説明

粘調性酸化チタンとその成膜方法

【課題】 塗布基材への範囲を拡大する酸化チタンを提供すること。
【解決手段】 この課題を解決するために、酸化チタンゾルに粘性をもたせ、塗布した時の酸化チタンの流動性を極力抑える構造とし、吸水性のある基材でも吸い込まれることなくその基材表面に酸化チタン皮膜が形成できるようにした。より詳しくは、酸化チタンがもつ有機物分解能力をも制御するために、無機質で粘性がえられる、膨潤性層状粘土鉱物であるスメクタイトとの合成液を発明した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化チタンに関するものであり、酸化チタンの基材塗布への範囲を拡大するものである。
【背景技術】
【0002】
光触媒機能を有する酸化チタンは、安全、無害であるとともに、その酸化分解能力が、消臭、殺菌、カビ防止、防汚などの高い機能を有し、かつ永久持続性であることにより、基材への塗布液としての酸化チタンゾルが数々提供されている。
【0003】
そしてその代表的なものは、酸性溶液中にアナターゼ型酸化チタンを分散させたもの、または特許文献1のような中性水溶液である。
【特許文献1】 特許第2875993号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の酸化チタンゾルはいずれも粘性がなく、よって吸水性のある基材、たとえば多孔質なコンクリートや木材、壁紙などは吸い込んでしまって、なかなかその効果を求めることができず、これらを解決するために、バインダーにアナターゼ型酸化チタンを分散させて塗料化した製品もあるが、これはバインダーの中に酸化チタンが沈み込んでしまう現象が生じるために、同じく本来の効果を求めることはむずかしい。
【0005】
本発明は、この問題点を解決するもので、酸化チタンの本来持つ優れた機能はそのままに、塗布基材への範囲を大幅に拡大するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するために本発明者は、酸化チタンゾルに粘性をもたせ、塗布した時の酸化チタンの流動性を極力抑える構造とし、吸水性のある基材でも吸い込まれることなくその基材表面に酸化チタン皮膜が形成できるようにした。より詳しくは、酸化チタンがもつ有機物分解能力をも制御するために、無機質で粘性がえられる、膨潤性層状粘土鉱物であるスメクタイトとの合成液を発明した。
【0007】
請求項1の発明は、前記特許文献の特許第2875993号によって製造されるペルオキソチタン酸溶液と、膨潤性層状粘土鉱物であるスメクタイトとの合成液で、粘性があることを特徴とする、粘調性ペルオキソチタン酸溶液である。
【0008】
この粘調性ペルオキソチタン酸溶液は、ペルオキソチタン酸溶液内の酸化チタンがアモルファスであるため、性質上光触媒機能はもたないものの、吸水性のある有機物基材へのシールド材として使用する。
【0009】
たとえば前述の木材などは、吸水性があることは勿論のこと有機物であるために、光触媒機能をもつ一般的な酸化チタンゾルを直接塗布すると、基材の木材までも徐々に分解していき、機能性はもとより耐久性の面においても問題が生じる。
【0010】
よってこのような場合、粘調性ペルオキソチタン酸溶液の皮膜と光触媒機能をもつ酸化チタン皮膜の2層構造とすることにより、吸水性基材に吸収されることなく、粘調性ペルオキソチタン酸溶液内のアモルファス型酸化チタンの皮膜がシールド材となり、光触媒機能をもつ酸化チタン皮膜は、本来の触媒機能を発揮しつつ耐久性に優れた皮膜となる。
【0011】
請求項2および3、4の発明は、一般的な酸化チタンゾル、もしくは前記特許文献の特許第2875993号によって製造されるペルオキソ改質アナターゼゾル、または前記特許文献の特許第2875993号によって製造されるペルオキソチタン酸溶液とペルオキソ改質アナターゼゾルとの混合液と、それぞれ膨潤性層状粘土鉱物であるスメクタイトとの合成液で、粘性があることを特徴とする、粘調性酸化チタンゾル、粘調性ペルオキソ改質アナターゼゾル、粘調性ペルオキソチタン酸溶液とペルオキソ改質アナターゼゾルの混合液である。
【0012】
これらの各粘調性酸化チタンは、本来より光触媒機能をもつ酸化チタンなので、無機質の吸水性基材に適している。
【0013】
たとえば前述の多孔質なコンクリート表面などに塗布すれば、中に浸透していくことなく、表面に光触媒機能をもつ酸化チタン皮膜を形成し、各酸化チタンの効果を存分に発揮することができる。また増粘剤が無機質の膨潤性層状粘土鉱物であるスメクタイトなので耐久性にも優れる。更には一層塗りの一液なので作業性も良い。
【0014】
ただしこれらは、無機質の吸水性基材に適しているとしたが、条件が合えば有機物上に塗布しても構わないのは勿論のことである。
【0015】
請求項5の発明は、スメクタイトが合成スメクタイトであるルーセンタイトであることを特徴とする、粘調性ペルオキソチタン酸溶液および粘調性酸化チタンゾル、粘調性ペルオキソ改質アナターゼゾル、または、粘調性ペルオキソチタン酸溶液とペルオキソ改質アナターゼゾルの混合液である。
【0016】
合成スメクタイトであるルーセンタイトは、合成品であるため不純物量が少なく、少量の添加で増粘効果を発揮し、透明度にも優れているために本発明にはもっとも適している。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、酸化チタンの光触媒効果を、吸水性のある基材、有機物、無機物など、制限無しに得ることが可能となる。
【実施例】
【0018】
〔実施例1〕
ペルオキソチタン酸溶液は、株式会社鯤コーポレーション製の製品名PTA(0.85Wt%)を使用し、スメクタイトにはコープケミカル株式会社製の合成スメクタイト、ルーセンタイトを使用した。
【0019】
ペルオキソチタン酸溶液1000gに対し、ルーセンタイト20gを入れ8時間よく攪拌して、目的とする粘調性ペルオキソチタン酸溶液を得た。
【0020】
試験片として、吸水性に優れる、一般的な壁紙とバルサ材を用意し、各半分だけに株式会社近畿製作所製のスプレーガン、口径0.3mmで上記粘調性ペルオキソチタン酸溶液を塗布し、もう半分には、ペルオキソチタン酸溶液そのままを同条件で塗布した。
【0021】
次にその試験片全体に、株式会社鯤コーポレーション製の製品名TPX(光触媒機能を有する酸化チタン水溶液)(0.85Wt%)を同じく株式会社近畿製作所製のスプレーガン、口径0.3mmで塗布し、更にその上全体にパイロット社製赤インク(水で20倍希釈したもの)を塗布した。
【0022】
この試験片に紫外線をあてることにより、赤インクは分解され、その分解度の違いで効果の判別ができる。
【0023】
結果、赤インクは、粘調性ペルオキソチタン酸溶液が下地の方は完全分解したが、その時点での、ペルオキソチタン酸溶液そのままが下地の方は分解していない。
【0024】
〔実施例2〕
ペルオキソ改質アナターゼゾルは、株式会社鯤コーポレーション製の製品名TPX(0.85Wt%)を使用し、スメクタイトにはコープケミカル株式会社製の合成スメクタイト、ルーセンタイトを使用した。
【0025】
アナターゼ改質ゾル1000gに対し、ルーセンタイト20gを入れ8時間よく攪拌して、目的とする粘調性ペルオキソ改質アナターゼゾルを得た。
【0026】
試験片として、吸水性に優れる、一般的な壁紙とバルサ材を用意し、各半分だけに株式会社近畿製作所製のスプレーガン、口径0.3mmで上記粘調性ペルオキソ改質アナターゼゾルを塗布し、もう半分には、ペルオキソ改質アナターゼゾルそのままを同条件で塗布した。
【0027】
次にその試験片全体に、パイロット社製赤インク(水で20倍希釈したもの)を同じく株式会社近畿製作所製のスプレーガン、口径0.3mmで塗布した。
【0028】
この試験片に紫外線をあてることにより、赤インクは分解され、その分解度の違いで効果の判別ができる。
【0029】
結果、赤インクは、粘調性ペルオキソ改質アナターゼゾルを塗布した方は、完全分解したが、その時点でのペルオキソ改質アナターゼゾルそのままは分解していない。
【産業上の利用可能性】
【0030】
以上詳述したように、本発明は光触媒機能を有する酸化チタンの塗布基材への制限がなくなり、多孔質であるもの、吸水性があるものでも塗布可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペルオキソチタン酸溶液と膨潤性層状粘土鉱物であるスメクタイトとの合成液で、粘性があることを特徴とする、粘調性ペルオキソチタン酸溶液。
【請求項2】
酸化チタンゾルと膨潤性層状粘土鉱物であるスメクタイトとの合成液で、粘性があることを特徴とする、粘調性酸化チタンゾル。
【請求項3】
前記請求項2の酸化チタンゾルが、ペルオキソ改質アナターゼゾルであることを特徴とする、粘調性ペルオキソ改質アナターゼゾル。
【請求項4】
前記請求項2の酸化チタンゾルが、ペルオキソチタン酸溶液とペルオキソ改質アナターゼゾルとの混合液であることを特徴とする、粘調性ペルオキソチタン酸溶液とペルオキソ改質アナターゼゾルの混合液。
【請求項5】
前記請求項1および2からなるスメクタイトが、合成スメクタイトであるルーセンタイトを使用することを特徴とする、粘調性ペルオキソチタン酸溶液および粘調性酸化チタンゾル、粘調性ペルオキソ改質アナターゼゾル、または、粘調性ペルオキソチタン酸溶液とペルオキソ改質アナターゼゾルの混合液。
【請求項6】
前記請求項1の粘調性ペルオキソチタン酸溶液を、酸化チタン塗布基材の下地材に使用し、その上に酸化チタン皮膜が形成されていることを特徴とする、酸化チタン皮膜基材。

【公開番号】特開2006−213588(P2006−213588A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−58166(P2005−58166)
【出願日】平成17年2月2日(2005.2.2)
【出願人】(596174754)
【出願人】(504328174)
【Fターム(参考)】