説明

糖尿病及び肥満症を治療するためのプテロシン化合物の使用

本発明は、1型と2型を含む糖尿病を治療するための式(I)のプテロシン化合物の使用に関する。また、開示内容は、糖尿病を処置するためのプテロシン化合物の使用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2009年1月26日に出願された米国仮特許出願第61/147,382号に基づく優先権を主張し、その内容は完全に本明細書で参照により組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
プテロシン化合物は蕨に存在するセスキテルペノイドである。この族の一部は抗新生物活性を有することがこれまでに示されている(例:日本特許第63146839A2号、Chem. Pharm. Bull.1978、26:2346、Molecules 2008、13:255)。
【0003】
糖尿病は、糖質代謝の疾病であり、血糖レベルが異常に高いことが特徴である。糖尿病には、非インスリン依存性または成人発症型の2型と、インスリン依存性または若年発症型の1型の2つの異なる型がある。
【0004】
2型糖尿病は通常成人に発生し、肥満症と高い関連性がある。2型糖尿病患者は食事を管理する必要があり、減量と運動が奨励される。患者はインスリン感受性を高める、または膵臓に刺激を与えてインスリンを放出させるために薬を服用する。現在2型糖尿病向けの薬には、スルホニル尿素、メグリチニド、ビグアニド、チアゾリンジオン、α−グルコシダーゼ阻害薬が含まれるが、これらには例えば副作用や高率の二次無効など、数々の制限がある。一方、1型糖尿病患者は彼らの年齢及び身長に対して太り過ぎではなく、若年齢で急激な発症が見られる。1型糖尿病患者はその生涯にわたってインスリンを注射で投与し続ける必要がある。インスリンの経口投与について研究が多く行われているが、現在市販されているインスリンの経口投薬はない。
【0005】
結果として、好ましくは副作用が少なく、経口投与が可能な糖尿病(1型と2型)及び肥満症の治療のための別の薬剤が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】日本特許第63146839A2号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Chem. Pharm. Bull.1978、26:2346
【非特許文献2】Molecules 2008、13:255
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、複数のプテロシン化合物が抗糖尿病及び抗肥満症活性を有するという予期せぬ発見に基づいている。
【0009】
従って、一様態において、本発明は、治療を必要とする被験体に式(I)
【化1】


で表されるプテロシン化合物の有効量を投与することを含み、式(I)中、各R、R、R、Rが独立に、H、OR、アミノ基、ハロゲン基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、−(G)、−O−(G)またはR−O−(G)、であり、各R及びRが独立に、H、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、またはヘテロアリール基であり、Gが単糖残基であり、xが1から4の整数であり、各R、R、R、Rが独立に、H、OR、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、−(G)、−O−(G)、またはR−O−(G)であり、各RとRがH、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、またはヘテロアリール基であり、またはR、R、及びそれらが結合している2個の炭素原子が共同で選択的に1、2または3個のヘテロ原子を含む3〜8員環を形成し、またはR、R、及びそれらが結合している2個の炭素原子が共同で選択的に1、2または3個のヘテロ原子を含む3〜8員環を形成し、またはR、R、及びそれらが結合している2個の炭素原子が共同で選択的に1、2または3個のヘテロ原子を含む3〜8員環を形成し、XがC(O)、C(S)、S(O)、COH、C(Re')、またはC(NR)であり、各R及びRe'が、独立に、H、アルキル基、またはシアノ基であり、RがH、OR、アミノ基、ハロゲン基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基であることを特徴とする、糖尿病(1型または2型)の治療方法を提供する。
【0010】
また、任意の前記プテロシン化合物の糖尿病治療のための用途、及び糖尿病治療のための薬剤製造の用途も本発明の範囲内である。
【0011】
別の一様態において、本発明は、治療を必要とする被験体に前記式(I)で表されるプテロシン化合物の有効量を投与することを含む肥満症の治療方法を提供する。
【0012】
また、任意の前記プテロシン化合物の肥満症治療のための用途、及び肥満症治療のための薬剤製造の用途も本発明の範囲内である。
【0013】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細を以下の説明に示す。本発明の他の特徴及び利点は、以下のいくつかの実施形態の詳細な説明及び添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0014】
本発明を説明する目的で、以下に本発明の現在の好まれる実施例を図面に示す。しかしながら、本発明がそれらの好まれる実施例に限定されないことは理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】化合物1の経口投与(100mg/kg/日)による14日間の治療を受けたストレプトゾトシン(STZ)誘導糖尿病マウスのグルコース負荷試験結果である(例3)。*p<0.05は対照群と比較した統計的有意性を表す。
【図2】異なる濃度の化合物1で処理されたC2C12筋芽細胞のインスリン感受性試験の結果である(例4)。*p<0.05は対照群と比較した統計的有意性を表す。
【図3】異なる濃度の化合物1で処理されたC2C12筋芽細胞のグルコース消費/取り込み試験の結果である(例5)。*p<0.05は対照群と比較した統計的有意性を表す。
【図4】化合物1の経口投与(100mg/kg/日)による14日間の治療を受けたSTZ誘発糖尿病マウスの4型グルコース輸送体(Glut4)発現試験の結果である(例6)。*p<0.05は対照群と比較した統計的有意性を表し、#p<0.05はSTZ誘発糖尿病マウスと比較した統計的有意性を表す。
【図5】化合物1の経口投与(100mg/kg/日)による14日間の治療を受けたSTZ誘発糖尿病マウスのホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK)試験の結果である(例7)。*p<0.05は対照群と比較した統計的有意性を表す。
【図6】化合物1の経口投与(100mg/kg/日)による28日間の治療を受けたdb/dbマウスのグルコース負荷試験結果である(例8)。
【図7】化合物1の注射投与(30mg/kg/日)による21日間の治療を受けたdb/dbマウスのグルコース負荷試験結果である(例8)。
【図8】化合物1の注射投与(30mg/kg/日)による28日間の治療を受けたdb/dbマウスのグルコース負荷試験結果である(例8)。
【図9】化合物1の経口投与(100mg/kg/日)による28日間の治療を受けたSTZ誘発糖尿病マウスのHbAlC(ヘモグロビンA1C)試験結果である(例9)。*p<0.05は対照群と比較した統計的有意性を表し、#p<0.05はSTZ誘発糖尿病マウスと比較した統計的有意性を表す。
【図10】化合物1の経口投与(100mg/kg/日)による28日間の治療を受けたSTZ誘発糖尿病マウスのHOMA−IR(インスリン抵抗性のホメオスタシスモデル評価)試験結果である(例10)。*p<0.05は対照群と比較した統計的有意性を表し、#p<0.05はSTZ誘発糖尿病マウスと比較した統計的有意性を表す。
【図11A】異なる濃度の化合物1で処理されたC2C12筋芽細胞のAMP活性化タンパク質キナーゼ(AMPK)リン酸化試験結果である(例11)。
【図11B】異なる濃度の化合物1で処理されたC2C12筋芽細胞のアセチルCoAカルボキシラーゼ(ACC)リン酸化試験結果である(例11)。
【図12A】高脂肪食(HFD)マウスの血中脂質/コレステロール試験結果を示す。*p<0.05は対照群と比較した統計的有意性を表し、#p<0.05はHFDマウスと比較した統計的有意性を表す。
【図12B】高比重リポ蛋白(HDL)コレステロール/総コレステロール及び低比重リポ蛋白(LDL)コレステロール/総コレステロールの比率の結果を示す。*p<0.05は対照群と比較した統計的有意性を表し、#p<0.05はHFDマウスと比較した統計的有意性を表す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
別段の定めがない限り、本明細書において使用される技術用語および科学用語は、本発明にふさわしい当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。ここで言及するすべての引例は、出典を明記することによりその開示内容を本願明細書の一部とする。
【0017】
本明細書では、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上明らかに示す場合を除き、複数形も含むものとする。従って、例えば、「a salt」はその複数形及び当業者の知るところであるその均等物も含む。
【0018】
一態様において、本発明は、必要とする被験体に式(I)
【化2】

で表されるプテロシン化合物の有効量を投与することを含み、式(I)中、各R、R、R、Rが、独立に、H、OR、アミノ基、ハロゲン基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、−(G)、−O−(G)またはR−O−(G)であり、各R及びRが独立にH、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、またはヘテロアリール基であり、Gが単糖残基であり、xが1から4の整数であり、各R、R、R、Rが、独立に、H、OR、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、−(G)、−O−(G)、またはR−O−(G)であり、各R及びRがH、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、またはヘテロアリール基であり、またはR、R、及びそれらが結合している2個の炭素原子が共同で選択的に1、2または3個のヘテロ原子を含む3〜8員環を形成し、またはR、R、及びそれらが結合している2個の炭素原子が共同で選択的に1、2または3個のヘテロ原子を含む3〜8員環を形成し、またはR、R、及びそれらが結合している2個の炭素原子が共同で選択的に1、2または3個のヘテロ原子を含む3〜8員環を形成し、XがC(O)、C(S)、S(O)、COH、C(Re')、またはC(NR)であり、各R及びRe'が、独立に、H、アルキル基、またはシアノ基であり、RがH、OR、アミノ基、ハロゲン基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基であることを特徴とする、糖尿病の治療方法を提供する。
【0019】
用語「アルキル基」とは、別段の記載がない限り、1〜20の炭素原子(例:C〜C)を含む直鎖若しくは分岐鎖の一価炭化水素を指す。アルキル基の例には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基が含まれるが、これらに限らない。用語「アルキレン基」とは、1〜20の炭素原子(例:C〜C)を含む直鎖若しくは分岐鎖の二価炭化水素を指す。アルキレン基の例には、メチレン基及びエチレン基が含まれるが、これらに限らない。用語「アルケニル基」とは、2〜20の炭素原子(例:C〜C10)と1つ以上の二重結合を含む直鎖若しくは分岐鎖の一価または二価の炭化水素を指す。アルケニル基の例には、エテニル基、プロペニル基、プロペニレン基、アリル基、1,4−ブタジエニル基が含まれるが、これらに限らない。用語「アルキニル基」とは、2〜20の炭素原子(例:C〜C10)及び1つ以上の三重結合を含む直鎖若しくは分岐鎖の一価または二価の炭化水素を指す。アルキニル基の例には、エチニル基、エチニレン基、1−プロピニル基、1−及び2−ブチニル基及び1−メチル−2−ブチニル基が含まれるが、これらに限らない。用語「アルコキシカルボニル基」とは、−O−C(O)−R基を指し、そのうちRが、H、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、ヘテロシクロアルキル基、ヘテロシクロアルケニル基、アリール基、またはヘテロアリール基とすることができる。用語「アミノ基」とは、NH2、アルキルアミノ基、またはアリールアミノ基を指す。用語「アルキルアミノ基」、及び「アルキルチオ基」とは、−N(R)−アルキル基及び−S(R)−アルキル基をそれぞれ指し、そのうちRが、H、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、ヘテロシクロアルキル基、ヘテロシクロアルケニル基、アリール基、またはヘテロアリール基とすることができる。用語「アミド基」とは、−NRC(O)R’基を指し、そのうち各R及びR’が、独立に、H、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、ヘテロシクロアルキル基、ヘテロシクロアルケニル基、アリール基、またはヘテロアリール基とすることができる。
【0020】
用語「シクロアルキル基」とは、3〜30の炭素原子(例:C〜C12)を有する一価または二価の飽和炭化水素環系を指す。シクロアルキル基の例には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1,4−シクロヘキシレン基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、アダマンティンが含まれるが、これらに限らない。用語「ヘテロシクロアルキル基」とは、1個以上のヘテロ原子(O、N、S、またはSeなど)を有する、一価または二価の非芳香族5〜8員単環系、8〜12員二環系または11〜14員三環系を指す。ヘテロシクロアルキル基の例には、ピペラジニル基、ピロリジニル基、ジオキサニル基、モルフォニリル基、テトラヒドロフラニル基が含まれるが、これらに限らない。
【0021】
用語「アリール基」とは、一価の6−炭素単環式、10−炭素二環式、14−炭素三環式芳香族環系を指す。アリール基の例には、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基が含まれるが、これらに限らない。用語「ヘテロアリール基」とは、1個以上のヘテロ原子(O、N、S、またはSeなど)を有する、一価の芳香族5〜8員単環系、8〜12員二環系、または11〜14員三環系を指す。ヘテロアリール基の例には、ピリジル基、フリル基、イミダゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ピリミジニル基、チエニル基、キノリニル基、インドリル基、チアゾリル基が含まれる。用語「単糖残基」とは、グリコシド(エーテル)結合を通してともに結合された糖を指し、生物学的分子の構造的に異なるクラスである。これら化合物の構造的多様性は、多くの異なる糖及び多糖中のグルクロン酸など糖誘導体から生じ、グルコース残基とアラビノースに限られず、各糖が糖環の異なるいくつかの位置を通してほかの糖に共有結合される。加えて、グリコシド結合は糖の立体化学のためαまたはβ配置を持つことができ、両方の結合タイプが同一分子に存在することができる。
【0022】
別段の記載がない限り、本明細書でいうアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルキルチオ基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基は、置換若しくは非置換両方の部分を含む。用語「置換」とは、1つ以上の置換基(同じまたは異なるものとできる)を指し、それぞれが水素原子を置換する。置換基の例には、ハロゲン基(例:F、Cl、Br、I)、ヒドロキシル基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、メルカプト基、アルコキシカルボニル基、アミド基、カルボキシ基、アルカンスルホニル基、アルキルカルボニル基、カルバミド基、カルバミル基、カルボキシル基、チオウレイド基、チオシアナート基、スルホンアミド基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルオキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基、ヘテロシクリルアルキル基が含まれるが、これらに限らず、そのうち、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルオキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、オキソ基(O=)、チオキソ基(S=)、チオ基、シリル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシルアミノ基、アミノアシル基、アミノチオアシル基(aminothioacyl)、アミジノ基、チオウレイド基、チオシアナート基、スルホンアミド基、グアニジン基、ウレイド基、アシル基、チオアシル基、カルバミル基(−C(O)NH)、カルボキシル基(−COOH)、カルボン酸エステル、そのうちアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルオキシカルボニル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクリル基、ヘテロシクリル基がさらに置換され得る。またシクロアルキル基、シクロアルケニル基、ヘテロシクロアルキル基、ヘテロシクロアルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基は相互に縮環され得る。置換基は合成の過程において保護基とすることができる。ここで言う「保護基」とは、プロセス工程中に不要な反応をする官能性を保護または遮蔽するために用いられる基または部分を指す。保護基はその工程で反応を防止するが、その後取り除いて本来の官能性を現すことができる。保護基の例には、トリメチルシリル基(TES)、tert−ブチルオキシカルボニル基(tBoc)、ベンジルオキシカルボニル基(CBZ)、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc)が含まれるが、これらに限らない。
【0023】
本発明でいうプテロシン化合物は、その化合物自体と、該当する場合、その塩、プロドラッグ、溶媒化合物を含む。例えば塩は、プテロシン化合物上でアニオンと正に荷電した基(例:アミノ基)間で形成され得る。適したアニオンには、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硫酸塩、硝酸塩、燐酸塩、クエン酸塩、ホン酸ナトリウム、トリフルオロ酢酸塩、酢酸塩、リンゴ酸、トシラート、酒石酸塩、フマル酸塩、グルタミン酸塩、グルクロン酸、乳酸塩、グルタル酸、マレイン酸塩が含まれる。同様に、塩はプテロシン化合物上でカチオンと負に荷電した基(例:カルボキシレート基)間でも形成され得る。適したカチオンには、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、およびテトラメチルアンモニウムイオンなどのアンモニウムカチオンが含まれる。前記プテロシン化合物はまた、 第四窒素原子を含むそれらの塩も含む。プロドラッグの例には、エステル及び被験体への投与に際して活性プテロシン化合物を提供できるその他製薬学的に許容される化合物が含まれる。溶媒化合物とは、活性プテロシン化合物と製薬学的に許容される溶媒間で形成される複合剤をさす。製薬学的に許容される溶媒には水、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸、エタノールアミンが含まれる。
【0024】
一実施例において、XはC(O)またはCHであり、特にC(O)である。
【0025】
別の一実施例において、各R、R、R、Rは、独立に、H、OR、−(G)、−O−(G)、R−O−(G)またはアルキル基であり、それらはH、アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、または保護基として選択的にハロゲン基、COOR、OR、Rで置換される。
【0026】
さらに別の一実施例において、各R、R、R、Rは、独立に、H、OR、−(G)、−O−(G)、R−O−(G)、またはアルキル基であり、それらはH、アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、または保護基として選択的にハロゲン基、COOR、OR、Rで置換される。
【0027】
具体的には、表1に本発明の式(I)のプテロシン化合物の例を示す。
【表1−1】

【表1−2】


【表1−3】

化合物76〜84は以下の実施例1で説明されるとおり、それぞれ合成化合物3〜11を指す。
glu:グルコース、ara:アラビノース
4cou−glu:4−O−p−クマロイル−D−グルコース
3glu:3−O−β−D−グルコピラノシド
6cou−glu:6−O−p−クマロイル−D−グルコース
*炭素は式で示されたものと同じ。
【0028】
より具体的に、本発明の式(I)のプテロシン化合物は、化合物1、4、5、7、10、12、15、17、28、63、71〜75である。
【0029】
さらにより具体的に、以下に本発明の特定のプテロシン化合物の構造を示す。
【表2−1】

【0030】
本発明で使用されるプテロシン化合物は、分離形式、すなわち、合成法により作製された、または天然源(例えば、コバノイシカグマ科やイノモトソウ科などの蕨)から濃縮されたものとすることができる。これら植物の例には、ツルカグマ(Dennstaedtia scandens)、ユノミネシダ(Histiopteris incisa)、ウスバオオイシカグマ(Microlepia speluncae)、ワラビ(Pteridium aquilinum var.latiusculum)、ランダイワラビ(Pteridium revolutum)、イワヒメワラビ(Hypolepis punctata)、ミズワラビ(Ceratopteris thalictroides)、ハチジョウシダ(Pteris fauriei)、オオアマクサシダ(Pteris dimidiata)、ホコシダ(Pteris ensiformis)が含まれるが、これらに限らない。これらの植物は、台湾台北縣烏来郷や、台北市大屯山で見つけることができる。例えば、本発明のプテロシン化合物の一部(例:化合物1、7、28、71)は天然産物であり、従って天然源から分離することができる。分離されたプテロシン化合物とは、乾燥重量で少なくとも40%の化合物を含む作製物を指す。分離された化合物の純度は例えばカラムクロマトグラフィ、質量分析法、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)、NMR、またはその他適切な方法で測定することができる。
【0031】
これら化合物を単離する方法は先行技術で既知となっていある。例えば、Takahashi et al.、Phytother. Res、 2004、18、573、Sheridan et al.、Planta Med.、1999、65、271、Nagao et al.、Mutation Research、1989、215、173、Murakami et al.、Chem.Pharm.Bull、1976、24、2241、Kuraishi et al.、Chem. Pharm. Bull、1985、33、2305を参照することができる。また、これら化合物は化学合成でも作製することができる。非天然のプテロシン化合物は、天然のものから変換されたか(例えば、Banerji et al.、Tetrahedron Letters、1974、15、1369、Hayashi et al.、Tetrahedron Letters、1991、33、2509、McMorris et al.、J. Org.Chem.、1992、57、6876を参照)、または先行技術において既知の方法で新たに合成されたかのいずれかであり得る。
【0032】
望ましいプテロシン化合物の合成に有用な合成化学変換及び基び保護(保護と脱保護)方法は、例えば、R. Larock、Comprehensive Organic Transformations、VCH Publishers(1989)、T.W. GreeneとP.G.M.Wuts、Protective Groups in Organic Synthesis、第三版、John Wiley and Sons(1999)、L. FieserとM. Fieser、Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis、John Wiley and Sons(1994)、L. Paquette、ed.、Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis、John Wiley and Sons(1995)及びそれ以降のエディションで説明されている。
【0033】
合成されたプテロシン化合物は適切な溶媒での反応混合物から分離することができ、かつ選択的に、さらにフラッシュカラムクロマトグラフィ、高速液体クロマトグラフィ、結晶化法またはその他適した方法で純化される。
【0034】
ここでいうプテロシン化合物は、非芳香族二重結合及び1個以上の不斉中心を含むことができ、従って、ラセミ化合物及びラセミ混合物、単独の鏡像異性体、個別のジアステレオマ、ジアステレオマ混合物、シスまたはトランス異性体の形態で発生することができる。そのような異性体のすべての形態が企図される。
【0035】
本発明のプテロシン化合物は、コバノイシカグマ科やイノモトソウ科などのワラビから作製されたシダ類産物にも存在することがある。これら植物の一部の例には、ツルカグマ(Dennstaedtia scandens)、ユノミネシダ(Histiopteris incisa)、ウスバオオイシカグマ(Microlepia speluncae)、ワラビ(Pteridium aquilinum var. latiusculum)、ランダイワラビ(Pteridium revolutum)、イワヒメワラビ(Hypolepis punctata)、ミズワラビ(Ceratopteris thalictroides)、ハチジョウシダ(Pteris fauriei)、オオアマクサシダ(Pteris dimidiata)、ホコシダ(Pteris ensiformis)が含まれるが、これらに限らない。ここでいうシダ類産物とは、少なくとも1つの上述の品種そのもの、その葉や花、根、種、茎、果実などの部分、またはそれらの汁、粉末、顆粒、抽出物、スライス、濃縮物、沈殿物など変形態様からの産物を指す。具体的に、前記シダ類産物は新鮮な植物全体からのものである。
【0036】
ここでいうワラビのシダ類産物は、当業者の一般的に知るところである任意の標準的な方法または技法で作製することができる。本発明によるシダ抽出物の作製の一例を以下で説明する。
【0037】
(シダ抽出物の作製)
カラムクロマトグラフィは、Diaion HP 20(100〜200メッシュ、三菱化成工業)、MCI−gel CHP 20P(75〜150μm、三菱化成工業)、Cosmosil C18−OPN(75μm、Nacalai Tesque, Inc.)、シリカゲル板(60F−254、Merk)上のTLC(薄層クロマトグラフィ)、及び熱に対する可視化剤として用いる10%硫酸溶液を利用して実施することができる。新鮮な植物全体が室温でメタノール(×3、各2日間)を用いて抽出される。真空内で45℃で溶液を蒸発させた後、残留物が得られる。この残留物を蒸留水に溶解させてからn−ヘキサンと酢酸エチルで抽出を行い、n−ヘキサン可溶性画分、酢酸エチル可溶性画分、及び水可溶性画分を得る。有機可溶性画分は、水−メタノール、エタノールのポリデキストランゲル(Sephadex LH−20)、高多孔性ポリスチレンゲル(Diaion HP−20、MCI CHP−20P)ゲルカラムクロマトグラフィ(CC)で溶出、またはn−ヘキサン、ベンゼン、ジクロロメタン、メタノール溶剤システムのシリカゲルCCで純化される。純化された化合物の構造は、核磁気共鳴(NMR)及び質量スペクトル(MS)のスペクトル解析及び物理データにより確認することができる。
【0038】
本発明によれば、式(I)のプテロシン化合物は1型と2型を含む糖尿病の治療に有効である。
【0039】
ここで用語「1型糖尿病」、「若年発症型糖尿病」または「インスリン依存性糖尿病」は、膵臓が作るインスリンが少なすぎる、またはないことによって特徴付けられる疾病を指す。1型糖尿病に苦しむ患者は、生存にインスリンが必要である。インスリンがないと、患者は急性ケトアシドーシスや昏睡など、重度の代謝性合併症を発症する。
【0040】
ここで用語「2型糖尿病」、「成人発症型糖尿病」または「非インスリン依存性糖尿病」とはインスリンが利用可能であるにも関わらずグルコース産生が過多となり、グルコースクリアランスが不十分なため血中グルコース濃度が高すぎるままとなることで特徴付けられる疾病を指す。
【0041】
「被験体」とは特に、本発明の治療を必要とするヒトなどの哺乳動物であるが、コンパニオンアニマル(犬や猫など)、畜産動物(牛、羊、豚、馬など)、または実験動物(ねずみ、マウス、モルモットなど)としてもよい。一実施例において、前記被験体は肥満である。
【0042】
用語「治療」とは、特定の疾患または病気の予防、または特定の疾患または病気に関連付けられる症状の緩和及び(または)前述の症状の防止または排除を含む。例えば、ここでいう用語「糖尿病の治療」とは、通常グルコース濃度の低下、インスリン感受性の改善、またはグルコース消費量の増加を指す。
【0043】
ここでいう「有効量」とは、単独でまたは1つ以上のほかの活性剤との組み合わせで前記被験体に治療効果を生じるために必要な、各活性剤の量を指す。有効量は、当業者であれば既知であるように、投与経路、付形剤の使用、及びほかの共用される活性剤によって異なる。本発明の一実施例において、プテロシン化合物は10〜250mg/kgの量で経口投与され、好ましくは25〜200mg/kg、より好ましくは50〜150mg/kg、最も好ましくは約100mg/kgの量である。本発明の別の一実施例において、プテロシン化合物は5〜150mg/kgの量で皮下注射、腹腔内注射、筋肉注射、または静脈注射により投与され、好ましくは10〜100mg/kg、より好ましくは20〜80mg/kg、最も好ましくは約30mg/kgの量である。
【0044】
上述の治療を行うため、ここで説明する1つ以上のプテロシン化合物を製薬学的に許容される担体と混合し、製薬学的組成物を形成することができる。「許容される」とは、担体が組成物の活性成分と適合性があり(かつ好ましくは活性成分を安定化し)、治療を受ける前記被験体に有害でないことを意味する。シクロデキストリン(抽出物の1つ以上の活性化合物と、特定のより可溶性の高い錯体を形成する)などの溶解剤は、活性化合物の送達のための製薬学的付形剤として利用することができる。ほかの担体の例には、コロイド状二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム、セルロース、ラウリル硫酸ナトリウム、D&C黄色10号が含まれる。
【0045】
前記製薬学的組成物は、吸入噴霧、または埋め込みリザーバーにより、経口、非経口で投与することができる。ここでの用語「非経口」とは、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、動脈内、滑液嚢内、胸骨内、髄腔内、病巣内、頭蓋内の注射または注入法を含む。
【0046】
適した分散剤や湿潤剤(例えば、Tween80など)と懸濁化剤を使用して、当業者に既知の技法に従い、滅菌注射用組成物(例:水性または油性懸濁液)を配合することができる。前記滅菌注射用製剤は、無毒の非経口で許容可能な希釈剤または溶剤内の滅菌注射用溶液または懸濁液とすることもでき、例えば、1,3−ブタンジオール内の溶液としてもよい。許容可能な溶媒及び溶剤のうち採用できるものはマンニトール、水、リンガー溶液、生理食塩液である。さらに、無菌の固定油が溶剤または懸濁化剤として従来使用されている(例えば、合成のモノグリセリドやジグリセリド)。オレイン酸やそのグリセリド誘導体などの脂肪酸、及び特にポリオキシエチル化されたオリーブオイルやヒマシ油など天然の製薬学的に許容される油も、注射用製剤の配合に有用である。これらの油剤または懸濁液は長鎖アルコール希釈剤または分散剤、あるいはカルボキシメチル基セルロースまたは類似の分散剤を含むこともできる。
【0047】
経口用組成物は、錠剤、カプセル、乳濁液と水性懸濁液、分散剤、溶剤が含まれるがこれらに限らない、任意の経口で許容可能な剤形とすることができる。錠剤に一般的に使用される担体には、乳糖とコーンスターチが含まれる。ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤も通常錠剤に添加される。カプセルの形態での経口投与に有用な希釈剤には、乳糖と乾燥コーンスターチが含まれる。水性懸濁液または乳濁液が経口投与されるとき、活性成分は乳化剤または懸濁化剤を組み合わせた油相内に懸濁または溶解させることができる。希望に応じて、特定の甘味料、香料、着色料を添加してもよい。
【0048】
製剤処方の分野で既知の技法に従い、吸入性組成物を配合することができ、ベンジルアルコールまたはその他適した防腐剤、生物学的利用を向上するための吸収促進剤、フッ化炭素、及び(または)その他当技術分野で周知の溶解補助剤または分散剤を用いた生理食塩水中の溶剤として配合することができる。
【0049】
本発明はまた、前述の式(I)のプテロシン化合物が抗肥満症活性を示すという予期せぬ発見に基づいている。
【0050】
従って、本発明はさらに、治療を必要とする被験体に本発明による式(I)のプテロシン化合物の有効量を投与することを含むことを特徴とする、肥満症の治療方法を提供する。
【0051】
具体的に、本発明の方法は、被験体の血清脂質(例:トリグリセリド)またはコレステロール濃度を低下させることができる。
【0052】
適した試験管内試験を使用して、糖尿病及び肥満症の治療のためのプテロシン化合物の薬効を初歩的に評価することができる。前記化合物はさらに糖尿病及び肥満症の治療のためのその薬効について生体内検査を行うことができる。例えば、前記化合物は、糖尿病または肥満症を患った動物(例:化学薬品、または遺伝子変異、あるいは糖尿病または肥満症を患うように高脂肪食品で誘導された動物モデル)に投与して、その治療効果を評価することができる。その結果に基づき、適切な用量範囲及び投与経路を判定することもできる。
【0053】
更なる推敲なしに、上述の説明が本発明を実施可能にしていると考えられる。従って、以下の具体的な実施例は、説明の目的のために挙げられたものであり、いかなるようにも本明細書の開示の残り部分を限定するものではない。引用された全ての文献は、その全体が、本明細書に参考として組み込まれる。本明細書中で引用する特許を含むすべての文献は、その全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例1】
【0054】
(化合物1の合成)
6−ブロモ−5,7−ジメチル−1−インダノン(3)
【化3】

CHC1(80mL)中のAlCl(20.2g、151.3ミリモル)と3−クロロプロピオニルクロリド(16.5g、129.7ミリモル)の撹拌溶液中に、0℃で滴下漏斗を用い40mLのCHC1とブロモキシレン(20.0g、108.1ミリモル)が滴下により追加された。反応混合物が室温まで加熱され、さらに12時間撹拌された。反応混合物が氷(200g)と50mLの塩酸(純)で冷却され、15分間撹拌された。その後粗反応混合物が酢酸エチル(300mLx2mL)で抽出され、水(400mL)、食塩水(500mL)で洗浄された後、乾燥され(NaSO)、真空内で濃縮された。
【0055】
その後この粗化合物が純HSO(165mL)に追加され、90℃で1時間撹拌された。反応混合物が室温に戻った後、氷(400g)で冷却された。粗反応混合物が酢酸エチル(400mLx2mL)で抽出され、水(500mL)、食塩水(500mL)で洗浄された後、乾燥され(NaSO)、真空内で濃縮された。粗産物がシリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン/酢酸エチル、12:1、v/v)により純化され、純の固体の化合物3(10.1g、39.1%)が得られた。
【0056】
6−ブロモ−5,7−ジメチル−1−オキソ−インダン−2−カルボン酸エチルエステル(4)
【化4】

炭酸ジエチル(30.5mL、251.04ミリモル)をトルエン(100mL)中の水素化ナトリウムの60%分散剤(3.01g、125.5ミリモル)に加え、得られた溶液が機械的に撹拌され、還流された。トルエン(50mL)中の1−インダノン(10.0g、41.8ミリモル)が還流溶液に3時間以上かけてゆっくりと追加された。滴下漏斗がベンゼン(20mL)で洗浄され、反応混合物がさらに0.5時間還流された。反応混合物が飽和水溶液のNHClにゆっくりと加えられた。水の層が酢酸エチルを用いて3回抽出され、混合酢酸エチル抽出物が水で洗浄された後、乾燥され(NaSO)、溶剤が真空内で除去された。粗産物がシリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン/酢酸エチル、15:1、v/v)により純化され、純の固体の化合物4(11.5g、88.4%)が得られた。
【0057】
6−ブロモ−2,5,7−トリメチル−1−オキソ−インダン−2−カルボン酸エチルエステル(5)
【化5】

乾燥THF(50mL)内の化合物4(5.0g、16.1ミリモル)の撹拌溶液に固体水素化ナトリウム(0.85g、35.4 ミリモル)の60%分散剤が滴下漏斗でいくつかの部分に分けて0℃で加えられた。反応混合物が室温まで加熱され、さらに1時間撹拌された。その後MeI(2.0mL、32.15ミリモル)がアルゴン雰囲気下で0℃で滴下により加えられた。反応混合物が室温まで加熱され、5時間撹拌された。反応混合物が飽和水溶液のNHCl溶液で0℃で冷却され、15分間撹拌された。その後粗反応混合物が酢酸エチル(100mLx2mL)で抽出され、水(100 mL)、食塩水(100 mL)で洗浄された後、乾燥され(NaSO)、真空内で濃縮された。シリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン/酢酸エチル、15:1、v/v)により純化され、純の化合物5(4.5g、86.5%)が得られた。
【0058】
2,5,7−トリメチル−1−オキソ−6−ビニル−インダン−2−カルボン酸エチルエステル(6)
【化6】


THF/HO(9:1)(3mL)内のカリウムビニルトリフルオロボラート(0.186g、1.38ミリモル)、PdCl(0.033g、0.18ミリモル)、PPh(0.073g、0.27ミリモル)、CSCO(1.2g、3.69ミリモル)、化合物5(0.3g、0.92ミリモル)の溶液が、85℃でアルゴン雰囲気下で密閉チューブ内で加熱された。反応混合物が85℃で48時間撹拌され、その後室温に冷却されて、HO(6mL)で希釈され、続いて酢酸エチル(30mL)で抽出されて乾燥され(NaSO)、真空内で濃縮された。カラムクロマトグラフィ(SiO、石油エーテル溶離剤内2〜4%EtOAc)により純化され、純の化合物6(0.23g、92%)が得られた。
【0059】
2−ヒドロキシメチル−2,5,7−トリメチル−6−ビニル−インダン-1−オール (7)
【化7】

乾燥THF(10mL)内の化合物6(1.3g、4.77mmol)の撹拌溶液にLAH(0.212g、5.73mmol)が−78℃でアルゴン雰囲気下で加えられ、反応混合物が3時間撹拌された後、反応混合物が0℃まで加熱され、酢酸エチル(30mL)で0℃に冷却された。反応混合物が室温に戻された後、2M酒石酸カリウムナトリウム溶剤で抽出され、食塩水(20mL)で洗浄された後乾燥され(NaSO)、真空内で濃縮された。カラムクロマトグラフィ(SiO、石油エーテル溶離剤内15〜20%EtOAc)により純化され、純の化合物 (0.88g、80 %)がガムシロップとして得られた。
【0060】
2.5.7-トリメチル-2−トリエチルシラニルオキシメチル−6−ビニル−インダン−1−オール(8)
【化8】


乾燥CHC1内の出発物質7(0.85g、3.66ミリモル)の撹拌溶液にイミダゾール(0.5g、7.32ミリモル)とTESC1(0.6mL、3.66ミリモル)が0℃でアルゴン雰囲気下で順に加えられ、反応混合物が同じ温度で6時間撹拌された。その後反応混合物がHO(10mL)で希釈され、CHC1(50mL)、食塩水(25mL)で抽出された後、乾燥され(NaSO)、真空内で濃縮された。カラムクロマトグラフィ(SiO、石油エーテル溶離剤内5〜10%EtOAc)により純化され、純の化合物8(0.85g、88 %)がシロップとして得られた。
【0061】
6−(2−ヒドロキシ−エチル)−2,5,7−トリメチル−2−トリエチルシラニルオキシメチル−インダン−1−オール(9)
【化9】

乾燥THF内の化合物8(0.85g、2.45ミリモル)撹拌溶液に(Cy)BH(0.87g、4.91ミリモル)が0℃でアルゴン雰囲気下でゆっくりと加えられた。反応混合物が室温まで加熱され、12時間撹拌された。反応混合物が2N NaOH(6mL)とH(3mL)で0℃で冷却され、4時間撹拌された。その後粗反応混合物が酢酸エチル(40mL)で抽出され、水(10mL)、食塩水(10mL)で洗浄された後、乾燥され(NaSO)、真空内で濃縮された。カラムクロマトグラフィ(SiO、石油エーテル溶離剤内8〜10%EtOAc)により純化され、純の化合物9(0.72g、81%)がガムシロップとして得られた。
【0062】
2,5,7-トリメチル-2−トリエチルシラニルオキシメチル−6−(2−トリイソプロピルシラニルオキシ−エチル)−インダン−1−オール(10)
【化10】

乾燥CHC1内の出発物質9(0.7g、1.92ミリモル)の撹拌溶液にイミダゾール(0.262g、3.84ミリモル)とTIPSC1(0.45mL、2.11ミリモル)が0℃でアルゴン雰囲気下で順に加えられた。反応混合物が室温まで加熱され、室温で3時間撹拌された。その後反応混合物がHO(10mL)で希釈され、CHC1(30mL)、食塩水(10mL)で抽出されて、乾燥され(NaSO)、真空内で濃縮された。カラムクロマトグラフィ(SiO、石油エーテル溶離剤内2〜4%EtOAc)により純化され、純の化合物10(0.82g、82%)が得られた。
【0063】
2,5,7−トリメチル−2−トリエチルシラニルオキシメチル−6−(2−トリイソプロピルシラニルオキシ−エチル)−インダン−1−オン(11)
【化11】

乾燥CHC1内の化合物10(0.8g、1.54ミリモル)の撹拌溶液にPDC(1.15g、3.07ミリモル)が0℃でアルゴン雰囲気下で加えられた。反応混合物が室温まで加熱され、室温で4時間撹拌された。反応混合物が真空内で濃縮された。粗産物がカラムクロマトグラフィ(SiO、石油エーテル溶離剤内1〜3%EtOAc)により純化され、純の化合物9(0.64g、81%)が無色シロップとして得られた。
【0064】
6−(2−ヒドロキシ−エチル)−2−ヒドロキシメチル−2,5,7−トリメチル−インダン−1−オン (12)
【化12】

乾燥THF内の化合物11(0.64g、1.23ミリモル)の撹拌溶液にTHF(0.65g、2.47ミリモル)内のフッ化テトラn−ブチルアンモニウムが0℃で加えられ、室温で3時間撹拌された。その後反応混合物がHO(10mL)で希釈され、酢酸エチル(30mL)、食塩水(10mL)で抽出された後、乾燥され(NaSO)、真空内で濃縮された。カラムクロマトグラフィ(SiO、石油エーテル溶離剤内15〜20%EtOAc)により純化され、純の化合物12(0.26g、85%)が得られた。
【実施例2】
【0065】
(植物抽出)
イワヒメワラビ(Hypolepis punctata(Thunb.)Mett.)
イワヒメワラビ(Hypolepis punctata(Thunb.)Mett.)が台湾台北縣烏来郷から採集された。イワヒメワラビ(Hypolepis punctata)の新鮮な植物全体(11kg)がMeOH(20L)で室温で3回抽出されて、MeOH抽出物を得、さらにn−ヘキサン可溶性画分とHO可溶性画分を得るためにそれをn−ヘキサン−HO(1:1)(1.5Lx3)間で分離した。HO可溶性画分をEtOAc−HO(1:1)(1.5Lx3)間で分離し、EtOAc可溶性画分とHO可溶性画分を得た。EtOAc可溶性画分がDiaion HP−20ゲルカラムクロマトグラフィ(CC)で処理され、HOで溶離され、MeOHが徐々に増加されて、フラクション1〜4を産生した。フラクション2がSephadex LH−20CCで処理され、95%EtOHで溶離され、フラクション2−1〜2−2が形成された。フラクション2−1がSephadex LH−20CCで純化され(HO→MeOH)、フラクション2−1−1〜2−1−3が取得された。フラクション2−1−2がMCIゲルCHP−20P CCで純化され(HO→MeOH)、プテロシンA(128mg)が取得された。フラクション3がシリカゲルCCで処理され、徐々にCHC1とMeOHで溶離されて、3−1〜3−5フラクションが得られた。フラクション3−2がシリカゲルCCで処理され、CHC1−MeOH(9:1)で展開されて、プテロシンZ(790mg)が得られた。フラクション3−4がシリカゲルCCで処理され、EtOAc−n−ヘキサン(4:1)で溶離されて、プテロシンI(24mg)が得られた。フラクション4がSephadex LH−20ゲルCCで処理され、MeOHで溶離されて、2つのフラクションが形成された。フラクション4−1がMCI CHP−20PゲルCC(HO→MeOH)と、EtOA−n−ヘキサン(7:3)でのシリカゲルCCで純化され、プテロシンD(20mg)が得られた。
【0066】
ランダイワラビ(Pteridium revotulum(BI.)Nakai)
ランダイワラビ(Pteridium revotulum(BI.)Nakai)が台北市大屯山から採集された。室温で、ランダイワラビ(Pteridium revotulum(BI.)Nakai)(20kg)の新鮮な植物全体がMeOH(20Lx3)で抽出され、MeOH抽出物を得、有機溶剤を蒸発させた後その抽出物に対してCelite CCを行い、n−ヘキサン、CHC1、MeOHで溶離して3つのフラクションを得た。CHC1可溶性画分がMCI CHP−20PゲルCCで処理され、HOとMeOH(1:1→0:1)で溶離されて、3つのフラクションが得られた。フラクション1がシリカゲルCCにより純化され、CHC1とMeOH(14:1)で溶離されて、フラクション1−1〜1−3が得られた。フラクション1−1がシリカゲルCC(n−ヘキサン−EtOAc=1:2)とODSゲルCC(CHCN−HO=20:80→30:70)で処理され、(2S)−プテロシンA(238mg)、(3R)−プテロシンD(38mg)、(2R)−プテロシンN(21mg)、(2R、3R)−プテロシンL(179mg)、(2R)−プテロシンG(73mg)が得られた。フラクション1−2がシリカゲルCCにより純化されてn−ヘキサン−EtOAc(1:2)で溶離され、かつODSゲルCCで純化されてCHCN:HO(1:9)で溶離され、(3R)−プテロシンX(2.2mg)と(2)−ヒドロキシプテロシンC(4.3mg)が産生された。フラクション2がシリカゲルCC(n−ヘキサン−EtOAc=l:2)とHPLC−シリカ(10μm、n−ヘキサン−EtOAc=2:1→1:2)で処理され、(2S、3S)−プテロシンC(162mg)と(2R、3S)−プテロシンC(13mg)が得られた。
【0067】
その他品種
ツルカグマ(Dennstaedtia scandens)、ユノミネシダ(Histiopteris incisa)、ウスバオオイシカグマ(Microlepia speluncae)、ワラビ(Pteridium aquilinum var. latiusculum)、ミズワラビ(Ceratopteris thalictroides)、ハチジョウシダ(Pteris fauriei)、オオアマクサシダ(Pteris dimidiata)、ホコシダ(Pteris ensiformis)を含むワラビのほかの品種の植物全体が上述のように抽出され、少なくともプテロシンA、プテロシンI、プテロシンZを含むことが確認された(データを示さない)。
【実施例3】
【0068】
(1型糖尿病マウスにおけるグルコース負荷試験)
ストレプトゾトシン(STZ)誘発糖尿病マウスに化合物1(50mg/kg)が経口投与された。STZ誘発糖尿病マウスは1型糖尿病(インスリン依存性)の周知のマウスモデルである。例えばLiu IM, et al.、Neuroscience Letters 2001;307:81〜84を参照。
【0069】
2時間後、正常なマウス、STZ誘発糖尿病マウス、前述の化合物1での治療を受けたSTZマウスにグルコース負荷試験を実施した。簡単に言うと、すべてのマウスに1g/kgのグルコースが経口投与され、30、60、90、120、150分後にこれらマウスの血糖値が測定された。正常なマウスとSTZ糖尿病マウスにおいて、グルコースの摂取30分後に血糖値が上昇した。驚くべきことに、化合物1での治療を受けたSTZ糖尿病マウスにおいて、グルコースの摂取30分後に血糖値は若干上昇したのみであり、グルコースの摂取60分後には大幅に低下した。
【0070】
また別に、STZ誘発糖尿病マウスに化合物1の経口投与(100mg/kg)による14日間の治療を実施した。これらマウスには2g/kgの用量でグルコースが経口投与された。グルコース投与の15、45、75、105分後にマウスの血糖値が測定された。図1に結果を示す。
【0071】
得られた結果によると、健康な対照マウス、STZ誘発糖尿病マウス、そして化合物1での治療を受けたSTZ誘発糖尿病マウスはグルコース投与15分後に血糖値が上昇したことが示された。検査した時間中STZ誘発糖尿病マウスの血糖値は高いままであったが、化合物1での治療を受けたSTZ誘発糖尿病マウスはグルコース投与の45分後に大幅に血糖値が低下した。これらの治療を受けたマウスの血糖値は、健康な対照マウスの血糖値に近かった。従って、ここで得られた結果は化合物1がSTZ誘発糖尿病マウスの血糖値を大幅に低下させたことを示す。この試験では、表1に記載された化合物7、72、73、74を含む本発明のほかのプテロシン化合物も同じ効果を示した。
【0072】
特に、化合物の投与後にマウスで観察された血液試験と病理評価において、異常な結果などの副作用は見られなかった(データは表示しない)。
【実施例4】
【0073】
(インスリン感受性試験)
分化したC12筋芽細胞(American Type Culture Collection:ATCC)を使用して、Experimental and Molecular Medicine、Vol.39、No.2、222〜229、2007に記載された方法に基づき、インスリン感受性試験が実施された。簡単に言うと、インスリン100nMが存在する中で、細胞が異なる濃度の化合物1と共に培養され、その後グルコース摂取が測定された。AMPK活性化剤AICAR(5−アミノ−4−カルボキサミドイミダゾールリボチド5'−リン酸、1μm)が陽性対照として使用された。図2に結果を示す。
【0074】
従って、ここで得られた結果は、化合物1がC12筋芽細胞におけるインスリン感受性を大幅に改善することを示している。この試験では、表1に記載された化合物7、72、73、74を含む本発明のほかのプテロシン化合物も同じ効果を示すことが確認された。
【実施例5】
【0075】
(グルコース消費/取り込み試験)
分化したC12筋芽細胞(American Type Culture Collection:ATCC)を使用して、Experimental and Molecular Medicine、Vol.39、No.2、222〜229、2007に記載された方法に基づき、グルコース消費/取り込み試験が実施された。簡単に言うと、C12細胞が0.5μCi[14C]2−DGで20分間前処理された後、化合物と1時間培養され、放射能によりグルコース摂取量が判定された。値はすべて3回の実験の平均値の標準誤差で表される。図3に結果を示す。
【0076】
従って、ここで得られた結果は、化合物1がC12筋芽細胞におけるグルコース消費量/摂取量を大幅に増強することを示している。この試験では、表1に記載された化合物5、7、17、63、72、73、74を含む本発明のほかのプテロシン化合物も同じ効果を示すことが確認された。
【実施例6】
【0077】
(4型グルコース輸送体(Glut4)発現試験)
GLUT4は、インスリン誘発グルコース摂取において正常な血糖値を維持するために重要な役割を担っている。この研究では、STZ誘発糖尿病マウスに化合物1の経口投与(100mg/kg)による14日間の治療を行った。その後正常なマウス、STZ誘発糖尿病マウス、前述の化合物1での治療を受けたSTZマウスについて、Biochem J. 1996;313(Pt 1):133〜140に記載された方法に基づき、ヒラメ筋におけるGLUT4発現が分析された。簡単に言うと、実験期間の終わりに、動物をジエチルエーテル麻酔下での瀉血により致死させた。各動物からヒラメ筋が摘出され、計量された。ヒラメ筋は細胞溶解バッファで均質化され、遠心分離された後、ウェスタンブロット分析によりGLUT4タンパク質発現が測定された。図4に結果を示す。
【0078】
従って、ここで得られた結果は、化合物1がSTZ誘発糖尿病マウスにおけるヒラメ筋の細胞膜へのGLUT4(4型グルコース輸送体、インスリンにより調整されるグルコース輸送体)の再配分を大幅に助けたことを示している。表1に記載された化合物5、7、72、73、74を含む本発明のほかのプテロシン化合物も同じ効果を示した。結果は、本発明のプテロシン化合物がGLUT4を活性化させ、その結果糖尿病マウスの血糖を低下させることができる可能性を示唆している。
【実施例7】
【0079】
(ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK)試験)
PEPCKは肝臓におけるグルコース新生をコントロールする重要な酵素であることが周知である。この研究では、STZ誘発糖尿病マウスに化合物1の経口投与(100mg/kg)による14日間の治療を行い、その後正常なマウス、STZ誘発糖尿病マウス、そして上述の化合物1での治療を受けたSTZマウスに対してBulletin of Experimental Biology and Medicine 1979;87:568〜571に記載された方法に基づき肝臓におけるPEPCK mRNA発現の分析を行った。簡単に言うと、実験期間の終わりに、動物をジエチルエーテル麻酔下での瀉血により致死させた。各動物から肝臓が摘出され、計量された。肝臓のホモジェネートが作製され、RT−PCR分析によってPEPCK mRNA発現が判定された。図5に結果を示す。
【0080】
従って、ここで得られた結果は、化合物1がSTZ誘発マウスの肝臓におけるPEPCK mRNAの過剰発現を大幅に阻害したことを示している。表1に記載された化合物7と73を含む本発明のほかのプテロシン化合物も同じ効果を示した。
【実施例8】
【0081】
(2型糖尿病マウスにおけるグルコース負荷試験)
インスリン抵抗性C57BL/6J−Leprdb/Leprdb(以下、db/db)マウスは、2型糖尿病の周知のマウスモデルである。例えばMetabolism. 2000;49:22〜31を参照できる。この研究では、db/dbマウス(Jackson Laboratory)に化合物1(100mg/kg/日)が28日間経口投与された、または化合物1(30mg/kg/日)が腹腔内(i.p.)注射で21日間または28日間投与された。2時間後、正常なマウス、db/dbマウス、化合物1での治療を受けたdb/dbマウスに対して実施例1と同じグルコース負荷試験が実施された。図6から図8に結果を示す。
【0082】
得られた結果は、化合物1はdb/dbマウスにおける耐糖能異常を大幅に改善したことを示している。
【実施例9】
【0083】
(2型糖尿病マウスにおけるHbAlC(ヘモグロビンA1C)試験)
血流中でグルコースはヘモグロビンに結合してヘモグロビンA1CまたはHbA1Cと呼ばれる「糖化ヘモグロビン」分子を形成する。血中のグルコースが増えると、血中のヘモグロビンA1CまたはHbA1Cが増える。HbA1C試験は現在、糖尿病が管理下にあるか確認するための一般的な方法の1つである。例えばDiabetes Care.2001;24:465〜471を参照できる。
【0084】
この研究では、db/dbマウス(Jackson Laboratory)に28日間化合物1(100mg/kg/日)が経口投与された。その後、正常なマウス、db/dbマウス、そして化合物1での治療を受けたdb/dbマウスに対してHbA1C試験が実施され、Life Sci.2005;77:1391〜403に記載された方法に基づいて行われた。簡単に言うと、実験期間の終わりに、動物をジエチルエーテル麻酔下での瀉血により致死させた。遠心分離により血液から血漿が分離された。血中のHbA1Cが標準の方法により測定された。図9に結果を示す。
【0085】
得られた結果は、化合物1がdb/dbマウスにおけるHbA1Cレベルを大幅に減少させたことを示している。
【実施例10】
【0086】
(2型糖尿病マウスにおけるHOMA−IR(インスリン抵抗性のホメオスタシスモデル評価)試験)
HOMA−IRは生体内インスリン感受性の代理指標として開発された空腹時血漿ブドウ糖と空腹時血漿インスリンの濃度に基づく実験数式:インスリン抵抗性に対するHOMA値:(HOMA−IR)=空腹時インスリン(μU/mL)x空腹時ブドウ糖(ミリモル/l)/22.5により表される。例えば、Biol. Pharm. Bull. 2007;30:2196〜2200を参照できる。
【0087】
この研究では、db/dbマウス(Jackson Laboratory)に化合物1(100mg/kg/日)が28日間経口投与された。その後、正常なマウス、db/dbマウス、化合物1での治療を受けたdb/dbマウスに対してBiol. Pharm. Bull. 2007;30:2196〜2200に記載された方法に基づきHOMA−IR試験が行われた。簡単に言うと、マウスインスリン酵素免疫試験ELISAキットを使用して血漿インスリン濃度が測定された。ホメオスタシスモデルアセスメント(HOMA)法によりインスリン抵抗性が判定された。図10に結果を示す。
【0088】
得られた結果によると、化合物1はdb/dbマウスにおけるHOMA−IRレベルを大幅に減少したことが示されている。この試験では、表1に記載された化合物7と73を含む本発明のほかのプテロシン化合物も同じ効果を示した。
【実施例11】
【0089】
(AMPKリン酸化試験)
AMP活性化タンパク質キナーゼ(AMPK)はエネルギー代謝の重要な指標であり、低AMP/ATP比、運動、酸欠、栄養不足によって活性化される。Thr172のリン酸化はAMPKの活性化につながり、それがアセチルCoAカルボキシラーゼ、HMG CoAリダクターゼ、GLUT−4、グルコース−6ホスファターゼ、PEPCKを含む下流のエフェクタを活性化させ、脂肪酸β−酸化作用、コレステロール合成、グルコース輸送、グルコース新生をそれぞれ調整する。従って、AMPKはメタボリック症候群及び2型糖尿病の分子標的とみなすことができる。
【0090】
この研究では、分化したC2C12筋芽細胞(American Type Culture Collection:ATCC)を使用して、Experimental and Molecular Medicine、Vol.39、No.2、222〜229、2007に記載された方法に基づき、AMPKリン酸化試験が行われた。簡単に言うと、細胞は実施例1と同じように培養され、異なる濃度の化合物1(0、1、3、10、30μm)と37℃で1時間インキュベートされた後、溶解された。細胞溶解物がリン酸化AMPK特異抗体で免疫検出された。 類似のAMPK強度によって各レーンの同負荷が示された。AMPK活性化剤AICAR(5−アミノ−4−カルボキサミドイミダゾールリボチド5'−リン酸、1mM)が陽性対照として使用された。図11A に結果を示す。
【0091】
従って、ここで得られた結果は、化合物1とC2C12筋芽細胞の培養がAMPKα−サブユニットのリン酸化をThr172で用量依存的に増加したことを示している。この試験では、表1に記載された化合物1、4、7、52、72、73、74を含む本発明のほかのプテロシン化合物も同じ効果を示した。
【0092】
化合物1によるAMPKの活性化は、その下流基質、アセチルCoAカルボキシラーゼのSer79でのリン酸化増加に関連付けられる(図11B参照)。アセチルCoAカルボキシラーゼのリン酸化と不活性化は脂肪酸β−酸化作用の増加につながる可能性がある。
【0093】
総合すると、これらの初歩的な結果は、本発明の化合物がAMPKを活性化し、それがさらに糖質(実施例4で説明したグルコース消費/取り込み試験を参照)及び脂肪酸の代謝(下の実施例12を参照)のインスリン調節を調整することを示唆しており、本発明の化合物は潜在的な抗糖尿病及び抗肥満症の薬剤とみなすことができる。
【実施例12】
【0094】
(血中脂質/コレステロール試験)
2型糖尿病モデルとしての高脂肪食(HFD)マウスが以前Diabetes 53(Suppl.3):S215〜S219、2004に記載された方法に基づき作製された。この研究では、マウスに8週間にわたって高脂肪食(TestDiet、米国インディアナ州リッチモンド;脂肪含量60%kcal)を食べさせ、2型糖尿病を誘発させた。HFDマウスは化合物1の経口投与(100mg/kg)による28日間の治療を受けた後、正常なマウス、HFDマウス、化合物1での治療を受けたHFDマウスの総コレステロール、トリグリセリド、高比重リポ蛋白(HDL)コレステロール、低比重リポ蛋白(LDL)コレステロールを含む、血清脂質レベルがELISAキットにより分析された。図12Aに結果を示す。図12BにHDLコレステロール/総コレステロール及びLDLコレステロール/総コレステロールの割合を示す。
【0095】
従って得られた結果は、HFDマウスにおいて化合物1が血清脂質を大幅に減少し、抗肥満症の効果を発揮することを示している。
【0096】
(その他の例)
本明細書で開示されたすべての特徴は任意の組み合わせで組み合わせることができる。本明細書で開示された各特徴は、同じ、同等、または類似の目的を達する別の特徴で置き換えることが可能である。したがって、別段の記載がある場合を除き、開示された各特徴は単に同等または類似の特徴の包括的な例である。
【0097】
上述の説明から、当業者であれば本発明の基本的な特徴を容易に知ることができ、本発明の要旨と範囲から逸脱することなく、多様な用途や条件に合わせて本発明の多様な変更や改変が可能である。したがって、その他の実施例も請求の範囲に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖尿病の治療方法であって、式(I)
【化1】

[式中、
各R、R、RおよびRは、独立して、H、OR、アミノ基、ハロゲン基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、−(G)、−O−(G)またはR−O−(G)であり、各R及びRが独立に、H、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、またはヘテロアリール基であり、Gが単糖残基であり、xが1から4の整数である;
各R、R、RおよびRは、独立して、H、OR、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、−(G)、−O−(G)またはR−O−(G)であり、各R及びRがH、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、またはヘテロアリール基であるか、またはR、R、及びそれらが結合している2個の炭素原子が共同で所望により1、2または3個のヘテロ原子を含む3〜8員環を形成するか、またはR、R、及びそれらが結合している2個の炭素原子が共同で所望により1、2または3個のヘテロ原子を含む3〜8員環を形成するか、またはR、R、及びそれらが結合している2個の炭素原子が共同で所望により1、2または3個のヘテロ原子を含む3〜8員環を形成する;および、
Xは、C(O)、C(S)、S(O)、COH、C(Re')、またはC(NR)であり、各R及びRe'が独立に、H、アルキル基、またはシアノ基であり、RがH、OR、アミノ基、ハロゲン基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基である]
で表されるプテロシン化合物の有効量を、その治療を必要とする被験体に投与することを含む、糖尿病の治療方法。
【請求項2】
前記糖尿病が1型または2型糖尿病である、請求項1に記載の糖尿病の治療方法。
【請求項3】
XがC(O)またはCHである、請求項1に記載の糖尿病の治療方法。
【請求項4】
XがC(O)である、請求項3に記載の糖尿病の治療方法。
【請求項5】
各R、R、RおよびRが、独立して、H、OR、−(G)、−O−(G)、R−O−(G)、または所望によりハロゲン基、COOR、ORで置換されたアルキル基であり、RがH、アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基または保護基である、請求項4に記載の糖尿病の治療方法。
【請求項6】
各R、R、RおよびRが、独立して、H、OR、−(G)、−O−(G)、R−O−(G)、または所望によりハロゲン基、COOR、ORで置換されたアルキル基であり、RがH、アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基または保護基である、請求項5に記載の糖尿病の治療方法。
【請求項7】
前記プテロシン化合物が、化合物1〜84のいずれかである、請求項1に記載の糖尿病の治療方法。
【請求項8】
前記プテロシン化合物が、化合物1、4、5、7、10、12、15、17、28、63、71〜75のいずれかである、請求項1に記載の糖尿病の治療方法。
【請求項9】
前記プテロシン化合物が、経口投与または注射投与される、請求項1に記載の糖尿病の治療方法。
【請求項10】
前記被験体が肥満である、請求項1に記載の糖尿病の治療方法。
【請求項11】
前記プテロシン化合物が単離されたプテロシン化合物である、請求項1に記載の糖尿病の治療方法。
【請求項12】
前記プテロシン化合物が、製薬学的組成物を形成するように配合された、請求項1に記載の糖尿病の治療方法。
【請求項13】
前記プテロシン化合物が、コバノイシカグマ科またはイノモトソウ科のワラビから製造されたシダ類産物に存在する、請求項1に記載の糖尿病の治療方法。
【請求項14】
前記ワラビが、ツルカグマ(Dennstaedtia scandens)、ユノミネシダ(Histiopteris incisa)、ウスバオオイシカグマ(Microlepia speluncae)、ワラビ(Pteridium aquilinum var. latiusculum)、ランダイワラビ(Pteridium revolutum)、イワヒメワラビ(Hypolepis punctata)、 ミズワラビ(Ceratopteris thalictroides)、ハチジョウシダ(Pteris fauriei)、オオアマクサシダ(Pteris dimidiata)、ホコシダ(Pteris ensiformis)を含む群から選択される、請求項13に記載の糖尿病の治療方法。
【請求項15】
治療を必要とする被験体に、請求項1の式(I)のプテロシン化合物の有効量を投与することを含む、肥満症の治療方法。
【請求項16】
前記プテロシン化合物が、化合物1〜84のいずれかである、請求項15に記載の肥満症の治療方法。
【請求項17】
前記プテロシン化合物が、化合物1、4、5、7、10、12、15、17、28、63および71〜75のいずれかである、請求項15に記載の肥満症の治療方法。
【請求項18】
前記プテロシン化合物が、経口投与または注射投与される、請求項15に記載の肥満症の治療方法。
【請求項19】
前記プテロシン化合物が単離されたプテロシン化合物である、請求項15に記載の肥満症の治療方法。
【請求項20】
前記プテロシン化合物が、製薬学的組成物を形成するように配合された、請求項15に記載の肥満症の治療方法。
【請求項21】
前記プテロシン化合物が、コバノイシカグマ科またはイノモトソウ科のワラビから産生されたシダ類産物に存在する、請求項15に記載の肥満症の治療方法。
【請求項22】
前記ワラビが、ツルカグマ(Dennstaedtia scandens)、ユノミネシダ(Histiopteris incisa)、ウスバオオイシカグマ(Microlepia speluncae)、ワラビ(Pteridium aquilinum var. latiusculum)、ランダイワラビ(Pteridium revolutum)、イワヒメワラビ(Hypolepis punctata)、ミズワラビ(Ceratopteris thalictroides)、ハチジョウシダ(Pteris fauriei)、オオアマクサシダ(Pteris dimidiata)、ホコシダ(Pteris ensiformis)を含む群から選択される、請求項21に記載の肥満症の治療方法。
【請求項23】
前記被験体の血清脂質またはコレステロールの濃度を低下するのに十分である、請求項15に記載の肥満症の治療方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2012−515801(P2012−515801A)
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548230(P2011−548230)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/022129
【国際公開番号】WO2010/085811
【国際公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(511180112)タイペイ・メディカル・ユニバーシティ (2)
【氏名又は名称原語表記】TAIPEI MEDICAL UNIVERSITY
【出願人】(503209342)ナショナル タイワン ユニバーシティ (9)
【出願人】(511180123)ナショナル・チン・フア・ユニバーシティ (2)
【氏名又は名称原語表記】NATIONAL TSING HUA UNIVERSITY
【出願人】(511180134)ディシービー−ユーエスエイ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (2)
【氏名又は名称原語表記】DCB−USA, LLC
【Fターム(参考)】