説明

系統図自動作成システム

【課題】全系系統図から縮約系統図を作成でき、設備のリンク付けもできる系統図自動作成システムを得る。
【解決手段】縮約系統図に変換したい範囲を指定する利用者端末10と、全系系統図を表示する際に、全系系統図データベース200から設備の図形情報等を読み出し全系内部木構造102を生成し、これに基き全系系統図を表示し、指定された範囲の設備の図形情報等を全系内部木構造102から全て取り出し、仮想的な矩形の4頂点から一番近い電力所を4箇所検索し、4頂点の位置に重なるように電力所の位置を決定し、電力所単位に全ての設備について検索し、設備テーブル104を参照して該当設備が表示対象であれば、縮約系統図上での設備の位置を決定し、縮約系統図上の設備と全系系統図の設備とをリンク付けして、縮約系統図を作成するサーバ計算機100とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、全系系統図を利用者端末の画面上に表示して、利用者が画面上から縮約系統図を作成できる系統図自動作成システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電力系統の系統図を表示/操作する装置においては、系統図データを図形データとして扱い、その上で回路の入り切り操作や、潮流計算を実施して結果を表示していた。また、他の従来の装置では、系統図データを簡略化して表示するが、簡略化された系統図を利用者が新たに作成してから、一つずつ設備の関連付けを行う必要があった。さらに、全体系統図と詳細系統図を切り替えて表示する装置があるが、2種類の系統図を作成する手段については説明されていない(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平6−290379号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような従来の装置では、簡略化された系統図を作る度に利用者の作業が発生して、多大な作成時間を要するという問題点があった。また、利用者が設備間の関連付けを行っているため、入力誤りが発生するなどの問題点があり、チェックも多大な工数を必要とするという問題点があった。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、全系系統図が簡略化された縮約系統図を自動で作成することができ、それを元にして簡略化されたデータに高速に変換することができるとともに、両方の設備データのリンク付けも自動で行うことができる系統図自動作成システムを得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る系統図自動作成システムは、全系系統図から簡略化された縮約系統図を作成する系統図自動作成システムであって、設備の図形情報及び接続情報を格納する全系系統図データベースと、表示された全系系統図上で縮約系統図に変換したい範囲を指定するための利用者端末と、縮約系統図で表示対象とする設備種別及び表示対象としない設備種別が予め設定された設備テーブルと、前記全系系統図を表示する際には、前記全系系統図データベースから設備の図形情報、接続情報を読み出して全系内部木構造を生成し、前記全系内部木構造に基づいて全系系統図を前記利用者端末に表示し、前記利用者端末によって指定された縮約系統図に変換したい範囲の設備の図形情報及び接続情報を前記全系内部木構造から全て検索して取り出し、取り出した設備の図形情報及び接続情報の中から、仮想的な矩形の4頂点からそれぞれ一番近い電力所を4箇所検索し、前記仮想的な矩形の4頂点の位置にそれぞれ重なるように4箇所の電力所の位置を決定し、取り出した設備の図形情報及び接続情報の中から、処理対象となる電力所単位に全ての設備について検索し、前記設備テーブルを参照して該当設備が表示対象であれば、縮約系統図上での設備の表示位置を決定して設備同士の接続線を描画し、前記縮約系統図上の設備と前記全系系統図の設備とをリンク付けして、縮約系統図を作成するサーバ計算機とを設けたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係る系統図自動作成システムは、全系系統図が簡略化された縮約系統図を自動で作成することができ、それを元にして簡略化されたデータに高速に変換することができるとともに、両方の設備データのリンク付けも自動で行うことができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
この発明の実施の形態1に係る系統図自動作成システムについて図1から図6までを参照しながら説明する。図1は、この発明の実施の形態1に係る系統図自動作成システムの構成を示す図である。なお、各図中、同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0009】
図1において、この実施の形態1に係る系統図自動作成システムは、利用者端末10、20と、系統図データを管理、生成するサーバ計算機100と、全系系統図データベース200と、縮約系統図データベース300(300A、300B、・・・)とが設けられている。
【0010】
利用者端末10、20は、実際に利用者が操作する端末であり、ネットワーク30を経由してサーバ計算機100に接続されている。図1では、便宜上、全系系統図と縮約系統図を別端末に表示しているが、実際には、同一端末上に両者を切り替えて表示させて操作してもよい。なお、利用者端末10に表示されている全系系統図では一部の電力所などが、利用者端末20に表示されている縮約系統図ではCB(Circuit Breaker)などが省略されている。
【0011】
サーバ計算機100は、木構造生成機能101と、全系内部木構造102と、縮約内部木構造103と、設備テーブル104と、設備表示機能105と、縮約図生成機能106と、リンク付け機能107と、潮流計算機能108とを持っている。
【0012】
木構造生成機能101は、全系系統図データベース200や、縮約系統図データベース300から読み込んだデータを主記憶上の全系内部木構造102、縮約内部木構造103に変換する。これら全系内部木構造102、縮約内部木構造103は、系統図データを管理する主記憶上の木構造である。この木構造は、系統図ごとに一つ生成され、設備の位置情報を管理する。この木構造を利用して、設備間の距離計算や、ある範囲内の設備の検索などの空間探索処理を行うことができる。
【0013】
設備テーブル104は、縮約系統図を生成する際に使用するものである。この設備テーブル104には、あらかじめ、設備種別ごとに表示、非表示を登録しておく。
【0014】
設備表示機能105は、全系内部木構造102や、縮約内部木構造103に基づいて、利用者端末10、20に全系系統図(全系図)や、縮約系統図(縮約図)を表示する。
【0015】
縮約図生成機能106は、指定された範囲の縮約系統図(縮約図)を生成し、縮約系統図データベース300として登録する。
【0016】
リンク付け機能107は、縮約系統図上の設備が全系系統図上のどの設備に対応するのかをID番号で関連付ける。潮流計算機能108は、全系系統図データベース200の接続情報を元にして、設備上の電気の流れを計算する。
【0017】
サーバ計算機100は、全系系統図データベース200と、縮約系統図データベース300(300A、300B、・・・)を持っている。この縮約系統図データベース300は、縮約系統図の個数分拡張することができる。全系系統図データベース200は、全ての設備(電力所を含む)の図形データと属性(設備の名前等)データと位置データ等から構成される図形情報と、個々の設備の電気的な接続状態を接続情報として保持している。また、全ての設備に、個々の設備を識別するためのID番号が付与され、図形情報の一部として登録されている。
【0018】
各縮約系統図データベース300(300A、300B、・・・)は、縮約系統図内の設備(電力所を含む)の図形データと属性(設備の名前等)データと位置データ等から構成される図形情報と、縮約系統図の設備と全系系統図の設備のリンク付けされたID番号から構成される全系リンク情報を持っている。
【0019】
つぎに、この実施の形態1に係る系統図自動作成システムの動作について図面を参照しながら説明する。
【0020】
図2は、この発明の実施の形態1に係る系統図自動作成システムの動作を示すフローチャートである。また、図3、図4及び図6は、この発明の実施の形態1に係る系統図自動作成システムの処理過程を示す図である。図5は、この発明の実施の形態1に係る系統図自動作成システムの設備テーブルの構成を示す図である。
【0021】
ステップS01において、利用者は、縮約系統図で表示対象とする設備種別と、表示対象としない設備種別を、サーバ計算機100内の設備テーブル104に予め設定しておく。図5の例では、利用者は、利用者端末10、20を通じて、以下のように設定する。『母線』、『接続線』、『CB(Circuit Breaker):回路遮断器』は、表示対象とする(○印)。また、『キャパシタ』、『LS(Line Switch):ラインスイッチ』、『母線間接続線』は、表示対象としない(×印)。
【0022】
ステップS02〜S03において、利用者は、まず、例えば、マウス操作で指定して全系系統図を利用者端末10に表示し、縮約系統図に変換したい範囲をマウス操作で指定する。そして、縮約系統図作成をマウス操作で指示する。図1の例では、スクロール操作で利用者端末10に表示された或る範囲の全系系統図で、点線で囲んだ枠が利用者によって指定された範囲とする。
【0023】
全系系統図を表示する際には、サーバ計算機100の木構造生成機能101によって、全系系統図データベース200から図形情報、接続情報が読み出され、主記憶上の全系内部木構造102に変換される。この全系内部木構造102に基づいて、設備表示機能105により全系系統図が利用者端末10に表示される。なお、ここでは、全系系統図データベース200は、既に作成されているものとし、縮約系統図データベース300は、まだ作成されていないものとする。
【0024】
全系系統図内の縮約系統図に変換したい範囲は、図1の利用者端末10では、点線の多角形で表している。この例のように、縮約系統図に変換したい範囲は矩形とは限らない。縮約系統図に変換したい範囲内には、少なくとも4箇所の電力所を含まなければならない。
【0025】
これ以降のステップS04〜S16の処理は、ステップS15を除いて、サーバ計算機100の縮約図生成機能106が行う。
【0026】
ステップS04において、まず、指定された縮約系統図に変換したい範囲の図形情報を全系内部木構造102から全て検索して取り出す。
【0027】
ここからのステップS05〜S09の処理を図示したものが図3と図4である。
【0028】
ステップS05〜S06において、取り出した図形情報の位置データの中から、まず、図3に示す仮想的な矩形(印刷する場合の印刷用紙に相当する)の4頂点A、B、C、Dから内側で一番近い電力所(全ての設備の親となる設備)を、4箇所検索する。そして、図4に示すように、4箇所の電力所1、2、3、4の位置を、仮想的な矩形の4頂点A、B、C、Dの位置に重なるように位置を決定する。図3及び図4に示すように、電力所1が頂点A、電力所2が頂点B、電力所3が頂点C、電力所4が頂点Dに、それぞれ移動する。このように、印刷時になるべく隙間なく収まるように、電力所を配置する。
【0029】
ステップS07〜S09において、取り出した図形情報の位置データの中から、次に、電力所1〜4以外の電力所がなくなるまで検索し、電力所5〜7毎の仮想的な矩形内の相対位置を計算し、矩形内での電力所5〜7の位置を決定する。図3に点線で示すように、仮想的な矩形の4頂点の位置に決定した電力所1〜4の元の位置の間に、第2の矩形を作り、この第2の矩形の中の位置と仮想的な矩形の中の位置が比例関係になるように電力所5〜7の位置を決定する。
【0030】
ステップS10〜S14において、指定された縮約系統図に変換したい範囲内の全ての電力所の位置を決定したら、電力所単位に設備の配置を実施していく。まず、取り出した図形情報の位置データの中から、処理対象となる電力所を検索して、電力所単位に設備がなくなるまで検索処理を続ける。該当設備が表示対象かどうかを、設備テーブル104を参照して決定する。設備テーブル104の具体例を図示したものが図5である。該当設備が表示対象であれば、電力所の決定済みの位置や、全系内部木構造102の機能を利用して縮約系統図上での表示位置を決定する。そして、他の電力所の設備との接続線を描画する。まだ、他の電力所の設備の位置が決定していない場合は、接続線を描画しない。
【0031】
ステップS15において、リンク付け機能107によって、縮約系統図上の母線、接続線などの設備と、全系系統図上の設備とのID番号によるリンク付けを行う。上述した電力所単位の設備の検索時に該当設備のID番号を保持しておき、縮約系統図上の設備のID番号とする。このID番号によるリンク付け情報は、縮約系統図データベース300の全系リンク情報として保持されるものであり、どの設備を縮約したものかを辿ることができる。
【0032】
図6に示す例では、(a)に全系系統図、(b)に縮約系統図をそれぞれ示す。図6(a)では、或る電力所の設備として、母線401と、接続線402と、キャパシタ403と、CB404と、LS405と、母線間接続線406とが表示されている。図6(b)では、図5に示す設備テーブルに合わせて、縮約系統図の設備として、キャパシタ403と、LS405と、母線間接続線406とが省略され、母線401と、接続線402と、CB404とが表示されている。
【0033】
ステップS16において、指定された縮約系統図に変換したい範囲内の全ての電力所及びその設備に対して処理が完了したら、作成した縮約系統図のデータを、例えば縮約系統図データベース300Aとして登録し、全ての処理が完了する。
【0034】
以上により、縮約系統図を自動で作成することができ、また、全系系統図と縮約系統図の両方の設備データのリンク付けを自動で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】この発明の実施の形態1に係る系統図自動作成システムの構成を示す図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る系統図自動作成システムの動作を示すフローチャートである。
【図3】この発明の実施の形態1に係る系統図自動作成システムの処理過程(電力所配置前)を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係る系統図自動作成システムの処理過程(電力所配置後)を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態1に係る系統図自動作成システムの設備テーブルの構成を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態1に係る系統図自動作成システムの処理過程(設備省略)を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
10、20 利用者端末、30 ネットワーク、100 サーバ計算機、101 木構造生成機能、102 全系内部木構造、103 縮約内部木構造、104 設備テーブル、105 設備表示機能、106 縮約図生成機能、107 リンク付け機能、108 潮流計算機能、200 全系系統図データベース、300、300A、300B 縮約系統図データベース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全系系統図から簡略化された縮約系統図を作成する系統図自動作成システムであって、
設備の図形情報及び接続情報を格納する全系系統図データベースと、
表示された全系系統図上で縮約系統図に変換したい範囲を指定するための利用者端末と、
縮約系統図で表示対象とする設備種別及び表示対象としない設備種別が予め設定された設備テーブルと、
前記全系系統図を表示する際には、前記全系系統図データベースから設備の図形情報、接続情報を読み出して全系内部木構造を生成し、前記全系内部木構造に基づいて全系系統図を前記利用者端末に表示し、
前記利用者端末によって指定された縮約系統図に変換したい範囲の設備の図形情報及び接続情報を前記全系内部木構造から全て検索して取り出し、
取り出した設備の図形情報及び接続情報の中から、仮想的な矩形の4頂点からそれぞれ一番近い電力所を4箇所検索し、前記仮想的な矩形の4頂点の位置にそれぞれ重なるように4箇所の電力所の位置を決定し、
取り出した設備の図形情報及び接続情報の中から、処理対象となる電力所単位に全ての設備について検索し、前記設備テーブルを参照して該当設備が表示対象であれば、縮約系統図上での設備の表示位置を決定して設備同士の接続線を描画し、
前記縮約系統図上の設備と前記全系系統図の設備とをリンク付けして、縮約系統図を作成するサーバ計算機と
を備えたことを特徴とする系統図自動作成システム。
【請求項2】
前記図形情報は、全ての設備の図形データと属性データと位置データとID番号とから構成され、
前記ID番号は、個々の設備を識別するために全ての設備に付与され、
前記接続情報は、個々の設備の電気的な接続状態を示す情報であり、
前記縮約系統図上の設備と前記全系系統図の設備とのリンク付けは、前記ID番号により行う
ことを特徴とする請求項1記載の系統図自動作成システム。
【請求項3】
前記仮想的な矩形は、印刷する場合の印刷用紙に相当する
ことを特徴とする請求項1又は2記載の系統図自動作成システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−318400(P2006−318400A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−142918(P2005−142918)
【出願日】平成17年5月16日(2005.5.16)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】