説明

粘着性樹脂の造粒加工方法及びそれに用いる装置

【課題】溶融樹脂の冷却性に優れ、しかも従来からある安価なペレタイザーの使用を可能とする粘着性樹脂ストランドの造粒加工方法及びそれに用いる引取り冷却装置を提供する。
【解決手段】冷却媒体内にある駆動可能なロールにより、粘着性樹脂を引取り、かつ冷却することで、粘着性樹脂の造粒加工時に生じる課題を解決できる。ダイに導かれた粘着性樹脂が細孔によりストランド6に成形される。成形されたストランド6を重力により鉛直に落下させながら冷却槽内の冷却水に導き、中空駆動ロール7に接すると同時にモーターを駆動させる。次いでフリーロール8,9を介してニップロール10でストランドを挟み込み適度にライン速度を調節しながらペレタイザー11でストランドを切断し、樹脂ペレットが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック用加工機械により得られる粘着性樹脂の造粒加工方法及び装置に関するものである。さらに詳しくは、ストランド状に押し出された粘着性を有する溶融樹脂を造粒加工する方法及びそれに用いる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
押出機で溶融混練された樹脂の造粒加工方法として、以下のような方法が知られている。
(1)押出機先端のダイノズルからストランド形状に押し出された溶融樹脂(ストランド)を、非駆動ロール(以下フリーロールと記す)を複数本配置した冷却水槽内に導入し、冷却固化させた後、引取ロールを介しペレタイザーによって切断するストランドカット方法。
(2)押出機先端のダイノズルから水中に押し出された溶融樹脂を、ダイノズルに接近した回転刃により切断する水中カット方法[特許文献1]。
(3)押出機先端のダイノズルからストランド形状に押し出された溶融樹脂を、水槽に導入し、ストランドを水中で固化した後、ペレタイザー内部に冷却水とともに導き、切断する流水カット方法[特許文献2]。
【0003】
これらの造粒方法は樹脂組成により使い分けられている。すなわち(1)のストランドカット方法はダイノズルから押し出した溶融樹脂を水層内に複数本配置されたフリーロールを潜らせながら引き取り固化させる。この方法は、多くの樹脂に適しているが、熱可塑性エラストマー等の粘着性を有する樹脂では、押出直後の瞬時の冷却効果が不十分であり冷却に時間がかかるばかりでなく、ストランド相互が粘着することや或いは半溶融状態下でストランドが伸びてしまい品質を損ねる等の課題がある。またストランドが、フリーロールと粘着することにより、ストランドを引き取ることができず、ストランド全体が停滞する場合もある。しかしながら、本方法は、単純な装置の組み合わせであり、トラブル時の対応は比較的容易であること、且つ設備費を安価に抑えることができることから、当業者では幅広く知られている。
【0004】
(2)の水中カット方法は、樹脂がダイノズルから水中に押し出された瞬時に固化する中高硬度の粘着性樹脂には適しているが、低硬度の粘着性樹脂では固化する時間が必要であり、ペレットの粒子径のバラツキが大きくなり易い加工条件となる傾向がある。また、低硬度の粘着性樹脂等に適用させる為に、固化時間を稼ぐ試みとしてダイ部の低温化が考えられるが、ダイ部の樹脂圧力が高くなることや、流動性が損なわれダイの目詰まりが発生することなどが、課題となり得る。さらに、本方法を押出重合時に使用する際、発生した低分子量体の除去を目的とする開口部(以下ベント口と記す)が配置されている場合、ダイ部の流動性の悪化により押出機内部の溶融樹脂が閉塞ぎみとなり、ベント口より吐出してしまうことがある。また、本方法は、ペレタイザーが押出機に直結しているため、トラブル時の対応に難点があったり、或いは保守点検が煩雑となるうえ、設備的にも一般的に高価なものである。
【0005】
(3)の流水カット方法も、ダイから水槽及びペレタイザーまで直結方式となっているが、ペレタイザーは従来からある安価な形態に特殊機能が付与させている。ダイから押し出された樹脂は、直後に水中に引き込まれ、ペレタイザーの引取延伸により造粒加工が行われている。この為、低硬度の粘着性熱可塑性エラストマーでは、例えばダイノズル径がφ6の場合であっても、直径がφ1以下の超極細ストランドとなる等により、製品を得るのが困難な場合がある。また、ペレタイザー内部流水によりストランド相互が蛇行しストランド相互の融着や、蛇行抑制の為に流水量を調整する場合冷却不足と考えられる。切断後ペレットのペレタイザー内部でのブロッキング(ペレット同士が塊となり融着した状態)が生じることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4663099号
【特許文献2】特開平4−189107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、前記のような従来技術の課題を解消し、溶融樹脂の冷却性に優れ、しかも従来からある安価なペレタイザーの使用を可能とする、ストランド状の粘着性樹脂の造粒加工方法及びそれに用いる引取り冷却装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、冷却媒体内にある駆動可能なロールにより、ストランド状の粘着性樹脂を引取りかつ冷却することで、粘着性樹脂の造粒加工時に生じる課題を解決できること見出し、以下の本発明を完成するに至った。
【0009】
[1] ストランド状の粘着性樹脂を、冷却媒体中に配置された駆動ロールにより引取り、かつ冷却を行う工程を有する樹脂の造粒加工方法。
【0010】
[2] 押出成形機によりストランド状に押し出された溶融樹脂が鉛直方向に延伸された後、冷却媒体中に導入される[1]に記載の樹脂の造粒加工方法。
【0011】
[3] 前記駆動ロールの直径が50mm以上、200mm以下であることを特徴とする[1]または[2]のいずれかに記載の樹脂の造粒加工方法。
【0012】
[4] 前記駆動ロールが中空構造である[1]〜[3]のいずれかに記載の樹脂の造粒加工方法。
【0013】
[5] 前記粘着性樹脂が、改質ポリオレフィン系樹脂である[1]〜[4]のいずれかに記載の樹脂の造粒方法。
【0014】
[6] 前記粘着性改質ポリオレフィン系樹脂が、ポリオレフィン系樹脂に対して、ラジカル重合開始剤存在下、エチレン性二重結合及び極性基を同一分子内に含む化合物、及び芳香族ビニル単量体を溶融混練して得られ、ポリオレフィン系樹脂、エチレン性二重結合及び極性基を同一分子内に含む化合物、芳香族ビニル単量体及びその他ビニル単量体の合計100重量%中におけるエチレン性二重結合及び極性基を同一分子内に含む化合物の割合が、0.05〜50重量%の範囲にある改質ポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする[5]に記載の樹脂の造粒加工方法。
【0015】
[7] 前記エチレン性二重結合及び極性基を同一分子内に含む化合物が、不飽和カルボン酸、その無水物、その誘導体、及びエポキシ基含有ビニル単量体からなる群からえらばれる少なくとも1種である[6]に記載の樹脂の造粒方法。
【0016】
[8] 前記エチレン性二重結合及び極性基を同一分子内に含む化合物が、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、及び(メタ)アクリル酸グリシジルからなる群から選ばれる少なくとも1種である[7]に記載の樹脂の造粒方法。
【0017】
[9] 押出成形により押し出されたストランド状の粘着性樹脂を引き取る駆動ロールが冷却媒体中に配置されたストランド引取冷却装置。
【発明の効果】
【0018】
本発明の装置は、粘着性樹脂の造粒加工において、安価な汎用のペレタイザーの使用を可能とし、また造粒加工時に生じる前記の課題を解決することができる。また、特に低硬度である粘着性樹脂の造粒加工において、好適に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の造粒加工装置のダイ部及び冷却水槽の中空駆動ロールの位置関係図である。
【図2】本発明の中空駆動ロールの測面図及び又は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1を参照して本発明にかかる粘着性樹脂の造粒加工方法の一実施形態を説明する。図1においてポリオレフィン系樹脂等(以下原料と記す)が押出混練装置2のポッパー1に供給される。ポッパー1に供給された原料は、押出混練装置2により溶融後、細孔を有するダイ5に導かれストランド状の粘着性樹脂が得られる。
【0021】
ポリオレフィン系樹脂を押出混練装置2を使用し、変性ポリオレフィン系樹脂を得る場合は、ポリオレフィン系樹脂とラジカル重合開始剤を所定量混合したものを原料とし、押出混練装置2により溶融され、変性用モノマーを添加口3より供給し混練重合を行うことができる。この場合、途中押出混練装置2の先端部に設けられたベント口4を開口し、重合で発生した低分子量体の除去を行っても良い。
【0022】
ダイ5に導かれた粘着性樹脂が細孔によりストランド6に成形される。成形されたストランド6を重力により垂直落下させながら冷却槽内の冷却水に導き、中空駆動ロール7に接すると同時にモーター13を駆動させる。次いでフリーロール8、9を介してニップロール10でストランドを挟み込み適度にライン速度を調節しながらペレタイザー11でストランドを切断し、樹脂ペレット14が形成される。
【0023】
図2を参照して本発明にかかる駆動ロールを説明する。駆動ロールは伝達部20を設けられベルト等にてモーター13と連動する構造を有する。駆動ロールは、ストランド6と接する面21とリブ22構造により空間を設けた中空構造であることが、冷却効果を大きくする点で好ましい。
【0024】
押出機ダイから押し出される樹脂ストランドは、1本に限らず、複数本が同時に押し出されても良い。特に複数本のストランドを同時に押し出す場合に本発明を適用することが好ましい。
【0025】
前記駆動ロールは、ロールの回転数を変化させることができる。駆動ロールに接する樹脂ストランドの硬度や粘着性に応じて、ロールの回転数を調整することにより、ストランド径をコントロールすることができる。
【0026】
また、(1)押出機ダイと駆動ロール間での延伸によるストランド径の縮小化に伴うストランド表面積当りの熱容量の減少による冷却性の向上、(2)特定のロール径を有する駆動ロール表面にストランドを沿わせることによる放熱性の向上、(3)半溶融状態にある柔らかなストランドを駆動ロールに圧接(延伸による圧着)させることによるストランドの引取直進性の向上(蛇行の抑制)、(4)駆動ロールによるストランドの送り出しによるロール面とストランドの粘着した部位の引き剥がし(駆動ロールとライン張力による剥離性の向上)等の効果が組み合わされ、本発明の駆動ロールを用いることにより低硬度であり粘着性を有する樹脂の造粒加工時に生じる溶融樹脂ストランド相互の融着等の課題を解決することができる。
【0027】
本発明の造粒加工方法における駆動ロール7は直径50mm以上200mm以下であることが好ましく、設備上の観点により150mm以下が、より好ましい。駆動ロール7の直径が200mmを超えると、水槽の容量の増加、駆動軸の剛性、モーター13容量等の点から設備費の増大が懸念される。また駆動ロール7の直径が50mm未満であるとストランド6の熱量によりロール表面が加温(40℃以上)され、ストランドのロール面からの剥離性が低下する傾向があり、ストランドを引き取るライン速度を調節してもストランド6が破断する場合がある。また駆動ロール7の表面仕上げは、エンボス加工を施すなどにより、ダイからの押出直後又は半溶融状態にあるストランドとの接触面積を低下させることが、剥離性を向上させる点で、特に好ましい。
【0028】
また、本発明において駆動ロール7は、冷却槽内の冷却媒体中に配置されていることを特徴とする。溶融樹脂ストランドが粘着し易い冷却媒体中のロールを駆動ロールとしストランドの引取と送り出しを制御することにより、冷却媒体中でのストランドの粘着等を防ぐことができる。冷却水槽内での駆動ロールの配置は、特に制限はないが、駆動ロール7及びフリーロール8が冷却媒体中で完全に覆われていることが好ましい。また、駆動ロール7は、溶融樹脂ストランドが冷却媒体中に導入され、後に冷却媒体中から引き上げられる間に通過する経路長の前半(ストランドが冷却媒体に導入される側から)1/3以内の位置で、溶融樹脂ストランドと接触することが、ストランドの粘着をより効果的に防ぐ点で好ましい。
【0029】
本発明で使用される冷却媒体種は特に制限はないが、経済性、取扱い性の点で、水を使用することが好ましい。また、冷却媒体に固体或いは液体状の自着防止剤を添加しても良い。
【0030】
<<粘着性樹脂について>>
常温において軟質で接着性を有する樹脂であり、例えばポリイソブチレン、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレンターポリマー、スチレン−イソプレン−スチレンゴム、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレンゴム、アクリルゴム、アクリル酸エステル−アクリロニトリル共重合ゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム及びフッ素ゴムなどのオレフィン系ゴム、並びにエラストマーの加硫物及び未加硫物が挙げられる。押出重合により得られる粘着性樹脂の一例としては、ポリオレフィン系樹脂に対してラジカル重合開始剤存在下、モノマーを一定量のエチレン性二重結合及び極性基を同一分子内に含む化合物、芳香族ビニル単量体及びその他ビニル単量体を溶融混練して得られる変性ポリオレフィン系樹脂が挙げられる。
【0031】
<<変性ポリオレフィン系樹脂について>>
前記変性ポリオレフィン系樹脂に用いられるポリオレフィン系樹脂とは、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリイソブチレン、プロピレンとエチレンおよび/または1−ブテンとのあらゆる比率でのランダム共重合体またはブロック共重合体、エチレンとプロピレンとのあらゆる比率においてジエン成分が50重量%以下であるエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、ポリメチルペンテン、シクロペンタジエンとエチレンおよび/またはプロピレンとの共重合体などの環状ポリオレフィン、エチレンまたはプロピレンと50重量%以下のビニル化合物などとのランダム共重合体、ブロック共重合体などが挙げられる。
【0032】
中でも、物性バランス、入手の容易性及び価格の点から、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイソブチレンが好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレンを主成分とするものが特に好ましい。ポリプロピレンを主成分とするものは、プロピレン単位を50重量%以上含む重合体を意味し、ポリエチレンを主成分とするものについても同様である。
【0033】
また、極性基を有する不飽和カルボン酸単量体と相溶し易い点で、極性基が導入されたポリオレフィン樹脂も使用できる。極性基が導入されたポリオレフィン樹脂の具体例としては、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、マレイン酸変性ポリプロピレン、アクリル酸変性ポリプロピレンなどの酸変性ポリプロピレン;エチレン/塩化ビニル共重合体、エチレン/塩化ビニリデン共重合体、エチレン/アクリロニトリル共重合体、エチレン/メタクリロニトリル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/アクリルアミド共重合体、エチレン/メタクリルアミド共重合体、エチレン/アクリル酸共重合体、エチレン/メタクリル酸共重合体、エチレン/マレイン酸共重合体、エチレン/アクリル酸メチル共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/アクリル酸イソプロピル共重合体、エチレン/アクリル酸ブチル共重合体、エチレン/アクリル酸イソブチル共重合体、エチレン/アクリル酸2−エチルヘキシル共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体、エチレン/メタクリル酸エチル共重合体、エチレン/メタクリル酸イソプロピル共重合体、エチレン/メタクリル酸ブチル共重合体、エチレン/メタクリル酸イソブチル共重合体、エチレン/メタクリル酸2−エチルヘキシル共重合体、エチレン/無水マレイン酸共重合体、エチレン/アクリル酸エチル/無水マレイン酸共重合体、エチレン/アクリル酸金属塩共重合体、エチレン/メタクリル酸金属塩共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、又はその鹸化物、エチレン/プロピオン酸ビニル共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体エチレン/アクリル酸エチル/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/酢酸ビニル/メタクリル酸グリシジル共重合体などのエチレンまたはα−オレフィン/ビニル単量体共重合体;塩素化ポリプロピレン塩素化ポリエチレンなどの塩素化ポリオレフィンなどが挙げられる。これらの極性基導入ポリオレフィンは混合しても使用できる。
【0034】
前記原料ポリオレフィン樹脂には、必要に応じて、ほかの樹脂またはゴムを添加してもよい。
【0035】
前記ほかの樹脂またはゴムとしては、たとえばポリペンテン−1、ポリメチルペンテン−1などのポリα−オレフィン;プロピレン含有量が75重量%未満のプロピレン/ブテン−1共重合体などのエチレンまたはα−オレフィン/α−オレフィン共重合体;プロピレン含有量が75重量%未満のエチレン/プロピレン/5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体などのエチレンまたはα−オレフィン/α−オレフィン/ジエン系単量体共重合体;ポリブタジエン、ポリイソプレンなどのポリジエン系共重合体;スチレン/ブタジエンランダム共重合体などのビニル単量体/ジエン系単量体ランダム共重合体;スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体などのビニル単量体/ジエン系単量体/ビニル単量体ブロック共重合体;水素化(スチレン/ブタジエンランダム共重合体)などの水素化(ビニル単量体/ジエン系単量体ランダム共重合体);水素化(スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体)などの水素化(ビニル単量体/ジエン系単量体/ビニル単量体ブロック共重合体);アクリロニトリル/ブタジエン/スチレングラフト共重合体、メタクリル酸メチル/ブタジエン/スチレングラフト共重合体などのビニル単量体/ジエン系単量体/ビニル単量体グラフト共重合体;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレンなどのビニル重合体;塩化ビニル/アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、アクリロニトリル/スチレン共重合体、メタクリル酸メチル/スチレン共重合体などのビニル系共重合体などがあげられる。
【0036】
ポリオレフィン樹脂に対するこれらほかの樹脂またはゴムの添加量は、この樹脂の種類またはゴムの種類により異なり、前述のように本発明の効果を損なわない範囲内にあればよいものである。
【0037】
<<ポリオレフィン系樹脂の変性に使用するモノマーについて>>
ポリオレフィン系樹脂の変性は、エチレン性二重結合及び極性基を同一分子内に含む化合物、芳香族ビニル単量体及びその他ビニル単量体等のモノマーを使用し実施される。
【0038】
エチレン性二重結合及び極性基を同一分子内に含む化合物の使用量は、ポリオレフィン100重量部に対して0.05〜100重量部であることが好ましく、0.5〜50重量部であることがさらに好ましい。好ましい使用量において、ポリオレフィン樹脂の接着性を十分に改良することができ、またポリオレフィン樹脂に結合しないポリマー成分の発生を抑制することができる。
【0039】
また、エチレン性二重結合及び極性基を同一分子内に含む化合物の割合が、ポリオレフィン系樹脂、エチレン性二重結合及び極性基を同一分子内に含む化合物の割合及び芳香族ビニル単量体の合計量の0.05〜50重量%の範囲であることが好ましく、0.5〜40重量%の範囲であることがより好ましく、1〜30重量%の範囲であることが特に好ましい。
【0040】
エチレン性二重結合及び極性基を同一分子内に含む化合物としては、α、β−不飽和カルボン酸またはその無水物単量体及び/又はエポキシ基含有ビニル単量体を用いることが好ましい。
【0041】
α、β−不飽和カルボン酸またはその酸無水物単量体とは、エチレン性二重結合とカルボン酸基またはカルボン酸無水物基を同一分子内に持つ、各種不飽和モノも又はジカルボン酸およびそれらの酸無水物であり、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、エンド−ビシクロ[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸(エンディック酸)、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ナジック酸、無水マレイン酸、無水エンディック酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸、無水ナジック酸などが例示できる。これらの単量体のうち、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸及びマレイン酸の無水物であり、より好ましくは、無水マレイン酸である。これらは、一種単独で用いてもよく、また、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうち、無水マレイン酸が異種材と接着させる場合、特に金属材料と接着させる場合に、低い温度で接着するという点で好ましい。
【0042】
エチレン性二重結合及び極性基を同一分子内に含む化合物として、α、β−不飽和カルボン酸またはその酸無水物単量体を用いる場合、その使用量は、ポリオレフィン樹脂100重量部に対して0.05〜100重量部であることが好ましく、0.1〜50重量部であることがさらに好ましく、0.5〜20重量部であることが特に好ましい。好ましい使用量において、ポリオレフィン樹脂の接着性を十分に改良することができ、また未反応モノマーの除去も容易くなる。
【0043】
エポキシ基含有ビニル単量体について例示するならば、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸グリシジル、マレイン酸モノグリシジル、マレイン酸ジグリシジル、イタコン酸モノグリシジル、イタコン酸ジグリシジル、アリルコハク酸モノグリシジル、アリルコハク酸ジグリシジル、p−スチレンカルボン酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、メタアリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテル、p−グリシジルスチレン、3,4−エポキシ−1−ブテン、3,4−エポキシ−3−メチル−1−ブテンなどのエポキシオレフィン、ビニルシクロヘキセンモノオキシドなどの1種または2種以上が挙げられる。これらのうち、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸グリシジルが安価という点で好ましい。
【0044】
エチレン性二重結合及び極性基を同一分子内に含む化合物として、エポキシ樹脂含有ビニル単量体を用いる場合、その使用量は、ポリオレフィン100重量部に対して0.2〜100重量部であることが好ましく、0.5〜50重量部であることがさらに好ましい。好ましい使用量において、ポリオレフィン樹脂の接着性を十分に改良することができ、またポリオレフィン樹脂に結合しないポリマー成分の発生を抑制することができる。
【0045】
芳香族ビニル単量体について例示するならば、スチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレンなどのメチルスチレン;o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、α−クロロスチレン、β−クロロスチレン、ジクロロスチレン、トリクロロスチレンなどのクロロスチレン;o−ブロモスチレン、m−ブロモスチレン、p−ブロモスチレン、ジブロモスチレン、トリブロモスチレンなどのブロモスチレン;o−フルオロスチレン、m−フルオロスチレン、p−フルオロスチレン、ジフルオロスチレン、トリフルオロスチレンなどのフルオロスチレン;o−ニトロスチレン、m−ニトロスチレン、p−ニトロスチレン、ジニトロスチレン、トリニトロスチレンなどのニトロスチレン;o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、ジヒドロキシスチレン、トリヒドロキシスチレンなどのビニルフェノール;o−ジビニルベンゼン、m−ジビニルベンゼン、p−ジビニルベンゼンなどのジビニルベンゼン;o−ジイソプロペニルベンゼン、m−ジイソプロペニルベンゼン、p−ジイソプロペニルベンゼンなどのジイソプロペニルベンゼン;などの1種または2種以上が挙げられる。これらのうちスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンなどのメチルスチレン、ジビニルベンゼン単量体またはジビニルベンゼン異性体混合物が安価であるという点で好ましい。
【0046】
芳香族ビニル単量体の使用量は、ポリオレフィン樹脂100重量部に対して、0.1〜50重量部であることが好ましく、0.5〜40重量部であることがさらに好ましく、1〜30重量部であることが特に好ましい。好ましい範囲において、α、β−不飽和カルボン酸またはその酸無水物単量体及び/又はエポキシ樹脂含有ビニル単量体のポリオレフィンへの重合(グラフト)を効率良く実施することができる。
【0047】
その他ビニル単量体について、例示するならば、塩化ビニル、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル、ビニルイソプロピルエーテル、ビニルn−ブチルエーテル、ビニルtert−ブチルエーテル等のビニルエーテル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニルエチル、(メタ)アクリル酸ナフチル等が挙げられる。これらの単量体は単独で使用してもよく、2種以上組み合わせて使用してもよい。なかでも(メタ)アクリル酸エステル単量体が好ましく、(メタ)アクリル酸メチルよりで好ましい。
【0048】
<<ラジカル重合開始剤について>>
ラジカル重合開始剤としては、一般に過酸化物またはアゾ化合物などがあげられる。前記ラジカル重合開始剤としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド;1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタンなどのパーオキシケタール;パーメタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド;ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α´−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3などのジアルキルパーオキサイド;ベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド;ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−メトキシブチルパーオキシジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート;t−ブチルパーオキシオクテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレートなどのパーオキシエステルなどの有機過酸化物の1種または2種以上があげられる。
【0049】
これらのうち、とくに水素引き抜き能が高いものが好ましく、そのようなラジカル重合開始剤としては、たとえば1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタンなどのパーオキシケタール;ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α´−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3などのジアルキルパーオキサイド;ベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド;t−ブチルパーオキシオクテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレートなどのパーオキシエステルなどの1種または2種以上があげられる。
【0050】
前記ラジカル重合開始剤の添加量は、ポリオレフィン樹脂100重量部に対して、0.01〜10重量部の範囲内にあることが好ましく、0.05〜5重量部の範囲内にあることがさらに好ましい。0.01重量部未満では変性が充分に進行せず、10重量部を超えると流動性、機械的特性の低下を招くことがある。
【実施例】
【0051】
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれにより何ら制限を受けるものではない。
【0052】
(実施例1)
<押出変性>
プロピレンエチレンラバー(ダウケミカル製V3401、MFR=8)100部と1,3−ジ(t−ブチルパーオキシイソブロビル)ベンゼン(日本油脂(株):パーブチルP、1分間半減期175℃)0.5重量部を混合させ、200℃に設定した2軸押出機(TEX44:L/D=38、日本製鋼所製)のポッパー口よりに供給し、溶融したあと添加口よりメタクリル酸グリシジル5重量部、スチレン5重量部を加え混練させた後、φ10(mm)の細孔を有するダイに導かれストランド状に成形された変性ポリオレフィン系樹脂を得た。
【0053】
<造粒加工>
続いて連続的に溶融状態のストランド状の変性ポリオレフィン系樹脂を冷却水槽(L3000×W300×H400)内にダイ細孔から鉛直となる様φ80の中空駆動ロール7にストランドを宛い(線速23m/min)、1/3程度円周上沿わせながらフリーロール8の位置を調節、続いてフリーロール9で水槽底部まで導いた後ニップロール10で線速20m/minにて引取、ペレタイザー11(KM-150H 勝製作所(有))で切断し平均粒径φ6のペレットを得た。この時の冷却槽内の水温は2〜23℃の範囲で実施した。押出直後のストランドは、蛇行することなく十分な冷却が得られ安定的な造粒加工が実施された。なお中空駆動ロール7のストランドと接する面21は触ると平らであるが、光を反射させると白っぽく写る程度の仕上げとした。
【0054】
(実施例2)
<押出変性>
ホモポリプロピレン((株)プライムポリマー製J105G、MFR=9)100部、1,3−ジ(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(日本油脂(株):パーブチルP、1分間半減期175℃)0.5部、無水マレイン酸(和光純薬社製)1部を混合させ、200℃に設定した2軸押出機(TEX44:L/D=38、日本製鋼所製)のポッパー口よりに供給し、溶融したあと添加口よりメタクリル酸グリシジル5重量部、スチレン5重量部を加え混練させた後、φ6の細孔を有するダイに導かれストランド状に成形された変性ポリオレフィン系樹脂を得た。
【0055】
<造粒加工>
φ150の中空駆動ロール7にて線速19m/min、ロール表面を0.02mmのフッ素仕上げ、冷却槽の水温を0〜25℃に調整する為にチラー冷却を導入した以外は実施例1同様の方法により、平均粒径φ4のペレットを得た。結果、押出直後のストランドは、相互に蛇行することなく十分な冷却が得られ安定的な造粒加工が実施された。
【0056】
(比較例1)
実施例1同様の方法により押出変性を行った。
<造粒加工>
中空駆動ロールをφ45のフリーロールに置き換えた以外は実施例1同様の方法により行った。結果、水槽入り直後のストランドがフリーロールに粘着し、また半溶融状態で一部ストランドがニップロール10の引取で極度に延伸されストランドがφ2程度の極細状態となり製品を得るに至らなかった。
【符号の説明】
【0057】
1.ホッパー
2.押出混練装置
3.添加口
4.ベント口
5.ダイ
6.ストランド
7.駆動ロール
8.9.フリーロール
10.ニップロール
11.ペレタイザー
12.貯槽
13.モーター
14.ペレット
20.伝達部
21.ストランドと接する面
22.リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストランド状の粘着性樹脂を、冷却媒体中に配置された駆動ロールにより引取り、かつ冷却を行う工程を有する樹脂の造粒加工方法。
【請求項2】
押出成形機によりストランド状に押し出された溶融樹脂が鉛直方向に延伸された後、冷却媒体中に導入される請求項1に記載の樹脂の造粒加工方法。
【請求項3】
前記駆動ロールの直径が50mm以上、200mm以下であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の樹脂の造粒加工方法。
【請求項4】
前記駆動ロールが中空構造である請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂の造粒加工方法。
【請求項5】
前記粘着性樹脂が、改質ポリオレフィン系樹脂である請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂の造粒方法。
【請求項6】
前記粘着性改質ポリオレフィン系樹脂が、ポリオレフィン系樹脂に対して、ラジカル重合開始剤存在下、エチレン性二重結合及び極性基を同一分子内に含む化合物、及び芳香族ビニル単量体を溶融混練して得られ、ポリオレフィン系樹脂、エチレン性二重結合及び極性基を同一分子内に含む化合物、芳香族ビニル単量体及びその他ビニル単量体の合計100重量%中におけるエチレン性二重結合及び極性基を同一分子内に含む化合物の割合が、0.05〜50重量%の範囲にある改質ポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする請求項5に記載の樹脂の造粒加工方法。
【請求項7】
前記エチレン性二重結合及び極性基を同一分子内に含む化合物が、不飽和カルボン酸、その無水物、その誘導体、及びエポキシ基含有ビニル単量体からなる群からえらばれる少なくとも1種である請求項6に記載の樹脂の造粒方法。
【請求項8】
前記エチレン性二重結合及び極性基を同一分子内に含む化合物が、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、及び(メタ)アクリル酸グリシジルからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項7に記載の樹脂の造粒方法。
【請求項9】
押出成形により押し出されたストランド状の粘着性樹脂を引き取る駆動ロールが冷却媒体中に配置されたストランド引取冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−56766(P2011−56766A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−208492(P2009−208492)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】