説明

紅斑を治療又は予防するための組成物

【課題】紅斑(コウハン)を治療または予防するための局所組成物の提供。
【解決手段】(5-ブロモキノキサリン-6-イル)-(4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-2-イル)アミン(一般にブリモニジンと呼ばれている)、オキシメタゾリン、エピネフリンおよびその薬学的に許容しうる塩(例えば、酒石酸ブリモニジン)からなる群より選ばれる化合物またはその組み合わせ、並びに薬学的に許容しうる担体とを配合した局所組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の説明
本出願は2004年5月25日出願の米国特許出願第601574,142号の優先権を主張し、この明細書の記載は本願明細書に含まれるものとする。本出願は、また、2003年5月27日出願の米国特許出願第601473,611号の優先権を主張する、2004年5月25日出願の米国特許出願第10/853,585号の分割であり、これらの明細書は共に本願明細書に含まれるものとする。
発明の分野
本発明は炎症性皮膚疾患の治療又は予防のための化合物及び方法に関する。本発明によって教示される化合物及び方法は、炎症性皮膚疾患及びそれと関連する症状を治療又は予防するのに特に有効である。
【背景技術】
【0002】
多くの人々は、見苦しく痛みを伴う発疹、ざ瘡、持続的に赤色の静脈、ざ瘡のような皮膚発疹、例えば、斑点、小結節、にじみ出たり痂皮ができたりする膿疱を生じる炎症性皮膚疾患に罹患する。炎症性皮膚疾患によって、しばしば強い社会心理的苦痛が生じる。酒さは、米国において1000万人以上が罹患する一般的な炎症性皮膚疾患である。酒さは、一般に頬、鼻、あご、額に生じ、典型的な発病年令は、30〜60歳である。例えば、Zuber T.J., Rosacea: Beyond First Blush 32 HOSP. PRACT. 188-189 (1997); THe MERCK MANUAL 813-814 (Keryn A.G. Lane et al. eds. l7th ed. 2001)を参照のこと。初期酒さをもつ多くの人々は、成人のざ瘡、日焼け又は風焼け、又は標準の老化作用に罹ると誤って考えられている。
酒さは、顔の皮膚の頻繁な顔面潮紅と頻繁な刺激として徐々に始まるようになる。より進行した酒さは、患者がますますひどい紅斑(皮膚の異常な発赤)と毛細血管拡張(毛細血管と細動脈の異常な拡大のための目に見える赤くなったライン)を示す血管期を特徴とする。固形(丘疹又は小結節と呼ばれる)又は膿が充填するもの(膿疱として知られる)があるあばたのような発疹が生じることがある。このような発疹は、しばしばざ瘡のように見えるが、白色面皰又は黒色面皰(ざ瘡の一般的な症状)は通常存在しない。後期酒さは、酒さ鼻(鼻の腫張)を特徴とする。治療されない場合、酒さは不可逆的傷へ進行し得る。酒さ症状は、日光暴露、温度の変化又は極端、風、ある種の食品の消費、例えば、香辛料のきいた食品、カフェイン、アルコールによってしばしば悪化する。
酒さの正確な病因は不明であるが、病的な過程は十分に記載されている。例えば、酒さと関連する紅斑は、顔の表面的な血管系の拡張が原因である。Zuber T.J., Rosacea: Beyond First Blush 32 HOSP. PRacr. 188-189 (1997)。
【0003】
酒さのような多くの炎症性皮膚疾患のための治療は知られていない。発赤、炎症、及び皮膚発疹の制御に関する現在の治療は、多くの患者において有効性が限られ、一般に、限られた期間にのみ用いることができる。標準治療には、日光暴露、風曝露、アルコール消費、香辛料のきいた食品、刺激性フェイシャルクレンザー、ローション剤、化粧品のような引金を避けることが含まれる。抗生物質は、従来の第1線の治療法である。経口抗生物質、例えば、テトラサイクリン、ミノサイクリン、ドキシサイクリン又はクラリスロマイシンによる長期間治療(5〜8週以上)は、皮膚発疹を制御することができる。代替的経口治療としては、ビタミンAの投薬、例えば、イソレチノインや抗真菌剤の投薬が挙げられる。残念なことに、このような経口薬剤はしばしば副作用を引き起こし、多くの人々は許容量を制限してきた。局所適用された抗生物質や抗真菌剤(例えば、メトロニダゾール)又はステロイドのような局所治療も利用できるが、有効性が制限され、全ての症状を治療することができるというわけではない。例えば、イソレチノインは深刻な催奇形の副作用を有し、子供を生む年齢の女性患者は有効な産児制限を用いられなければならないか又は治療を避けなければならない。局所治療としては、局所適用メトロニダゾール、局所適用ステロイド、局所適用アゼライン酸、局所適用レチン酸又はレチンアルデヒドが挙げられ、ビタミンC局所製剤も利用できるが、有効性が制限され、全ての症状を治療することができるというわけではない。血管のレーザ除去のような手術は、典型的には最後の手段であるが、他の治療が効果がない場合に処方されるものである。鼻過形成症患者において、外科的整復は、患者の美容上の外観を改善することができるが、それ自体疾患を治療するものではない。混合光パルス(フォトダーム)治療は、何人かの患者において酒さのようなある種の炎症性皮膚程度と関連する症状に幾分有効であった。このように、酒さ及びその症状のような炎症性皮膚疾患の治療用局所製剤が求められている。
α2アドレナリン受容体の作動薬は、高血圧症、うっ血性心不全、狭心症、痙直、緑内症、下痢を含む多くの症状、及びアヘンの禁断症状の抑制に治療的に用いられてきた(J.P. Heible and R.R. Ruffolo Therapeutic Applications of Agents Interacting with α-Adrenoceptors, p. 180-206 in Progtess in Basic and Clinical Pharmacology Vol. 8, P. Lomax and E.S. Vesell Ed., Karger, 1991)。
【0004】
クロニジンのようなアドレナリン受容体作動薬は、パッチ製剤が知られているが、主に経口的に用いられてきた。既存の製剤の目標は、患者に化合物の全身系内部用量を送達することである。α2作動薬は、患者の中心と周囲の双方において血管収縮を仲介することが知られている。特にα2アドレナリン受容体作動薬は、寒さ又はストレスによる刺激に応答して、末梢性細動脈の血管収縮を引き起こすことが知られている。
多くの特許には、眼の症状や眼病を治療するためのブリモニジンの使用が記載されている。カナダ特許第CA2326690号においては、眼病を治療するために目にだけ用いられる眼科用局所製剤の使用が記載されている。カナダ特許には、局所的に(目において)、経口的に又は非経口的に用いられる眼科用製剤、及びそれらの使用を制限する重大な一部を含むそれらの全身作用による問題が述べられている。これらの全身作用には、チモロールのようなβ-遮断薬の心肺の作用; アトロピンによる口の渇き、紅潮、熱、頻脈、尿閉、痙攣及び過敏性; フェニルエフィンによる高血圧症; 縮瞳薬による唾液分泌増加、嘔気、嘔吐、下痢、胃ケイレン、気管支分泌物、気管支収縮、喘息、徐脈、感覚異常症; クロニジンによる低血圧症; 及びアプラクロニジンやブリモニジンによる口内乾燥症、疲労及びうとうと状態が挙げられる。
全身系副作用を引き起こさずに、酒さ又は他の炎症性皮膚疾患の症状を改善する、患者に作動薬の用量を送達することができるα2アドレナリン受容体作動薬を含有する組成物がなかった。また、全身系副作用を引き起こさずに、酒さ又は他の炎症性皮膚疾患の症状を改善する、患者の皮膚に作動薬の用量を送達することができるα2アドレナリン受容体作動薬を含有する局所皮膚組成物がなかった。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、炎症性皮膚疾患及びそれらの症状を治療するための方法、化合物及び局所的な皮膚製剤を提供する。本発明の方法、化合物及び製剤は、特に酒さの治療に有効であるが、皮膚炎、例えば、接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、貨幣状皮膚炎、全身性剥脱性皮膚炎、うっ血性皮膚炎、ビダール苔癬; 毛嚢及び皮脂腺の疾患、例えば、ざ瘡、酒さ及び酒さ鼻、口腔周囲の皮膚炎、顎毛部偽性毛包炎; 及び炎症性反応、例えば、薬疹、多形性紅斑、結節性紅斑、環状肉芽腫が挙げられるがこれらに限定されない他の炎症性皮膚病を治療するために用いることができる。本発明の化合物は、血管収縮を引き起こす末梢性血管系に作用し、それによって、炎症性皮膚疾患の症状を改善するα2アドレナリン受容体作動薬である。化合物は、化合物が患者の皮膚に有効であるが、重大な全身性副作用を誘発するのに充分な量で皮膚を浸透しないことを保証する皮膚局所組成物において送達される。
本発明の一実施態様の化合物は、下記の式Iによって表される。
【0006】
【化1】

【0007】
(式中、R1、R2、R3は、各々独立して水素、ハロゲン、アルキル、好ましくは無置換アルキル、又はアルコキシ、好ましくは無置換アルコキシであり; R4、R5は、各々独立して水素、アルキル、好ましくは無置換アルキル、又はアルコキシ、好ましくは無置換アルコキシであり; R6、R7は、各々独立して水素、ニトロ、アルキル、好ましくは無置換アルキル、又はアルコキシ、好ましくは無置換アルコキシである。)
式Iの化合物の好ましい実施態様においては、R6とR7は共に水素である。他の好ましい実施態様においては、R4とR5は共に水素である。
本発明の方法に従って、炎症性皮膚疾患を治療又は予防するために、本発明の本実施態様の化合物が局所的に適用される。好ましくは、本発明の化合物は、局所製剤において送達される。本発明の化合物の局所送達のための製剤、例えば、水性液剤又は非水性液剤又は懸濁液剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、又は軟膏は、当該技術において周知である。
本発明の他の実施態様の化合物は、下記式IIによって表される。
【0008】
【化2】

【0009】
本発明の他の実施態様の化合物は、下記式IIIによって表される。
【0010】
【化3】

【0011】
本発明の他の実施態様の化合物を以下に示す。
【0012】
【化4】

【0013】
本発明のこれらの及び他の特徴、態様、及び利点は、以下の詳細な説明、実施例、及び特許請求の範囲によってより良く理解される。
本発明のこれらの及び他の特徴、態様、及び利点は、以下の詳細な説明、実施例、及び添付された特許請求の範囲によってより良く理解される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.1 本発明の化合物
一実施態様においては、本発明は、下記式Iの化合物に関する。
【0015】
【化5】

【0016】
(式中、R1、R2、R3は、各々独立して水素、ハロゲン、アルキル、好ましくは無置換アルキル、又はアルコキシ、好ましくは無置換アルコキシであり; R4、R5は、各々独立して水素、アルキル、好ましくは無置換アルキル、又はアルコキシ、好ましくは無置換アルコキシであり; R6、R7は、各々独立して水素、ニトロ、アルキル、好ましくは無置換アルキル、又はアルコキシ、好ましくは無置換アルコキシである。)
式Iの化合物の好ましい実施態様においては、R6とR7の双方が水素である。他の好ましい実施態様においては、R4とR5の双方が水素である。
他の実施態様においては、本発明は、下記式Iaの化合物に関する。
【0017】
【化6】

【0018】
(式中、R1、R2、R3は、各々独立して水素、ハロゲン、アルキル、好ましくは無置換アルキル、又はアルコキシ、好ましくは無置換アルコキシであり; R4、R5は、各々独立して水素、アルキル、好ましくは無置換アルキル、又はアルコキシ、好ましくは、無置換アルコキシであり; R6、R7は、各々独立して水素、ニトロ、アルキル、好ましくは無置換アルキル、又はアルコキシ、好ましくは無置換アルコキシである。)
式Iaの化合物の好ましい実施態様においては、R6とR7は共に水素である。他の好ましい実施態様においては、R4とR5は共に水素である。式Iaの化合物の更に他の好ましい実施態様においては、R2とR3は共に水素であり、R1はハロ、好ましくはブロモである。
他の実施態様おいては、本発明は、下記式Ibの化合物に関する。
【0019】
【化7】

【0020】
(式中、R1、R2、R3は、各々独立して水素、ハロゲン、アルキル、好ましくは無置換アルキル、又はアルコキシ、好ましくは無置換アルコキシである。)
式Ibの化合物の好ましい実施態様においては、R2とR3は共に水素であり、R1はハロ、好ましくはブロモである。
他の実施態様においては、本発明は、下記式Icの化合物に関する。
【0021】
【化8】

【0022】
(式中、R1は水素、ハロゲン、アルキル、好ましくは無置換アルキル、又はアルコキシ、好ましくは無置換アルコキシである。)
好ましい実施態様においては、R1はハロ、より好ましくはブロモであり、R4、R5は各々独立して水素、アルキル、好ましくは無置換アルキル、又はアルコキシ、好ましくは無置換アルコキシである。式Icの好ましい実施態様においては、R4とR5少なくとも1つが水素である。
他の実施態様においては、本発明は、下記式Idの化合物に関する。
【0023】
【化9】

【0024】
(式中、R1は水素、ハロゲン、アルキル、好ましくは無置換アルキル、又はアルコキシ、好ましくは無置換アルコキシである。)
好ましい実施態様においては、R1はハロ、より好ましくはブロモである。
他の実施態様においては、本発明は、下記式IIの化合物に関する。
【0025】
【化10】

【0026】
(式中、A1、A3、A4は各々独立して水素又はアルキルであり、A2は水素又はヒドロキシルである。)
他の実施態様においては、本発明は、下記式IIIの化合物に関する。
【0027】
【化11】

【0028】
(式中、B1、B2、B3は、各々独立して水素、ヒドロキシ、又はメトキシであり; B4、B5は、各々独立して水素又はアルキルである。)
本発明の好ましい化合物を下記の表1に挙げる。
【0029】
【表1】

【0030】
【表2】



【0031】
最も好ましい化合物は、(5-ブロモキノキサリン-6-イル)-(4,5-ジヒドロ-lH-イミダゾール-2-イル)アミン(一般にブリモニジンと呼ばれる)及びその薬学的に許容しうる塩、特に酒石酸塩である。本発明の他の化合物としては、ナファゾリン、テトラヒドロザリン、オキシメタゾリン、キシロメタゾリン、エピネフリン、ノルエピネフリン、フェニルエフリン及びメトキサミン及びそれらの薬学的に許容しうる塩が含まれる。
本発明の化合物は、α2アドレナリン受容体作動薬であることが当該技術において周知である。このように、哺乳動物、特にヒトの体に導入される場合、化合物は強力な血管収縮作用を有する。
【0032】
1.2 本発明の化合物の合成
本発明の化合物は、例えば、米国特許第3,890,319号(1975年6月17日発行)及び同第4,029,192号(1977年6月14日発行)に概説される一般合成手順を用いて周知の合成手順に従って調製することができ、これらの明細書の記載は本願明細書に含まれるものとする。下記スキームIは、式Iの化合物を合成する一方法を示すものである。
スキームI
【0033】
【化12】

【0034】
本発明の化合物は、適切なキノキサリン15とチオホスゲン20とを反応させて対応するイソチオシアネート25を形成することによって合成することができる。チオホスゲンとの反応は、水溶液において又は希塩酸水溶液において室温で約2時間行うことができる。或はまた、クロロホルムのような水不混和溶媒に溶解したチオホスゲン20をキノキサリン15の塩基性水溶液(炭酸ナトリウム)に添加し、約2時間撹拌することができる。第1変形例においては、イソチオシアネート25は反応混合物から沈殿する。沈殿は、過剰の塩基水溶液で中和することによって完了することができる。沈殿したイソチオシアネート25は、ろ過によって回収され、適切な溶媒、例えば、クロロホルムに溶解して溶液を形成する。その溶液を乾燥(例えば、MgSO4)し、ろ過し、濃縮して、イソチオシアネート25を得る。
イソチオシアネート25を過剰量の適切に置換されたエチレンジアミン30で処理して、対応する3-キノキサリン-6-イルチオウレア35を形成する。イソチオシアネート25は、適切な溶媒、例えば、ジエチルエーテル、ベンゼン、クロロホルム又はジオキサン中で過剰量(例えば、5モル〜1モル)のエチレンジアミン30と反応させる。反応は、室温で約2時間行われる。3-キノキサリン-6-イルチオウレア35が沈殿し、ろ過し、フィルタケークを溶媒で洗浄することによって回収する。
3-キノキサリン-6-イルチオウレア35を環化して本発明の化合物10を得ることは、適切な有機溶媒、例えば、エタノール中でチオウレア35の懸濁液と酸化第二水銀又は酸化第二銅を加熱することによって行われる。酸化第二水銀又は酸化第二銅は、可溶性有機第二水銀のは第二銅塩、例えば、酢酸第二水銀又は酢酸第二銅によって置き換えることができる。反応混合物をろ過して、硫化第二水銀又は硫化第二銅の副生成物を除去し、ろ液を濃縮して化合物10を粗形態で得る。化合物l0を遊離塩基として再結晶するか又は適切な酸と慣用の反応によって酸付加塩に変換する。ある場合においては、酸化第二水銀又は酸化第二銅の非存在下にチオウレア35を適切な有機溶媒、例えば、メタノール中で簡単に還流することによって環化を行うことができる。
キノキサリン15は、周知の合成手順、例えば、J.A. JOULE ET AL., HETEROCYCLIC CHEMISTRY 189-224 (3rd ed. 1995)に開示される手順によって合成され、この文献の記載は本願明細書に含まれるものとする。
【0035】
1.3 本発明の局所製剤
一実施態様においては、本発明の化合物は、薬学的に許容しうる局所担体において皮膚の罹患した領域に送達される。本明細書に用いられる薬学的に許容しうる局所担体は、医薬又は薬剤の局所、真皮、皮内、又は経皮の送達のために皮膚表面に適用することができるあらゆる薬学的に許容しうる製剤である。薬学的に許容しうる局所担体と本発明の化合物の併用は、本発明の局所製剤と呼ばれる。本発明の局所製剤は、当該技術における周知の方法、例えば、REMINCTON: THE SCIENCE AND PRACTICE OF PHARMACY 1577-1591, 1612-1673, 866-885(Alfonso R. Gennaro ed. 19th ed. 1995); Ghosh, T.K.; et al. TRANSDERMAL AND TOPICAL DRUG DELIVERY SYSTEMS (1997)の標準参考文献によって示される方法に従って、本発明の化合物と局所担体とを混合することによって調製され、これらの双方の文献の記載は本願明細書に含まれるものとする。
本発明の化合物の局所送達に用いられる局所担体は、医薬を局所投与するために当該技術において既知であるあらゆる担体、例えば、多価アルコール又は水のような薬学的に許容しうる溶媒; クリーム剤又はローション剤のようなエマルジョン(水中油型か又は油中水型; マイクロエマルジョン; ゲル; 軟膏; リポソーム; 粉末; 及び標準眼科用製剤のような水溶液又は懸濁液であり得るが、これらに限定されない。
【0036】
1.3.1 局所担体としてのエマルジョン、ゲル、及び軟膏
好ましい実施態様においては、本発明の化合物を送達するために用いられる局所担体は、エマルジョン、ゲル、又は軟膏である。クリーム剤、ローション剤のようなエマルジョンは、本発明に用いられる適切な局所製剤である。エマルジョンは、少なくとも2つの不混和相を含む分散系であり、1つの相が直径が0.1μm〜l00μmの範囲にある小滴としてその他の相に分散されている。乳化剤は、典型的には安定性を改善するために含まれる。水が分散相であり油が分散媒である場合、エマルジョンは油中水型エマルジョンと呼ばれる。小滴として水相全体に油が小滴として分散する場合、エマルジョンは、水中油型エマルジョンと呼ばれる。局所担体として用いることができるクリームやローション及びそれらの製剤のようなエマルジョンは、REMINGTON: THE SCIENCE AND PRACTICE OF PHARMACY 282-291 (Alfonso R, Gennaro ed. 19th ed. 1995)に開示され、この文献の記載は本願明細書に含まれるものとする。
他の実施態様においては、本発明の化合物を送達するために用いられる局所担体は、ゲル、例えば、2相ゲル又は単相ゲルである。ゲルは、液体によって相互に浸透した小さな無機粒子又は大きな有機分子の懸濁液からなる半固体系である。ゲル塊が小さな分離した無機粒子の網目を含む場合、2相ゲルとして分類される。単相ゲルは、明らかな境界が分散した巨大分子と液体の間に存在しないように液体全体に一様に分配される有機巨大分子からなる。本発明に用いられる適切なゲルは、REMINGTON: THE SCIENCE AND PRACTICE OF PHARMACY 1517-1518 (Alfonso R. Gennaro ed. 19th ed. 1995)に開示され、この文献の記載は本願明細書に含まれるものとする。本発明において用いられる他の適切なゲルは、米国特許第6,387,383号(2007年5月14日発行); 同第6,517,847号(2003年2月11日発行); 同第6,468,989号(2002年10月22日発行)に開示され、これらの特許のそれぞれの記載は本願明細書に含まれるものとする。
【0037】
用いることができるポリマー増粘剤(ゲル化剤)としては、当業者に既知のもの、例えば、美容業界及び医薬業界においてしばしば用いられる親水性ゲル化剤やヒドロアルコールゲル化剤が挙げられる。好ましくは、親水性ゲル化剤又はヒドロアルコールゲル化剤は、“CARBOPOL(登録商標)”(B.F. Goodrich、クリーブランド、オハイオ)、“HYPAN(登録商標)”(Kingston Technologies、デイトン、ニュージャージー)、“NATROSOL(登録商標)”(Aqualon、ウィルミントン、デラウェア)、“KLUCEL(登録商標)”(Aqualon、ウィルミントン、デラウェア)、又は“STABILEZE(登録商標)”(ISP Technologies、ウェイン、ニュージャージー)を含む。好ましくは、ゲル化剤は、組成物の約0.2%〜約4重量%を含む。
より具体的には、“CARBOPOL(登録商標)”に好ましい組成物の質量パーセント範囲は約0.5%〜約2%であり、“NATROLSOL(登録商標)”と“KLUCEL(登録商標)”に好ましい質量パーセント範囲は約0.5%〜約4%である。“HYPAN(登録商標)”と“STABILEZE(登録商標)”に好ましい組成物の質量パーセント範囲は0.5%〜約4%である。
“CARBOPOL(登録商標)”は、一般名カルボマーを示す多くの架橋アクリル酸ポリマーのうちの1つである。これらのポリマーは、水に溶解し、苛性材料、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエタノールアミン又は他のアミン塩基で中和した際に透明な又はわずかに曇ったゲルを形成する。“KLUCEL(登録商標)”は、水に分散するセルロースポリマーであり、完全に水和した際に均一なゲルを形成する。他の好ましいゲル化ポリマーとしては、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースガム、MVE/MAデカジエンクロスポリマー、PVM/MAコポリマー、又はその組合わせが挙げられる。
他の好ましい実施態様においては、本発明の化合物を送達するために用いられる局所担体は軟膏である。軟膏は、ほとんど水を含有しない油脂性半固体である。好ましくは、軟膏は炭化水素ベース、例えば、ワックス、ワセリン、又はゲル化された鉱油である。本発明に用いられる適切な軟膏は、当該技術において周知であり、REMINGTON: THE SCIENCE AND PRACTICE OF PHARMACY 1585-1591 (Alfonso R. Gennaro ed. 19th ed. 1995)に開示され、この文献の記載は本願明細書に含まれるものとする。
【0038】
1.3.2 本発明の水性局所製剤
他の実施態様においては、本発明の局所製剤に用いられる局所担体は、水溶液又は懸濁液、好ましくは水溶液である。周知の眼科用溶液や懸濁液は、本発明に用いられる適切な局所担体である。本発明に用いられる適切な水性局所製剤は、REMINGTON: THE SCIENCE AND PRACTICE OF PHARMACY 1563-1576 (Alfonso R. Gennaro ed. 19th ed. 1995)に開示され、この文献の記載は本願明細書に含まれるものとする。他の適切な水性局所担体系は、米国特許第5,424,078号(1995年6月13日発行); 5,736,165号(1998年4月7日発行); 同第6,194,415号(2001年2月27日発行); 同第6,248,741号(2001年6月19日発行); 同第6,465,464号(2002年10月15日発行)に開示され、これらのすべての特許の記載は本願明細書に含まれるものとする。
本発明の水性局所製剤のpHは、好ましくは約6〜約8、より好ましくは約6.3〜約6.5の範囲内である。pHを安定化するために、好ましくは緩衝剤の有効量が含まれる。一実施態様においては、緩衝剤は、製剤の約0.05〜約1質量パーセントの量で水性局所製剤に存在する。必要に応じてpHを調整するために酸又は塩基を用いることができる。適切な緩衝剤を下記1.3.3項に示す。
等張化調整剤は、本発明の水性局所製剤に含むことができる。適切な等張化調整剤の例としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、マンニトール、デキストロース、グリセリン、及びプロピレングリコールが挙げられるがこれらに限定されない。等張化剤の量は、広く変動させることができ、製剤の所望の性質に左右される。一実施態様においては、等張化調整剤は、製剤の約0.5〜約0.9質量パーセントの量で水性局所製剤に存在する。
好ましくは、本発明の水性局所製剤は、粘度が約l5cps〜約25cpの範囲である。本発明の水溶液の粘度は、粘度調整剤、例えば、これらに限定されないポリビニルアルコール、ポビドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポロキサマー、カルボキシメチルセルロース、又はヒドロキシエチルセルロースを添加することによって調整することができる。
好ましい実施態様においては、本発明の水性局所製剤は、防腐剤、例えば、塩化ベンザルコニウム又は二酸化塩素、粘度調整剤、例えば、ポリビニルアルコール、及び緩衝系、例えば、クエン酸ナトリウムやクエン酸を含む等張食塩水である。
【0039】
1.3.3 賦形剤
本発明の局所製剤は、保護剤、吸着剤、粘滑剤、皮膚軟化剤、防腐剤、抗酸化剤、保湿剤、緩衝剤、可溶化剤、皮膚浸透剤、及び界面活性剤が挙げられるがこれらに限定されない、薬学的に許容しうる賦形剤、例えば、REMINGTON: THE SC1ENCE AND PRACTICE OF PHARMACY 866-885(Alfonso R. Gennaro ed. 19th ed. 1995; Ghosh, T.K.: et al. TRANSDERMAL AND TOPCAL DRUG DELIVERY SYSTEMS (1997)に示されるものを含むことができ、これらの文献の記載は本願明細書に含まれるものとする。
適切な保護剤及び吸着剤としては、散布剤、ステアリン酸亜鉛、コロジオン、ジメチコーン、シリコーン、炭酸亜鉛、真性アロエゲル及び他のアロエ製品、ビタミンE油、アラトイン、グリセリン、ワセリン、及び酸化亜鉛が挙げられるがこれらに限定されない。
適切な粘滑剤としては、ベンゾイン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びポリビニルアルコールが挙げられるがこれらに限定されない。
適切な皮膚軟化剤としては、動物油脂、植物油脂、ミリスチルアルコール、ミョウバン、及び酢酸アルミニウムが挙げられるがこれらに限定されない。
適切な防腐剤としては、第四級アンモニウム化合物、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、セトリミド、塩化デクアリニウム、及び塩化セチルピリジニウム; 水銀物質、例えば、硝酸フェニル水銀、酢酸フェニル水銀、チメロサール; アルコール物質、例えば、クロロブタノール、フェニルエチルアルコール、ベンジルアルコール; 抗菌エステル、例えば、パラヒドロキシ安息香酸エステル; 及び他の抗菌性物質、例えば、クロルヘキシジン、クロロクレゾール、安息香酸、ポリミキシンが挙げられるがこれらに限定されない。
【0040】
二酸化塩素(ClO2)は、好ましくは、安定化二酸化塩素は、本発明の局所製剤において用いられる好ましい防腐剤である。“安定化二酸化塩素”という用語は、業界において及び当業者によって周知である。安定化二酸化塩素としては、1以上の二酸化塩素前駆物質、例えば、1以上の二酸化塩素含有錯体及び/又は1以上の亜塩素酸塩含有成分及び/又は水性媒体中で分解することができるか又は分解して二酸化塩素を形成する1以上の他の物質が挙げられる。米国特許第5,424,078号(1995年6月13日発行)には、安定化二酸化塩素の形態及びその製造方法が開示され、眼科用水溶液の防腐剤として用いることができ、本発明の局所製剤において有効であり、この明細書の記載は本願明細書に含まれるものとする。ある種の安定化二酸化塩素製品の製造又は生産は、米国特許第3,278,447号に記載され、この明細書の記載は本願明細書に含まれるものとする。本発明の実施に用い得る市販の安定化二酸化塩素は、商標PurogeneTM又はPuriteTMとして販売されている、ノーマン、オクラホマのBioCide International, Inc.の登録商標の安定化二酸化塩素である。他の適切な安定化二酸化塩素製品としては、Rio Linda Chemical Company, Inc.から商標DuraKlorとして販売されているもの及びInternational Dioxide, Inc.から商標Antheium Dioxideとして販売されているものが挙げられる。
適切な抗酸化剤としては、アスコルビン酸及びそのエステル、亜硫酸水素ナトリウム、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、トコフェロール、及びEDTAやクエン酸のようなキレート化剤が挙げられるがこれらに限定されない。
適切な保湿剤としては、グリセリン、ソルビトール、ポリエチレングリコール、尿素、及びプロピレングリコールが挙げられるがこれらに限定されない。
本発明において用いられる適切な緩衝剤としては、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、乳酸緩衝液、及びホウ酸緩衝液が挙げられるがこれらに限定されない。
適切な可溶化剤としては、四級塩化アンモニウム、シクロデキストリン、安息香酸ベンジル、レシチン、及びポリソルベートが挙げられるがこれらに限定されない。
適切な皮膚浸透剤としては、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、オクチルフェニルポリエチレングリコール、オレイン酸、ポリエチレングリコール400、プロピレングリコール、N-デシルメチルスルホキシド、脂肪酸エステル(例えば、イソプロピルミリステート、メチルラウレート、グリセロールモノオレエート、プロピレングリコールモノオレエート); 及びN-メチルピロリドンが挙げられるがこれらに限定されない。
【0041】
1.3.4 医薬添加剤
本発明の局所製剤には、医薬又はそれらの薬学的に許容しうる塩、例えば、ベタメタゾン、ジフロラゾン、アムシノニド、フルオシノロン、モメタゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、又はトリアムシノロンのような局所コルチコステロイド又は他の抗炎症剤; カンファ、メントール、リドカイン、ジブカイン、又はプラモキシンのような局所麻酔薬又は鎮痛剤; シクロピロックス、クロロキシレノール、トリアセチン、スルコナゾール、ナイスタチン、ウンデシレン酸、トルナフテート、ミコニゾール、クロトリマゾール、オキシコナゾール、グリセオフルビン、エコナゾール、ケトコノゾール、又はアンホテリシンBのような抗真菌剤; ムピロシン、エリスロマイシン、クリンダマイシン、ゲンタマイシン、ポリミキシン、バシトラシン、又はスルファジアジン銀のような抗生物質又は消毒剤; 又はヨウ素、ポビジン-ヨウ素、塩化ベンザルコニウム、安息香酸、クロルヘキシジン、ニトロフラジン、過酸化ベンゾイル、過酸化水素、ヘキサクロロフェン、フェノール、レゾルシノール、塩化セチルピリジニウムのような防腐剤を含むことができるがこれらに限定されない。
【0042】
1.4 用量
用量及び投薬回数は、医師によって決定され、本発明の化合物の活性、具体的な局所製剤の特性、治療又は予防される皮膚疾患の同一性と重篤度に左右される。一般に、本発明の化合物は、製剤の全質量の約0.01パーセント〜約5パーセント、好ましくは製剤の全質量の約0.05パーセント〜約1パーセント、より好ましくは約0.1パーセント〜約0.2パーセントの量で本発明の製剤に存在する。
炎症性皮膚疾患(例えば、酒さ)を治療又は予防するために、本発明の局所製剤は、当該技術において周知のあらゆる慣用の方法で罹患した領域に直接局所適用される。例えば、ドロッパ又はアプリケータスティックによって、エアゾールアプリケータ、皮内又は経皮パッチによってミストとして、又は指で罹患した領域に本発明の製剤を簡単に広げることによる。罹患した皮膚領域に適用される本発明の局所製剤の量は、一般的には皮膚表面積の約0.1g/cm2〜約5g/cm2、好ましくは皮膚表面積の0.2g/cm2〜約0.5g/cm2の範囲にある。
典型的には1日1〜4回の適用が治療期間の間、推奨される。
【0043】
1.5 他の皮膚疾患治療と組合わせた本発明の局所製剤の使用
本発明の製剤は、炎症性皮膚疾患(例えば、酒さ)及びそれと関連する症状を更に効果的に治療又は予防するために他の治療及び薬剤と組合わせて用いることができる。好ましい実施態様においては、本発明の局所製剤は、皮膚科的疾患の治療に周知の治療用法及び薬剤、例えば、THE MERCK MANUAL 811-830 (Keryn A.G. Lane et al. eds. l7th ed.2001)に開示されるものと組合わせて用いられ、この文献の記載は本願明細書に含まれるものとする。
他の薬剤又は治療と組合わせて本発明の製剤又は化合物を用いることは、炎症性皮膚疾患(例えば、酒さ)及びそれと関連する症状を治療又は予防するために共に作用することができるような順序と時間間隔で本発明の化合物及び他の薬剤又は治療を患者に投与することを意味する。例えば、本発明の化合物は、同一の製剤又は別個の製剤において他の薬剤と同時に又は別々の時に投与することができる。
経口、口内、直腸、非経口、局所、上皮、経皮、皮下、筋肉内、鼻内、舌下、頬側、硬膜内、眼内、気道内、又は経鼻吸入を含むがこれらに限定されないあらゆる適切な投与経路は、追加の治療又は薬剤を送達するために使うことができる。従って、本発明の製剤は、他の薬剤又は治療と共に又は別の時間に投与することができる。
一実施態様においては、本発明の局所製剤は、抗生物質又はレチノイドの全身系投与と組合わせて用いられ、テトラサイクリン、ミノシン、ミノサイクリン、エリスロマイシン、ドキシサイクリンのような経口投与の抗生物質、及びイソトレチノイン(例えば、アキュテイン又はロアキュテイン)のような経口投与のレチノイドが挙げられるがこれらに限定されない。
他の実施態様においては、本発明の局所製剤は、他の局所治療と組合わせて用いられ、メトロニジゾール、過酸化水素、過酸化ベンゾイル、リポ酸、及びアゼライン酸、及び硫黄製剤; 局所投与の抗生物質、例えば、メトロニダゾール、クリンダマイシン、エリスロマイシン; 局所レチノイド、例えば、トレチノイン、アダパレン、タザロテン; 又は局所ステロイドからなる局所製剤が挙げられるがこれらに限定されない。
他の実施態様においては、本発明の局所製剤は、混合光パルス治療(フォトダーム)、パルスにされた色素レーザ治療又は電気外科療法と組合わせて用いられる。
【0044】
1.6 製品
本発明の他の態様は、ラベルと使用説明書の付いた適切な容器内に本発明の局所製剤を含む製品である。容器は、適切な小オリフィスサイズを有するドロッパ又はチューブ、例えば、あらゆる薬学的に適切な材料でできた延長先端チューブであり得る。
本発明の局所製剤は、プラスチックスクイーズボトル又はチューブに充填し包装することができる。本発明の局所製剤を包装するのに適切な容器-閉鎖系は、例えば、Wheaton Plastic Products、1101ホイートン通り、ミルビル、ニュージャージー08332から市販されている。
好ましくは、説明書、例えば、パンフレット又は包装ラベルは、本発明の製剤と包装される。ラベル説明書には、本発明の局所製剤をどのように投与するかが炎症性皮膚疾患(例えば、酒さ)及びそれと関連する症状を治療又は予防するのに充分な量と時間で説明される。ラベル説明書は、組成物があらゆる具体的な使用に承認され得る前に、米国食品医薬品庁によって製品を市場に出すことが承認されなければならないという点で本発明の重要な態様である。その過程の一部には、最終的に販売される医薬組成物に添えるラベルを示すことが含まれる。好ましくは、ラベルには、用量と投与説明書、局所製剤の組成、臨床薬理学、薬剤耐性、薬物動態、吸収、バイオアべイラビリティ、及び禁忌が含まれる。
【0045】
1.7 実施例
次の実施例は、説明のためだけに示され、いかなる方法でも本発明の範囲を制限するものとして解釈すべきでない。
1.7.1 実施例1: (5-ブロモキノキサリン-6-イル)-(4.5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-2-イル)アミンの合成
蒸留水(150ml)中の6-アミノ-5-ブロモキノキサリンヒドロブロミド(10g)の撹拌溶液にチオホスゲン(3ml)を添加する。その溶液を室温で2時間撹拌し、得られた沈殿をろ過によって集め、水洗し、乾燥して5-ブロモ-6-イソチオシアナトキノキサリンを得る。
5-ブロモ-6-イソチオシアナトキノキサリン(3.5g)をベンゼン(400ml)に直接溶解し、ベンゼン(50ml)中のエチレンジアミン(15g)の充分に撹拌された溶液に滴下する。約2時間の間、下層として油が分離する。ベンゼン上層を注ぎ、油をジエチルエーテルで洗浄し、次に、メタノール(500ml)に溶解する。硫化水素発生が終わるまでメタノール溶液を還流する。メタノール溶液は、約100mlの容積に減圧下で濃縮し、その際黄色の固形物が沈殿する。沈殿をろ過によって集め、メタノールから再結晶して(5-ブロモキノキサリン-6-イル)-(4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-2-イル)アミンを得る: m.p.250-251℃。
1.7.2 実施例2
本発明の水溶液局所製剤は、(5-ブロモキノキサリン-6-イル)−(4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-2-イル)アミン-L-タートレート(酒石酸ブリモニジン(0.15wt%); 防腐剤としてPurite(登録商標)(0.005%)(安定化二酸化塩素); 及び不活性成分: ホウ酸; 塩化カルシウム; 塩化マグネシウム; 塩化カリウム; 精製水; ホウ酸ナトリウム; カルボキシメチルセルロースナトリウム; 塩化ナトリウムをpHを5.6〜6.6に調整する塩酸及び/又は水酸化ナトリウムと共に含む。質量オスモル濃度は、250-350mOsmol/kgの範囲にある。
1.7.3 実施例3
本発明の水溶液局所製剤は、(5-ブロモキノキサリン-6-イル)−(4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-2-イル)アミン-L-タートレート(酒石酸ブリモニジン)(0.15wt%); 防腐剤として塩化ベンザルコニウム(0.005 wt%); 及び不活性成分: ホウ酸; 塩化カルシウム; 塩化マグネシウム; 塩化カリウム; 精製水; ホウ酸ナトリウム; カルボキシメチルセルロースナトリウム; 塩化ナトリウムをpHを5.6〜6.6に調整する塩酸及び/又は水酸化ナトリウムと共に含む。質量オスモル濃度は、250-350mOsmol/kgの範囲にある。
1.7.4 実施例4
本発明の可能なクリーム局所製剤を下記の表に記載する。
【0046】
本発明の可能なクリーム製剤(親水軟膏USP)

【0047】
ステアリルアルコールと白色ワセリンを蒸気浴上で融解させ、約75℃に加温する。以前に水に溶解し75℃に加温した他の成分を添加し、その混合物が凝固するまで撹拌する。撹拌しながら、その混合物を冷却し、濃縮溶液として酒石酸ブリモニジンを添加する。
1.7.5 実施例5
本発明の可能な軟膏局所製剤を下記の表に記載する。
【0048】
本発明の可能な軟膏製剤(親水軟膏USP)

【0049】
ステアリルアルコールと白蝋を共に蒸気浴上で混合し、次に、コレステロールを添加し、完全に溶解するまで撹拌する。白色ワセリンを添加し、混合する。浴から取り出し、その混合物が凝固するまで撹拌する。撹拌を続け、濃縮スラリーとして酒石酸ブリモニジンを添加する。
1.7.6 実施例6
本発明の可能なゲル製剤を下記の表に記載する。
【0050】
本発明の可能なゲル製剤

【0051】
1.7.7 実施例7
本発明の可能なゲル製剤を下記の表に記載する。
【0052】
本発明の可能なゲル製剤

【0053】
成分を共に混合し、その混合物に水酸化ナトリウム水溶液をpH約7に達するまで徐々に添加し、ゲルを形成する。
1.7.8 実施例8
本発明の可能なゲル製剤を下記の表に記載する。
【0054】
本発明の可能なゲル製剤


【0055】
成分を共に混合し、撹拌する。pH約7が達成されるまでトリエタノールアミンを添加する。
1.7.9 実施例9
アルファガンP (等張食塩水中0.15%酒石酸ブリモニジンとpHが6.3〜6.5のクエン酸緩衝液)は、上の実施例2で組成物が開示されたAllergan, Inc.から供給された。試験は、第II相酒さが独立して診断された4人のそれ以外は健康な人で行った(中央の顔面領域の一時的紅斑と初期の末梢血管拡張症を特徴とする)。全ての患者は、石鹸と水でそれらの顔を洗う朝のプロトコールに従った。弱いタオル乾燥と空気乾燥の後に、顔の発赤の領域に弱くこすることによってアルファガンPを投与した。適用領域を、更にまた、いかなる手入れもせずに空気乾燥した。
患者1は、通例の皮膚科治療によって通常は3〜4週間後におさまる経過をたどる彼女の頬全体に周期的な発赤再燃の症状を示す酒さの病歴が10年の59歳の女性である。患者は、アルファガンPを最初の朝に適用した後直ちに改善を示した。全ての発赤が10分以内に消え、彼女の顔には、初日の症状が残っていなかった。毎日の所見は、24時間後の軽度の発赤のみを示した。継続した毎日の使用によって、3日間で酒さによる発赤が完全に排除された。
患者2は、時折重い再燃がある彼女の頬全体の日常的な顔の発赤に罹っている酒さの病歴が8年の54歳の女性である。この患者は、通例の毎日の皮膚科治療を停止させて上記プロトコールを試みた。結果は、10分以内に全ての発赤が同じように直ちに除去された。劇的な改善は、その日ほとんど続いたが、晩に軽度の発赤が再発した。この患者については、発赤が翌日戻った。継続した毎日の使用によって、毎日発赤が改善した。
患者3は、頬と鼻の発赤の症状を示す酒さの病歴が10年を超える57歳の男性である。酒さによるこの患者の発赤は常に存在するが、彼の一般的な赤い顔色と関心の欠如によって、時々のその場限りの治療のために通例の皮膚科治療の毎日の使用をやめている。上記のアルファガンPプロトコールの朝の1回の試験によって、発赤が劇的に終日改善された。
患者4は、彼女のより小さな顔とあごで酒さが診断された40代前半の女性である。彼女の症状には、皮膚のいくらかの肥厚が含まれる。プロトコールを試みた際に、発赤は著しく減少したが、完全には排除されなかった。質的に、減少は80%未満の発赤と記載された。皮膚肥厚減少の追加の所見が報告された。
これらの試験は、0.15%の酒石酸ブリモニジンが毎朝のプロトコールにおいて用いられる場合、酒さによる発赤を劇的に排除又は減少させることを示す。酒さ再燃の停止が著しく促進される有効な治療であることがわかる。更に、慢性酒さ発赤に有効な毎日の治療であることがわかる。
【0056】
1.7.10 実施例l0
オキシメタゾリンの使用
オキシメタゾリン溶液(Afrin(登録商標)、0.05%溶液、Schering-Plough HealthCare Products) この溶液を綿が先端についた綿棒に塗布し、酒さ誘発紅斑を示す約4cm2の鼻顔面の皮膚に適用した。適用の22分後、紅斑が少なくなることが見られた。
1.7.11 実施例ll
エピネフリンの使用
約0.3mgのエピネフリンを含有するエピネフリン液(Epipen(登録商標)、Dey(登録商標)の商標、L.P.)をガラス容器に入れた。この溶液を綿が先端についた綿棒に塗布し、酒さ誘発紅斑を示す約4cm2の鼻顔面の皮膚に適用した。適用の5分以内に、皮膚の斑入りの白色化が見られた。白色化は、適用面積の外側の皮膚には見られなかった。白色化作用は、約30分後に消え始めた。
1.7.12 実施例12
テトラヒドロゾリン溶液(Visine(登録商標)、0.05%溶液、Pfizer) この溶液を綿が先端についた綿棒に塗布し、酒さ誘発紅斑を示す約4cm2の鼻顔面の皮膚に適用した。目視観察は、この濃度のテトラヒドロゾリンを用いて紅斑減少を示さなかった。
1.7.13 実施例l3
α-アドレナリン作動薬による発赤予防のための試験手順:
多くのα-アドレナリン作動薬について、ニコチン酸メチルによって誘発されるヒト皮膚における紅斑を局所的に抑制する能力を評価した。皮膚に生じた紅斑は、ニコチン酸メチルによる真皮血管系についての血管拡張作用から生じる。このモデルにおいては、ニコチン酸メチルによって前腕に生じる最少紅斑量(MED)について各試験患者を定量する。MEDは、紅斑の区切られた円になる最小量として定義される。MEDは、5つのl9mmヒルトップチャンバを220μlの1、2、3、4、5mmのニコチン酸メチルで飽和させることによって求めた。ヒルトップチャンバを、各試験患者の手掌の前腕に適用し、30秒後に除去し、過剰の液体が皮膚から少ししみ出た。ニコチン酸メチルのMEDは、紅斑の区切られた円になった最少量を求めることによって適用のl0分後に選択した。α-アドレナリン作動薬をアルコールに溶解し、ニコチン酸メチルで攻撃する前に対側の手掌の前腕上の選ばれた部位に30分間適用した(2μl/cm2)。ヒルトップチャンバ(19mm)を、220μlのニコチン酸メチルの決定した用量で飽和して各試験患者のMEDを得た。チャンバを、ベヒクル又は試験化合物で治療した手掌の前腕に適用し、30秒後に除去し、過剰の液体が皮膚から少ししみ出た。ニコチン酸メチルの適用の10分後に試験部位について紅斑を評価した。0〜3の数字で示される段階を用いた。0=なし、0.5=ほとんど認識できない、1.0=軽度、l.5=軽度+(軽度から中度)、2.0=中度、2.5=中度+(中度から重度)、3.O=重度。
試験結果を下記の表に示し、試験化合物の各々が試験患者のニコチン酸メチル誘発発赤(紅斑)の形成を減少させたことが示される。オキシメタゾリンHClとナファゾリンHCl双方によって上記の試験条件に従って3人の患者のうちの2人の発赤が完全に阻止された。
【0057】
ニコチン酸メチル誘発紅斑に関するα-アドレナリン作動薬の影響

【0058】
1.8 定義
本明細書に用いられる“炎症性皮膚疾患”及び“炎症性皮膚科的疾患”という用語は、発赤、潮紅、灼熱、落屑、ざ瘡(あばた、丘疹、膿疱(特ににきびのないとき))、末梢血管拡張症、潰瘍、表面刺激又は痛み、かゆみ、及び/又は炎症の症状を示す皮膚、爪、又は粘膜膜と関連するあらゆる疾患又は医学的症状を意味する。炎症性皮膚科的疾患としては、皮膚炎、例えば、接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、貨幣状皮膚炎、全身性剥脱性皮膚炎、うっ血性皮膚炎、ビダール苔癬; 毛嚢及び皮脂腺の疾患、例えば、ざ瘡、酒さ及び酒さ鼻、口腔周囲の皮膚炎、顎毛部偽性毛包炎; 及び炎症性反応、例えば、薬疹、多形性紅斑、結節性紅斑、環状肉芽腫が挙げられるがこれらに限定されない。好ましい実施態様においては、本発明の局所製剤は、顔の炎症性皮膚科的疾患、例えば、酒さを治療又は予防するために用いられる。
本明細書に用いられる“薬学的に許容しうる塩”という語句は、哺乳動物において局所使用に安全で有効であり且つ所望の生物活性を有する本発明の化合物の塩を意味する。薬学的に許容しうる塩としては、本発明の化合物に存在する酸性基又は塩基性基の塩が含まれる。
薬学的に許容しうる酸付加塩としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素塩、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、パントテン酸塩、重酒石酸塩、アスコルビン酸塩、スクシン酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルカロン酸塩、糖酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩及びパモ酸塩(1,1'-メチレンビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエート))塩が挙げられるがこれらに限定されない。本発明のある種の化合物は、種々のアミノ酸による薬学的に許容しうる塩を形成することができる。適切な塩基塩としては、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、亜鉛、及びジエタノールアミン塩が挙げられるがこれらに限定されない。薬学的に許容しうる塩の総説についてはBERGE ET AL., 66 J. PHARM. SCI. l-l9 (1977)を参照のこと。この文献の記載は本願明細書に含まれるものとする。
【0059】
本明細書に用いられる“薬学的に許容しうる局所製剤”という用語は、本発明の化合物の局所送達のために薬学的に許容しうるあらゆる製剤を意味する。本発明によれば“局所製剤”は、少なくとも本発明の化合物を含む。局所製剤の選択は、治療又は予防すべき症状の種類、存在する本発明の具体的な化合物と他の賦形剤の生理化学的特性、製剤におけるそれらの安定性、利用できる製造装置、及びコストの束縛が挙げられる、いくつかの因子に左右される。
本明細書に用いられる“本発明の化合物の治療的に有効な量”は、炎症性皮膚科的疾患を治療又は予防するのに有効である化合物の最少量を意味する。
本明細書に用いられる“患者”という用語は、本発明の化合物又は局所製剤を投与する又は投与したあらゆる動物、好ましくは哺乳動物を意味する。本明細書に用いられる“哺乳動物”という用語は、あらゆる哺乳動物を包含する。哺乳動物の例としては、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ネコ、イヌ、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、サル、ヒト等、より好ましくはヒトが挙げられるがこれらに限定されない。好ましくは、患者は炎症性皮膚疾患及びそれと関連する症状の治療又は予防を必要としている。
“類似体”という用語は、親化合物と構造的に類似し且つ親化合物と共通した化学的性質又は医薬活性を有することを意味する。類似体としては、同族体、即ち、類似体が連続的に1以上の炭素原子によって親化合物と異なる場合; 位置異性体; 異なる原子による1以上の原子の交換、例えば、酸素、イオウ、又は窒素原子による炭素原子の置換; 及び1以上の官能基の同一性が異なる化合物、例えば、親化合物が1以上の適切な置換基の有無によって、その類似体と異なるが挙げられるがこれらに限定されない。適切な置換基としては、(C1-C8)アルキル; (C1-C8)アルケニル; (C1-C8)アルキニル: アリール; (C2-C5)ヘテロアリール; (C1-C6)ヘテロシクロアルキル; (C3-C7)シクロアルキル; O-(C1-C8)アルキル; O-(C1-C8)アルケニル; O-(C1-C8)アルキニル; O-アリール; CN; OH; オキソ; ハロ、C(O)OH; COハロ; O(CO)ハロ; CF3; N3; NO2、NH2; NH((C1-C8)アルキル); N((C1-C8)アルキル)2; NH(アリール); N(アリール)2N((C1-C8)アルキル)(アリール); (CO)NH2; (CO)NH((C1-C8)アルキル); (CO)N((C1-C8)アルキル)2; (CO)NH(アリール); (CO)N(アリール)2; O(CO)NH2; NHOH; NOH((C1-C8)アルキル); NOH(アリール); O(CO)NH((C1-C8)アルキル); O(CO)N((C1-C8)アルキル)2; O(CO)NH(アリール); O(CO)N(アリール)2; CHO; CO((C1-C8)アルキル); CO(アリール); C(O)O((C1-C8)アルキル); C(O)O(アリール); O(CO)((C1-C8)アルキル); O(CO)(アリール); O(CO)O((C1-C8)アルキル); O(CO)O(アリール); S-(C1-C8)アルキル; S-(C1-C8)アルケニル; S-(C1-C8)アルキニル; S-アリール; S(O)-(C1-C8)アルキル; S(O)-(C1-C8)アルケニル; S(O)-(C1-C8)アルキニル; 及びS(O)-アリール; S(O)2-(C1-C8)アルキル; S(O)2-(C1-C8)アルケニル; S(O)2-(C1-C8)アルキニル; 及びS(O)2-アリールが挙げられるがこれらに限定されない。当業者は、本発明の化合物の安定性及び薬理活性に基づいて適切な置換基を容易に選ぶことができる。
【0060】
“アルキル”という用語は、1価の分枝された又は分枝されていない飽和炭化水素鎖を意味する。アルキル基の例としては、(C1-C3)アルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル及び(C4-C8)アルキル基、例えば、2-メチル-1-プロピル、2-メチル-2-プロピル、2-メチル-1-ブチル、3-メチル-l-ブチル、2-メチル-3-ブチル、2,2-ジメチル-l-プロピル、2-メチルペンチル、3-メチル-1-ペンチル、4-メチル-l-ペンチル、2-メチル-2-ペンチル、3-メチル-2-ペンチル、4-メチル-2-ペンチル、2,2-ジメチル-l-ブチル、3,3-ジメチル-1-ブチル、2-エチルl-ブチル、ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、及びヘキシル、ヘプチル、及びオクチルが挙げられるがこれらに限定されない。アルキル基は、置換されなくても1つ又は2つの適切な結合で置換されてもよい。
“アルケニル”という用語は、その中に1つ以上の二重結合を有する一価の分枝されていない又は分枝された炭化水素鎖を意味する。アルケニル基の二重結合は、結合されなくても他の不飽和基に結合されてもよい。適切なアルケニル基としては、(C2-C8)アルケニル基、例えば、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキシニル、ブタジエニル、ペンタジエニル、ヘキサジエニル、2-エチルヘキシニル、2-プロピル-2-ブテニル、4-(2-メチル-3-ブテン)ペンテニルが挙げられるがこれらに限定されない。アルケニル基は、置換されなくても1つ又は2つの適切な置換基で置換されてもよい。
“アルキニル”という用語は、その中に1つ以上の三重結合を有する一価の分枝されていない又は分枝された炭化水素鎖を意味する。アルキニル基の三重結合は、結合されなくても他の不飽和基に結合されてもよい。適切なアルキニル基としては、(C2-C8)アルキニル基、例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、メチルプロピニル、4-メチル-1-ブチニル、4-プロピル-2-ペンチニル、及び4-ブチル-2-ヘキシニルが挙げられるがこれらに限定されない。アルキニル基は、置換されなくても1つ又は2つの適切な置換基で置換されてもよい。
“アリール”という用語は、炭素原子と水素原子を含む単環式又は多環式芳香族基を意味する。適切なアリール基の例としては、フェニル、トリル、アントラセニル、フルオレニル、インデニル、アズレニル、及びナフチル、並びにベンゾ縮合炭素環式部分、例えば、5,6,7,8-テトラヒドロナフチルが挙げられるがこれらに限定されない。アリール基は、置換されなくても1つ又は2つの適切な置換基で置換されてもよい。好ましくは、アリール基は単環式環であり、ここで、環は、本明細書では“(C6)アリール”と呼ばれる炭素原子6個を含んでいる。
【0061】
“ヘテロアリール”という用語は、炭素原子、水素原子、及び窒素、酸素、及びイオウから独立して選ばれる1つ以上のヘテロ原子、好ましくは1〜3つのヘテロ原子を含む、単環式芳香環又は多環式芳香環を意味する。当業者には周知のように、ヘテロアリール環は、全て炭素の逆の部分より芳香族でない特性を有する。従って、本発明のためのヘテロアリール基は、或る程度の芳香族特性だけを有することを必要とする。ヘテロアリール基の具体例としては、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジル、ピラジル、トリアジニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、(1,2,3)-及び(1,2,4)-トリアゾリル、ピラジニル、ピリミジニル、テトラゾリル、フリル、チエニル、イソキサゾリル、チアゾリル、フェニル、イソキサゾリル、及びオキサゾリルが挙げられるがこれらに限定されない。ヘテロアリール基は、置換されなくても1つ又は2つの適切な置換基で置換されてもよい。好ましくは、ヘテロアリール基は単環式環であり、ここで、環は本明細書で“(C2-C5)ヘテロアリール”と呼ばれる炭素原子2〜5個とヘテロ原子1〜3個を含んでいる。
“シクロアルキル”という用語は、炭素と水素原子を含む非芳香族、単環式又は多環式の環を意味する。シクロアルキル基は、環がそれらの存在によって芳香族にならない限り環内に1つ以上の炭素-炭素二重結合を有することができる。シクロアルキル基の例としては、(C3-C7)シクロアルキル基、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、又は飽和単環テルペン又は飽和二環テルペン、及び(C3-C7)シクロアルケニル基、例えば、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、又はシクロヘプテニル、又は不飽和単環テルペン又は不飽和二環状テルペンが挙げられるがこれらに限定されない。シクロアルキル基は、置換されなくても1つ又は2つの適切な置換基で置換されてもよい。好ましくは、シクロアルキル基は、単環式環又は二環式環である。
“ヘテロシクロアルキル”という用語は、炭素原子、水素原子及び窒素、酸素、及びイオウより選ばれたヘテロ原子を少なくとも1個、好ましくはヘテロ原子l〜4個を含む非芳香族単環式又は多環式の環を意味する。ヘテロシクロアルキル基は、環がそれらの存在によって芳香族にならない限り、環内に1つ以上の炭素-炭素二重結合又は炭素-ヘテロ原子二重結合を有することができる。ヘテロシクロアルキル基の例としては、アジリジニル、ピロリジニル、ピロリジノ、ピペリジニル、ピペリジノ、ピペラジニル、ピペラジノ、モルホリニル、モルホリノ、チオモルホリニル、チオモルホリノ、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフラニル、テトラヒドロピラニル、及びピラニルが挙げられる。ヘテロシクロアルキル基は、置換されなくても1つ又は2つの適切な置換基で置換されてもよい。
好ましくは、ヘテロシクロアルキル基は、単環式又は二環式の環、より好ましくは単環式環であり、ここで、環は、本明細書で(C1-C6)ヘテロシクロアルキルと呼ばれる炭素原子2〜6個とヘテロ原子l〜3個を含んでいる。
【0062】
“ハロゲン”という用語は、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素を意味する。対応して、“ハロ”という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨードを意味する。
“誘導体”という用語は、上で定義されるように、その親化合物から1つ以上の化学反応において合成される類似体を意味する。
本明細書に用いられる“水和物”という用語は、非共有分子間力によってそれに結合される化学量論量又は非化学量論量の水を更に含む、本発明の化合物、又はその薬学的に許容しうる塩を意味する。
一実施態様においては、“治療”又は“治療する”は、疾患又は障害、又はその少なくとも1つの識別可能な症状の改善、予防、又は逆転を意味する。例えば、皮膚の発赤を少なくすることによって炎症性皮膚疾患(例えば、酒さ)を治療する。他の実施態様においては、“治療”又は“治療する”は、哺乳動物において又は哺乳動物によって必ずしも識別可能でない、治療される疾患又は障害に関連する少なくとも1つの測定可能な物理的パラメータの改善、予防又は逆転を意味する。更に他の実施態様においては、“治療”又は“治療する”は、物理的に、例えば、識別可能な症状の安定化、生理的に、例えば、物理的パラメータの安定化、又は双方に、疾患又は障害の進行を阻止又は減速させることを意味する。更に他の実施態様においては、“治療”又は“治療する”は、疾患又は障害の開始を遅延させることを意味する。
ある種の実施態様においては、本発明の化合物は、予防処置として投与される。本明細書に用いられる“予防”又は“予防する”は、示された疾患又は障害を獲得するリスクの減少を意味する。実施態様の好ましい方法においては、本発明の化合物は、障害の症状がないか又は最小限の場合であっても酒さに対する素因を有する患者に予防処置として投与される。
本明細書に用いられる“カルボマー”は、分散性であるが水に可溶性でない種々のポリマー酸のためのUSPの呼称である。酸分散液が塩基によって中和される場合、透明で安定なゲルが形成される。カルボマー934Pは、生理的に不活性であり、一次刺激原又は感作物質でない。他のカルボマーとしては、9l0、940、94l、l342が挙げられる。
上記の背景、要約、図面、詳細な説明からみて、ある種の実施態様においては、本発明は、酒さ又はその症状を治療又は予防する方法であって、このような治療又は予防を必要としている患者の皮膚に下記式の化合物を局所投与する前記方法を含むことは明らかである。
【0063】
【化13】

【0064】
(式中、R1、R2、R3は、各々独立して水素、ハロゲン、アルキル、又はアルコキシであり; R4、R5は、各々独立して水素、アルキル、又はアルコキシであり; R6、R7は、各々独立して水素、ニトロ、アルキル、又はアルコキシであり;
A1、A3、A4は、各々独立して水素又はアルキルであり; A2は、独立して水素又はヒドロキシであり;
B1、B2、B3は、各々独立して水素、ヒドロキシ、又はアルコキシであり; B4、B5は、各々独立して水素又はアルキルである。)
本明細書に言及した全ての引用文献(例えば、科学雑誌、特許、他の参考資料)は、個々の各引用文献が詳しく且つ個々に含まれるものとすることが示されるかのように同じ程度まで本願明細書に含まれるものとする。
当業者は、添付の特許請求の範囲の真意又は範囲から逸脱することなく、本発明の上記の実施態様に多くの変更及び修正をすることができる。従って、全てのこのような変更及び修正は、添付の特許請求の範囲の範囲内である。
【0065】
また、本発明は以下に関する。
[1]炎症性皮膚疾患及びそれと関連する症状を治療又は予防する方法であって、
α2アドレナリン受容体作動薬及びその薬学的に許容しうる塩の少なくとも1つの治療的に有効な量; 及び
薬学的に許容しうる担体
を含む組成物をこのような治療又は予防を必要としている患者の皮膚に局所投与することを含み、ここで、炎症性皮膚疾患が酒さでない、前記方法。
[2]α2アドレナリン受容体作動薬及びその薬学的に許容しうる塩の少なくとも1つが下記に示される化合物からなる群より選ばれる、[1]記載の方法。
【化14】

(式中、R1、R2、R3は、各々独立して水素、ハロゲン、アルキル、又はアルコキシであり; R4、R5は、各々独立して水素、アルキル、又はアルコキシであり; R6、R7は、各々独立して水素、ニトロ、アルキル、又はアルコキシであり;
A1、A3、A4は、各々独立して水素又はアルキルであり; A2は、独立して水素又はヒドロキシであり;
B1、B2、B3は、各々独立して水素、ヒドロキシ、又はアルコキシであり; B4、B5は、各々独立して水素又はアルキルである。)
[3]化合物が、ブリモニジン、ナファゾリン、テトラヒドロザリン、オキシメタゾリン、キシロメタゾリン、エピネフリン、ノルエピネフリン、フェニルエフリン、及びメトキサミンからなる群より選ばれる、[2]記載の方法。
[4]α2アドレナリン受容体作動薬及びその薬学的に許容しうる塩の少なくとも1つが、可逆的α2アドレナリン受容体作動薬又はその薬学的に許容しうる塩である、[1]記載の方法。
[5]α2アドレナリン受容体作動薬及びその薬学的に許容しうる塩の少なくとも1つが、患者の皮膚の小動脈又は細動脈を通る血流を減少させるのに充分な量で投与される、[1]記載の方法。
[6]薬学的に許容しうる担体が、スプレー剤、ミスト剤、エアゾール剤、液剤、ローション剤、ゲル剤、クリーム剤、軟膏、パスタ剤、膏薬、乳剤、及び懸濁液剤からなる群より選ばれる、[1]記載の方法。
[7]組成物が患者の皮膚に局所的に作用する、[1]記載の方法。
[8]炎症性皮膚科的疾患の症状を治療又は予防するのに適した局所組成物であって、
α2アドレナリン受容体作動薬及びその薬学的に許容しうる塩の少なくとも1つ; 及び
薬学的に許容しうる担体
を含み、ここで、炎症性皮膚科的疾患が酒さでない、前記局所組成物。
[9]薬学的に許容しうる担体が、スプレー剤、ミスト剤、エアゾール剤、液剤、ローション剤、ゲル剤、クリーム剤、軟膏、パスタ剤、膏薬、乳剤、及び懸濁液剤からなる群より選ばれる、[8]記載の局所組成物
[10]α2アドレナリン受容体作動薬及びその薬学的に許容しうる塩の少なくとも1つが下記に示される化合物からなる群より選ばれる、[8]記載の局所組成物。
【化15】

(式中、R1、R2、R3は、各々独立して水素、ハロゲン、アルキル、又はアルコキシであり; R4、R5は、各々独立して水素、アルキル、又はアルコキシであり; R6、R7は、各々独立して水素、ニトロ、アルキル、又はアルコキシであり;
A1、A3、A4は、各々独立して水素又はアルキルであり; A2は、独立して水素又はヒドロキシであり;
B1、B2、B3は、各々独立して水素、ヒドロキシ、又はアルコキシであり; B4、B5は、各々独立して水素又はアルキルである。)
[11]α2アドレナリン受容体作動薬及びその薬学的に許容しうる塩の少なくとも1つが、ブリモニジン、ナファゾリン、テトラヒドロザリン、オキシメタゾリン、キシロメタゾリン、エピネフリン、ノルエピネフリン、フェニルエフリン、及びメトキサミンからなる群より選ばれる、[8]記載の局所組成物。
[12]α2アドレナリン受容体作動薬及びその薬学的に許容しうる塩の少なくとも1つが、約0.01〜5質量パーセントの範囲の量で存在する、[8]記載の局所組成物。
[13]組成物のpH値が約5〜8の範囲にある、[8]記載の局所組成物。
[14]薬学的に許容しうる担体が水;及びカルボマー、グリセリンポリアクリレート、及びそれらの混合物からなる群より選ばれる薬学的に許容しうるゲル化剤の水-ゲル化量を含む水性ゲルであり、局所組成物が生理的に許容しうるpHを有する、[9]記載の局所組成物。
[15]α2アドレナリン受容体作動薬及びその薬学的に許容しうる塩の少なくとも1つが、約0.01〜5質量パーセントの範囲の量で存在する、[14]記載の局所組成物。
[16]組成物のpH値が約5〜8の範囲にある、[14]記載の局所組成物。
[17]防腐剤を更に含む、[14]記載の局所組成物。
[18]局所麻酔剤を更に含む、[14]記載の局所組成物。
[19]皮膚保湿剤を更に含む、[14]記載の局所組成物。
[20]α2アドレナリン受容体作動薬及びその薬学的に許容しうる塩の少なくとも1つ及び薬学的に許容しうる担体を含む酒さ症状を治療又は予防するのに適した局所組成物のための包装であって、容器及び局所組成物の使用のための説明書を含む、前記包装。
[21]薬学的に許容しうる担体が、ステアリン酸、ステアリルアルコール、セチルアルコール、グリセリン、及び水を含むクリーム及び軟膏の少なくとも1つである、[9]記載の局所組成物。
[22]α2アドレナリン受容体作動薬及びその薬学的に許容しうる塩の少なくとも1つが約0.01〜5質量パーセントの範囲の量で存在する、[21]記載の局所組成物。
[23]組成物のpH値が約5〜8の範囲にある、[21]記載の局所組成物。
[24]防腐剤を更に含む、[21]記載の局所組成物。
[25]局所麻酔剤を更に含む、[21]記載の局所組成物。
[26]皮膚保湿剤を更に含む、[21]記載の局所組成物。
[27]α2アドレナリン受容体作動薬及びその薬学的に許容しうる塩の少なくとも1つが、適用される患者の皮膚の小動脈又は細動脈を通る血流を減少させるのに充分な濃度で供給される、[8]記載の局所組成物。
[28]組成物が患者の皮膚に局所的に作用する、[8]記載の局所組成物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紅斑を治療又は予防するための局所組成物であって、
ブリモニジン、オキシメタゾリン、エピネフリン及びその薬学的に許容しうる塩からなる群より選ばれる化合物又はその組み合わせ; 及び
薬学的に許容しうる担体
を含む、前記局所組成物。

【公開番号】特開2012−72176(P2012−72176A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−263425(P2011−263425)
【出願日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【分割の表示】特願2007−515279(P2007−515279)の分割
【原出願日】平成17年5月25日(2005.5.25)
【出願人】(506392458)サンズローザ ファーマシューティカル ディヴェロップメント インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】