説明

精製糖液の製造方法

【課題】固形分を含有する原料糖液から当該固形分を除去して精製糖液を製造するに当り、膜濾過システムから回収される濃縮液の液量を任意に減容化できると共に、当該濃縮液からプレコート廃材を含まずに有用成分として利用可能な成分が得られるように改良された精製糖液の製造方法を提供する。
【解決手段】先ず、連続式または回分式の膜濾過システムに原料糖液を供給して濃縮液と透過液とに分離し、次いで、蒸発装置にて上記の濃縮液を蒸発処理することにより水分の一部または全部を除去して残渣を回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は精製糖液の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
固形分を含有する原料糖液から当該固形分を除去して精製糖液を製造する方法として、糖液をダイアフィルトレーション濾過して濃縮液と透過液とに分離し、得られた濃縮液をプレコート濾過する方法が知られている(特許文献1)。しかしながら、プレコート濾過を採用した方法では、大量のプレコート廃材が産業廃棄物として排出されるため、その搬送および処理コストの負担が大きいという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−102519
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、固形分を含有する原料糖液から当該固形分を除去して精製糖液を製造するに当り、膜濾過システムから回収される濃縮液の液量を任意に減容化できると共に、当該濃縮液からプレコート廃材を含まずに有用成分として利用可能な成分が得られるように改良された精製糖液の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明の要旨は、固形分を含有する原料糖液から当該固形分を除去して精製糖液を製造するに当り、先ず、連続式または回分式の膜濾過システムに原料糖液を供給して濃縮液と透過液とに分離し、次いで、蒸発装置にて上記の濃縮液を蒸発処理することにより水分の一部または全部を除去して残渣を回収することを特徴とする精製糖液の製造方法に存する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、膜濾過システムから回収される濃縮液の液量を任意に減容化できるため、当該濃縮液を産業廃棄物として処理する場合には、その搬送および処理コストの負担を著しく軽減できる。また、本発明では、濃縮液からプレコート廃材が含まれていない成分が回収されるため、その有効利用を図ることも出来る。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明において、原料糖液としては、デンプン糖、甜菜糖、甘蔗糖、甘藩糖および多糖類の溶液である糖液などが挙げられる。これらの原料糖液には固形分が含有されており、従って、当該固形分を除去することによりブドウ糖やその異性化糖の精製糖液が得られる。例えば、ブドウ糖の場合、原料デンプン(コーンスターチ等)を酵素液化した後、酵素糖化してブドウ糖溶液(糖液)を製造するが、この糖液中には、コーン等の原料由来の固形分が混入している。この固形分は、マッドと呼ばれ、蛋白質、脂質、繊維質などから成っている。このマッドを除去することにより、精製糖液が得られる。
【0008】
先ず、本発明においては、連続式または回分式の膜濾過システムに原料糖液を供給し、濾過を行って濃縮液と透過液とに分離する。
【0009】
上記の膜濾過システムの膜としては、一般に、限外濾過(UF)膜または精密濾過(MF)膜が使用されるが、MF膜が好適である。また、膜素材としては、テフロン(登録商標)、ポリスルホン、セラミック、金属など使用される。
【0010】
また、膜濾過装置としては、膜を振動させることにより、膜表面付近の流体に大きな剪断力を与えることの出来る振動膜分離装置を使用することも出来る。斯かる振動膜分離装置の市販品としては、例えば、米国のNEW LOGIC RESEARCH,INC製の「VSEP Series L/P」が挙げられる。また、膜を回転させる膜分離装置を使用することも出来る。斯かる膜分離装置としては、例えば、株式会社日立プラントテクノロジー製の「回転平膜分離装置」が挙げられる。
【0011】
通液方式による濾過の種類としては、クロスフロー(連続式)又はデッドエンド(回分式)の何れでもよい。クロスフロー濾過法は、原理的には、膜フィルター表面に濾過対象液を平行に流しながら濾過を行い、平行流によるせん断力により堆積ケーク層を最小に保持する濾過法であり、従って、濾過膜に包囲された流路の一端から供給された濾過対象液(原液)は、流れながら濾過され、濾液は、濾過膜を通過して流路と直交する方向に排出され、濃縮液は、流路の一端から排出される。
【0012】
膜濾過システムにおける、以下の式(I)に定義する濃縮倍率の上限は、特に制限されないが、濃縮液の粘性を考慮し、通常60倍である。
【0013】
[数1]
濃縮倍率=供給液量/(供給液量−透過液量)・・・(I)
【0014】
また、本発明において、前述の先行技術と同様に、膜濾過システムとしてダイアフィルトレーション濾過法を採用することも出来る。ダイアフィルトレーション濾過法は、膜分離処理によってマッドの濃縮がある程度進んだ後に、濃縮液側に水を徐々に添加(加水処理)しながら膜分離を続ける方法であり、加水処理より、濃縮液側に残った糖分の透過液側への回収が図れる。
【0015】
上記のダイアフィルトレーション濾過における加水量は、処理する糖液の液量に対する得られる全透過液量として、通常120重量%以下(即ち、増加液量が20重量%以下)、好ましくは100〜110重量%(増加液量が0〜10重量%)の範囲である。また、ダイアフィルトレーション濾過で得られる濃縮液中の固形分濃度は、通常1〜15重量%、好ましくは4〜8重量%である。
【0016】
次いで、本発明においては、蒸発装置にて上記の濃縮液を蒸発処理することにより水分の一部または全部を除去して残渣を回収する。蒸発装置としては加熱装置でも減圧装置でもよい。形状としては、ドラム型、ディスク型などが挙げられる。例えば、ドラムドライヤー又はディスクドライヤーは好適な蒸発装置である。
【0017】
真空ドラムドライヤーの場合は真空チャンバー内を真空機構によって真空に保持してドラムを加熱して乾燥を行う。また、ドラムドライヤーの場合、常圧のままドラムを加熱して乾燥を行う。何れの場合も、原料供給機構からダブルドラム間の液濃縮部に液状原料(前記の濃縮液)を供給し、液濃縮部で濃縮させ後、ドラムの表面に付着させ、ドラムからの熱により乾燥し、乾燥物(残渣)をスクレーパーによって掻き落とす。また、ディスクドライヤーの場合、蒸気で加熱されたディスクに液状原料(前記の濃縮液)を薄膜状に付着させ、ディスクの回転が1回転する間に水分を蒸発させ、表面に付着した乾燥物(残渣)をスクレーパーで掻き落とす。
【0018】
濃縮液の蒸発処理の程度は、濃縮液の目的とする減容化に応じて適宜選択される。すなわち、蒸発装置から回収される残渣は、濃厚なスラリーからフレーク状の乾燥物の間の任意の性状を採り得る。また、上記の残渣は、プレコート廃材が含まれていないため、例えば、飼料、肥料、燃料などの用途に使用することも可能である
【実施例】
【0019】
次に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0020】
実施例1:
先ず、澱粉原料を糖化して得られたブドウ糖原液(糖濃度28重量%、固形分濃度0.3重量%)650Lを、循環式の供給タンク(液温53〜55℃)から、濾過膜(テフロン(登録商標)製、孔経0.1μm、膜面積1.7m)を装填した振動膜分離装置(米国のNEW LOGIC RESEARCH,INC製の「VSEP Series L/P」)に供給し、濾過温度(ブドウ糖原液温度)53〜55℃、濾過圧力0.55MPa(膜入口圧力)にてクロスフロー法で濾過し、濃縮液(固形分濃度6.1重量%)26Lと透過液(ブドウ糖濃度28重量%)624Lを得た。循環液流量は1.2m/h、濃縮倍率は650/(650−624)=25倍である。
【0021】
次いで、上記の濃縮液26Lに脱イオン水20Lを加え(全体液量46L)、上記の振動膜分離装置を脱イオン水で洗浄した後に再使用することにより、ダイアフィルトレーション濾過を行って濃縮液26Lと透過液20Lを得た。
【0022】
その後、得られた濃縮液26Lに脱イオン水20Lを加え(全体液量46L)、上記と同じ要領により、ダイアフィルトレーション濾過を行った。同じ操作を更に2回繰り返した。全ての透過液を合算し、計算により求めたブドウ糖の回収率は99.5重量%であった。
【0023】
第4回目のダイアフィルトレーション濾過で得られた濃縮液(糖濃度2重量%、含水率89.4重量%)26Lを、伝熱面積(片面)0.2mのドラムドライヤー(株式会社西村鐵工所製の「CD−500」)に供給し、蒸気圧力0.2MPa、伝熱面の回転数13rpmで濃縮し、濃厚なスラリー(含水率77.5重量%)を得た。なお、斯かる条件における上記の濃縮液の連続処理能力を計算した結果、118kg/h・m)であった。
【0024】
実施例2:
実施例1において、第4回目のダイアフィルトレーション濾過で得られた濃縮液(糖濃度2重量%、含水率89.4重量%)の濃縮の際、ドラムドライヤーの伝熱面の回転数を5rpmに変更した以外は、実施例1と同様に行って精製糖液を製造したところ、ドラムドライヤーからフレーク状の乾燥物(含水率1.6重量%)が得られた。なお、斯かる条件における上記の濃縮液の連続処理能力を計算した結果、44kg/h・m)であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形分を含有する原料糖液から当該固形分を除去して精製糖液を製造するに当り、先ず、連続式または回分式の膜濾過システムに原料糖液を供給して濃縮液と透過液とに分離し、次いで、蒸発装置にて上記の濃縮液を蒸発処理することにより水分の一部または全部を除去して残渣を回収することを特徴とする精製糖液の製造方法。
【請求項2】
膜濾過システムがクロスフロー通液による連続式である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
膜濾過システムが振動膜分離装置である請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
膜濾過システムがダイアフィルトレーション濾過法である請求項1〜3の何れかに記載の製造方法。
【請求項5】
蒸発装置がドラムドライヤー又はディスクドライヤーである請求項1〜4の何れかに記載の製造方法。

【公開番号】特開2010−284134(P2010−284134A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−142136(P2009−142136)
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【出願人】(000232863)日本錬水株式会社 (75)
【Fターム(参考)】