説明

粘着型光学フィルムおよび画像表示装置

【課題】光学フィルムの少なくとも片面に粘着剤層が積層されている粘着型光学フィルムであって、粘着剤層が積層される側の光学フィルムが、低透湿性の材料により形成さている場合であっても、高温環境下における耐久性が高く、かかる環境下での発泡を抑制することができる、粘着型光学フィルムを提供すること。
【解決手段】粘着剤層の平衡水分率(a)が0.5重量%以下、ズレ量(b)が、600μm以下であり、かつ、前記平衡水分率(a)、前記ズレ量(b)が、b<1036.4×e−5.124a、を満足し、かつ、前記粘着剤層は、アクリル系ポリマーおよび架橋剤を含む粘着剤により形成されており、前記アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよびカルボキシル基含有モノマーをモノマーユニットとして含有し、かつ、前記光学フィルムは、偏光板であって、少なくとも片面の透明保護フィルムが透湿度が1000g/m・24h以下であり、当該透明保護フィルムに、粘着剤層が積層されている粘着型光学フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルムの少なくとも片面に粘着剤層が積層されている粘着型光学フィルムに関する。また本発明は、前記粘着型光学フィルムを用いた液晶表示装置、有機EL表示装置、PDP等の画像表示装置に関する。前記光学フィルムとしては、偏光板、位相差板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、さらにはこれらが積層されているものなどがあげられる。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、その画像形成方式から液晶セルの両側に偏光素子を配置することが必要不可欠であり、一般的には偏光子の片面または両面に透明保護フィルムを貼り合わせた偏光板が貼着されている。また液晶パネルには偏光板の他に、ディスプレイの表示品位を向上させるために様々な光学素子が用いられるようになってきている。例えば、着色防止としての位相差板、液晶ディスプレイの視野角を改善するための視野角拡大フィルム、さらにはディスプレイのコントラストを高めるための輝度向上フィルム等が用いられる。これらのフィルムは総称して光学フィルムと呼ばれる。
【0003】
前記光学フィルムを液晶セルに貼着する際には、通常、粘着剤が使用される。また、光学フィルムと液晶セル、または光学フィルム間の接着は、通常、光の損失を低減するため、それぞれの材料は粘着剤を用いて密着されている。このような場合に、光学フィルムを固着させるのに乾燥工程を必要としないこと等のメリットを有することから、粘着剤は、光学フィルムの片側に予め粘着剤層として設けられた粘着型光学フィルムが一般的に用いられる。
【0004】
前記偏光板に用いられる透明保護フィルムとしては、トリアセチルセルロースフィルムが賞用されてきた。しかしながら、トリアセチルセルロースは耐湿熱性が十分でなく、トリアセチルセルロースフィルムを透明保護フィルムとして用いた偏光板を高温または高湿下において使用すると、偏光度や色相等の偏光板の性能が低下するという欠点があった。またトリアセチルセルロースフィルムは斜め方向の入射光に対して位相差を生じる。かかる位相差は、近年、液晶ディスプレイの大型化が進むにしたがい、顕著に視野角特性に影響を及ぼす。上記の問題を解決するために、透明保護フィルムの材料としてトリアセチルセルロースの代わりに環状オレフィン系樹脂が提案されている。環状オレフィン系樹脂は透湿性が低く、また斜め方向の位相差がほとんど無い。
【0005】
しかし、透明保護フィルムの材料として環状オレフィン系樹脂を用いた偏光板に係わる粘着型光学フィルムは、環状オレフィン系樹脂の低透湿性ゆえに、これをガラス基板に貼り合せた状態で、高温環境下に放置する耐久性において発泡が生じる問題がある。かかる発泡に係わる問題は、透明保護フィルムの材料として、トリアセチルセルロースでは起こらなかった問題である。
【0006】
前記粘着型光学フィルムにおける、発泡に関する問題を制御する方法としては、例えば、飽和吸水率が0.60重量%以下で、かつ剥離側被着体に対する90度剥離接着力が600g/20mm以下である粘着剤層を用いることが提案されている(特許文献1)。前記特許文献1では、飽和吸水率を小さく制御することで発泡を抑制できることは記載されている。しかし、偏光板の透明保護フィルムの材料として低透湿性の環状オレフィン系樹脂を用いた場合においては、単に、飽和吸水率を低下させるのみでは、発泡を抑えることはできていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−281336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、光学フィルムの少なくとも片面に粘着剤層が積層されている粘着型光学フィルムであって、粘着剤層が積層される側の光学フィルムが、低透湿性の材料により形成さている場合であっても、高温環境下における耐久性が高く、かかる環境下での発泡を抑制することができる、粘着型光学フィルムを提供することを目的とする。
【0009】
また本発明は、前記粘着型光学フィルムを用いた画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、下記粘着型光学フィルム等を見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち本発明は、光学フィルムの少なくとも片面に粘着剤層が積層されている粘着型光学フィルムにおいて、
前記粘着剤層は、平衡水分率(a)が0.5重量%以下であり、
厚み25μm、10mm×10mmの接着面積にて、500gfの引張り剪断応力を負荷したときの23℃での1時間後のズレ量(b)が、600μm以下であり、
かつ、前記平衡水分率(a)、前記ズレ量(b)が、
b<1036.4×e−5.124a
を満足することを特徴とする粘着型光学フィルム、に関する。
【0012】
前記粘着型光学フィルムにおいて、前記平衡水分率(a)が0.02重量%以上であり、かつ、前記ズレ量(b)が20μm以上であることが好ましい。
【0013】
上記のように、本発明では、粘着剤層を、平衡水分率(a)とクリープ特性に係わるズレ量(b)の観点から制御している。このように、平衡水分率(a)とズレ量(b)を制御することで、粘着剤層が積層される側の光学フィルムが、低透湿性の材料により形成さている場合であっても、高温環境下における耐久性が高くなり、かかる環境下での発泡を抑制することができる。
【0014】
前記粘着剤層は、平衡水分率(a)が0.5重量%以下である。平衡水分率(a)は粘着剤層に最終的に残存する水分量を示し、最終的に残存する水分量を低くするほど、発泡抑制に効果がある。平衡水分率(a)が0.5重量%を超える場合には、ズレ量(b)を小さく制御したとしても、耐久性試験における発泡を十分に抑制することができない。また、クリープ特性に係わるズレ量(b)は、600μm以下である。ズレ量(b)が、600μmを超える場合には、平衡水分率(a)を小さく制御したとしても、耐久性試験における発泡を十分に抑制することができない。また、本発明の粘着剤層は、平衡水分率(a)およびズレ量(b)は、前記範囲を満足するとともに、b<1036.4×e−5.124a、を満足するように制御されている。平衡水分率(a)およびズレ量(b)は、いずれも小さくなるように制御することが好ましいが、前記関係を満足するように制御されることで、耐久性試験における発泡を抑制することができる。
【0015】
なお、発泡抑制の点からは、理想的には、平衡水分率(a)は0重量%、ズレ量(b)は0μmである。ただし、平衡水分率(a)については0.02重量%以上、さらには0.03重量%以上であるのが、接着力(粘着力)が下がることによる不都合を抑えるうえで好ましい。また、通常、ズレ量(b)については20μm以上を有するのが好ましい。ズレ量(b)を小さくしすぎると、目的とする発泡を抑制することができても、耐熱や耐湿などの耐久性試験において、液晶パネルから光学フィルムが剥れる不具合を生じるおそれがある。かかる観点からズレ量(b)は、30μm以上がより好ましく、更には40μm以上が好ましい。
【0016】
前記粘着型光学フィルムにおいて、前記粘着剤層は、平衡水分率(a)が0.15重量%以下である場合には、ズレ量(b)が、600μm以下であること好ましい。特に、平衡水分率(a)は、0.15重量%以下の場合、ズレ量(b)は、540μm以下であるのが好ましく、さらには300μm以下、さらには140μm以下、さらには75μm未満であるのが好ましい。かかる範囲内において、平衡水分率(a)は、0.13重量%以下、さらには0.12重量%以下、さらには0.11重量%以下であるのが好ましい。
【0017】
前記粘着型光学フィルムにおいて、前記粘着剤層は、平衡水分率(a)が0.15重量%を超え0.25重量%以下である場合には、ズレ量(b)が、350μm以下であることが好ましい。特に、平衡水分率(a)は、0.15重量%を超え0.25重量%以下の場合、ズレ量(b)は、240μm以下であるのが好ましく、さらには130μm以下、さらには75μm未満であるのが好ましい。かかる範囲内において、平衡水分率(a)は、0.23重量%以下、さらには0.22重量%以下、さらには0.21重量%以下であるのが好ましい。
【0018】
前記粘着型光学フィルムにおいて、前記粘着剤層は、平衡水分率(a)が0.25重量%を超え0.5重量%以下である場合には、ズレ量(b)が、150μm以下であることが好ましい。特に、平衡水分率(a)は、0.25重量%を超え0.5重量%以下の場合、ズレ量(b)は、100μm以下であるのが好ましく、さらには75μm未満であるのが好ましい。かかる範囲内において、平衡水分率(a)は、0.45重量%以下、さらには0.43重量%以下であるのが好ましい。
【0019】
前記粘着型光学フィルムにおいて、前記粘着剤層は、平衡水分率(a)が0.05重量%以上0.25重量%以下である場合には、前記平衡水分率(a)、前記ズレ量(b)は、b≦−541.67a+209.58、を満足することが好ましい。かかる関係を満足する場合は、特に耐久性試験における発泡を抑制するうえで好ましい。特に、前記関係の式は、平衡水分率(a)が0.07〜0.22重量%の範囲で満足することが好ましい。
【0020】
前記粘着型光学フィルムは、粘着剤層が積層される側の光学フィルムが、80℃、90%R.H.での透湿度が1000g/m・24h以下である場合に好適である。本発明は、かかる低透湿性の材料を用いる場合に有効に適用され、耐久性試験における発泡を抑制することができる。
【0021】
前記粘着型光学フィルムは、光学フィルムとして、偏光子の少なくとも片面に透明保護フィルムを設けた偏光板である場合に好適に適用できる。特に、少なくとも片面の透明保護フィルムが、80℃、90%R.H.での透湿度が1000g/m・24h以下であり、当該透明保護フィルムに、粘着剤層が積層されている場合に好適である。
【0022】
前記粘着型光学フィルムにおいて、前記粘着剤層は、アクリル系ポリマーおよび架橋剤を含む粘着剤により形成されているものを好適に用いることができる。
【0023】
また本発明は、前記粘着型光学フィルムを少なくとも1枚用いた画像表示装置、に関する。本発明の粘着型光学フィルムは、液晶表示装置等の画像表示装置の各種の使用態様に応じて、1枚または複数のものを組み合わせて用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】粘着剤層について、本発明の範囲を満足するもの(実施例)と満足しないもの(比較例)をプロットした図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の粘着型光学フィルムは、光学フィルムの少なくとも片面に粘着剤層が積層されたものである。なお、前記粘着剤層は光学フィルムの片面を設けていてもよく、光学フィルムの両面に有していてもよい。
【0026】
粘着剤層の形成には、前記平衡水分率(a)の値、前記ズレ量(b)の値、および前記これらの関係式を満足できる適宜な粘着剤を用いることができ、その種類について特に制限はない。粘着剤としては、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリビニルアルコール系粘着剤、ポリビニルピロリドン系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤、セルロース系粘着剤などがあげられる。
【0027】
これら粘着剤のなかでも、光学的透明性に優れ、適宜な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れるものが好ましく使用される。このような特徴を示すものとしてアクリル系粘着剤が好ましく使用される。アクリル系粘着剤は、平衡水分率(a)を低く、かつ、ズレ量(b)を小さく設計できる点でも好ましい。
【0028】
アクリル系粘着剤は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルのモノマーユニットを主骨格とするアクリル系ポリマーをベースポリマーとする。なお、(メタ)アクリル酸アルキルエステルはアクリル酸アルキルエステルおよび/またはメタクリル酸アルキルエステルをいい、本発明の(メタ)とは同様の意味である。アクリル系ポリマーの主骨格を構成する、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基の炭素数1〜20のものを例示できる。例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸イソミリスチル、(メタ)アクリル酸ラウリル等を例示できる。これらは単独であるいは組み合わせて使用することができる。これらアルキル基の平均炭素数は3〜9であるのが好ましい。
【0029】
前記アクリル系ポリマーのなかでも、平衡水分率(a)を低く制御する観点から、疎水性の高い(メタ)アクリル酸アルキルエステルのモノマーユニットを主骨格とするアクリルポリマーをベースポリマーとすることが好ましい。一般に(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、前記の光学透明性、適度な濡れ性と凝集力、接着力、耐候性や耐熱性などの点から、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基の炭素数3〜9のもの、好ましくは4〜8のものが実用上好ましく用いられる。これらアルキル基のなかでも、アルキル基の炭素数が大きい程、疎水性が高くなり、当該平衡水分率を低くするうえで好ましい。かかる(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソオクチルがあげられる。これらのなかでも疎水性が高い(メタ)アクリル酸イソオクチルが好ましい。
【0030】
前記アクリル系ポリマー中には、接着性や耐熱性の改善を目的に、1種類以上の共重合モノマーを共重合により導入することができる。そのような共重合モノマーの具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリルや(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレートなどのヒドロキシル基含有モノマー;(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物基含有モノマー;アクリル酸のカプロラクトン付加物;スチレンスルホン酸やアリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などのスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどの燐酸基含有モノマーなどがあげられる。
【0031】
また、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミドやN−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミドなどの(N−置換)アミド系モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルなどの(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキル系モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミドやN−(メタ)アクリロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンスクシンイミド、N−アクリロイルモルホリンなどのスクシンイミド系モノマー;N−シクロヘキシルマレイミドやN−イソプロピルマレイミド、N−ラウリルマレイミドやN−フェニルマレイミドなどのマレイミド系モノマー;N−メチルイタコンイミド、N−エチルイタコンイミド、N−ブチルイタコンイミド、N−オクチルイタコンイミド、N−2−エチルヘキシルイタコンイミド、N−シクロヘキシルイタコンイミド、N−ラウリルイタコンイミドなどのイタコンイミド系モノマー、なども改質目的のモノマー例としてあげられる。
【0032】
さらに改質モノマーとして、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N−ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン、N−ビニルカルボン酸アミド類、スチレン、α−メチルスチレン、N−ビニルカプロラクタムなどのビニル系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアノアクリレート系モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有アクリル系モノマー;(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコールなどのグリコール系アクリルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、フッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートや2−メトキシエチルアクリレートなどのアクリル酸エステル系モノマーなども使用することができる。
【0033】
アクリル系ポリマー中の前記共重合モノマーの割合は、特に制限されないが、全構成モノマーの重量比率において、0〜30%程度、さらには0.1〜15%程度であるのが好ましい。
【0034】
これら共重合モノマーの中でも、光学フィルム用途として液晶セルへの接着性、耐久性の点から、ヒドロキシル基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー、酸無水物基含有モノマーが好ましく用いられる。これらモノマーは、架橋剤との反応点になる。ヒドロキシル基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー、酸無水物モノマーなどは分子間架橋剤との反応性に富むため、得られる粘着剤層の凝集性や耐熱性の向上のために好ましく用いられるが、このような官能基を有する場合には平衡水分率(a)を上昇させる傾向にあることから、より疎水性が高く、少量の共重合で高い反応性を示すものを用いるのが好ましい。例えば、ヒドロキシル基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルを用いるよりも、好ましくは(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、更に好ましくは(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシルのように、ヒドロキシアルキル基のアルキル基の大きいものを用いるのが好ましい。また、前述の通り、ヒドロキシル基含有モノマーは、平衡水分率(a)を上昇させる傾向にあることから、最小限の使用が好ましく、共重合モノマーとしてヒドロキシル基含有モノマーを用いる場合、その割合は全構成モノマーの重量比率において、0.01〜5%、さらには0.01〜3%であるのが好ましい。また、共重合モノマーとしてカルボキシル基含有モノマーを用いる場合、その割合は全構成モノマーの重量比率において、0.01〜10%、さらには0.01〜7%であるのが好ましい。
【0035】
また、前記共重合モノマーとしては、平衡水分率(a)を低く制御する観点から、疎水性の高い共重合モノマーを用いることが好ましい。例えば、マレイミド系モノマー、イタコンイミド系モノマーは、これらモノマーを共重合して得られるアクリル系ポリマーの平衡水分率(a)をほとんど上昇させない特性も持つため、接着性の改質モノマーとしては好ましく用いられる。
【0036】
アクリル系ポリマーの平均分子量は特に制限されないが、重量平均分子量は、30万〜250万程度であるのが好ましい。前記アクリル系ポリマーの製造は、各種公知の手法により製造でき、例えば、バルク重合法、溶液重合法、懸濁重合法等のラジカル重合法を適宜選択できる。ラジカル重合開始剤としては、アゾ系、過酸化物系の各種公知のものを使用できる。反応温度は通常50〜80℃程度、反応時間は1〜8時間とされる。また、前記製造法の中でも溶液重合法が好ましく、アクリル系ポリマーの溶媒としては一般に酢酸エチル、トルエン等が用いられる。溶液濃度は通常20〜80重量%程度とされる。
【0037】
また前記粘着剤は、架橋剤を含有する粘着剤組成物とするのが好ましい。粘着剤に配合できる多官能化合物としては、有機系架橋剤や多官能性金属キレートがあげられる。有機系架橋剤としては、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、イミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、などがあげられる。これら架橋剤は1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。有機系架橋剤としてはイソシアネート系架橋剤が好ましい。また、イソシアネート系架橋剤は過酸化物系架橋剤と組み合わせて好適に用いられる。多官能性金属キレートは、多価金属が有機化合物と共有結合または配位結合しているものである。多価金属原子としては、Al、Cr、Zr、Co、Cu、Fe、Ni、V、Zn、In、Ca、Mg、Mn、Y、Ce、Sr、Ba、Mo、La、Sn、Ti等があげられる。共有結合または配位結合する有機化合物中の原子としては酸素原子等があげられ、有機化合物としてはアルキルエステル、アルコール化合物、カルボン酸化合物、エーテル化合物、ケトン化合物等があげられる。
【0038】
アクリル系ポリマー等のベースポリマーと架橋剤の配合割合は特に限定されないが、通常、ベースポリマー(固形分)100重量部に対して、架橋剤(固形分)0.001〜20重量部程度が好ましく、さらには0.01〜15重量部程度が好ましい。前記架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、過酸化物系架橋剤が好ましい。過酸化物系架橋剤は、ベースポリマー(固形分)100重量部に対して、0.02〜2重量部程度が好ましく、さらには0.05〜1重量部程度が好ましい。イソシアネート系架橋剤は、ベースポリマー(固形分)100重量部に対して、0.001〜2重量部程度が好ましく、さらには0.01〜1.5重量部程度が好ましい。また、イソシアネート系架橋剤および過酸化物系架橋剤は、前記範囲で用いることができる他、これらを併用して好ましく用いることができる。
【0039】
さらには、前記粘着剤には、必要に応じて、粘着付与剤、可塑剤、ガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉、その他の無機粉末等からなる充填剤、顔料、着色剤、充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤等を、また本発明の目的を逸脱しない範囲で各種の添加剤を適宜に使用することもできる。また微粒子を含有して光拡散性を示す粘着剤層などとしても良い。
【0040】
添加剤としては、シランカップリング剤が好適であり、ベースポリマー(固形分)100重量部に対して、シランカップリング剤(固形分)0.001〜10重量部程度が好ましく、さらには0.005〜5重量部程度を配合するのが好ましい。シランカップリング剤としては、従来から知られているものを特に制限なく使用できる。例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有シランカップリング剤、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)プロピルアミンなどのアミノ基含有シランカップリング剤、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどの(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基含有シランカップリング剤を例示できる。
【0041】
本発明の粘着剤層の平衡水分率(a)、前記ズレ量(b)を前記範囲および関係を満足するように制御するには、例えば、ベースモノマー、共重合モノマーの種類、その配合割合、架橋剤の種類、その配合量、添加剤の種類、その配合量等を制御することにより行うことができる。
【0042】
前述のように、粘着剤層の平衡水分率(a)を低く制御する観点から、疎水性の高いモノマーを用いるのが好ましい。一方、ズレ量(b)を小さくするには、より凝集性の高いものにする必要がある。ズレ量(b)を小さくする方法として、例えば、ベースポリマーの分子量を上げたり、ベースポリマーに高ガラス転移温度のモノマーを共重合したり、架橋剤の添加量を増やして架橋度を上げたりすることが効果的に適用される。ベースポリマーとして、一般的には、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、実用上よく用いられる直鎖状または分岐鎖状のアルキル基の炭素数3〜9のモノマーユニットで構成されるアクリル系ポリマーを用いる場合においては、アルキル基の炭素数が大きい程、ガラス転移温度も低くなり、一般的に凝集性の低いアクリル系ポリマーが得られ、ズレ量(b)を大きくする傾向にある。また、共重合モノマーとして、例えばアクリル酸などのカルボキシル基含有モノマーを用いたアクリル系ポリマーは、形成される粘着剤層の凝集性向上に大きく寄与することがよく知られており、ズレ量(b)を小さくする傾向にあるが、同時に平衡水分率(a)を高くする傾向にある。このように、平衡水分率(a)とズレ量(b)とは、幾分かのトレードオフの関係があるため、組成の選定には十分な配慮が必要である。本発明においてはベースモノマー(例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル)、共重合モノマーを選択してベースポリマーを調製し、飽和水分率やその配合割合、架橋度を制御して、前記所定の残存水分率(a)とズレ量(b)を満足するように粘着剤層を形成する。
【0043】
本発明の粘着型光学フィルムの粘着剤層と光学フィルムとの間には、アンカーコート層設けることもできる。アンカーコート層を形成する材料は特に限定されないが、粘着剤層と光学フィルムのいずれにも良好な密着性を示し、凝集力に優れる皮膜を形成するものが望ましい。このような性質を示すものには、各種ポリマー類、金属酸化物のゾル、シリカゾル等を使用できる。これらのなかでも特にポリマー類が好ましく用いられる。
【0044】
前記ポリマー類としては、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、分子中にアミノ基を含むポリマー類があげられる。ポリマー類の使用形態は溶剤可溶型、水分散型、水溶解型のいずれでもよい。例えば、水溶性ポリウレタン、水溶性ポリエステル、水溶性ポリアミド等や水分散性樹脂(エチレン−酢酸ビニル系エマルジョン、(メタ)アクリル系エマルジョンなど)が挙げられる。また、水分散型は、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド等の各種の樹脂を乳化剤を用いてエマルジョン化したものや、前記樹脂中に、水分散性親水基のアニオン基、カチオン基またはノニオン基を導入して自己乳化物としたもの等を用いることができる。またイオン高分子錯体を用いることができる。
【0045】
本発明の粘着型光学フィルムに使用される光学フィルムとしては、液晶表示装置等の画像表示装置の形成に用いられるものが使用され、その種類は特に制限されないが、80℃、90%R.H.での透湿度が1000g/m・24h以下であるものへの適用が好適である。透湿度が800g/m・24h以下、さらには500g/m・24h以下、さらには200g/m・24h以下のものを用いる場合に、特に本発明は好適である。
【0046】
かかる、透湿度を有する材料としては、例えば、ポリカーボネート系ポリマー;アリレート系ポリマー;ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー;ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、シクロ系ないしはノルボルネン構造を有する環状オレフィン系樹脂、またはこれらの混合体を用いることができる。
【0047】
また、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルム、たとえば、(A)側鎖に置換および/または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、(B)側鎖に置換および/または非置換フェニルならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物があげられる。具体例としてはイソブチレンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体とアクリロニトリル・スチレン共重合体とを含有する樹脂組成物のフィルムがあげられる。フィルムは樹脂組成物の混合押出品などからなるフィルムを用いることができる。
【0048】
前記材料のなかでも、環状オレフィン系樹脂が好ましい。環状オレフィン系樹脂は一般的な総称であり、たとえば、特開平3−14882号公報、特開平3−122137号公報等に記載されている。具体的には環状オレフィンの開環重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレン等のα−オレフィンとのランダム共重合体、またこれらを不飽和カルボン酸やその誘導体等で変性したグラフト変性体等が例示できる。さらには、これらの水素化物があげられる。環状オレフィンは特に限定するものではないが、例えば、ノルボルネン、テトラシクロドデセンや、それらの誘導体が例示できる。商品としては、日本ゼオン(株)製のゼオネックス、ゼオノア、JSR(株)製のアートン、TICONA社製のトーパス等があげられる。
【0049】
前記低透湿度の材料から形成される光学フィルムは、例えば、偏光子の透明保護フィルム、位相差フィルム等として用いられる。
【0050】
本発明の粘着型光学フィルムに使用される光学フィルムとしては、例えば、偏光板があげられる。偏光板は偏光子の片面または両面には透明保護フィルムを有するものが一般に用いられる。
【0051】
偏光子は、特に限定されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等があげられる。これらの中でも、ポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光子が好適である。これらの偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に5〜80μm程度である。
【0052】
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作成することができる。必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を含んでいても良いヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸しても良いし、また延伸してからヨウ素で染色しても良い。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液や水浴中でも延伸することができる。
【0053】
前記偏光子の片面または両面に設けられる透明保護フィルムを形成する材料としては、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れるものが好ましい。前記粘着剤層が貼り合わされる側には、前記低透湿度の材料の透明保護フィルムが好適に適用されるが、他の側には、前記低透湿度の材料以外の材料、例えば、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマーなどがあげられる。また、塩化ビニル系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、または前記ポリマーのブレンド物なども前記透明保護フィルムを形成するポリマーの例としてあげられる。透明保護フィルムは、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型、紫外線硬化型の樹脂の硬化層として形成することもできる。
【0054】
透明保護フィルムの厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性、薄膜性などの点より1〜500μm程度である。特に、5〜200μmが好ましい。
【0055】
また、透明保護フィルムは、できるだけ色付きがないことが好ましい。従って、Rth=(nx−nz)・d(ただし、nxはフィルム平面内の遅相軸方向の屈折率、nzはフィルム厚方向の屈折率、dはフィルム厚みである)で表されるフィルム厚み方向の位相差が−90nm〜+75nmである透明保護フィルムが好ましく用いられる。かかる厚み方向の位相差値(Rth)が−90nm〜+75nmのものを使用することにより、透明保護フィルムに起因する偏光板の着色(光学的な着色)はほぼ解消することができる。厚み方向位相差(Rth)は、さらに好ましくは−80nm〜+60nm、特に−70nm〜+45nmが好ましい。
【0056】
なお、偏光子の両側に保護フィルムを設ける場合、その表裏で同じポリマー材料からなる透明保護フィルムを用いても良く、異なるポリマー材料等からなる保護フィルムを用いても良い。前記偏光子と透明保護フィルムとは通常、水系接着剤等を介して密着している。水系接着剤としては、イソシアネート系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ゼラチン系接着剤、ビニル系ラテックス系、水系ポリウレタン、水系ポリエステル等を例示できる。
【0057】
前記透明保護フィルムの偏光子を接着させない面には、ハードコート層や反射防止処理、スティッキング防止や、拡散ないしアンチグレアを目的とした処理を施したものであっても良い。
【0058】
ハードコート処理は偏光板表面の傷付き防止などを目的に施されるものであり、例えばアクリル系、シリコーン系などの適宜な紫外線硬化型樹脂による硬度や滑り特性等に優れる硬化皮膜を透明保護フィルムの表面に付加する方式などにて形成することができる。反射防止処理は偏光板表面での外光の反射防止を目的に施されるものであり、従来に準じた反射防止膜などの形成により達成することができる。また、スティッキング防止処理は他の部材の隣接層との密着防止を目的に施される。
【0059】
また、アンチグレア処理は偏光板の表面で外光が反射して偏光板透過光の視認を阻害することの防止等を目的に施されるものであり、例えばサンドブラスト方式やエンボス加工方式による粗面化方式や透明微粒子の配合方式などの適宜な方式にて透明保護フィルムの表面に微細凹凸構造を付与することにより形成することができる。前記表面微細凹凸構造の形成に含有させる微粒子としては、例えば平均粒径が0.5〜50μmのシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化スズ、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等からなる導電性の場合もある無機系微粒子、架橋又は未架橋のポリマー等からなる有機系微粒子(ビーズを含む)などの透明微粒子が用いられる。表面微細凹凸構造を形成する場合、微粒子の使用量は、表面微細凹凸構造を形成する透明樹脂100重量部に対して一般的に2〜50重量部程度であり、5〜25重量部が好ましい。アンチグレア層は、偏光板透過光を拡散して視覚などを拡大するための拡散層(視覚拡大機能など)を兼ねるものであっても良い。
【0060】
なお、前記反射防止層、スティッキング防止層、拡散層やアンチグレア層等は、透明保護フィルムそのものに設けることができるほか、別途光学層として透明保護フィルムとは別体のものとして設けることもできる。
【0061】
また光学フィルムとしては、例えば反射板や反透過板、位相差板(1/2や1/4等の波長板を含む)、視覚補償フィルム、輝度向上フィルムなどの液晶表示装置等の形成に用いられることのある光学層となるものがあげられる。これらは単独で光学フィルムとして用いることができる他、前記偏光板に、実用に際して積層して、1層または2層以上用いることができる。
【0062】
特に、偏光板に更に反射板または半透過反射板が積層されてなる反射型偏光板または半透過型偏光板、偏光板に更に位相差板が積層されてなる楕円偏光板または円偏光板、偏光板に更に視覚補償フィルムが積層されてなる広視野角偏光板、あるいは偏光板に更に輝度向上フィルムが積層されてなる偏光板が好ましい。
【0063】
反射型偏光板は、偏光板に反射層を設けたもので、視認側(表示側)からの入射光を反射させて表示するタイプの液晶表示装置などを形成するためのものであり、バックライト等の光源の内蔵を省略できて液晶表示装置の薄型化を図りやすいなどの利点を有する。反射型偏光板の形成は、必要に応じ透明保護層等を介して偏光板の片面に金属等からなる反射層を付設する方式などの適宜な方式にて行うことができる。
【0064】
反射型偏光板の具体例としては、必要に応じマット処理した透明保護フィルムの片面に、アルミニウム等の反射性金属からなる箔や蒸着膜を付設して反射層を形成したものなどがあげられる。また、前記透明保護フィルムに微粒子を含有させて表面微細凹凸構造とし、その上に微細凹凸構造の反射層を有するものなどもあげられる。前記した微細凹凸構造の反射層は、入射光を乱反射により拡散させて指向性やギラギラした見栄えを防止し、明暗のムラを抑制しうる利点などを有する。また微粒子含有の保護フィルムは、入射光及びその反射光がそれを透過する際に拡散されて明暗ムラをより抑制しうる利点なども有している。透明保護フィルムの表面微細凹凸構造を反映させた微細凹凸構造の反射層の形成は、例えば真空蒸着方式、イオンプレーティング方式、スパッタリング方式やメッキ方式などの適宜な方式で金属を透明保護層の表面に直接付設する方法などにより行うことができる。
【0065】
反射板は前記の偏光板の透明保護フィルムに直接付与する方式に代えて、その透明フィルムに準じた適宜なフィルムに反射層を設けてなる反射シートなどとして用いることもできる。なお反射層は、通常、金属からなるので、その反射面が透明保護フィルムや偏光板等で被覆された状態の使用形態が、酸化による反射率の低下防止、ひいては初期反射率の長期持続の点や、保護層の別途付設の回避の点などより好ましい。
【0066】
なお、半透過型偏光板は、上記において反射層で光を反射し、かつ透過するハーフミラー等の半透過型の反射層とすることにより得ることができる。半透過型偏光板は、通常液晶セルの裏側に設けられ、液晶表示装置などを比較的明るい雰囲気で使用する場合には、視認側(表示側)からの入射光を反射させて画像を表示し、比較的暗い雰囲気においては、半透過型偏光板のバックサイドに内蔵されているバックライト等の内蔵電源を使用して画像を表示するタイプの液晶表示装置などを形成できる。すなわち、半透過型偏光板は、明るい雰囲気下では、バックライト等の光源使用のエネルギーを節約でき、比較的暗い雰囲気下においても内蔵電源を用いて使用できるタイプの液晶表示装置などの形成に有用である。
【0067】
偏光板に更に位相差板が積層されてなる楕円偏光板または円偏光板について説明する。直線偏光を楕円偏光または円偏光に変えたり、楕円偏光または円偏光を直線偏光に変えたり、あるいは直線偏光の偏光方向を変える場合に、位相差板などが用いられる。特に、直線偏光を円偏光に変えたり、円偏光を直線偏光に変える位相差板としては、いわゆる1/4波長板(λ/4板とも言う)が用いられる。1/2波長板(λ/2板とも言う)は、通常、直線偏光の偏光方向を変える場合に用いられる。
【0068】
楕円偏光板はスーパーツイストネマチック(STN)型液晶表示装置の液晶層の複屈折により生じた着色(青又は黄)を補償(防止)して、前記着色のない白黒表示する場合などに有効に用いられる。更に、三次元の屈折率を制御したものは、液晶表示装置の画面を斜め方向から見た際に生じる着色も補償(防止)することができて好ましい。円偏光板は、例えば画像がカラー表示になる反射型液晶表示装置の画像の色調を整える場合などに有効に用いられ、また、反射防止の機能も有する。
【0069】
位相差板としては、高分子素材を一軸または二軸延伸処理してなる複屈折性フィルム、液晶ポリマーの配向フィルム、液晶ポリマーの配向層をフィルムにて支持したものなどがあげられる。位相差板の厚さも特に制限されないが、20〜150μm程度が一般的である。
【0070】
高分子素材としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルビニルエーテル、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリアリルスルホン、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、セルロース系重合体、ノルボルネン系樹脂、またはこれらの二元系、三元系各種共重合体、グラフト共重合体、ブレンド物などがあげられる。これらの高分子素材は延伸等により配向物(延伸フィルム)となる。
【0071】
液晶ポリマーとしては、例えば、液晶配向性を付与する共役性の直線状原子団(メソゲン)がポリマーの主鎖や側鎖に導入された主鎖型や側鎖型の各種のものなどをあげられる。主鎖型の液晶ポリマーの具体例としては、屈曲性を付与するスペーサー部でメソゲン基を結合した構造の、例えばネマチック配向性のポリエステル系液晶性ポリマー、ディスコティックポリマーやコレステリックポリマーなどがあげられる。側鎖型の液晶ポリマーの具体例としては、ポリシロキサン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート又はポリマロネートを主鎖骨格とし、側鎖として共役性の原子団からなるスペーサー部を介してネマチック配向付与性のパラ置換環状化合物単位からなるメソゲン部を有するものなどがあげられる。これらの液晶ポリマーは、例えば、ガラス板上に形成したポリイミドやポリビニルアルコール等の薄膜の表面をラビング処理したもの、酸化ケイ素を斜方蒸着したものなどの配向処理面上に液晶性ポリマーの溶液を展開して熱処理することにより行われる。
【0072】
位相差板は、例えば各種波長板や液晶層の複屈折による着色や視覚等の補償を目的としたものなどの使用目的に応じた適宜な位相差を有するものであって良く、2種以上の位相差板を積層して位相差等の光学特性を制御したものなどであっても良い。
【0073】
また、上記の楕円偏光板や反射型楕円偏光板は、偏光板又は反射型偏光板と位相差板を適宜な組合せで積層したものである。かかる楕円偏光板等は、(反射型)偏光板と位相差板の組合せとなるようにそれらを液晶表示装置の製造過程で順次別個に積層することによっても形成しうるが、前記の如く予め楕円偏光板等の光学フィルムとしたものは、品質の安定性や積層作業性等に優れて液晶表示装置などの製造効率を向上させうる利点がある。
【0074】
視覚補償フィルムは、液晶表示装置の画面を、画面に垂直でなくやや斜めの方向から見た場合でも、画像が比較的鮮明にみえるように視野角を広げるためのフィルムである。このような視覚補償位相差板としては、例えば位相差板、液晶ポリマー等の配向フィルムや透明基材上に液晶ポリマー等の配向層を支持したものなどからなる。通常の位相差板は、その面方向に一軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムが用いられるのに対し、視覚補償フィルムとして用いられる位相差板には、面方向に二軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムとか、面方向に一軸に延伸され厚さ方向にも延伸された厚さ方向の屈折率を制御した複屈折を有するポリマーや傾斜配向フィルムのような二方向延伸フィルムなどが用いられる。傾斜配向フィルムとしては、例えばポリマーフィルムに熱収縮フィルムを接着して加熱によるその収縮力の作用下にポリマーフィルムを延伸処理又は/及び収縮処理したものや、液晶ポリマーを斜め配向させたものなどがあげられる。位相差板の素材原料ポリマーは、先の位相差板で説明したポリマーと同様のものが用いられ、液晶セルによる位相差に基づく視認角の変化による着色等の防止や良視認の視野角の拡大などを目的とした適宜なものを用いうる。
【0075】
また、良視認の広い視野角を達成する点などより、液晶ポリマーの配向層、特にディスコチック液晶ポリマーの傾斜配向層からなる光学的異方性層をトリアセチルセルロースフィルムにて支持した光学補償位相差板が好ましく用いうる。
【0076】
偏光板と輝度向上フィルムを貼り合せた偏光板は、通常液晶セルの裏側サイドに設けられて使用される。輝度向上フィルムは、液晶表示装置などのバックライトや裏側からの反射などにより自然光が入射すると所定偏光軸の直線偏光または所定方向の円偏光を反射し、他の光は透過する特性を示すもので、輝度向上フィルムを偏光板と積層した偏光板は、バックライト等の光源からの光を入射させて所定偏光状態の透過光を得ると共に、前記所定偏光状態以外の光は透過せずに反射される。この輝度向上フィルム面で反射した光を更にその後ろ側に設けられた反射層等を介し反転させて輝度向上フィルムに再入射させ、その一部又は全部を所定偏光状態の光として透過させて輝度向上フィルムを透過する光の増量を図ると共に、偏光子に吸収させにくい偏光を供給して液晶表示画像表示等に利用しうる光量の増大を図ることにより輝度を向上させうるものである。すなわち、輝度向上フィルムを使用せずに、バックライトなどで液晶セルの裏側から偏光子を通して光を入射した場合には、偏光子の偏光軸に一致していない偏光方向を有する光は、ほとんど偏光子に吸収されてしまい、偏光子を透過してこない。すなわち、用いた偏光子の特性よっても異なるが、およそ50%の光が偏光子に吸収されてしまい、その分、液晶画像表示等に利用しうる光量が減少し、画像が暗くなる。輝度向上フィルムは、偏光子に吸収されるような偏光方向を有する光を偏光子に入射させずに輝度向上フィルムで一反反射させ、更にその後ろ側に設けられた反射層等を介して反転させて輝度向上フィルムに再入射させることを繰り返し、この両者間で反射、反転している光の偏光方向が偏光子を通過し得るような偏光方向になった偏光のみを、輝度向上フィルムは透過させて偏光子に供給するので、バックライトなどの光を効率的に液晶表示装置の画像の表示に使用でき、画面を明るくすることができる。
【0077】
輝度向上フィルムと上記反射層等の間に拡散板を設けることもできる。輝度向上フィルムによって反射した偏光状態の光は上記反射層等に向かうが、設置された拡散板は通過する光を均一に拡散すると同時に偏光状態を解消し、非偏光状態となる。すなわち、自然光状態の光が反射層等に向かい、反射層等を介して反射し、再び拡散板を通過して輝度向上フィルムに再入射することを繰り返す。このように輝度向上フィルムと上記反射層等の間に、偏光を元の自然光にもどす拡散板を設けることにより表示画面の明るさを維持しつつ、同時に表示画面の明るさのむらを少なくし、均一で明るい画面を提供することができる。かかる拡散板を設けることにより、初回の入射光は反射の繰り返し回数が程よく増加し、拡散板の拡散機能と相俟って均一の明るい表示画面を提供することができたものと考えられる。
【0078】
前記の輝度向上フィルムとしては、例えば誘電体の多層薄膜や屈折率異方性が相違する薄膜フィルムの多層積層体の如き、所定偏光軸の直線偏光を透過して他の光は反射する特性を示すもの、コレステリック液晶ポリマーの配向フィルムやその配向液晶層をフィルム基材上に支持したものの如き、左回り又は右回りのいずれか一方の円偏光を反射して他の光は透過する特性を示すものなどの適宜なものを用いうる。
【0079】
従って、前記した所定偏光軸の直線偏光を透過させるタイプの輝度向上フィルムでは、その透過光をそのまま偏光板に偏光軸を揃えて入射させることにより、偏光板による吸収ロスを抑制しつつ効率よく透過させることができる。一方、コレステリック液晶層の如く円偏光を透過するタイプの輝度向上フィルムでは、そのまま偏光子に入射させることもできるが、吸収ロスを抑制する点よりその円偏光を、位相差板を介し直線偏光化して偏光板に入射させることが好ましい。なお、その位相差板として1/4波長板を用いることにより、円偏光を直線偏光に変換することができる。
【0080】
可視光域等の広い波長で1/4波長板として機能する位相差板は、例えば波長550nmの淡色光に対して1/4波長板として機能する位相差板と他の位相差特性を示す位相差層、例えば1/2波長板として機能する位相差層とを重畳する方式などにより得ることができる。従って、偏光板と輝度向上フィルムの間に配置する位相差板は、1層または2層以上の位相差層からなるものであってよい。
【0081】
なお、コレステリック液晶層についても、反射波長が相違するものの組合せにして2層又は3層以上重畳した配置構造とすることにより、可視光域等の広い波長範囲で円偏光を反射するものを得ることができ、それに基づいて広い波長範囲の透過円偏光を得ることができる。
【0082】
また、偏光板は、上記の偏光分離型偏光板の如く、偏光板と2層又は3層以上の光学層とを積層したものからなっていても良い。従って、上記の反射型偏光板や半透過型偏光板と位相差板を組み合わせた反射型楕円偏光板や半透過型楕円偏光板などであっても良い。
【0083】
偏光板に前記光学層を積層した光学フィルムは、液晶表示装置等の製造過程で順次別個に積層する方式にても形成することができるが、予め積層して光学フィルムとしたものは、品質の安定性や組立作業等に優れていて液晶表示装置などの製造工程を向上させうる利点がある。積層には粘着層等の適宜な接着手段を用いうる。前記の偏光板と他の光学層の接着に際し、それらの光学軸は目的とする位相差特性などにおうじて適宜な配置角度とすることができる。
【0084】
次に粘着型光学フィルムの作製方法について説明する。粘着剤層の形成法は、特に制限されず、前記光学フィルム上に粘着剤溶液を塗布し乾燥する方法、粘着剤層を設けた離型シートにより転写する方法等があげられる。塗布法は、リバースコーティング、グラビアコーティング等のロールコーティング法、スピンコーティング法、スクリーンコーティング法、ファウンテンコーティング法、ディッピング法、スプレー法などを採用できる。粘着剤層の厚さは特に限定されないが、10〜40μm程度とするのが好ましい。
【0085】
アンカーコート層を設ける場合には、前記光学フィルム上にアンカーコート層を形成した後に、粘着剤層を形成する。例えば、ポリエチレンイミン水溶液の如きアンカー成分の溶液を、コーティング法、ディッピング法、スプレー法などの塗工法を用いて、塗布、乾燥し、アンカーコート層を形成させる。アンカーコート層の厚みとしては10〜5000nm程度、さらには50〜500nmの範囲にあることが好ましい。アンカーコート層の厚みが薄くなると、バルクとしての性質を有さず、十分な強度を示さなくなり、十分な密着性が得られない場合がある。また、厚すぎると光学特性の低下を招くおそれがある。
【0086】
粘着剤層等の形成にあたり、光学フィルムには活性化処理を施すことができる。活性化処理は各種方法を採用でき、例えばコロナ処理、低圧UV処理、プラズマ処理等を採用できる。また適宜に帯電防止層を形成することができる。
【0087】
離型シートの構成材料としては、紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フィルム、ゴムシート、紙、布、不織布、ネット、発泡シートや金属箔、それらのラミネート体等の適宜な薄葉体等があげられる。離型シートの表面には、粘着剤層からの剥離性を高めるため、必要に応じてシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理などの低接着性の剥離処理が施されていても良い。
【0088】
なお、本発明の粘着型光学フィルムの光学フィルムや粘着剤層などの各層には、例えばサリチル酸エステル系化合物やベンゾフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物やシアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤で処理する方式などの方式により紫外線吸収能をもたせたものなどであってもよい。
【0089】
本発明の粘着型光学フィルムは液晶表示装置等の各種画像表示装置の形成などに好ましく用いることができる。液晶表示装置の形成は、従来に準じて行いうる。すなわち液晶表示装置は一般に、液晶セルと粘着型光学フィルム、及び必要に応じての照明システム等の構成部品を適宜に組み立てて駆動回路を組み込むことなどにより形成されるが、本発明においては本発明による粘着型光学フィルムを用いる点を除いて特に限定は無く、従来に準じうる。液晶セルについても、例えばTN型やSTN型、π型などの任意なタイプなどの任意なタイプのものを用いうる。
【0090】
液晶セルの片側又は両側に粘着型光学フィルムを配置した液晶表示装置や、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたものなどの適宜な液晶表示装置を形成することができる。その場合、本発明による光学フィルムは液晶セルの片側又は両側に設置することができる。両側に光学フィルムを設ける場合、それらは同じものであっても良いし、異なるものであっても良い。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
【0091】
次いで有機エレクトロルミネセンス装置(有機EL表示装置)について説明する。本発明の光学フィルム(偏光板等)は、有機EL表示装置においても適用できる。一般に、有機EL表示装置は、透明基板上に透明電極と有機発光層と金属電極とを順に積層して発光体(有機エレクトロルミネセンス発光体)を形成している。ここで、有機発光層は、種々の有機薄膜の積層体であり、例えばトリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層と、アントラセン等の蛍光性の有機固体からなる発光層との積層体や、あるいはこのような発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層の積層体や、またあるいはこれらの正孔注入層、発光層、および電子注入層の積層体等、種々の組合せをもった構成が知られている。
【0092】
有機EL表示装置は、透明電極と金属電極とに電圧を印加することによって、有機発光層に正孔と電子とが注入され、これら正孔と電子との再結合によって生じるエネルギーが蛍光物資を励起し、励起された蛍光物質が基底状態に戻るときに光を放射する、という原理で発光する。途中の再結合というメカニズムは、一般のダイオードと同様であり、このことからも予想できるように、電流と発光強度は印加電圧に対して整流性を伴う強い非線形性を示す。
【0093】
有機EL表示装置においては、有機発光層での発光を取り出すために、少なくとも一方の電極が透明でなくてはならず、通常酸化インジウムスズ(ITO)などの透明導電体で形成した透明電極を陽極として用いている。一方、電子注入を容易にして発光効率を上げるには、陰極に仕事関数の小さな物質を用いることが重要で、通常Mg−Ag、Al−Liなどの金属電極を用いている。
【0094】
このような構成の有機EL表示装置において、有機発光層は、厚さ10nm程度ときわめて薄い膜で形成されている。このため、有機発光層も透明電極と同様、光をほぼ完全に透過する。その結果、非発光時に透明基板の表面から入射し、透明電極と有機発光層とを透過して金属電極で反射した光が、再び透明基板の表面側へと出るため、外部から視認したとき、有機EL表示装置の表示面が鏡面のように見える。
【0095】
電圧の印加によって発光する有機発光層の表面側に透明電極を備えるとともに、有機発光層の裏面側に金属電極を備えてなる有機エレクトロルミネセンス発光体を含む有機EL表示装置において、透明電極の表面側に偏光板を設けるとともに、これら透明電極と偏光板との間に位相差板を設けることができる。
【0096】
位相差板および偏光板は、外部から入射して金属電極で反射してきた光を偏光する作用を有するため、その偏光作用によって金属電極の鏡面を外部から視認させないという効果がある。特に、位相差板を1/4波長板で構成し、かつ偏光板と位相差板との偏光方向のなす角をπ/4に調整すれば、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
【0097】
すなわち、この有機EL表示装置に入射する外部光は、偏光板により直線偏光成分のみが透過する。この直線偏光は位相差板により一般に楕円偏光となるが、とくに位相差板が1/4波長板でしかも偏光板と位相差板との偏光方向のなす角がπ/4のときには円偏光となる。
【0098】
この円偏光は、透明基板、透明電極、有機薄膜を透過し、金属電極で反射して、再び有機薄膜、透明電極、透明基板を透過して、位相差板に再び直線偏光となる。そして、この直線偏光は、偏光板の偏光方向と直交しているので、偏光板を透過できない。その結果、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
【実施例】
【0099】
以下に、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各例中の部および%はいずれも重量基準である。
【0100】
(透湿度)
JIS Z0208の透湿度試験(カップ法)に準じて測定した。直径60mmに切断したサンプルを約15gの塩化カルシウムを入れた透湿カップにセットし、80℃、90%の恒温機に入れ、24時間放置した前後の塩化カルシウムの重量増加を測定することで透湿(g/m・24h)を求めた。
【0101】
(偏光板の作製)
厚さ80μmのポリビニルアルコールフィルムを速比の異なるロール間において、30℃で0.3%濃度のヨウ素水溶液中で3倍に延伸した。次いで60℃で4%濃度のホウ酸、10%濃度のヨウ化カリウムを含む水溶液中で、総延伸倍率6倍まで延伸した。次いで、30℃の1.5%濃度のヨウ化カリウム水溶液中に10秒間浸漬することで洗浄した後、50℃で4分間乾燥させて偏光子を得た。この偏光子の片面には、けん化処理した厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルムを、ポリビニルアルコール系接着剤により貼り合わせた。偏光子の他の片面には、厚さ70μmの環状オレフィン系樹脂フィルム(日本ゼオン社製,商品名「ゼオノア」)を、ポリビニルアルコール系接着剤により貼り合わせた。環状オレフィン系樹脂フィルムの80℃、90%R.H.での透湿度は、127g/m・24hであった。
【0102】
実施例1
(粘着剤の調製)
冷却管、窒素導入管、温度計及び撹拌装置を備えた反応容器に、アクリル酸ブチル100部、アクリル酸5部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル0.075部および2,2´−アゾビスイソブチロニトリル0.3部を酢酸エチルと共に加えて溶液を調製した。次いで、この溶液に窒素ガスを吹き込みながら撹拌して、60℃で4時間反応させて、重量平均分子量220万のアクリル系ポリマーを含有する溶液を得た。さらに、このアクリル系ポリマーを含有する溶液に、酢酸エチルを加えて固形分濃度を30%に調整したアクリル系ポリマー溶液(A)を得た。
【0103】
前記アクリル系ポリマー溶液(A)の固形分100部に対して、架橋剤として、0.6部のイソシアネート基を有する化合物を主成分とする架橋剤(日本ポリウレタン(株)製,商品名「コロネートL」)と、シランカップリング剤として、0.075部のγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製,商品名「KMB−403」)とをこの順に配合して、粘着剤溶液を調製した。
【0104】
(粘着型光学フィルムの作製)
上記粘着剤溶液を、シリコーン系剥離剤で表面処理したポリエチレンテレフタレートフィルムからなるセパレータの表面に、ファウンテンコーターで均一に塗工し、155℃の空気循環式恒温オーブンで3分間乾燥して、セパレータ表面に、厚さ25μmの粘着剤層を形成した。上記偏光板の片面(環状オレフィン系樹脂フィルム側)に、粘着剤層を形成したセパレータを移着させ、粘着型偏光板を作製した。
【0105】
実施例2、比較例1〜2
実施例1において、イソシアネート基を有する化合物を主成分とする架橋剤の配合量を表1に示すように変えたこと以外は、実施例1と同様にして、粘着剤溶液を調製した。また実施例1と同様にして、粘着型偏光板を作製した。
【0106】
比較例3
実施例1において、アクリル酸の使用量を5部から8部に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、固形分濃度を30%に調整したアクリル系ポリマー溶液(A´)を得た。
【0107】
前記アクリル系ポリマー溶液(A´)の固形分100部に対して、架橋剤として、0.8部のイソシアネート基を有する化合物を主成分とする架橋剤(日本ポリウレタン(株)製,商品名「コロネートL」)と、シランカップリング剤として、0.075部のγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製,商品名「KMB−403」)とをこの順に配合して、粘着剤溶液を調製した。当該粘着剤溶液を用いて、実施例1と同様にして、粘着型偏光板を作製した。
【0108】
実施例3
(粘着剤の調製)
冷却管、窒素導入管、温度計及び撹拌装置を備えた反応容器に、アクリル酸ブチル99部、アクリル酸4−ヒドロキシブチル1.0部および2,2´−アゾビスイソブチロニトリル0.3部を酢酸エチルと共に加えて溶液を調製した。次いで、この溶液に窒素ガスを吹き込みながら撹拌して、60℃で4時間反応させて、重量平均分子量165万のアクリル系ポリマーを含有する溶液を得た。さらに、このアクリル系ポリマーを含有する溶液に、酢酸エチルを加えて固形分濃度を30%に調整したアクリル系ポリマー溶液(B)を得た。
【0109】
前記アクリル系ポリマー溶液(B)の固形分100部に対して、架橋剤として、0.3部のジベンゾイルパーオキシドを含む過酸化物系架橋剤(日本油脂製(株),商品名「ナイパーBO−Y」)および0.18部のトリメチロールプロパンキシレンジイソシアネート(三井武田ケミカル(株),商品名「タケネートD110N」)と、0.2部のアセトアセチル基を含むシランカップリング剤(綜研化学(株)製,商品名「A−100」)とをこの順に配合して、粘着剤溶液を調製した。また実施例1と同様にして、粘着型偏光板を作製した。
【0110】
実施例4〜5、比較例4〜5
実施例3において、イソシアネート基を有する化合物を主成分とする架橋剤および過酸化物系架橋剤の配合量を表1に示すように変えたこと以外は、実施例3と同様にして、粘着剤溶液を調製した。また実施例1と同様にして、粘着型偏光板を作製した。また実施例1と同様にして、粘着型偏光板を作製した。
【0111】
実施例6
(粘着剤の調製)
冷却管、窒素導入管、温度計及び撹拌装置を備えた反応容器に、アクリル酸イソオクチル100部、アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル0.075部および2,2´−アゾビスイソブチロニトリル0.3部を酢酸エチルと共に加えて溶液を調製した。次いで、この溶液に窒素ガスを吹き込みながら撹拌して、60℃で4時間反応させて、重量平均分子量175万のアクリル系ポリマーを含有する溶液を得た。さらに、このアクリル系ポリマーを含有する溶液に、酢酸エチルを加えて固形分濃度を30%に調整したアクリル系ポリマー溶液(C)を得た。
【0112】
前記アクリル系ポリマー溶液(C)の固形分100部に対して、架橋剤として、2.5部のイソシアネート基を有する化合物を主成分とする架橋剤(日本ポリウレタン(株)製,商品名「コロネートL」)と、シランカップリング剤として、0.01部のγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製,商品名「KMB−403」)とをこの順に配合して、粘着剤溶液を調製した。また実施例1と同様にして、粘着型偏光板を作製した。
【0113】
実施例7〜9、比較例6
実施例6において、イソシアネート基を有する化合物を主成分とする架橋剤の配合量を表1に示すように変えたこと以外は、実施例6と同様にして、粘着剤溶液を調製した。また実施例1と同様にして、粘着型偏光板を作製した。
【0114】
上記実施例および比較例で得られた粘着型光学フィルム(粘着型偏光板)について以下の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0115】
<平衡水分率(%)>
粘着剤層を、300mm×240mm(約1.5g)にカットし、折りたたんで粘着剤層の塊にしたものをサンプルとした。このサンプルを、アルミホイルの載せ重量を測定してから、試料ボードに投入した。この方法により作製されたサンプルを、加熱オーブンに投入し、水分率を求めた。測定条件は、窒素ボンベ流量を300ml/min、機器中の窒素流量を200ml/minに設定し、加熱オーブンを110℃とした。測定値が、ドリフト値+0.1μg/sとなる点まで測定し、合計の水分量を測定し、平衡水分率(%):(合計の水分量/粘着剤層の重量)×100、を求めた(Karl‐Fischer水分率計)。
【0116】
<クリープ試験:ズレ量(μm)>
厚さ25μmの粘着剤層を10mm巾×30mmに切断したものをサンプルとした。このサンプルの上部の10mm×10mmを、ベーク板に貼着し、50℃、50atmで15分間のオートクレーブ処理をした後、室温(23℃)で1時間放置した。その後、サンプルに、500gの荷重を負荷(垂下方向への引張り剪断応力の負荷)し、1時間後のサンプルのズレ量(μm)を測定した。
【0117】
<発泡試験>
粘着型光学フィルム(15インチサンプル)を、厚さ0.07mmの無アルカリガラス板の両面にクロスニコル状態になるように貼着した。次いで、50℃、5atmで15分間オートクレーブ処理を施し、完全に密着させた。当該サンプルを80℃の条件下で500時間処理した後、発泡の状態を以下の基準で観察した。発泡の観察は、15インチサンプルの四つの角のエリア(50mm×50mm)中の発泡数を偏光顕微鏡により測定した。
○:発泡が未発生。
△:発泡数が100個未満。
×:発泡数が100個以上。
【0118】
【表1】

【0119】
得られた結果について、これらを図1に示す。図1における、プロットは、各例に対応しており、プロットは発泡試験における評価に係わる符号を用いている。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学フィルムの少なくとも片面に粘着剤層が積層されている粘着型光学フィルムにおいて、
前記粘着剤層は、平衡水分率(a)が0.5重量%以下であり、
厚み25μm、10mm×10mmの接着面積にて、500gfの引張り剪断応力を負荷したときの23℃での1時間後のズレ量(b)が、600μm以下であり、
かつ、前記平衡水分率(a)、前記ズレ量(b)が、
b<1036.4×e−5.124a
を満足し、かつ、
前記粘着剤層は、アクリル系ポリマーおよび架橋剤を含む粘着剤により形成されており、前記アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよびカルボキシル基含有モノマーをモノマーユニットとして含有し、かつ、
前記光学フィルムは、偏光子の少なくとも片面に透明保護フィルムを設けた偏光板であって、少なくとも片面の透明保護フィルムが、80℃、90%R.H.での透湿度が1000g/m・24h以下であり、当該透明保護フィルムに、粘着剤層が積層されていることを特徴とする粘着型光学フィルム。
【請求項2】
前記平衡水分率(a)が0.02重量%以上であり、かつ、前記ズレ量(b)が20μm以上であることを特徴とする請求項1記載の粘着型光学フィルム。
【請求項3】
前記粘着剤層は、平衡水分率(a)が0.15重量%以下であり、かつ、
ズレ量(b)が、600μm以下であることを特徴とする請求項1または2記載の粘着型光学フィルム。
【請求項4】
前記粘着剤層は、平衡水分率(a)が0.15重量%を超え0.25重量%以下であり、
かつ、ズレ量(b)が、350μm以下であることを特徴とする請求項1または2記載の粘着型光学フィルム。
【請求項5】
前記粘着剤層は、平衡水分率(a)が0.25重量%を超え0.5重量%以下であり、
かつ、ズレ量(b)が、150μm以下であることを特徴とする請求項1または2記載の粘着型光学フィルム。
【請求項6】
前記粘着剤層は、平衡水分率(a)が0.05重量%以上0.25重量%以下であり、
かつ、前記平衡水分率(a)、前記ズレ量(b)が、
b≦−541.67a+209.58、
を満足することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の粘着型光学フィルム。
【請求項7】
前記カルボキシル基含有モノマーが、(メタ)アクリル酸であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の粘着型光学フィルム。
【請求項8】
前記80℃、90%R.H.での透湿度が1000g/m・24h以下の透明保護フィルムが、環状オレフィン系樹脂から形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の粘着型光学フィルム。
【請求項9】
前記アクリル系ポリマーは、モノマーユニットとして、カルボキシル基含有モノマーを、全構成モノマーの重量比率において、0.01〜10%含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の粘着型光学フィルム。
【請求項10】
前記アクリル系ポリマー(固形分)100重量部に対して、架橋剤(固形分)0.001〜20重量部程度を含有することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の粘着型光学フィルム。
【請求項11】
前記架橋剤が、イソシアネート系架橋剤を含有し、イソシアネート系架橋剤の含有量は、アクリル系ポリマー(固形分)100重量部に対して、0.001〜2.5重量部であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の粘着型光学フィルム。
【請求項12】
前記架橋剤が、過酸化物系架橋剤を含有し、過酸化物系架橋剤の含有量は、アクリル系ポリマー(固形分)100重量部に対して、0.02〜2重量部であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の粘着型光学フィルム。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の粘着型光学フィルムを少なくとも1枚用いた画像表示装置。


【図1】
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【公開番号】特開2012−215888(P2012−215888A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−127196(P2012−127196)
【出願日】平成24年6月4日(2012.6.4)
【分割の表示】特願2007−151628(P2007−151628)の分割
【原出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】