説明

粘着剤組成物およびこれを用いた光学部材

【課題】良好な帯電防止性能を有する粘着層を形成することができる粘着剤組成物を提供する。
【解決手段】(メタ)アクリル酸エステルを含む単量体成分を重合してなる重合体(A)100質量部に対し、イオン性化合物および/またはリチウム塩を含む帯電防止剤(B)0.01〜3質量部、シランカップリング剤(C)0〜1質量部、ベンゾトリアゾール基を有する化合物(D)5〜20質量部、ならびに架橋剤(E)0.05〜5質量部、または多官能(メタ)アクリレート系モノマー(F)3〜30質量部および活性エネルギー線開始剤(G)0〜5質量部、を含む、粘着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物およびこれを用いた光学部材に関する。さらに詳細には、本発明は、光学シートとしての光学特性を阻害することがなく、良好な帯電防止性能を有する粘着層を形成することができる粘着剤組成物およびこれを用いた光学部材に関する。さらにより詳細には、本発明は、光学シートとしての光学特性を阻害することがなく、良好な帯電防止性能及び金属腐食性を有する粘着層を形成することができる粘着剤組成物およびこれを用いた光学部材に関する。
【背景技術】
【0002】
静電気は至る所で発生するが、このような静電気の蓄積は、工業製品および工業材料の加工および使用において様々な問題の原因となる。例えば、静電気の蓄積は、物体が塵や埃を引きつける原因となり、そのために工業製品の製造過程において汚染の問題を引き起こしたり、製品の性能を損なったりする可能性がある。表示装置としてのディスプレイは、工業製品として、特に近年、IT技術の進展、情報化社会への移行とともに、幅広く用いられ、その役割は益々重要になってきている。また、軽量薄型化の要求にあって、従来のブラウン管に代わって、フラットパネルディスプレイが急速に普及しつつある。フラットパネルディスプレイとしては、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスなどがあるが、携帯電話やパソコンのディスプレイ、テレビなどに最も普及しているのは液晶ディスプレイである。
【0003】
静電気は、このような液晶ディスプレイをはじめとするフラットパネルディスプレイの表面に発生する。これらの静電気は空気中の埃を引きつけ、回復が困難あるいは不可能な損傷を引き起こす可能性があり、また、安全性の面からも危険でありうる。さらに液晶ディスプレイ製造過程において、表面保護フィルムおよび離形フィルムを除去する際に、フィルム表面に静電気が発生する。これらの静電気が近接する電子部品に不良を引き起こし、その結果、不良品ができてしまう可能性がある。
【0004】
静電気の蓄積を調整する最も有効な方法は帯電防止剤を使用することである。光学的に透明な帯電防止性粘着剤を光学フィルムに適用することで、静電気を逃がすようにすることができる。帯電防止剤は静電気の蓄積を除去するように働くので、その効果の目安として表面抵抗値が有効に使用される。
【0005】
例えば、光学部材に帯電防止剤を使用した例としては、金属酸化物粒子を配合した紫外線硬化型アクリル樹脂からなる帯電防止層を偏光板に形成する方法が開示されている(特許文献1)。また、プラスチックフィルム基材に第4級アンモニウム塩を含む帯電防止層を形成し、その上に粘着剤層を形成した帯電防止性粘着シートが開示されている(特許文献2)。
【0006】
一方、アクリル系共重合体に活性エネルギー線硬化型化合物を含む粘着性材料に活性エネルギー線を照射してなる偏光板用粘着剤が開示されている(特許文献3)。
【特許文献1】特開2001−318230号公報
【特許文献2】特開2000−273417号公報
【特許文献3】特開2006−235568号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1や2に記載の手法では帯電防止層形成の工程が必要になり、生産性を低下させ、コストが上がってしまうという問題がある。また、特許文献3では、帯電防止性についての言及がなされておらず、そのような問題について何ら言及がなされていない。
【0008】
帯電防止剤を粘着剤層に含有させた粘着シートも報告されている。このような粘着シート類には、粘着剤表面に帯電防止剤がブリードするのを抑制するために、ポリエーテルポリオール化合物とアルカリ金属塩からなる帯電防止剤をアクリル系粘着剤に添加している。しかしながら、帯電防止剤の一例であるLiClOは腐食性が高く、粘着面が金属に直接触れた場合には金属を腐食する恐れがある。特に光学部材用途として、光学部材の外周部を「ベゼル」と呼ばれるステンレス、アルミなどの金属製の固定枠で固定された液晶モジュールに適用する例も数多く見受けられる。このため、これらの用途では上記粘着剤成分による腐食により「ベゼル」が変質する可能性があり、適用の制約があった。
【0009】
したがって、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、光学シートの光学特性を阻害することがなく、良好な帯電防止性能を有する粘着層を形成することができる粘着剤組成物およびこれを備えた光学部材を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明の他の目的は、良好な帯電防止性能(低い表面抵抗値)及び金属腐食抑制・防止性(防錆作用)双方を具備する粘着層を形成することができる粘着剤組成物およびこれを備えた光学部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく、鋭意研究を行った。その結果、帯電防止剤としてイオン化合物および/またはリチウム塩、ならびにベンゾトリアゾール基を有する化合物を、(メタ)アクリル酸エステル系の粘着剤組成物に添加することによって、優れた帯電防止能(低い表面抵抗値)を有しかつ優れた金属腐食抑制・防止性(防錆作用)を発揮する粘着剤層を形成することができることを知得した。上記知見に基づいて、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、(メタ)アクリル酸エステルを含む単量体成分を重合してなる重合体(A)100質量部に対し、イオン性化合物および/またはリチウム塩を含む帯電防止剤(B)0.01〜3質量部、シランカップリング剤(C)0〜1質量部、ベンゾトリアゾール基を有する化合物(D)3〜20質量部、ならびに架橋剤(E)0.05〜5質量部、または多官能(メタ)アクリレート系モノマー(F)3〜30質量部および活性エネルギー線開始剤(G)0〜5質量部、を含む、粘着剤組成物である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の粘着剤組成物は、帯電防止性能(低い表面抵抗値)及び金属腐食抑制・防止性(防錆作用)に優れる。したがって、本発明の粘着剤組成物を用いることにより、光学シートの光学特性を阻害することがなく、良好な帯電防止性能及び金属腐食抑制・防止能を有する粘着層を形成することができる。このため、本発明の粘着剤組成物は、各種プラスチックフィルムなどの被着体の接着に有効であり、特に偏光板に用いた場合、優れた耐光漏れ性、帯電防止性および防錆性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、(メタ)アクリル酸エステルを含む単量体成分を重合してなる重合体(A)100質量部に対し、イオン性化合物および/またはリチウム塩を含む帯電防止剤(B)0.01〜3質量部、シランカップリング剤(C)0〜1質量部、ベンゾトリアゾール基を有する化合物(D)3〜20質量部、ならびに架橋剤(E)0.05〜5質量部、または多官能(メタ)アクリレート系モノマー(F)3〜30質量部および活性エネルギー線開始剤(G)0〜5質量部、を含む、粘着剤組成物である。
【0015】
本発明の粘着剤組成物は、帯電防止剤としてイオン化合物またはリチウム塩、およびベンゾトリアゾール基を有する化合物を、(メタ)アクリル酸エステル系の粘着剤組成物、特に活性エネルギー硬化型アクリル系粘着剤組成物に添加することを特徴とする。上述したように、従来では、偏光板等の光学部材では、表面保護フィルムを剥離する際や取扱時の摩擦等で静電気が発生して帯電しやすく、液晶ディスプレイ等に適用した場合に静電気障害を生じやすかった。また、電子・電気機器、OA機器などでは、静電気による誤作動やメモリー破壊などの様々な静電気障害を引き起こしたりした。このため、帯電を防止してゴミやホコリ等の付着、その他静電気による様々なトラブルの発生を抑制するために、従来では、帯電防止を目的として帯電防止層を粘着剤層とは別に設けていた。しかし、このような方法では、厚みを薄くすることが困難であったり、製造工程が複雑で手間のかかるという、問題があった。
【0016】
これに対して、本発明によるように、イオン化合物またはリチウム塩およびベンゾトリアゾール基を有する化合物を粘着剤組成物に添加することにより、粘着剤層に帯電性能を付与することができ、1×1010オーム/□未満という低い表面抵抗値を達成できる。また、特に粘着剤組成物にリチウム塩あるいは(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸エステル系の重合体を使用する場合には、近くに金属が存在する場合には、特に湿度の高い雰囲気中では、粘着剤成分により金属の腐食が誘発され、耐久性などの点で問題があった。しかし、本発明では、ベンゾトリアゾール基を有する化合物を粘着剤組成物に添加することにより、湿度の高い雰囲気下であっても金属腐食を抑制・防止できる。このため、本発明の粘着剤組成物を用いて形成される粘着剤層は耐久性に優れる。加えて、このような粘着剤組成物を用いて形成した塗膜は、透明性が良好で、剥離後の被着体への汚染性が少ない。したがって、本発明の粘着剤組成物は、光学部材の粘着剤層に特に好適に適用できる。また、本発明の粘着剤組成物を用いて形成される粘着剤層は、良好なネットワーク(架橋)構造を有する。
【0017】
以下、本発明の粘着剤組成物の各成分について詳細に説明する。なお、本明細書において「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよびメタアクリレートの総称である。(メタ)アクリル酸等の(メタ)を含む化合物等も同様に、名称中に「メタ」を有する化合物と「メタ」を有さない化合物の総称である。同様にして、「(メタ)アクリル酸エステル」とは、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルの総称である。
【0018】
[重合体(A)]
重合体(A)は、(メタ)アクリル酸エステルを含む単量体成分を重合されてなる。ここで、(メタ)アクリル酸エステルの具体的な例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、tert−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−n−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルジグリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシメチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、4−ブチルフェニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2,4,5−テトラメチルフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタデカフルオロオキシエチル(メタ)アクリレート、2−クロロエチル(メタ)アクリレート、2,3−ジブロモプロピル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これら(メタ)アクリル酸エステルは、単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0019】
上記(メタ)アクリル酸エステルのうち、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましく、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートがより好ましく、メチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートが特に好ましい。
【0020】
本発明では、重合体(A)を製造するのに使用される単量体成分は、上記(メタ)アクリル酸エステルに加えて、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル系モノマーを含んでもよい。ここで、「ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル系モノマー」とは、分子中にヒドロキシ基を有するアクリル系モノマーである。このようなモノマーの具体的な例としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド、シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート等が挙げられ、さらに、アルキルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有化合物と、(メタ)アクリル酸との付加反応により得られる化合物等が挙げられる。これらヒドロキシ基含有(メタ)アクリル系モノマーは、単独で使用してもよいし2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0021】
上記ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル系モノマーのうち、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド、シクロヘキサンジメタノールモノアクリレートが好ましく、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリルアミドがより好ましく、2−ヒドロキシエチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートが特に好ましい。
【0022】
本発明では、重合体(A)を製造するのに使用される単量体成分は、上記(メタ)アクリル酸エステルに加えて、(メタ)アクリル酸エステルおよび存在する場合にはヒドロキシ基含有(メタ)アクリル系モノマーと共重合可能な単量体(以下、単に「他のモノマー」とも称する)を含んでもよい。この際、他のモノマーは特に制限されないが、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を有するアクリル系モノマー;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−tert−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、メタクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド(メタ)アクリレート等のアミノ基を有するアクリル系モノマー;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−メチレンビス(メタ)アクリルアミド等のアミド基を有するアクリル系モノマー;(メタ)アクリル酸、2−メタクリロイルオキシコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等のカルボキシル基を有するアクリル系モノマー;2−メタクリロイルオキシエチルジフェニルホスフェート(メタ)アクリレート、トリメタクリロイルオキシエチルホスフェート(メタ)アクリレート、トリアクリロイルオキシエチルホスフェート(メタ)アクリレート等のリン酸基を有するアクリル系モノマー;スルホプロピル(メタ)アクリレートナトリウム、2−スルホエチル(メタ)アクリレートナトリウム、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸基を有するアクリル系モノマー;ウレタン(メタ)アクリレート等のウレタン基を有するアクリル系モノマー;p−tert−ブチルフェニル(メタ)アクリレート、o−ビフェニル(メタ)アクリレート等のフェニル基を有するアクリル系ビニルモノマー;、2−アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエチル)シラン、ビニルトリアセチルシラン、メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等のシラン基を有するビニルモニマー;スチレン、クロロスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリロニトリル、ビニルピリジン等が挙げられる。これら他のモノマーは、単独で使用してもよいし2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0023】
上記他のモノマーのうち、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレートが好ましく、(メタ)アクリル酸、アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレートがより好ましく、アクリル酸が特に好ましい。
【0024】
重合体(A)は、上記したように、(メタ)アクリル酸エステル、ならびに必要であればヒドロキシ基含有(メタ)アクリル系モノマーおよび/または他のモノマーを含む単量体成分を重合することによって、製造される。なお、単量体成分が、2種以上の異なる単量体からなる場合には、単量体成分を共重合することによって、重合体(A)が共重合体の形態で製造される。重合体(A)の組成(単量体成分の各単量体の使用量)は、特に制限されない。
【0025】
例えば、重合体(A)を、(メタ)アクリル酸エステルおよびヒドロキシ基含有(メタ)アクリル系モノマーから構成される単量体成分を共重合することによって製造する場合の、(メタ)アクリル酸エステルおよびヒドロキシ基含有(メタ)アクリル系モノマーの組成は、特に制限されない。(メタ)アクリル酸エステルの組成は、(メタ)アクリル酸エステルおよびヒドロキシ基含有(メタ)アクリル系モノマーの合計量を100質量部とした場合に、好ましくは95〜99.9質量部、より好ましくは97〜99.9質量部である。ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル系モノマーの組成は、(メタ)アクリル酸エステルおよびヒドロキシ基含有(メタ)アクリル系モノマーの合計量を100質量部とした場合に、好ましくは0.1〜5質量部、より好ましくは0.1〜3質量部である。
【0026】
また、重合体(A)を、(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル系モノマー及び他のモノマーから構成される単量体成分を共重合することによって製造する場合の、各単量体の組成は、特に制限されない。(メタ)アクリル酸エステルの組成は、(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル系モノマー及び他のモノマーの合計量を100質量部とした場合に、好ましくは80〜99.5質量部、より好ましくは88〜99.2質量部、特に好ましくは93〜99質量部である。ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル系モノマーの組成は、(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル系モノマー及び他のモノマーの合計量を100質量部とした場合に、好ましくは0.5〜10質量部、より好ましくは0.6〜7質量部、特に好ましくは0.7〜5質量部である。上記の範囲にあれば、下記架橋剤(E)などにより、重合体(A)内に適度な架橋構造を達成できる。特に、架橋剤(E)としてイソシアネート系架橋剤を使用する場合には、重合体(A)中のヒドロキシ基含有(メタ)アクリル系モノマー由来のヒドロキシ基と架橋剤(C)とが反応してできる架橋点が過度にならないため、耐熱性および柔軟性に優れた粘着剤組成物が得られる。他のモノマーの組成は、(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル系モノマー及び他のモノマーの合計量を100質量部とした場合に、好ましくは0〜10質量部、より好ましくは0.2〜5質量部、特に好ましくは0.3〜2質量部である。
【0027】
重合体(A)の製造方法は、特に制限されず、重合開始剤を使用する溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法、逆相懸濁重合法、薄膜重合法、噴霧重合法など従来公知の方法を用いることができる。重合制御の方法としては、断熱重合法、温度制御重合法、等温重合法などが挙げられる。また、重合開始剤により重合を開始させる方法の他に、放射線、電子線、紫外線等を照射して重合を開始させる方法を採用することもできる。中でも重合開始剤を使用する溶液重合法が、分子量の調節が容易であり、また不純物も少なくできるために好ましい。例えば、溶剤として酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン等を用い、上記単量体成分の合計量100質量部に対して、重合開始剤を好ましくは0.01〜0.50質量部を添加し、窒素雰囲気下で、例えば反応温度60〜90℃で、3〜10時間反応させることで得られる。前記重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、アゾビスシアノ吉草酸等のアゾ化合物;tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−tert−ブチルパーオキサイド 、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の無機過酸化物が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし2種以上併用してもよい。
【0028】
上記単量体成分を(共)重合することによって得られる重合体(A)は、重量平均分子量(Mw)が70万〜200万であることが好ましく、90万〜170万であることがより好ましい。重量平均分子量が70万未満であると、耐熱性が不足する場合がある。一方、重量平均分子量が200万を超えると、タックが低く、貼合性が低下する場合がある。なお、本発明において、重量平均分子量は、実施例に記載の方法により測定したポリスチレン換算の値を採用するものとする。
【0029】
なお、重合体(A)は、単独で使用してもよいし2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0030】
[帯電防止剤(B)]
上記重合体(A)に加えて、本発明の粘着剤組成物は、帯電防止剤(B)を含む。帯電防止剤(B)を添加することによって、光学部材などに適用された場合に、空気中の埃が静電気により光学部材に付着することを防止する。このため、本発明の粘着剤組成物を使用して形成される粘着剤層を備えた光学部材は、被着体への汚染性が少ない。
【0031】
本発明に係る帯電防止剤(B)は、イオン性化合物及びリチウム塩の少なくとも一方を含む。
【0032】
イオン性化合物としては、特に制限されない。イオン性化合物は、重合体(A)に対する相溶性を有するとともに、粘着剤組成物の調製時に使用する有機溶媒に対する相溶性を有し、かつ、ベースポリマーに添加された場合に粘着剤組成物の透明性を維持できるものことが好ましい。また、光学シート等の基材に粘着剤組成物を塗布して粘着層とした場合の粘着層の表面抵抗値を、1×1012(Ω/□)以下にできることが好ましい。
【0033】
このようなイオン性化合物は、特に制限されないが、イミダゾリウム塩、ピリジニウム塩、アルキルアンモニウム塩、アルキルピロリジウム塩、アルキルホスホニウム塩、ピペリジニウム塩が好ましく挙げられる。この際、イオン性化合物は、単独で使用されてあるいは2種以上併用してもよい。
【0034】
これらのうち、イミダゾリウム塩としては、例えば、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロホスフェート、1,3−ジメチルイミダゾリウムクロライド、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムクロライド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムブロマイド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムメタンスルホネート、1−ブチル−1−(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)−イミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムブロマイド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヨージド、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムクロライド、1−メチルイミダゾリウムクロライド、1,2,3−トリメチルイミダゾリウムメチルサルフェート、1−メチル−3−(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)−イミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−アリール−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−ベンジル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−ベンジル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−ベンジル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレートなどが挙げられる。
【0035】
また、ピリジニウム塩としては、1−ブチル−3−メチルピリジニウムブロマイド、1−ブチル−4−メチルピリジニウムブロマイド、1−ブチル−4−メチルピリジニウムクロライド、1−ブチルピリジニウムブロマイド、1−ブチルピリジニウムクロライド、1−ブチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1−エチルピリジニウムブロマイド、1−エチルピリジニウムクロライドなどが挙げられる。
【0036】
アルキルアンモニウム塩としては、シクロヘキシルトリメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、トリブチルメチルアンモニウムメチルサルフェート、テトラブチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、テトラエチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、テトラブチルアンモニウムベンゾエート、テトラブチルアンモニウムメタンスルフェート、テトラブチルアンモニウムノナフルオロブタンスルホネート、テトラ−n−ブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート、テトラブチルアンモニウムトリフルオロアセテート、テトラヘキシルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラヘキシルアンモニウムブロマイド、テトラヘキシルアンモニウムヨージド、テトラオクチルアンモニウムクロライド、テトラオクチルアンモニウムブロマイド、テトラヘプチルアンモニウムブロマイド、テトラペンチルアンモニウムブロマイド、n−ヘキサデシルトリメチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェートなどが挙げられる。
【0037】
アルキルピロリジウム塩としては、1−ブチル−1−メチルピロリジウムブロマイド、1−ブチル−1−メチルピロリジウムクロライド、1−ブチル−1−メチルピロリジウムテトラフルオロボレートなどが挙げられる。
【0038】
アルキルホスホニウム塩としては、テトラブチルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムテトラフルオロボレート、テトラブチルホスホニウムメタンスルホネート、テトラブチルホスホニウムp−トルエンスルホネート、トリブチルヘキサデシルホスホニウムブロマイドなどが挙げられる。
【0039】
ピペリジニウム塩としては、N−メチル−N−プロピルピペリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−メチル−N−プロピルピペリジニウムブロマイド、N−メチル−N−プロピルピペリジニウムヘキサフルオロホスフェートなどが挙げられる。
【0040】
また、イオン性化合物としては、含窒素オニウム塩、含硫黄オニウム塩、または含リンオニウム塩を好ましく用いることができる。具体例としては、1−ブチルピリジニウムテトラフルオロボレート、1−ブチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1−ブチル−3−メチルピリジニウムテトラフルオロボレート、1−ブチル−3−メチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ブチル−3−メチルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ブチル−3−メチルピリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1−へキシルピリジニウムテトラフルオロボレート、2−メチル−1−ピロリンテトラフルオロボレート、1−エチル−2−フェニルインドールテトラフルオロボレート、1,2−ジメチルインドールテトラフルオロボレート、1−エチルカルバゾールテトラフルオロボレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロアセテート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヘプタフルオロブチレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムペルフルオロブタンスルホネート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジシアナミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロアセテート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘプタフルオロブチレート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムペルフルオロブタンスルホネート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムブロミド、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−へキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−メチルピラゾリウムテトラフルオロボレート、3−メチルピラゾリウムテトラフルオロボレート、テトラヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ジアリルジメチルアンモニウムテトラフルオロボレート、ジアリルジメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジアリルジメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ジアリルジメチルアンモニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムテトラフルオロボレート、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、グリシジルトリメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、グリシジルトリメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、グリシジルトリメチルアンモニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1−ブチルピリジニウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、1−ブチル−3−メチルピリジニウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、ジアリルジメチルアンモニウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、グリシジルトリメチルアンモニウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ブチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−へキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ノニルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N,N−ジプロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ブチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−ブチル−N−ヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−ブチル−N−ヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−ペンチル−N−ヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N,N−ジヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリメチルヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−ヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジエチル−N−プロピル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリエチルプロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリエチルペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリエチルヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジプロピル−N−メチル−N−エチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジプロピル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジプロピル−N−ブチル−N−へキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジプロピル−N,N−ジヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジブチル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジブチル−N−メチル−N−ヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリオクチルメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−メチル−N−エチル−N−プロピル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドなどが挙げられる。
【0041】
リチウム塩としては、特に制限されず、公知のものが使用される。例えば、式:Li(CFSONで表されるビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム、式:Li(CFSOCで表されるトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタンリチウム、式:LiCFSOで表されるトリフルオロメタンスルホン酸リチウム、および過塩素酸リチウムなどが挙げられる。
【0042】
また、上記帯電防止剤(B)は、合成によって製造してもあるいは市販品を使用してもよい。市販品としては、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロホスフェート(東京化成工業(株)製)、N−メチル−N−プロピルピペリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(関東化学(株)製)、1−エチルピリジニウム ブロマイド(東京化成工業(株)製)、1−ブチル−3−メチルピリジニウム トリフルオロメタンスルホネート(東京化成工業(株)製)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(和光純薬工業(株)製)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(和光純薬工業(株)製)、過塩素酸リチウム(和光純薬工業(株)製)、六フッ化リン酸リチウム(森田化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0043】
本発明において、帯電防止剤(B)の配合量は、重合体(A)100質量部に対して、0.01〜3.0質量部である。この範囲であれば、本発明の粘着剤組成物が優れた帯電防止性を発揮しうる。該配合量は、重合体(A)100質量部に対して、好ましくは0.1〜2質量部、より好ましくは0.5〜1.8質量部である。ここで、帯電防止剤(B)の配合量が0.01質量部未満であると、十分な帯電防止特性が得られない場合がある。また、3.0質量部を超えると、耐久性試験時に剥れや発泡が増加する場合がある。
【0044】
[シランカップリング剤(C)]
上記重合体(A)及び帯電防止剤(B)に加えて、本発明の粘着剤組成物は、シランカップリング剤(C)を含んでもよい。シランカップリング剤(C)を使用することで、反応性が向上し、硬化物の機械強度や接着強度を向上させることができる。
【0045】
このようなシランカップリング剤は、特に限定されない。具体的には、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス−(3−[トリエトキシシリル]プロピル)テトラスルフィド、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。さらには、エポキシ基(グリシドキシ基)、アミノ基、メルカプト基、(メタ)アクリロイル基等の官能基を有するシランカップリング剤と、これらの官能基と反応性を有する官能基を含有するシランカップリング剤、他のカップリング剤、ポリイソシアネートなどを、各官能基について任意の割合で反応させて得られる加水分解性シリル基を有する化合物も使用できる。
【0046】
上記シランカップリング剤(C)は、合成してもよいし市販品を使用してもよい。シランカップリング剤の市販品としては、例えば、KBM−303、KBM−403、KBE−402、KBM−403、KBE−502、KBE−503、KBM−5103、KBM−573、KBM−802、KBM−803、KBE−846、KBE−9007(以上、信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0047】
これらシランカップリング剤(C)の中でも、KBM−303、KBM−403、KBE−402、KBM−403、KBM−5103、KBM−573、KBM−802、KBM−803、KBE−846、KBE−9007が好ましく、KBM−403がより好ましい。なお、上記シランカップリング剤(C)は、単独で使用されてもよいし2種以上組み合わせて使用されてもよい。
【0048】
本発明において、シランカップリング剤(C)の配合量は、重合体(A)100質量部に対して、0〜1質量部である。この範囲であれば、本発明の粘着剤組成物が優れた帯電防止性を発揮しうる。該配合量は、重合体(A)100質量部に対して、好ましくは0〜0.5質量部、より好ましくは0〜0.1質量部である。この範囲にあれば、優れた耐熱性および接着性を発揮しうる。上記シランカップリング剤(C)の配合量が1質量部を超えると、耐熱性が低下する場合がある。
【0049】
[ベンゾトリアゾール基を有する化合物(D)]
本発明の粘着剤組成物は、ベンゾトリアゾール基を有する化合物(D)を含む。ベンゾトリアゾール基を有する化合物(D)を使用することで、金属腐食を抑制・防止でき、また、表面抵抗値を低下して帯電防止能を付与することができる。
【0050】
帯電防止剤(B)としてのイオン性化合物は、金属腐食性をある程度有するものの、一般的に高価であり、また、配合量が多くなりすぎると、粘着性が低下することがある。このため、帯電防止剤としてイオン性化合物を使用する場合には、イオン性化合物の配合量は可能な限り少ないことが好ましい。本発明では、表面抵抗値を低下して帯電防止能を付与することができるベンゾトリアゾール基を有する化合物(D)を配合しているため、イオン性化合物の配合量を低減することができ、このような場合であっても、粘着剤組成物の表面抵抗値を所望の程度にまで低下して、所望の帯電防止性能を達成することができる。また、ベンゾトリアゾール基を有する化合物(D)を配合することにより高価なイオン性化合物の配合量を減らすことができるため、粘着性の低下を抑えることができ、優れた粘着性を達成できる上、コスト面でも好ましい。したがって、ベンゾトリアゾール基を有する化合物(D)を添加することによって、少量のイオン性化合物であっても、優れた帯電防止性、金属腐食抑制・防止性、粘着性を発揮でき、また、粘着剤組成物のコストをも抑えられる。
【0051】
また、帯電防止剤(B)としてのリチウム塩は、コスト面ではイオン性化合物に比して好ましいものの、金属腐食性にやや難点があり、また、配合量が多くなりすぎると、粘着性が低下することがある。このため、帯電防止剤としてリチウム塩を使用する場合にも、リチウム塩の配合量は可能な限り少ないことが好ましい。本発明では、金属腐食を抑制・防止することができるベンゾトリアゾール基を有する化合物(D)を配合しているため、リチウム塩の配合量を低減することができ、このような場合であっても、粘着剤組成物の金属腐食を有意に抑制・防止することができる。このため、本発明の粘着剤組成物を用いる場合には、たとえ金属と接触する部位に使用されても粘着剤成分による金属腐食が起こりにくい。また、ベンゾトリアゾール基を有する化合物(D)を配合することにより高価なリチウム塩の配合量を減らすことができるため、粘着性の低下を抑えることができる。したがって、ベンゾトリアゾール基を有する化合物(D)を添加することによって、少量のリチウム塩であっても、優れた帯電防止性、金属腐食抑制・防止性、粘着性を発揮でき、また、粘着組成物のコストをも抑えられる。
【0052】
ベンゾトリアゾール基を有する化合物(D)は、特に限定されない。具体的には、下記式(I)〜(V):
【0053】
【化1】

【0054】
【化2】

【0055】
【化3】

【0056】
【化4】

【0057】
【化5】

【0058】
で示される化合物などが挙げられる。なお、上記式(II)の化合物は、異性体が存在するが、本発明は、すべての異性体ともを包含する。なお、「異性体」とは、如何なる構造異性体及び位置異性体、互変異性形態、シス−トランス異性体及び立体異性体、例えば、鏡像異性形態及びラセミ混合物も含む。
【0059】
上記式(I)〜(V)において、Rは、炭素原子数1〜4のアルキル基またはハロゲン原子を表わす。ここで、炭素原子数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基がある。また、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子がある。これらのうち、Rは、メチル基、エチル基、フッ素原子、塩素原子が好ましく、メチル基、塩素原子がより好ましい。また、Rが複数個存在する(pが2〜4である)場合には、これらのRは、それぞれ同一であってもあるいは異なるものであってもよい。また、pは、0〜4であり、好ましくは0〜1であり、より好ましくは0である。なお、上記式(I)〜(V)において、「pが0である」とは、置換基Rが存在しない、即ち、置換基Rがすべて水素原子であることを意味する。
【0060】
は、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数5〜7のシクロアルキル基、1〜3個の炭素原子数1〜4のアルキルで置換された炭素原子数5〜7のシクロアルキル基及び炭素原子数5〜7のシクロアルキル−炭素原子数1〜4のアルキル基からなる群より選択される置換基を表わす。ここで、炭素原子数1〜12のアルキル基としては、特に制限されないが、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基及び2−エチルヘキシル基等の、直鎖あるいは分岐鎖のアルキル基が挙げられる。また、炭素原子数5〜7のシクロアルキル基としては、特に制限されないが、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基があり、好ましくはシクロペンチル基、シクロヘキシル基がある。1〜3個の炭素原子数1〜4のアルキルで置換された炭素原子数5〜7のシクロアルキル基としては、特に制限されないが、好ましくは、炭素原子数1ないし4のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基で置換されたシクロペンチル基及びシクロヘキシル基がある。炭素原子数5〜7のシクロアルキル−炭素原子数1〜4のアルキル基としては、特に制限されないが、例えば、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロペンチル−1,1−エチル基、シクロヘキシル−1,1−エチル基、シクロペンチル−1,2−エチル基又はシクロヘキシル−1,2−エチル基がある。これらのうち、Rは、メチル基、エチル基、プロピル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0061】
は、水素原子または炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数5〜7のシクロアルキル基、1〜3個の炭素原子数1〜4のアルキルで置換された炭素原子数5〜7のシクロアルキル基、炭素原子数5〜7のシクロアルキル−炭素原子数1〜4のアルキル基、フェニル基、フェニル−炭素原子数1〜4のアルキル基、1〜3個の炭素原子数1〜4のアルキルで置換されたフェニル基及び1〜3個の炭素原子数1〜4のアルキルで置換されたフェニル−炭素原子数1〜4のアルキル基からなる群より選択される置換基を表わす。ここで、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数5〜7のシクロアルキル基、1〜3個の炭素原子数1〜4のアルキルで置換された炭素原子数5〜7のシクロアルキル基、炭素原子数5〜7のシクロアルキル−炭素原子数1〜4のアルキル基は、上記置換基Rの定義と同様であるため、ここでは説明を省略する。また、フェニル基、フェニル−炭素原子数1〜4のアルキル基、1〜3個の炭素原子数1〜4のアルキルで置換されたフェニル基及び1〜3個の炭素原子数1〜4のアルキルで置換されたフェニル−炭素原子数1〜4のアルキル基としては、特に制限されないが、例えば、フェニル基、ベンジル基、1−若しくは2−フェニルエチル基、4−メチル若しくは4−エチルクミル基、4−メチルベンジル基がある。これらのうち、Rは、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0062】
また、qは、1〜3であり、好ましくは1〜2であり、1が特に好ましい。
【0063】
上記した式(I)〜(V)のベンゾトリアゾール基を有する化合物としては、1,2,3−ベンゾトリアゾール、1−(メトキシメチル)−1H−ベンゾトリアゾール、1−(ホルムアミドメチル)−1H−ベンゾトリアゾール、1−(イソシアノメチル)−1H−ベンゾトリアゾール、4−メチルベンゾトリアゾール、5−メチルベンゾトリアゾール、5−クロルベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、トリルトリアゾールのK塩、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。これらは、単独であるいは組み合わせて使用することができるが、これらのうちでは、取り扱いの容易さや金属腐食防止効果の点から1,2,3−ベンゾトリアゾール、1−(メトキシメチル)−1H−ベンゾトリアゾール、1−(ホルムアミドメチル)−1H−ベンゾトリアゾール、1−(イソシアノメチル)−1H−ベンゾトリアゾールが好ましい。
【0064】
【化6】

【0065】
また、ベンゾトリアゾール基を有する化合物(D)は、合成によって製造してもあるいは市販品を使用してもよい。市販品としては、下記表に示されるような東京化成工業(株)製のものなどが使用されうる。
【0066】
【表1】

【0067】
本発明において、ベンゾトリアゾール基を有する化合物(D)の配合量は、重合体(A)100質量部に対して、3〜20質量部である。この範囲であれば、本発明の粘着剤組成物が優れた金属腐食の抑制・防止効果、および優れた帯電防止能(表面抵抗値低下能)を発揮しうる。該配合量は、重合体(A)100質量部に対して、好ましくは5〜18質量部、より好ましくは7〜15質量部である。この範囲にあれば、優れた金属腐食の抑制・防止効果、および帯電防止能(表面抵抗値低下能)がさらに達成しうる。上記ベンゾトリアゾール基を有する化合物(D)の配合量が3質量部未満であると、帯電防止性能や金属腐食の抑制・防止効果が十分得られない場合がある。一方、20質量部を超えると、基材に対する密着性が悪くなり、被着体の汚染性が増加したり、低温安定性が悪くなる場合がある。
【0068】
[架橋剤(E)]
本発明の粘着剤組成物は、架橋剤(E)を含んでもよい。架橋剤(E)は、重合体(A)中のヒドロキシ基等の官能基と、さらには存在する場合には下記の多官能(メタ)アクリレート系モノマー(F)中のヒドロキシ基等の官能基と、反応・結合し、架橋構造を形成する。このように架橋剤を用いて重合体(A)あるいは多官能(メタ)アクリレート系モノマー(F)を適宜架橋することで、耐熱性に優れた粘着層が得られる。架橋方法の具体的手段としては、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、金属キレートなどアクリル系ポリマーに適宜架橋化基点として含ませたカルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基などと反応しうる基を有する化合物を添加し反応させる、いわゆる架橋剤を用いる方法がある。
【0069】
本発明で用いられる架橋剤(E)は、特に制限されないが、上記したように、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、金属キレートが好ましく使用される。これらのうち、イソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネートなどの芳香族イソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族イソシアネートなどが挙げられる。中でも、適度な凝集力を得る観点から、イソシアネート化合物やエポキシ化合物が特に好ましく用いられる。これらの化合物は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0070】
より具体的には、イソシアネート化合物としては、たとえばブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級脂肪族ポリイソシアネート類、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族イソシアネート類、2,4−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート類、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加物、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体などのイソシアネート付加物などが挙げられる。
【0071】
また、例えば、トリアリルイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’−MDI)、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’−MDI)、1,4−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリデンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)などの芳香族ジイソシアネート類;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアナートメチル(NBDI)などの脂肪族ジイソシアネート類;トランスシクロヘキサンー1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、H6−XDI(水添XDI)、H12−MDI(水添MDI)などの脂環式ジイソシアネート類;上記ジイソシアネートのカルボジイミド変性ジイソシアネート類;またはこれらのイソシアヌレート変性ジイソシアネート類などを私用してもよい。また、上記イソシアネート化合物とトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、これらイソシアネート化合物のビウレット体やイソシアヌレート体も好適に使用することができる。
【0072】
上記イソシアネート系化合物は、合成してもよいし市販品を使用してもよい。イソシアネート系硬化剤の市販品としては、例えば、コロネートL(トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物)、コロネートHL(トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加物)、コロネートHX(ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体)、コロネート2030、コロネート2031(以上、日本ポリウレタン工業株式会社製)、タケネート(登録商標)D−102、タケネート(登録商標)D−110N、タケネート(登録商標)D−200、タケネート(登録商標)D−202(以上、三井化学ポリウレタン株式会社製)、デュラネート(商標)24A−100、デュラネート(商標)TPA−100、デュラネート(商標)TKA−100、デュラネート(商標)P301−75E、デュラネート(商標)E402−90T、デュラネート(商標)E405−80T、デュラネート(商標)TSE−100、デュラネート(商標)D−101、デュラネート(商標)D−201(以上、旭化成ケミカルズ株式会社製)等が挙げられる。
【0073】
これらイソシアネート系硬化剤の中でも、コロネートL、コロネートHL、タケネート(登録商標)D110N、デュラネート(商標)24A−100が好ましく、コロネートL、タケネート(登録商標)D110Nがより好ましく、コロネートLが特に好ましい。
【0074】
エポキシ化合物としてはN,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン(商品名TETRAD−X)や1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(商品名TETRAD−C)[いずれも三菱瓦斯化学(株)製]などが挙げられる。
【0075】
これらの架橋剤(E)は、単独で使用されても、または2種以上の混合形態で使用されてもよい。架橋剤(E)の使用量は、架橋すべき重合体(A)や多官能(メタ)アクリレート系モノマー(F)とのバランスにより、さらには、光学部材の使用用途によって適宜選択されうる。
【0076】
具体的には、架橋剤(E)を使用する場合の架橋剤(E)の配合量は、重合体(A)100質量部に対して、0.05〜5質量部である。この範囲であれば、本発明の粘着剤組成物により、適度な架橋構造を形成して、優れた耐熱性を付与できる。該配合量は、重合体(A)100質量部に対して、好ましくは0.08〜3質量部、より好ましくは0.1〜1質量部である。この範囲にあれば、適度な架橋構造を形成して、優れた耐熱性がさらに達成しうる。上記架橋剤(E)の配合量が0.05質量部未満であると、十分な架橋構造が形成できず、耐熱性が低下する場合がある。一方、5質量部を超えると、架橋反応が進行しすぎて粘着力が低下する場合がある。
【0077】
[多官能(メタ)アクリレート系モノマー(F)]
本発明の粘着剤組成物は、多官能(メタ)アクリレート系モノマー(F)を含んでもよい。多官能(メタ)アクリレート系モノマー(F)は、単独であるいは上記架橋剤(E)もしくは下記活性エネルギー線開始剤(G)によりネットワーク(架橋)構造を形成することができる。
【0078】
本発明で用いられる多官能(メタ)アクリレート系モノマー(F)は、特に制限されない。具体的には、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、ジ(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの2官能型;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレートなどの3官能型;ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどの4官能型;プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどの5官能型;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの6官能型等の、多官能(メタ)アクリレート系モノマーなどが挙げられる。
【0079】
また、上記多官能(メタ)アクリレート系モノマー(F)は、1種のみを単独で用いてもよいが、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、上記多官能(メタ)アクリレート系モノマー(F)のうち、骨格構造に環状構造を有するものを含有するものが好ましく使用される。ここで、環状構造は、炭素環式構造でも、複素環式構造でもよく、また、単環式構造でも多環式構造でもよい。このような多官能(メタ)アクリレート系モノマー(F)としては、例えばジ(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレートなどのイソシアヌレート構造を有するもの、ジメチロールジシクロペンタンジアクリレート、エチレンオキサイド変性ヘキサヒドロフタル酸ジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールアクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジアクリレート、アダマンタンジアクリレートなどが好適である。また、多官能(メタ)アクリレート系モノマー(F)として活性エネルギー線硬化型のアクリレート系オリゴマーを用いることができる。このアクリレート系オリゴマーは重量平均分子量50,000以下のものが好ましい。このようなアクリレート系オリゴマーの例としては、ポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ポリブタジエンアクリレート系、シリコーンアクリレート系などが挙げられる。
【0080】
ここで、ポリエステルアクリレート系オリゴマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。エポキシアクリレート系オリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシアクリレート系オリゴマーを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシアクリレートオリゴマーも用いることができる。ウレタンアクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアナートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができ、ポリオールアクリレート系オリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0081】
上記アクリレート系オリゴマーの重量平均分子量は、GPC法で測定した標準ポリメチルメタクリレート換算の値で、50,000以下が好ましく、より好ましくは500〜50,000、さらに好ましくは3,000〜40,000の範囲で選定される。これらのアクリレート系オリゴマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0082】
本発明においては、多官能(メタ)アクリレート系モノマー(F)として(メタ)アクリロイル基を有する基が側鎖に導入されたアダクトアクリレート系ポリマーを用いることもできる。このようなアダクトアクリレート系ポリマーは、前述の重合体(A)において説明した(メタ)アクリル酸エステルと、分子内に架橋性官能基を有する単量体との共重合体を用い、該共重合体の架橋性官能基の一部に、(メタ)アクリロイル基及び架橋性官能基と反応する基を有する化合物を反応させることにより得ることができる。該アダクトアクリレート系ポリマーの重量平均分子量は、ポリスチレン換算で、通常50万〜200万である。
【0083】
本発明においては、多官能(メタ)アクリレート系モノマー(F)として、前記の多官能アクリレート系モノマー、アクリレート系オリゴマー及びアダクトアクリレート系ポリマーの中から、適宜1種を選び用いてもよく、2種以上を選び併用してもよい。
【0084】
本発明において、多官能(メタ)アクリレート系モノマー(F)を使用する場合の多官能(メタ)アクリレート系モノマー(F)の配合量は、重合体(A)100質量部に対して、3〜30質量部である。この範囲であれば、本発明の粘着剤組成物は適度なネットワーク(架橋)構造を形成しうる。該配合量は、重合体(A)100質量部に対して、好ましくは5〜25質量部、より好ましくは5〜20質量部である。この範囲にあれば、本発明の粘着剤組成物により適度なネットワーク(架橋)構造をさらに形成できる。上記多官能(メタ)アクリレート系モノマー(F)の配合量が3質量部未満であると、粘着剤層などの中に適度なネットワーク(架橋)構造が形成できない場合がある。一方、30質量部を超えると、凝集力が低下する場合がある。
【0085】
[活性エネルギー線開始剤(G)]
本発明の粘着剤組成物は、活性エネルギー線開始剤(G)を含んでもよい。活性エネルギー線開始剤(G)が存在する場合には、上記多官能(メタ)アクリレート系モノマー(F)によるネットワーク(架橋)構造を適切に形成することができる。
【0086】
本発明で用いられる活性エネルギー線開始剤(G)は、特に制限されない。具体的には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2−(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリ−ブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p−ジメチルアミノ安息香酸エステル、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン]、ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキサイドなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0087】
本発明において、活性エネルギー線開始剤(G)を使用する場合の活性エネルギー線開始剤(G)の配合量は、重合体(A)100質量部に対して、0〜5質量部である。この範囲であれば、本発明の粘着剤組成物は適度なネットワーク(架橋)構造を形成しうる。該配合量は、重合体(A)100質量部に対して、好ましくは0.5〜4質量部、より好ましくは1〜3質量部である。この範囲にあれば、本発明の粘着剤組成物により適度なネットワーク(架橋)構造をさらに形成できる。上記活性エネルギー線開始剤(G)の配合量が5質量部を超えると、凝集力が低下する場合がある。
【0088】
本発明の粘着剤組成物は、上記架橋剤(E)、または上記多官能(メタ)アクリレート系モノマー(F)及び活性エネルギー線開始剤(G)、の少なくとも一方を含む。上記架橋剤(E)、または上記多官能(メタ)アクリレート系モノマー(F)及び活性エネルギー線開始剤(G)、の少なくとも一方を用いて架橋反応を行い、重合体(A)中に、あるいは存在する場合には多官能(メタ)アクリレート系モノマー(F)同士に、あるいは重合体(A)と多官能(メタ)アクリレート系モノマー(F)との間に、架橋構造(ネットワーク構造)を形成する。この際、架橋反応方法は、特に制限されず、架橋剤(E)、または上記多官能(メタ)アクリレート系モノマー(F)及び活性エネルギー線開始剤(G)のいずれかを使用するか、これらの架橋剤(E)、多官能(メタ)アクリレート系モノマー(F)及び活性エネルギー線開始剤(G)の種類などによって適宜選択される。具体的には、熱による架橋、紫外線照射による架橋、電子線照射による架橋などが好ましく使用される。以下、架橋反応の好ましい実施形態について説明するが、本発明は、下記実施形態に限定さるものではない。
【0089】
例えば、架橋剤(E)を使用する場合には、熱による架橋、紫外線照射による架橋、電子線照射による架橋が好ましく行なわれる。ここで、「架橋剤(E)を使用する場合」とは、架橋剤(E)を少なくとも使用する場合を意味し、すなわち、架橋剤(E)のみを使用する場合、架橋剤(E)及び多官能(メタ)アクリレート系モノマー(F)を使用する場合、ならびに架橋剤(E)、多官能(メタ)アクリレート系モノマー(F)及び活性エネルギー線開始剤(G)を使用する場合、すべてを包含する。
【0090】
また、架橋剤(E)は使用せずに、多官能(メタ)アクリレート系モノマー(F)及び活性エネルギー線開始剤(G)を使用する場合には、紫外線照射による架橋、電子線照射による架橋が好ましく行なわれる。
【0091】
さらに、多官能(メタ)アクリレート系モノマー(F)は使用するが活性エネルギー線開始剤(G)は使用しない(即ち、活性エネルギー線開始剤(G)の配合量が0質量部である)場合には、電子線照射による架橋が好ましく行なわれる。なお、上記実施形態は、活性エネルギー線開始剤(G)は配合しないが、架橋剤(E)を併用してもよい。
【0092】
本発明において、架橋条件は、特に制限されず、公知の方法が使用できる。例えば、熱による架橋を行なう場合の架橋条件は、特に制限されないが、重合体(A)に対し、帯電防止剤(B)、シランカップリング剤(C)、ベンゾトリアゾール基を有する化合物(D)、架橋剤(E)、多官能(メタ)アクリレート系モノマー(F)及び活性エネルギー線開始剤(G)を所定量混合して、粘着剤組成物を得、この組成物を適当な剥離フィルムに塗布した後、熱による架橋反応を行なう。ここで、架橋反応は、好ましくは、剥離フィルム上の塗膜について、80〜110℃で1〜5分間、熱架橋を行なった後、温度が20〜45℃で、湿度が10〜65%RHの雰囲気下で、0〜10日間放置してエージングを行なう。より好ましくは、剥離フィルム上の塗膜について、90〜100℃で1〜3分間、熱架橋を行なった後、温度が20〜35℃で、湿度が20〜60%RHの雰囲気下で、0〜7日間放置してエージングを行なう。なお、熱架橋を行なう場合の、架橋剤(E)、多官能(メタ)アクリレート系モノマー(F)、活性エネルギー線開始剤(G)の配合量は、特に限定されないが、架橋剤(E)の配合量を、重合体(A)100質量部に対して、0.05〜5質量部とし、また、多官能(メタ)アクリレート系モノマー(F)及び活性エネルギー線開始剤(G)を配合しないことが好ましい。
【0093】
また、紫外線照射による架橋を行なう場合の架橋条件は、特に制限されないが、重合体(A)に対し、帯電防止剤(B)、シランカップリング剤(C)、ベンゾトリアゾール基を有する化合物(D)、ならびに架橋剤(E)、多官能(メタ)アクリレート系モノマー(F)及び活性エネルギー線開始剤(G)を所定量混合して、粘着剤組成物を得、この組成物を適当な剥離フィルムに塗布した後、紫外線を照射して架橋反応を行なう。ここで、架橋反応は、好ましくは、剥離フィルム上の塗膜に対して、波長400nm以下、特に好ましくは200〜380nm、照射強度が100〜500mW/cm、照射量が100〜1000mJ/cmの紫外線を、照射する。より好ましくは、剥離フィルム上の塗膜に対して、波長400nm以下、特に好ましくは200〜380nm、照射強度が100〜400mW/cm、照射量が200〜800mJ/cmの紫外線を、照射する。ここで、紫外線照射源としては、高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ等を例示することができる。紫外線が照射される限り、好ましくは380nm以下の紫外線が照射される限り、他の放射線や波長を含んでもよく、その手法は特に限定されるものではない。なお、紫外線照射による架橋を行なう場合の、架橋剤(E)、多官能(メタ)アクリレート系モノマー(F)、活性エネルギー線開始剤(G)の配合量は、特に限定されないが、架橋剤(E)の配合量を、重合体(A)100質量部に対して、0〜5質量部とし、多官能(メタ)アクリレート系モノマー(F)の配合量を、重合体(A)100質量部に対して、3〜30質量部とし、さらに活性エネルギー線開始剤(G)の配合量を、重合体(A)100質量部に対して、0.1〜5質量部とすることが好ましい。
【0094】
また、紫外線で架橋構造が形成できる理由は明確ではないが、架橋剤(E)が存在しなくとも架橋構造を形成することから、重合体(A)または多官能(メタ)アクリレート系モノマー(F)に、紫外線の照射によって活性化した活性エネルギー線開始剤(G)が作用し、何らかの作用によって両者を結合させるものと考えられる。例えば、重合体(A)や多官能(メタ)アクリレート系モノマー(F)から水素を引き抜いて炭素原子を活性化し、このような炭素原子同士が近傍で結合し、結果としてランダムに架橋構造を形成する反応などが推察される。
【0095】
さらに、電子線照射による架橋を行なう場合の架橋条件は、特に制限されないが、重合体(A)に対し、帯電防止剤(B)、シランカップリング剤(C)、ベンゾトリアゾール基を有する化合物(D)、ならびに架橋剤(E)、多官能(メタ)アクリレート系モノマー(F)及び活性エネルギー線開始剤(G)を所定量混合して、粘着剤組成物を得、この組成物を適当な剥離フィルムに塗布した後、電子線を照射して架橋反応を行なう。ここで、架橋反応は、好ましくは、剥離フィルム上の塗膜に対して、加速電圧を100〜250kV、吸収線量が10〜60kGyの条件で、不活性ガス雰囲気下で、電子線を照射する。より好ましくは、剥離フィルム上の塗膜に対して、加速電圧を100〜200kV、吸収線量が20〜40kGyの条件で、不活性ガス雰囲気下で、電子線を照射する。ここで、不活性ガスとしては、特に制限されないが、ヘリウム、アルゴン、窒素などが使用できる。また、不活性ガス雰囲気中、酸素が含まれてもよいが、この場合の酸素濃度は200体積ppm以下であることが好ましい。なお、電子線照射による架橋を行なう場合の、架橋剤(E)、多官能(メタ)アクリレート系モノマー(F)、活性エネルギー線開始剤(G)の配合量は、特に限定されないが、架橋剤(E)の配合量を、重合体(A)100質量部に対して、0〜5質量部とし、多官能(メタ)アクリレート系モノマー(F)の配合量を、重合体(A)100質量部に対して、3〜30質量部とし、さらに活性エネルギー線開始剤(G)の配合量を、重合体(A)100質量部に対して、0〜5質量部とすることが好ましい。
【0096】
また、電子線で架橋構造が形成できる理由は明確ではないが、活性エネルギー線開始剤(G)が存在しなくても架橋構造を形成することから、重合体(A)または多官能(メタ)アクリレート系モノマー(F)に、電子線の照射によって活性部位ができ、重合体(A)や多官能(メタ)アクリレート系モノマー(F)同士が、何らかの作用によって結合するものと考えられる。例えば、重合体(A)や多官能(メタ)アクリレート系モノマー(F)から水素を引き抜いて炭素原子を活性化し、このような炭素原子同士が近傍で結合し、結果としてランダムに架橋構造を形成する反応などが推察される。
【0097】
本発明の粘着剤組成物は、硬化促進剤、イオン性液体、無機充填剤、軟化剤、酸化防止剤、老化防止剤、安定剤、粘着付与樹脂、改質樹脂(ポリオール樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ化ポリブタジエン樹脂等)、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、染料、顔料(着色顔料、体質顔料等)、処理剤、紫外線遮断剤、蛍光増白剤、分散剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤および溶剤のような添加剤を含んでもよい。硬化促進剤としては、例えばジブチルスズジラウレート、JCS−50(城北化学工業社製)、フォーメートTK−1(三井化学ポリウレタン社製)等が挙げられる。酸化防止剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、イルガノックス(登録商標)1010、イルガノックス(登録商標)1035FF、イルガノックス(登録商標)565(いずれも、チバ スペシャリティ ケミカルズ社製)等が挙げられる。粘着付与樹脂としては、例えば、ロジン酸、重合ロジン酸およびロジン酸エステル等のロジン類、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、芳香族炭化水素樹脂、脂肪族飽和炭化水素樹脂ならびに石油樹脂等が挙げられる。上記添加剤を使用する場合の、添加剤の使用量は、特に制限されないが、例えば、上記成分(A)〜(G)の合計量 100質量部に対して、0.1〜20質量部である。
【0098】
本発明の粘着剤組成物は、上記で述べた各成分を一括に混合するか、各成分を順次混合するか、または任意の複数の成分を混合した後に残りの成分を混合するなどして、均一な混合物となるように撹拌することにより製造することができる。より具体的には、必要に応じて加温、例えば30〜40℃の温度に加温し、スターラーなどで均一になるまで、例えば10分〜5時間撹拌することにより調製することができる。
【0099】
本発明の粘着剤組成物は、種々の基材の貼り合わせに使用することができる。ここで使用できる基材としては、ガラス、プラスチックフィルム、紙または金属箔等が挙げられる。ガラスとしては、一般的な無機ガラスが挙げられる。プラスチックフィルムにおける、プラスチックとしては、例えばポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン、セルロース系樹脂、アクリル系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、非結晶性ポリオレフィン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体及び塩素化ポリプロピレン等が挙げられる。非結晶性ポリオレフィン系樹脂は、通常、ノルボルネンや多環ノルボルネン系モノマーのような環状ポリオレフィンの重合単位を有するものであり、環状オレフィンと鎖状環状オレフィンとの共重合体であってもよい。市販されている非結晶性ポリオレフィン系樹脂として、JSR株式会社の商品名アートン、日本ゼオン株式会社のZEONEX(登録商標)、ZEONOR(登録商標)、三井化学株式会社のAPO、アペル(登録商標)などがある。非結晶性ポリオレフィン系樹脂を製膜してフィルムにするには、溶剤キャスト法、溶融押出法など、公知の方法が適宜用いられる。また、紙としては、模造紙、上質紙、クラフト紙、アートコート紙、キャスターコート紙、純白ロール紙、パーチメント紙、耐水紙、グラシン紙及び段ボール紙等を挙げることができ。金属箔としては、例えばアルミニウム箔等を挙げることができる。
【0100】
したがって、本発明は、本発明の粘着剤組成物から形成される粘着剤層を備える、光学部材をも提供する。
【0101】
光学部材としては、例えば、偏光板、位相差板、プラズマディスプレイ用光学フィルム、タッチパネル用導電フィルムなどが好ましく挙げられる。このうち、本発明の粘着剤組成物は、偏光板とガラスとの接着性に優れている。もちろん、本発明は、上記の形態に限定されるものではなく、他の部材の接着に使用することも可能である。
【0102】
本発明の粘着剤組成物は、光学フィルムの片面あるいは両面に直接塗布して粘着剤層を形成して使用されてもよいし、剥離フィルム上に粘着剤層を予め形成し、これを光学フィルムの片面あるいは両面に転写することにより使用されてもよい。
【0103】
本発明の粘着剤組成物の塗工は、従来公知の方法に従えばよく、例えば、ナチュラルコーター、ナイフベルトコーター、フローティングナイフ、ナイフオーバーロール、ナイフオンブランケット、スプレー、ディップ、キスロール、スクイーズロール、リバースロール、エアブレード、カーテンフローコーター、ドクターブレード、ワイヤーバー、ダイコーター、カンマコーター、ベーカーアプリケーターおよびグラビアコーター等の装置を用いる種々の塗工方法が挙げられる。また、本発明の組成物の塗布厚さ(乾燥後の厚さ)は、使用する基材および用途に応じて選択すればよいが、好ましくは5〜40μmであり、より好ましくは15〜30μmである。
【0104】
本発明の粘着剤組成物の粘度は、特に制限されない。しかしながら、塗工のしやすさなどを考慮すると、25℃における粘度が好ましくは500〜5000mPa・s、より好ましくは1000〜3000mPa・sである。該粘度が500mPa・s未満であると、塗工面にユズハダが発生する場合がある。一方、5000mPa・sを超えると、塗工筋が発生する場合がある。
【0105】
本発明の粘着剤組成物から得られる粘着剤層は、上記のような粘着剤組成物を架橋して得られるものである。その際、粘着剤組成物の架橋は、粘着剤組成物の塗布後に行うのが一般的であるが、架橋後の粘着剤組成物からなる粘着剤層を基材などに転写することも可能である。この粘着剤組成物の架橋は、上記したような方法や条件下で、一般的に静置することにより行われる。
【0106】
本発明の粘着剤組成物は、優れた帯電防止能(低い表面抵抗値)を有しかつ優れた金属腐食抑制・防止性(防錆作用)を示す。このため、本発明の粘着剤組成物は、各種プラスチックフィルムなどの被着体の接着に有効であり、特に偏光板に用いた場合、優れた耐光漏れ性、帯電防止性および金属腐食抑制・防止性(防錆作用)を達成することができる。また、本発明の粘着剤組成物は、優れた柔軟性を示し、これにより優れたリワーク性(再剥離性)や加工性を示す。例えば、光学部材の接着工程において、光学フィルムと被着体との位置ズレが発生したとしても、被着体に粘着剤が残存することなく光学フィルムを剥離することができる。特に偏光板に用いた場合、優れた耐光漏れ性およびリワーク性を得ることができる。
【0107】
加えて、本発明の粘着剤組成物は優れた耐熱性を有するため、加熱処理や高湿処理により浮きや剥がれの生じない高耐久性が発現できる。
【実施例】
【0108】
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。また、特記しない限り、「部」は「質量部」を表わす。
【0109】
なお、粘着剤組成物が溶解している溶液の固形分および粘度、ならびに重合体(A)の重量平均分子量の測定は、以下の方法で行った。
【0110】
<固形分>
ポリマー溶液 約1gを、精秤したガラス皿に精秤する。105℃で1時間乾燥した後室温に戻し、ガラス皿と残存固形分との合計の質量を精秤する。ガラス皿の質量をX、乾燥する前のガラス皿とポリマー溶液との合計の質量をY、ガラス皿と残存固形分との合計の質量Zとして、下記数式1により固形分を算出した。
【0111】
【数1】

【0112】
<粘度>
ガラス瓶に入れた粘着剤溶液を25℃に温調し、B型粘度計により測定した。
【0113】
<重量平均分子量および数平均分子量>
下記表2の測定方法・測定条件により測定した。
【0114】
【表2】

【0115】
(合成例1)
還流器および攪拌機を備えたフラスコに、n−ブチルアクリレート(株式会社日本触媒製)99質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(株式会社日本触媒製)1質量部、および酢酸エチル120質量部を投入した。次いで、窒素置換を行いながら65℃まで加温し、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.04質量部を加え、65℃を維持しつつ6時間重合を行った。重合反応終了後、重合溶液を室温まで冷却して、これに酢酸エチル 280質量部を加えて希釈を行い、重合体(A−1)の溶液を得た。得られた重合体(A−1)溶液の固形分は20質量%、粘度は4500mPa・sであった。また、得られた重合体(A−1)の重量平均分子量は160万であった。
【0116】
(合成例2〜17)
合成例1において、単量体成分の組成を、表1に示されるような組成に変更する以外は、合成例1と同様の操作を行なうことによって、重合体(A−2)〜(A−17)の溶液を得た。また、得られた重合体(A−2)〜(A−17)溶液の固形分、粘度、重量平均分子量を測定し、その結果を下記表3に示す。なお、下記表3において、「BA」は、ブチルアクリレートであり;「2EHA」は、2−エチルヘキシルアクリレートであり;「HEA」は、2−ヒドロキシエチルアクリレートであり;「4HBA」は、4−ヒドロキシブチルアクリレートであり;および「AA」は、アクリル酸である。
【0117】
【表3】

【0118】
(実施例1)
下記表4に示されるような組成になるように、重合体(A−1)100質量部に対して、帯電防止剤(B)としての1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロフォスフェート(東京化成工業(株)製)0.01質量部、シランカップリング剤(C)としての3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名信越シリコーンKBM−403)0.1質量部、ベンゾトリアゾール基を有する化合物(D)としての1,2,3−ベンゾトリアゾール(東京化成工業(株)製、商品名B0094)5質量部、架橋剤(E)としてのトリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業(株)製、商品名コロネートL)0.1質量部、多官能(メタ)アクリレート系モノマー(F)としてのトリメチロールプロパントリアクリレート(共栄社化学(株)製、商品名ライトアクリレートTMP−A)5質量部、および活性エネルギー線開始剤(G)としてのジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキサイド(チバ・ジャパン(株)製、商品名DAROCUR TPO)を添加して、充分に混合して、粘着剤組成物(1)を得た。
【0119】
このようにして得られた粘着剤組成物(1)を、剥離PETフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム株式会社製、MRF38、厚み:38μm)上に、乾燥後の厚さが25μmとなるように、ベーカーアプリケーターを用いて塗布した後、偏光板に貼り合わせをした。貼り合わせてから30分後に、剥離PETフィルム側から紫外線(UV)を下記の条件で、照射し、粘着剤層つき偏光板(1)を作製した。
<紫外線照射条件>
UV照度計:アイグラフィックス社製、UVPF−A1(PD−365)
UV照射源:アイグラフィックス社製、メタルハライドランプ
照射強度:200mW/cm
照射量:400mJ/cm
(実施例2,3)
下記表4に示されるように、重合体(A)、帯電防止剤(B)、シランカップリング剤(C)、ベンゾトリアゾール基を有する化合物(D)、架橋剤(E)、多官能(メタ)アクリレート系モノマー(F)および活性エネルギー線開始剤(G)を添加して、充分に混合して、それぞれ、粘着剤組成物(2)、(3)を得た。
【0120】
このようにして得られた粘着剤組成物(2)、(3)について、実施例1と同様の操作を行なって、粘着剤層つき偏光板(2)、(3)を作製した。
【0121】
(実施例4)
下記表4に示されるような組成になるように、重合体(A−4)100質量部に対して、帯電防止剤(B)としての1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロフォスフェート(東京化成工業(株)製)1質量部及び1−ブチル−3−メチルピリジニウム トリフルオロメタンスルホネート(東京化成工業(株)製)1質量部、シランカップリング剤(C)としての3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名信越シリコーンKBM−403)0.1質量部、ベンゾトリアゾール基を有する化合物(D)としての1,2,3−ベンゾトリアゾール(東京化成工業(株)製、商品名B0094)20質量部、および多官能(メタ)アクリレート系モノマー(F)としてのトリエチレングリコールジアクリレート(共栄社化学(株)製、商品名ライトアクリレート3EG−A)20質量部を添加して、充分に混合して、粘着剤組成物(4)を得た。
【0122】
このようにして得られた粘着剤組成物(4)を、剥離PETフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム株式会社製、MRF38、厚み:38μm)上に、乾燥後の厚さが25μmとなるように、ベーカーアプリケーターを用いて塗布した後、偏光板に貼り合わせをした。貼り合わせてから30分後に、剥離PETフィルム側から電子線(EB)を下記の条件で、窒素ガス雰囲気下(酸素濃度:200体積ppm以下)で、照射し、粘着剤層つき偏光板(4)を作製した。
<電子線照射条件>
EB照度計:アイエレクトロンビーム社製、電子線照射装置
加速電圧:150kV
吸収線量:30kGy
(実施例5、6)
下記表4に示されるように、重合体(A)、帯電防止剤(B)、シランカップリング剤(C)、ベンゾトリアゾール基を有する化合物(D)、架橋剤(E)、多官能(メタ)アクリレート系モノマー(F)および活性エネルギー線開始剤(G)を添加して、充分に混合して、それぞれ、粘着剤組成物(5)、(6)を得た。
【0123】
このようにして得られた粘着剤組成物(5)、(6)について、実施例1と同様の操作を行なって、粘着剤層つき偏光板(5)、(6)を作製した。
【0124】
(実施例7)
下記表4に示されるような組成になるように、重合体(A−7)100質量部に対して、帯電防止剤(B)としての過塩素酸リチウム(和光純薬工業(株)製)2質量部、シランカップリング剤(C)としての3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名信越シリコーンKBM−403)0.1質量部、ベンゾトリアゾール基を有する化合物(D)としての1−(メトキシメチル)−1H−ベンゾトリアゾール(東京化成工業(株)製、商品名M1276)10質量部、および架橋剤(E)としてのN,N,N’,N’−テトラグリシジルm−キシレンジアミン(三菱ガス化学(株)製、商品名テトラッドX)0.5質量部を添加して、充分に混合して、粘着剤組成物(7)を得た。
【0125】
このようにして得られた粘着剤組成物(7)を、剥離PETフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム株式会社製、MRF38、厚み:38μm)上に、乾燥後の厚さが25μmとなるように、ベーカーアプリケーターを用いて塗布し、90℃で3分間、熱架橋を行なって粘着剤前駆層を形成した後、偏光板に貼り合わせをした。その後、これを、23℃/50%RHの雰囲気下で7日間、エージング(熟成)させて、粘着剤層つき偏光板(7)を作製した。
【0126】
(実施例8)
下記表4に示されるように、重合体(A)、帯電防止剤(B)、シランカップリング剤(C)、ベンゾトリアゾール基を有する化合物(D)、及び架橋剤(E)を添加して、充分に混合して、それぞれ、粘着剤組成物(8)を得た。
【0127】
このようにして得られた粘着剤組成物(8)を用いる以外は、実施例7と同様にして、粘着剤層つき偏光板(8)を作製した。
【0128】
(実施例9)
下記表4に示されるように、重合体(A)、帯電防止剤(B)、シランカップリング剤(C)、ベンゾトリアゾール基を有する化合物(D)、架橋剤(E)、および多官能(メタ)アクリレート系モノマー(F)を添加して、充分に混合して、それぞれ、粘着剤組成物(9)を得た。
【0129】
このようにして得られた粘着剤組成物(9)について、実施例4と同様の操作を行なって、粘着剤層つき偏光板(9)を作製した。
【0130】
(実施例10)
下記表4に示されるように、重合体(A)、帯電防止剤(B)、シランカップリング剤(C)、ベンゾトリアゾール基を有する化合物(D)、架橋剤(E)、多官能(メタ)アクリレート系モノマー(F)および活性エネルギー線開始剤(G)を添加して、充分に混合して、それぞれ、粘着剤組成物(10)を得た。
【0131】
このようにして得られた粘着剤組成物(10)について、実施例1と同様の操作を行なって、粘着剤層つき偏光板(10)を作製した。
【0132】
(比較例1〜5)
下記表4に示されるように、重合体(A)、帯電防止剤(B)、シランカップリング剤(C)、ベンゾトリアゾール基を有する化合物(D)、架橋剤(E)、多官能(メタ)アクリレート系モノマー(F)および活性エネルギー線開始剤(G)を添加して、充分に混合して、それぞれ、比較用粘着剤組成物(1)〜(5)を得た。
【0133】
このようにして得られた比較用粘着剤組成物(1)〜(5)について、それぞれ、実施例1と同様の操作を行なって、比較用粘着剤層つき偏光板(1)〜(5)を作製した。
【0134】
(比較例6)
下記表4に示されるように、重合体(A)、帯電防止剤(B)、シランカップリング剤(C)、ベンゾトリアゾール基を有する化合物(D)、および架橋剤(E)を添加して、充分に混合して、それぞれ、比較用粘着剤組成物(6)を得た。
【0135】
このようにして得られた比較用粘着剤組成物(6)を用いる以外は、実施例7と同様にして、比較用粘着剤層つき偏光板(6)を作製した。
【0136】
(比較例7)
下記表4に示されるように、重合体(A)、帯電防止剤(B)、シランカップリング剤(C)、ベンゾトリアゾール基を有する化合物(D)、および多官能(メタ)アクリレート系モノマー(F)を添加して、充分に混合して、それぞれ、比較用粘着剤組成物(7)を得た。
【0137】
このようにして得られた比較用粘着剤組成物(7)について、実施例4と同様の操作を行なって、比較用粘着剤層つき偏光板(7)を作製した。
【0138】
上記のようにして得られた実施例1〜10の粘着剤層つき偏光板(1)〜(10)および比較例1〜7の比較用粘着剤層つき偏光板(1)〜(7)について、下記の方法に従って、表面抵抗値、金属腐食抑制・防止性、耐光漏れ性、耐久性、粘着力、基材に対する密着性、被着体汚染性、低温安定性、リワーク性、およびゲル分率を評価した。結果を、下記表4に示す。
【0139】
なお、下記表4中、「A」は重合体(A)を;「B」は帯電防止剤(B)を;「C」はシランカップリング剤(C)を;「D」はベンゾトリアゾール基を有する化合物(D)を;「E」は架橋剤(E)を;「F」は多官能(メタ)アクリレート系モノマー(F)を;および「G」は活性エネルギー線開始剤(G)を、それぞれ、示す。また、下記表4中の各成分は、下記のとおりである。また、下記表4中、各粘着剤組成物の組成は、それぞれ、「質量部」で表わされる。
【0140】
[重合体(A)]
各実施例1〜10及び比較例1〜7で使用した重合体を重合体(A−1)〜(A−17)で示す。
【0141】
[帯電防止剤(B)]
イオン化合物1:1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロフォスフェート(東京化成工業(株)製)
イオン化合物2:N−メチル−N−プロピルピペリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(関東化学(株)製)
イオン化合物3:1−エチルピリジニウム ブロマイド(東京化成工業(株)製)
イオン化合物4:1−ブチル−3−メチルピリジニウム トリフルオロメタンスルホネート(東京化成工業(株)製)
リチウム塩1:ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(和光純薬工業(株)製)
リチウム塩2:トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(和光純薬工業(株)製)
リチウム塩3:過塩素酸リチウム(和光純薬工業(株)製)
[シランカップリング剤(C)]
シランカップリング剤:3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(信越化学工業(株)製 商品名信越シリコーンKBM−403)
[ベンゾトリアゾール基を有する化合物(D)]
D−1:1,2,3−ベンゾトリアゾール(東京化成工業(株)製、商品名B0094)
D−2:1−(メトキシメチル)−1H−ベンゾトリアゾール(東京化成工業(株)製、商品名M1276)
D−3:1−(ホルムアミドメチル)−1H−ベンゾトリアゾール(東京化成工業(株)製、商品名F0339)
[架橋剤(E)]
E−1:トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業(株)製、商品名コロネートL)
E−2:N,N,N’,N’−テトラグリシジルm−キシレンジアミン(三菱ガス化学(株)製、商品名テトラッドX)
[多官能(メタ)アクリレート系モノマー(F)]
F−1:トリメチロールプロパントリアクリレート(共栄社化学(株)製、商品名ライトアクリレートTMP−A)
F−2:トリエチレングリコールジアクリレート(共栄社化学(株)製、商品名ライトアクリレート3EG−A)
[活性エネルギー線開始剤(G)]
光重合開始剤:ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキサイド(チバ・ジャパン(株)製、商品名DAROCUR TPO)
次に、表面抵抗値、金属腐食抑制・防止性、耐光漏れ性、耐久性、粘着力、基材に対する密着性、被着体汚染性、低温安定性、リワーク性、およびゲル分率の評価方法は、下記のとおりである。
【0142】
<表面抵抗値>
各粘着剤層つき偏光板の粘着剤層面の表面抵抗値(Ω/□)を、マイクロエレクトロメーター(株式会社川口電機製作所製)を使用して23℃、50%RHの雰囲気下で測定した。
【0143】
<金属腐食抑制・防止性>
各粘着剤層つき偏光板の粘着剤層面を、アルミホイルに貼り合わせて、60℃、90%RHの雰囲気下で2日間放置したときの腐食性を観察した。なお、下記表4中、「○」は、粘着剤層面に変化が認められなかったことを示し、「×」は、粘着剤層面が白化したことを示す。
【0144】
<耐光漏れ性>
各粘着剤層つき偏光板を、120mm(偏光板MD方向)×60mmの大きさに裁断して、試料(1)とした。また、各粘着剤層つき偏光板を、120mm(偏光板TD方向)×60mmの大きさに裁断して、試料(2)とした。これらの試料(1)、(2)を、ガラス板の各面に重なり合うように貼合し、50℃、0.49MPa(5kg/cm)の条件下で、20分間オートクレーブ処理を行った。その後、80℃環境に入れ、120時間後の外観を観察した。なお、下記表4中、「○」は、光漏れが観察されなかったことを示し、「×」は、光漏れが観察されたことを示す。
【0145】
<耐久性>
各粘着剤層つき偏光板を、120mm(偏光板MD方向)×60mmの大きさに裁断し、試料とした。この試料を、ガラス板に貼合し、50℃、0.49MPa(5kg/cm)の条件下で、20分間オートクレーブ処理を行った。その後、100℃環境、あるいは60℃/90%RH環境に入れ、120時間後の外観を観察した。なお、下記表4中、「○」は、上記いずれの環境下でも発泡、浮き、剥がれが観察されなかったことを示し、「×」は、上記いずれの環境下で少なくとも発泡、浮き、剥がれが観察されたことを示す。
【0146】
<粘着力>
各粘着剤層つき偏光板について、JIS Z0237粘着テープ・粘着シート試験方法に準じて粘着力の測定を行った。すなわち、各粘着剤層つき偏光板を、25mm幅に裁断した試料をガラス板に貼合し、50℃、0.49MPa(5kg/cm)の条件下で、20分間オートクレーブ処理を行った。その後、引っ張り試験機を用いて、剥離角90度、剥離速度0.3m/minで粘着力(N/25mm)を測定した(測定環境:23℃/50%RH)。
【0147】
<基材に対する密着性>
各粘着剤層つき偏光板について、上記<粘着力>試験と同様の実験を行い、粘着力測定時のガラス板と偏光板との密着性を観察した。なお、下記表4中、「○」は、偏光板がガラス板からまったく剥がれなかったことを示し、「×」は、偏光板がガラス板から剥がれたことを示す。
【0148】
<被着体汚染性>
各粘着剤層つき偏光板について、上記<粘着力>試験と同様の実験を行い、粘着力測定前後のガラス板面の接触角を測定した。なお、下記表4中、「○」は、粘着力測定前後のガラス面の接触角に変化が認められなかったことを示し、「×」は、粘着力測定前後のガラス面の接触角に変化が認められたことを示す。
【0149】
<低温安定性>
各粘着剤層つき偏光板を、120mm(偏光板MD方向)×60mmの大きさに裁断し、試料とした。この試料を、ガラス板に貼合し、50℃、0.49MPa(5kg/cm)の条件下で、20分間オートクレーブ処理を行った。その後、−40℃環境に入れ、120時間後の外観を観察した。なお、下記表4中、「○」は、発泡、浮き、剥がれ、再結晶物が観察されなかったことを示し、「×」は、発泡、浮き、剥がれ、再結晶物が観察されたことを示す。
【0150】
<リワーク性>
各粘着剤層つき偏光板について、上記<粘着力>試験と同様の実験を行い、粘着力測定時の剥離状態を観察した。なお、下記表4中、「○」は、界面破壊が観察されたことを示し、「×」は、ガラス板(被着体)に転着およびまたは凝集破壊が観察されたことを示す。
【0151】
<ゲル分率>
上記実施例1〜10および比較例1〜7において、偏光板の代わりに剥離処理したポリエステルフィルムを使用にして、粘着剤層をポリエステルフィルム上に形成し、塗工1、3、5、7、10、15日後におけるゲル分率(%)を測定した。ゲル分率は、23℃、50%RHの雰囲気下で所定日数放置した粘着剤層約0.1gを秤量して重量W(g)とした。これをサンプル瓶に採取し、酢酸エチルを約30g加えて24時間放置した。所定時間経過後のサンプル瓶の内容物を200メッシュのステンレス製金網(金網の重量をW(g))にてろ別し、金網及び残留物を90℃で1時間乾燥させた全体の重量W(g)を測定した。この際、ゲル分率は、これら測定値から次式により算出した。
【0152】
【数2】

【0153】
【表4】

【0154】
上記表4から、本発明の実施例1〜10の粘着剤組成物(1)〜(10)およびこれらを用いた粘着剤層つき偏光板(1)〜(10)は、比較例1〜7のものと比べて、優れた耐久性を有しながら、帯電防止性や金属腐食性にも優れることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸エステルを含む単量体成分を重合してなる重合体(A)100質量部に対し、
イオン性化合物および/またはリチウム塩を含む帯電防止剤(B)0.01〜3質量部、
シランカップリング剤(C)0〜1質量部、
ベンゾトリアゾール基を有する化合物(D)3〜20質量部、ならびに
架橋剤(E)0.05〜5質量部、または
多官能(メタ)アクリレート系モノマー(F)3〜30質量部および活性エネルギー線開始剤(G)0〜5質量部、
を含む、粘着剤組成物。
【請求項2】
前記ベンゾトリアゾール基を有する化合物(D)は、下記式(I)〜(V):
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

ただし、Rは、炭素原子数1〜4のアルキル基またはハロゲン原子を表わし、pが2〜4である場合には、Rは、それぞれ同一であってもあるいは異なるものであってもよく;pは、0〜4であり;Rは、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数5〜7のシクロアルキル基、1〜3個の炭素原子数1〜4のアルキルで置換された炭素原子数5〜7のシクロアルキル基及び炭素原子数5〜7のシクロアルキル−炭素原子数1〜4のアルキル基からなる群より選択される置換基を表わし;Rは、水素原子または炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数5〜7のシクロアルキル基、1〜3個の炭素原子数1〜4のアルキルで置換された炭素原子数5〜7のシクロアルキル基、炭素原子数5〜7のシクロアルキル−炭素原子数1〜4のアルキル基、フェニル基、フェニル−炭素原子数1〜4のアルキル基、1〜3個の炭素原子数1〜4のアルキルで置換されたフェニル基及び1〜3個の炭素原子数1〜4のアルキルで置換されたフェニル−炭素原子数1〜4のアルキル基からなる群より選択される置換基を表わし;qは、1〜3である、
で示される化合物から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記ベンゾトリアゾール基を有する化合物(D)は、下記式:
【化6】

から選択される少なくとも1種である、請求項1または2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の粘着剤組成物から形成される粘着剤層を備える、光学部材。

【公開番号】特開2010−150396(P2010−150396A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−330150(P2008−330150)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(500005066)チェイル インダストリーズ インコーポレイテッド (263)
【Fターム(参考)】