説明

粘着性支持体

【課題】 粘着層の表面に被支持体を着脱する際、粘着層から削れかすが生じにくい粘着性支持体を提供する。
【解決手段】 基材12に粘着層14が積層され、この粘着層14の表面で粘着力により被支持体16を支持するものであって、粘着層14が、シリコーン生ゴムと、架橋成分と、粘着成分と、白金化合物と、シリカとを含む粘着剤組成物の硬化物からなり、シリカが50m/g以上の比表面積を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子部品等の被支持体を粘着力により支持する粘着層を有する粘着性支持体に係り、特に、粘着層としてシリコーン系粘着剤を用いた粘着性支持体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、チップコンデンサなどの電子部品の端面にコーティング等の処理を施す際などに、被処理部位を露出させて多数の電子部品を支持する必要があり、そのための支持体が多数提案されている。
【0003】
このような支持体として、下記特許文献1には、所定のビニル基含有オルガノポリシロキサン、オルガノハイドロジエンポリシロキサン、(CH=CH)RSiO0.5単位、RSiO0.5単位、及びSiO単位を含有するオルガノポリシロキサン、及び白金化合物を含む組成物を硬化させた柔軟部材層を形成し、この柔軟部材に多数の孔を設けた支持体が記載されている。ここでは、柔軟部材層に形成された多数の孔に多数の電子部品の一部を挿入し、この柔軟部材層の弾性により電子部品を支持していた。
【0004】
また、下記特許文献2には、支持体の表面に粘着層を設けた支持体について記載されている。この支持体では、電子部品の端面を粘着面表面に粘着させることにより支持していた。ここでは、特許文献1の支持体のように多数の電子部品の一部を微細な多数の孔に挿入する必要がないため、微細な多数の孔を精度よく形成する必要がなくて支持体の製造が容易であり、また、使用時においても電子部品の着脱が容易である。
【0005】
更に、下記特許文献3には、粘着層の表面に粘着により支持されている多数の電子部品を、粘着層の表面に平行に相対移動する脱離用のブレードにより剥して脱離させることが記載されている。ここでは、粘着面の表面に電子部品が支持されているため、多数の電子部品を脱離させることが容易である。
【特許文献1】特公平3−76778号公報
【特許文献2】特開平4−291712号公報
【特許文献3】特開2000−77772号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の粘着層を有する支持体では、粘着層の表面に支持されている多数の電子部品を着脱させる際、粘着層の表面が電子部品自体や電子部品の着脱に用いられるブレード等の部材により擦られるため、その摩擦により粘着層を構成する成分からなる削れかすが発生しやすく、特に、粘着層の粘着成分からなる削れかすやのり残りが生じ易く、この削れかすやのり残りが電子部品に異物として付着し、製品の不良を発生させ易いという問題があった。
【0007】
そこで、この発明では、粘着層の表面に被支持体を着脱する際、粘着層から削れかすやのり残りが生じにくい粘着性支持体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する請求項1に記載の発明は、粘着層の表面の粘着力により被支持体を支持するように基材上に前記粘着層が設けられた粘着性支持体において、前記粘着層が、(a)シリコーン生ゴムと、(b)架橋成分と、(c)粘着成分と、(d)白金化合物と、(e)シリカとを含む粘着剤組成物の硬化物であり、前記シリカが50m/g以上の比表面積を有することを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記被支持体が、電子部品であることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の構成に加え、前記粘着層の前記被支持体に接する少なくとも一部の表面からなる粘着面が平面であることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の何れか一つに記載の構成に加え、体前記基材は、金属、樹脂、又は、セラミックスからなる硬質部材であることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4の何れか一つに記載の構成に加え、前記シリカの比表面積が、100m/g以上400m/g以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1乃至5の何れか一つに記載の発明によれば、粘着層が50m/g以上の比表面積を有するシリカを含んだ所定の粘着性組成物の硬化物からなるので、粘着層を構成する成分を粘着層に保持する効果を十分に向上することができ、その結果、使用時に粘着層の表面に被支持体を着脱させる際、表面が被支持体や被支持体を着脱するための部材などで擦られても、その摩擦により粘着層を構成する成分からなる削れかす、特に、粘着層の粘着性を付与する(c)成分からなる削れかすやのり残りが発生し難い粘着性支持体を提供することができる。
【0014】
特に、請求項2に記載の発明によれば、このような粘着性支持体により支持する被支持体を電子部品としているので、電子部品に削れかすやのり残りが付着し難く、製品不良を発生させ難くすることができる。
【0015】
更に、請求項3乃至5に記載の発明によれば、粘着層の被支持体に接する少なくとも一部の表面からなる粘着面が平面であるので、使用時に粘着層に支持された被支持体を着脱させる際、被支持体に粘着層の表面に沿う方向に移動させたり、粘着層の表面に沿う方向の力を負荷させて被支持体を着脱させることが容易である。そして、このような使用においても、粘着層を構成する成分を粘着層に保持する効果が高いため、削れかすやのり残りが発生し難く、好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、この発明の実施の形態について説明する。
【0017】
図1及び図2は、この実施の形態の粘着性支持体を示す。
【0018】
図において、10は平板状に形成された粘着性支持体であり、使用時の負荷に対する強度を備えた板状の基材12と、この基材12一方の面に積層された粘着層14とからなっている。
【0019】
このような粘着性支持体10は、多数の被支持体としての電子部品16を支持するために使用され、例えば、電子部品16の一方の端部16aを粘着層14の表面に粘着力により支持させ、その状態で、他方の端部16bにコーティング処理などを施すことができる。ここでは、粘着層14の個々の電子部品16と接する面からなる粘着面を含む全面が平面に形成されているため、各電子部品16は粘着層14の粘着力だけで支持されている。
【0020】
ここでは、粘着層14の粘着面の平面度が50μm以下であるのが好ましく、また、表面粗度(Ra)が1μm以下であることが好ましい。粘着面の電子部品16との接触面積を確保し易いからである。
【0021】
なお、電子部品16としては、例えば、コンデンサ、抵抗器、インダクタ、FPC、ウエーハ等の完成品又は未完成品などが挙げられる。
【0022】
この使用に際して電子部品16を粘着性支持体10に支持させるには、例えば、電子部品16をそれぞれ粘着層14の表面の所定位置に配置可能な図示しない位置決め用部材を粘着層14に接触或いは非接触の状態で用い、電子部品16を粘着層14の表面の所定位置に配置するとともに、粘着層14に押し付けて粘着させ、その後、押し付け力を開放することにより支持させることができる。
【0023】
一方、粘着層14に支持された多数の電子部品16を脱離させるには、例えば、脱離用ブレード18の先端を粘着層14の表面に圧接させた状態で、この脱離用ブレード18を粘着層14の表面に沿う方向Aに相対移動させることにより、先端で多数の電子部品16を剥ぎ取り、脱離させることができる。
【0024】
このようにして使用される粘着支持体10では、粘着層14に電子部品16を支持させる際、及び粘着層14から電子部品16を脱離させる際、粘着層14の表面が電子部品16により擦られる。そのため、この発明では、十分な粘着性を確保しつつ、このような使用に耐えられる強度を確保するため、粘着層14として特定の粘着性組成物の硬化物からなるものを用いる。
【0025】
即ち、この発明では、粘着層14が、シリコーン生ゴムからなる(a)成分と、架橋成分からなる(b)成分と、粘着成分からなる(c)成分と、白金化合物からなる(d)成分と、シリカからなる(e)成分とを含有する粘着性組成物の硬化物からなっている。
【0026】
まず、この発明において、シリコーン生ゴムからなる(a)成分は、例えば、付加反応により架橋可能なアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンを用いることができ、特に、下記(1)式で示されるものを好適に用いることができる。
【0027】
(化1)
(3−a)SiO−(RXSiO)−(RSiO)−SiR(3−b) ・・・(1)
【0028】
(式(1)中、R1は脂肪族不飽和結合を有さない1価の炭化水素基であり、それぞれ同一であっても、異なっていてもよく、Xはアルケニル含有有機基であり、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい。また、aは0〜3の整数、bは0〜3の整数、mは0以上の整数、nは100以上の整数であり、a、b、及びmは同時に0とはならない。)
【0029】
ここで、Rとしては、炭素数1〜10のものが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基などを例示でき、特にメチル基、フェニル基が好ましい。
【0030】
また、Xのアルケニル基含有有機基としては、炭素数2〜10のものが好ましく、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基、オクテニル基、アクリロイルプロピル基、アクリロイルメチル基、メタクリロイルプロピル基、シクロヘキセニルエチル基、ビニルオキシプロピル基などを例示できる。
【0031】
この(a)成分は、オイル状、粘土状の性状を有するものでよく、粘度が25℃において50mPa・s以上のものが好ましく、特に100mPa・s以上が好適である。
【0032】
また、この(a)成分は、一種単独で用いてもよいが、二種以上混合して用いてもよい。
【0033】
次に、この発明における架橋成分(b)は、(a)成分と架橋反応可能な成分であり、例えば、1分子中にSi原子に結合したH原子を少なくとも2個以上、好ましくは3個以上有するSiH結合含有ポリオルガノシロキサン(以下、オルガノハイドロジェンポリシロキサンと称することもある。)を用いることができる。
【0034】
このポリオルガノシロキサンとしては、直鎖状、分枝状、環状のもを適宜選択して使用することができ、例えば、下記(2)式又は(3)式のものを例示することができる。
【0035】
(化2)
3−cSiO−(HRSiO)−(RSiO)−SiR3−d ・・・(2)
【0036】
【化3】

【0037】
(上記、式(2)及び(3)において、R1は前記と同様の炭化水素基であり、同一であっても、異なっていてもよい。また、c,dは0〜3の整数、x、y、sは0以上の整数、rは1以上の整数であり、c、d、xは同時に0とはならず、更に、x+y≧0以上である。また、r+s≧3以上、好ましくは8≧r+s≧3である。)
【0038】
このオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、オイル状の性状を有するものであり、粘度が25℃において1〜5000mPa・sのものが好ましい。
【0039】
この(b)成分も一種単独で用いてもよいが、二以上混合して用いてもよい。
【0040】
このような(b)成分の配合割合は、適宜選択可能であるが、前記(a)成分がアルケニル基を含有すると共に、(b)成分がSiH結合を含有する場合、(a)成分中のアルケニル基に対する(b)成分中のSiH結合のモル比が0.5〜20とするのが好ましく、特に1〜15の範囲となるように配合することが好適である。このモル比が0.5未満では、後述する硬化後の架橋密度が低くなり、粘着層14の形状を保持しにくくなることがある。一方、モル比が20を超えると、得られる粘着層14の粘着力が低下することがある。
【0041】
次に、この発明における粘着成分である(c)成分は、粘着力を向上するために配合される成分であり、例えば、ポリオルガノシロキサンを用いることができ、特に、RSiO0.5単位及びSiO単位及び/又はRSiO2/3単位(但し、Rは脂肪族不飽和結合を有しない1価の炭化水素基である。)を含有するものを好適に用いることができる。
【0042】
ここで、Rとしては、炭素数1〜10のものが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基、フェニル基、トリル基などのアリール基などを例示でき、特にメチル基、フェニル基が好ましい。
【0043】
この(c)成分は、一般的に粘着性をより高度に確保するために、上記(a)成分及び(b)成分とともに架橋反応を生じない、または、生じ難い構造を有するものが好ましい。
【0044】
このような(c)成分としてポリオルガノシロキサンを用いる場合は、(RSiO0.5単位及び/又はRSiO2/3単位)/SiO単位のモル比が0.6〜1.7となるものが好ましい。このモル比が0.6未満では、粘着性が高くなり過ぎたり、(a)成分と相溶し難くなって、分離して粘着性を発現しなくなることがある。一方、モル比が1.7を超えると粘着力が低下することがある。
【0045】
なお、このポリオルガノシロキサンは、Si原子に結合するOH基を含有していてもよく、その場合、OH基含有量が0〜4.0モル%とするのが好ましい。
【0046】
Si原子に結合するOH基を含有するものを用いる場合、前記(a)成分として、下記式(4)に示されるポリオルガノシロキサンを含有するときには、(a)成分と(b)成分とが一部縮合反応物を形成していてもよい。
【0047】
(化4)
(OH)RYSiO−(RXSiO)−(RSiO)−SiR(OH) ・・・(4)
【0048】
(式(4)中、Rは脂肪族不飽和結合を有さない1価の炭化水素基であり、それぞれ同一であっても、異なっていてもよく、YはRまたはアルケニル基含有有機である。また、pは1以上の整数、qは100以上の整数である。)
【0049】
このような(a)成分と(c)成分との縮合反応物を形成するには、トルエン等の溶剤に溶解した(a)成分及び(c)成分の混合物を、アルカリ性触媒の存在下で、室温乃至還流下で反応させればよい。
【0050】
なお、このような(c)成分は一種単独で用いても、二種以上混合して用いてもよい。
【0051】
そして、このような(c)成分は、(a)成分/(c)成分の重量比として20/80〜80/20の範囲で用いるのが好ましく、特に、30/70〜70/30とするのが好適である。この範囲を超えて(c)成分が少ないと粘着性が不足し易くなり、一方、多いと粘着層14が硬くなるとともに弾性力が強く、粘着層14が変形し難くなり、電子部品16等の被支持物を粘着させにくくなり易い。
【0052】
次に、この発明の(d)成分は、主として前記(a)成分と(b)成分との架橋反応を促進する触媒となる白金化合物であり、通常、ハイドロサイレーションの触媒として使用されるものである。
【0053】
この(d)成分としては、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とアルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン化合物との反応物、塩化白金酸とビニル基含有シロキサンとの反応物などが挙げられる。
【0054】
この(d)成分の配合割合は前記(a)成分と(b)成分との合計量に対し、白金分として1〜5,000ppmとするのが好ましく、特に5〜2,000ppmとすることが好適である。配合割合が1ppm未満では硬化性が低下して架橋密度が低くなり、保持力が低下することがあり、一方、5,000ppmを超えると処理浴の使用可能時間が短くなる場合があるからである。
【0055】
次に、この発明の(e)成分は、上記各成分とともに添加されるシリカであり、粘着層14の機械的強度を補強するとともに、粘着層14を構成する成分、特に、粘着性を付与する(c)成分を粘着層14に保持して、脱離し難くする成分である。
【0056】
シリカは、従来よりシリコーン樹脂やゴム等の機械的強度を向上するために添加されている。しかし、電子部品16等の被支持体を粘着層14の粘着力により支持する粘着性支持体10に用いる場合、粘着力が低下し易いため、一般にはシリカを添加することは行われ難い。また、仮に、シリカを添加することにより、粘着層14の引張り強度等の機械的強度を向上させたとしても、粘着層14が被支持体や他の部材により擦られると、粘着層14を構成する成分、特に、粘着性を付与する成分が脱離し易く、微細な削りかすやのり残りが生じ易い。このような削りかすやのり残りは、単に、粘着層14のシリカの配合量を増加しても防止できるものではなく、この発明では、BET法により測定される比表面積が50m/g以上のシリカを使用することにより、このような点の解決を図っているのであり、粘着力を確保すると同時に、燃剤製を付与する成分の脱離防止の観点からの物性を改善している。
【0057】
特に、このシリカとしては、比表面積が100m/g以上400m/g以下のものが好適である。比表面積が100m/g以上であれば削りかすを抑制する効果がより顕著に得られるからである。なお、比表面積が400m/gを超えるものは、製造に手間を要し、高価であるため実用的でない。
【0058】
このような(e)成分のシリカとしては、ヒュームドシリカ、焼成シリカ等の乾式法により合成されたシリカであっても、沈降シリカ、シリカゲル等の湿式法により合成されたシリカであっても、前記比表面積が得られるものであればよい。ここでは、比表面積を得易いなどの理由で、ヒュームドシリカ、沈降シリカが好適である。
【0059】
なお、このシリカは一種単独で用いても、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
また、必要に応じて、シリカの表面を、例えば、オルガノポリシロキサン、オルガノポリシラザン、クロロシラン、アルコキシシラン等の表面処理剤で処理したものを用いてもよい。
【0061】
このようなシリカの配合割合は、上記(a)成分と(c)成分の合計量100質量部に対して、1〜30質量部とするのが好ましい。より好ましくは5〜20質量部である。配合割合が小さいと、粘着層14の強度が低下して、十分な効果が得られ難くなり、また、使用時にのり残りが発生しやすくなり、一方、配合割合が大きいと、粘着力が低下することがあるからである。
【0062】
更に、この発明では、上記(a)成分から(e)成分の他に、適宜、任意成分を添加することが可能である。
【0063】
例えば、上記成分を混合時の架橋反応を抑制するための反応制御剤を添加することができる。この反応制御剤としては、例えば、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニルシクロヘキサノール、3−メチル−3−トリメチルシロキシ−1−ブチン、3−メチル−3−トリメチルシロキシ−1−ペンチン、3,5−ジメチル−3−トリメチルシロキシ−1−ヘキシン、1−エチニル−1−トリメチルシロキシシクロヘキサン、ビス(2,2−ジメチル−3−ブチノキシ)ジメチルシラン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジビニルジシロキサンなどが挙げられる。
【0064】
この反応制御剤を添加する場合、その配合割合は(a)成分と(c)成分との合計量100質量部に対して0〜5.0質量部の範囲とすることができ、特に0.05〜2.0質量部とするのが好ましい。この反応制御剤の配合割合が5.0質量部を超えると粘着性組成物の硬化時に硬化し難くなることがあるためである。
【0065】
また、反応制御剤の他にも、この発明では、適宜、任意成分を添加することが可能であり、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリジメチルジフェニルシロキサン等の非反応性のポリオルガノシロキサン、塗工の際の粘度を下げるための溶剤として、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、ヘキサン、オクタン、イソパラフィンなどの脂肪族系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸イソブチル等のエステル系溶剤、ジイソプロピルエーテル、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶剤、又はこれらの混合溶剤、染料、顔料などを使用することができる。
【0066】
この発明の粘着性組成物は、以上のような各成分を混合することにより得られる混合物であり、各成分がそれぞれ所定量配合され、好ましくは均一に分散させた状態のものである。
【0067】
そして、以上のような粘着性組成物を用いて、前記のような粘着性支持体10を製造するには、上記シリコーン系粘着剤組成物を基材12に塗工し、所定の条件にて硬化させて粘着層14を得ることにより、製造することができる。
【0068】
ここで、基材12は、粘着層14を保持可能な材料から形成されており、例えば、ステンレス、アルミ等の金属製プレート、アルミニウム箔、銅箔等の金属箔、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等の樹脂フィルムや樹脂板、和紙、合成紙、ポリエチレンラミネート紙等の紙、布、ガラス繊維、ガラス板等のセラミックス、ガラスエポキシ樹脂板等の複合材料、さらに、これらを複数積層してなる複合基材などからなるものが挙げられる。ここでは、特に、金属、樹脂、又はセラミックスからなる硬質部材からなるものが好適である。
【0069】
これらの基材12は、基材12と粘着層14との密着性を向上させるため、プライマー処理、コロナ処理、エッチング処理、プラズマ処理等を施して用いることも可能である。
【0070】
そして、これらの基材12に前記のようなシリコーン系粘着剤組成物を塗工して硬化させるには、基材12の一方の面に粘着性組成物を積層して金型等にてプレス成形したり、金型内に基材12をインサートして粘着性組成物を金型内に注入して成形等する方法などにより行うことが可能である。
【0071】
このような塗工方法では、硬化後の粘着層14の厚みを0.2mm〜10mm程度とすることが可能である。その際、硬化条件としては、80〜130℃で3分〜40分とすることができるが、適宜調整可能である。
【0072】
また、さらに厚みを薄くする塗工方法を用いることができ、コンマコーター、リップコーター、ロールコーター、ダイコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、キスコーター、グラビアコーター等により塗工したり、スクリーン塗工、浸漬塗工、キャスト塗工によって塗工するなど、公知の塗工方式を用いて塗工することができる。
【0073】
このような塗工方法では、硬化後の粘着層14の厚みを1〜200μmとすることができる。その際、硬化条件としては、80〜130℃で30秒〜3分とすることができるが、適宜調整可能である。
【0074】
さらに、上記のように予め形成された基材12に粘着性組成物を塗工することなく、粘着性組成物を硬化させた状態の粘着テープを製造してもよく、剥離コーティングを行った剥離フィルムや剥離紙等に塗工して硬化させた後、基材12に貼り合わせて粘着テープとする転写法により製造してもよい。
【0075】
以上のようにして硬化させて得られた粘着層14においては、低分子シロキサン成分や、(a)成分の未架橋成分が無いことが望ましいが、実用上、粘着層14から発生するシロキサンが10量体として1000ppm以下、更に好ましくは300ppm以下のものが望ましい。
【0076】
以上のようにして製造された粘着性支持体10によれば、粘着層14が50m/g以上の比表面積を有するシリカを含んだ所定の粘着性組成物の硬化物からなるので、粘着層14を構成する成分を粘着層に保持する効果を十分に向上することができ、その結果、使用時に粘着層14の表面に電子部品16等の被支持体を着脱させる際、粘着層14の表面に電子部品16や被支持体を着脱するためのブレード18を押し付けたり、粘着層14の表面に沿う方向の力を負荷することにより、粘着層14の表面が擦られても、その摩擦により粘着層14を構成する成分からなる削れかす、特に、粘着性を付与する(c)成分からなる削れかすやのり残りが発生し難い。
【0077】
しかも、粘着層14の表面には電子部品16を挿入するための穴などがない平面に形成されており、この粘着層14の表面に電子部品16が支持されるので、使用時に粘着層14から電子部品16を着脱させる際、電子部品16やブレード18を粘着層14の表面に沿う方向Aに移動させたり、粘着層14の表面に沿う方向の力を負荷して電子部品16を着脱させることが容易である。そして、このような使用においても、前記のように粘着層14を構成する成分を粘着層14に保持する効果が高いため、粘着層14を構成する成分からなる削れかすやのり残りが発生し難く、電子部品16の製品不良を発生し難く好適である。
【0078】
なお、上記実施の形態では、電子部品16を支持する例について説明したが、被支持体は何ら限定されることなく、例えば、シリコンウエハー等の他の電子部品などでもよく、粘着層14の粘着力や粘着性支持体10の強度などに応じた被支持体を支持することができる。
【0079】
また、上記では、板状の基材12に粘着層14を形成したが、基材12の形状は特に限定されず、例えば、ロール形状や曲面形状、更には各種の異形形状など、用途等に応じて粘着層14を保持できる形状であれば適宜採用することが可能である。また、基材12の材料についても、粘着層14を安定して保持可能なものであれば、適宜選択することができる。更に、基材12を用いることなく、或いは、別部材として用いて、粘着層12のみからなる粘着性支持体とすることも可能である。
【0080】
さらに、上記では、粘着層14の表面全面が平面形状の粘着面を構成する例について説明したが、平面形状に特に限定されるものではなく、電子部品16等の被支持体を粘着させる部分を凸状或いは凹状に成形したものであってもよい。また、電子部品16等の被支持体を粘着できる限り、粘着層14の表面の一部が非粘着面となる粘着性支持体10であってもよい。
【実施例】
【0081】
以下、この発明の実施例について説明する。
実施例1
【0082】
(a)成分として、5モル%のメチルビニルシロキサン単位と、95モル%のジメチルビニルシロキサン単位むアルケニル基含有ポリオルガノシロキサンを100質量部、(b)成分として、H(CHSiO−((CHSiO)18−Si(CHHからなるSiH結合含有ポリオルガノシロキサンを5.7質量部、(c)成分として、(CH)SiO0.5単位/SiO単位からなり、(CH)SiO0.5単位/SiO単位のモル比が0.85のボリオルガノシロキサンを50質量部、白金含有量が2%の塩化白金酸の2−エチルヘキサノール溶液を0.28質量部、BET法により測定される比表面積が130m/gのヒュームドシリカを10質量部 、反応制御剤として、1−エチニルシクロヘキサノールを0.05質量部を均一に混合して、粘着性組成物を調製した。
【0083】
その後、ステンレス鋼製の板状の基材12に1.5mm厚で均一に塗布し、120℃で15分硬化させ、図1に示すような粘着性支持体10を作製した。
実施例2
【0084】
比表面積が250m/gのシリカを用いる他は、実施例1と同一にして、粘着性組成物を調整し、粘着性支持体10を作製した。
比較例1
【0085】
シリカとして、平均粒子径4〜6μmで比表面積が1.7m/gのクリスタライト(龍森社製、商品名)を10質量部用いる他は実施例1と同一にして、粘着性組成物を調整し、粘着性支持体10を作製した。
比較例2
【0086】
クリスタライトの配合量を20質量部とする他は比較例1と同一にして、粘着性組成物を調整し、粘着性支持体10を作製した。
【0087】
以上のようにして得られた実施例1、2及び比較例1、2の粘着性支持体10を用い、同一の条件下で、JIS K 6264に準拠したテーバー摩耗試験を実施し、摩耗量を測定した。試験では、研磨といしとして、H22を用い、試験片に加える荷重を9.8Nとした。
【0088】
得られた結果を表1に示す。
【0089】
【表1】

【0090】
表1から明らかなように、実施例1、2では、比較例1、2に比べて、削れかすが生じ難いことが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】この発明の実施の形態の粘着性支持体を示す斜視図である。
【図2】同実施の形態の粘着性支持体の使用状態を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0092】
10 粘着性支持体
12 基材
14 粘着層
16 電子部品(被支持体)
18 脱離用ブレード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着層の表面の粘着力により被支持体を支持するように基材上に前記粘着層が設けられた粘着性支持体において、
前記粘着層が、(a)シリコーン生ゴムと、(b)架橋成分と、(c)粘着成分と、(d)白金化合物と、(e)シリカとを含む粘着剤組成物の硬化物であり、
前記シリカが50m/g以上の比表面積を有することを特徴とする粘着性支持体。
【請求項2】
前記被支持体が、電子部品であることを特徴とする請求項1に記載の粘着性支持体。
【請求項3】
前記粘着層の前記被支持体に接する少なくとも一部の表面からなる粘着面が平面であることを特徴とする請求項1又は2に記載の粘着性支持体。
【請求項4】
前記基材は、金属、樹脂、又は、セラミックスからなる硬質部材であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一つに記載の粘着性支持体。
【請求項5】
前記シリカの比表面積が、100m/g以上400m/g以下であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一つに記載の粘着性支持体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−22168(P2006−22168A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−199969(P2004−199969)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】