説明

精製水製造装置

【課題】装置内における原水や精製水の滞留が低減され、細菌の繁殖およびエンドトキシンの発生が抑えられると同時に、装置の維持管理が容易であり、かつ、得られる精製水の製造量を維持しつつ、活性炭の圧密化を防止することで活性炭フィルタの寿命を延命できる精製水製造装置。
【解決手段】原水を昇圧する第1の昇圧手段と、該第1の昇圧手段によって昇圧された原水を活性炭で濾過して残留塩素を除去する残留塩素除去手段と、残留塩素が除去された原水を昇圧する、前記第1の昇圧手段とは異なる第2の昇圧手段と、該第2の昇圧手段によって昇圧された原水をナノ濾過膜によって軟水化する軟水化手段と、軟水化された原水を逆浸透膜で濾過して精製水を得る精製手段とを具備することを特徴とする精製水製造装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用途、特に、人工透析などに使用される精製水を製造する精製水製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人工透析において使用される透析液としては、透析液の原液を高純度の精製水で希釈したものが使用される。この人工透析用の精製水には、カルシウム、鉄などの2価の陽イオン、残留塩素、細菌類、不純物などを含まないことが要求される。
このような精製水を得るために、従来の精製水製造装置においては、活性炭を用いた前処理手段によって原水中の残留塩素を除去し、イオン交換樹脂を用いた前処理手段によって原水を軟水化し、さらに、原水を逆浸透膜(RO膜)モジュールに通水し、細菌類、不純物等を濾過することで精製水を製造している。
【0003】
ところで、近年、細菌の死骸から発生するエンドトキシンなどの発熱因子による精製水の汚染が重要視されてきている。このエンドトキシンは、紫外線ランプを用いて精製水を殺菌しても精製水中に残留する。また、イオン交換樹脂を用いた前処理手段は、原水の滞留が起こりやすく、細菌の繁殖やエンドトキシンが発生する可能性がある。さらに、逆浸透膜モジュールにおいては、その構造上、該モジュール内に偏流を生じたり、滞留気味になりやすく、細菌の繁殖やエンドトキシンが発生する可能性がある。
特に、夜間など精製水を製造しないときには、装置内の各所に滞留水が発生し、これらの問題が顕著となる。精製水を製造しないときに装置内の滞留水を抜液すれば、細菌の繁殖やエンドトキシンの発生を回避されるものの、イオン交換樹脂、逆浸透膜モジュールは、乾燥させると性能が低下する場合がある。
【0004】
また、従来の精製水製造装置においては、前処理手段に使用しているイオン交換樹脂の能力が低下したときに、イオン交換樹脂の再生を行う必要があった。このイオン交換樹脂の再生のためには、前処理手段にイオン交換樹脂再生用の薬剤を供給するための再生塩タンクを別途設ける必要があり、また、イオン交換樹脂の再生時期の管理、薬剤の調製、イオン交換樹脂の再生操作などが必要となり、装置の維持管理に多大な労力が必要であるという問題もあった。
【0005】
そこで、前処理手段の維持管理の労力を低減でき、かつ、逆浸透膜モジュールおよび精製水の流路に精製水を滞留させない精製水製造装置として、特許文献1の精製水製造装置が提案されている。特許文献1の精製水製造装置は、図2に示すように、従来広く用いられてきたイオン交換樹脂の代わりに、ナノ濾過膜モジュール61を逆浸透膜モジュール12の上流に設けることにより、前記問題を解決している。
この装置は、原水タンク10から送水される原水を、原水ポンプ30で昇圧してから活性炭フィルタ60に供給し、原水中の残留塩素を除去する。そして、残留塩素が除去された原水を、ナノ濾過膜モジュール61に通水して軟水化し、かつ、下流への細菌とエンドトキシンの流入を防止する。そして、この軟水化された原水を、逆浸透膜モジュール12に供給して、細菌類、不純物等を濾過し、得られた精製水を精製水タンク13に貯留する。そして、貯留された精製水は、精製水送水ライン43を通じて提供される。
また、この装置は、精製水タンク13に貯留された精製水を逆浸透膜モジュール12の上流に返送する返送ライン74と、返送ライン74の途中で返送される精製水を一時貯留する薬液タンク兼一時貯留タンク63とを設け、精製水を製造しないときに逆浸透膜モジュール12の精製水を循環させることで、滞留水の発生による細菌の繁殖やエンドトキシンの発生を抑制している。
この特許文献1の精製水製造装置において、充分な量の軟水化された原水を得るためには、一定以上に昇圧した原水をナノ濾過膜モジュール61に供給することが必要である。このため、ナノ濾過膜モジュール61に供給される原水には、原水ポンプ30によって約0.6〜1.5MPa程度の圧力が掛けられる。
【特許文献1】特開2004−8958号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の精製水製造装置では、原水ポンプ30によって原水に高圧を掛けるため、原水ポンプ30の下流にある活性炭フィルタ60にも高圧が掛かり、活性炭フィルタ60の内部に充填されている活性炭が圧密化(多孔構造が崩れて圧縮されること)し、活性炭の通水性が悪くなり、活性炭フィルタ60の寿命が短命化する恐れがあった。これに対して、活性炭が圧密化しないように原水に掛ける圧力を低圧にすると、原水がナノ濾過膜を充分に透過できず、軟水化された原水の量が不充分となり、ひいては精製水の製造量が不充分となる。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであって、装置内における原水や精製水の滞留が低減され、細菌の繁殖およびエンドトキシンの発生が抑えられると同時に、装置の維持管理が容易であり、かつ、得られる精製水の製造量を維持しつつ、活性炭の圧密化を防止することで活性炭フィルタの寿命を延命できる精製水製造装置を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
(1)原水を昇圧する第1の昇圧手段と、該第1の昇圧手段によって昇圧された原水を活性炭で濾過して残留塩素を除去する残留塩素除去手段と、残留塩素が除去された原水を昇圧する、前記第1の昇圧手段とは異なる第2の昇圧手段と、該第2の昇圧手段によって昇圧された原水をナノ濾過膜によって軟水化する軟水化手段と、軟水化された原水を逆浸透膜で濾過して精製水を得る精製手段とを具備することを特徴とする精製水製造装置。
(2)第1の昇圧手段が低圧ポンプであり、第2の昇圧手段が高圧ポンプである(1)に記載の精製水製造装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明の精製水製造装置によると、装置内における原水や精製水の滞留が低減され、細菌の繁殖およびエンドトキシンの発生が抑えられると同時に、装置の維持管理が容易であり、かつ、得られる精製水の製造量を維持しつつ、活性炭の圧密化を防止することで活性炭フィルタの寿命を延命できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明の精製水製造装置を説明する。
図1は、本発明の精製水製造装置の一例を示す概略構成図である。
この精製水製造装置は、水道などから供給される原水を貯留する原水タンク10と、原水タンク10から送られる原水中の残留塩素を除去する活性炭が収納された活性炭フィルタ60と、ナノ濾過膜エレメントが収納されたナノ濾過膜モジュール61(軟水化手段)と、軟水化された原水を逆浸透膜で濾過して精製水を得る、並列に配置された逆浸透膜モジュール12,12(精製手段)と、精製水を貯留する精製水タンク13と、精製水タンク13内の精製水を殺菌する紫外線ランプ14と、薬洗時に逆浸透膜モジュール12および精製水タンク13を洗浄・消毒する薬液を貯留する薬液タンク兼一時貯留タンク63とを具備する。
【0010】
さらに、この精製水製造装置は、一端が原水タンク10に接続し、他端が活性炭フィルタ60(残留塩素除去手段)に接続し、途中に電動弁20およびこれより下流側に第1の原水ポンプ32(第1の昇圧手段)が設けられた原水供給ライン40と、一端が活性炭フィルタ60に接続し、他端がナノ濾過膜モジュール61に接続し、途中に第2の原水ポンプ34(第2の昇圧手段)が設けられた原水移送ライン70とを具備する。また、一端がナノ濾過膜モジュール61に接続し、他端が逆浸透膜モジュール12,12に接続し、途中に電動弁21およびこれより下流側に加圧ポンプ31が設けられた軟水移送ライン41と、一端が逆浸透膜モジュール12,12に接続し、他端が精製水タンク13に接続し、途中に逆止弁22,22が設けられた精製水移送ライン42と、一端が精製水タンク13に接続し、途中に送水ポンプ33およびこれより下流側に電動弁23が設けられた精製水送水ライン43とを具備する。また、一端が逆浸透膜モジュール12,12に接続し、途中に流量調整弁24およびこれより下流側に電動弁25が設けられた濃縮水排出ライン44と、一端が濃縮水排出ライン44の流量調整弁24と電動弁25との間から分岐し、他端が電動弁21と加圧ポンプ31との間の軟水移送ライン41に接続し、途中に電動弁26およびこれより下流側に逆止弁27が設けられた濃縮水返送ライン45と、一端が濃縮水排出ライン44の電動弁25よりも下流側から分岐し、他端が原水タンク10に接続し、途中に電動弁80が設けられた濃縮水返送ライン71とを具備する。
【0011】
また、この精製水製造装置は、一端がナノ濾過膜モジュール61に接続し、途中に流量調整弁81が設けられた濃縮水排出ライン72と、一端が濃縮水排出ライン72の流量調整弁81よりも下流側から分岐し、他端が活性炭フィルタ60と原水ポンプ34との間の原水移送ライン70に接続し、途中に逆止弁82が設けられた濃縮水返送ライン73とを具備する。また、一端が精製水送水ライン43の送水ポンプ33と電動弁23との間から分岐し、他端が精製水タンク13に接続する精製水循環ライン46と、一端が精製水送水ライン43の送水ポンプ33と電動弁23との間から分岐し、途中に電動弁28が設けられた精製水排出ライン47と、これら電動弁、流量調整弁、各ポンプに電気的に接続してこれらの制御を行う制御部(図示略)を具備して概略構成されるものである。
また、この精製水製造装置は、一端が精製水送水ライン43の送水ポンプ33と電動弁23との間から分岐し、他端が薬液タンク兼一時貯留タンク63に接続し、途中に電動弁83が設けられた精製水返送ライン74と、一端が薬液タンク兼一時貯留タンク63に接続し、他端が電動弁21と加圧ポンプ31との間の軟水移送ライン41に接続し、途中に電動弁29が設けられた薬液供給ライン48とを具備する。
【0012】
ここで、軟水移送ライン41は、加圧ポンプ31と逆浸透膜モジュール12,12との間において、逆浸透膜モジュール12,12の原水入口57,57に原水を流す第1の流路41aと、逆浸透膜モジュール12,12の濃縮水出口59,59に原水を流す第2の流路41bとに分岐し、これら流路の分岐点には切替弁84が設けられている。また、濃縮水排出ライン44は、逆浸透膜モジュール12,12と流量調整弁24との間において、逆浸透膜モジュール12,12の濃縮水排出口59,59から排出される濃縮水を流す第1の流路44aと、逆浸透膜モジュール12,12の原水入口57,57から排出される濃縮水を流す第2の流路44bとに分岐し、これら流路の合流点には切替弁85が設けられている。また、原水入口57付近における第1の流路41aおよび第2の流路44bには共通の配管が使用され、濃縮水排出口59付近における第2の流路41bおよび第1の流路44aには共通の配管が使用されている。
【0013】
逆浸透膜モジュール12としては、図3に示すような、複数の集水孔51が形成された集水管52を中心に、多重の逆浸透膜50を円柱状に巻いて逆浸透膜エレメント55とし、この逆浸透膜エレメント55を円筒状のケーシング56に収納した、いわゆるスパイラル型逆浸透膜モジュールが通常使用される。逆浸透膜エレメント55について、より詳しくは、二つ折りにした逆浸透膜50の間に通液性支持繊維53を挟んだ状態で、逆浸透膜50の重なった3辺を接着する。そして、この通液性支持繊維53を内包した逆浸透膜50に、さらに網目スペーサー54を重ねてから、集水管52に対して多重に巻きつけていくことによって、逆浸透膜エレメント55が形成される。
【0014】
この逆浸透膜モジュール12において、原水は、逆浸透膜エレメント55の一方の端面側に形成される原水入口57に導入され、網目スペーサー54で形成される流路を流れる。この間に原水の一部は、逆浸透膜50を透過して精製水となり、通液性支持繊維53で形成された流路を通って集水管52に導かれ、集水管52端部の透過水出口58から排出される。一方、逆浸透膜50を透過しなかった原水は、濃縮水となって逆浸透膜エレメント55の他方の端面側に形成される濃縮水排出口59から排出される。
【0015】
なお、本発明における逆浸透膜モジュールは、このスパイラル型逆浸透膜モジュールに限定はされず、原水を、逆浸透膜を透過した精製水と逆浸透膜を透過しない濃縮水とに分離できるものであれば、いずれのものも使用できる。
なお、逆浸透膜モジュール12は、図1の例では2本を並列にして用いているが、必要な水量に応じた本数を用いればよい。
逆浸透膜50は、精製水製造装置で通常使用されている逆浸透膜を用いればよく、特に限定はされない。その材質としては、例えば、ポリアミド、ポリスルホン、酢酸セルロース、ポリアクリロニトリルなどが挙げられる。
【0016】
ナノ濾過膜モジュール61は、図3に示す逆浸透膜モジュール12と同じ構造を有するモジュールであり、集水管のまわりにナノ濾過膜を巻き回した円柱状のナノ濾過膜エレメントを円筒状のケーシングに収納したものであり、原水入口から導入された原水を、ナノ濾過膜を透過した軟水とナノ濾過膜を透過しない濃縮水とに分離するものである。
【0017】
ここで、ナノ濾過膜(NF膜、マイクロフィルターともいう)とは、限外濾過膜(UF膜)と逆浸透膜(RO膜)との中間の細孔径を持ち、かつ膜素材表面に荷電を持つ膜のことを指し、さらにIUPACの定義{Journal of Membrane Science,120,149−159(1996)に記載された「膜および膜プロセス用語(1996 IUPAC推奨)」}によると、ナノ濾過膜とは「2nmより小さい程度の粒子や高分子が阻止される圧力駆動の膜分離プロセス」とされている(ちなみに、精密濾過膜(MF膜)は0.1μmより大きいもの、限外濾過膜(UF膜)は0.1μm〜2nmの範囲のものを阻止できる膜とされている)。すなわち、ナノ濾過膜は、細孔による分離(サイズ分離)と膜表面の荷電と溶質中のイオン成分との電気的相互作用による分離効果とが組み合わされて、その膜固有の阻止性能、透過性能を示すものである。
【0018】
本発明においては、ポリアミドを材質として用いたナノ濾過膜(以下、ポリアミド系ナノ濾過膜と記す)を使用するのが好ましい。ポリアミド系ナノ濾過膜は、膜素材表面にマイナスの固定荷電を有するので、一般的なナノ濾過膜である酢酸セルロース系、ポリスルホン系、ポリアクリロニトリル系に比べ、2価以上の陽イオン、特にカルシウムイオンやマグネシウムイオンなどの硬度成分の除去能力が高く、原水の軟水化に最適である。また、ポリアミド系ナノ濾過膜は、イオン交換樹脂に比べ、原水の滞留が少ないので、細菌が繁殖しにくい。また、ポリアミド系ナノ濾過膜は、2nmより小さい程度の粒子や高分子を阻止できるので、エンドトキシンの除去が可能である。また、ポリアミド系ナノ濾過膜は、一般的なナノ濾過膜である酢酸セルロース系に比べ、透過水流量を多く確保でき、使用できるpH範囲・温度範囲が広く、エンドトキシンの除去能力が高く、耐薬品性が高い。
【0019】
第1の原水ポンプ32(第1の昇圧手段)としては、活性炭フィルタ60内の活性炭に圧密化を生じさせない観点から、原水に0.2〜0.4MPa程度の圧力を掛けることのできる低圧ポンプが好ましく用いられる。低圧ポンプとしては、例えば、単段渦巻ポンプ、単段タービンポンプ、カスケードポンプなどを用いることができる。
第2の原水ポンプ34(第2の昇圧手段)としては、ナノ濾過膜モジュール61を透過することのできる圧力を原水に掛ける観点から、原水に1.0〜1.5MPa程度の圧力を掛けることのできる高圧ポンプが好ましく用いられる。高圧ポンプとしては、例えば、多段渦巻ポンプ、多段タービンポンプ、ダイヤフラムポンプ、プランジャーポンプなどを用いることができる。
加圧ポンプ31および送水ポンプ33としては、高圧ポンプが用いられる。加圧ポンプとして使用される高圧ポンプとしては、精製水製造装置で通常使用されているものであれば特に限定はされず、例えば、多段渦巻ポンプ、プランジャーポンプなどを用いることができる。
【0020】
制御部は、処理部と、インターフェイス部と、カレンダータイマとから概略構成される。制御部は、活性炭フィルタ60、ナノ濾過膜モジュール61および逆浸透膜モジュール12への原水の供給開始と、これらへの原水の供給停止と、逆浸透膜モジュール12−精製水タンク13−薬液タンク兼一時貯留タンク63−逆浸透膜モジュール12の順に巡る精製水の循環と、薬液タンク兼一時貯留タンク63から逆浸透膜モジュール12および精製水タンク13への薬液の供給開始と、逆浸透膜モジュール12および精製水タンク13からの薬液および精製水の排出開始とを制御し、かつ、これらの制御をカレンダータイマに設定された任意の日時に行うことができるものである。
【0021】
前記カレンダータイマは、年月日および時刻を管理する時計部と、精製水製造装置の運転スケジュールを記憶する記憶部とを具備してなり、記憶部に記憶された設定日時に電気信号を発信できるようにされている。
前記インターフェイス部は、各ラインに設けられたすべての弁、ポンプと処理部との間を電気的に接続するものである。
前記処理部は、カレンダータイマからの電気信号や処理部に入力された操作信号に基づいて、各ラインに設けられた弁の開閉およびポンプの運転の開始、停止を制御するものである。
【0022】
なお、この処理部は、専用のハードウエアにより実現されるものであってもよく、メモリおよび中央演算装置(CPU)によって構成され、処理部の機能を実現するためのプログラムをメモリにロードして実行することにより、その機能を実現させるものであってもよい。
また、制御部には、周辺機器として、入力装置、表示装置等が接続されるものとする。ここで、入力装置とは、ディスプレイタッチパネル、スイッチパネル、キーボードなどの入力デバイスのことをいい、表示装置とは、CRTや液晶表示装置のことをいう。
【0023】
次に、この精製水製造装置を用いた精製水の製造方法について説明する。
精製水を製造するときは、精製水排出ライン47の電動弁28、精製水返送ライン74の電動弁83、および薬液供給ライン48の電動弁29は閉じられ、その他の電動弁は開かれている。また、精製水の製造を開始するときには、軟水移送ライン41は、切替弁84によって第1の流路41aが選択され、濃縮水排出ライン44は、切替弁85によって第1の流路44aが選択されている。
【0024】
水道などから供給される原水は、原水タンク10に貯留される。原水タンク10から原水供給ライン40を通って供給された原水は、第1の原水ポンプ32(第1の昇圧手段)によって昇圧される。原水ポンプ32によって原水に掛けられる圧力は、約0.2〜0.4MPa程度が好ましい。圧力が前記範囲を超えると、活性炭の圧密化が生じ、活性炭フィルタ60が短命化する。圧力が前記範囲を下回ると、活性炭フィルタ60に原水が滞留しやすくなり、細菌の繁殖を招く恐れがある。
第1の原水ポンプ32によって昇圧された原水は、活性炭フィルタ60に通される。活性炭フィルタ60にて原水中の残留塩素を除去された原水は、原水移送ライン70を通り、その途中に設けられた第2の原水ポンプ34によって、下流にあるナノ濾過膜を透過できる圧力にまでさらに昇圧される。第2の原水ポンプ34によって原水に掛けられる圧力は、約1.0〜1.5MPa程度が好ましい。圧力が前記範囲を超えると、ナノ濾過膜の強度低下の原因となる恐れがある。圧力が前記範囲を下回ると、原水がナノ濾過膜を透過しにくくなり、軟水化された原水の量が不充分となる。
第2の原水ポンプ34によって昇圧された原水は、ナノ濾過膜モジュール61に供給される。ナノ濾過膜モジュール61に供給された原水の一部は、ナノ濾過膜を透過して軟水化される。一方、ナノ濾過膜を透過しなかった残りの原水は濃縮水となり、一部の濃縮水は濃縮水排出ライン72から分岐した濃縮水返送ライン73を通って原水供給ライン40に戻されて原水として再利用され、残りの濃縮水は濃縮水排出ライン72を通って装置外に排出される。このとき、ナノ濾過膜モジュール61内の原水圧力の調整は、流量調整弁81によって行われる。
【0025】
ナノ濾過膜モジュール61にて軟水化された原水は、軟水移送ライン41の加圧ポンプ31によって昇圧された後、第1の流路41aを通って逆浸透膜モジュール12,12に供給される。逆浸透膜モジュール12に供給された原水の一部は、逆浸透膜を透過して精製水となり、精製水移送ライン42を通って精製水タンク13に貯留される。一方、逆浸透膜を透過しなかった残りの原水は濃縮水となり、一部の濃縮水は濃縮水排出ライン44から分岐した濃縮水返送ライン45を通って軟水移送ライン41に戻されて軟水化された原水として再利用され、一部の濃縮水は濃縮水排出ライン44から分岐した濃縮水返送ライン71を通って原水タンク10に戻されて原水として再利用され、残りの濃縮水は濃縮水排出ライン44を通って装置外に排出される。このとき、逆浸透膜モジュール12内の原水圧力の調整は、流量調整弁24によって行われる。
【0026】
精製水タンク13に貯留された精製水は、送水ポンプ33を駆動させることによって精製水送水ライン43から装置外に送水され、人工透析用の希釈水などとして使用される。
また、精製水タンク13に貯留された精製水は、常時駆動されている送水ポンプ33によって、精製水送水ライン43から取り出された後、精製水循環ライン46を経て精製水タンク13に返送されており、絶えず流動状態にある。さらに、精製水タンク13に貯留された精製水は、紫外線ランプ14によって、常時殺菌処理されている。
【0027】
また、制御部のカレンダータイマに記憶された一定時間ごと、または利用者の切り替え操作によって、切替弁84および切替弁85を切り替え、軟水移送ライン41として第2の流路41bを選択し、濃縮水排出ライン44として第2の流路44bを選択して、逆浸透膜モジュール12への原水の導入方向および逆浸透膜モジュール12からの濃縮水の排出方向出口を切り替えることも可能である。
【0028】
次に、精製水製造装置が精製水を製造しないときについて説明する。
夜間、休日など精製水を使わない日時が設定された制御部のカレンダータイマからの停止信号、または利用者の停止操作に基づいて、制御部は、第1の原水ポンプ32および第2の原水ポンプ34の運転を停止し、原水供給ライン40の電動弁20、軟水移送ライン41の電動弁21、精製水送水ライン43の電動弁23および濃縮水排出ライン44の電動弁25を閉じて、精製水の製造を停止させる。
【0029】
これと同時に、制御部は、精製水返送ライン74の電動弁83および薬液供給ライン48の電動弁29を開く。これにより、精製水タンク13に貯留された精製水は、常時駆動されている送水ポンプ33によって、精製水送水ライン43から取り出された後、精製水返送ライン74を経て薬液タンク兼一時貯留タンク63に返送され、薬液タンク兼一時貯留タンク63にて一時貯留される。なお、薬液タンク兼一時貯留タンク63は、装置の薬洗時以外は、空の状態とされている。薬液タンク兼一時貯留タンク63の精製水は、さらに薬液供給ライン48を通って軟水移送ライン41に返送される。
【0030】
軟水移送ライン41に返送された精製水は、軟水移送ライン41の加圧ポンプ31によって昇圧された後、第1の流路41a(または第2の流路41b)を通って逆浸透膜モジュール12,12に供給される。逆浸透膜モジュール12に供給された精製水の一部は、逆浸透膜を透過し、精製水移送ライン42を通って精製水タンク13に送られる。一方、逆浸透膜を透過しなかった残りの精製水は、濃縮水排出ライン44から分岐した濃縮水返送ライン45を通って軟水移送ライン41に戻され、再度、逆浸透膜モジュール12,12に供給される。
【0031】
このように、精製水製造装置の精製水を製造しないときにおいては、精製水タンク13内の精製水は、送水ポンプ33、薬液タンク兼一時貯留タンク63、加圧ポンプ31、逆浸透膜モジュール12の順に送られ、再び精製水タンク13に戻される。すなわち、精製水は、精製水タンク13−送水ポンプ33−薬液タンク兼一時貯留タンク63−加圧ポンプ31−逆浸透膜モジュール12−精製水タンク13の順に絶えず循環している。
【0032】
以上説明したような精製水製造装置にあっては、軟水化手段として、従来のイオン交換樹脂を備えた前処理装置の代わりに、ナノ濾過膜モジュール61を用いているので、原水の滞留を低減でき、細菌が繁殖しにくい。また、原水中の細菌やエンドトキシンも除去される。また、ナノ濾過膜モジュール61によって原水の軟水化を行うので、イオン交換樹脂および再生塩タンクが不要で、これに伴いイオン交換樹脂の再生時期の管理、薬剤の調製、イオン交換樹脂の再生操作なども不要となり、装置の維持管理が容易となり、さらに、装置の小型化も達成できる。また、ナノ濾過膜モジュール61によって原水中のエンドトキシンをはじめ、細菌類、不純物の除去を行うので、逆浸透膜モジュール12の負担が軽減され、逆浸透膜モジュール12の薬洗の頻度を減らすことができる。
【0033】
また、この精製水製造装置にあっては、原水タンク10と活性炭フィルタ60とを結ぶ原水供給ライン40に第1の原水ポンプ32を設け、活性炭フィルタ60とナノ濾過膜モジュール61とを結ぶ原水移送ライン70に第2の原水ポンプ34を設けている。そして、活性炭フィルタ60に供給する原水の圧力は、第1の原水ポンプ32によって低圧とし、ナノ濾過膜モジュール61に供給する原水の圧力は、第2の原水ポンプ34によって高圧としているため、ナノ濾過膜モジュール61によって軟水化された原水の量を維持しつつ、活性炭の圧密化を防止でき、活性炭フィルタ60の寿命を延命できる。
【0034】
また、この精製水製造装置にあっては、精製水タンク13の精製水を逆浸透膜モジュール12や加圧ポンプ31よりも上流側に返送する返送ライン(精製水返送ライン74および薬液供給ライン48)を具備することで、精製水を製造しないときに、精製水製造装置内に精製水を循環させることができる。これにより、精製水を製造しないときであっても、加圧ポンプ31、逆浸透膜モジュール12、精製水タンク13、送水ポンプ33、およびこれらを接続する各ラインに滞留水が発生することがなく、細菌の繁殖やエンドトキシンの発生をさらに抑えることが可能となる。また、返送ラインの途中に薬液タンク兼一時貯留タンク63が設けられていれば、薬液供給ライン48の電動弁29に不調が生じ、薬液供給ライン48を原水が逆流した場合であっても、原水が薬液タンク兼一時貯留タンク63に溜まるので、精製水返送ライン74を通って原水が精製水タンク13や逆浸透膜モジュール12の2次側(精製水側)に流入し、精製水を汚染してしまうことがない。また、返送ラインによって、薬洗時の薬液を循環させることができ、同時に逆浸透膜モジュール12および精製水タンク13を洗浄・消毒することも可能となる。
【0035】
また、この精製水製造装置にあっては、逆浸透膜モジュール12に供給される原水を原水入口57に流す第1の流路41aと、逆浸透膜モジュール12に供給される原水を濃縮水出口59に流す第2の流路41bと、第1の流路41aと第2の流路41bとを切り替える切替弁84とを具備することで、逆浸透膜モジュール12への原水の導入方向を適宜、切り替えることが可能となる。これにより、逆浸透膜モジュール12において、原水が、濃縮水出口59側の逆浸透膜エレメント55において網目スペーサー54で形成される流路全体をまんべんなく流れ、濃縮水出口59側の偏流や滞留が減少し、細菌の繁殖やエンドトキシンの発生がさらに抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の精製水製造装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】従来の精製水製造装置の一例を示す概略構成図である。
【図3】逆浸透膜モジュールの一例を示す斜視および一部断面図である。
【符号の説明】
【0037】
10 原水タンク
12 逆浸透膜モジュール(精製手段)
13 精製水タンク
32 第1の原水ポンプ(第1の昇圧手段)
34 第2の原水ポンプ(第2の昇圧手段)
50 逆浸透膜
60 活性炭フィルタ(残留塩素除去手段)
61 ナノ濾過膜モジュール(軟水化手段)
63 薬液タンク兼一時貯留タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水を昇圧する第1の昇圧手段と、該第1の昇圧手段によって昇圧された原水を活性炭で濾過して残留塩素を除去する残留塩素除去手段と、残留塩素が除去された原水を昇圧する、前記第1の昇圧手段とは異なる第2の昇圧手段と、該第2の昇圧手段によって昇圧された原水をナノ濾過膜によって軟水化する軟水化手段と、軟水化された原水を逆浸透膜で濾過して精製水を得る精製手段とを具備することを特徴とする精製水製造装置。
【請求項2】
第1の昇圧手段が低圧ポンプであり、第2の昇圧手段が高圧ポンプである請求項1に記載の精製水製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−39696(P2009−39696A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−210350(P2007−210350)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(000176741)三菱レイヨン・エンジニアリング株式会社 (90)
【出願人】(504346204)エムアールシー・ホームプロダクツ株式会社 (57)
【Fターム(参考)】