説明

糖尿病網膜症治療剤及び眼局所投与用製剤

【課題】本発明は、下式I(式中、Arは、p位に置換基を有することのあるフェニル基を表す。)で示されるアザ糖誘導体又はそれらの薬学的に許容される塩を有効成分とする糖尿病網膜症治療剤又は眼局所投与用製剤を提供する。
【化15】


【解決手段】
本発明の糖尿病網膜症治療剤は、糖尿病網膜症、特に増殖糖尿病網膜症における血管新生を有意に抑制することから糖尿病網膜症、特に増殖糖尿病網膜症の治療に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アザ糖誘導体又はそれらの薬学的に許容される塩を有効成分とする糖尿病網膜症治療剤,及び当該誘導体又はそれらの薬学的に許容される塩を有効成分とする眼局所投与用製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病網膜症は、糖尿病の合併症として発症し、中途失明の主要な病因である。糖尿病網膜症は、進行の度合により、〈1〉糖尿病単純網膜症、〈2〉糖尿病増殖前網膜症及び〈3〉増殖糖尿病網膜症に分類される。なかでも〈3〉の増殖糖尿病網膜症では、視力が大きな影響を受け、失明に至る場合もある。
【0003】
増殖糖尿病網膜症が失明に繋がるメカニズムは以下の通りである。
(i)糖尿病に起因して血液粘度が増加する。
(ii)網膜細小血管の閉塞,酸素供給量の低下が起こる。
(iii)(ii)が引き金となって新しい血管が形成される。
(iv)(iii)の新生血管が異常に増殖する。
(v)新生血管の脆弱さ故に、眼の内部の硝子体等での出血,網膜皺・瘢痕形成等が起こる他、しばしば網膜剥離等が引き起こされる。
(vi)失明に至る。
【0004】
増殖糖尿病網膜症に見られる血管新生には、サイトカインのなかでも血管内皮増殖因子(VEGF:vascular endothelial growth factor)を代表とする血管新生促進因子(angiogenic factor)が関与している。そのため、VEGFの作用を抑制し得る薬剤は、糖尿病網膜症,なかでも増殖糖尿病網膜症治療剤として期待される。現在、VEGF阻害剤(抗VEGFアプタマー)の臨床応用が実現し、その有効性が確認されている。
【0005】
一方、下式Iで示されるアザ糖誘導体,下式I(A)で示されるアザ糖誘導体及びこれらの薬学的に許容される塩は、特許文献1に記載されている。
【0006】
【化8】

【0007】
(式中、Arは、p位に置換基を有することのあるフェニル基を表す。)
【0008】
【化9】

【0009】
[式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、C〜C8のアルキル基、フェニル基、フェノキシ基、C1〜C8のアルコキシ基(当該C1〜C8のアルコキシ基は、C1〜C4のアルコキシ基又はC1〜C4のアルキルチオ基で置換されていても良い)、ブチ−2’イニルオキシ基、又は、ヘテロアリルオキシ基を表す。]
【0010】
また、下式I(B)で示されるアザ糖誘導体及びそれらの薬学的に許容される塩については、特許文献2に記載されている。
【0011】
【化10】

【0012】
(式中、Rは水素原子又は水酸基を表す。)
【0013】
【特許文献1】US 2005/0137221A1
【特許文献2】WO2004/060875A1
【0014】
しかし、上記特許文献には、当該アザ糖誘導体又はその薬学的に許容される塩が糖尿病網膜症に適用できることについては、何ら記載も示唆もされていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、糖尿病網膜症なかでも増殖糖尿病網膜症の治療に有効な薬剤及び当該薬剤を有効成分とする眼局所投与用製剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者は鋭意研究を重ねた結果、公知のアザ糖誘導体又はそれらの薬学的に許容される塩及び当該誘導体を有効成分とする眼局所投与用製剤が、上記目的に適うことを見出し、本発明を完成した。
【発明の効果】
【0017】
本発明の糖尿病網膜症治療剤は、糖尿病網膜症、特に増殖糖尿病網膜症における血管新生を有意に抑制することから糖尿病網膜症、特に増殖糖尿病網膜症の治療剤として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の糖尿病網膜症治療剤においては、有効成分として前記式Iで示されるアザ糖誘導体又はそれらの薬学的に許容される塩が用いられるが、好ましくは前記式I(A)又は前記式I(B)で示されるアザ糖誘導体又はそれらの薬学的に許容される塩が用いられる。具体的な化合物としては、前記特許文献1,2に例示されたものが挙げられるが、特に好ましくは、前記特許文献1に記載されている、下記化11の化合物(a):(2R,3R,4R,5R)−3,4,5−トリヒドロキシ−1−(4’−フェノキシベンゼンスルフォニル)−ピペリジン−2−カルボン酸ヒドロキサミド、下記化12の化合物(b):(2R,3R,4R,5S)−3,4,5−トリヒドロキシ−1−(4’−フェノキシベンゼンスルフォニル)−ピペリジン−2−カルボン酸ヒドロキサミド、又は、下記化13の化合物(c):(2R,3R,4R,5R)−1−(4’−ブチ−2’−イニルオキシベンゼンスルフォニル)−3,4,5−トリヒドロキシ−ピペリジン−2−カルボン酸ヒドロキサミド,前記特許文献2に記載されている下記化14の化合物(d):(2R,3S,4S,5S)−1−(4’−ブチ−2’−イニルオキシベンゼンスルホニル)−3,4,5−トリヒドロキシ−ピペリジン−2−カルボン酸ヒドロキサミド,又はこれらの薬学的に許容される塩が用いられる。
【0019】
【化11】

【0020】
【化12】

【0021】
【化13】

【0022】
【化14】

【0023】
これらアザ糖誘導体又はそれらの薬学的に許容される塩は何れも前記特許文献1又は2に記載の製造方法により製造することができる。
【0024】
本発明の糖尿病網膜症治療剤は、糖尿病網膜症の患者、特に、増殖糖尿病網膜症
の患者に対して、例えば眼局所投与用製剤を用いて投与される。
当該眼局所投与用製剤は、前述のアザ糖誘導体又はその薬学的に許容される塩を有効成分とし、汎用されている技術を用いて硝子体内投与用注射剤、点眼剤又は眼軟膏などの眼局所投与用製剤に調製することにより製造することができる。
【0025】
例えば、硝子体内投与用注射剤は、常法によって前記アザ糖誘導体又はその薬学的に許容される塩を注射用蒸留水に溶解させて製造することができ、適宜、マンニトール、塩化ナトリウム、グルコース、ソルビット、グリセロール、キシリトール、フルクトース、マルトース、マンノース等の等張化剤、アルブミン等の安定化剤、ベンジルアルコール、パラヒドロキシ安息香酸メチル等の保存剤等を製剤中に添加することができる。又、クエン酸等の酸、ジイソプロパノールアミン等の塩基をpH調整剤として製剤中に添加することもできる。
【0026】
硝子体内投与用注射剤は、用時溶解用の凍結乾燥製剤とすることもできる。凍結乾燥製剤は、前記アザ糖誘導体又はそれらの薬学的に許容される塩の水溶液を常法により凍結乾燥することによって製造することができ、適宜、上記、等張化剤、安定化剤、保存剤、pH調整剤等を製剤中に添加することができる。
【0027】
点眼剤は、常法によって前記アザ糖誘導体又はそれらの薬学的に許容される塩を蒸留水に溶解させて製造することができ、適宜、マンニトール、塩化ナトリウム、グルコース、ソルビット、グリセロール、キシリトール、フルクトース、マルトース、マンノース、グリセリン等の等張化剤、エデト酸ナトリウム、アルブミン等の安定化剤、ベンジルアルコール、パラヒドロキシ安息香酸メチル等の保存剤、ポリオキシエチレンモノオレート、ステアリン酸ポリオキシル40等の界面活性化剤等を製剤中に添加することができる。又、クエン酸等の酸、ジイソプロパノールアミン等の塩基をpH調整剤として製剤中に添加することもできる。更に、より優れた効果を得るために、点眼剤に通常用いられる上記の添加剤に加え、ヒアルロン酸又はその塩、及び/又はポリカーボフィル等のポリマーを適宜添加することもできる。
【0028】
本発明の糖尿病網膜症治療剤は、糖尿病網膜症における血管新生を有意に抑制し、また、眼局所に投与後、患部にて効果を発現した後、速やかに代謝されることから安全性が高く、糖尿病網膜症、特に増殖糖尿病網膜症の治療に用いることができる。
【0029】
本発明の糖尿病網膜症治療剤の投与量は、患者の病態、年齢、体重、剤形等によって適宜選択することができるが、有効性成分の前記アザ糖誘導体又はその薬学的に許容される塩を0.001〜5重量%含有する眼局所投与用製剤を1日に1回又は数回に分けて適量投与すればよい。例えば、点眼剤の場合、有効性成分の前記アザ糖誘導体又はその薬学的に許容される塩を0.001〜1重量%含有する当該製剤を1日1回又は数回、1滴〜数滴点眼すればよい。また、硝子体内投与用注射剤の場合、有効性成分の前記アザ糖誘導体又はそれらの薬学的に許容される塩を0.01〜1重量%含有する当該注射剤を1日1回、0.5ml〜1ml投与すればよい。
【0030】
以下に試験例を挙げて本発明の効果について説明する。
【0031】
試験例1
血管新生抑制作用(血管新生キットを用いたin vitro試験):
本発明の糖尿病網膜症治療剤の血管新生抑制作用について、血管内皮細胞の管腔形成を指標とする血管新生キットを用いて検討した。
【0032】
(1)試験化合物:
(1)−1
(2R,3R,4R,5R)−3,4,5−トリヒドロキシ−1−(4’−フェノキシベンゼンスルフォニル)−ピペリジン−2−カルボン酸ヒドロキサミド(化合物(a))
【0033】
(1)−2
(2R,3R,4R,5R)−1−(4’−ブチ−2’イニルオキシベンゼンスルフォニル)−3,4,5−トリヒドロキシ−ピペリジン−2−カルボン酸ヒドロキサミド(化合物(c))
【0034】
(2) 試験材料及び試験方法:
【0035】
(試験材料)
ヒトさい帯静脈血管の血管内皮細胞と線維芽細胞の共培養系である血管新生キット(クラボウ)を用いて検討した。VEGF-A,血管新生専用培地−2,CD31抗体は、本キットに付属しているものを使用した。
【0036】
(試験方法)
本試験は、当該血管新生キットの付属説明書に従って実施した。培養系として、正常群(N),VEGF投与群(V),VEGF及び各種濃度の試験化合物投与群(化合物(c),(a)と標記)3群を用意した。試験化合物は、DMSOで100mM溶液に調製後、0.1〜100μMの濃度に希釈して本試験に供した。
【0037】
本試験の評価は、1群あたり4ウェルを使用し、培地交換は、培養1日(キット入荷日)、4日、7日及び9日目に行い、培養11日目に細胞をエタノール固定後、CD31抗体により血管内皮細胞を染色した後、顕微鏡下で各ウェルの上下左右及び中央の5点をデジタルカメラで撮影し、血管新生定量ソフトウェアVer.2(クラボウ)を用いて、〈1〉管腔面積(area)、〈2〉管腔長(length)、〈3〉管腔交差点数(joint)及び〈4〉パス本数(path)の4項目を解析することにより行った。
【0038】
(統計処理)
VEGFの血管新生促進効果を確認するため、正常群とVEGF投与群とをStudent‘s testで解析した。また、試験化合物の血管新生抑制効果を確認するため、VEGF投与群と、VEGFと試験化合物を投与した群とを、Dunnett’s multiple comparison testで解析した。両検定とも有意水準は5%とした。
【0039】
(3) 試験結果:
試験結果は、上記〈1〉〜〈4〉の4項目それぞれについて、撮影した上記5点の平均値を各ウェル値とし、平均値±標準誤差を図1〜4に示した。
【0040】
図1〜4に示すとおり、化合物(a)及び化合物(c)はVEGFによる血管新生促進効果を有意に抑制した。また、培養期間中の顕微鏡下における観察において、化合物(a)及び化合物(c)の影響による細胞の形態変化が認められず、当該化合物の細胞毒性は確認されなかった。
【0041】
試験例2
血管新生抑制作用(マウス高酸素負荷網膜血管新生モデルによるin vivo試験):
本発明の糖尿病網膜症治療剤の血管新生抑制作用について、マウス高酸素負荷網膜血管新生モデルを用いて検討した。
【0042】
(1)試験化合物:
(2R,3R,4R,5R)−3,4,5−トリヒドロキシ−1−(4’−フェノキシベンゼンスルフォニル)−ピペリジン−2−カルボン酸ヒドロキサミド(化合物(a))
【0043】
(2)試験材料及び試験方法:
【0044】
(試験材料)
試験動物としては、妊娠18日目のマウスC57/BL6(日本エスエルシー株式会社)を購入し、その新生児を使用した。
【0045】
(試験方法)
(2)−1 高酸素負荷条件:
本モデルはスミス等の方法(スミス リー(Smith LE)等, Invest Ophthalmol Vis Sci. 1994;35(1):101-111.)に準じて行った。すなわち、生後7日目(postnatal day 7:P7)のマウスを75%の高酸素条件下にP12まで置き、その後正常条件下でP17まで飼育した。試験化合物は高酸素負荷後(P12)に硝子体内に投与した。網膜血管の可視化はP17にFITC-dextran(Fluorescein Isothiocyanate-dextran:蛍光イソチオシアネート−デキストラン)の全身灌流により網膜血管を蛍光染色し、得られた標本より無血管領域の広さを指標に評価を実施した。無血管領域が広いほど、血管新生が抑制されていることを示す。
【0046】
(2)−2 硝子体内投与
高酸素負荷後(P12)、新生児マウスを3% イソフレンで麻酔し、左眼に1% DMSO((dimethyl sulfoxid:溶媒)を、右眼に化合物(a)(1% DMSO溶液)を、各々1 μL投与した。投与針はハミルトン・シリンジに32Gの針を付けたものを使用した。溶媒又は化合物(a)を硝子体内に投与した後、投与による細菌感染や炎症を抑えるため、眼表面にクラビット(登録商標)点眼液(参天製薬株式会社)を1 μL滴下した。
【0047】
【表1】

【0048】
※硝子体の容積を約10 μLとして各投与群の硝子体内濃度を算出した。
【0049】
(2)−3 FITC-dextranによる網膜血管の染色
マウスをネンブタールで麻酔後、左心室から2×106 FITC-dextran (20 mg/mL, Sigma)を1 mL全身灌流した。全身灌流後、眼球を摘出し、4%パラホルムアルデヒド中で4〜24時間固定した。固定した眼球は角膜・水晶体を除去し網膜を採取してスライドグラス上でフラットマウントにした。フラットマウント状の網膜はVECTASHIELD(Vector)にて封入しカバーガラスをのせ、縁を透明なマニュキュアで覆った。
【0050】
(2)−4 FITC-dextran染色された網膜血管の撮影
フラットマウントにした網膜を、ハロゲンランプ(U-UHL, OLYMPUS)を用いて顕微鏡(BX50, OLYMPUS)下で観察し、各蛍光像をデジタルカメラ(COOL PIX4500, Nikon)で撮影した。
【0051】
(2)−5 無血管領域の算出
デジタルカメラで取得した画像は、Image Jを用いて網膜全体および無血管領域の面積を測定し、無血管領域の割合(%)として以下の式を用いて算出した。
【0052】
【数1】

【0053】
結果は平均値±標準誤差で示した。また、FITC-dextranの全身灌流の際、灌流不良などの理由により網膜血管が染色されなかった標本についてはデータから除外した。
【0054】
(2)−6 統計処理
溶媒投与群と化合物(a)投与群の2群間についてStudent’s t testで解析し、有意水準は5%とした。
【0055】
(3) 試験結果:
マウス高酸素負荷網膜血管新生モデルを用いて化合物(a)の血管新生抑制効果について評価した。高酸素負荷後(P12)の無血管領域は37.1±1.0 % (n = 14)であった。高酸素負荷後、溶媒および化合物(a)を硝子体内投与したところ、各群の無血管領域は化合物(a)の1μM/眼 群で17.9±1.3 % (n = 6)であり、対側眼の溶媒群で15.6±1.8 % (n = 5)であった。化合物(a)の10μM/眼 投与群では22.0±1.6 % (n = 6)であり、対側眼の溶媒投与群で15.7±1.6 % (n = 5)であった。
つまり、化合物(a)の10μM/眼 投与群は溶媒投与群に比して有意(p < 0.05)に網膜血管新生を抑制していた(図5〜8参照)。
また、化合物(a)の硝子体内投与量の違いによっても、対側眼の溶媒投与眼の無血管領域の割合に殆ど変化が無かった(15.6±1.8 % vs 15.7±1.6 %)ことから、化合物(a)硝子体内投与による対側眼の網膜血管新生に影響は認められなかった。なお、その他、被験動物に何ら異常は認められなかった。
【0056】
従って、上記in vitro及びin vivo試験の結果から、本発明の糖尿病網膜症治療剤は、血管新生を有意に抑制し、糖尿病網膜症、特に増殖糖尿病網膜症の治療に用いることができることは明らかである。
【0057】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、これらの実施例により本発明は限定されるものではない。
【実施例】
【0058】
実施例1(硝子体内投与用注射剤)
化合物(a)の(2R,3R,4R,5R)−3,4,5−トリヒドロキシ−1−(4’−フェノキシベンゼンスルフォニル)−ピペリジン−2−カルボン酸ヒドロキサミド(特許文献1の実施例5の化合物)(1重量部)を注射用蒸留水(1000重量部)に溶解し、1mlずつ分注し注射剤を得る。
【0059】
実施例2(硝子体内投与用注射剤)
化合物(b)の(2R,3R,4R,5S)−3,4,5−トリヒドロキシ−1−(4’−フェノキシベンゼンスルフォニル)−ピペリジン−2−カルボン酸ヒドロキサミド(特許文献1の実施例4の化合物)(1重量部)を注射用蒸留水(1000重量部)に溶解し、1mlずつ分注し注射剤を得る。
【0060】
実施例3(硝子体内投与用注射剤)
化合物(c)の(2R,3R,4R,5R)−1−(4’−ブチ−2’イニルオキシベンゼンスルフォニル)−3,4,5−トリヒドロキシ−ピペリジン−2−カルボン酸ヒドロキサミド(特許文献1の実施例6の化合物)(1重量部)を注射用蒸留水(1000重量部)に溶解し、1mlずつ分注し硝子体内投与用注射剤を得る。
【0061】
実施例4(硝子体内投与用注射剤)
化合物(d)の(2R,3S,4S,5S)−1−(4’−ブチ−2’−イニルオキシベンゼンスルフォニル)−3,4,5−トリヒドロキシ−ピペリジン−2−カルボン酸ヒドロキサミド(特許文献2の実施例5の化合物)(1重量部)を注射用蒸留水(1000重量部)に溶解し、1mlずつ分注し硝子体内投与用注射剤を得る。
【0062】
実施例5(点眼剤)
化合物(a)の(2R,3R,4R,5R)−3,4,5−トリヒドロキシ−1−(4’−フェノキシベンゼンスルフォニル)−ピペリジン−2−カルボン酸ヒドロキサミド(1重量部)を蒸留水(100重量部)に溶解し、10mlずつ分注し点眼剤を得る。
【0063】
実施例6(点眼剤)
化合物(b)の(2R,3R,4R,5S)−3,4,5−トリヒドロキシ−1−(4’−フェノキシベンゼンスルフォニル)−ピペリジン−2−カルボン酸ヒドロキサミド(1重量部)を蒸留水(100重量部)に溶解し、10mlずつ分注し点眼剤を得る。
【0064】
実施例7(点眼剤)
化合物(c)の(2R,3R,4R,5R)−1−(4’−ブチ−2’イニルオキシベンゼンスルフォニル)−3,4,5−トリヒドロキシ−ピペリジン−2−カルボン酸ヒドロキサミド(1重量部)を蒸留水(100重量部)に溶解し、10mlずつ分注し点眼剤を得る。
【0065】
実施例8(点眼剤)
化合物(d)の(2R,3S,4S,5S)−1−(4’−ブチ−2’−イニルオキシベンゼンスルフォニル)−3,4,5−トリヒドロキシ−ピペリジン−2−カルボン酸ヒドロキサミド(1重量部)を蒸留水(100重量部)に溶解し、10mlずつ分注し点眼剤を得る。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の糖尿病網膜症治療剤は、糖尿病網膜症、特に増殖糖尿病網膜症における血管新生を有意に抑制することから糖尿病網膜症、特に増殖糖尿病網膜症の治療剤として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の治療剤の、in vitroでの血管新生(〈1〉管腔面積(area))抑制作用を示す図である。
【図2】本発明の治療剤の、in vitroでの血管新生(〈2〉管腔長(length))抑制作用を示す図である。
【図3】本発明の治療剤の、in vitroでの血管新生(〈3〉管腔交差点数(joint))抑制作用を示す図である。
【図4】本発明の治療剤の、in vitroでの血管新生(〈4〉パス本数(path))抑制作用を示す図である。
【図5】高酸素負荷においたマウスの、網膜の血管造影図である。
【図6】高酸素負荷においた後、溶媒投与したマウスの、網膜の血管造影図である。
【図7】高酸素負荷においた後、本発明の化合物(a)を投与したマウスの、網膜の血管造影図である。
【図8】本発明の治療剤の、in vivoでの血管新生抑制作用を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式Iで示されるアザ糖誘導体又はそれらの薬学的に許容される塩を有効成分とする糖尿病網膜症治療剤。
【化1】

(式中、Arは、p位に置換基を有することのあるフェニル基を表す。)
【請求項2】
式Iで示されるアザ糖誘導体が下式I(A)で示されるアザ糖誘導体である請求項1に記載の糖尿病網膜症治療剤。
【化2】

[式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、C〜C8のアルキル基、フェニル基、フェノキシ基、C1〜C8のアルコキシ基(当該C1〜C8のアルコキシ基は、C1〜C4のアルコキシ基又はC1〜C4のアルキルチオ基で置換されていても良い)、ブチ−2’イニルオキシ基又は、ヘテロアリルオキシ基を表す。]
【請求項3】
式Iで示されるアザ糖誘導体が下式I(B)で示されるアザ糖誘導体である請求項1に記載の糖尿病網膜症治療剤。
【化3】

(式中、Rは水素原子又は水酸基を表す。)
【請求項4】
下記式(a)で示される(2R,3R,4R,5R)−3,4,5−トリヒドロキシ−1−(4’−フェノキシベンゼンスルフォニル)−ピペリジン−2−カルボン酸ヒドロキサミド又はそれらの薬学的に許容される塩を有効成分とする糖尿病網膜症治療剤。
【化4】

【請求項5】
下記式(b)で示される(2R,3R,4R,5S)−3,4,5−トリヒドロキシ−1−(4’−フェノキシベンゼンスルフォニル)−ピペリジン−2−カルボン酸ヒドロキサミド又はそれらの薬学的に許容される塩を有効成分とする糖尿病網膜症治療剤。
【化5】

【請求項6】
下記式(c)で示される(2R,3R,4R,5R)−1−(4’−ブチ−2’イニルオキシベンゼンスルフォニル)−3,4,5−トリヒドロキシ−ピペリジン−2−カルボン酸ヒドロキサミド又はそれらの薬学的に許容される塩を有効成分とする糖尿病網膜症治療剤。
【化6】

【請求項7】
下記式(d)で示される(2R,3S,4S,5S)−1−(4’−ブチ−2’−イニルオキシベンゼンスルホニル)−3,4,5−トリヒドロキシ−ピペリジン−2−カルボン酸ヒドロキサミド又はそれらの薬学的に許容される塩を有効成分とする糖尿病網膜症治療剤。
【化7】

【請求項8】
請求項1乃至7に記載のアザ糖誘導体又はそれらの薬学的に許容される塩の何れかを有効成分とする眼局所投与用製剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−161686(P2007−161686A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−363659(P2005−363659)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【出願人】(505466446)
【出願人】(503286424)カルナバイオサイエンス株式会社 (4)
【Fターム(参考)】