説明

精油噴霧装置

【課題】 精油をミスト状にした場合の酸化反応を効果的に防止でき、ミスト化精油の効果を長時間維持できる、精油噴霧装置を提供すること。
【解決手段】 精油噴霧装置1は、液体状の精油Lをミスト化して気相に移行させるための精油ミスト化部2と、ミスト化した精油を所定の目的空間Aに対して移動させるためのミスト移動手段と、負イオンを発生するための負イオン発生ユニット3と、発生した負イオンを該目的空間Aに対して移動させるための負イオン移動手段とを筐体9中に備えてなる。ミスト、負イオンの各移動手段には、送風手段6を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は精油噴霧装置に係り、特に、精油もしくはこれを用いた液体をミスト状にした場合の酸化反応を防止、抑制でき、それによってミスト化された精油の奏する効果を長時間維持することができる、精油噴霧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波発生装置を用いる等して植物精油をミスト化して噴霧し、香りの提供や空気浄化効果を得ようとする考案は、複数なされている(例として後記特許文献)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−177230「超音波霧化芳香装置および方法」
【特許文献2】特開平06−327696「液体噴霧装置」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、植物精油のミスト化はすなわち、これをナノサイズ化など微粒子化することであり、それに伴う比表面積の増加等により、油の酸化反応が著しくなる。精油ミスト化は、上述の香りの提供や空気清浄化効果、あるいは有害生物・微生物の忌避効果、防除効果等に加え、皮膚・細胞への浸透作用による心身両面での保健・衛生面における効果も期待できるのだが、如何せん酸化反応が生じては、そのような効果を得、また持続的させることは難しい。
【0005】
そこで本発明が解決しようとする課題は、上記従来技術の問題点を除き、精油もしくはこれを用いた液体をミスト状にした場合の酸化反応を効果的に防止ないしは抑制でき、それによってミスト化精油の効果を長時間維持することのできる、精油噴霧装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者は上記課題について検討した結果、負イオン発生手段、殊に本願出願人が先に発明した負イオン発生装置を用いることによって上記課題の解決が可能であることを見出し、本発明に至った。すなわち、上記課題を解決するための手段として本願で特許請求される発明、もしくは少なくとも開示される発明は、以下のとおりである。
【0007】
(1) 液体状の精油もしくはこれを用いた液体をミスト化して気相に移行させるための精油ミスト化部と、ミスト化した精油を所定の目的空間に対して移動させるためのミスト移動手段と、負イオンを発生するための負イオン発生ユニットと、発生した負イオンを該目的空間に対して移動させるための負イオン移動手段とを筐体中に備えてなることを特徴とする、精油噴霧装置。
(2) 前記負イオン発生ユニットは、電子放射式負イオン発生装置からなることを特徴とする、(1)に記載の精油噴霧装置。
(3) 前記電子放射式負イオン発生装置は、空気中の正イオンを検出するための正イオン検出手段と、該正イオン検出手段が検出した正イオンの量に応じた量の負イオンを発生させるべく負極高電圧の電圧を変化させるための負イオン発生用電圧制御回路と、負イオンを発生させるための負イオン発生手段とからなり、該正イオン検出手段は、通風路内に設置され空気中の正イオンを収集する電荷集電板ならびに該電荷集電板と相対向して配置され正電荷に帯電される反発電極板とからなり、該負イオン発生手段は、該通風路内に設置される放電電極ならびに該放電電極を囲繞し負電荷に帯電される負イオン誘導管から構成され、該負極高電圧が放電電極に印加されて電子放射して負イオンを発生するものであることを特徴とする、(2)に記載の精油噴霧装置。
(4) 前記負イオン発生手段は、圧電トランスを用いた高電圧発生回路を備えてなることを特徴とする、(3)に記載の精油噴霧装置。
【0008】
(5) 前記精油ミスト化部は、精油を貯留しておくための精油槽と、該精油槽に設けられた超音波発生装置とからなることを特徴とする、(1)ないし(4)のいずれかに記載の精油噴霧装置。
(6) 前記ミスト移動手段および負イオン移動手段は、共用される送風手段を用いたものであり、該送風手段は、前記筐体内に外気を吸入してこれを後流側の前記精油ミスト化部および前記負イオン発生ユニットに向かって送るものであることを特徴とする、(1)ないし(5)のいずれかに記載の精油噴霧装置。
(7) 前記送風手段から前記精油ミスト化部および前記負イオン発生ユニットへの送風路は、その後流側において、少なくとも該精油ミスト化部向けのミスト用流路と該負イオン発生ユニット向けの負イオン用流路とに分かれて形成されていることを特徴とする、(6)に記載の精油噴霧装置。
(8) 前記ミスト用流路の末端は前記精油槽の底部方向に向かって開口されており、前記負イオン用流路の末端は該精油槽から発生して移動するミストと前記負イオンとが出会えるように前記目的空間に向かって開口されていることを特徴とする、(7)に記載の精油噴霧装置。
(9) 前記精油は、ヒバ油その他の植物精油であることを特徴とする、(1)ないし(8)のいずれかに記載の精油噴霧装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明の精油噴霧装置は上述のように構成されるため、これによれば、精油もしくはこれを用いた液体をミスト状にした場合の酸化反応を効果的に防止ないしは抑制でき、それによってミスト化精油の効果を長時間持続させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を図面により詳細に説明する。図中、ブロック矢印は、空気の流れを示す。
図1は、本発明の精油噴霧装置の基本的構成を示す説明図である。図示するように本精油噴霧装置1は、液体状の精油もしくはこれを用いた液体L(以下、単に「精油L」ともいう。)をミスト化して気相に移行させるための精油ミスト化部2と、ミスト化した精油を所定の目的空間Aに対して移動させるためのミスト移動手段と、負イオンを発生するための負イオン発生ユニット3と、発生した負イオンを該目的空間Aに対して移動させるための負イオン移動手段とを筐体9中に備えてなることを、主たる構成とする。精油を用いた液体には、精油を適宜濃度に希釈してなる製剤を含む。
【0011】
かかる構成により本装置1では、該精油ミスト化部2において液体状の精油Lがミスト化されて気相に移行せしめられ、ここでミスト化した精油は、該ミスト移動手段によって所定の目的空間Aに対して移動させられ、一方、該負イオン発生ユニット3においては負イオンが生成され、発生した負イオンは、該負イオン移動手段によって、前記目的空間Aに対して移動させられる。つまり、ミストと負イオンはそれぞれに係る移動手段によって、同じ目的空間Aに向かって移動させられる。この空間Aでミスト化精油(「ミスト化精油」には、精油を用いた液体のミスト化したものの場合も含む。以下同様。)は負イオンと出会い、その結果ミスト化精油は負イオンにより効率的に負に帯電させられて、その酸化反応が防止ないしは抑制される。
【0012】
該空間Aでの負イオンとの出会いによって負に帯電したミスト化精油は、その後周囲空間に拡散した後も、ミスト化精油としての効果を長時間に亘り持続することが可能となる。
【0013】
図において前記負イオン発生ユニット3としては、電子放射式負イオン発生装置を用いることができる。電子放射式負イオン発生装置としては、望ましくは、本願出願人により、特開2003−31338(特許第3624349号)において開示された発明により構成される装置を用いることができる。具体的には、「inti(登録商標)−fion(登録商標)方式」((株)アンデス電気)によるマイナスイオン発生装置を用いるものとすることができる。本方式によればオゾン等の副産物発生がなく、噴霧装置として都合がよい。
【0014】
図において本精油噴霧装置1の精油ミスト化部2は、精油を貯留しておくための精油槽4と、該精油槽4に設けられた超音波発生装置5とを備えて構成することができる。該超音波発生装置5は超音波振動子を用いて構成することができる。
【0015】
また、前記ミスト移動手段および負イオン移動手段は、共用される送風手段(ファン)6を用いて構成することができる。該送風手段6は、前記筐体9内に外気を吸入してこれを後流側の前記精油ミスト化部2および前記負イオン発生ユニット3に向かって送る作用を有する。
【0016】
かかる構成により、該精油槽4に貯留されている精油Lは該超音波発生装置5により発生した超音波エネルギーによる作用を受けて微粒子化され、気相に移行してミスト化される。前記送風手段6からの送風により、ミスト化された精油と前記負イオン発生ユニット3にて発生する負イオンは、後流側へ移動させられる。
【0017】
ここで、該送風手段6から該精油ミスト化部2および該負イオン発生ユニット3への送風路は、その後流側において、少なくとも該精油ミスト化部2向けのミスト用流路7と、該負イオン発生ユニット3向けの負イオン用流路8とに分かれて形成すればよい。かかる構成とすることにより、一の送風手段6のみにより、異なる位置にてそれぞれ発生するミスト化された精油と負イオンに対して、同時に送風による移動作用を与えることができる。
【0018】
また、図示するように、該ミスト用流路7の末端は前記精油槽4の底部方向に向かって開口したものとし、前記負イオン用流路8の末端は該精油槽4から発生して移動するミストと前記負イオンとが出会えるように前記目的空間Aに向かって開口した構成とすることができる。
【0019】
かかる構成により、目的空間Aにおいて、ミスト化精油はより効率的に負イオンと出会い、これによって負に帯電し、酸化反応を受けにくい状態が形成され、その状態を維持して周囲空間に拡散させられる。
【0020】
本装置には、害虫忌避・駆除効果その他の効果がいわれているヒバ油(ヒノキチオール)もしくはこれを用いた液体を用いることができるが、ここで適用することのできる精油はこれのみに限定されるものではない。たとえば植物精油であれば、イネ科、エゴノミ科、カンラン科、シソ科、セリ科、ニクズク科、バラ科、ヒノキ科、ビャクダン科、マツ科、その他適宜の植物に由来する精油を、限定なく適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明の精油噴霧装置によれば、ミスト化精油の酸化反応を効果的に防止ないしは抑制できるため、環境関連分野、衛生関連分野、生活関連分野、農業分野、その他幅広い産業分野において利用価値が高い発明である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の精油噴霧装置の基本的構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0023】
1…精油噴霧装置
2…精油ミスト化部
3…負イオン発生ユニット
4…精油槽
5…超音波発生装置
6…送風手段
7…ミスト移動手段
8…負イオン移動手段
9…筐体
A…目的空間
L…精油(もしくはこれを用いた液体)L


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体状の精油もしくはこれを用いた液体をミスト化して気相に移行させるための精油ミスト化部と、ミスト化した精油を所定の目的空間に対して移動させるためのミスト移動手段と、負イオンを発生するための負イオン発生ユニットと、発生した負イオンを該目的空間に対して移動させるための負イオン移動手段とを筐体中に備えてなることを特徴とする、精油噴霧装置。
【請求項2】
前記負イオン発生ユニットは、電子放射式負イオン発生装置からなることを特徴とする、請求項1に記載の精油噴霧装置。
【請求項3】
前記電子放射式負イオン発生装置は、空気中の正イオンを検出するための正イオン検出手段と、該正イオン検出手段が検出した正イオンの量に応じた量の負イオンを発生させるべく負極高電圧の電圧を変化させるための負イオン発生用電圧制御回路と、負イオンを発生させるための負イオン発生手段とからなり、該正イオン検出手段は、通風路内に設置され空気中の正イオンを収集する電荷集電板ならびに該電荷集電板と相対向して配置され正電荷に帯電される反発電極板とからなり、該負イオン発生手段は、該通風路内に設置される放電電極ならびに該放電電極を囲繞し負電荷に帯電される負イオン誘導管から構成され、該負極高電圧が放電電極に印加されて電子放射して負イオンを発生するものであることを特徴とする、請求項2に記載の精油噴霧装置。
【請求項4】
前記負イオン発生手段は、圧電トランスを用いた高電圧発生回路を備えてなることを特徴とする、請求項3に記載の精油噴霧装置。
【請求項5】
前記精油ミスト化部は、精油を貯留しておくための精油槽と、該精油槽に設けられた超音波発生装置とからなることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれかに記載の精油噴霧装置。
【請求項6】
前記ミスト移動手段および負イオン移動手段は、共用される送風手段を用いたものであり、該送風手段は、前記筐体内に外気を吸入してこれを後流側の前記精油ミスト化部および前記負イオン発生ユニットに向かって送るものであることを特徴とする、請求項1ないし5のいずれかに記載の精油噴霧装置。
【請求項7】
前記送風手段から前記精油ミスト化部および前記負イオン発生ユニットへの送風路は、その後流側において、少なくとも該精油ミスト化部向けのミスト用流路と該負イオン発生ユニット向けの負イオン用流路とに分かれて形成されていることを特徴とする、請求項6に記載の精油噴霧装置。
【請求項8】
前記ミスト用流路の末端は前記精油槽の底部方向に向かって開口されており、前記負イオン用流路の末端は該精油槽から発生して移動するミストと前記負イオンとが出会えるように前記目的空間に向かって開口されていることを特徴とする、請求項7に記載の精油噴霧装置。
【請求項9】
前記精油は、ヒバ油その他の植物精油であることを特徴とする、請求項1ないし8のいずれかに記載の精油噴霧装置。


【図1】
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【公開番号】特開2007−111394(P2007−111394A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−307909(P2005−307909)
【出願日】平成17年10月22日(2005.10.22)
【出願人】(591269712)アンデス電気株式会社 (33)
【Fターム(参考)】