュ層の周縁のうち連続帯状の幅方向のみだけでなく、導電性メッシュ層の周縁4辺を接地用領域とする場合には、連続帯状の流れ方向も露出させるために、間欠貼合を行う。
間欠貼合は、前記連続帯状の電磁波遮蔽シートの導電性メッシュ層面上に、電磁波遮蔽シートの幅よりも適宜狭い幅を有する連続帯状粘着剤層を導電性メッシュ層の周縁4辺が露出するような大きさに切断しつつ、導電性メッシュ層上に位置合わせを行いながら、間欠的に貼り合わせを行う。
この際、連続帯状の粘着剤層と導電性メッシュ層とをロールツーロール方式で貼り合わせていくのが生産性の点から好ましい。そのため、粘着剤層の両面にある離型シート(保護フィルム)のうち、剥離させる側の離型シートは連続帯状に残したまま巻き取り、剥離しない離型シートと粘着剤層のみを切断するようにしながら貼り合わせていく。
【0165】
また、間欠貼合を行った場合、導電性メッシュ層の凹凸内に空気が入らないように、粘着剤層が凹凸部分を完全に埋めつつ、粘着剤層表面が平坦化するように、加熱真空処理を行うことが好ましい。加熱真空処理の条件としては、例えば、0.2〜1.0MPaの真空中で、50〜100℃で、10〜180分間処理を行うことが挙げられる。
間欠貼合を行う場合には、間欠塗工に比べて装置が簡潔で、歩留まりが高いというメリットがある。また、粘着剤層とその保護フィルム層の大きさが同じになるので、当該保護フィルムの剥がれや歪みが生じ難いというメリットがある。
【0166】
形成された粘着剤層は貼着機能を有するため、不用意な接着の防止のため、ディスプレイ等に貼着されるまで、シリコーン処理した易剥離性のPETフィルム等の離型シート(保護フィルム)を積層しておくことが好ましい。
【0167】
(vi)前記連続帯状の複合フィルタを枚葉化する工程
本発明に係るプラズマディスプレイ用複合シートは、連続帯状のままで流通されても良いが、最終的には、プラズマディスプレイ1台分のサイズに切断され枚葉化する(90)。複合フィルタの枚葉化手段は特に限定されず、各種、フィルタ用の切断手段を用いることができる。
【0168】
本発明に係るプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタの第一の態様は、下記工程を含む第二の製造方法により製造することができる(図2、図13参照)。
(i)第一の透明樹脂基材シートの一方の面に、耐擦傷機能、反射防止機能、及び防眩機能より成る群から選択される1種以上の機能を有する1層以上の機能層を有する連続帯状の光学フィルタを準備する工程、
(ii)第二の透明樹脂基材シートの一方の面に、該第二の透明樹脂基材シートと反対側の面が黒化処理されている導電性メッシュ層を少なくとも有する連続帯状の電磁波遮蔽シートを準備する工程、
(iii)前記第二の透明樹脂基材シートの導電性メッシュ層を有しない面に粘着剤層を設ける工程、
(iv)前記電磁波遮蔽シートの導電性メッシュ層面上に、前記(メタ)アクリル系樹脂粘着剤、CsxWyOz(但し、Csはセシウム、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1.1、2.2≦z/y≦3.0)で表されるセシウム・タングステン複合酸化物微粒子、及び透過率上昇抑制剤を含有する粘着剤組成物からなる近赤外線吸収層を、前記導電性メッシュ層の周縁部の一部を露出させるように、間欠塗工又は間欠貼合する工程、
(v)前記連続帯状の光学フィルタの第一の透明樹脂基材シートの前記機能層を積層してない面と、前記連続帯状の電磁波遮蔽シートの近赤外線吸収層側の面とを貼り合わせて、連続帯状の複合シートを得る工程、及び
(vi)前記連続帯状の複合シートを枚葉化する工程。
【0169】
前記本発明に係るプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタの第二の製造方法における工程(i)は、前記第一の製造方法の工程(i)と同様に行うことができる。
また、第二の製造方法における工程(ii)は、前記第一の製造方法の工程(ii)と同様に行うことができる。電磁波遮蔽シートにおいて、第二の製造方法のように第二の透明樹脂基材シートと反対側の面が黒化処理されている導電性メッシュ層34を作製する際、金属箔を該透明基材シートに積層する方法を用いる場合、金属箔を予め黒化処理し、黒化処理面を該透明樹脂基材シートと反対側にして必要に応じて接着剤等を用いて貼り合わせるようにする。また、メッキ法を用いる場合、該透明樹脂基材シート上に金属層をメッキにより形成した上に、更に黒化層33をメッキにより形成する方法等が挙げられる。
【0170】
また、第二の製造方法における工程(iii)は、前記第一の製造方法の工程(iii)及び(iv)の近赤外線吸収層を形成する方法と同様に行うことができる。また、第二の製造方法における工程(iv)は、前記第一の製造方法の工程(v)における間欠塗工又は間欠貼合する方法と同様に行うことができる。更に、第二の製造方法における工程(v)は、前記第一の製造方法の工程(iv)における貼り合わせ工程と同様に行うことができる。また、第二の製造方法における工程(vi)は、前記第一の製造方法の工程(vi)の切断工程と同様に行うことができる。
【0171】
なお、第二の製造方法において連続帯状の光学フィルタを準備する場合には、図14に示すように、連続帯状の光学フィルタ10の幅方向の長さ81を、連続帯状の電磁波遮蔽シート30の幅方向の長さ82よりも短くして、貼り合わせたときに露出するようにすることが好ましい。
更に、連続帯状の光学フィルタ10の幅方向の長さ81は、前記間欠塗工又は間欠貼合により設けられた近赤外線吸収層20の連続帯状に対する幅方向の長さ83と同程度にすることが好ましい。その場合には、図14に示すように、連続帯状の光学フィルタ10の幅方向が、前記間欠塗工又は間欠貼合により設けられた近赤外線吸収層20の連続帯状に対する幅方向と重なるように貼り合わせた後、後述の枚葉化工程90において、連続帯状の長手方向の各近赤外線吸収層20の間で適宜切断するのみで、電磁波遮蔽シートの連続帯状の幅方向の近赤外線吸収層が積層されていない部分が露出されることになり、そのまま接地部として使用することが可能である。
また、プラズマディスプレイ1台分のプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタとして枚葉化する前後に、更に、連続帯状の長手方向の光学フィルタの近赤外線吸収層20によって貼り付けされていない部分についてのみ、切断しても良い。
【0172】
一方、本発明に係るプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタの第二の態様は、上記第一の態様の製造方法に準じ、製造することができる。特に限定されるものではないが、透明樹脂基材シートに連続帯状のものを用意し、これを連続帯状で連続的又は間欠的に走行させて、連続的又は間欠的に必要な層を形成していくのが好ましい。第二の態様のシート状複合フィルタは、透明樹脂基材シートを1枚だけ用いるので、このような連続生産が容易に行える。つまり、いわゆるロールツーロール加工で製造するのが、生産性などの点で好ましい。その場合、最後の層積層までを一台の機械で全て連続的に行うのがより好ましい。
【0173】
また、各層の形成順も実施形態にあわせて適宜選択すれば特に制限はなく、仕様により適宜順で行えばよい。例えば、以下の例が挙げられる。
透明樹脂基材シートを先ず用意し、この透明樹脂基材シートに対して、
(a):1.表面保護層の形成、2.導電体層の形成とその後の導電性メッシュ層の形成、3.近赤外線吸収層の形成(図8参照)。
(b):1.導電体層の形成とその後の導電性メッシュ層の形成、2.表面保護層の形成、3.近赤外線吸収層の形成(図9参照)。
(c):1.導電体層の形成、2.表面保護層の形成、3.導電体層から導電性メッシュ層の形成、4.近赤外線吸収層の形成(図8参照)。
などである。
【0174】
なお、近赤外線吸収層20や表面保護層36を導電性メッシュ層34上に部分的に形成する場合、接地用領域の一部、通常はメッシュ状領域に隣接する領域も被覆するように、やや広めに形成する。その理由は、多少の形成位置ズレがあっても機械的に弱いメッシュ状領域を確実に保護できるようにするためである。
そして、このようにして連続帯状で製造した、適用するディスプレイ1単位に対応した1単位の複合フィルタが長手方向に複数連なったものを、該複合フィルタ1の1単位毎に裁断して枚葉化する
【0175】
IV.プラズマディスプレイ表示装置
本発明に係るプラズマディスプレイ表示装置は、プラズマディスプレイ50に本発明に係るPDP用シート状複合フィルタ1を設けたものである。当該複合フィルタは、優れた光学フィルタ機能の耐久性を有し、高温高湿下での長時間の使用によっても、当該近赤外線吸収層中の樹脂の近赤外域での透過率の上昇が防止されて近赤外線の吸収能を長期に渡り維持できる。更に該複合フィルタの総厚みが薄く構成されている。
【0176】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではない。前記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0177】
以下、本発明について実施例を示して具体的に説明する。これらの記載により本発明を制限するものではない。
【0178】
<実施例1>
(1)連続帯状光学フィルタの製造
まず、図12(i)の光学フィルタ10を用意した。光学フィルタの層構成としては、反射防止層13/紫外線吸収層を兼用した第一の透明樹脂基材シート11の構成のものを準備した。尚、「/」はその左右の層が積層一体化されている事を示す。
該紫外線吸収層を兼用した第一の透明樹脂基材シートとしては、紫外線吸収剤を練込んで成る透明な、厚さ50μmの2軸延伸PETフィルム(帝人(株)製、商品名「テトロンフィルムHBタイプ」)を用いた。
【0179】
該反射防止層13は、該第一の透明樹脂基材11の一方の面上に、高屈折率層と低屈折率層をこの順に形成した物から構成した。
ここで、高屈折率層は、ジルコニア超微粒子を紫外線硬化性樹脂中に分散させた組成物(JSR(株)製、商品名「KZ7973」)を乾燥膜厚が3μmとなるように前記第一の透明樹脂基材シートの一方の面上に塗布し、乾燥し、紫外線を照射して、屈折率1.69の硬化物層を形成して得た。
又、低屈折率樹脂層は、フッ素樹脂系の紫外線硬化性樹脂(JSR(株)製、商品名「TM086」)を乾燥膜厚が100nmとなるように前記高屈折率層上に塗布し、乾燥し、紫外線を照射して、屈折率1.41の硬化物層を形成して得た。
【0180】
(2)連続帯状電磁波遮蔽シートの製造
図12(ii)に示す電磁波遮蔽シート30を次のようにして作製した。先ず、導電性メッシュ層34とする金属箔として、一方の面に銅−コバルト合金粒子から成る黒化層33が電解メッキ形成された厚さ10μmの連続帯状の電解銅箔を用意した。前記銅箔の両面に対して、亜鉛めっき後、ディッピング法にて公知のクロメート処理を行い、表裏両面に防錆層を形成した。
また、第二の透明樹脂基材シート31として厚さ100μmで一方の面32上にポリエステル樹脂系プライマー層を形成した、連続帯状の無着色透明な2軸延伸PETフィルムを用意した。
【0181】
次いで、この銅箔をその黒化層面側で前記第二の透明樹脂基材シート31のプライマー層上に、主剤が平均分子量3万のポリエステルポリウレタンポリオール12重量部と硬化剤がキシレンジイソシアネート系プレポリマー1重量部とから成る透明な2液硬化型ウレタン樹脂系接着剤でドライラミネートした後、50℃、3日間養生して、銅箔(防錆層形成済み)と第二の透明樹脂基材シートとの間に厚さ7μmの透明接着剤層を有する連続帯状の電磁波遮蔽シートを得た。
【0182】
以下の手順により銅箔をメッシュ化した。銅箔からフォトリソグラフィー法を利用したエッチングにより、開口部103及びライン部104とから成るメッシュ状領域101の周囲を囲繞する外縁部に額縁状のメッシュ非形成の接地用領域102を有する導電体層を形成した(図10及び図11参照。)。
フォトリソグラフィー法は、具体的には、カラーTVシャドウマスク用の製造ラインを利用して、メッシュ化されていない電磁波遮蔽シートに対してレジスト塗布からエッチングまでを一貫して行った。
該電磁波遮蔽シートの黒化層33を備える銅箔の全面に感光性のエッチングレジストを塗布後、所望のメッシュパターンを密着露光し、現像、硬膜処理、ベーキングして、メッシュのライン部104に相当する領域上にはレジスト層が残留し、開口部103に相当する領域上にはレジスト層が無い様なパターンにレジスト層を加工した後、塩化第二鉄水溶液で、黒化層33及び防錆層を備える銅箔を、エッチング除去してメッシュ状の開口部103を形成し、次いで、水洗、レジスト剥離、洗浄、乾燥を順次行い、電磁波遮蔽シート30を得た。
【0183】
図11に示すようにメッシュ状領域101を形成した電磁波遮蔽シート30の開口部103間のライン部104の幅Wは、15μmであった。また、該開口部103の形状は、正方形に形成した。(ラインピッチP)−(ライン幅W)で表せる開口部103の開口幅は、300μmであり、これにより開口率(開口部の面積の合計/メッシュ部の全面積)は、95%となった。また、メッシュ状領域101におけるライン部104の総厚みHは、10μmとした。なお、該ライン部104の高さHは、ライン部104を形成する層の厚みを全て含む総厚みを意味している。すなわち、黒化層33及び防錆層を含んだ厚みである。
【0184】
(3)近赤外線吸収層20の製造
更に、図12(iii)の近赤外線吸収層20を用意した。
(メタ)アクリル系樹脂粘着剤(綜研化学株式会社製、SKダイン2094;ガラス転移温度5℃、数平均分子量7万、分子量分布2.6、引張弾性率2×10Pa)100重量部に対して、硬化剤(綜研化学株式会社製、E−5XM)0.25重量部、セシウム・タングステン複合酸化物微粒子(Cs0.33WO)含有量18.5重量%分散液(住友金属鉱山(株)製、YMF−02;平均分散粒径800nm以下)8.8重量部、金属不活性化剤aであるサリチル酸誘導体(旭電化株式会社製、商品名;ADK STAB-CDA-1)0.2重量部、ネオン吸収剤(山田化学株式会社製、TAP−2;テトラアザポルフィリン系色素)0.045重量部、紫外線吸収剤であるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバスペシャルティケミカルズ株式会社製、商品名;TINUVIN329)0.25重量部を各々添加し、充分分散させて近赤外線吸収性を有する粘着剤組成物を調製した(なお、金属不活性化剤の固形分配合割合は0.8重量%となった。)。当該粘着剤組成物を、厚みが25μmとなるように離型処理PETフィルム上に塗工し、80℃で3分乾燥後に、該塗膜上に更に、同様の離型処理PETフィルムを被覆して塗膜を保護して、連続帯状の近赤外線吸収層20を形成した。
【0185】
(4)複合フィルタの製造
図12(iv)に示すように、得られた該連続帯状の電磁波遮蔽用シート30の導電性メッシュ層34が積層されていない側の面37と該連続帯状の光学フィルタ10の第一の透明樹脂基材シート11の反射防止層13が積層されていない側の面14とを、近赤外線吸収層20を介して貼り合わせて(80)、連続帯状の複合シートを得た。
まず、連続帯状の電磁波遮蔽用シート30の導電性メッシュ層34が積層されていない側の面37に、片面の離型処理PETフィルムを剥がしながら連続帯状の近赤外線吸収層20を、1対のラミネートローラ間に挟んで加圧することにより積層した。次に、電磁波遮蔽シート30/近赤外線吸収層20の積層体の近赤外線吸収層20の離型処理PETフィルムを剥がしながら、連続帯状の光学フィルタ10の第一の透明樹脂基材シート11の反射防止層13が積層されていない側の面14側に貼り合わせた。
【0186】
(5)粘着剤層40の積層
図12(v)に示す粘着剤層40は次のようにして間欠的に設けた。
まず、アクリル系粘着剤(綜研化学株式会社製、SKダイン2094)100重量部に対して、色補正用色素(アントラキノン系化合物;有本化学株式会社製、Plast red 8320)を0.025重量部添加し、トルエンとメチルエチルケトンとの1対1重量混合比の溶剤で、岩田カップ粘度計で13秒の粘度に稀釈した粘着剤層形成用塗工液を得た。なお、C型粘度計を用いて25℃で測定したらところ2200cP(=2.2Pa・s)であった。
当該粘着剤層形成用塗工液を乾燥後の厚みが25μmとなるように、前記電磁波遮蔽シートの導電性メッシュ層面上に、当該導電性メッシュ層の凹凸に空気が入らないように前記粘着剤層形成用塗工液を埋め込みながら、導電性メッシュ層の凹凸を平坦化するように、ダイコート法を用いて間欠塗工した。当該間欠塗工により、メッシュ状領域の画像表示領域と対峙する部分を全部被覆し、しかも該接地用領域の内周側2mmは該粘着剤層で被覆され、一方、該接地用領域の外周側13mmは何も被覆されずに導電体層が露出する様にして、粘着剤層40を厚み(導電性メッシュ層の凹凸の凹部から粘着剤層表面まで)25μmで積層した。
【0187】
(6)複合フィルタの枚葉化
図12(vi)に示すように、前記のようにして得られた連続帯状の複合シートを、雌雄一対の鋼鉄製の打ち抜き歯型間で挟持して剪断し打ち抜く様式の裁断機を用いて、対角線長50インチのプラズマディスプレイパネル前面を被覆する寸法形状に切断し、プラズマディスプレイ1台分毎の複合フィルタ1を複数枚得た(複合フィルタの形態は図1参照。なお、形態1と称する。)。
【0188】
〔複合フィルタの評価〕
作製した複合フィルタの800〜1100nmの波長域における光線透過率は10%以下、可視光透過率は43%であった。なお、本発明における光線透過率は、JIS Z8701に準拠して分光光度計(島津製作所製、UV−3100PC)にて測定した。
【0189】
更に、作製した複合フィルタ1の初期状態、および当該複合フィルタの常環境(23℃、湿度10%以下)、耐熱環境(80℃、湿度10%以下)、耐湿熱環境(60℃、湿度95%)の3条件下にて1000時間経過後の分光特性(透過率T、色度(x、y))を、分光光度計(島津製作所製、UV−3100PC)を用いて測定した。初期状態と、前記3条件下で1000時間経過後の透過率T、及び色度(x、y)の測定値から、透過率変化ΔT、及び色度(x、y)の値の差Δx及びΔyを求めた。
【0190】
その結果、初期状態と前記3条件下で1000時間経過後との比較において、いずれも、380nm〜780nmでの透過率変化ΔTが5%以下であり、かつ780nm〜1000nmでの透過率変化ΔTが5%以下であった。また、フィルタの色度(x、y)の変化ΔxおよびΔyは、いずれも0.003以下であった。
【0191】
<実施例2>
(1)連続帯状光学フィルタの製造
図13(i)に示す連続帯状光学フィルタ10は、実施例1と同様にして、製造を行った。
(2)連続帯状電磁波遮蔽シートの製造
図13(ii)に示す電磁波遮蔽シート30は、銅箔をその黒化層33が形成されていない面側で、前記第二の透明樹脂基材シート31のプライマー層上にドライラミネートした以外は、実施例1と同様にして製造を行った。
(3)粘着剤層40の積層
図13(iii)に示すような前記第二の透明樹脂基材シートの導電性メッシュ層を有しない面に粘着剤層40を設けるのは以下のように行った。
まず、アクリル系粘着剤(綜研化学株式会社製、SKダイン2094)100重量部に対して、色補正用色素(アントラキノン系化合物;有本化学株式会社製、Plast red 8320)を0.025重量部添加した粘着剤層形成用塗工液を得た。当該粘着剤層形成用塗工液を乾燥後の厚みが20μmとなるように、連続帯状の電磁波遮蔽シートの導電性メッシュ層を有しない面にダイコート法を用いて塗工し、80℃で3分乾燥後に同様のPETフィルムによって塗膜を保護し、連続帯状に形成された色補正用色素を含有した粘着剤層40を得た。
【0192】
(4)近赤外線吸収層20の積層
更に、図13(iv)に示すように近赤外線吸収層20を積層した。
(メタ)アクリル系樹脂粘着剤(綜研化学株式会社製、SKダイン2094)100重量部に対して、硬化剤(綜研化学株式会社製、E−5XM)0.25重量部、セシウム・タングステン複合酸化物微粒子(Cs0.33WO)含有量18.5重量%分散液(住友金属鉱山(株)製、YMF−02;平均分散粒径800nm以下)8.8重量部、金属不活性化剤aであるサリチル酸誘導体(旭電化株式会社製、商品名;ADK STAB-CDA-1)0.2重量部、紫外線吸収剤であるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバスペシャルティケミカルズ株式会社製、商品名;TINUVIN329)0.25重量部を各々添加し、充分分散させて近赤外線吸収性を有する粘着剤組成物を調製した(なお、金属不活性化剤の固形分配合割合は0.8重量%となった。)。当該粘着剤組成物を、乾燥後の厚みが25μmとなるように、連続帯状の電磁波遮蔽シートの導電性メッシュ層上にダイコート法を用いて間欠塗工し、80℃で3分乾燥後に同様のPETフィルムによって塗膜を保護し、連続帯状に間欠的に形成された近赤外線吸収剤とネオン吸収剤を含有した近赤外線吸収層が形成された積層体を得た。
この積層体を70℃、30分間、0.5MPaにおいて加熱加圧処理することにより、導電性メッシュ層の凹凸に空気が入らないように近赤外線吸収層を埋め込み、複合フィルタを透明化した。当該間欠塗工により、メッシュ状領域の画像表示領域と対峙する部分を全部被覆し、しかも接地用領域の内周側2mmは該近赤外線吸収層で被覆され、一方、該接地用領域の外周側13mmは何も被覆されずに導電体層が露出する様にして、近赤外線吸収層20を積層した。
【0193】
(5)複合フィルタの製造
図13(v)に示すように、得られた該連続帯状の電磁波遮蔽用シート30の近赤外線吸収層20側の面と該連続帯状の光学フィルタ10の第一の透明樹脂基材シート11の反射防止層13が形成されていない側の面とを、向かい合わせた状態で、1対のラミネートローラ間に挟んで加圧して積層(80)し、連続帯状の複合シートを得た。
(6)複合フィルタの枚葉化
図13(vi)に示すように、前記のようにして得られた連続帯状の複合シートを、雌雄一対の鋼鉄製の打ち抜き歯型間で挟持して剪断し打ち抜く様式の裁断機を用いて、対角線長50インチのプラズマディスプレイパネル前面を被覆する寸法形状に切断し、プラズマディスプレイ1台分毎の複合フィルタ1を複数枚得た(複合フィルタの形態は図2参照。なお、形態2と称する。)。
【0194】
〔複合フィルタの評価〕
作製した複合フィルタの光線透過率及び可視光透過率を実施例1と同様に測定したところ、800〜1100nmの波長域における光線透過率は10%以下、可視光透過率は42%であった。
【0195】
また、作製した複合フィルタの初期状態、および当該複合フィルタの常環境(23℃、湿度10%以下)、耐熱環境(80℃、湿度10%以下)、耐湿熱環境(60℃、湿度95%)の3条件下にて1000時間経過後の分光特性(透過率T、色度(x、y))を、実施例1と同様にして測定した。
その結果、初期状態と前記3条件下で1000時間経過後との比較において、いずれも、380nm〜780nmでの透過率変化ΔTが8%以下であり、かつ780nm〜1000nmでの透過率変化ΔTが8%以下であった。また、フィルタの色度(x、y)の変化ΔxおよびΔyは、いずれも0.005以下であった。
【0196】
<実施例3>
実施例1の(3)近赤外線吸収層20の製造において、金属不活性化剤aに変えて金属不活性化剤bとしてヒドラジド酸誘導体(チバスペシャルティケミカルズ社製、商品名;Irganox MD1024)を0.25重量部、紫外線吸収剤であるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバスペシャルティケミカルズ株式会社製、商品名;TINUVIN329)0.25重量部を各々添加し、充分分散させて近赤外線吸収性を有する粘着剤組成物を調製した(なお、金属不活性化剤の固形分配合割合は0.9重量%となった。)。そして、それ以外も実施例1と同じ条件で実験を行い、複合フィルタを得た(形態1)。
【0197】
作製した複合フィルタの初期状態、および当該複合フィルタの常環境(23℃、湿度10%以下)、耐熱環境(80℃、湿度10%以下)、耐湿熱環境(60℃、湿度95%)の3条件下にて1000時間経過後の分光特性(透過率T、色度(x、y))を、実施例1と同様にして測定した。
その結果、初期状態と前記3条件下で1000時間経過後との比較において、いずれも、380nm〜780nmでの透過率変化ΔTが5%以下であり、かつ780nm〜1000nmでの透過率変化ΔTが5%以下であった。また、フィルタの色度(x、y)の変化ΔxおよびΔyは、いずれも0.003以下であった。
【0198】
<実施例4>
実施例2の(4)近赤外線吸収層20の積層において、金属不活性化剤aに変えて金属不活性化剤bとしてヒドラジド酸誘導体(チバスペシャルティケミカルズ社製、商品名;Irganox MD1024を0.25重量部、紫外線吸収剤であるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバスペシャルティケミカルズ株式会社製、商品名;TINUVIN329)0.25重量部を各々添加し、充分分散させて近赤外線吸収性を有する粘着剤組成物を調製した(なお、金属不活性化剤の固形分配合割合は0.9重量%となった。)。そして、それ以外も全て実施例2と同じ条件で実験を行い、複合フィルタを得た(形態2)。
【0199】
作製した複合フィルタの初期状態、および当該複合フィルタの常環境(23℃、湿度10%以下)、耐熱環境(80℃、湿度10%以下)、耐湿熱環境(60℃、湿度95%)の3条件下にて1000時間経過後の分光特性(透過率T、色度(x、y))を、実施例1と同様にして測定した。
その結果、初期状態と前記3条件下で1000時間経過後との比較において、いずれも、380nm〜780nmでの透過率変化ΔTが8%以下であり、かつ780nm〜1000nmでの透過率変化ΔTが8%以下であった。また、フィルタの色度(x、y)の変化ΔxおよびΔyは、いずれも0.005以下であった。
【0200】
<実施例5>
実施例1の(3)近赤外線吸収層20の製造において、金属不活性化剤aに変えて金属不活性化剤cとしてシュウ酸アミド誘導体(Uniroyal社製、商品名;Naugard XL−1)を0.2重量部、紫外線吸収剤であるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバスペシャルティケミカルズ株式会社製、商品名;TINUVIN213)0.25重量部を各々添加し、充分分散させて近赤外線吸収性を有する粘着剤組成物を調製した(なお、金属不活性化剤の固形分配合割合は0.8重量%となった。)。そして、それ以外も実施例1と同じ条件で実験を行い、複合フィルタを得た(形態1)。
【0201】
作製した複合フィルタの初期状態、および当該複合フィルタの常環境(23℃、湿度10%以下)、耐熱環境(80℃、湿度10%以下)、耐湿熱環境(60℃、湿度95%)の3条件下にて1000時間経過後の分光特性(透過率T、色度(x、y))を、実施例1と同様にして測定した。
その結果、初期状態と前記3条件下で1000時間経過後との比較において、いずれも、380nm〜780nmでの透過率変化ΔTが5%以下であり、かつ780nm〜1000nmでの透過率変化ΔTが5%以下であった。また、フィルタの色度(x、y)の変化ΔxおよびΔyは、いずれも0.003以下であった。
【0202】
<実施例6>
実施例2の(4)近赤外線吸収層20の積層において、金属不活性化剤aに変えて金属不活性化剤cとしてシュウ酸アミド誘導体(Uniroyal社製、商品名;Naugard XL−1)を0.2重量部、紫外線吸収剤であるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバスペシャルティケミカルズ株式会社製、商品名;TINUVIN213)0.25重量部を各々添加し、充分分散させて近赤外線吸収性を有する粘着剤組成物を調製した(なお、金属不活性化剤の固形分配合割合は0.8重量%となった。)。そして、それ以外も全て実施例2と同じ条件で実験を行い、複合フィルタを得た(形態2)。
【0203】
作製した複合フィルタの初期状態、および当該複合フィルタの常環境(23℃、湿度10%以下)、耐熱環境(80℃、湿度10%以下)、耐湿熱環境(60℃、湿度95%)の3条件下にて1000時間経過後の分光特性(透過率T、色度(x、y))を、実施例1と同様にして測定した。
その結果、初期状態と前記3条件下で1000時間経過後との比較において、いずれも、380nm〜780nmでの透過率変化ΔTが8%以下であり、かつ780nm〜1000nmでの透過率変化ΔTが8%以下であった。また、フィルタの色度(x、y)の変化ΔxおよびΔyは、いずれも0.005以下であった。
【0204】
<実施例7>
実施例1の(3)近赤外線吸収層20の製造において、金属不活性化剤aに変えて金属不活性化剤dとしてイオウ含有ホスファイト(Hoechst社製、商品名;Hostanox OSP−1)を0.25重量部、紫外線吸収剤をベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバスペシャルティケミカルズ株式会社製、商品名;TINUVIN213)0.25重量部を各々添加し、充分分散させて近赤外線吸収性を有する粘着剤組成物を調製した(なお、金属不活性化剤の固形分配合割合は0.9重量%となった。)。そして、それ以外も実施例1と同じ条件で実験を行い、複合フィルタを得た(形態1)。
【0205】
作製した複合フィルタの初期状態、および当該複合フィルタの常環境(23℃、湿度10%以下)、耐熱環境(80℃、湿度10%以下)、耐湿熱環境(60℃、湿度95%)の3条件下にて1000時間経過後の分光特性(透過率T、色度(x、y))を、実施例1と同様にして測定した。
その結果、初期状態と前記3条件下で1000時間経過後との比較において、いずれも、380nm〜780nmでの透過率変化ΔTが5%以下であり、かつ780nm〜1000nmでの透過率変化ΔTが5%以下であった。また、フィルタの色度(x、y)の変化ΔxおよびΔyは、いずれも0.003以下であった。
【0206】
<実施例8>
実施例2の(4)近赤外線吸収層20の積層において、金属不活性化剤aに変えて金属不活性化剤dとしてイオウ含有ホスファイト(Hoechst社製、商品名;Hostanox OSP−1)を0.25重量部、紫外線吸収剤であるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバスペシャルティケミカルズ株式会社製、商品名;TINUVIN213)0.25重量部を各々添加し、充分分散させて近赤外線吸収性を有する粘着剤組成物を調製した(なお、金属不活性化剤の固形分配合割合は0.9重量%となった。)。そして、それ以外も実施例2と同じ条件で実験を行い、複合フィルタを得た(形態2)。
【0207】
作製した複合フィルタの初期状態、および当該複合フィルタの常環境(23℃、湿度10%以下)、耐熱環境(80℃、湿度10%以下)、耐湿熱環境(60℃、湿度95%)の3条件下にて1000時間経過後の分光特性(透過率T、色度(x、y))を、実施例1と同様にして測定した。
その結果、初期状態と前記3条件下で1000時間経過後との比較において、いずれも、380nm〜780nmでの透過率変化ΔTが8%以下であり、かつ780nm〜1000nmでの透過率変化ΔTが8%以下であった。また、フィルタの色度(x、y)の変化ΔxおよびΔyは、いずれも0.005以下であった。
【0208】
<実施例9>
実施例1の(3)近赤外線吸収層20の製造において、金属不活性化剤aに変えて金属不活性化剤eとして金属石鹸(化合物名;ステアリン酸カルシウム)を0.4重量部、紫外線吸収剤であるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバスペシャルティケミカルズ株式会社製、商品名;TINUVIN213)0.25重量部を各々添加し、充分分散させて近赤外線吸収性を有する粘着剤組成物を調製した(なお、金属不活性化剤の固形分配合割合は1.5重量%となった。)。そして、それ以外も実施例1と同じ条件で実験を行い、複合フィルタを得た(形態1)。
【0209】
作製した複合フィルタの初期状態、および当該複合フィルタの常環境(23℃、湿度10%以下)、耐熱環境(80℃、湿度10%以下)、耐湿熱環境(60℃、湿度95%)の3条件下にて1000時間経過後の分光特性(透過率T、色度(x、y))を、実施例1と同様にして測定した。
その結果、初期状態と前記3条件下で1000時間経過後との比較において、いずれも、380nm〜7800nmでの透過率変化ΔTが5%以下であり、かつ780nm〜1000nmでの透過率変化ΔTが5%以下であった。また、フィルタの色度(x、y)の変化ΔxおよびΔyは、いずれも0.003以下であった。
【0210】
<実施例10>
実施例2の(4)近赤外線吸収層20の積層において、金属不活性化剤aに変えて金属不活性化剤eとして金属石鹸(化合物名;ステアリン酸カルシウム)を0.4重量部、紫外線吸収剤であるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバスペシャルティケミカルズ株式会社製、商品名;TINUVIN213)0.25重量部を各々添加し、充分分散させて近赤外線吸収性を有する粘着剤組成物を調製した(なお、金属不活性化剤の固形分配合割合は1.5重量%となった。)。そして、それ以外も実施例2と同じ条件で実験を行い、複合フィルタを得た(形態2)。
【0211】
作製した複合フィルタの初期状態、および当該複合フィルタの常環境(23℃、湿度10%以下)、耐熱環境(80℃、湿度10%以下)、耐湿熱環境(60℃、湿度95%)の3条件下にて1000時間経過後の分光特性(透過率T、色度(x、y))を、実施例1と同様にして測定した。
その結果、初期状態と前記3条件下で1000時間経過後との比較において、いずれも、380nm〜780nmでの透過率変化ΔTが8%以下であり、かつ780nm〜1000nmでの透過率変化ΔTが8%以下であった。また、フィルタの色度(x、y)の変化ΔxおよびΔyは、いずれも0.005以下であった。
【0212】
<比較例1>
実施例1の(3)近赤外線吸収層20の製造において、透過率上昇抑制剤を粘着剤組成物中に含有させない以外は実施例1と同様に、連続帯状の状態で複合フィルタを得た後に枚葉化した。
【0213】
作製した複合フィルタの初期状態、および当該複合フィルタの常環境(23℃、湿度10%以下)、耐熱環境(80℃、湿度10%以下)、耐湿熱環境(60℃、湿度95%)の3条件下にて1000時間経過後の分光特性(透過率T、色度(x、y))を、実施例1と同様にして測定した。
初期状態と耐湿熱環境(60℃、湿度95%)条件下で1000時間経過後との比較において、380nm〜780nmでの透過率変化ΔTは10%より大きく、かつ780nm〜1000nmでの透過率変化ΔTも10%よりも大きかった。また、フィルタの色度(x、y)の変化Δxは0.005よりも大きく、Δyも0.005より大きかった。
【0214】
<比較例2>
実施例2の(4)近赤外線吸収層20の積層において、透過率上昇抑制剤を粘着剤組成物中に含有させない以外は実施例2と同様に、連続帯状の状態で複合フィルタを得た後に枚葉化した。
【0215】
作製した複合フィルタの初期状態、および当該複合フィルタの常環境(23℃、湿度10%以下)、耐熱環境(80℃、湿度10%以下)、耐湿熱環境(60℃、湿度95%)の3条件下にて1000時間経過後の分光特性(透過率T、色度(x、y))を、実施例1と同様にして測定した。
初期状態と耐湿熱環境(60℃、湿度95%)条件下で1000時間経過後との比較において、380nm〜780nmでの透過率変化ΔTは10%より大きく、かつ780nm〜1000nmでの透過率変化ΔTも10%よりも大きかった。また、フィルタの色度(x、y)の変化Δxは0.005よりも大きく、Δyも0.005より大きかった。
【0216】
<比較例3>
実施例2(導電性メッシュ層が近赤外線吸収層側に配置した構成;形態2)の(4)近赤外線吸収層20の積層において、セシウム・タングステン複合酸化物微粒子(Cs0.33WO)含有量18.5重量%分散液(住友金属鉱山(株)製、YMF−02)1.32重量部を用いる代わりに、フタロシアニン系NIR吸収色素である商品名エクスカラーIR−12Aを0.298重量部、商品名エクスカラーIR−14を0.158重量部(以上、日本触媒株式会社製)、及びジイモニウム系色素商品名IRG−068(日本化薬株式会社製)0.534重量部を用いた以外は、実施例2と同様にして、連続帯状の状態で複合フィルタを得た後に枚葉化した。
【0217】
作製した複合フィルタの初期状態、および当該複合フィルタの常環境(23℃、湿度10%以下)、耐熱環境(80℃、湿度10%以下)、耐湿熱環境(60℃、湿度95%)の3条件下にて1000時間経過後の分光特性(透過率T、色度(x、y))を、実施例1と同様にして測定した。
初期状態と耐湿熱環境(60℃、湿度95%)条件下で1000時間経過後との比較において、380nm〜780nmでの透過率変化ΔTは10%より大きく、かつ780nm〜1000nmでの透過率変化ΔTも5%よりも大きかった。また、フィルタの色度(x、y)の変化Δxは0.010よりも大きく、Δyも0.020より大きかった。
【0218】
【表1】

【0219】
表1より本発明に係る複合フィルタは、優れた光学フィルタ機能の耐久性を有し、高温高湿下での長時間の使用によっても、当該近赤外線吸収層中の近赤外域での透過率の上昇を防止して、近赤外線の吸収能を長期間にわたり安定して維持できる。
【産業上の利用可能性】
【0220】
本発明に係る粘着剤組成物は、耐湿熱性に優れる粘着剤又は粘着剤層を形成するので、本願で詳細に説明したPDP用シート状複合フィルタの近赤外線吸収層のみならず、高温高湿下で近赤外線吸収機能と粘着性とが必要な箇所に好ましく用いることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0221】
【図1】本発明のプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタの第一の実施形態の一例の断面図である。
【図2】本発明のプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタの第二の実施形態の一例の断面図である。
【図3】本発明のプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタの第三の実施形態の一例の断面図である。
【図4】本発明のプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタの第四の実施形態の一例の断面図である。
【図5】本発明のプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタの第五の実施形態の一例の断面図である。
【図6】本発明のプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタの第六の実施形態の一例の断面図である。
【図7】本発明のプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタの第七の実施形態の一例の断面図である。
【図8】本発明のプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタの第八の実施形態の一例の断面図である。
【図9】本発明のプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタの第九の実施形態の一例の断面図である。
【図10】本発明に用いられる電磁波遮蔽シートの一例を示す平面図及び断面図である。
【図11】本発明に用いられる電磁波遮蔽シートのメッシュの一例の斜視図である。
【図12】本発明のプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタの第一の製造方法の一例を示す工程図である。
【図13】本発明のプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタの第二の製造方法の一例を示す工程図である。
【図14】本発明のプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタの製造方法のうち、電磁波遮蔽シートと光学フィルタの積層態様の一例を示す平面図である。
【図15】本発明の耐衝撃性試験をするのに用いられる衝撃試験装置を示す図である。
【符号の説明】
【0222】
1 プラズマディスプレイ用シート状複合フィルタ
10 光学フィルタ
11 第一の透明樹脂基材シート
13 機能層
20 近赤外線吸収層
30 電磁波遮蔽シート
31 第二の透明樹脂基材シート
33 黒化層
34 導電性メッシュ層
36 表面保護層
40 粘着剤層
50 プラズマディスプレイパネル
60 観察者
101 メッシュ状領域
102 非メッシュ状領域
103 開口部
104 ライン部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル酸アルキルエステルモノマーおよびメタクリル酸アルキルエステルモノマーよりなる群から選ばれるモノマーを含むモノマーを重合させて得られる重合体からなる(メタ)アクリル系樹脂粘着剤と、一般式CsxWyOz(Csはセシウム、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1.1、2.2≦z/y≦3.0)で表されるセシウム・タングステン複合酸化物微粒子と、有機系紫外線吸収剤、無機系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、リン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、ヒドロペルオキシド分解剤、金属不活性化剤から選ばれた少なくとも一種の透過率上昇抑制剤と、を含有することを特徴とする、粘着剤組成物。
【請求項2】
前記金属不活性化剤が、サリチル酸誘導体、ヒドラジド誘導体、シュウ酸アミド誘導体、イオウ含有ホスファイトから選ばれた少なくとも一種の化合物を含むことを特徴とする、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル系樹脂粘着剤のガラス転移温度(Tg)が−50〜20℃であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル系樹脂粘着剤の引張弾性率が10〜10Paであることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
前記(メタ)アクリル系樹脂粘着剤の数平均分子量が30,000〜1,000,000であることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
前記セシウム・タングステン複合酸化物微粒子の平均分散粒径が800nm以下であることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項7】
前記セシウム・タングステン複合酸化物微粒子が、六方晶、正方晶、立方晶のいずれか1種類以上の結晶構造を含むことを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項8】
前記セシウム・タングステン複合酸化物微粒子の表面が、Si、Ti、Zr、Alから選択される1種類以上の元素を含有する酸化物で被覆されていることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項9】
エポキシ系架橋剤及び/又はイソシアネート系架橋剤を含むことを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項10】
金属石けん及び/又はハイドロタルサイトを含むことを特徴とする、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項11】
プラズマディスプレイパネルの前面に配置されたガラス板に直接貼付されるためのプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタであって、
(A)第一の透明樹脂基材シートの一方の面に耐擦傷機能、反射防止機能、及び防眩機能より成る群から選択される1種以上の機能を有する1層以上の機能層を有する光学フィルタ、
(B)請求項1乃至10のいずれか一項に記載の粘着剤組成物からなる近赤外線吸収層、
(C)第二の透明樹脂基材シートの一方の面に透視性導電層を備えた電磁波遮蔽シート、
及び、
(D)粘着剤層、をこの順に有することを特徴とする、プラズマディスプレイ用シート状複合フィルタ。
【請求項12】
前記透視性導電層は、周縁部の一部が露出していることを特徴とする、請求項11に記載のプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタ。
【請求項13】
前記透視性導電層が、導電性メッシュ層であることを特徴とする、請求項11又は12に記載のプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタ。
【請求項14】
前記電磁波遮蔽シート(C)における導電性メッシュ層は、前記第二の透明樹脂基材シート側の面が黒化処理されており、前記粘着剤層(D)側に配置され、前記粘着剤層(D)が、前記導電性メッシュ層の凹凸を平坦化し、且つ該導電性メッシュ層の周縁部の一部を露出させており、且つ、前記光学フィルタ(A)の第一の透明樹脂基材シートの機能層を有しない面と、前記電磁波遮蔽シート(C)の第二の透明樹脂基材シートの導電性メッシュ層を有しない面とが、前記近赤外線吸収層(B)を介して積層されていることを特徴とする、請求項13に記載のプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタ。
【請求項15】
前記電磁波遮蔽シート(C)における導電性メッシュ層は、前記第二の透明樹脂基材シートと反対側の面が黒化処理されており、前記近赤外線吸収層(B)側に配置され、前記粘着剤層(D)が、前記第二の透明樹脂基材シートの導電性メッシュ層を有しない面に配置され、前記光学フィルタ(A)の第一の透明樹脂基材シートの機能層を有しない面と、前記電磁波遮蔽シート(C)の導電性メッシュ層側の面とが、前記近赤外線吸収層(B)を介して積層され、該近赤外線吸収層(B)は前記導電性メッシュ層の凹凸を平坦化し、且つ該導電性メッシュ層の周縁部の一部を露出させていることを特徴とする、請求項13に記載のプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタ。
【請求項16】
前記粘着剤層(D)及び/又は前記近赤外線吸収層(B)に、ネオン光吸収剤及び/又は色補正色素が含まれることを特徴とする、請求項11乃至15のいずれか一項に記載のプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタ。
【請求項17】
前記光学フィルタ(A)中に紫外線吸収剤を含有することを特徴とする、請求項11乃至16のいずれか一項に記載のプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタ。
【請求項18】
透明樹脂基材シートの一方の面に透視性導電層を備えた電磁波遮蔽シートの一方の面に、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の粘着剤組成物からなる近赤外線吸収層を備え、他方の面に耐擦傷機能、反射防止機能、及び防眩機能よりなる群から選択される1種以上の機能を有する表面保護層を備えることを特徴とする、プラズマディスプレイ用シート状複合フィルタ。
【請求項19】
前記近赤外線吸収層は、さらにネオン光吸収剤及び/又は色補正色素を含有することを特徴とする、請求項18に記載のプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタ。
【請求項20】
前記透明樹脂基材シート及び/又は前記表面保護層に紫外線吸収剤を含有することを特徴とする、請求項18又は19に記載のプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタ。
【請求項21】
前記透視性導電層は、周縁部の一部が露出していることを特徴とする、請求項18乃至20のいずれか一項に記載のプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタ。
【請求項22】
前記透視性導電層が、導電性メッシュ層であることを特徴とする、請求項18乃至21のいずれか一項に記載のプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタ。
【請求項23】
前記電磁波遮蔽シートの前記導電性メッシュ層側の面に前記近赤外線吸収層を有し、前記電磁波遮蔽シートの前記透明樹脂基材シートの導電性メッシュ層を有しない面に前記表面保護層を有し、且つ、前記電磁波遮蔽シートにおける導電性メッシュ層は、前記透明樹脂基材シート側の面が黒化処理されていることを特徴とする、請求項22に記載のプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタ。
【請求項24】
前記電磁波遮蔽シートの前記導電性メッシュ層側の面に前記表面保護層を有し、前記電磁波遮蔽シートの前記透明樹脂基材シートの導電性メッシュ層を有しない面に前記近赤外線吸収層を有し、且つ、前記電磁波遮蔽シートにおける導電性メッシュ層は、前記透明樹脂基材シート側と反対側の面が黒化処理されていることを特徴とする、請求項22に記載のプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタ。
【請求項25】
プラズマディスプレイの前面に、請求項11乃至24のいずれか一項に記載のプラズマディスプレイ用シート状複合フィルタが直接貼り付けられていることを特徴とする、プラズマディスプレイ表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−35615(P2009−35615A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−200200(P2007−200200)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】