説明

糸巻取装置

【課題】巻取パッケージを確実に排出する。
【解決手段】クレードル7により回転可能に支持されている巻取ボビン5の下方から搬送コンベア12の手前まで延びていると共に、搬送コンベア12に向かって下るように傾斜したガイド13が設けられている。支持解除レバーを回動させることにより、クレードル7に支持されている巻取ボビン5の支持を解除する際に、ユニットコントローラ20により、巻取ボビン5を駆動するボビン駆動モータが、巻取パッケージ6を排出方向に回転させるように制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻取管に糸を巻き取ることによって巻取パッケージを形成する糸巻取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
糸巻取装置としては、クレードルによって回転自在に支持されている巻取管(巻取ボビン)に糸を巻き取ることによって巻取パッケージを形成するものが知られている(特許文献1参照)。より詳細には、クレードルは、互いに対向する一対のアームを備えており、それぞれのアームの先端部には、ボビンホルダが回転自在に設けられている。また、ボビンホルダは、巻取ボビンを軸方向両端から挟持するように構成されている。一方のボビンホルダは、他方のボビンホルダに近づくように付勢されていると共に、アームに枢支されたレバーを回動させることで他方のボビンホルダから遠ざかる方向に移動可能となっている。これにより、巻取パッケージが満巻となった場合に、レバーを回動させて、ボビンホルダによる巻取ボビンの挟持を解除することによって、巻取パッケージをクレードルから取り外し、排出することができる。
【特許文献1】特開2006−321615号公報(図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、ボビンホルダと巻取ボビンとの嵌合力が強い場合には、満巻となった巻取パッケージを排出する際において、ボビンホルダによる巻取ボビンの挟持が解除されても、巻取ボビンがボビンホルダから外れない場合がある。このような場合には、巻取パッケージを排出することができないという問題が生じる。
【0004】
そこで、本発明の目的は、巻取パッケージを確実に排出することができる糸巻取装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の糸巻取装置は、糸を巻き取るための巻取管を、回転自在な一対のホルダで軸方向両端から挟持することによって回転自在に支持するクレードルと、前記クレードルによる前記巻取管の支持を解除する支持解除手段と、前記巻取管に形成される巻取パッケージに回転力を付与する回転力付与手段と、前記支持解除手段によって前記巻取管の支持が解除される際に、前記巻取パッケージに回転力が付与されるように前記回転力付与手段を制御する制御手段とを備えている。
【0006】
この構成によると、クレードルによる巻取管の支持が解除された際に、回転力付与手段によって巻取パッケージに付与される回転力により、ホルダと巻取管との嵌合が外れやすくなる。したがって、巻取管をクレードルから確実に取り外し、巻取パッケージを確実に排出することができる。
【0007】
本発明の糸巻取装置では、前記一対のホルダによって前記巻取管が挟持されている状態において前記一対のホルダの少なくとも一方と前記巻取管との間に配されており、当該ホルダと前記巻取管とを密着させる密着部材をさらに備えており、前記回転力付与手段が、前記密着部材によって前記巻取管と密着している前記ホルダを回転駆動する巻取管駆動モータであってもよい。この構成によると、密着部材によってホルダと巻取管との間の嵌合力は比較的大きいが、巻取管の支持が解除される際に、巻取パッケージに回転力が付与されているので、巻取管をホルダから確実に外すことができる。
【0008】
本発明の糸巻取装置はガイドをさらに備えており、当該ガイドは、前記クレードルによって支持されている前記巻取管の下方から前記巻取パッケージが排出される所定の排出位置まで延びており、前記排出位置に向かって下るように傾斜している。また、前記制御手段は、前記支持解除手段によって前記巻取管の支持が解除される際に、前記巻取パッケージに前記排出位置に向かって転がる方向の回転力が付与されるように前記回転力付与手段を制御してもよい。
【0009】
クレードルから外れてガイド上に乗った巻取パッケージが排出位置まで転がることなく、ホルダによる挟持位置近傍に留まっている場合には、空の巻取管をクレードルに装着することができず、巻き取りを再開することができないという問題が生じる。しかし、本発明の糸巻取装置では、クレードルから外れてガイド上に乗った巻取パッケージは、重力による作用と回転力付与手段によって付与された回転力とによって、排出位置に向かって転がる。したがって、例えば、ガイドの傾斜角度が小さい場合、巻取パッケージの密度が低い場合、巻取パッケージの径が小さい場合等のように重力による作用のみでは排出位置まで転がるのが困難である場合でも、巻取パッケージを排出位置まで確実に排出することができる。よって、ガイド上に留まる巻取パッケージによって、クレードルへの空の巻取管の装着が阻害されるのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0011】
<第1の実施の形態>
図1は、本実施の形態に係る巻取ユニットを備えた自動ワインダの縦断面図である。図2は、巻取ユニットの要部正面図である。図3は、巻取ユニットに備えられたクレードルの機構を説明するための図であり、(a)は巻取ボビンを支持している状態を示しており、(b)は巻取ボビンの支持を解除した状態を示している。
【0012】
図1及び図2に示すように、自動ワインダ1の巻取ユニット2は、給糸ボビン21から解舒された糸4を、後で詳述するようにクレードル7によって着脱可能に支持されている巻取ボビン5に巻き取り、所定長で所定形状の巻取パッケージ6を形成するものである。図1及び図2では、巻取ユニット2を1台しか図示していないが、巻取ユニット2が多数列設されることで、自動ワインダ1が構成されている。また、図1に示すように、自動ワインダ1は玉揚装置3を備えている。玉揚装置3は、巻取ユニット2の列設方向に延在するレール11に垂下するように設けられており、レール11に沿って走行自在である。
【0013】
図1に示すように、巻取ユニット2はユニットコントローラ20を備えており、玉揚装置3は玉揚コントローラ30を備えている。各巻取ユニット2のユニットコントローラ20と玉揚コントローラ30とは、機台全体を統括制御する機台コントローラ40に通信ネットワークを介して接続されている。
【0014】
玉揚装置3は、巻取ユニット2において形成される巻取パッケージ6が満巻となった際に、ユニットコントローラ20から発せられる玉揚要求信号を機台コントローラ40を介して受信すると、当該巻取ユニット2まで自走して停止する。そして、図示しない玉揚機構によって、クレードル7による巻取ボビン5の支持を解除し、巻取パッケージ6がクレードル7から外れると、巻取ユニット2の上方に設けられた棚29にストックされている空の巻取ボビン5を取り出してクレードル7に装着すると共に、給糸ボビン21側の糸を引き出して、空の巻取ボビン5への糸掛けを行う。こうして、巻取ユニット2による巻き取りが再開できるようになる。
【0015】
巻取ユニット2は、図1及び図2に示すように、巻取ボビン5を着脱可能に支持するクレードル7と、巻取パッケージ6の周面に接触して従動回転する従動ローラ24とを備えている。図3に示すように、クレードル7は、一対のアーム7a、7bと、アーム7a、7bの一端部をそれぞれ連結する支軸7cとを備えている。第1のアーム7aの支軸7cに連結されている側とは反対側の端部近傍には、第1のボビンホルダ8aが回転自在に支持されている。また、第2のアーム7bには、第1のボビンホルダ8aと対向するように第2のボビンホルダ8bが備えられている。かかる一対のボビンホルダ8a、8bは、巻取ボビン5を軸方向両端から挟持する。
【0016】
さらに、クレードル7は、支軸7cを中心として揺動自在に構成されている。これにより、クレードル7の自由端(巻取ボビン5を支持している部分)を降下又は上昇させることで、巻取ボビン5に形成された巻取パッケージ6の周面が、従動ローラ24の周面に対して接触又は離間できるようになっている。そして、クレードル7には、ユニットコントローラ20の制御により、玉揚げ時や糸切れ時等に、巻取パッケージ6と従動ローラ24との接触を解除すべく巻取パッケージ6を従動ローラ24から離間させるようにクレードル7を揺動移動させる離間機構26が配設されている。
【0017】
また、巻取ユニット2は、図2及び図3に示すように、第2のアーム7bに配設された、モータ軸9aが正逆回転可能なボビン駆動モータ9を備えている。ボビン駆動モータ9のモータ軸9aは、ボビンホルダ8a、8bの回転軸と同心させて配置されていると共に、第2のボビンホルダ8bに対して、圧入等の適宜の手段で相対回転不能に固定されている。したがって、巻取ボビン5を一対のボビンホルダ8a、8bを介してクレードル7に支持させると、ボビン駆動モータ9のモータ軸9aは、巻取ボビン5に対して第2のボビンホルダ8bを介して相対回転不能に連結されるようになっている。これにより、ボビン駆動モータ9により巻取ボビン5を直接的に駆動する、いわゆるダイレクトドライブ方式が実現されている。なお、巻取ボビン5は、後述するように、Oリング10(図3(b)参照)により第2のボビンホルダ8bと密着しているので、巻取ボビン5と第2のボビンホルダ8bとの間にすべりが生じることはない。
【0018】
ここで、ボビン駆動モータ9の支持構成について、より詳細に説明する。図3に示すように、ボビン駆動モータ9及びモータ軸9aはケージング51内に収容されている。ケージング51における第1のアーム7a側の一端には、第2のボビンホルダ8bを回転自在に支持する支持フランジ52が一体的に形成されている。支持フランジ52には、第1のアーム7a側とは反対側に突出していると共に、巻取ボビン5と平行に延びる2つのガイド棒52aが形成されている。また、ケージング51における支持フランジ52とは反対側には、規制フランジ53が固設されている。
【0019】
第2のアーム7bには、支持フランジ52に形成された2つのガイド棒52aが摺動自在にそれぞれ嵌合される円筒状の2つのシリンダ体55が固設されている。シリンダ体55の内部には付勢バネ56が収容されており、ガイド棒52aを介して、第2のボビンホルダ8bを支持する支持フランジ52を、ケージング51及び規制フランジ53と共に、第1のボビンホルダ8aへ近づく向きに付勢している。なお、規制フランジ53には、シリンダ体55が挿通される貫通孔が形成されている。そして、支持フランジ52の第1のボビンホルダ8a側への所定量以上の移動は、規制フランジ53と第2のアーム7bとが当接することで規制される。
【0020】
また、第2のアーム7bには、ケージング51に連結部材28aを介して連結されている支持解除レバー28が、その一端において回動自在に枢支されている。したがって、支持解除レバー28を操作していない状態では、図3(a)に示すように、第2のボビンホルダ8bが第1のボビンホルダ8a側に付勢されており、一対のボビンホルダ8a、8bによって巻取ボビン5が挟持されると共に回転自在に支持される。そして、図3(b)に矢印で示す方向に支持解除レバー28が回動されると、連結部材28aにより連結されているケージング51が、支持フランジ52及び規制フランジ53と共に、第1のボビンホルダ8aとは反対側に移動する。これにより、一対のボビンホルダ8a、8bによる巻取ボビン5の支持が解除される。なお、図3(b)に示すように、第2のボビンホルダ8bには、巻取ボビン5との間に位置するOリング10が装着されている。Oリング10により、第2のボビンホルダ8bは巻取ボビン5と密着状態で嵌合することができるようになっている。
【0021】
つまり、支持解除レバー28を回動させるように操作することによって、クレードル7による巻取ボビン5の支持を解除したり、クレードル7に巻取ボビン5を挟持させたりすることができる。上述の玉揚機構は、この支持解除レバー28を回動できるように構成されている。
【0022】
ボビン駆動モータ9は、ユニットコントローラ20によって制御されており、糸4を巻取パッケージ6に巻き取る際には、巻取パッケージ6を図1、2において矢印Aで示す巻取方向に回転させる方向に駆動される。また、ボビン駆動モータ9は、巻取パッケージ6が満巻となり、上述の離間機構26によって巻取パッケージ6を従動ローラ24から離間させるようにクレードル7が揺動移動される同時に、駆動を停止するように制御される。なお、タイマーによって、離間機構26によるクレードル7の揺動移動のタイミングを、ボビン駆動モータ9の駆動を停止させるタイミングよりも僅かに遅らせるようにしてもよい。さらに、ボビン駆動モータ9は、満巻となった巻取パッケージ6をクレードル7から取り外す際に、上述の玉揚機構によって支持解除レバー28が回動されると同時に、巻取パッケージ6を図1、2において矢印Bで示すように後述する搬送コンベア12に向かって転がる方向である排出方向(巻取方向とは反対方向)に回転させる方向に駆動される。なお、巻取パッケージ6が排出方向Bに回転したことを確認した後に、支持解除レバー28を回動させるようにしてもよい。
【0023】
図2に示すように、従動ローラ24には、その回転を制動するためのブレーキ24aが設けられている。ブレーキ24aは、ユニットコントローラ20に接続されており、玉揚げ時や糸切れ時等に離間機構26によって巻取パッケージ6が従動ローラ24から離間させられた際において、慣性で回転し続ける従動ローラ24の回転を制動するように制御される。
【0024】
また、クレードル7の側方には、クレードル7に支持されている巻取ボビン5に形成された巻取パッケージ6の径を検出するセンサ27が配設されている。なお、センサ27は、クレードル27の揺動角度を検出することにより、巻取パッケージ6の径を間接的に検出している。また、センサ27は、ユニットコントローラ20に接続されている。ユニットコントローラ20は、センサ27で検出された巻取パッケージ6の径が満巻状態の径となった際に、巻取パッケージ6が満巻となったと判断し、玉揚要求信号を発する。
【0025】
さらに、巻取ユニット2における従動ローラ24の近傍には、ユニットコントローラ20に接続されたトラバース装置23が設けられている。トラバース装置23によって、糸4が綾振りされながら巻取パッケージ6に巻き取られるようになっている。トラバース装置23は図示のものに限定されず、他の構成を採用することもできる。例えば、トラバースカムと、その周面に斜状に設けた綾振り溝に係合しつつスライド移動自在に設けられたトラバースガイドと、前記トラバースカムを回転させるトラバースモータで構成するものや、正逆回転可能なトラバースモータをベルト等を介してトラバースガイドに接続して構成するもの等に変更することができる。
【0026】
トラバース装置23の給糸方向上流側(図2中下方)には、給糸ボビン21と巻取パッケージ6との間で繋がっている糸4を切断するためのカッタ22が配置されている。カッタ22はユニットコントローラ20に接続されており、巻取パッケージ6が満巻となった際等に糸4を切断するように制御される。
【0027】
上述のように、ユニットコントローラ20は、クレードル7を揺動移動させる離間機構26、巻取ボビン5を駆動するボビン駆動モータ9、従動ローラ24を制動するブレーキ24a、巻取パッケージ6の径を検出するセンサ27、トラバース装置23、および糸4を切断するカッタ22にそれぞれ接続されており、糸巻取ユニット2の動きを制御することができるようになっている。
【0028】
図1に戻って、自動ワインダ1の背面側(図1における左側)には、巻取ユニット2の並設方向に沿って延在する搬送コンベア12が備えられている。そして、各巻取ユニット2には、図1に示すように、クレードル7によって支持されている巻取ボビン5の下方から搬送コンベア12の手前まで延びていると共に、搬送コンベア12に向かって下るように傾斜したガイド13が設けられている。したがって、クレードル7から取り外された満巻の巻取パッケージ6は、上述のように排出方向Bに回転しており、ガイド13上を搬送コンベア12に向かって排出方向Bと同方向Cに転がる。
【0029】
ガイド13の搬送コンベア12側の端部近傍には、巻取ユニット2の並設方向に沿って延在するシャッター14が設けられている。シャッター14は、その延在方向に平行な回転軸14aを中心に揺動自在であり、図示しない駆動機構により、ガイド13上を転がる巻取パッケージ6を搬送コンベア12の手前で停止させる状態(図1中実線で示す閉状態)と、巻取パッケージ6を搬送コンベア12上へ移動させる状態(図1中鎖線で示す開状態)とをとり得る。なお、シャッター14は、所定時間毎に開放されるようになっている。
【0030】
また、搬送コンベア12の巻取ユニット2とは反対側(図1中左側)の側方には、ガイド13から搬送コンベア12上に転がってきた巻取パッケージ6が搬送コンベア12を通り過ぎて落下するのを防止するためのガイドバー15が延設されている。
【0031】
次に、自動ワインダ1における処理手順を示すフローチャートである図4を参照しつつ、自動ワインダ1において、満巻となった巻取パッケージ6を巻取ユニット2から排出すると共に、空の巻取ボビン5をクレードル7に装着して巻き取りを再開する手順について説明する。なお、以下で述べる手順は一例であり、その順番は適宜変更することができる。
【0032】
まず、巻取ユニット2において、ボビン駆動モータ9の駆動により巻取方向(図1、2において矢印Aで示す方向)に回転させられ、給糸ボビン21から解舒された糸4を巻き取っている巻取パッケージ6の径をセンサ27が検出する。そして、ユニットコントローラ20が、センサ27からの出力信号に基づいて、巻取パッケージ6が満巻となったか否かを判断する(ステップS1)。巻取パッケージ6が未だ満巻でないと判断された場合には(ステップS1:NO)、ステップS1での判断が繰り返し行われる。
【0033】
一方、巻取パッケージ6が満巻となったと判断された場合には(ステップS1:YES)、ユニットコントローラ20の制御により、カッタ22が給糸ボビン21と巻取パッケージ6との間で繋がっている糸4を切断する(ステップS2)。また、このとき、ユニットコントローラ20は、玉揚要求信号を発する。そして、当該玉揚要求信号は、機台コントローラ40を介して玉揚コントローラ30に送信される。これにより、玉揚装置3が、巻取パッケージ6が満巻となっている巻取ユニット2まで移動する(ステップS3)。
【0034】
続いて、ユニットコントローラ20の制御により、離間機構26が巻取パッケージ6を従動ローラ24から離間させるように揺動自在なクレードル7の自由端を上昇させると共に、ブレーキ24aが従動ローラ24にブレーキをかける。また、これと同時に、ユニットコントローラ20は、巻取方向に回転している巻取パッケージ6を停止させるべくボビン駆動モータ9の駆動を停止させる(ステップS4)。その後、ユニットコントローラ20の制御により、離間機構26が巻取パッケージ6を従動ローラ24に接触させるようにクレードル7の自由端を降下させる(ステップS5)。
【0035】
そして、巻取ユニット2の上方に位置している玉揚装置3の玉揚機構が、支持解除レバー28を回動させ、第2のボビンホルダ8bを支持している支持フランジ52を第1のボビンホルダ8aから遠ざかる方向に移動させる。これにより、クレードル7による巻取ボビン5の支持が解除される。また、これと同時に、ユニットコントローラ20は、巻取パッケージ6が巻取方向とは反対方向である排出方向(図1、2において矢印Bで示す方向)に回転するように、ボビン駆動モータ9の駆動を制御する(ステップS6)。このとき、クレードル7から取り外された巻取パッケージ6は、ガイド13上を搬送コンベア12に向かって転がり、シャッター14によって、搬送コンベア12の手前で停止する。なお、当該巻取パッケージ6は、その後、シャッター14が開放された際に、他の巻取ユニット2で巻き取られた巻取パッケージ6と共に、搬送コンベア12上に移動する。
【0036】
次に、玉揚コントローラ30の制御により、玉揚装置3の玉揚機構が、棚29にストックされている空の巻取ボビン5を取り出してクレードル7に装着すると共に(ステップS7)、クレードル7に装着された空の巻取ボビン5への糸掛けを行う(ステップS8)。その後、ユニットコントローラ20が、ボビン駆動モータ9の駆動により巻取ボビン5が巻取方向(図1、2において矢印Aで示す方向)に回転するように制御し、糸4の巻き取りが再開される(ステップS9)。
【0037】
以上のように、本実施の形態の巻取ユニット2は、支持解除レバー28を回動させることにより、クレードル7に支持されている巻取ボビン5の支持を解除する際に、ユニットコントローラ20により、ボビン駆動モータ9が、巻取パッケージ6を巻取方向とは反対方向である排出方向に回転させるように制御される。したがって、巻取パッケージ6の回転力により第2のボビンホルダ8bと巻取ボビン5との嵌合が外れやすくなる。よって、巻取ボビン5をクレードル7から確実に取り外し、巻取パッケージ6を確実に排出することができる。
【0038】
また、本実施の形態の巻取ユニット2では、ボビン駆動モータ9は、モータ軸9aが第2のボビンホルダ8bに固定されており、第2のボビンホルダ8bを介して巻取ボビン5を直接的に駆動する。そして、第2のボビンホルダ8bには、巻取ボビン5との間にすべりが生じることがないように、第2のボビンホルダ8bと巻取ボビン5とを密着させるOリング10が装着されている。したがって、第2のボビンホルダ8bと巻取ボビン5との間の嵌合力は比較的大きいが、巻取ボビン5の支持が解除される際に、巻取パッケージ6が回転しているので、巻取ボビン5を第2のボビンホルダ8bから確実に外すことができる。
【0039】
さらに、本実施の形態の巻取ユニット2は、クレードル7によって支持されている巻取ボビン5の下方から搬送コンベア12に向かって下るように傾斜したガイド13を備えている。そして、ユニットコントローラ20は、クレードル7による巻取ボビン5の支持が解除される際に、ボビン駆動モータ9により、巻取パッケージ6が搬送コンベア12に向かう方向(排出方向)に回転されるように制御する。したがって、クレードル7から取り外され、ガイド13上に乗った巻取パッケージ6は、重力による作用と、ボビン駆動モータ9により付与された回転力とにより、搬送コンベア12に向かって転がる。よって、ガイド13の傾斜角度が小さい場合や、巻取パッケージ6の密度が低い場合や、巻取パッケージ6の径が小さい場合等であっても、巻取パッケージ6をシャッター14により停止させられる位置まで確実に排出することができる。その結果、クレードル7への空の巻取ボビン5の装着が阻害されることがなく、スムーズに巻き取りを再開することができる。
【0040】
<第2の実施の形態>
次に、図5を参照しつつ、本発明の第2の実施の形態について説明する。図5は、本実施の形態の巻取ユニットの要部正面図である。本実施の形態は、巻取ユニット102の構成を除いて、第1の実施の形態と同様である。第1の実施の形態の巻取ユニット2と本実施の形態の巻取ユニット102との主な相違点は、第1の実施の形態の巻取ユニット2は、巻取パッケージ6が形成される巻取ボビン5をボビン駆動モータ9により直接的に駆動するダイレクトドライブ方式であるが、本実施の形態の巻取ユニット102は、巻取パッケージ6の周面に接触しつつ回転する駆動ドラム124によって巻取パッケージ6を回転駆動するドラム駆動方式であることである。なお、第1の実施の形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0041】
巻取ユニット102は、図5に示すように、正逆回転可能なドラム駆動モータ124aにより回転駆動される駆動ドラム124を備えている。したがって、離間機構26によって、巻取ボビン5を回転自在に支持しているクレードル7を降下させ、巻取パッケージ6を駆動ドラム124に接触させた状態で、ドラム駆動モータ124aによって、駆動ドラム124を回転させると、巻取パッケージ6が従動回転することとなる。また、巻取ユニット102には、巻取パッケージ6の回転を制動するブレーキ110が設けられている。
【0042】
そして、図5に示すように、巻取ユニット102を制御するユニットコントローラ120には、上述のドラム駆動モータ124aおよびブレーキ110に加えて、クレードル7を揺動移動させる離間機構26、巻取パッケージ6の径を検出するセンサ27、糸4を綾振りしながら巻取パッケージ6に巻き取るトラバース装置23、および糸4を切断するためのカッタ22がそれぞれ接続されている。
【0043】
ドラム駆動モータ124aは、ユニットコントローラ120により、糸4を巻取パッケージ6に巻き取る際に、駆動ドラム124と接触する巻取パッケージ6が図5において矢印Aで示す巻取方向に従動回転するよう制御される。また、ドラム駆動モータ124aは、巻取パッケージ6が満巻となり、離間機構26によって巻取パッケージ6を駆動ドラム124から離間させるようにクレードル7が揺動移動すると同時に、駆動を停止するように制御される。さらに、ドラム駆動モータ124aは、満巻となった巻取パッケージ6をクレードル7から取り外す際に、玉揚機構によって支持解除レバー28が回動されると同時に、駆動ドラム124と接触する巻取パッケージ6が図5において矢印Bで示す排出方向(巻取方向とは反対方向)に従動回転するように制御される。
【0044】
ブレーキ110は、ユニットコントローラ120によって、玉揚げ時や糸切れ時等に離間機構26によって巻取パッケージ6が駆動ドラム124から離間させられた際において、慣性で回転し続ける巻取パッケージ6の回転を制動するように制御される。
【0045】
本実施の形態の巻取ユニット102を備えた自動ワインダにおける処理手順は、第1の実施の形態の自動ワインダ1における処理手順とほぼ同様であるので、以下、第1の実施の形態における手順と異なる部分についてのみ説明する。
【0046】
第1の実施の形態におけるステップS3の手順(図4参照)の後、ユニットコントローラ120の制御により、離間機構26が巻取パッケージ6を駆動ドラム124から離間させるように揺動自在なクレードル7の自由端を上昇させると共に、ドラム駆動モータ124aによる駆動ドラム124の駆動が停止される。また、これと同時に、ユニットコントローラ120は、巻取パッケージ6の回転を停止させるようにブレーキ110を制御する。
【0047】
また、第1の実施の形態におけるステップS5の手順(図4参照)の後、玉揚装置3の玉揚機構が支持解除レバー28を操作し、クレードル7による巻取ボビン5の支持が解除されるのと同時に、ユニットコントローラ120は、巻取パッケージ6が駆動ドラム124と接触しつつ、巻取方向とは反対方向である排出方向(図5において矢印Bで示す方向)に従動回転するように、ドラム駆動モータ124aの駆動を制御する。
【0048】
以上のように、本実施の形態の巻取ユニット102では、第1の実施の形態の巻取ユニット2と同様に、巻取パッケージ6を確実に排出することができる。
【0049】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて、様々な設計変更を行うことが可能なものである。例えば、上述の第1および第2の実施の形態では、クレードル7によって支持されている巻取ボビン5の下方から搬送コンベア12に向かって下るように傾斜したガイド13が設けられており、ユニットコントローラ20(120)が、クレードル7による巻取ボビン5の支持が解除される際に、巻取パッケージ6が搬送コンベア12に向かって転がる方向である排出方向に回転するように制御する場合について説明したが、これには限定されない。ガイド13は設けられていなくてもよいし、クレードル7による巻取ボビン5の支持が解除される際に回転される巻取パッケージ6の回転方向は限定されない。
【0050】
また、上述の第1の実施の形態では、巻取パッケージ6が満巻となった際に、ステップS4において、クレードルを上昇させ、巻取パッケージ6と従動ローラ24とを離間させると同時に巻取りパッケージ6の回転を停止させた後、ステップS5において、クレードルを降下させて、再度巻取パッケージ6と従動ローラ24とを接触させた状態とし、ステップS6において、クレードル7による巻取パッケージ6の支持を解除すると同時に巻取パッケージ6を回転させる場合について説明したが、ステップS5の手順は省略してもよい。つまり、巻取パッケージ6と従動ローラ24とを離間させた状態で、巻取パッケージ6の支持を解除し、巻取パッケージ6を回転させてもよい。
【0051】
また、第2の実施の形態において、駆動ドラム124として、糸を綾振りするための綾振り溝が周面に形成された綾振りドラムを使用し、糸を綾振りするトラバース装置23を廃止するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1の実施の形態にかかる巻取ユニットを備えた自動ワインダの縦断面図である。
【図2】図1に示す巻取ユニットの要部正面図である。
【図3】図2に示すクレードルの機構を説明するための図である。
【図4】図1に示す自動ワインダにおける処理手順を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第2の実施の形態にかかる巻取ユニットの要部正面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 自動ワインダ
2、102 巻取ユニット(糸巻取装置)
4 糸
5 巻取ボビン(巻取管)
7 クレードル
8a、8b ボビンホルダ(ホルダ)
9 ボビン駆動モータ(回転力付与手段、巻取管駆動モータ)
10 Oリング(密着部材)
13 ガイド
20、120 ユニットコントローラ(制御手段)
28 支持解除レバー(支持解除手段)
124 駆動ドラム(回転力付与手段)
124a ドラム駆動モータ(回転力付与手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸を巻き取るための巻取管を、回転自在な一対のホルダで軸方向両端から挟持することによって回転自在に支持するクレードルと、
前記クレードルによる前記巻取管の支持を解除する支持解除手段と、
前記巻取管に形成される巻取パッケージに回転力を付与する回転力付与手段と、
前記支持解除手段によって前記巻取管の支持が解除される際に、前記巻取パッケージに回転力が付与されるように前記回転力付与手段を制御する制御手段とを備えていることを特徴とする糸巻取装置。
【請求項2】
前記一対のホルダによって前記巻取管が挟持されている状態において前記一対のホルダの少なくとも一方と前記巻取管との間に配されており、当該ホルダと前記巻取管とを密着させる密着部材をさらに備えており、
前記回転力付与手段が、前記密着部材によって前記巻取管と密着している前記ホルダを回転駆動する巻取管駆動モータであることを特徴とする請求項1に記載の糸巻取装置。
【請求項3】
前記クレードルによって支持されている前記巻取管の下方から前記巻取パッケージが排出される所定の排出位置まで延びており、前記排出位置に向かって下るように傾斜しているガイドをさらに備えており、
前記制御手段が、前記支持解除手段によって前記巻取管の支持が解除される際に、前記巻取パッケージに前記排出位置に向かって転がる方向の回転力が付与されるように前記回転力付与手段を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の糸巻取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−247550(P2008−247550A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−90506(P2007−90506)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】