説明

粘着剤

【課題】粘着特性のバランスに優れたアクリル系ブロック共重合体およびその組成物を提供する。
【解決手段】メタアクリル系重合体ブロック(a1)およびアクリル系重合体ブロック(b1)からなるアクリル系ブロック共重合体(A)と、メタアクリル系重合体ブロック(a2)およびアクリル系重合体ブロック(b2)からなり、さらに(a2)もしくは(b2)の少なくとも一方の重合体ブロック中にカルボキシル基および/または酸無水物基である官能基を含有してなるアクリル系ブロック共重合体(B)とを含む粘着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタアクリル系重合体ブロック(a1)およびアクリル系重合体ブロック(b1)からなるアクリル系ブロック共重合体(A)と、メタアクリル系重合体ブロック(a2)およびアクリル系重合体ブロック(b2)からなり、さらに(a2)もしくは(b2)の少なくとも一方の重合体ブロック中にカルボキシル基および/または酸無水物基である官能基を含有してなるアクリル系ブロック共重合体(B)からなる粘着剤組および、粘着製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粘着剤としてはアクリル系やゴム系などが一般的に用いられてきたが、近年、スチレン−共役ジエン系ブロック共重合体などを主成分とする粘着剤が開発されてきている。このようなブロック共重合体を主成分とする粘着剤は、エマルジョン系や溶剤系の粘着剤に比べて、乾燥効率や安全性の点で優れており、特に注目を集めている。しかしながら、スチレン−共役ジエン系ブロック共重合体は耐候性および耐光性の低いことが問題となることがあった。
【0003】
これに対して、近年、リビング重合によって合成される、メタアクリル系重合体ブロックとアクリル系重合体ブロックからなるアクリル系ブロック共重合体が提案されている(特許文献1)。このようなアクリル系ブロック共重合体は、リビング重合に由来する優れた構造の制御と狭い分子量分布をもちながら、アクリル系重合体が本来有する高い耐候性、耐光性を保持する特徴を有しており、これらの特徴を活かした粘着剤として様々な用途への展開が期待される(特許文献2、3)。
【0004】
一般に、アクリル系粘着剤は、高温において粘着力が著しく低下する欠点を有する。そのため、自動車のエンジン部や車体、電気製品内部等の高温に曝される用途や、製造時や輸送時または保管中に高温となる雰囲気下における、粘着剤の剥がれや浮きが問題となることがある。
【0005】
また、粘着製品は、被着体に貼付した後は剥離されることがほとんどない永久接着型と、被着体に貼付した後に再び剥離することが想定される再剥離型に分類することができ、近年は、環境対応やリサイクルの必然性から、再剥離型粘着製品の使用量が増大している。再剥離型の粘着製品では、長時間貼付した後や、高温に曝された後における粘着力が著しく上昇する現象(昂進性)が問題となることが多い。そのため、自動車のエンジン部や車体、電気製品内部等の高温に曝される用途や、製造時や輸送時または保管中に高温となる雰囲気下において、粘着力が上昇することによって、再剥離が困難となることや、基材への糊残りや基材の破壊などが起きることがある。
【0006】
これらの問題を解決するために、アクリル系粘着剤においては、架橋を導入することが一般的である。しかしながら架橋を導入することにより、逆に常温での粘着力が低下する、ポットライフが短くなる、塗工方法が限定される等の問題が生じる場合があった。そのため、架橋を導入しなくとも高温で十分な粘着力を発揮し、昂進性を抑制された粘着剤の開発が求められていた。
【特許文献1】特許第3040172号
【特許文献2】特開2003−105300
【特許文献3】特開2001−348553
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、メタアクリル系重合体ブロックおよびアクリル系重合体ブロックからなるアクリル系ブロック共重合体を用いた粘着剤に関し、粘着特性のバランスに優れた粘着剤および、粘着製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、本発明者は、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、
メタアクリル系重合体ブロック(a1)、およびアクリル系重合体ブロック(b1)からなり、かつ数平均分子量(Mn)が10,000〜300,000であるアクリル系ブロック共重合体(A)と、
メタアクリル系重合体ブロック(a2)、およびアクリル系重合体ブロック(b2)からなり、(a2)もしくは(b2)の少なくとも一方の重合体ブロック中にカルボキシル基および/または酸無水物基を含有し、かつ数平均分子量(Mn)が10,000〜300,000であるアクリル系ブロック共重合体(B)、
とを含むことを特徴とする粘着剤に関する。
【0010】
好ましい実施態様としては、アクリル系ブロック共重合体(B)に含有されるカルボキシル基および/または酸無水物である官能基が、アクリル系重合体ブロック(b2)に含有されていることを特徴とする粘着剤に関する。
【0011】
好ましい実施態様としては、アクリル系ブロック共重合体(A)およびアクリル系ブロック共重合体(B)が、いずれもトリブロック共重合体であることを特徴とする粘着剤に関する。
【0012】
好ましい実施態様としては、アクリル系ブロック共重合体(B)におけるカルボキシル基および/または酸無水物基の割合が、0.1〜30重量%であることを特徴とする粘着剤に関する。
【0013】
好ましい実施態様としては、アクリル系ブロック共重合体(A)およびアクリル系ブロック共重合体(B)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が、いずれも1.8以下であることを特徴とする粘着剤に関する。
【0014】
好ましい実施態様としては、アクリル系ブロック共重合体(A)とアクリル系ブロック共重合体(B)の重量比(A)/(B)が、70/30〜1/99であることを特徴とする粘着剤に関する。
【0015】
好ましい実施態様としては、アクリル系ブロック共重合体(A)およびアクリル系ブロック共重合体(B)が、有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤とし、Fe、Ru、Ni、Cuから選ばれる少なくとも1種類を中心金属とする金属錯体を触媒とする原子移動ラジカル重合法により製造されたことを特徴とする粘着剤に関する。
【0016】
好ましい実施態様としては、上記記載の粘着剤を用いてなるホットメルト粘着剤に関する。
【0017】
好ましい実施態様としては、上記記載の粘着剤を用いてなる粘着シートに関する。
【0018】
好ましい実施態様としては、上記記載の粘着剤を用いてなる再剥離型粘着シートに関する。
【0019】
好ましい実施態様としては、上記記載の粘着剤を用いてなる表面保護材に関する。
【0020】
好ましい実施態様としては、多層共押出により製造されたものであることを特徴とする粘着シートに関する。
【0021】
好ましい実施態様としては、多層共押出により製造されたものであることを特徴とする再剥離型粘着シートに関する。
【0022】
好ましい実施態様としては、多層共押出により製造されたものであることを特徴とする表面保護材に関する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の粘着剤は、アクリル系ブロック共重合体(A)とアクリル系ブロック共重合体(B)の配合を調整することにより、所望の粘着特性を得ることができ、また粘着特性のバランスに優れた粘着剤を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。
【0025】
<アクリル系ブロック共重合体>
本発明の粘着剤を構成するアクリル系ブロック共重合体(A)及び(B)は、メタアクリル酸エステルを主成分とするメタアクリル系重合体ブロックおよびアクリル酸エステルを主成分とするアクリル系重合体ブロックからなるアクリル系ブロック共重合体である。アクリル系ブロック共重合体の構造は、線状ブロック共重合体、分岐状(星状)ブロック共重合体のいずれか、またはこれらの混合物であってもよい。このようなブロック共重合体の構造は、必要とされるアクリル系ブロック共重合体の物性に応じて適宜選択されるが、コスト面や重合容易性の点で、線状ブロック共重合体が好ましい。
【0026】
線状ブロック共重合体は、いずれの構造のものであってもよいが、線状ブロック共重合体の物性および組成物の物性の点から、メタアクリル系重合体ブロックをa、アクリル系重合体ブロックをbと表現したとき、(a−b)n型、b−(a−b)n型および(a−b)n−a型(nは1以上の整数、たとえば1〜3の整数)からなる群より選択される少なくとも1種のアクリル系ブロック共重合体からなることが好ましい。これらの中でも、加工時の取り扱い容易性や組成物の物性の点から、a−b型のジブロック共重合体、a−b−a型のトリブロック共重合体、またはこれらの混合物が好ましい。
【0027】
本発明の粘着剤を構成するアクリル系ブロック共重合体(A)及び(B)の数平均分子量(Mn)は、アクリル系ブロック共重合体に必要とされる特性に応じて適宜設定することができるが、30,000〜300,000が好ましい。数平均分子量が30,000より小さいと凝集力に劣るため粘着特性が低下する傾向があり、数平均分子量が300,000より大きいと加工性や流動性が低下する傾向がある。なお、前記数平均分子量は、クロロホルムを移動相とし、ポリスチレンゲルカラムを使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算によって測定された値を示す。
【0028】
アクリル系ブロック共重合体(A)及び(B)をGPCで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は特に限定されないが、1.8以下であることが好ましく、1.7以下であることがより好ましく、1.5以下であることがさらに好ましく、1.4以下であることがもっとも好ましい。Mw/Mnが1.8を超えると粘着特性が悪化することがある。Mw/Mnが小さいと、低分子量成分による糊残りや揮発分(フォギング)または被着体汚染などの問題、高分子量成分による加工性低下や外観不良などの問題を低減することができる点で好ましい。
【0029】
アクリル系ブロック共重合体(A)及び(B)における、メタアクリル系重合体ブロックの割合は、10〜70重量%である。メタアクリル系重合体ブロックの割合が10重量%より少ないと、凝集力に乏しく、糊残りが発生する傾向があるほか、形状が保持されにくくハンドリング性に劣る傾向がある。メタアクリル系重合体ブロックの割合が70重量%より多いと、粘着剤に要求される粘弾特性に劣り、粘着力が低下する傾向がある。
【0030】
<メタアクリル系重合体ブロック>
メタアクリル系重合体ブロック(a1)及び(a2)は、メタアクリル酸エステルを主成分とする単量体を重合してなるブロックである。ここで、主成分とは、メタアクリル系重合体ブロックを構成する単量体のうちの50重量%以上がメタアクリル酸および/またはメタアクリル酸エステルであることを意味する。
【0031】
メタアクリル酸エステルとしては、たとえば、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸n−プロピル、メタアクリル酸n−ブチル、メタアクリル酸t−ブチル、メタアクリル酸イソブチル、メタアクリル酸n−ペンチル、メタアクリル酸n−ヘキシル、メタアクリル酸n−ヘプチル、メタアクリル酸n−オクチル、メタアクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸ノニル、メタアクリル酸デシル、メタアクリル酸ドデシル、メタアクリル酸ステアリルなどのメタアクリル酸脂肪族炭化水素(たとえば炭素数1〜18のアルキル)エステル;メタアクリル酸シクロヘキシル、メタアクリル酸イソボルニルなどのメタアクリル酸脂環式炭化水素エステル;メタアクリル酸ベンジルなどのメタアクリル酸アラルキルエステル;メタアクリル酸フェニル、メタアクリル酸トルイルなどのメタアクリル酸芳香族炭化水素エステル;メタアクリル酸2−メトキシエチル、メタアクリル酸3−メトキシブチルなどのメタアクリル酸とエーテル性酸素を有する官能基含有アルコールとのエステル;メタアクリル酸トリフルオロメチル、メタアクリル酸トリフルオロメチルメチル、メタアクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、メタアクリル酸2−トリフルオロエチル、メタアクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、メタアクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、メタアクリル酸2−パーフルオロエチル、メタアクリル酸パーフルオロメチル、メタアクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、メタアクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、メタアクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、メタアクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、メタアクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチルなどのメタアクリル酸フッ化アルキルエステルなどがあげられる。これらの中でも、メタアクリル酸メチルが好ましい。これらは単独で、もしくは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
メタアクリル系重合体ブロックは、メタアクリル酸エステルを主成分とするが、これと共重合可能なメタアクリル酸エステル以外のビニル系単量体50〜0重量%を含んでいてもよい。前記共重合可能なビニル系単量体としては、アクリル酸エステル、芳香族アルケニル化合物、シアン化ビニル化合物、共役ジエン系化合物、ハロゲン含有不飽和化合物、ケイ素含有不飽和化合物、ビニルエステル化合物、マレイミド系化合物などをあげることができる。
【0033】
アクリル酸エステルとしては、たとえば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ペンチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸n−ヘプチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリルなどのアクリル酸脂肪族炭化水素(たとえば炭素数1〜18のアルキル)エステル;アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸イソボルニルなどのアクリル酸脂環式炭化水素エステル;アクリル酸フェニル、アクリル酸トルイルなどのアクリル酸芳香族炭化水素エステル;アクリル酸ベンジルなどのアクリル酸アラルキルエステル;アクリル酸−2−メトキシエチル、アクリル酸3−メトキシブチルなどのアクリル酸とエーテル性酸素を有する官能基含有アルコールとのエステル;アクリル酸トリフルオロメチルメチル、アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、アクリル酸2−パーフルオロエチル、アクリル酸パーフルオロメチル、アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチルなどのアクリル酸フッ化アルキルエステルなどをあげることができる。
【0034】
芳香族アルケニル化合物としては、たとえば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレンなどをあげることができる。
【0035】
シアン化ビニル化合物としては、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどをあげることができる。
【0036】
共役ジエン系化合物としては、たとえば、ブタジエン、イソプレンなどをあげることができる。
【0037】
ハロゲン含有不飽和化合物としては、たとえば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンなどをあげることができる。
【0038】
ビニルエステル化合物としては、たとえば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニルなどをあげることができる。
マレイミド系化合物としては、たとえば、マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどをあげることができる。
【0039】
<アクリル系重合体ブロック>
アクリル系重合体ブロック(b1)及び(b2)は、アクリル酸エステルを主成分とする単量体を重合してなるブロックである。主成分とは、アクリル系重合体ブロックを構成する単量体のうちの50重量%以上がアクリル酸エステルであることを意味する。
【0040】
アクリル酸エステルとしては、前記メタアクリル系重合体ブロックに用いられるアクリル酸エステルと同様のものを用いることができる。これらの中でも、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシルが好ましい。これらは単独で、もしくは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0041】
アクリル系重合体ブロック(b1)及び(b2)は、アクリル酸エステルを主成分とするが、これと共重合可能なアクリル酸エステル以外のビニル系単量体50〜0重量%を含んでいてもよい。共重合可能な異種のビニル系単量体としては、上述の、メタアクリル酸エステル、芳香族アルケニル化合物、シアン化ビニル化合物、共役ジエン系化合物、ハロゲン含有不飽和化合物、ケイ素含有不飽和化合物、ビニルエステル化合物、マレイミド系化合物などをあげることができる。
【0042】
なお本発明においては、アクリル酸エステル50重量%、メタアクリル酸エステル50重量%からなるブロックは、アクリル系重合体ブロックに分類される。
【0043】
<カルボキシル基および/または酸無水物基>
本発明で用いるアクリル系ブロック共重合体(B)は、カルボキシル基および/または酸無水物基(以下、単に官能基と呼ぶことがある)が導入されていることを特徴とする。
【0044】
これらの官能基は、特にアクリル系重合体ブロック(b2)中に含まれることが好ましい。これは、アクリル系重合体ブロック(b2)の凝集力を高めることにより、高温での粘着力を維持することができることによる。
【0045】
また、アクリル系重合体ブロック(b2)の極性を高めることにより、極性被着体に対する粘着力を高めることができる。ここで言う極性被着体とは、たとえば、各種の金属板、塗装板、ガラス板、ポリエステルやポリカーボネート、アクリル、ナイロンなどの極性樹脂板などが挙げられる。
【0046】
これらの官能基の含有量は、該官能基が含まれる重合体ブロック中の0.1〜30重量%が好ましい。含有量が0.1重量%未満であると、粘着力の向上効果が乏しく、30重量%以上であると、重合体ブロックのガラス転移温度(Tg)が高くなりすぎ、粘着特性が低下する傾向がある。
【0047】
該官能基の導入方法は、該官能基を有する単量体を直接共重合させてもよいし、該官能基の前駆体となる官能基を有する単量体を共重合した後に既知の化学反応を用いてアクリル系ブロック共重合体中に生成させてもよい。
【0048】
カルボキシル基を有する単量体としては、たとえば、(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸化合物、マレイン酸、フマル酸などの不飽和ジカルボン酸化合物およびそのモノエステル化合物などが挙げられる。なお、(メタ)アクリルとは、アクリルまたはメタアクリルを意味するものとする。
【0049】
また、カルボキシル基の前駆体となる官能基を有する単量体としては、たとえば、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸トリメチルシリル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸α,α−ジメチルベンジル、(メタ)アクリル酸α−メチルベンジルなどが挙げられる。これらの単量体を重合させた後、加水分解や酸分解、熱分解などによりカルボキシル基を生成させることができる。
【0050】
酸無水物基を有する単量体としては、たとえば、無水マレイン酸などが挙げられる。
【0051】
また、酸無水物基の前駆体となる官能基を有する単量体としては、たとえば、上記カルボキシル基を有する単量体や、カルボキシル基の前駆体となる官能基を有する単量体などが挙げられる。これらの単量体を重合させた後、脱水反応や脱アルコール反応などにより酸無水物基を生成させることができる。
【0052】
<アクリル系ブロック共重合体の配合>
本発明の粘着剤は、アクリル系ブロック共重合体(A)およびアクリル系ブロック共重合体(B)を配合することで粘着特性を向上させることを特徴とする。なお、ここで言う粘着特性とは、粘着力(剥離力)、タック、保持力などの粘着剤として一般に要求される物性を意味しており、所望する物性は用途に応じて異なっていてもよい。
【0053】
例えば、粘着剤のタックや粘着力を高めるために、粘着付与剤の添加や架橋の導入などが実施される。しかしその反面、保持力が低下するなど、粘着特性のバランスの低下が問題となる場合があった。本発明は、粘着付与剤や架橋を用いずとも粘着特性を向上しうるものである。
【0054】
通常、複数種のブロック共重合体を配合した粘着剤は、両者の粘着特性を単純に平均化した粘着特性を示すことが予想される。しかしながら、本発明の粘着剤は、アクリル系ブロック共重合体(A)とアクリル系ブロック共重合体(B)配合を調整することにより、所望の粘着特性を得ることができ、また両者の平均値を上回る粘着特性を発揮することも可能である。このことから、製造コストの高いアクリル系ブロック共重合体(B)と、官能基を含まず比較的安価なアクリル系ブロック共重合体(A)とを配合することによって、アクリル系ブロック共重合体(B)の使用量を削減しながらも、優れた粘着特性を発揮させることができる。さらには、配合比率を特定の範囲とすることにより、配合原料であるアクリル系ブロック共重合体(A)およびアクリル系ブロック共重合体(B)をも上回る粘着特性を発揮させることもできる。
【0055】
本発明の粘着剤における、アクリル系ブロック共重合体(A)とアクリル系ブロック共重合体(B)の重量比は、特に限定されないが、好ましくは90/10〜1/99であり、さらに好ましくは70/30〜1/99であり、最も好ましくは60/40〜5/95である。
【0056】
<アクリル系ブロック共重合体の製法>
アクリル系ブロック共重合体を製造する方法としては、特に限定されないが、制御重合法を用いることが好ましい。制御重合法としては、リビングアニオン重合法(特開平11−335432)、有機希土類遷移金属錯体を重合開始剤として用いる重合法(特開平6−93060)、連鎖移動剤を用いたラジカル重合法(特開平2−45511)、リビングラジカル重合法などが挙げられる。
【0057】
リビングラジカル重合法としては、たとえば、ポリスルフィドなどの連鎖移動剤を用いる重合法、コバルトポルフィルン錯体を用いる重合法、ニトロキシドを用いる重合法(WO2004/014926)、有機テルル化合物などの高周期ヘテロ元素化合物を用いる重合法(特許第3839829号)、可逆的付加脱離連鎖移動重合法(RAFT)(特許第3639859号)、原子移動ラジカル重合法(ATRP)(特許第3040172号)などが挙げられる。本発明において、これらのうちいずれの方法を使用するかは特に制約はないが、制御の容易さの点などから原子移動ラジカル重合法が好ましい。
【0058】
原子移動ラジカル重合法を用いてアクリル系ブロック共重合体を製造する方法としては、たとえば、WO2004/013192に挙げられた方法などを用いることができる。
【0059】
特に、有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤とし、Fe、Ru、Ni、Cuから選ばれる少なくとも1種類を中心金属とする金属錯体を触媒とする原子移動ラジカル重合法が好ましい。
【0060】
<粘着剤>
本発明の粘着剤には、通常用いられる老化防止剤、紫外線吸収剤、粘着付与剤、可塑剤(オイル)等の各種材料を本発明の目的に反しない範囲で使用してもよい。
【0061】
本発明の粘着剤は、ホットメルト粘着剤にもなりうる。
【0062】
本発明の粘着剤を用いた粘着シートとは、粘着シートの他、粘着テープ、粘着フィルムなど、基材の片面に粘着剤層が形成されたものを意味する。基材は特に限定されないが、従来既知のもの、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂あるいはそれらをブレンドしてなるポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂や紙、木材、布、不織布などが挙げられる。
【0063】
なお、上記基材は、必要に応じてコロナ処理、下塗処理を施してもよく、また背面処理等を施してもよい。また、基材には、必要に応じて、スリップ剤、帯電防止剤、酸化防止剤を添加することもできる。
【0064】
本発明の粘着剤を用いた粘着シート類の製造方法は特に限定されず、溶液塗工法、ホットメルト塗工法、多層共押出法で製造することができる。溶液塗工法は使用する有機溶剤の環境負荷が大きく、また乾燥工程が必要なことから、ホットメルト塗工または多層共押出法による製造が好ましい。また、基材が熱可塑性を有する場合には、生産性が高いことや基材との密着性が高いことから、多層共押出法による製造が好ましい。多層共押出法には、例えば、Tダイ成形法または空冷式インフレーション法、水冷式インフレーション法などがある。
【0065】
<粘着剤の用途>
本発明の粘着剤は、再剥離型粘着シート、表面保護材、マスキング材に使用できる。
【0066】
本発明にかかる粘着剤は、表面保護用、マスキング用、結束用、包装用、事務用、家庭用、ラベル用、接合用、シーリング用、防食・防水用、電気絶縁用、電子機器保持固定用、半導体製造用、光学表示フィルム、電磁波シールド用、医療・衛生用、装飾・表示用、ガラス飛散防止用のテープやフィルム等に用いられる粘着材として使用可能である。
【0067】
表面保護用としては、金属用、塗料面用、プラスチック用、ゴム用、木材用、金属の塑性加工や深絞り加工用、自動車部材用、光学部材用等が挙げられる。自動車部材としては、塗装外板、ホイール、ミラー、ウィンドウ、ライト、ライトカバーなどが挙げられる。光学部材としては、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ等の各種画像表示装置、偏光子、偏光子保護フィルム、偏光板、位相差板、導光板、拡散板、偏光板、DVD等の光ディスク構成フィルム、電子・光学用途向け精密ファインコート面板などが挙げられる。
【0068】
マスキング用としては、プリント基板・フレキシブルプリント基板用、メッキ、ハンダ、車両・建築物の塗装、捺染、自動車、土木・工事用、見切り用などが挙げられる。
【0069】
結束用としては、ワイヤーハーネス用、電線用、ケーブル用、ファイバー用、パイプ用、コイル用、巻線用、鋼材用、ダクト用、ポリ袋用、食品用、野菜用、花卉用などが挙げられる。
【0070】
包装用としては、重量物梱包、輸出梱包、段ボール箱の封緘、缶シールなどが挙げられる。
【0071】
事務用としては、事務汎用、家庭用、封緘、書籍の補修、製図用、メモ用などが挙げられる。
【0072】
ラベル用としては、価格、商品表示、荷札、POP、ステッカー、ストライプ、ネームプレート、装飾、広告用などが挙げられる。
【0073】
接合用としては、各種接着分野、自動車、電車、電気機器、印刷版固定、建築、銘板固定、一般家庭用、粗面、凹凸面、曲面への接着用などが挙げられる。
【0074】
シーリング用としては、断熱、防振、防水、防湿、防音、防塵用などが挙げられる。
【0075】
防食・防水用としては、ガス、水道管の防食、大口径管の防食、異形部の防食、土木・建築物の防食用などが挙げられる。
【0076】
電気絶縁用としては、コイルの保護被覆、モータ・トランスなどの層間絶縁、コイルの絶縁、結束用などが挙げられる。
【0077】
電子機器保持固定用としては、キャリアテープ、パッケージング、ブラウン管の固定、スプライシング、FD、リブ補強用などが挙げられる。
【0078】
半導体製造用としては、シリコーンウエハーの保護用等が挙げられる。
【0079】
電子機器マスキング用としては、メッキマスキング、ハンダマスキング用等が挙げられる。
【0080】
医療・衛生用としては、絆創膏、救急絆創膏、サージカルドレッシング、手術用縫合テープ、サリチル酸絆創膏、パップ剤、消炎鎮痛プラスター、経皮吸収薬、固定テーピング、自着性包帯、脱毛、防塵、害虫捕獲用などが挙げられる。
【0081】
装飾・表示用としては、危険表示シール用や、ラインテープ、配線マーキング、蓄光テープ、反射シート用等が挙げられる。
【実施例】
【0082】
本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例におけるBA、MMA、TBAはそれぞれ、アクリル酸−n−ブチル、メタアクリル酸メチル、アクリル酸t−ブチル、を表わす。
【0083】
<分子量測定法>
本実施例に示す分子量は以下に示すGPC分析装置で測定し、クロロホルムを移動相として、ポリスチレン換算の分子量を求めた。システムとして、ウオーターズ(Waters)社製GPCシステムを用い、カラムに、昭和電工(株)製Shodex K−804(ポリスチレンゲル)を用いた。
【0084】
<重合反応の転化率測定法>
本実施例に示す重合反応の転化率は以下に示す分析装置、条件で測定した。
使用機器:(株)島津製作所製ガスクロマトグラフィーGC−14B
分離カラム:J&W SCIENTIFIC INC製、キャピラリーカラムDB−17、0.35mmφ×30m
分離条件:初期温度50℃、3.5分間保持
昇温速度40℃/min
最終温度140℃、1.5分間保持
インジェクション温度250℃
ディテクター温度250℃
試料調整:サンプルを酢酸エチルにより約10倍に希釈し、アセトニトリルを内部標準物質とした。
【0085】
(製造例1)アクリル系ブロック共重合体(A)の製造
窒素置換した500L反応器に、アクリル系重合体ブロックを構成する単量体として、BA83kgを仕込み、続いて臭化第一銅580gを仕込んで攪拌を開始した。その後、2、5−ジブロモアジピン酸ジエチル583gをアセトニトリル7kgに溶解させた溶液を仕込み、ジャケットを加温して内温75℃で30分間保持した。その後、ペンタメチルジエチレントリアミン70gを加えて、アクリル系重合体ブロックの重合を開始した。重合開始から一定時間ごとに、重合溶液からサンプリング用として重合溶液約2gを抜き取り、サンプリング溶液のガスクロマトグラム分析によりBAの転化率を決定した。ペンタメチルジエチレントリアミンを随時加えることで重合速度を制御した。
【0086】
BAの転化率が97%に到達したところで、トルエン82.5g、塩化第一銅400g、ペンタメチルジエチレントリアミン70g、およびメタアクリル系重合体ブロックを構成する単量体として、MMA36kgを加えて、メタアクリル系重合体ブロックの重合を開始した。MMAの転化率が90%に到達したところで、トルエン120kgを加えて反応溶液を希釈すると共に反応器を冷却して重合を停止させた。
【0087】
得られたアクリル系ブロック共重合体の溶液に対しトルエンを加えて重合体濃度を25重量%とした。この溶液にp−トルエンスルホン酸一水和物を1.6kg加え、反応器内を窒素置換し、30℃で3時間撹拌した。反応液をサンプリングし、溶液が無色透明になっていることを確認して、昭和化学工業製ラヂオライト#3000を2.3kg添加した。その後、濾材としてポリエステルフェルトを備えた加圧濾過機を用いて0.1〜0.4MPaGにて加圧濾過し、固体分を分離した。
【0088】
得られた酸性の溶液に、固体塩基として協和化学製キョーワード500SHを1.6kg加え、30℃で1時間撹拌した。その後、濾材としてポリエステルフェルトを備えた加圧濾過機を用いて0.1〜0.4MPaGにて加圧濾過して固体分を分離した。得られた重合体溶液に、イルガノックス1010(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)を重合体の重量に対して0.6重量部加えた後、SCP100((株)栗本鐵工所製、伝熱面積1m2)を用いて溶媒成分を蒸発した。重合体はφ4mmのダイスを通してストランドとし、水槽で冷却後ペレタイザーにより重合体ペレットを得た。
【0089】
得られたアクリル系ブロック共重合体(A)のGPC分析を行ったところ、数平均分子量(Mn)が109,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.31であった。
【0090】
(製造例2)アクリル系ブロック共重合体(B)
窒素置換した500L反応器に、アクリル系重合体ブロックを構成する単量体として、BA80.9kgおよびTBA2.1kgを仕込み、続いて臭化第一銅580gを仕込んで攪拌を開始した。その後、2、5−ジブロモアジピン酸ジエチル583gをアセトニトリル7.3kgに溶解させた溶液を仕込み、ジャケットを加温して内温75℃で30分間保持した。その後、ペンタメチルジエチレントリアミン70gを加えて、アクリル系重合体ブロックの重合を開始した。重合開始から一定時間ごとに、重合溶液からサンプリング用として重合溶液約100gを抜き取り、サンプリング溶液のガスクロマトグラム分析によりBAの転化率を決定した。ペンタメチルジエチレントリアミンを随時加えることで重合速度を制御した。
【0091】
BAの転化率が97%に到達したところで、トルエン82.5kg、塩化第一銅400g、ペンタメチルジエチレントリアミン70g、およびメタアクリル系重合体ブロックを構成する単量体として、MMA35.6kgを加えて、メタアクリル系重合体ブロックの重合を開始した。MMAの転化率が90%に到達したところで、トルエン120kgを加えて反応溶液を希釈すると共に反応器を冷却して重合を停止させた。
【0092】
得られたアクリル系ブロック共重合体の溶液に対しトルエンを加えて重合体濃度を25重量%とした。この溶液にp−トルエンスルホン酸一水和物を1.6kg加え、反応器内を窒素置換し、150℃で4時間撹拌し、TBAのt−ブチル基をカルボキシル基に変換した。その後、濾過助剤として昭和化学工業製ラヂオライト#3000を2.3kg添加し、濾材としてポリエステルフェルトを備えた加圧濾過機を用いて0.1〜0.4MPaGにて加圧濾過し、固体分を分離した。
【0093】
得られた酸性の溶液を再び500L反応器に投入し、固体塩基として協和化学製キョーワード500SHを3.4kg加え、30℃で1時間撹拌した。その後、濾材としてポリエステルフェルトを備えた加圧濾過機を用いて0.1〜0.4MPaGにて加圧濾過して固体分を分離し、目的とするアクリル系ブロック共重合体(B)の溶液を得た。得られた重合体溶液に、イルガノックス1010(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)を重合体の重量に対して0.6重量部加えた後、SCP100((株)栗本鐵工所製、伝熱面積1m2)を用いて溶媒成分を蒸発した。重合体はφ4mmのダイスを通してストランドとし、水槽で冷却後ペレタイザーにより重合体ペレットを得た。
【0094】
得られたアクリル系ブロック共重合体(B)のGPC分析を行ったところ、数平均分子量(Mn)が109,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.34であった。
【0095】
【表1】

【0096】
(実施例1)
アクリル系ブロック共重合体(A)およびアクリル系ブロック共重合体(B)を、重量比75/25となるように計量し、固形分濃度30重量%となるようにトルエンに溶解させた。このトルエン溶液を用いて、厚み50μmのPETフィルム上に粘着層厚み30μmとなるよう、コーターを用いてコーティングし、粘着テープを作成した。この粘着テープを、JIS Z−0237に準じてステンレス板に幅25mm×長さ125mmとして貼り付け、試験片とし、以下の各試験を実施した。
【0097】
(実施例2)
アクリル系ブロック共重合体(A)およびアクリル系ブロック共重合体(B)を、重量比50/50とした以外は実施例1と同様にして各試験を実施した。
【0098】
(実施例3)
アクリル系ブロック共重合体(A)およびアクリル系ブロック共重合体(B)を、重量比25/75とした以外は実施例1と同様にして各試験を実施した。
【0099】
(比較例1)
アクリル系ブロック共重合体(A)のみを用い、固形分濃度30重量%となるようにトルエンに溶解させた。このトルエン溶液を用いて、厚み50μmのPETフィルム上に粘着層厚み30μmとなるよう、コーターを用いてコーティングし、粘着テープを作成した。この粘着テープを用いて実施例1と同様の各試験を実施した。
【0100】
(比較例2)
アクリル系ブロック共重合体(B)のみを用いた以外は比較例1と同様にして各試験を実施した。
【0101】
(粘着力試験)
JIS Z−0237に基づき、ステンレス板に粘着テープを貼り付けた試験片を、雰囲気温度23℃、剥離角度180°、引張速度300mm/分の条件で接着力を測定した。結果を表2に示した。
【0102】
(ボールタック試験)
JIS Z−0237に基づき、傾斜角30度でのボールタックを測定した。結果を表2に示した。
【0103】
(保持力試験)
JIS Z−0237に基づき、ステンレス板に粘着テープを貼り付けた試験片を、雰囲気温度80℃、荷重1kgfで保持力を測定した。結果を表2に示した。>5hとは、5時間経過後にも落下およびズレが生じなかったことを示す。
【0104】
【表2】

【0105】
表2に示したように、アクリル系ブロック共重合体(A)とアクリル系ブロック共重合体(B)を種々の比率で配合した粘着剤(実施例1〜3)は、アクリル系ブロック共重合体(A)とアクリル系ブロック共重合体(B)の各々の粘着力(比較例1、2)から重量換算で単純に平均した値よりも大きな粘着力を示した。さらに、(A)/(B)が70/30〜1/99の範囲である実施例2および3については、(A)および(B)単独よりも大きな粘着力を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタアクリル系重合体ブロック(a1)、およびアクリル系重合体ブロック(b1)からなり、かつ数平均分子量(Mn)が10,000〜300,000であるアクリル系ブロック共重合体(A)と、
メタアクリル系重合体ブロック(a2)、およびアクリル系重合体ブロック(b2)からなり、(a2)もしくは(b2)の少なくとも一方の重合体ブロック中にカルボキシル基および/または酸無水物基を含有し、かつ数平均分子量(Mn)が10,000〜300,000であるアクリル系ブロック共重合体(B)、
とを含むことを特徴とする粘着剤。
【請求項2】
アクリル系ブロック共重合体(B)に含有されるカルボキシル基および/または酸無水物である官能基が、アクリル系重合体ブロック(b2)に含有されていることを特徴とする請求項1に記載の粘着剤。
【請求項3】
アクリル系ブロック共重合体(A)およびアクリル系ブロック共重合体(B)が、いずれもトリブロック共重合体であることを特徴とする請求項1または2に記載の粘着剤。
【請求項4】
アクリル系ブロック共重合体(B)におけるカルボキシル基および/または酸無水物基の割合が、0.1〜30重量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の粘着剤。
【請求項5】
アクリル系ブロック共重合体(A)およびアクリル系ブロック共重合体(B)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が、いずれも1.8以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の粘着剤。
【請求項6】
アクリル系ブロック共重合体(A)とアクリル系ブロック共重合体(B)の重量比(A)/(B)が、70/30〜1/99であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の粘着剤。
【請求項7】
アクリル系ブロック共重合体(A)およびアクリル系ブロック共重合体(B)が、有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤とし、Fe、Ru、Ni、Cuから選ばれる少なくとも1種類を中心金属とする金属錯体を触媒とする原子移動ラジカル重合法により製造されたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の粘着剤。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の粘着剤を用いてなるホットメルト粘着剤。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載の粘着剤を用いてなる粘着シート。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれかに記載の粘着剤を用いてなる再剥離型粘着シート。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれかに記載の粘着剤を用いてなる表面保護材。
【請求項12】
多層共押出により製造されたものであることを特徴とする請求項9に記載の粘着シート。
【請求項13】
多層共押出により製造されたものであることを特徴とする請求項10に記載の再剥離型粘着シート。
【請求項14】
多層共押出により製造されたものであることを特徴とする請求項11に記載の表面保護材。

【公開番号】特開2010−70597(P2010−70597A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−237347(P2008−237347)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】