説明

精製結晶性CCI−779を調製するためのプロセス

本発明は、精製結晶性CCI-779および精製結晶性CCI-779を調製するためのプロセスを提供する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
本発明は、精製結晶性CCI-779および精製結晶性CCI-779を調製するためのプロセスを提供する。
【0002】
3-ヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)-2-メチルプロピオン酸とのラパマイシン42エステル(CCI-779)は、インビトロとインビボとの両方のモデルにおいて腫瘍増殖に対して顕著な阻害効果を有することが実証されているラパマイシンのエステルである。CCI-779は、中枢神経系の癌、白血病、乳癌、前立腺癌、黒色腫、神経膠腫および神経膠芽細胞腫の処置のための抗癌剤としてなどの複数の用途に有効であることが実証されている。
CCI-779は、腫瘍が進行する時間または腫瘍が再発する時間を遅延させることができ、細胞傷害剤というよりはより典型的な細胞増殖抑制剤である。CCI-779は、シロリムスと類似した作用メカニズムを有すると考えられている。CCI-779は、細胞質タンパク質FKBPに結合してこのタンパク質との複合体を形成する。これは、酵素mTOR(ラパマイシンの哺乳動物標的、FKBP12−ラパマイシン結合タンパク質(FRAP)としても公知)を阻害する。mTORのキナーゼ活性を阻害すると、種々のシグナル伝達経路(サイトカイン刺激細胞増殖、細胞周期のG1期を調節するいくつかの重要タンパク質のmRNA翻訳、およびIL−2誘導転写が挙げられる)が阻害され、G1からSへの細胞周期の進行の阻害につながる。G1−S期ブロックをもたらすCCI-779の作用のメカニズムは、抗癌剤には新規である。
【0003】
インビトロでは、CCI-779は、多くの組織学的に異なる腫瘍細胞の成長を阻害することが示されている。なかでも、中枢神経系(CNS)の癌、白血病(T細胞)、乳癌、前立腺癌および黒色腫株は、最もCCI-779に対して感受性である。上記化合物は、細胞を細胞周期のG1期で停止させた。
ヌードマウスでのインビボ研究から、CCI-779が異なる組織型のヒト腫瘍異種移植片に対して活性を有することが実証されている。神経膠腫は、CCI-779に対して特に感受性であり、この化合物は、ヌードマウスの同所神経膠腫モデルにおいて活性であった。インビトロでのヒト神経膠芽細胞腫の細胞株の成長因子(血小板由来)誘導刺激は、CCI-779によって著しく抑制された。ヌードマウスでのいくつかのヒト膵腫瘍、ならびにインビボで研究された2種の乳癌株のうちの1種の成長もまた、CCI-779によって阻害された。
【0004】
CCI-779は、いくつかの再結晶化プロセスによって精製されているが、この手順は、CCI-779を不純物を受容可能でない量含む形態で生成する。より精製されたCCI-779のための他の経路としては、より純度の高い形態のCCI-779を提供するクロマトグラフィー精製が挙げられる。しかし、これらのクロマトグラフィー精製をスケールアップして相当な量の精製CCI-779を生成することはできないし、経済的に有利に行うこともできない。
当該分野で必要とされているのは、精製形態のCCI-779を調製するための代替プロセス、特にラージスケールで実施されるプロセルである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の要旨
1つの局面において、本発明は、精製結晶性CCI-779を提供する。
さらなる局面において、本発明は、クロマトグラフィーを含まないプロセスによる精製結晶性CCI-779を提供する。
別の局面において、本発明は、精製結晶性CCI-779であって、その精製がクロマトグラフィーを含まない精製結晶性CCI-779を提供する。
なおさらなる局面において、本発明は、精製結晶性CCI-779を調製するためのプロセスを提供する。
【0006】
さらに別の局面において、本発明は、CCI-779を精製するためのプロセスを提供する。
さらなる局面において、本発明は、CCI-779の結晶化および/または精製をモニタリングするための方法を提供する。
本発明の他の局面および他の利点は、以下好ましい実施形態の詳細な説明においてさらに記載される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
発明の詳細な説明
本発明は、良好な結晶化度を有する精製結晶性CCI-779を調製するためのプロセスを提供する。このプロセスは、CCI-779生成物の純度に悪影響を与えることなく、良好な収率で、ラージスケールで首尾よく行うことも可能である。
精製CCI-779の良好な結晶化度は、精製CCI-779の安定性の向上および保存期間の延長に寄与し、酸化不純物の含有量はより少なくなる。1つの実施形態において、本発明の精製結晶性CCI-779は、約1ヶ月の期間にわたって約3%未満、約2%未満または約1%未満分解する。好ましくは、精製結晶性CCI-779は、約3ヶ月(より好ましくは約6ヶ月)の期間にわたって、なかでも、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって測定された場合、約5℃で97%を超える強度を保持する。この強度は、約70℃までの高温、好ましくは約51℃まで、より好ましくは約25℃までの温度(最も好ましくは5℃の温度)、および約60%までの相対湿度、またはこれらの組合せにおいて、同様に維持される。1つの実施形態において、本発明に従って調製される精製結晶性CCI-779は、温度約25℃かつ相対湿度約60%において約3ヶ月まで、より好ましくは約6ヶ月まで、その安定性を維持する。
【0008】
本発明に従って調製される精製結晶性CCI-779は、代表的には、0.6% wt/wt未満の酸化不純物を含む。好ましくは、上記精製CCI-779はまた、0.1% wt/wt未満のフェニルボロン酸および約0.3% wt/wt未満のアセトンを含む。用語「酸化不純物」とは、本明細書中で使用される場合、精製結晶性CCI-779の固体サンプル中の残存するフェニルボロン酸の分解に起因して生成される不純物をいう。
精製結晶性CCI-779は、代表的には、約165℃を超える吸熱ピークを有する示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを有する。好ましくは、この吸熱ピークは、約165 °C、166 °C、167 °C、168 °C、169 °Cまたは170 °Cにある。同様に、精製結晶性CCI-779のX線回折(XRD)ピークパターンは、代表的には約25%±0.2の2θを超えるエリア強度を有するピークを2θにおいて含む。例えば、精製結晶性CCI-779のXRDパターンは、代表的には約7.7、9.0、11.4、12.6、13.3、15.0、15.4、16.2、66.5、34.8、43.7、31.4および58の2θにおいてピークを含む。
【0009】
1つの実施形態において、本発明は、約165℃を超える吸熱ピークを有するDSCサーモグラムと、約7.7、9.0、11.4、12.6、13.3、15.0、15.4、16.2、66.5、34.8、43.7、31.4および58の2θにおいてピークを有するXRDピークパターンとを有する精製結晶性CCI-779を提供する。
別の実施形態において、本発明は、約0.6 % wt/wt未満のフェニルボロン酸を含む精製結晶性CCI-779を提供する。
【0010】
A. 精製結晶性CCI-779を調製するためのプロセス
本発明により、精製結晶性CCI-779を調製するためのプロセスも提供される。本発明のプロセスは、精製のためにクロマトグラフィーを用いない精製結晶性CCI-779への経路を有利にも提供する。本発明のプロセスは、ラージスケールで精製された結晶性CCI-779も提供する。
本発明のプロセスにおける第1の工程は、第1の溶媒に未精製のCCI-779を溶解する工程を含む。好ましくは、CCI-779は、上記第1の溶媒に溶解性が高い。代表的には、この第1の溶媒はケトンである。1つの実施形態において、第1の溶媒は、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトンまたはメチルイソブチルケトンである。さらなる実施形態において、上記第1の溶媒はアセトンである。別の実施形態において上記第1の溶媒は、なかでもメチルエチルケトンである。しかし、当業者は、本発明の教示を用いることによって、本発明で使用するための適切な第1の溶媒を容易に選択することができる。一旦第1の溶媒に溶解したら、全ての固体粒子を除去するために、代表的には、その溶液を濾過する。
【0011】
本明細書中で使用する場合、用語「未精製CCI-779」または「粗CCI-779」とは、低純度および/または結晶性の形態のCCI-779をいう。未精製CCI-779または粗CCI-779を調製するための種々の方法が存在し、これらとしては、米国特許第5,362,718号および同第6,277,983号が挙げられる(これらは、これにより参考として援用される)。あるいは、CCI-779は、商業的に購入することも可能である(例えば、Wyeth)。未精製CCI-779または粗CCI-779は、米国特許出願公開US-2005-0152983-A1(これらは、これにより参考として援用される)に記載されるように、微粉化されていなくてもよいし、微粉化されていてもよい。
次いで、第1の溶媒は、代表的には減圧を使用して、必要に応じて熱の存在下で、濾過溶液から除去される。当業者は、第1の溶媒を除去するための条件を容易に調整することが可能であり、または第1の溶媒を除去するための他の方法を使用することが可能である。
【0012】
一旦、第1の溶媒が除去されると、代表的には泡状物質、固形物またはそれらの組合せとしてCCI-779が得られる。代表的には、微量の第1の溶媒が依然として残りのCCI-779の泡状物質、固形物またはその組合せに存在する。しかし、泡状物質、固形物またはその組合せとして得られるCCI-779は、その中に第1の溶媒を全く含まない場合もある。1つの実施形態において、CCI-779は非晶質である。別の実施形態において、CCI-779は、部分的に結晶性である。
次いで、第1の溶媒を除去した後に得られるCCI-779を第2の溶媒に溶解する。好ましくは、CCI-779は、第1の溶媒よりも第2の溶媒への溶解性が低い。CCI-779は、第2の溶媒の最小量に溶解される。用語「最小量(minimal amount)」とは、CCI-779の大部分を溶解することができる第2の溶媒の最も少ない量をいう。代替的には、CCI-779は、まずより多量の第2の溶媒に溶解され、次いで当業者に公知の技術(減圧が挙げられる)を使用することによってその溶液の容量を減少させる。当業者は、溶液の容量が受容可能な量まで低減した時点を容易に認識することができる。
【0013】
適切には、第2の溶媒中のCCI-779の溶解度は、視覚的な観察によって決定される。代表的には、CCI-779および第2の溶媒を含む溶液を視覚的に観察して、ほとんどのCCI-779が溶解することを確認する。当業者は、第2の溶媒中へCCI-779をさらに溶解させるための技術を容易に利用することができる。あるいは、固体CCI-779の溶解度は、混濁プローブ(turbidity probe)または収束ビーム反射測定(focused beam reflectance measurement)(FBRM(登録商標)プローブ)などの分析デバイスによって決定される。1つの実施形態において、第2の溶媒はエーテルである。別の実施形態において、第2の溶媒は、ジエチルエーテルの極性と類似した極性を有する。さらなる実施形態において、上記第2の溶媒は、ジエチルエーテルである。第2の溶媒中にCCI-779を溶解させた後、その溶液はまた、必要に応じて濾過される。
【0014】
一度溶解させて、第2の溶媒/CCI-779の溶液中の第1の溶媒(代表的にはアセトン)の含有量を測定する。好ましくは、第1の溶媒の含有量は、約4 vol%(体積%)未満であり、そしてより好ましくはアセトンの含有量は約3 vol%未満である。代表的には、第2の溶媒中の第1の溶媒の含有量は、HPLCを用いて測定される。溶液中の第1の溶媒の含有量が4 vol%を超える場合、必要に応じて熱の存在下で、第2の溶媒を減圧を使用して除去し、固体CCI-779を再形成させる。第2の溶媒の第2アリコートでこの固体CCI-779を処理し、第1の溶媒の含有量を再び測定する。CCI-779/第2の溶媒の溶液中の第1の溶媒の含有量が4 vol%未満になるまで、これらの工程を繰り返す。代表的には、第2の溶媒は、受容可能な第1の溶媒の含有量に達する前に少なくとも1回は除去される。
【0015】
アセトン含有量の測定に加えて、本発明はまた、第2の溶媒中でCCI-779が結晶化する前の精製CCI-779の核形成点の測定を提供する。本明細書中で使用される場合、用語「核形成」は、エーテルなどの第2の溶媒中のCCI-779の過飽和溶液から結晶性CCI-779が自発的に形成することをいう。「核形成点」、すなわち核形成が開始する点は、代表的には、収束ビーム反射測定(FBRM(登録商標))によって測定される。これは、当該分野で利用可能で、本発明において有用な種々のFBRM(登録商標)機器であり、これらとしては、Lasentec(登録商標)D 600LまたはS400 FBRM(登録商標)のシステムが挙げられる。このFBRM(登録商標)機器は、CCI-779結晶性生成物の高い結晶化度および純度を確認するために有用である。代表的には、溶液中に形成されたCCI-779の粒子のコードカウント(chord count)が、精製結晶性CCI-779の1〜5μmサイズ粒子について1500コード/秒を超える場合、核形成点が達成される。
【0016】
本明細書中で使用される場合、用語「コード」は、粒子の断面を横切る直線経路であって、その粒子の平均された寸法の長さをいう。当業者は、粒子の幅の測定として単純化したコードを記載する場合もある。好ましくは、本明細書中で使用される場合、用語「コード」とは、CCI-779結晶性粒子をいう。用語「コードカウント」とは、本明細書中で使用される場合、特定のコード長またはサイズフラクションの粒子の数をいう。
FBRM(登録商標)機器による測定の間に、所望のコードカウントが達成されるまで核形成保持時間(nucleation hold time)を変化させることによって、核形成点を調整することができる。本発明において除去剤が利用される場合、「核形成保持時間」とは、その除去剤を添加する前に第2の溶媒中でCCI-779が維持される時間の期間をいう。除去剤が本発明のプロセスから除外される場合、「核形成保持時間」とは、非溶媒(anti-solvent)を添加する前に第2の溶媒中でCCI-779が維持される時間の期間をいう。この核形成点は、好ましくは、上記に記載のようにFBRM(登録商標)シグナルをモニタリングすることによって決定される。
【0017】
第2の溶媒中の第1の溶媒の所望の含有量および核形成点が一旦達成されたら、必要に応じて除去剤を添加して残存するフェニルボロン酸を除去する。本発明者らは、残存するフェニルボロン酸がCCI-779の固体サンプル中で分解(劣化)する場合があり、これによって酸化不純物が形成され、特に保存中のCCI-779の分解をもたらし得ることを見出している。好ましくは、上記除去剤はペンタンジオールであり、第2の溶媒およびCCI-779を含む溶液に添加される。
精製CCI-779の結晶化は、精製の間の種々の段階で開始することができ、その作業(run)ごとに異なり得る。代表的には、結晶化は、第2の溶媒を添加した後に開始する。好ましくは、結晶化は、(i) 第2の溶媒中での第1の溶媒の測定の間、(ii) 核形成点の測定の間、またはこれらの組合せで開始する。
【0018】
任意の除去剤を添加した後、非溶媒を添加して固体の精製結晶性CCI-779または溶液中でまだ結晶化していない精製結晶性CCI-779を得る。本明細書中で使用される場合、用語「非溶媒」は、精製結晶性CCI-779を最小限しか溶解しないか、または溶解しない溶媒をいう。本プロセスにおいて除去剤を利用する場合、第2の溶媒、CCI-779および除去剤を含有する溶液に、非溶媒を添加する。本プロセスにおいて除去剤を利用しない場合、第2の溶媒およびCCI-779を含有する溶液に非溶媒を添加する。1つの実施形態において、上記非溶媒は炭化水素であり、好ましくは直鎖または分岐鎖の飽和炭化水素である。代表的には、この炭化水素は、約6個〜約10個の炭素原子を有する。1つの実施形態において、この炭化水素は、なかでも、ヘプタン、2−メチルペンタン、n−ヘキサンおよびこれらの組合せである。別の実施形態において、上記炭化水素はヘプタンである。別の実施形態において、非溶媒はヘプタンであり、他の炭化水素をさらに含む。
【0019】
本発明者らは、精製結晶性CCI-779の結晶化度および収率が、アセトンの含有量、導入時間および非溶媒添加によって影響されることを見出した。具体的には、アセトンのレベルが低く、導入時間が長く、そして非溶媒を非線形的に添加することによって、結晶化度の高い精製CCI-779が高収率で得られた。
本明細書中で使用される場合、語句「導入時間」とは、第1の溶媒の添加と非溶媒の添加の開始との間の時間の期間をいう。1つの実施形態において、導入時間は、約0.5〜約5時間である。さらに別の実施形態において、導入時間は約1〜3時間である。しかし、この導入時間は、かなり変動が大きく、第2の溶媒中の第1の溶媒の受容可能な含有量を得るために必要とされる時間の量と、FBRM(登録商標)機器による測定の間に核形成時間を調整するために必要とされる時間の量とに依存する。
【0020】
本明細書において使用される場合、用語「非線形的(non-linear)」とは、非溶媒添加の速度であって、速度が時間に伴って変化するような速度をいう。好ましくは、非溶媒は、最初はゆっくりと第2の溶媒に添加され、その後、添加の速度を時間とともに増加させる。本発明者らは、非溶媒の最初の添加が早すぎると、流動性の低い小さな針様のCCI-779粒子が、油状物、細かい結晶性の低い物質または細かい非結晶性の物質として形成され、それによって一次核形成(primary nucleation)が示されることを見出している。非溶媒を非線形的に添加すると、一定の形態とサイズとを有する結晶性の精製CCI-779が形成される。1つの実施形態において、結晶性の精製CCI-779は、棒様の結晶性粒子として調製される。別の実施形態において、この結晶性精製CCI-779は、長さ約10〜約100μmの粒子を含む。
本明細書中で使用される場合、用語「一次核形成」とは、CCI-779の沈殿であって、CCI-779の結晶性粒子は形成されていないことをいう。この用語は、結晶性CCI-779が形成されるCCI-779の結晶化とは異なる。
【0021】
好ましくは、非溶媒のフロー速度は、粗CCI-779の量(kg)に対する非溶媒添加の速度(L/hr)の1:1比率として正規化されて表現される。しかし、当業者は、より遅いフロー速度を容易に利用することもできる。代表的には、非溶媒は、粗CCI-779 1kgあたり約2L/時間の速度で最初に添加される。その後、非溶媒添加速度は、好ましくは粗CCI-779 1kgあたり約3L/時間に増加させる。この増加させた非溶媒添加速度は維持してもよいし、その後さらに早い添加速度(例えば、粗CCI-779 1kgあたり約11L/時間)に増加してもよい。1つの実施形態において、非溶媒は、約120〜約240分の期間にわたって添加される。別の実施形態において、非溶媒は、約180分の期間にわたって添加される。さらなる実施形態において、非溶媒は、粗CCI-779 1kgあたり1L/時間の速度でまず添加され、次の1時間では粗CCI-779 1kgあたり3L/時間の速度に増加され、そして最後の30分は粗CCI-779 1kgあたり11L/時間の速度に最終的に増加される。
【0022】
精製結晶性CCI-779は、当業者に公知の技術を使用して回収される。これらの技術としては、なかでも、濾過、デカンテーション、遠心分離が挙げられるが、これらに限定されない。一旦回収し、精製結晶性CCI-779は、必要に応じて1回以上、非溶媒、第2の溶媒またはそれらの組合せで洗浄される。1つの実施形態において、精製結晶性CCI-779は、エーテルおよび非溶媒で洗浄される。別の実施形態において、精製結晶性CCI-779は、ジエチルエーテルおよびヘプタンの溶液で洗浄される。一度回収して必要に応じて洗浄し、精製結晶性CCI-779を、当業者に公知の技術を使用して乾燥させ、そして必要に応じて未精製CCI-779について上記に記載した微粉化(micronization)技術を使用して微粉化する。代表的には、本発明に従って調製する精製結晶性CCI-779を微粉化して、約30μm未満の粒子を調製する。
本発明のプロセスの工程を繰り返すことによって、精製結晶性CCI-779をさらに精製することもできる。
【0023】
1つの例において、本発明は、以下の工程を含むCCI-779の精製のためのプロセスを提供する:(i) ケトンにCCI-779を溶解する工程;(ii) 工程(i)の生成物を濾過する工程;(iii) 工程(ii)の生成物からケトンを除去する工程;(iv) エーテルに工程(iii)の生成物を溶解する工程;(v) 工程(iv)の生成物中のケトンの含有量を測定する工程であって、ケトン含有量が4 vol%を超える場合、エーテルを除去して、工程(iv)および(v)が繰り返される、工程;(vi) 収束ビーム反射測定によって工程(iv)の生成物の核形成点を測定し、コードカウントがCCI-779の1〜5μm粒子について1500コード/秒を超えるまで核形成保持時間を調整する工程;(vii) 必要に応じて工程(vi)の生成物にペンタンジオールを添加する工程;(viii) 工程(vii)の生成物に非溶媒を添加する工程;ならびに (ix) 精製結晶性CCI-779を回収する工程であって、ここで工程(i)〜(ix)および/または工程(iv)〜(ix)は上記精製CCI-779とともに必要に応じて繰り返される。
【0024】
別の例において、本発明は以下の工程を含むCCI-779を精製するためのプロセスを提供する:(i) アセトンに未精製CCI-779を溶解する工程;(ii) 工程(i)の溶液を濾過する工程;(iii) 工程(ii)の生成物からアセトンを除去する工程;(iv) ジエチルエーテルに工程(iii)の生成物を溶解する工程;(v) 工程(iv)の生成物中のアセトンの含有量を測定する工程であって、アセトン含有量が4 vol%を超える場合、ジエチルエーテルを除去して、工程(iv)および(v)が繰り返される、工程;(vi) 収束ビーム反射測定によって工程(iv)の生成物の核形成点を測定し、コードカウントが前記CCI-779の1〜5μm粒子について1500コード/秒を超えるまで核形成保持時間を調整する工程;(vii) 必要に応じてジエチルエーテルにペンタンジオールを添加する工程;(viii) 工程(vii)の生成物に120〜240分の期間にわたってヘプタンを添加する工程;(ix) 精製CCI-779を回収する工程;ならびに (x) 約25〜約50℃の温度において減圧下で精製CCI-779を乾燥させる工程であって、工程(vii)は、工程(iv)の後に約0.5〜約5時間行われ、工程(i)〜(x)および/または(iv)〜(ix)は、上記精製CCI-779とともに必要に応じて繰り返される。
【0025】
さらなる例において、本発明は、以下の工程を含むCCI-779の結晶化をモニタリングするための方法を提供する:(i) 第1の溶媒に未精製CCI-779を溶解する工程;(ii) 工程(i)の生成物から第1の溶媒を除去する工程;(iii) 第2の溶媒に工程(ii)の生成物を溶解する工程;(iv) 工程(iii)の生成物中の第1の溶媒の含有量を測定する工程であって、第1の溶媒の含有量が所定の溶媒含有量を超える場合、第2の溶媒を除去して、工程(ii)および(ii)が繰り返される、工程;(v) 収束ビーム反射測定によって第2の溶媒中のCCI-779の核形成点を測定し、コードカウントが所定の核形成コードカウントと同じかまたはそれを超えるまで核形成保持時間を調整する工程。
【0026】
B. 精製結晶性CCI-779を含有する組成物
本発明はまた、精製結晶性CCI-779を単独でかまたは未精製CCI-779と組み合わせて含む組成物(特に、医薬組成物)も提供する。上記組成物は、代表的には、薬学的に受容可能な担体を含むが、他の適切な成分も含むことができる。代表的には、このさらなる成分は不活性であり、上記組成物の必要な成分の機能に干渉しない。本発明の組成物は、なかでも、他のアジュバント、シロップ、エリキシル、希釈剤、結合剤、滑沢剤、界面活性剤、造粒剤、崩壊剤(disintegrating agent)、軟化剤、金属キレーター、pH調整剤、界面活性剤、充填剤、崩壊剤(disintegrant)、およびこれらの組合せをさらに含み得る。
アジュバントとしては、香料、着色剤、保存薬、および補足的な抗酸化物質(ビタミンE、アスコルビン酸、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)およびブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)が挙げられる)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
結合剤としては、なかでも、ポビドン、セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、非結晶性セルロース、ポリプロピルピロリドン、ポリビニルピロリドン(ポビドン、PVP)、ゼラチン、アラビアゴムおよびアカシアゴム、ポリエチレングリコール、デンプン、糖類(例えば、スクロース、カオリン、デキストロースおよびラクトース)、コレステロール、トラガカント、ステアリン酸、ゼラチン、カゼイン、レシチン(ホスファチド)、セトステアリルアルコール、セチルアルコール、セチルエステルワックス、デキストレート(dextrate)、デキストリン、グリセリルモノオレエート、グリセリルモノステアレート、グリセリルパルミトステアレート(glyceryl palmitostearate)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンステアレート、ポリビニルアルコール、およびゼラチンを挙げることができるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、上記結合剤はポビドンである。
【0028】
滑沢剤としては、なかでも、軽質無水ケイ酸、タルク、ステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウムおよびステアリルフマル酸ナトリウムを挙げることができる。1つの実施形態において、上記滑沢剤はステアリン酸マグネシウムである。
造粒剤としては、なかでも、二酸化ケイ素、デンプン、炭酸カルシウム、ペクチン、クロスポビドンおよびポリプラスドン(polyplasdone)を挙げることができるが、これらに限定されない。
崩壊剤(disintegrating agent)または崩壊剤(disintegrant)としては、なかでも、デンプン、カルボキシメチルセルロース、置換ヒドロキシプロピルセルロース、炭酸水素ナトリウム、リン酸カルシウム、クエン酸カルシウム、デンプングリコール酸ナトリウム、アルファ化デンプンまたはクロスポビドンを挙げることができる。
軟化剤としては、ステアリルアルコール、ミンク油、セチルアルコール、オレイルアルコール、イソプロピルラウレート、ポリエチレングリコール、オリーブ油、ワセリン、パルミチン酸、オレイン酸およびミリスチン酸ミリスチルを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0029】
界面活性剤としては、ポリソルベート、ソルビタンエステル、ポロキサマーまたはラウリル硫酸ナトリウムを挙げることができる。1つの実施形態において、上記界面活性剤は、ラウリル硫酸ナトリウムである。
金属キレーターとしては、生理学的に受容可能なキレート剤(エデト酸、リンゴ酸またはフマル酸が挙げられる)を挙げることができる。1つの実施形態において、上記金属キレーターはエデト酸である。
pH調整剤は、CCI-779を含有する溶液のpHを約4〜約6に調整するために利用することができる。1つの実施形態において、CCI-779を含有する溶液のpHは、約4.6のpHに調整される。pH調整剤としては、生理学的に受容可能な薬剤を挙げることができ、これらとしては、クエン酸、アスコルビン酸、フマル酸またはリンゴ酸およびそれらの塩が挙げられる。1つの実施形態において、上記pH調整剤はクエン酸である。
本発明の組成物に使用することができるさらなる充填剤としては、マンニトール、リン酸カルシウム、アルファ化デンプンまたはスクロースが挙げられる。
【0030】
C. 精製結晶性CCI-779を使用する方法
本発明は、精製CCI-779を患者に送達する方法をさらに提供し、この方法は、本発明に従う精製CCI-779を投与する工程を含む。
精製結晶性CCI-779の投薬の必要条件は、提示される症状の重症度および処置される特定の被験体に基づいて変動し得る。処置は、精製結晶性CCI-779の最適用量未満の少ない投薬量で開始することができる。その後、上記投薬量は、その状況のもとで最適な効果が達成されるまで増加させる。正確な投薬量は、処置される個々の被験体の有する経験に基づいて投与する医師によって決定される。一般的には、精製結晶性CCI-779は、いずれの受容できない有害または有毒な副作用を伴うことなく一般的に効果的な結果を与える濃度において、最も好ましくは投与される。例えば、精製結晶性CCI-779の有効量は、一般的には、例えば、約0.1〜約50 mg、約10 mg〜約30 mgまたは約0.5〜約2 mgである。
【0031】
従って、精製結晶性CCI-779は、抗腫瘍剤として有用であり、特に、肉腫および癌腫、神経膠星状細胞腫、前立腺癌、乳癌、結腸癌、小細胞肺癌、卵巣癌、中枢神経系の癌、黒色腫、神経膠腫、多形性神経膠芽細胞腫および成人T細胞白血病/リンパ腫の処置において有用である。精製結晶性CCI-779はまた、腎臓、心臓、肝臓、肺、骨髄、膵臓(島細胞)、角膜、小腸、および皮膚の同種移植などの移植拒絶反応および心臓弁異種移植;対宿主性移植片病;自己免疫疾患、例えば、狼瘡、慢性関節リウマチ、真性糖尿病、重症筋無力症、および多発性硬化症の処置ならびに阻害;乾癬、皮膚炎、湿疹、脂漏症、炎症性腸疾患、肺炎症(ぜん息、慢性閉塞性肺疾患、気腫、急性呼吸促迫症候群、気管支炎などが挙げられる)および目のブドウ膜炎などの炎症疾患;真菌感染;過剰増殖性血管疾患、例えば、再狭窄、移植血管アテローム性動脈硬化症(graft vascular atherosclerosis)、心臓血管疾患、脳血管疾患、末梢血管疾患、例えば、冠状動脈疾患、脳血管疾患、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、非アテローム性動脈硬化症、または免疫媒介性の血管損傷をもたらす細胞事象に由来する血管壁損傷、脳卒中または多発脳梗塞性認知症の処置に有用である。
【0032】
精製結晶性CCI-779は、薬学的有効量の精製結晶性CCI-779を使用する所望の送達経路に適切な任意の形態に処方することができる。例えば、精製結晶性CCI-779は、経口、皮膚、経皮、気管支内、鼻内、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、腹腔内、鼻内、膣、直腸、舌下、頭蓋内、硬膜外、気管内などの経路、または持続放出によって送達することができる。好ましくは、送達は経口による。
例えば、精製結晶性CCI-779は、経口投与のために、錠剤、カプセル剤、マイクロカプセル剤、分散粉末、顆粒または例えば、約0.05〜5%の懸濁剤を含む懸濁液、例えば、約10〜50%の糖を含むシロップ、および例えば、約20〜50%のエタノールを含むエリキシルなどの形態で処方することができる。調製および投与の容易性の観点から好ましい医薬組成物は、固体組成物であり、特に錠剤および硬充填カプセルまたは液体充填カプセル(hard-filled or liquid-filled capsule)である。
【0033】
精製結晶性CCI-779はまた、非経口で投与されてもよいし、腹腔内に投与されてもよい。精製結晶性CCI-779の溶液または懸濁液は、遊離塩基または薬理学的に受容可能な塩として、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合された水の中で調製することができる。分散剤は、グリセロール、液体、ポリエチレングリコールおよび油中のこれらの混合物において調製することもできる。保存および使用の通常の条件下において、これらの調製物は、微生物の成長を防止するための保存薬を含む。代表的には、このような滅菌性の注射可能な溶液または懸濁液は、等張性媒体に約0.05〜5% の懸濁剤を含む。このような医薬調製物は、例えば、約25〜約90%の活性成分(より通常には、約5重量%と60重量%との間)を担体と組み合わせて含有し得る。
別の実施形態において、精製結晶性CCI-779は、容易に注射可能な程度まで流動性がある、滅菌性の注射可能な溶液、懸濁液、分散剤および粉末の形態で、静脈内、筋肉内、皮下、非経口および腹腔内に送達される。このような注射可能な組成物は、滅菌性であり、製造および保存の条件下で安定であり、細菌および真菌などの微生物のコンタミ作用がない。
【0034】
上記担体は、例えば、水、エタノール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコール)、油状物、およびこれらの混合物を含む溶媒または分散媒体であり得る。好ましくは、上記液体は水である。1つの実施形態において、上記油状物は、植物性油である。必要に応じて、上記液体の担体は懸濁剤を含む。別の実施形態において、上記液体の担体は、等張性媒体であり、0.05〜約5%の懸濁剤を含む。
さらなる実施形態において、精製結晶性CCI-779は、慣用的な坐剤の形態で直腸に送達される。
別の実施形態において、精製結晶性CCI-779は、慣用的な坐剤、クリーム、ゲル、リングまたはコーティング子宮内器具(IUD)の形態で膣に送達される。
【0035】
また別の実施形態において、精製結晶性CCI-779は、エアロゾルの形態で鼻内または気管支内に送達される。
さらなる実施形態において、精製結晶性CCI-779は、経皮または持続放出によって送達される。この送達は、精製結晶性CCI-779と、精製結晶性CCI-779に対して不活性である任意の担体とを含み、皮膚に対して毒性がなく、全身吸収のために血流に精製結晶性CCI-779を送達するのを可能にする経皮パッチの使用を通じて行われる。このような担体は、クリーム、軟膏、ペースト、ゲルまたは閉塞デバイス(occlusive device)であり得る。上記クリームおよび軟膏は、粘性液体または半固体のエマルジョンであり得る。ペーストとしては、石油または親水性石油に分散された吸収性粉末が挙げられる。さらに、種々の閉塞デバイスを利用して、精製結晶性CCI-779を血流に放出することが可能であり、これらは、活性試薬を含むリザーバを覆う半透膜または反応性試薬を含むマトリクスを備える。
【0036】
患者が毎日医薬を摂取する必要を避けるために、持続送達デバイスの使用が所望される場合がある。用語「持続放出」とは、本明細書中で使用される場合、活性剤(すなわち、精製結晶性CCI-779)の放出を送達環境に配置されるまで遅らせて、その後になって薬剤を持続的に放出することをいう。多くの持続送達デバイスが当該分野で公知であり、これらとしては、ヒドロゲル(米国特許第5,266,325号;同第4,959,217号;同第5,292,515号)、浸透圧ポンプ(なかでも、米国特許第4,295,987号および同第5,273,752号および欧州特許第314,206号);疎水性膜材料、例えば、エチレンメタクリレート(EMA)およびエチレンビニルアセテート(EVA);バイオ再吸収性ポリマー系(国際特許公報No. WO 98/44964および米国特許第5,756,127号および同第5,854,388号);ならびに、例えばポリエステル、ポリ無水物、または乳酸/グリコール酸コポリマーで構成される他のバイオ再吸収性インプラントデバイス(米国特許第5,817,343号)が挙げられる。このような持続送達デバイスで使用するために、精製結晶性CCI-779は本明細書に記載されるように処方することができる。米国特許第3,845,770号、同第3,916,899号、同第3,536,809号、同第3,598,123号および同第4,008,719号を参照のこと。
【0037】
精製結晶性CCI-779は、代表的には患者へ送達するための適切な投与ユニットに形成される。適切な投与ユニットとしては、直接圧縮剤、カプセル、粉末、懸濁液、マイクロカプセル、分散粉末、顆粒、懸濁液、シロップ、エリキシルおよびエアロゾルなどの経口投与ユニットが挙げられる。これらの投与ユニットは、本明細書に記載される方法および当業者に公知の方法を使用して容易に調製される。
1つの実施形態において、経口で投与される場合、本発明で利用されるカプセルとしては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒプロメロースカプセル、またはハードシェルゼラチンカプセルが挙げられる。精製結晶性CCI-779を含む本発明の錠剤またはカプレットは、必要に応じてフィルムコーティングされている。適切なフィルムコーティングは、当業者に公知である。例えば、フィルムコーティングは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコールおよびこれらの組合せなどのポリマーから選択することができる。
【0038】
精製結晶性CCI-779の薬学的有効量は、送達される組成物の他の成分、送達様式、処置される状態の重症度、患者の年齢(agent)および体重、ならびにその組成物に使用される任意の他の活性成分に依存して変動し得る。投与レジメンはまた、最適の治療反応をもたらすように調整することもできる。いくつかの分割用量を、例えば、1日に2〜4回の分割用量で、毎日送達することもできるし、または一回用量を送達することもできる。しかし、この用量は、治療状況の必要性によって示される場合、比例的に減少させる場合もあるし、増加させる場合もある。1つの実施形態において、この送達は、日ベース、週ベースまたは月ベースで行う。別の実施形態において、上記送達は毎日の送達である。しかし、毎日の投薬量は、周期的な送達に基づいて低下させてもよいし、増加させてもよい。
腫瘍性疾患、癌腫、および腺癌を処置するために利用される場合、精製結晶性CCI-779は、当業者によって容易に選択することができる1以上の化学療法剤と組み合わせて投与することができる。
【0039】
D. 精製CCI-779を含むキット
本発明はまた、精製結晶性CCI-779を含むキットまたはパッケージを提供する。本発明のキットは、精製結晶性CCI-779または純度が低い形態との組み合わせと、上記に記載の哺乳動物被験体への投与に適切な担体を含むことができる。
好ましくは、精製結晶性CCI-779の一日投薬量は、それらが送達される各特定の期(phase)で固定されたままである。上記キットは、精製結晶性CCI-779を投与するための指示書をさらに含むことができる。
【0040】
以下の実施例は、本発明を説明するために提供され、本発明の範囲を限定するものではない。当業者は、特定の試薬および条件が以下の実施例において概説されているが、本発明の趣旨および範囲によって包含されることが意図される改変をなすことができることを認識する。
【実施例】
【0041】
実施例1−精製結晶性CCI-779を調製するための一般的プロセス
この実施例は、粗CCI-779から、精製した結晶性CCI-779を調製するためのプロセスを提供する。
外部ヒーター/冷却器、真空蒸留機器、リアクター温度プローブを収容する1 バッフル、等距離4枚刃のタービンインペラ(4 pitched-blade turbine impeller)を備える頂部スターラを備える3Lのジャケット付きリアクター(Chemglass)において、アセトン(1.61 L)中に粗CCI-779(200 g, 19.4 mol)を溶解した。サファイア窓がついている18" ハステロイプローブ(0.7" OD)(Mettler Toledo Inc製)を用いて、Lasentec(登録商標)D600L収束ビーム反射測定システム(FBRM(登録商標)システム)にリアクターをつけた。次いで、0.45μmポリプロピレンフィルターエレメントを使用した濾過により、この溶液を浄化した。得られた溶液から真空下でアセトンを除去し、泡状物質を得た。ジエチルエーテル(1.27 L)を添加して、得られる溶液のアセトンレベルが4 vol%未満になるまで蒸留を続けた。この溶液を、スラリーが得られるまで撹拌した。
【0042】
FBRM(登録商標)機器を使用して核形成プロセスをモニタリングし、コードカウントが約1〜5μmの粒子について約1500コード/秒を超えるまで保持時間を調整して安定な核形成を達成した。1〜5μm粒子についてのコードカウントから、自発的な核形成事象が終了したことが示されるまで、さらにスラリーを撹拌した。このスラリーを2−メチル−2,4−ペンタンジオール(0.13 L)で処理し(20〜25℃)、残存しているフェニルボロン酸を除去した。プログラム可能なピストンポンプ(Stepdos)を使用して、ヘプタン(3.14 L)をこのスラリーに添加した。このポンプは、非溶媒の添加を非線形的な添加速度に分けて制御するために使用した。3時間にわたる制御添加によってヘプタンで希釈し、このスラリーを濾過して、精製結晶性CCI-779の大きな白色の結晶を得た(mp開始=169℃)。収率は84%、不純物のトータルは1.25%であって、0.54%の不純物が酸化不純物であった。
【0043】
実施例2−より低速の濾過を用いた精製結晶性CCI-779の調製
ミディアムグリットフリット(medium grit fritted)ガラス漏斗(75 mm ID)を使用してCCI-779アセトン溶液を濾過したことを除いて、実施例1に提供される説明を用いて、精製結晶性CCI-779を調製した。この濾過はゆっくりと行い、平行にした2つの漏斗の使用を必要とした。濾過のために必要とされたトータルの時間は、2.1時間であった。
次いで、実施例1に記載のようにアセトンを除去した。非晶質CCI-779の粘度が上昇すると、撹拌機がおそくなった。撹拌機のスイッチを切って、真空下で非晶質CCI-779を一晩おいた。
実施例1に記載のとおりにジエチルエーテルを添加した後に(溶解には約11分かかった)、CCI-779の核形成をモニタリングした。次いで、溶液のサンプルをアセトン含有量分析のために回収し、アセトンが約3.2 vol%であることを決定した。核が現れるまでの導入時間は54分であった(図1を参照のこと)。
【0044】
核形成の後、FBRM(登録商標)機器によって示されるように、バッチを34分間ねかせて、コードカウントを安定させた。ペンタンジオールおよびハプテンを実施例1に記載のとおりに添加した。単離した精製結晶性CCI-779を洗浄し、48時間真空下で40℃において乾燥させた。176.3 gの収量の精製結晶性CCI-779を得た(87.6 %)。結晶化の直後、ならびに種々の状態で2週間後および1ヶ月後に試験したサンプルから得た精製結晶性CCI-779についてのHPLCデータ(表1)を参照のこと。
【0045】
【表1】

【0046】
実施例3−より高速の濾過を用いた精製結晶性CCI-779の調製
この実施例は、実施例2に記載のプロトコルと同じプロトコルを使用して行った。しかし、粗CCI-779アセトン溶液の濾過は、ミディアムグリットフリット漏斗を使用して30分で完了した。アセトン蒸留の後、減圧下で2時間、バッチを非晶質の泡状物質/油状物としておいた。次いで、ジエチルエーテルをこの泡状物質/油状物に添加し、ジエチルエーテル溶液をアセトン含有量について評価した(8.5 vol%)。次いで、ジエチルエーテル(含アセトン)を蒸留によって除去し、非晶質の泡状物質を得た。この泡状物質を減圧下で30分間維持し、ジエチルエーテルを再び添加した。ジエチルエーテルをアセトン含有量について再びモニタリングし、アセトンが3.6 vol%未満であることを決定した。実施例2のように結晶化を続けた。核形成の導入時間、すなわち、約1〜約5μm粒子の粒子について1500コード/sを超えるコードカウントを得るために必要とされた時間は、26分であった。核形成の後、さらにスラリーを撹拌して核形成の安定化を確認した。上記に概説したように単離して乾燥させた後、最終収量175.1 gの精製結晶性CCI-779を得た(87.3 %)。結晶化の直後、ならびに種々の条件で2週間後および1ヶ月後に試験したサンプルから得た精製結晶性CCI-779についてのHPLCデータ(表2)を参照のこと。
【0047】
【表2】

【0048】
実施例4−制御されたハプテン添加を用いた精製結晶性CCI-779の調製
この実施例は、結晶度を改善するためのセミバッチ結晶化プロセスを提供する。このプロセスは、正確な温度制御、頂部スターラ、および制御された溶媒供給を実施できる能力を備えたリアクター中で実施する。最適な制御のために、このリアクターは、「微粉(fines)」電気を使用して1〜500μm範囲でコード長を測定するLasentec(登録商標)FBRM(登録商標)プローブに取り付ける。
アセトン(5.7 L)を粗CCI-779(1 kg)に添加する。Lasentec(登録商標)システム粒子カウントによるモニタリングで透明な溶液が得られるまで、22℃(ジャケット(jacket))で1分あたり高い回転数でアセトン溶液を撹拌する。この透明な溶液を0.45μmのインラインフィルター(in-line filter)を通して濾過する。このフィルターをアセトン(2L)で洗浄し、アセトン洗浄液に濾過溶液を添加する。濾過溶液のアセトンは、泡状物質が得られるまで、約5〜20℃の温度で蒸留することによって減圧下で除去する。減圧下で約2時間、この泡状物質を維持する。
【0049】
ジエチルエーテル(3.4 L)を乾燥させた泡状物質に添加し、この溶液を22℃で撹拌する。10分後、固形物を濾過によって回収し、ジエチルエーテル溶液をガスクロマトグラフィー(GC)によってモニタリングして、ジエチルエーテル中に残存しているアセトンの量をモニターする。アセトン含有量がジエチルエーテルの約3 vol%を超える場合、ジエチルエーテル洗浄を繰り返す。
ジエチルエーテルで洗浄したサンプルを再びジエチルエーテルと合わせ、30分間混合し、そして粒子カウントをFBRM(登録商標)機器を使用して測定する。粒子カウントが1〜5μm範囲について1500コード/秒を超えることを確認した後、スラリーをさらに30分間混合する。視覚的な観察も行って、スラリーが存在することを確認する。
【0050】
次いで、少なくとも15分の期間にわたって、ペンタンジオール溶液(0.4 Lジエチルエーテル中、0.7 Lペンタンジオール)をジエチルエーテルスラリーに添加する。約22℃の温度で60分間またはLasentec(登録商標)システムの粒子カウントが安定するまで、この溶液を混合する。以下のプロフィールを用いて、約150分の期間にわたって約22℃の温度を維持しながら、ヘプタン(10.7 L)を溶液に添加する:
1.最初の60分で最初の2Lを添加する;
2.次の60分間で3Lを添加する;そして
3.次の30分で5.7Lを添加する。
次いで、約22℃の温度で4時間、スラリーを混合し、そのスラリーを濾過し、エーテル/ヘプタンの溶媒混合物(0.9/4.8 L)で3回、固形物を洗浄する。減圧下、約40℃の温度でこの固形物を乾燥させる。
【0051】
本明細書において引用される全ての刊行物は、本明細書において参考として援用される。本発明は、特定の好ましい実施形態への参照とともに記載されているが、本発明の趣旨から逸脱することなく改変がなされ得ることが認識される。そのような改変は、添付の特許請求の範囲の範囲に含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は、本発明に従って調製した精製結晶性CCI-779の1つの代表的なサンプルの示差走査熱量測定サーモグラムを提供する。
【図2】図2は、本発明に従って調製した精製結晶性CCI-779の1つの代表的なサンプルのX線回折パターンを提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも約3ヶ月の期間にわたって97%を超える強度を保持するCCI-779の精製結晶性形態であって、前記CCI-779の精製形態はクロマトグラフィーによって精製されていない、前記結晶性形態。
【請求項2】
0.1% wt/wt未満のフェニルボロン酸を含む、請求項1に記載の結晶性形態。
【請求項3】
0.6% wt/wt未満の酸化不純物を含む、請求項1または2に記載の結晶性形態。
【請求項4】
約0.3% wt/wt未満のアセトンを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の結晶性形態。
【請求項5】
約165℃を超える吸熱ピークを有する示差走査熱量測定サーモグラムを有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の結晶性形態。
【請求項6】
7.7、9.0、11.4、12.6、13.3、15.0、15.4、16.2、66.5、34.8、43.7、31.4および58の2θにおいてピークを有するX線回折ピークパターンを有する、請求項1に記載の結晶性形態。
【請求項7】
(i) 約165℃を超える吸熱ピークを有する示差走査熱量測定サーモグラム;
(ii) 7.7、9.0、11.4、12.6、13.3、15.0、15.4、16.2、66.5、34.8、43.7、31.4および58の2θにおいてピークを有するX線回折ピークパターン
を有する、請求項1に記載のCCI-779の精製結晶性形態。
【請求項8】
CCI-779を精製するためのプロセスであって、
(i) CCI-779をケトンに溶解する工程;
(ii) 工程(i)の生成物を濾過する工程;
(iii) 工程(ii)の生成物から前記ケトンを除去する工程;
(iv) 工程(iii)の生成物をエーテルに溶解する工程;
(v) 工程(iv)の生成物中の前記ケトンの含有量を測定する工程であって、ケトン含有量が4vol%を超える場合、前記エーテルが除去されて工程(iv)および(v)が繰り返される、工程;
(vi) 収束ビーム反射測定によって工程(iv)の生成物の核形成点を測定し、コードカウントが前記CCI-779の1〜5μm粒子について1500コード/秒を超えるまで核形成保持時間を調整する工程;
(vii) 必要に応じて工程(vi)の生成物にペンタンジオールを添加する工程;
(viii) 工程(vii)の生成物に非溶媒を添加する工程;ならびに
(ix) 精製CCI-779を回収する工程
を含み、ここで工程(i)〜(ix)または工程(iv)〜(ix)は前記精製CCI-779とともに必要に応じて繰り返される、前記方法。
【請求項9】
工程(iii)の生成物が非晶質である、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記ケトンがアセトンである、請求項8または9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記エーテルがジエチルエーテルと極性が類似している、請求項8〜10のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記エーテルがジエチルエーテルである、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記非溶媒がヘプタンである、請求項8〜12のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記非溶媒が他の炭化水素をさらに含む、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
工程(vii)が工程(iv)の後に約0.5〜約5時間行われる、請求項8〜14のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項16】
工程(vii)が工程(iv)の後に約1〜3時間行われる、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
精製CCI-779の結晶化が工程(iv)、工程(v)、(vi)または工程(iv)と(vi)との間で開始する、請求項8〜16のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項18】
前記非溶媒が非線形的に添加される、請求項8〜17のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項19】
前記非溶媒の添加の初期速度が低速である、請求項18に記載のプロセス。
【請求項20】
前記非溶媒の添加の速度が時間ととも増加される、請求項19に記載のプロセス。
【請求項21】
前記非溶媒が約120〜約240分の期間にわたって添加される、請求項8〜20のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項22】
前記非溶媒が約180分の期間にわたって添加される、請求項21に記載のプロセス。
【請求項23】
工程(vii)が、必要に応じて工程(iv)の後に約0.5〜約5時間行われる、請求項8〜22のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項24】
前記精製CCI-779がエーテルおよび非溶媒で洗浄される、請求項8〜23のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項25】
前記精製CCI-779を乾燥させる、請求項8〜23のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項26】
減圧下で約25〜約50℃の温度において精製CCI-779を乾燥させる工程をさらに含み、前記工程が必要に応じて前記精製CCI-779とともに繰り返される、請求項8〜24のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項27】
請求項8〜26のいずれか1項に記載のプロセスによって調製される生成物。
【請求項28】
CCI-779の結晶化をモニタリングするための方法であって、
(i) 第1の溶媒に未精製CCI-779を溶解する工程;
(ii) 工程(i)の生成物から第1の溶媒を除去する工程;
(iii) 第2の溶媒に工程(ii)の生成物を溶解する工程;
(iv) 工程(iii)の生成物中の第1の溶媒の含有量を測定する工程であって、前記第1の溶媒の含有量が所定の溶媒含有量よりも大きい場合、前記第2の溶媒を除去して工程(ii)および(ii)が繰り返される、工程;
(v) 収束ビーム反射測定によって前記第2の溶媒中のCCI-779の核形成点を測定し、コードカウントが所定の核形成コードカウントと同じかまたはそれを超えるまで核形成保持時間を調整する工程
を含む、前記方法。
【請求項29】
(i) 請求項1〜7のいずれか1項に記載の精製結晶性CCI-779;および
(ii) 哺乳動物被験体に投与するのに適した担体
を含む、キット。
【請求項30】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の精製結晶性CCI-779と、以下:
(i) 金属キレーター;
(ii) pH調整剤;
(iii) 界面活性剤;
(iv) 少なくとも1種の充填剤;
(v) 結合剤;
(vi) 崩壊剤;および
(vii) 滑沢剤
のうちの1以上とを含む、医薬組成物。
【請求項31】
中枢神経系の癌、白血病、乳癌、前立腺癌、黒色腫、神経膠腫および多形性神経膠芽細胞腫を処置するための方法であって、請求項1〜7のいずれか1項に記載のCCI-779の精製結晶性形態を、それを必要とする補哺乳動物被験体に投与する工程を含む、前記方法。
【請求項32】
薬剤の製造における請求項1〜7のいずれか1項に記載の精製CCI-779の使用。
【請求項33】
前記薬剤が中枢神経系の癌、白血病、乳癌、前立腺癌、黒色腫、神経膠腫および多形性神経膠芽細胞腫から選択される状態を処置するために有用である、請求項32に記載の精製CCI-779の使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2009−518413(P2009−518413A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−544450(P2008−544450)
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【国際出願番号】PCT/US2006/046444
【国際公開番号】WO2007/067565
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】