説明

精神ストレス評価とそれを用いた装置と精神ストレス評価方法とそのプログラム

【課題】心拍のゆらぎと呼吸情報を組み合わせて解析することによって、
被測定者のストレス状況を短時間にしかも精度よく計測する装置を開発する。
【解決手段】被測定者の心拍周期と呼吸周期を計測する生体情報計測部5と、この生体情報計測部5から計測した心拍周期と呼吸周期から,平均心拍周期と平均呼吸周期を求める平均周期解析部9と、心拍周期の任意の変数n(nは整数)及び任意の定数k(k≧1)に対してn拍目及び(n+k)拍目における心拍周期間隔RR(n)及びRR(n+k)を演算し,これらを2次元座標軸に対して座標点として入力する心拍ゆらぎ解析部10と、平均呼吸周期の平均心拍周期に対する比rを演算して,k=rとする補正を行う呼吸周期ゆらぎ補正部12を有し,補正を行った後の座標点の集合に対して,定量処理を施すことで被測定者の生体情報に関する定量値を得てストレスとして評価する精神ストレス評価部11とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者の精神的ストレス度を評価する精神ストレス評価ユニットとそれを用いた装置と精神ストレス評価方法とそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ストレスが多い現代社会においてストレスによる疲労を自覚している人は、国民の半数以上といわれている。人間がストレスを感じると不安、怒り、悲しみなど感情の反応が起こり、これらの心の状態はうつ病を代表とする心の病気になるだけでなく、疲労、食欲不振、発熱、不眠など身体状態にも影響を及ぼす。ストレスは、様々な疾病の一要因となっているばかりでなく、生活習慣病の遠因とも言われている。
このような背景から、近年では、メンタルヘルスの重要性が認識され、自身のストレス状況を認識し、ストレスコントロールを支援する機器へのニーズが高まっている。
一般に、人の精神ストレスは交感神経と副交感神経の亢進状態によって評価される。通常、交感神経と副交感神経のバランスはとれているが、精神ストレスによって自律神経が緊張してくると交感神経と副交感神経のバランスが乱れ、心拍のゆらぎに影響を与える。
心拍のゆらぎを用いて、身体状態の違いを可視化する手法のひとつにポアンカレ(ローレンツ)プロットがあり、広く知られている。
図22、図23は、心拍周期を計測する手段のひとつとして、心電図から心拍周期を計測し、ポアンカレプロットを生成する方法を示した図である。図22の符号40に示すような心電図波形が収集されると、まず、心拍と同期して発生するR波の位置が同定され、R波同士の間隔であるRR間隔、つまり、瞬時的な心拍周期が算出される。R波とは、心臓の収縮期と同期して発生する特徴的な波形で、RR間隔(RR(k))とは、R波のk拍目(kは任意の整数)と、その一つ前のR波、つまり、k−1拍目の拍動間隔をいう。図22に示すように、k拍目の時刻をt(k)と表記すると、k拍目のRR間隔RR(k)は次式で表される。RR間隔は、瞬時的な心拍間隔を求めたもので、瞬時的な心拍周期は、心電図以外の心音や脈波、血流などから計測することもできる。
【0003】
【数1】

【0004】
(1)式にて算出されたR-R間隔に基づいて、図23に示す2次元グラフ領域に、j番目の心拍周期RR(j)を横軸に、そのひとつ後j+1番目の心拍周期RR(j+1)を縦軸にプロットする。以降、j+1番目の心拍周期RR(j+1)を横軸に、j+2番目の心拍周期RR(j+2)を縦軸にプロットする。このような処理を連続するRR間隔に対して順次行うことで、ポアンカレプロットが生成される。
このようなポアンカレプロットを利用した装置としては、例えば特許文献1,2,3に開示された構成が知られている。特許文献1,2では、該当ポアンカレプロットを心電図波形の測定と並行してリアルタイムに表示させることで、被測定者がその場で心拍のゆらぎを把握できるリアルタイム拍動モニタが提案されている。特許文献3では、リアルタイムの表示に加えて呼吸のタイミングを指示することで自律神経の緊張を緩和させる機能を持った、ゆらぎ測定装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−212095号公報
【特許文献2】特開2001−212089号公報
【特許文献3】特開2008−36294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
心拍周期の変動は、自律神経における交感神経、副交感神経のバランス、血流や血圧、呼吸性洞性不整脈(RSA:Respiratory Sinus Arrhythmia)と呼ばれる呼吸リズムに同期した変動など、様々な生体活動に対して複雑に影響を受けて変化することが知られている。一方、ポアンカレプロットは、隣り合う心拍周期のばらつきを視覚的に表すことで、身体状態の変化を捉えることを目的としたものであるものの、呼吸動作によって生じる影響については考慮されていない。心拍周期の変動は、前述のとおり、自律神経における交感神経、副交感神経のバランス等によって生じるものであるが、生きている限り必要な通常の呼吸による影響が最も大きい。呼吸は自律神経に支配されているものの、意識によっても変動させることができる。このため、同じストレス状況でも呼吸の周期によって、違いが出にくい場合も多く、現状のポアンカレプロットだけでは、正確な精神ストレスの測定が難しかった。このようなことから、特許文献1乃至3に開示される発明においては、心拍変動の統計解析手法による指標、周波数解析手法による指標や、アンケートなどの定性的な指標を、医師をはじめとする専門家が総合的に判断する必要があった。すなわち、従来の技術においては、呼吸動作の影響を含めて心拍周期の変動に伴う精神状態を評価したものがなかった。
【0007】
本発明は、このような課題を解決すべくなされたものであって、被測定者のストレス状況を短時間にしかも自動的に、精度良く計測できる精神ストレス評価ユニットとそれを用いた装置と精神ストレス評価方法とそのプログラムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明である精神ストレス評価ユニットは、被測定者の心拍周期と呼吸周期を計測する生体情報計測部と、この生体情報計測部から計測した心拍周期と呼吸周期から,予め定めた所定時間内の平均心拍周期と平均呼吸周期を求める平均周期解析部と、前記心拍周期の任意の変数n(nは整数)及び任意の定数k(k≧1)に対してn拍目及び(n+k)拍目における心拍周期間隔RR(n)及びRR(n+k)を演算し,これらを2次元座標軸に対して座標点として入力する心拍ゆらぎ解析部と、前記平均呼吸周期の前記平均心拍周期に対する比rを演算して,k=rとする補正を行う呼吸周期ゆらぎ補正部を有し,前記補正を行った後の前記座標点の集合に対して,定量処理を施すことで前記被測定者の生体情報に関する定量値を得てストレスとして評価する精神ストレス評価部と、を有することを特徴とするものである。
このように構成される精神ストレス評価ユニットにおいては、生体情報計測部が心拍周期と呼吸周期を計測し、平均周期解析部が平均心拍周期と平均呼吸周期を解析し、心拍ゆらぎ解析部では、心拍周期間隔RR(n)及びRR(n+k)を演算して2次元座標軸に座標点として入力するように作用する。さらに、精神ストレス評価部は、平均周期解析部で解析された平均心拍周期と平均呼吸周期の比rを演算し、これを用いて心拍ゆらぎ解析部で解析された心拍周期間隔RR(n)及びRR(n+k)のkとrとして補正して2次元座標軸に対して座標点として入力し、さらにこのようにして得られた座標点の集合に対して定量値を得るための定量処理を施すことで、被測定者のストレスを評価するように作用する。
【0009】
また、請求項2に記載される発明は、請求項1記載の精神ストレス評価ユニットにおいて、前記精神ストレス評価部は、前記定量処理として前記補正を行った後の前記座標点の集合に対して,その外周囲の面積を演算し,この外周囲の面積を前記被測定者の生体情報に関する定量値としてストレスを評価することを特徴とするものである。
このように構成される精神ストレス評価ユニットにおいては、請求項1に記載の発明の作用に加えて、精神ストレス評価部が定量処理として補正後の座標点の集合に対してその外周囲の面積を演算して被測定者の生体情報に関する定量値としてストレスを評価するように作用する。
【0010】
請求項3に記載される発明は、請求項2記載の精神ストレス評価ユニットにおいて、 前記精神ストレス評価部は、前記定量処理として前記補正を行った後の前記座標点の集合に対して,その外周囲の面積を演算し,この外周囲の面積を前記被測定者の生体情報に関する定量値とし,この定量値に関する前記被測定者の平静時基準値とを比較してストレスを評価することを特徴とするものである。
このように構成される精神ストレス評価ユニットにおいては、請求項2に記載の発明の作用に加えて、精神ストレス評価部が被測定者の生体情報に関する定量値を用いてストレス評価するに加えて、定量値に関する被測定者の平静時基準値とを比較してストレスを評価するように作用する。
【0011】
請求項4に記載される発明は、請求項1記載の精神ストレス評価ユニットにおいて、 前記精神ストレス評価部は、前記定量処理として前記補正を行った後の前記座標点の集合に対して,その重心座標点と前記2次元座標軸の原点から前記重心座標点までの距離を演算し,この距離を前記被測定者の生体情報に関する定量値としてストレスを評価することを特徴とするものである。
このように構成される精神ストレス評価ユニットにおいては、請求項1に記載の発明の作用に加えて、精神ストレス評価部が定量処理として補正後の座標点の集合に対してその重心座標点と前記2次元座標軸の原点から前記重心座標点までの距離を演算して被測定者の生体情報に関する定量値としてストレスを評価するように作用する。
【0012】
請求項5に記載される発明は、請求項4記載の精神ストレス評価ユニットにおいて、 前記精神ストレス評価部は、前記定量処理として前記補正を行った後の前記座標点の集合に対して,その重心座標点と前記2次元座標軸の原点から前記重心座標点までの距離を演算し,この距離を前記被測定者の生体情報に関する定量値とし,この定量値に関する前記被測定者の平静時基準値とを比較してストレスを評価することを特徴とするものである。
このように構成される精神ストレス評価ユニットにおいては、請求項4に記載の発明の作用に加えて、精神ストレス評価部が被測定者の生体情報に関する定量値を用いてストレス評価するに加えて、定量値に関する被測定者の平静時基準値とを比較してストレスを評価するように作用する。
【0013】
請求項6に記載される発明は、請求項1記載の精神ストレス評価ユニットにおいて、 前記精神ストレス評価部は、前記定量処理として前記補正を行った後の前記座標点の集合(座標点がn個存在するとする)に対して,KL展開(Karhunen-Loeve expansion)を用いn個の主成分を抽出し,このn個の主成分の平均値ベクトルとその分散共分散行列を求めて,これを基準ベクトルとし,この基準ベクトルとのマハラノビス距離を演算し,このマハラノビス距離を前記被測定者の生体情報に関する定量値としてストレスを評価することを特徴とするものである。
このように構成される精神ストレス評価ユニットにおいては、請求項1に記載の発明の作用に加えて、精神ストレス評価部が定量処理として補正後の座標点の集合に対してKL展開(Karhunen-Loeve expansion)を用いn個の主成分を抽出し,このn個の主成分の平均値ベクトルとその分散共分散行列を求めて,これを基準ベクトルとし,この基準ベクトルとのマハラノビス距離を演算して被測定者の生体情報に関する定量値としてストレスを評価するように作用する。
【0014】
請求項7に記載される発明は、請求項6記載の精神ストレス評価ユニットにおいて、 前記精神ストレス評価部は、前記定量処理として前記補正を行った後の前記座標点の集合(座標点がn個存在するとする)に対して,KL展開(Karhunen-Loeve expansion)を用いn個の主成分を抽出し,このn個の主成分の平均値ベクトルとその分散共分散行列を求めて,これを基準ベクトルとし,この基準ベクトルとのマハラノビス距離を演算し,このマハラノビス距離を前記被測定者の生体情報に関する定量値とし,この定量値に関する前記被測定者の平静時基準値とを比較してストレスを評価することを特徴とするものである。
このように構成される精神ストレス評価ユニットにおいては、請求項6に記載の発明の作用に加えて、精神ストレス評価部が被測定者の生体情報に関する定量値を用いてストレス評価するに加えて、定量値に関する被測定者の平静時基準値とを比較してストレスを評価するように作用する。
【0015】
請求項8に記載される発明である精神ストレス評価装置は、請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載される精神ストレス評価ユニットと、前記2次元座標軸と,補正を行った後の前記座標点の集合と,前記被測定者の生体情報に関する定量値を示す表示部と、を備えることを特徴とするものである。
このように構成される精神ストレス評価装置においては、請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載される精神ストレス評価ユニットの作用に加えて、表示部が、2次元座標軸と、補正を行った後の前記座標点の集合と、被測定者の生体情報に関する定量値を示すように作用する。
【0016】
請求項9に記載される発明である精神ストレス評価方法は、被測定者の心拍周期と呼吸周期を計測する生体情報計測工程と、この生体情報計測工程で計測した心拍周期と呼吸周期から,予め定めた所定時間内の平均呼吸周期と平均心拍周期を求める平均周期計測工程と、前記心拍周期の任意の変数n(nは整数)及び任意の定数k(k≧1)に対してn拍目及び(n+k)拍目における心拍周期間隔RR(n)及びRR(n+k)を演算し,これらを2次元座標軸に対して座標点として入力する心拍ゆらぎ解析工程と、前記平均呼吸周期の前記平均心拍周期に対する比rを演算して,k=rとする補正を行う呼吸周期ゆらぎ補正工程と、前記補正を行った後の前記座標点の集合に対して,定量処理を施すことで前記被測定者の生体情報に関する定量値を得てストレスとして評価する精神ストレス評価工程と、を有することを特徴とするものである。
このように記載される発明である精神ストレス評価方法は、請求項1に記載される発明を方法発明として捉えたものであり、その作用は請求項1に記載の発明と同様である。
【0017】
請求項10に記載される発明である精神ストレス評価プログラムは、コンピュータにおいて、被測定者の心拍周期と呼吸周期を計測する生体情報計測工程と、この生体情報計測工程で計測した心拍周期と呼吸周期から,予め定めた所定時間内の平均呼吸周期と平均心拍周期を求める平均周期計測工程と、前記心拍周期の任意の変数n(nは整数)及び任意の定数k(k≧1)に対してn拍目及び(n+k)拍目における心拍周期間隔RR(n)及びRR(n+k)を演算し,これらを2次元座標軸に対して座標点として入力する心拍ゆらぎ解析工程と、前記平均呼吸周期の前記平均心拍周期に対する比rを演算して,k=rとする補正を行う呼吸周期ゆらぎ補正工程と、前記補正を行った後の前記座標点の集合に対して,定量処理を施すことで前記被測定者の生体情報に関する定量値を得てストレスとして評価する精神ストレス評価工程とを実行させることを特徴とするものである。
このように記載される発明である精神ストレス評価プログラムは、請求項1に記載される発明をプログラム発明として捉えたものであり、その作用は請求項1に記載の発明と同様である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の請求項1乃至請求項10に記載の発明においては、被測定者の精神的ストレスを、専門家の判断を仰ぐことなく精度の高い評価を実施することができる。また、簡易な構成であるため、携帯に便利であり、被測定者の生体情報を一定時間取得することができれば、精神的なストレスに対して自動的に評価をすることができる。
また、特に請求項1乃至請求項7に記載の精神ストレス評価ユニット及び請求項10に記載の精神ストレス評価プログラムにおいては、例えば携帯電話や携帯ゲーム機などに搭載可能であり、電話やゲームなどの機能に加えることで、それらの装置の付加価値を高めることができると同時に、利用者の健康管理に対する利便性も向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態に係る精神ストレス評価装置の外形図である。
【図2】実施の形態に係る精神ストレス評価装置のシステム構成図である。
【図3】実施の形態に係る精神ストレス評価装置の心拍周期計測部と呼吸周期計測部の詳細な構成を示すシステム構成図である。
【図4】呼吸の時間変動波形の一例を示す図である。
【図5】本発明の実施例1に係る精神ストレス評価ユニットを組み込んだ携帯電話の外形図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る精神ストレス評価ユニットを組み込んだ携帯ゲーム機の外形図である。
【図7】本実施の形態に係る精神ストレス評価方法の工程を示すフローチャートである。
【図8】(a)は従来のポアンカレプロットによる安静着席課題の解析結果を示す図であり、(b)は本実施例に係るポアンカレプロットによる精神ストレス課題の解析結果を示す図である。
【図9】(a)は従来のポアンカレプロットによる安静着席課題の解析結果を示す図であり、(b)は従来のポアンカレプロットによる精神ストレス課題の解析結果を示す図である。
【図10】(a)は改良型新ポアンカレプロットによる安静着席課題の解析結果を示す図であり、(b)は改良型新ポアンカレプロットによる精神ストレス課題の解析結果を示す図である。
【図11】実験時において改良型新ポアンカレプロットを連続的に適用した結果の図である。
【図12】図11から改良型新ポアンカレプロットの面積を計測することで、ストレスの有無を比較した結果を示す図である。
【図13】従来のポアンカレプロットの面積変化の時間推移を表す図である。
【図14】改良型新ポアンカレプロットの面積変化の時間推移を表す図である。
【図15】従来のポアンカレプロットの面積変化の平均を求め比較した結果を示す図である。
【図16】改良型新ポアンカレプロットの面積変化の平均を求め比較した結果を示す図である。
【図17】原点から重心までの距離の変化の平均を求め比較した結果を表す図である。
【図18】(a)は改良型新ポアンカレプロットの面積変化の平均を求め比較した結果を表す図であり、(b)は改良型新ポアンカレプロットの重心までの距離の変化を比較した結果を表す図である。
【図19】改良型新ポアンカレプロットの面積変化の平均と重心までの距離の変化を組み合わせて比較した結果を表す図である。
【図20】改良型新ポアンカレプロットの分布状況のパターン判別方式結果の平均を比較した結果を表す図である。
【図21】改良型新ポアンカレプロットの分布状況のパターン判別方式で求めた結果の時間推移を表す図である。
【図22】心拍(RR)間隔の時間変動波形の一例を示す図である。
【図23】心電図波形に基づくポアンカレプロット方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る精神ストレス評価装置の外形図であり、図2は、精神ストレス評価装置のシステム構成図である。図1に示すように、精神ストレス測定装置1は、外見上、心拍周期計測用電極2と呼吸周期計測用センサー3の2つのセンサーおよび精神ストレス評価の結果を示すための表示部4を備えている。
さらに、精神ストレス測定装置1の内部については、図2のシステム構成図に示されるが、生体情報計測装置5、精神ストレス解析部8及び記憶部14を備えている。
なお、精神ストレス評価ユニットは、このうち生体情報計測装置5と精神ストレス解析部8から構成されるものである。
【0021】
生体情報計測装置5は心拍周期計測部6と呼吸周期計測部7から構成される。心拍周期計測部6は図1に示される2つの心拍周期計測用電極2を備え、図1に示されるように、それぞれの電極を利用者は手で持ち、心筋の活動電位に起因する電位差を増幅器によって増幅させることによって心電図信号として計測できる。計測された心電図信号からピーク間時間を測定するなど所定の処理を施すことによって、個々の心拍周期を計測する。この心拍周期計測部6は、心拍周期が測定可能であれば、測定原理や装着部位に特に限定されず、例えば胸部や下肢などに専用電極を用いて計測することも可能である。このほか、心筋の活動電位を計測するのではなく、脈波、心音、血流量などからも計測可能である。
【0022】
呼吸周期計測部7は、図1に示される鼻孔に固定して使用するクリップ状の呼吸周期計測用センサー3を備える。これは、温度センサーであり、吸気と呼気の温度差を計測することによって呼吸を検知するものである。心拍周期同様、呼吸周期計測部7は、呼吸周期が測定可能であれば、測定原理や装着部位に特に限定されない。たとえば、呼吸による胸部や腹部の拡縮によって呼吸周期を計測する方法や、血中酸素量の変動から計測することも可能である。また、心拍周期と呼吸周期を同時に計測することも可能で、この場合は、心拍周期計測部6と呼吸周期計測部7が一体であってもよい。たとえば、心拍周期計測部6のみを使い、心電図のR波の振幅変動や心拍周期に含まれるRSA(呼吸性洞性不整脈)を検知することで呼吸周期計測を兼ねる構成にしてもよい。
【0023】
精神ストレス解析部8は、被測定者の心拍周期と呼吸周期を所望の一定時間蓄積記録しつつその一定時間における平均心拍周期と平均呼吸周期を解析する平均心拍周期・平均呼吸周期解析部9と、一定時間記録した心拍周期を用いて、心拍周期から精神ストレスに起因する微弱な心拍周期揺らぎの特徴を抽出する心拍揺らぎ解析部10と、平均心拍周期・平均呼吸周期解析部9において解析された平均心拍周期と平均呼吸周期を用いて、呼吸周期に由来するゆらぎ成分(RSA成分)を低減させる補正を実施する呼吸周期ゆらぎ補正部12と、心拍揺らぎ解析部10によって抽出された特徴から、呼吸周期ゆらぎ補正部12を用いて呼吸周期に由来するゆらぎ成分を除去したうえで、心拍周期から精神ストレスに起因する微弱な心拍周期揺らぎの特徴を抽出し、この結果に対して定量処理を施すことで定量値を解析し、この定量値をもってストレス状況を評価する精神ストレス評価部11と、評価された定量値(ストレス値)を表示することで精神ストレス状況を把握できる表示部11を備えている。
なお、呼吸周期ゆらぎ補正部12は、呼吸周期のゆらぎをもって心拍ゆらぎを補正するための補正部であることを意味し、呼吸周期のゆらぎ自体を補正するという意味ではない。
【0024】
次に、精神ストレス測定装置1あるいは精神ストレス評価ユニット(5,8)を用いて被測定者の精神ストレスを評価する方法を図1、図3を参照しながら説明する。図3は、心拍周期計測部6と呼吸周期計測部7の詳細な構成を示すシステム構成図である。
図1において、心拍周期計測用電極2と呼吸周期計測用センサー3を、身体の所定部位に装着した状態で、精神ストレス評価装置1を作動させると、心拍周期計測用電極2から得られる生体電位(ここでは心筋電位)、および呼吸周期計測用センサー3が吸気と呼気の温度差を計測する。これらから計測された信号は、図3に示されるそれぞれの増幅器21,31で増幅され、心拍周期計測と呼吸周期計測に最適な遮断周波数が設定されたフィルタ22,32を介して、アナログデジタル変換器23,33によって、デジタルデータとして心拍信号記録部24および呼吸信号記録部34に格納される。このとき心拍周期の計測に用いる心電図信号は、例えば先に説明した図22に示すような時間推移波形としての心電図波形40を有しており、呼吸周期計測のための計測データは、例えば図4に示すような時間推移波形としての呼吸波形41を有している。
【0025】
本実施の形態においては、心拍周期計測部6及び呼吸周期計測部7においてそれぞれ心拍信号記録部24と呼吸信号記録部34を備えて心拍周期と呼吸周期に関するデータが格納されるように示したが、図2にも示されるとおり、生体情報計測装置5や精神ストレス解析部8とは別個に記憶部14を設けて、この中に心拍周期計測データベース15及び呼吸周期計測データベース16として心拍周期と呼吸周期に関するデータを心拍周期計測部6や呼吸周期計測部7が読み出し可能に格納してもよい。もちろん、図2,3に示されるように両方を設けるようにしてもよい。その場合には、それぞれ格納されるデータは心拍周期計測部6や呼吸周期計測部7によって読み出されて同期され、再び格納されるようにしておくことが望ましい。
格納されたデータは、平均心拍周期・平均呼吸周期解析部9によって読みだされて、処理される。平均心拍周期・平均呼吸周期解析部9は、心拍周期計測部6に心拍信号記録部24が、呼吸周期計測部7に呼吸信号記録部34が設けられている場合には、これらから心拍周期、呼吸周期に関するデータを読み出し、また、記憶部14に心拍周期計測データベース15及び呼吸周期計測データベース16が設けられている場合には、これらから心拍周期、呼吸周期に関するデータを読み出してもよい。
平均心拍周期・平均呼吸周期解析部9は、心拍信号を処理するための拍動間隔検出処理部(図示せず)と、呼吸信号を処理するための呼吸間隔検出処理部(図示せず)を備えており、それぞれでデータを処理する。
【0026】
まず、拍動間隔検出処理部での処理について記述する。心拍信号記録部24(あるいは心拍周期計測データベース15)に格納された心電図波形データは、まず、身体の動きなどによる筋電位などに起因する基線揺動や高調波ノイズを除去するために、15Hz〜100Hzのバンドパスフィルタに通される。その後、これを前述のRR間隔として演算する。以下では、変換したRR間隔データの数をN、k番目のRR間隔をRR(k)とする。このとき、1≦k≦Nである。
【0027】
【数2】

【0028】
この式(1)で得られたRR間隔をk=1からk=Nまで加算して、これをNで除した値を式(2)として示すが、これが平均心拍周期meanRRIとなる。
【0029】
【数3】

【0030】
次に、記憶部34(あるいは呼吸周期計測データベース16)に格納された呼吸データから、呼吸間隔検出処理部で平均の呼吸周期を調べる手法を図4に基づいて示す。まず、呼吸波形41が上昇を始めたところから下降したところまでを1呼吸とみなし、測定したデータのすべての呼吸周期を求める。ここで、ある一定時間内に測定された呼吸周期の数をM [個]とする。ここで、l(小文字のエル)(1≦l(小文字のエル)≦M)番目の呼吸周期をRESP(l(小文字のエル))すると平均呼吸周期meanRESPは次の式で求められる。
【0031】
【数4】

【0032】
次に心拍ゆらぎ解析部10は、先に図23に示されるようなRR(n)とRR(n+k)を組にしたポアンカレプロットを2次元座標軸に座標点としてプロットするものである。なお、この座標点としてプロットするということは、RR(n)とRR(n+k)を組にしたポアンカレプロットを座標点のデータセットとして2次元座標軸上に表現可能に処理することを意味する。
次に、先の平均心拍周期・平均呼吸周期解析部9を用いて得られた平均心拍周期(式(2))と平均呼吸周期meanRESP(式(3))から、呼吸周期ゆらぎ補正部12では、まず、平均呼吸周期を平均心拍周期における拍数rに換算する。具体的にrは次の式(4)で求められる。
【0033】
【数5】

【0034】
このようにして求めたrを用いて、呼吸周期ゆらぎ補正部12では、心拍ゆらぎ解析部10で得られたRR(n)とRR(n+k)を組にしたポアンカレプロットに対して、kをrに置き換えて、2次元座標軸に座標点としてプロットされたポアンカレプロットを補正する。すなわち、呼吸周期ゆらぎ補正部12でRSA(呼吸性洞性不整脈)成分を低減する補正を実施した改良型新ポアンカレプロット(以下、改良型新ポアンカレプロット)を求める。
このようなポアンカレプロットの補正を行うことで、その後のポアンカレプロットは、いわば前述のRSA成分を低減した改良型新ポアンカレプロットとしてプロットされていることになる。
【0035】
精神ストレス測定部11では、呼吸周期ゆらぎ補正部12によって補正された後の改良型新ポアンカレプロットから精神ストレスの状況を定量処理して定量値を得る解析を実施する。その定量処理方法は、得られた改良型新ポアンカレプロットの外形、分布状況、重心、面積などを組み合わせた結果を用いて数的処理を行うことで定量値を求める方法と、さらにその方法に加えて事前に測定しておいた非ストレス時のデータ(定量値)を評価基準データとして比較を行うことで実施する。もちろん、非ストレス時のデータのみならず、ストレス時のデータを予め校正値(キャリブレーション値)として備えておき、解析によって得られた定量値をこの校正値で校正しながら、非ストレス時のデータ基準値と比較するようにしてもよい。これらの予め測定された非ストレス時のデータやストレス時のデータは、図2に示される記憶部14の評価基準データベース17に格納されており、精神ストレス評価部11は、適宜評価基準データベース17からこれらのデータを読み出して評価を行う。
なお、改良型新ポアンカレプロットの集合から精神ストレスの状況を定量処理するための方法については、実施例3乃至実施例7の方法を用いることができ、後述する。
精神ストレス評価部11における評価は、常に非ストレス時のデータを評価基準として評価されなくともよいと考えられる。それは、たとえば利用者(被測定者)が本実施の形態に係る精神ストレス評価装置1の使用を重ねることで、ある程度自分自身の通常値を把握できている場合には、測定した結果をそのまま定量値として示すことで利用者の精神ストレスの状況が把握できるためである。
また、ストレス評価に対する結果は、単に定量値として示したり、あるいは非ストレス時のデータと比較することでストレスの有無として出力するだけではなく、予め測定されたストレス時のデータをストレスの大小に合わせて定量的に複数そろえておき、これとの比較しながら示すことで、ストレスの程度として多段階で出力することもできる。
【0036】
精神ストレス評価部11における評価結果は、図1,2に示される表示部4によって、被測定者に提示される。表示の仕方としては、先の2次元座標軸に座標点としてプロットされたポアンカレプロットや改良型新のポアンカレプロット、また、定量処理された結果としての定量値、また、非ストレス時のデータやその値との比較結果、ストレスの有無に関する回答、さらには、ストレス時のデータやその値との比較結果、すなわち、段階的に示されるストレスの状況などである。図1の表示部4に示される4/5とは、5段階のストレスレベルのうちの4段階に位置していることを示しており、ストレスがある程度大きく評価されていることを示している。また、図1の表示部4には、他に改良型新ポアンカレプロットが2次元座標軸に含めて表示されている。
なお、この2次元座標軸と改良型新ポアンカレプロット(座標点の集合)は、評価と併せて表示されることが望ましいものの、必ずしも表示されなくともよい。最終的な精神ストレス状況に対する評価が表示されていれば被測定者は精神的な状態を把握し得るためである。
精神ストレス評価部11によって評価された被測定者のストレスに関するデータは、評価結果データベース18に読み出し可能に格納される。
なお、記憶部14は図2において示されるように精神ストレス解析部8とは別個独立に設けるように示されているが、これを精神ストレス解析部8の内部に構成するようにしてもよい。従って、精神ストレス評価ユニットとして用いる場合でも、記憶部14を含めて、この記憶部14に格納されている心拍周期計測データベース15、呼吸周期計測データベース16、評価基準データベース17及び評価結果データベース18も含めてユニットとして扱うようにしてもよい。
【0037】
以上説明したとおり、本実施の形態に係る精神ストレス評価装置1及び精神ストレス評価ユニットによれば、呼吸による心拍の影響を除くことで、より精度の高い精神ストレス評価が可能になり、被測定者の精神ストレス状況が短時間にしかも高精度に計測することが可能になる。呼吸による心拍の影響を除くことで、これまで医師などの専門家の判断を必要としていた評価よりも簡単に高精度の評価を実施することができる。また、精神ストレス評価ユニットとすることで、携帯電話や携帯ゲーム機、さらにはポータブルAV機器やモバイル型パソコン、携帯情報端末(PDA)などに容易に組み込むことが可能であり、場所や時間を選ぶことなく、利用者のストレス状態を計測、評価することが可能となり利用者の健康管理や精神状態の管理、把握を容易に実施することができる。もちろん、これらの機器の製造メーカにとっても高機能の装置や端末を提供できることで商品の高付加価値化を推進可能であり、消費者ニーズを捉えた商品作りを行うことも可能である。
【0038】
このように精神ストレス評価ユニットとして展開する場合の具体的な例を実施例1として、以下に図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0039】
実施例1は、これまで説明した実施の形態に係る精神ストレス評価ユニットを携帯電話に組み込んだことを特徴とするものである。
図5は本発明の実施例1に係る精神ストレス評価ユニットを組み込んだ携帯電話の外形図である。実施の形態における心拍周期計測用電極(2)を携帯電話50の上部と下部に備え、それぞれの上部電極51,51と下部電極52,52を手で持つことで心電図信号の計測を行う。
呼吸周期計測は、心電図のR波の振幅変動を利用して測定する。このほか、呼吸周期の計測は、呼吸性胴性不整脈の検知や、呼吸を測定するための独立したセンサーを取り付けて計測してもよい。この場合には、別途呼吸周期を測定するためのセンサーを接続するための端子を携帯電話50に備えるようにするとよい。また、上部電極51や下部電極52等の電極ではなく光電脈波計などを利用して脈波を検知して心拍周期を計測してもよく、その場合でも、呼吸性不整脈の検知や、呼吸を計測するための独立したセンサーを用いてもよい。
【0040】
図3に示される増幅器21、フィルタ22などの心拍周期計測部6および呼吸周期計測部7、平均心拍周期・平均呼吸周期解析部9、心拍ゆらぎ解析部10、精神ストレス評価部11、及び呼吸周期ゆらぎ補正部12は精神ストレス評価ユニットとして携帯電話に内蔵される。
精神ストレス評価部11で得られた精神ストレス評価の結果は、携帯電話の表示部53によって、被測定者に提示される。前述のとおり図2に示される記憶部14を精神ストレス解析部8に含めることによれば、もちろん、携帯電話50の内部に精神ストレス評価ユニットとして含まれることになる。あるいは、記憶部14は、携帯電話50に備えられている記憶部を共用してもよいことはいうまでもない。
このように、先に説明した本実施の形態に係る精神ストレス評価ユニットを日頃持ち運ぶ携帯電話に組み込むことで、日常生活でのストレス評価や、電話をかける際の精神安定性を測ることが可能になる。
さらに、精神ストレス評価ユニットとして展開する場合の具体的なもう一つの例を実施例2として、以下に図面を参照しながら説明する。
【実施例2】
【0041】
実施例2は、これまで説明した実施の形態に係る精神ストレス評価ユニットを携帯ゲーム機に組み込んだことを特徴とするものである。
図6は本発明の実施の形態に係る精神ストレス評価ユニットを組み込んだ携帯ゲーム機の外形図である。実施の形態における心拍周期計測用電極(2)を備えた外部インターフェース60をゲーム機61にとりつけ、電極62を両手で持つことで心電図計測を行う。また電極62ではなく、光電脈波計を利用して心拍をとってもよい。
呼吸は、心電図のR波の振幅変動を利用して行う。もしくは呼吸性不整脈の検知や、呼吸を測定するための独立したセンサーを利用しても良い。この場合も前述のとおり、別途呼吸周期を測定するためのセンサーを接続するための端子を外部インターフェース60あるいは携帯ゲーム機61に備えるとよい。
【0042】
図3に示される増幅器21、フィルタ22などの心拍周期計測部6および呼吸周期計測部7、平均心拍周期・平均呼吸周期解析部9、心拍ゆらぎ解析部10、精神ストレス評価部11、及び呼吸周期ゆらぎ補正部12は精神ストレス評価ユニットとして外部インターフェース60に内蔵される。心拍ゆらぎ解析部10、精神ストレス評価部11についてはゲーム機61の中央演算装置(CPU)を共用してもよい。
精神ストレス評価部11で得られた精神ストレス評価の結果は、ゲーム機61の表示部によって、被測定者に提示される。もしくは、判定結果をゲームの動作パラメータとして反映させることで精神ストレス状態によってゲームの展開を変化させたり、ストレス状況に応じて難易度が変化するアクションゲームなどを提供することもできる。また、嘘発見器などパーティグッズとして利用してもよい。
また、図6では携帯ゲーム機に取り付けるものとして提案しているが、据置き型ゲーム機のインターフェースとして、本実施例2を利用しても良い。このほか、地上デジタル放送の各種エンターテイメント系コンテンツなどへストレス状況を反映させることもできる。
このように、本実施の形態に係る精神ストレス評価ユニットをゲーム機に組み込むことで、ストレス状況を用い、反映させることで、新たなエンターテイメントを提供することもできる。
【0043】
次に、本発明の他の実施の形態に係る精神ストレス評価方法とそのプログラムについて図7を参照しながら説明する。
図7は、本実施の形態に係る精神ストレス評価方法の工程を示すフローチャートであり、また、コンピュータに実行させるための工程を示してプログラムの実施の形態について説明するものでもある。
図7において、ステップS1は生体情報計測工程を示しており、この生体情報計測工程は、ステップS1−1の心拍周期計測工程とステップS1−2の呼吸周期計測工程に分けることができる。但し、このステップS1−1とステップS1−2は便宜的に順序をつけているものであり、逆順としてもよい。
ステップS1−1では、先に説明した生体情報計測装置5の心拍周期計測部6において実施されることとして説明したように、被測定者の心拍周期を計測するものである。また、ステップS1−2では、同様に呼吸周期計測部7において実施されることとして説明した呼吸周期を測定するものである。
ステップS1において測定された心拍周期に関するデータと呼吸周期に関するデータを用いて、ステップS2では、その平均周期を解析する。平均周期を解析するにあたっては、予め定めた一定の時間における心拍周期と呼吸周期の平均値を解析し、それぞれ平均心拍周期と平均呼吸周期とする。
この工程は、先に説明した精神ストレス解析部8の平均心拍周期・平均呼吸周期解析部9において実行される工程として捉えることが可能である。したがって、心拍信号を処理するための拍動間隔検出処理工程や、呼吸信号を処理するための呼吸間隔検出工程を備えており、それぞれの工程でデータを処理してRR間隔やRESPを演算し、平均周期を解析する。
【0044】
つぎに、ステップS3では、先に説明した心拍ゆらぎ解析部10の機能を工程として捉えるものであり、心拍ゆらぎ解析部10と同じくポアンカレプロットを2次元座標軸上に座標点として入力するものである。
さらに、ステップS4では、精神ストレス解析部8の呼吸周期ゆらぎ補正部12の機能を工程として捉えるものであり、ステップS2で得られた平均呼吸周期を平均心拍周期における拍数rに換算し、このrの値をステップS3において得られるRR(n)とRR(n+k)を組にしたポアンカレプロットに対して、kをrに置き換えて、2次元座標軸に座標点としてプロットされたポアンカレプロットを補正するのである。
このようにして得られた補正された改良型新ポアンカレプロットの2次元座標軸上での集合に対して、ステップS5では、精神ストレス評価を実施する。このステップS5は、ステップS5−1として定量処理工程と、ステップS5−2として基準値比較処理工程の2工程が存在する。
このステップS5の工程は、先に説明した精神ストレス評価部11の機能を工程として捉えたものである。したがって、このステップS5で実施される処理は、すでに説明した精神ストレス評価部11における処理と同様である。
また、これらのステップS1からステップS5までに実行される工程におけるデータのやりとりも、先に説明した精神ストレス評価ユニットと精神ストレス評価装置に関する実施の形態における説明と同様である。
【0045】
したがって、これらの工程ステップS1からステップS5までをコンピュータに実行させる場合には、先に説明した生体情報計測装置5、精神ストレス解析部8、表示部4及び記憶部14がそれぞれコンピュータにおけるセンサや測定装置、演算処理装置、ディスプレイ、記憶装置などに相当し、また、コンピュータ本体に備えられていない装置については外付けの装置を想定しながら、それらを動作させるためにプログラミングされることを意味している。したがって、これらのステップS1からステップS5までをコンピュータに実行させるためのプログラムの実施の形態の説明として成立するものである。また、このようなプログラムにおいても、それぞれ測定されたデータや予め格納されているデータ、さらには解析後に得られるデータや評価結果に関するデータは、それぞれコンピュータを構成するハードウェア間で読みだしたり格納されたりするものであり、そのコンピュータ上のハードウェアは、先の実施の形態において説明した精神ストレス評価ユニット及び精神ストレス評価装置を構成するハードウェアに対応してコンピュータにおいて想定されるハードウェアである。
図7では、生体情報計測装置5、精神ストレス解析部8、表示部4、記憶部14が表示されているが、これはこれらのハードウェアの機能を備えたハードウェアを備えるものであればよく、コンピュータ上に想定されるハードウェアでもよいことは言うまでもない。
このように構成される精神ストレス評価方法あるいは精神ストレス評価プログラムにおいても、先に説明した精神ストレス評価ユニット及び精神ストレス評価装置における効果と同様の効果を発揮し得る。
【0046】
また、実施例1及び実施例2として示した携帯電話や携帯ゲーム機の他、先に述べたポータブルAV機器やモバイル型パソコン、携帯情報端末(PDA)などにプログラムとして容易に組み込むことが可能である。但し、ハードウェアとして不足する構成要素については別途内蔵あるいは外付けの付属機器とする必要がある。
次に、以上説明した実施の形態あるいは実施例について、実際のデータを用いてストレスの評価を実施してみたので、これを実施例3として説明する。
【実施例3】
【0047】
ある被験者に対して、暗算課題をストレス課題とし、本実施の形態に係る精神ストレス評価方法の精度確認を行った。被験者は、短い時間間隔(10秒間隔)で出題される暗算課題(例えば3桁と1桁の自然数の乗算など)を解き、答えに該当する数字を、テンキーを介して入力回答する。これにより、軽度のパニック性の精神的ストレス、計算に連続して回答しなければならないための疲労ストレスを受ける。さらに、暗算課題を間違えたときは不快な警告音をだすことで、正答しなければいけないという緊張性のストレスも受ける。暗算によるストレス課題に対する対象的な状況として、暗算課題の前後に10分間程度座位のまま安静状態での計測も行った。
各課題の被験者の心電図と呼吸を計測し、隣接する心拍周期の関係をプロットした、従来のポアンカレプロットを行った結果を図8に示す。図8(a)が安静着席課題を行ったときの改良型新ポアンカレプロット、図8(b)が精神ストレス課題を行ったときのポアンカレプロットである。
安静時においては、心拍周期は700[ms]〜1200[ms]で比較的長く、ばらつきも大きいが、ストレス課題を与えている時にプロットした図8(b)では、心拍周期が短くなり(心拍数が速くなり)、ばらつきが小さくなる、つまり、プロットした点群が集中することで、プロット面積が小さくなっている。なお、図8(a)、(b)中に示されるL/Tとは、Tがプロットの集合における長軸長であり、Lが同じく短軸長である。すなわち、長軸長は、プロットの集合が存在している範囲の縦軸yと横軸xにおいてy=xの軸上の範囲長さを意味しており、短軸長は、このy=xへプロットの集合から垂線を下ろした際に最も長い距離を意味しているものである。この図8(a)では、L/Tが6.39であり、図8(b)では同様に2.80であることから図8(a)に示されるプロットの集合の方が(b)に示されるプロットの集合よりもばらついて分布していることが定量的に理解される。
したがって、このL/Tを定量値として被検者のストレス状況として評価してもよいと考えられる。
【0048】
図9は、図8とは異なる被験者に対して同様な手法を適用してポアンカレプロットを求めた結果である。図9(a)は安静時、図9(b)はストレス課題時の時の結果であるが、このポアンカレプロットでは呼吸周期ゆらぎ補正部による補正を実施していないため、両者の違いがほとんどわからなくなっている。
しかしながら、本願発明の実施の形態における呼吸周期ゆらぎ補正部を用いて得られた改良型新ポアンカレプロットを適用した結果が図10である。この改良型新ポアンカレプロットとは、呼吸周期ゆらぎ補正部12を用いて補正を行った後のポアンカレプロットを意味するものである。図10(a)が安静時で、比較的ばらつきが見られるが、図10(b)のストレス課題時にはプロットが集中することで、違いを明確にすることができる。更に、改良型新ポアンカレプロットを、計測時間推移に沿って示したものが図11である。それぞれの図上に記してある時刻の符号70で示されている個所は、それぞれの改良型新ポアンカレプロットが終了した時の、実験開始から経過した時間を意味する。また、それぞれの改良型新ポアンカレプロットでは100秒間のデータを利用している。この実験では、940〜1640秒にかけてストレス課題を与えている。図11の四角で囲った部分で、符号71で示されている個所がストレス課題を与えた部分に相当するが、その前後の安静時に比べて形状が異なっていることがわかる。
更に、ポアンカレプロットの簡易指標のひとつとして、ポアンカレプロットのプロット面(プロットの集合)を外形線で囲み、その面積を求める方法がある。図12に安静着席課題と精神ストレス課題とで比較した結果を示す。図12の縦軸は面積を規格化したものである。これをみると、安静着席課題と精神ストレス課題の間に明確な差を見て取ることができる。更に、8名の被験者に対しても同様の測定を実施し、ストレス課題を与えているときと、その前後の安静時において、有意な差があるかt検定を用いて検証した。その結果、危険率1%で有意な差があることを確認している。
【実施例4】
【0049】
実施例3と同様の実験を別の被験者に対して行った。実験後のアンケートでは被験者から「計算中にあせりがどちらかといえばあった」「計算中、どちらかといえば緊張していた」という回答があり、被験者は計算負荷中緊張していたことが分かっている。
図13は従来のポアンカレプロットを利用したときの面積変化(73)、図14は本願発明による手法である改良型新ポアンカレプロットを利用したときの面積変化(75)である。図13、14で縦軸は面積を規格化したものである。両図面で、リラックス状態73、76と計算負荷状態74,77を比較した場合、本願発明の手法の方が、明らかに面積変化が大きいことが分かる。
リラックス状態と計算負荷状態における面積の平均を示したのが図15と図16である。図15は呼吸効果を考慮しない従来のアンカレプロットを適用したときの結果で、図16は、改良型新ポアンカレプロットを適用したときの結果である。図15、16の縦軸は面積を規格化したものである。この被験者の場合、従来のポアンカレプロットを適用してストレス指標を求めた図15では、ストレス印加時に面積が増加している。つまり、ストレスを感じているのに、この指標では、ストレスが低減していると示している。この指標だけでは、正確なストレス計測が出来ていないことがわかる。この結果に対し、改良型新ポアンカレプロットを適用して面積指標を求めた、図16では、ストレス課題時に明示的に面積が減少している。以上のことから、従来のポアンカレプロットと比較して改良型新ポアンカレプロットが正確に心理状態を捉えていることが分かる。
【実施例5】
【0050】
面積変化を用いた測定の他に、プロット重心を用いて測定することもできる。
重心とは、ポアンカレプロットを横軸上に投影した時の平均RRI(=aveRRI),縦軸上に投影した時の平均RRI(=aveRRI)から(aveRRI,aveRRI)と求めることができる。ここでは、指標として原点から重心までの距離gを採用した。gは次式(5)で求めることができる。
【0051】
【数6】

【0052】
結果を図17に示す。ただし、ここでgは正規化を行っている。図から分かるように、ストレス印加時に、gが小さくなっていることが分かる。
【実施例6】
【0053】
また、上記で求めた複数の指標を組み合わせることも可能である。ここでは面積と重心を組み合わせる。なお、複数の説明変数に対する重回帰分析などの判別分析方法を採用することも可能であるが、ここでは説明を容易にするため、面積とgを掛け合わせたもので行った。
結果を図18に示す。図18(a)が面積のみで評価を行ったもの、図18(b)が原点から重心までの距離で評価を行ったもの、図19が二つの指標を利用して算出した結果である。なお、ここではストレス印加時のデータを1と規格化している。図から図19が最も差を明確に表していることが分かる。より、精度の高い測定を行うことが可能となっている。
【実施例7】
【0054】
次に、ポアンカレプロットの分布状況によるパターン判別手法を利用して、ストレス状態を計測する方法について説明する。基準パターンとしては、ストレス印加状態のポアンカレプロットとした。
この散布図の分布状況を効率よく表す手法としてKL展開(Karhunen-Loeve expansion)を用いn個の主成分を抽出する。これを基準パターンとして学習するポアンカレプロットすべてに行う。得られたn個の主成分の平均値ベクトルを下式(6)として、
【0055】
【数7】

【0056】
この平均値ベクトルμと、その分散共分散行列Σを求めて、これを基準ベクトルとする。
これを用いて、基準ベクトルとのマハラノビス距離を求めることで、ストレス状況の指標とすることができる。つまり、マハラノビス距離が小さければ緊張状態にあり、逆に大きければ安静状態であると推測できる。
【0057】
図20はある被験者に対し、ストレス(計算負荷)を与えたときのマハラノビス距離を求めた結果である。
【0058】
また、図21に、計測時間100[s]で、1[min]毎に連続計測した結果の時間推移グラフを示す。計算ストレスを与えている時間はグラフ上の1898〜2805[s]である。なお、基準パターンに利用したデータと、判別を行ったデータは別の日に取得したものである。計算負荷中に急激にマハラノビス距離が小さくなり、ストレス印加状態に入っていることが分かる。図21において、符号80は改良型新ポアンカレプロットの分布状況のパターン判別方式によって得られた結果の時間推移であり、符号81はリラックス状態範囲で、符号82は計算負荷状態範囲である。
このように、提案手法による改良型新ポアンカレプロットを用いれば、その分布状況から得た特徴を利用することで、高精度なストレス測定をすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上説明したように、本発明の請求項1乃至請求項10に記載された発明は、被測定者の精神ストレス状況が短時間にしかも高精度に計測すること可能な精神ストレス評価装置、精神ストレス評価ユニット、精神ストレス評価プログラムを提供することが可能であり、個人的な健康管理ツールとして携帯されたり、一般の企業の健康管理室や学校の保健室に常備される健康管理器具あるいは生体情報計測器具として利用される可能性がある。もちろん、医療機関や介護施設などで簡易に手軽に利精神ストレス評価のために利用される可能性も高い。
【符号の説明】
【0060】
1…精神ストレス評価装置 2…心拍周期計測用電極 3…呼吸周期計測用センサー 4…表示部 5…生体情報計測装置 6…心拍周期計測部 7…呼吸周期計測部 8…精神ストレス解析部 9…平均心拍周期・平均呼吸周期解析部 10…心拍ゆらぎ解析部 11…精神ストレス評価部 12…呼吸周期ゆらぎ補正部 14…記憶部 15…心拍周期計測データベース 16…呼吸周期計測データベース 17…評価基準データベース 18…評価結果データベース 21…増幅器 22…フィルタ 23…アナログデジタル変換器 24…心拍信号記録部 31…増幅器 32…フィルタ 33…アナログデジタル変換器 34…呼吸信号記録部 40…心電図波形 41…呼吸波形 50…携帯電話 51…上部電極 52…下部電極 53…表示部 60…外部インターフェース 61…携帯ゲーム機 62…電極 70…ポアンカレプロットの終了時刻 71…精神ストレス課題を与えた範囲 72…ポアンカレプロットの面積変化 73…リラックス状態範囲 74…計算負荷状態範囲 75…改良型新ポアンカレプロットの面積変化 76…リラックス状態範囲 77…計算負荷状態範囲 80…改良型新ポアンカレプロットの分布状況のパターン判別方式によって得られた結果の時間推移 81…リラックス状態範囲 82…計算負荷状態範囲


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定者の心拍周期と呼吸周期を計測する生体情報計測部と、この生体情報計測部から計測した心拍周期と呼吸周期から,予め定めた所定時間内の平均心拍周期と平均呼吸周期を求める平均周期解析部と、前記心拍周期の任意の変数n(nは整数)及び任意の定数k(k≧1)に対してn拍目及び(n+k)拍目における心拍周期間隔RR(n)及びRR(n+k)を演算し,これらを2次元座標軸に対して座標点として入力する心拍ゆらぎ解析部と、前記平均呼吸周期の前記平均心拍周期に対する比rを演算して,k=rとする補正を行う呼吸周期ゆらぎ補正部を有し,前記補正を行った後の前記座標点の集合に対して,定量処理を施すことで前記被測定者の生体情報に関する定量値を得てストレスとして評価する精神ストレス評価部と、を有することを特徴とする精神ストレス評価ユニット。
【請求項2】
前記精神ストレス評価部は、前記定量処理として前記補正を行った後の前記座標点の集合に対して,その外周囲の面積を演算し,この外周囲の面積を前記被測定者の生体情報に関する定量値としてストレスを評価することを特徴とする請求項1記載の精神ストレス評価ユニット。
【請求項3】
前記精神ストレス評価部は、前記定量処理として前記補正を行った後の前記座標点の集合に対して,その外周囲の面積を演算し,この外周囲の面積を前記被測定者の生体情報に関する定量値とし,この定量値に関する前記被測定者の平静時基準値とを比較してストレスを評価することを特徴とする請求項2記載の精神ストレス評価ユニット。
【請求項4】
前記精神ストレス評価部は、前記定量処理として前記補正を行った後の前記座標点の集合に対して,その重心座標点と前記2次元座標軸の原点から前記重心座標点までの距離を演算し,この距離を前記被測定者の生体情報に関する定量値としてストレスを評価することを特徴とする請求項1記載の精神ストレス評価ユニット。
【請求項5】
前記精神ストレス評価部は、前記定量処理として前記補正を行った後の前記座標点の集合に対して,その重心座標点と前記2次元座標軸の原点から前記重心座標点までの距離を演算し,この距離を前記被測定者の生体情報に関する定量値とし,この定量値に関する前記被測定者の平静時基準値とを比較してストレスを評価することを特徴とする請求項4記載の精神ストレス評価ユニット。
【請求項6】
前記精神ストレス評価部は、前記定量処理として前記補正を行った後の前記座標点の集合(座標点がn個存在するとする)に対して,KL展開(Karhunen-Loeve expansion)を用いn個の主成分を抽出し,このn個の主成分の平均値ベクトルとその分散共分散行列を求めて,これを基準ベクトルとし,この基準ベクトルとのマハラノビス距離を演算し,このマハラノビス距離を前記被測定者の生体情報に関する定量値としてストレスを評価することを特徴とする請求項1記載の精神ストレス評価ユニット。
【請求項7】
前記精神ストレス評価部は、前記定量処理として前記補正を行った後の前記座標点の集合(座標点がn個存在するとする)に対して,KL展開(Karhunen-Loeve expansion)を用いn個の主成分を抽出し,このn個の主成分の平均値ベクトルとその分散共分散行列を求めて,これを基準ベクトルとし,この基準ベクトルとのマハラノビス距離を演算し,このマハラノビス距離を前記被測定者の生体情報に関する定量値とし,この定量値に関する前記被測定者の平静時基準値とを比較してストレスを評価することを特徴とする請求項6記載の精神ストレス評価ユニット。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載される精神ストレス評価ユニットと、前記2次元座標軸と,補正を行った後の前記座標点の集合と,前記被測定者の生体情報に関する定量値を示す表示部と、を備えることを特徴とする精神ストレス評価装置。
【請求項9】
被測定者の心拍周期と呼吸周期を計測する生体情報計測工程と、この生体情報計測工程で計測した心拍周期と呼吸周期から,予め定めた所定時間内の平均呼吸周期と平均心拍周期を求める平均周期計測工程と、前記心拍周期の任意の変数n(nは整数)及び任意の定数k(k≧1)に対してn拍目及び(n+k)拍目における心拍周期間隔RR(n)及びRR(n+k)を演算し,これらを2次元座標軸に対して座標点として入力する心拍ゆらぎ解析工程と、前記平均呼吸周期の前記平均心拍周期に対する比rを演算して,k=rとする補正を行う呼吸周期ゆらぎ補正工程と、前記補正を行った後の前記座標点の集合に対して,定量処理を施すことで前記被測定者の生体情報に関する定量値を得てストレスとして評価する精神ストレス評価工程と、を有することを特徴とする精神ストレス評価方法。
【請求項10】
コンピュータにおいて、被測定者の心拍周期と呼吸周期を計測する生体情報計測工程と、この生体情報計測工程で計測した心拍周期と呼吸周期から,予め定めた所定時間内の平均呼吸周期と平均心拍周期を求める平均周期計測工程と、前記心拍周期の任意の変数n(nは整数)及び任意の定数k(k≧1)に対してn拍目及び(n+k)拍目における心拍周期間隔RR(n)及びRR(n+k)を演算し,これらを2次元座標軸に対して座標点として入力する心拍ゆらぎ解析工程と、前記平均呼吸周期の前記平均心拍周期に対する比rを演算して,k=rとする補正を行う呼吸周期ゆらぎ補正工程と、前記補正を行った後の前記座標点の集合に対して,定量処理を施すことで前記被測定者の生体情報に関する定量値を得てストレスとして評価する精神ストレス評価工程とを実行させることを特徴とする精神ストレス評価プログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2010−234000(P2010−234000A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−88221(P2009−88221)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(509164164)地方独立行政法人山口県産業技術センター (22)
【Fターム(参考)】