説明

糖尿病の治療のための組成物および方法

本発明は、上部消化管をバイパスすることによる結腸への酪酸、胆汁酸、長鎖脂肪酸またはグルタミンの送達によって、インクレチン関連疾患、例えば糖尿病および肥満症などを治療する方法に関する。組成物は、同一または異なる投与経路によってモノアミン再取り込み阻害剤、例えばブプロプリオンなどと組み合わせられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2009年9月23日に出願された米国仮出願61/245,036の優先権を主張するものであって、その全体において参照することによって本明細書に包含される。
【0002】
著作権表示
本特許の開示の一部は、著作権保護の対象である物質を含有する。特許文献または特許開示は特許商標庁の包袋または特許記録に表示されているため、著作権所有者は誰もがそれを複製できることに対して異議はないが、その他の点では全ての著作権を保有する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
発明の分野
本発明は、糖尿病、代謝症候群、高トリグリセリド血症および肥満症を治療するための新規な方法および組成物に関する。特に、本発明は、治療中の嗜癖行動の増加を防ぐ様式で、特定の天然化合物をモノアミン再取り込み阻害剤と組み合わせて下部消化管(lower gut)に送達することによる糖尿病、代謝症候群、高トリグリセリド血症および肥満症の治療に関する。
【0004】
関連技術の記載
肥満症治療手術の使用は、肥満症を治療する一般的かつ非常に効果的な方法である。しかしながら、体重が減少した人々は、該手術後に、摂食嗜癖周期(eating addictive cycle)に代わる他の種類の嗜癖行動を頻繁に示すことが報告されている。嗜癖行動、例えばアルコール、薬物、ギャンブル、およびセックス中毒などが報告されている。さらに、一部の人々において、空腹欲求(hunger cravings)の増加が報告されている。肥満症治療手術は、食物摂取に関連する生理的問題を矯正する一方で、肥満症に観察される摂食の増加に寄与する快楽報酬システムに対処できないと理論付けられている。それゆえ、手術は末梢問題(peripheral problems)を矯正する一方で、消費される食物の量と心理的報酬刺激システムにおいて補償されるべき要求の間に矛盾を生じる。
【0005】
糖尿病はその規模を拡大しつつある世界的な健康の脅威であり、先進国および開発途上国の両方において主要な健康上のリスクであると考えられている。II型糖尿病は糖尿病に関連する症例の大多数を占め、その割合(accounts)から米国において7番目に多い死因であると示唆されている。II型糖尿病の発症の主要な要因は、過体重であると考えられている。米国単独で、1760万人以上が糖尿病を患っていると推定されており、さらに570万人が糖尿病を患っていることに気付いていないと推定されている。さらに、約5700万人のアメリカ人が前糖尿病患者であると考えられている。
【0006】
II型糖尿病は、非インスリン依存性糖尿病としても知られている。それは、一般的に血中グルコース濃度を適切に制御することができないことに現れる。これは、膵臓のインスリン産生の欠損によって特徴付けられるI型糖尿病とは対照的である。言い換えれば、II型糖尿病の個体はインスリン抵抗性を患っていると考えられている。II型糖尿病の発症に寄与することが同定されている要因は、肥満症、遺伝的背景、年齢、食事および運動不足の1つ以上を含む。II型は「成人発症」と呼ばれることが多いが、食事が要因であることから、実質的にあらゆる年齢で生じうる。
【0007】
II型糖尿病は血中および尿中グルコース濃度の上昇を引き起こし得、次いで空腹、排尿、口渇および代謝関連問題を引き起こしうる。状態が治療されなければ、心疾患、腎疾患および失明を含む最もよく見られる重篤な結果がもたらされる。現在いくつかの治療が用いられている。肥満症は糖尿病において多く見られる病因であるため、通常は食事および運動が第一防衛線である。第二防衛線として治療薬も用いられ、例えばグルコースの血中および尿中濃度を減少させるインスリンまたは医薬品が使用される。
【0008】
インスリン分泌促進物質、グルコース低下エフェクター(glucose lowering effectors)、GLP−1類似体、DPPIV阻害剤、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体−γの活性化因子およびα−グルコシダーゼ阻害剤を含むいくつかの薬物が、II型糖尿病用に現在使用されている。これらの現在の治療にはそれらに関連するいくつかの問題があるため、II型糖尿病を治療するための代替療法が依然として必要である。
【0009】
消化管ホルモンは胃腸ホルモンの一種であり、特に、摂食後、血中グルコース濃度が上昇する前でさえ、ランゲルハンス島のβ細胞から放出されるインスリン量の増加を引き起こす。それらは、結腸においてL細胞からその最高レベルにて分泌される。それらは胃内容排出を減少させることによって血流への栄養の吸収速度を低下させる機能も果たし、食物摂取を直接的に減少させうる。それらは、ランゲルハンス島のα細胞からのグルカゴン放出を阻害する機能も果たす。グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)は、インクレチンと呼ばれることが多いが、L細胞によって分泌される消化管ホルモンである。グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)(インクレチン)は、その分泌が刺激された場合におそらく糖尿病を治療するために用いられうる1つの組成物として同定されている。
【0010】
GLP−1は腸内分泌L細胞から分泌されるペプチドであり、過去20年以上にわたって多数の出版物に記載されている様々な種類の生理作用を有する。つい最近になって、多くの研究が状態および障害、例えば糖尿病、ストレス、肥満症、食欲制御および満腹、アルツハイマー病、炎症、ならびに中枢神経系の疾患の治療におけるGLP−1の使用に集中している。しかしながら、臨床治療におけるペプチドの使用は、投与困難性および十分なインビボ安定性の欠如のために大幅に制限されている。それゆえ、直接的にGLP−1の効果と似た機能を果たすか、またはGLP−1分泌を増加させる小分子が、上記の様々な状態または障害、すなわち糖尿病および肥満症の治療においてインクレチン産生を増加させる最適な治療であると考えられている。
【0011】
PYYは消化管ホルモン(ペプチドYY)であり、食物摂取に応答して回腸および結腸において細胞によって放出される短い(36アミノ酸)タンパク質である。ヒトにおいて、それは食欲を減少させる。PYYは消化管、特に回腸および結腸の粘膜のL細胞で発見されている。少量の、約1〜10パーセントのPYYが、食道、胃、十二指腸および空腸にも存在している。血液循環におけるPYY濃度は食後(食物摂取後)に増加し、絶食によって減少する。
【0012】
GLP−2(消化管ホルモン)は33個のアミノ酸のペプチドであり、小腸および大腸における腸内分泌細胞からGLP−1と共に分泌される(co-secreted)。特に、GLP−2は小腸および大腸において粘膜増殖を刺激し、胃内容排出および胃酸分泌を阻害し、腸透過性を減少させ、かつ、腸の血流を刺激する。
【0013】
オキシントモジュリン(消化管ホルモン)は37個のアミノ酸のペプチドであり、L細胞からGLP−1と共に分泌され(co-secreted)、正常なヒトにおいて胃酸分泌および腸運動性に対してGLP−1およびGLP−2の効果と似た機能を果たし、食欲を抑制し、食物摂取を減少させ、かつ、水分摂取に対して効果がない過体重および肥満のヒト対象においてエネルギー摂取を〜17%減少させる。
【0014】
酪酸は、動物性脂肪および植物油においてエステルの形態で存在する天然脂肪酸である。例えば、酪酸のトリグリセリドはバターの3%〜4%を構成する。それは酸敗したバターおよび酸敗したチーズなどの酸敗した食物中に見られ、非常に不快な臭いおよび味を有する。それは、短鎖脂肪酸と呼ばれる脂肪酸サブグループの重要なメンバーである。
【0015】
胆汁酸(胆汁酸塩としても知られている)は、主に哺乳類の胆汁に見られるステロイド酸である。ヒトでは、タウロコール酸およびグリココール酸(コール酸の誘導体)が、全胆汁酸のおよそ80パーセントを占める。2つの主要な胆汁酸は、コール酸およびケノデオキシコール酸である。それら、それらの抱合体、およびそれらの7−α−脱ヒドロキシル化誘導体は、全てヒトの腸の胆汁に見られる。胆汁流量の増加は、胆汁酸の分泌の増加と共に現れる。胆汁酸の主な機能は、ミセルの形成を促進し、食事由来の脂肪の処理を促進することである。胆汁酸塩は大きな分子ファミリーを構成し、4つの環を有するステロイド構造、末端がカルボン酸である5個または8個の炭素側鎖で構成され、様々な数のヒドロキシル基が存在および配向している。4つの環は左から右へ(通常描かれる骨格において)A、B、C、およびDとして標識され、環Dは他の3つの環よりも炭素が1つ少ない。ヒドロキシル基は、2つの位置、すなわちβと呼ばれる(慣例によりしばしば実線で描かれる)上向き(もしくは外向き)の位置、またはαと呼ばれる(図では破線で示される)下向きの位置の選択肢がある。全ての胆汁酸は3位にヒドロキシル基を有するが、これは親分子、すなわちコレステロールに由来する。コレステロールにおいて、4つのステロイド環は平面であり、かつ、3−ヒドロキシルの位置はβである。
【0016】
長鎖脂肪酸(LCFA)は、16個以上の炭素の脂肪族末端を有する脂肪酸である。脂肪酸は、動物性もしくは植物性脂肪、油またはワックス中のエステル化形態に由来するか、またはそれに含有される脂肪族モノカルボン酸である。天然脂肪酸は、通常、4〜28個の炭素鎖(通常、非分枝状の偶数鎖)を有し、飽和であっても不飽和であってもよい。
【0017】
グルタミンは、癌を含む様々な疾患の治療に栄養補助剤として用いられるアミノ酸である。グルタミンはヒトの体内に最も豊富に存在する遊離アミノ酸であり、タンパク質の構成成分としての役割に加えて、体内で様々な機能を果たす。それは体細胞によって作られるため、非必須アミノ酸である。さらに、ほとんどの食事由来のタンパク質は十分量のグルタミンを含有するため、健康な人は、通常、必要とする全ての追加のグルタミンを彼らの食事で得る。
【0018】
上記天然産物は、特に、味が非常にまずく、消化管内で容易に分解および/または吸収されるため、投与が困難である。
【0019】
肥満症は、世界中の多数の国々のヒトの間で大流行している医学的状態である。それは、生命活動および生活様式を破壊する他の疾患または状態とも関連し、またはそれらを誘導する状態である。肥満症は他の疾患および状態、例えば糖尿病、高血圧症、および動脈硬化症などの重篤なリスク因子であると認められ、血中コレステロールレベルの上昇に寄与しうる。肥満症による体重増加は膝関節などの関節に負担をかける可能性があり、関節炎、疼痛、およびこわばりを引き起こしうることも認められている。肥満症は、特定の皮膚状態、例えばアトピー性皮膚炎および褥瘡などに寄与しうる。過食および肥満症は普通の人々の間で大きな問題となっているため、多くの個体は現在、体重を減らし、体重を減少させ、ならびに/または健康な体重および生活様式を維持することに興味を持っている。
【0020】
高トリグリセリド血症(hTG)は、米国でよく見られる障害である。該状態はコントロール不良の糖尿病、肥満症、および座りがちな習慣(sedentary habits)によって悪化し、その全ては、発展途上国よりも工業化社会、特に米国でより蔓延している。疫学的研究および介入研究の両方において、高トリグリセリド血症は冠動脈疾患(CAD)のリスク因子である。高トリグリセリド血症の治療は、食事中の炭水化物および脂肪の制限、ならびにナイアシン、フィブラート系薬剤およびスタチン系薬剤(3種類の薬物)による。魚油摂取の増加は実質的に個体のトリグリセリドを低下させうる。
【0021】
明らかに、下部消化管(lower gut)に薬剤を送達するように多数の組成物がデザインされている。該組成物は、例えば2008年10月7日に発行されたビッラ(Villa)らの米国特許第7,431,943号等に開示されている3成分マトリックス構造を含む(その全体において参照することによって本明細書に援用される)。
【0022】
GPR120、TGR5、GPR41およびGPR43受容体等の消化管ホルモンを刺激すると思われる受容体の刺激に対する多数の新たなアプローチが試みられている。特許出願:2008年6月5日に公開されたWO/2008/067219;2007年11月8日に公開されたUS2007/060759;2006年3月9日に公開されたJP2006−630 4Aおよび2006年3月2日に公開されたJP2006−56881Aにおいて、TGR5受容体、すなわち胆汁酸Gタンパク質共役受容体を刺激するようにデザインされたいくつかの種類の小分子アゴニストが開示されている。
【0023】
所望の組成物を結腸へ送達するために、多数の異なる製剤、例えばアミロースコーティング錠剤、腸溶性コーティングキトサン錠剤(enterically coated chitosan tablets)、マトリックス内マトリックス(matrix within matrix)もしくはマルチマトリックスシステム、または多糖コーティング錠剤が利用できる。マルチマトリックス制御放出システムの一例は、2008年10月7日に発行されたビッラ(Villa)らの米国特許第7,431,943号に開示されている(参照することによって本明細書に援用される)。親油性相および両親媒性相がインナーマトリックス内に組み込まれ、かつ有効成分の少なくとも一部が両親媒性相に組み込まれた、マトリックス内マトリックスデザイン(matrix within matrix design)が開示されている。
【0024】
モノアミン再取り込み阻害剤は、セロトニン、ノルエピネフリンおよびドーパミン再取り込み阻害剤を含む多数の種類に分類される。それらは抗うつ薬として頻繁に用いられ、その一部は1つ以上の嗜癖行動を治療するために用いられている。ブプロピオンはモノアミン再取り込み阻害剤である。それは、ノルエピネフリンであり、かつドーパミン再取り込み阻害剤である。それは禁煙に用いられることが知られており、場合によっては肥満症および注意欠陥多動性障害の治療に用いられることが知られている。多くのモノアミン再取り込み阻害剤は二重(dual)再取り込み阻害剤、または単一組成物中に全3つの活性を有する三重(triple)再取り込み阻害剤である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
発明の概略
本発明は、特定の天然組成物は胃および上部消化器系をバイパスするように結腸または直腸内に送達され得、L細胞からの特定の消化管ホルモンの産生を増加させることができるという発見に関する。これは、肥満症および糖尿病を含む様々な種類の消化管ホルモン欠乏症関連状態を治療するために用いられうる。この治療において一部の個体の治療と共に生じうる報酬システムの刺激の欠損を治療するために、糖尿病または肥満症を治療する方法は、モノアミン再取り込みを遮断または阻害する組成物と組み合わせられるであろう。さらに、肥満症および関連疾患の治療において、併用療法は組成物のいずれかを単独で投与するよりも優れている。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明の1つの実施態様では、個体の結腸においてL細胞分泌消化管ホルモンの産生を刺激することによって、L細胞から分泌される消化管ホルモンの放出の減少または欠乏によって影響される状態または障害を治療または予防する方法であって、
a)酪酸、胆汁酸、長鎖脂肪酸およびグルタミンを含む群から、L細胞からの消化管ホルモンの分泌を引き起こす薬剤を選択し、結腸標的送達システムまたは直腸放出システムにて放出するように組成物を製剤化すること;
b)結腸標的送達システムによって十分な刺激性の医薬組成物(stimulating pharmaceutical composition)を個体に投与し、個体の結腸においてL細胞からの消化管ホルモンの放出を十分に引き起こし、所望の結果を十分に達成すること;および
c)十分な量のモノアミン再取り込み阻害剤を個体に投与し、ステップb)によって引き起こされる強迫行動の増加を十分に改善すること
を含む方法を提供する。
【0027】
本発明のさらに別の実施態様では、L細胞からの消化管ホルモンの放出を誘導するための医薬組成物であって、
a)酪酸、胆汁酸、長鎖脂肪酸およびグルタミンを含む群から選択される組成物であって、胃または上部消化管において放出されないように製剤化されている組成物;ならびに
b)モノアミン再取り込み阻害剤
を含む医薬組成物が開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0028】
発明の詳細な記載
この詳細な記載では、本明細書で用いられている用語の意味を定義し、当業者が本発明を実施することができるようにするために実施態様を具体的に記載する。
【0029】
本明細書で用いられている用語「a」または「an」は、1つまたは2つ以上のものとして定義される。本明細書で用いられている用語「複数(plurality)」は、2つまたは3つ以上のものとして定義される。本明細書で用いられている用語「別の」は、少なくとも第二番目以降のものとして定義される。本明細書で用いられている用語「含む」および/または「有する」は、含むこと(すなわち、オープンランゲージ)として定義される。本明細書で用いられている用語「共役した(coupled)」は、必ずしも直接的にではなく、必ずしも機械的にではないが、結合しているものとして定義される。
【0030】
この文書全体にわたって、「1つの実施態様」、「特定の実施態様」、および「実施態様」または類似の用語への言及は、実施態様に関連して記載されている特定の特性、構造、または特徴が本発明の少なくとも1つの実施態様に含まれていることを意味する。それゆえ、本明細書全体にわたる様々な場所における該語句の出現は、必ずしも全て同一の実施態様に言及しているわけではない。さらに、特定の特性、構造、または特徴は、1つ以上の実施態様のいずれかの適切な様式にて制限なく組み合わせられてよい。
【0031】
本明細書で用いられている用語「または」は、いずれか1つまたはいずれかの組み合わせを含む包括的な意味として解釈されるべきである。それゆえ、「A、BまたはC」は以下のいずれかを意味する:「A;B;C;AおよびB;AおよびC;BおよびC;A、BおよびC」。この定義の例外は、要素、機能、ステップまたは作用の組み合わせが何らかの本質的な相互排他性を有する場合にのみ生じるであろう。
【0032】
操作の現在分詞の前にある用語「手段(means)」は、1つ以上の実施態様、すなわち、所望の機能を達成するための1つ以上の方法、装置(devices)、または装置(apparatuses)がある所望の機能を指し、当業者は本明細書の開示を考慮してこれらまたはこれらの均等物から選択することができ、かつ、用語「手段(means)」の使用は限定することを意図していない。
【0033】
本明細書で用いられている用語「治療すること」は、特定の状態を軽減すること、該状態の症状を除去または減少させること、該状態の進行を遅延または除去すること、および対象における状態の最初の発症、または以前に罹患した対象における状態の再発を予防または遅延させることを指す。
【0034】
本明細書で用いられている「状態」または「障害」は、いずれかの疾患状態であって、L細胞からの消化管ホルモンの産生の増加が積極的または消極的な方法で影響するであろう哺乳類などの特定の状態を指す。本明細書で記載されている疾患状態が含まれるが、一般的にこれは、所望の様式にて消化管ホルモンの増加によって非常に影響されるいずれかの状態を指す。消化管ホルモン系は哺乳類において知られており、それゆえ、本発明は哺乳類の治療に関する。1つの実施態様では、哺乳類はヒトである。L細胞からの消化管ホルモンの産生の増加によって治療される状態は、限定されるものではないが、I型糖尿病、II型糖尿病、肥満症、食欲制御、代謝症候群、および多嚢胞性卵巣症候群を含む。
【0035】
本発明における消化管ホルモンの分泌は、通常は消化管における栄養の存在に応答して、結腸に存在しているL細胞において刺激される。該細胞は消化管の他の部分および生物の他の部分にも存在しているが、結腸において最高濃度を有する。結腸におけるL細胞の刺激は、考えられる中で最も効果的な消化管ホルモンの産生をもたらし、それゆえ、最も効果的な治療をもたらす。本発明のL細胞からの消化管ホルモンは、限定されるものではないが、GLP−1、GP−2、PYYおよびオキシントモジュリンを含む。GLP−1などのインクレチンは、特に、1つの実施態様における興味深い消化管ホルモンである。
【0036】
消化管ホルモンの放出を刺激する本発明の化合物は、酪酸、胆汁酸、長鎖脂肪酸およびグルタミンを含む群から選択される天然化合物である。これは、化合物の組み合わせ、および各化合物単独を含むと理解されるべきである。
【0037】
本明細書で用いられている用語「モノアミン再取り込み阻害剤」(MRI’s)は、セロトニン、ノルエピネフリンまたはドーパミン再取り込み阻害剤のいずれかである組成物を指す。これらの組成物は、強迫性障害(compulsive disorders)の治療に効果的であることが知られている。MRI’sは二重または三重阻害剤であってもよく、全3つのMRI’sのサブクラスにあってよい。1つの実施態様では、MRIはブプロピオン、すなわちノルエピネフリン、ドーパミン再取り込み阻害剤(二重阻害剤)である。
【0038】
本明細書で用いられている本発明の「化合物」は、本明細書に記載されている全ての化合物を含む。
【0039】
本発明の化合物は2つ以上の形に結晶化してよいが、これは多形(polymorphism)として知られている特徴であり、該多形(polymorphic forms)(「多形(polymorphs)」)は本発明の範囲内に含まれる。多形は一般的に、温度、圧力、またはその両方の変化に応答して生じうる。多形は、結晶化プロセスのバリエーションにも起因しうる。多形は、x線回折パターン、溶解度、および融点等の当該技術分野で周知の様々な物理的特徴によって区別することができる。
【0040】
本明細書で記載されている特定の化合物は1つ以上のキラル中心を含有するか、または複数の立体異性体として存在することができる。本発明の範囲内には、立体異性体の混合物、および精製されたエナンチオマーまたはエナンチオマー/ジアステレオマー濃縮された混合物が含まれる。本発明の範囲内には本発明の化合物の個々の異性体、およびそのいずれかの完全または部分的に平衡した(equilibrated)混合物も含まれる。本発明は、上記式によって表される化合物の個々の異性体を、その1つ以上のキラル中心が反転した異性体との混合物として含んでもよい。
【0041】
絶対的というわけではないが、典型的には、本明細書の化合物は本組成物の塩を含み、医薬的に許容される塩を含む。用語「医薬的に許容される塩」に包含される塩は、本発明の化合物の無毒性塩を指す。本発明の化合物の塩は、酸付加塩を含んでよい。代表的な塩は、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、炭酸水素塩、硫酸水素塩、酒石酸水素塩、ホウ酸塩、エデト酸カルシウム、カンシル酸塩、炭酸塩、クラブラン酸塩、クエン酸塩、二塩酸塩、エジシル酸塩、エストル酸塩、エシル酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニル酸塩、ヘキシルレゾルシン酸塩、ヒドラバミン、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、マレイン酸モノカリウム、ムチン酸塩(mucate)、ナプシル酸塩、硝酸塩、N−メチルグルカミン、シュウ酸塩、パモ酸塩(エンボ酸塩)、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクツロ酸塩、カリウム、サリチル酸塩、ナトリウム、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシル酸塩、トリエチオダイド(thethiodide)、トリメチルアンモニウム(thmethylammonium)、および吉草酸塩を含む。医薬的に許容されない他の塩は、本発明の化合物の製造に有用であり得、これらも本発明のさらなる態様を形成していると見なされるべきである。
【0042】
本明細書で用いられているL細胞からの消化管ホルモン刺激性の組成物(gut hormone from L-cells stimulating composition)を「投与すること」は、本発明のインクレチン刺激性の組成物(incretin stimulating composition)の経口または直腸投与を指す。本明細書の他の箇所に記載されているように、化合物は経口的に摂取され、上部消化管および胃をバイパスして結腸に送達されるように製剤化されるか、または直腸内に投与され、結腸に組成物を送達するように製剤化される。
【0043】
本発明の組成物を「投与すること」は、経口、直腸、IV、またはIMなどを指してよく、いずれか特定の投与手段に依存しているのではない。MRIは消化管ホルモン刺激性の組成物(gut hormone stimulating composition)と一緒に投与されてよく、または連続して投与されてよい。MRI’sは、インクレチン刺激性の組成物(incretin stimulating composition)と同一または異なる経路によって投与されてよい。本発明によって投与されるMRIの量は、本発明のインクレチン刺激性の組成物(incretin stimulating composition)の投与によって生じうる付加的な移動(transfer)を改善する量である。本発明の消化管ホルモン刺激性の組成物(Gut hormone stimulating compositions)は上部GIをバイパスする必要がある一方、MRI’sはその必要がなく、それゆえ、2つに分離した(bifurcated)投与計画の可能性をもたらす。当業者は、特定のMRIおよび本発明による治療を受けている個体に依存する正確な量を決定することができるであろう。一部のMRI’s、例えばブプロピオンは、抗肥満効果も有しているため、これらの種類のMRI’sと消化管ホルモン刺激性の組成物(gut hormone stimulating compositions)との組み合わせは、これらの組成物単独での治療と比較して非常に優れた効果または相乗効果を有するであろうことが期待される。1つの実施態様では、ブプロピオンによる治療における平均用量は、約0.1mg/kg〜約10mg/kgであろう。
【0044】
本明細書で用いられている用語「有効量」は、例えば研究者または臨床医によって求められる、組織、系、動物、またはヒトの生物学的または医学的応答を誘発するであろう薬物または医薬品の量を意味する。
【0045】
用語「治療的有効量」は、該量を摂取しなかった類似の対象と比較して、治療の改善、治癒、予防、疾患、障害、もしくは副作用の寛解、または疾患もしくは障害の進行速度の減少をもたらすいずれかの量を意味する。該用語は、その範囲内に、正常な生理的機能を増強するために有効な量も含む。治療的有効量は、「治療効果」を生じるであろう。
【0046】
治療における使用のために、本発明の化合物およびその塩の治療的有効量は、結腸標的送達システムにて放出されるように製剤化された医薬組成物として提供される。
【0047】
本発明は、本明細書で記載されている化合物またはその塩の有効量、および1つ以上の医薬的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤を含む医薬組成物を提供する。担体、希釈剤または賦形剤は、製剤の他の成分に適合し、医薬組成物の受容者に有害でなく、投与様式、すなわち経口または直腸投与と調和するという意味において許容されなければならない。
【0048】
本発明の別の態様では、本発明の化合物またはその塩を、1つ以上の医薬的に許容される担体、希釈剤または賦形剤と混合することを含む、医薬製剤の製造方法も提供される。
【0049】
本発明の化合物の治療的有効量は、多数の要因に依存するであろう。例えば、受容者の人種、年齢、および体重、治療を要する正確な状態およびその重症度、製剤の性質、ならびに結腸標的送達システムの種類が、考慮されるべき全要因である。治療的有効量は、最終的には付添い人、医師または獣医師の裁量で決定されるべきである。それでも、糖尿病または過体重状態および関連状態に苦しんでいるヒトの治療のための本発明のインクレチン刺激性の化合物(incretin stimulating compound)の有効量は、一般的に、1日当たり受容者(哺乳類)の体重につき0.01〜100mg/kg体重の範囲内であるべきである。より一般的には、有効量は1日当たり0.3〜30mg/kg体重の範囲内であるべきである。それゆえ、70kgの成体哺乳類については、1日当たりの実際の量は、通常21〜2100mgであろう。この量は、1日当たり単回用量にて、または1日当たりの総用量が同一になるように1日当たり複数回(例えば2回、3回、4回、5回、またはそれ以上)の分割用量(sub-doses)にて与えられてよい。その塩または溶媒和物の有効量は、本発明の化合物自体の有効量の割合として決定されてよい。類似の投与量は、本明細書で言及している他の状態の治療にも適しているであろう。
【0050】
医薬製剤は、単位用量当たり所定量の有効成分を含有する単位用量形態にて提供されてよい。該単位は、非限定的な例として、治療される状態、投与経路、ならびに患者の年齢、体重、および状態に依存して、0.5mg〜1gの本発明のインクレチン刺激性の化合物(incretin stimulating compound)を含有してよい。好ましい単位投与量製剤は、本明細書で上述した有効成分の1日用量または分割用量(sub-dose)、またはその適切なフラクションを含有する製剤である。該医薬製剤は、薬学の分野で周知のいずれかの方法によって製造されてよい。
【0051】
本発明の化合物またはその塩は、標的薬物送達システムによって投与される。1つの実施態様では、送達システムは、結腸への薬物送達を標的にし、上部消化器系および胃をバイパスするために利用されてよい。該薬物送達システムは、共有結合組成物、ポリマーコーティング組成物、マトリックスに組み込まれた組成物、持続放出組成物、酸化還元感受性ポリマー組成物、生体接着性組成物、微小粒子コーティング組成物(micropartical coating compositions)、および浸透圧送達組成物を含む。適切な組成物は、多糖、例えばキトサン、ペクチン、コンドロイチン硫酸、シクロデキストリン(cyclodexthn)、デキストラン、グアーガム、イヌリン、アミロースおよびローカストビーンガムを含有する組成物を含む。化合物は可溶性ポリマーと共役していてもよい。該ポリマーは、ポリビニルピロリドン(PVP)、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド−フェノール、ポリヒドロキシエチル−アスパルトアミドフェノール、またはパルミトイル残基で置換されたポリエチレンオキシドポリリジンを含んでよい。さらに、化合物は一種の生分解性ポリマー;例えば、ポリ乳酸、ポリエプシロンカプロラクトン(polyepsilon caprolactone)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリレート、およびヒドロゲルの架橋または両親媒性ブロックコポリマーと共役していてよい。本発明の特定の効果は、マルチマトリックス標的システムの実施態様を含む。本発明の特定の効果は、親油性相および両親媒性相を含む親水性の第一マトリックスの製剤を含む標的マトリックス内マトリックスシステム(targeted matrix in matrix systems)であって、親油性相および両親媒性相が第二マトリックス内に一緒に存在し、かつ、第二マトリックスが親水性の第一マトリックス全体にわたって分散され、化合物を含有する医薬組成物が両親媒性相に少なくとも部分的に組み込まれているシステムである。マトリックス内マトリックス製剤(matrix in matrix formulations)のいくつかの例は、上記の米国特許第7,431,943号に開示されている。当業者であれば、本発明の化合物またはその塩の、治療されている対象の結腸への送達を標的にすることを目的とした該組成物の使用を理解できるであろう。標的送達のための該組成物の製剤化方法(methods for the formulation)は、本開示を考慮すると、当業者の技術の範囲内である。
【0052】
本発明の化合物またはその塩は、単独または他の治療薬と組み合わせて利用されてよい。本発明の化合物および他の医薬活性剤は、一緒にまたは別々に投与されてよく、別々に投与される場合、投与は同時に、またはいずれかの順序で連続して行われてよい。本発明の化合物および他の医薬活性剤の量、ならびに相対的な投与のタイミングは、所望の併用療法の効果を達成するように選択されるであろう。本発明の化合物またはその塩もしくは溶媒和物と他の治療剤との組み合わせにおける投与は、(1)両化合物を含む単一の医薬組成物;または(2)化合物の1つをそれぞれ含む別々の医薬組成物における同時投与による組み合わせであってよい。あるいは、組み合わせは、1つの治療剤が第一に投与され、他の治療剤が第二に投与されるか、またはその逆の連続様式にて別々に投与されてよい。該連続投与は、短い時間間隔または長い時間間隔でなされてよい。
【0053】
化合物は、例えばココアバターまたは他のグリセリドなどの通常の坐剤の基剤を含有する、坐剤または停留浣腸などの直腸組成物に製剤化されてもよい。そのように製剤化される組成物は、直腸投与が影響しうる他の部位に加えて、結腸に効果的な投与量を与えるようにデザインされるであろう。
【0054】
本発明の化合物は、様々な障害および状態の治療に用いられてよい。それ自体、本発明の化合物は、それらの障害または状態の治療に有用な様々な他の治療薬と組み合わせて用いられてよい。上で簡単に述べたように、現在の糖尿病治療は食事、運動、インスリン、インスリン分泌促進物質、グルコース低下エフェクター(glucose-lowering effectors)、PPAR−γアゴニスト、およびα−グルコシダーゼ阻害剤を含む。本発明の化合物は、糖尿病ならびに関連する障害および状態、例えば、限定されるものではないが、I型およびII型糖尿病、肥満症、耐糖能異常、インスリン抵抗性、代謝症候群、高脂血症、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症、神経変性疾患、および他の兆候、例えば炎症および脳卒中を治療および/または予防するために、これらの治療または他の医学的治療と組み合わせられてよい。例えば、II型糖尿病の治療において、本発明の化合物は、メトホルミン、スルホニル尿素、例えばグリブリドおよびグリピジド、レパグリニド、ナテグリニド、チアゾリジンジオン、例えばロシグリタゾンおよびピオグリタゾン、アカルボース、ミグリトール、エクセナチド(exanatide)、プラムリンチド、およびインスリンを含む1つ以上の医薬活性剤と組み合わせられてよい。
【0055】
実施例
実施例1
参考文献1に記載されているように製造した浣腸または坐剤(1gのグルタミンを含有する)として薬物を送達する。消化管ホルモン効果が損なわれた(参考文献3)および/または消化管ホルモン分泌が損なわれた(参考文献4および5)10人の一晩絶食させた肥満の糖尿病患者に、1つの坐剤(または浣腸)を直腸投与する。薬物投与から30分後、患者に経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)を受けさせるか、または標準的食事(standardized meal)を与える。以下の時点で血液を採取する:−30、0、5;10、15、30、60、90、および120分。グルコース、インスリン、GLP−1、PYY、他のホルモンおよび脂質のレベルについて血液を分析する。グルコースおよび脂質(標準的食事後)レベルを治療計画後に測定すると、減少していることが示される。
【0056】
実施例2
参考文献1に記載されているように製造した浣腸または坐剤(2gの酪酸を含有する)として薬物を送達する。インクレチン効果が損なわれた(参考文献3)および/または消化管ホルモン分泌が損なわれた(参考文献4および5)10人の一晩絶食させた肥満の糖尿病患者に、1つの坐剤(または浣腸)を直腸投与する。薬物投与から30分後、患者に経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)を受けさせるか、または標準的食事(standardized meal)を与える。以下の時点で血液を採取する:−30、0、5;10、15、30、60、90、および120分。グルコース、インスリン、GLP−1、PYY、他のホルモンおよび脂質のレベルについて血液を分析する。グルコースおよび脂質(標準的食事後)のレベルを治療計画後に測定すると、それらのレベルが減少していることが示される。
【0057】
実施例3
MMX技術で製剤化された錠剤(1gのグルタミンを含有する)を参考文献2に記載されているように製造する。消化管ホルモン効果が損なわれた(参考文献3)および/または消化管ホルモン分泌が損なわれた(参考文献4および5)10人の一晩絶食させた肥満の糖尿病患者に、午前8:00に1つのMMX錠剤を投与する。薬物投与から4時間後、患者に経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)を受けさせるか、または標準的食事(standardized meal)を与える。以下の時点で血液を採取する:−30、0、5;10、15、30、60、90、および120分。グルコース、インスリン、GLP−1、PYY、他のホルモンおよび脂質のレベルについて血液を分析する。グルコースおよび脂質(標準的食事後)のレベルを治療計画後に測定すると、それらのレベルが減少していることが示される。
【0058】
実施例4
MMX技術で製剤化された錠剤(2gの酪酸を含有する)を参考文献2に記載されているように製造する。消化管ホルモン効果が損なわれた(参考文献3)および/または消化管ホルモン分泌が損なわれた(参考文献4および5)10人の一晩絶食させた肥満の糖尿病患者に、午前8:00に1つのMMX錠剤を投与する。薬物投与から4時間後、患者に経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)を受けさせるか、または標準的食事(standardized meal)を与える。以下の時点で血液を採取する:−30、0、5;10、15、30、60、90、および120分。グルコース、インスリン、GLP−1、PYY、他のホルモンおよび脂質のレベルについて血液を分析する。グルコースおよび脂質(標準的食事後)のレベルを治療計画後に測定すると、それらのレベルが減少していることが示される。
【0059】
実施例5
MMX技術で製剤化された錠剤(1gのグルタミンを含有する)を参考文献2に記載されているように製造する。インクレチン効果が損なわれた(参考文献3)および/またはインクレチン分泌が損なわれた(参考文献4および5)10人の肥満の糖尿病患者に、6週間、最初の食事前、午前8:00に1つのMMX錠剤を投与する。治療前ならびに治療開始から1、2、および6週間後、HbA1c、空腹時血糖およびインスリンを測定する。さらに、これらの時点で患者に経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)を受けさせるか、または標準的食事(standardized meal)を与える。以下の時点で血液を採取する:−30、0、5;10、15、30、60、90、および120分。グルコース、インスリン、GLP−1、PYY、他のホルモンおよび脂質のレベルについて血液を分析する。治療計画後、グルコース濃度が減少していることが測定される。治療は、トリグリセリドレベルが治療前レベルから低下することももたらした。
【0060】
実施例6
MMX技術で製剤化された錠剤(2gの酪酸を含有する)を参考文献2に記載されているように製造する。消化管ホルモン効果が損なわれた(参考文献3)および/または消化管ホルモン分泌が損なわれた(参考文献4および5)10人の肥満の糖尿病患者に、6週間、最初の食事前、午前8:00に1つのMMX錠剤を投与する。治療前ならびに治療開始から1、2、および6週間後、HbA1c、空腹時血糖およびインスリンを測定する。さらに、これらの時点で患者に経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)を受けさせるか、または標準的食事(standardized meal)を与える。以下の時点で血液を採取する:−30、0、5;10、15、30、60、90、および120分。グルコース、インスリン、GLP−1、PYY、他のホルモンおよび脂質のレベルについて血液を分析する。治療計画後、グルコース濃度が減少していることが測定される。治療は、トリグリセリドレベルが治療前レベルから低下することももたらした。
【0061】
実施例7
上記実施例のそれぞれは、ブプロピオン(ウェルブトリンXL、ザイバン)300mg持続放出錠剤の1日1回の経口投与と組み合わせられる。併用療法の投与後、二次性の強迫性障害(secondary compulsive disorders)の出現について患者を観察する。併用療法は、どちらか単独の治療の場合と比較して、投薬後に行われた空腹/満腹調査におけるスコアの改善、または薬物投与の翌日に測定した場合の食物摂取の減少をもたらすことが観察される。
【0062】
実施例8
上記実施例のそれぞれは、MMX技術で製剤化された1つの錠剤中でブプロピオン300mgと組み合わせられる。二次性の強迫性障害(secondary compulsive disorders)の出現について患者を観察し、併用療法の投与後の彼らの空腹、満腹および健康(well being)を評価する質問に答えるよう求められる。併用療法は、どちらか単独の治療の場合と比較して、投薬後に行われた空腹/満腹調査におけるスコアの改善、または薬物投与の翌日に測定した場合の食物摂取の減少をもたらすことが観察される。
【0063】
下記の参考文献は、それらの全体において参照することによって本出願に含まれる。
1.Mayo Clin. Proc. 1993, Vol 68, 978、参照することによって本明細書に援用される
2.米国特許7,431,943B1、参照することによって本明細書に援用される
3.Diabetes, Obesity and Metabolism, 9 (Suppl. 1), 2007, 23-31、参照することによって本明細書に援用される。
4.Toft-Nielsen MB, Damholt MB, Madsbad S et al. Determinants of the impaired secretion of glucagon-like peptide-1 in type 2 diabetic patients. J Clin Endocrinol Metab 2001;86:3717-3723.
5.Rask E, Olsson T, Soderberg S et al. Impaired incretin response after a mixed meal is associated with insulin resistance in nondiabetic men. Diabetes Care 2001;24:1640-1645.
6.BIOK001PRに係る仮特許出願61/143,951、参照することによって本明細書に援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体の結腸においてL細胞分泌消化管ホルモンの産生を刺激することによって、L細胞から分泌される消化管ホルモンの放出の減少または欠乏によって影響される状態または障害を治療または予防する方法であって、
a)酪酸、胆汁酸、長鎖脂肪酸およびグルタミンを含む群から、L細胞からの消化管ホルモンの分泌を引き起こす薬剤を選択し、結腸標的送達システムまたは直腸放出システムにて放出するように組成物を製剤化すること;
b)結腸標的送達システムによって十分な刺激性の医薬組成物(stimulating pharmaceutical composition)を個体に投与し、個体の結腸においてL細胞からの消化管ホルモンの放出を十分に引き起こし、所望の結果を十分に達成すること;および
c)十分な量のモノアミン再取り込み阻害剤を個体に投与し、ステップb)によって引き起こされる強迫行動の増加を十分に改善すること
を含む方法。
【請求項2】
医薬組成物がグルタミンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
医薬組成物が酪酸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
インクレチンの放出によって影響される状態または障害がI型糖尿病、II型糖尿病、肥満症、食欲制御、代謝症候群、および多嚢胞性卵巣症候群の1つ以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
結腸標的送達システムがマトリックス内マトリックス送達システム(matrix within matrix delivery system)である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
結腸標的送達システムが親油性相および両親媒性相を含む親水性の第一マトリックスの制御放出製剤であり、親油性相および両親媒性相が第二マトリックス内に一緒に存在し、かつ、該第二マトリックスが親水性の第一マトリックス全体にわたって分散され、医薬組成物が両親媒性相に少なくとも部分的に組み込まれている、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
刺激性の組成物(stimulating composition)が直腸投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
モノアミン再取り込み阻害剤がブプロプリオンである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
モノアミン再取り込み阻害剤が経口投与され、かつ、インクレチン刺激性の組成物(incretin stimulating composition)が直腸投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
L細胞からの消化管ホルモンがGLP−1、GLP−2、PYYおよびオキシントモジュリンからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
結腸においてL細胞からの消化管ホルモンの放出を誘導するための医薬組成物であって、
a)酪酸、胆汁酸、長鎖脂肪酸およびグルタミンを含む群から選択される組成物であって、胃または上部消化管において放出されないように製剤化されている組成物;ならびに
b)モノアミン再取り込み阻害剤
を含む医薬組成物。
【請求項12】
組成物が結腸標的薬物送達システムに製剤化されている、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
組成物が直腸投与用に製剤化されている、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
医薬組成物がグルタミンを含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項15】
医薬組成物が酪酸を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項16】
結腸標的送達システムがマトリックス内マトリックスシステム(matrix within matrix system)である、請求項12に記載の組成物。
【請求項17】
結腸標的送達システムが親油性相および両親媒性相を含む親水性の第一マトリックスの制御放出製剤であり、親油性相および両親媒性相が第二マトリックス内に一緒に存在し、かつ、該第二マトリックスが親水性の第一マトリックス全体にわたって分散され、医薬組成物が両親媒性相に少なくとも部分的に組み込まれている、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
L細胞からの消化管ホルモンの放出を誘導するための組成物およびモノアミン再取り込み阻害剤が、異なる投与経路によって投与されるために製剤化されている、請求項11に記載の組成物。
【請求項19】
L細胞からの消化管ホルモンの放出を誘導するための組成物が直腸投与用に製剤化されており、かつ、モノアミン再取り込み阻害剤が経口投与用に製剤化されている、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
モノアミン再取り込み阻害剤がブプロプリオンである、請求項11に記載の組成物。
【請求項21】
消化管ホルモンがGLP−1、GLP−2、PYYおよびオキシントモジュリンからなる群から選択される、請求項11に記載の組成物。

【公表番号】特表2013−505936(P2013−505936A)
【公表日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−530996(P2012−530996)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【国際出願番号】PCT/US2010/049843
【国際公開番号】WO2011/038014
【国際公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(511168039)バイオキアー・インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】BioKier Inc.
【Fターム(参考)】