紐状物製造装置
【課題】本発明の目的は、伸縮性(外径変化)が抑制された紐状物を、生産性良く製造できる装置を提供する。
【解決手段】糸11を丸編みして編紐12を編成する丸編機2と、丸編機2から排出された編紐12が通過する貫通孔を有し、該貫通孔内の編紐12を加熱処理する熱処理金型4と、前記貫通孔を通過した編紐12を引取る引取機5と、丸編機2の製紐速度と、前記貫通孔に導入される編紐12の導入速度との差を検出する検出手段(センサー6a、6b)と、該検出手段における検出結果に基づいて丸編機2における製紐速度を制御するフィードバック制御手段を備えたことを特徴とする紐状物製造装置。
【解決手段】糸11を丸編みして編紐12を編成する丸編機2と、丸編機2から排出された編紐12が通過する貫通孔を有し、該貫通孔内の編紐12を加熱処理する熱処理金型4と、前記貫通孔を通過した編紐12を引取る引取機5と、丸編機2の製紐速度と、前記貫通孔に導入される編紐12の導入速度との差を検出する検出手段(センサー6a、6b)と、該検出手段における検出結果に基づいて丸編機2における製紐速度を制御するフィードバック制御手段を備えたことを特徴とする紐状物製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば中空状多孔質膜の支持体等の紐状物を製造するのに好適な紐状物製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境汚染に対する関心が高まり、また水質に関する規制が強化されていることから、分離の完全性、コンパクト性などに優れた濾過膜を用いた水処理が注目を集めている。該水処理の濾過膜としては、例えば、中空状多孔質膜が用いられている。該中空状多孔質膜には、優れた分離特性や透過性能のみならず、高い機械物性も必要とされる。機械特性に優れた中空多孔質膜としては、例えば図2に示すような、糸を丸打ちした円筒状組紐からなる支持体の外周面に、多孔質膜層を設けた中空状多孔質膜が知られている。該中空状多孔質膜は、支持体を環状ノズルに連続的に通す際に、環状ノズルから製膜原液を吐出し、支持体の外周面に製膜原液を塗布した後、製膜原液が塗布された支持体を凝固浴槽内に通し、凝固浴層内の凝固液で製膜原液を凝固させることにより製造される。
【0003】
支持体としての円筒状組紐は、通常、製紐機により製造される。製紐機においては、平板上に立設した多数のボビンから各糸を引き出し、各糸を相互に交差させて組むとともに、各ボビンを所定の経路に沿って移動させることにより糸の位置関係を所定のパターンで変化させて組紐が製造される。
【0004】
しかしながら、該製紐機は、小分けした多数のボビンが複雑な動きをしているため、製紐速度を上げることが難しく、生産性が低いという問題がある。通常、製紐機による円筒状組紐の製紐速度は10〜20m/hr程度である。生産性が低いと、支持体(円筒状組紐)のコストが上昇し、その結果、該支持体を用いる中空状多孔質膜のコスト上昇にもつながる。
また、製紐機によって製造された組紐は、構成する全ての糸が斜めに組まれ、また、製紐のためにボビンが複雑な動きをするため、製紐過程で付加された張力等の残留歪を有する。該歪を除去する方法として、製紐機で製造された組紐を籠などに貯留し、熱水、乾燥炉等で熱処理し、その後、巻き取る方法が挙げられる。従って、原糸からボビンへの糸の小分け工程、製紐工程、熱処理工程、巻き取り工程という繁雑な工程を経なければならず、製紐機の紐を製造する速度が低いことも伴って、生産性向上の障害となっている。
下記特許文献1には、製紐工程および上記熱処理工程を連続して行う製紐機が提案されている。しかし、該製紐機を用いたとしても、製造工程の簡素化は可能であるが、製紐速度自体が向上するわけではない。
【0005】
また、組紐は、通常、伸縮性を有しており、張力が付与されると伸びて、その外径が小さくなる。例えば円筒状組紐からなる支持体に製膜原液を塗布する際に、支持体にかかる張力が変動すると、支持体の外径が変化する。その結果、環状ノズルの管路の内周面と支持体との間隙が変化するため、環状ノズルの内径および製膜原液の吐出量が一定の場合、製膜原液を均一な厚さで塗布できない。また、凝固工程において、製膜原液が完全に凝固する前に支持体が伸びた場合、多孔質膜層にピンホール等の膜構造の欠陥が発生するおそれがある。
【0006】
下記特許文献2および特許文献3には、貫通孔を有する部材の前後に供給ロールと引取ロールを配置し、該貫通孔に合成繊維製の紐を通過させながら繊維の融点以上に加熱して紐の表面を光沢加工する装置が開示されている。
しかしながら、該装置は、紐を製造した後の後工程として表面を溶融加工(光沢加工)する装置であり、紐の製造工程の一部として加熱処理を行う装置ではない。
また特許文献2には、紐の圧延・延伸装置に、光沢加工のための加熱処理装置を組み込んだ実施形態が記載されているが、組紐を製造する製紐機と加熱処理装置を連続的に組み合わせた形態は記載されていない。仮に組紐の製紐機と加熱処理装置を連続して設けたとしても、製造速度は製紐機の製紐速度に依存するため、上述したように生産性が低いことが問題となる。
【特許文献1】実開平6−37384号公報。
【特許文献2】特開2002−004142号公報。
【特許文献3】特開2003−013348号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、伸縮性(外径変化)が抑制された紐状物を、生産性良く製造できる装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、丸編により円筒状編紐を編成することにより、円筒状組紐と同等の機械特性(耐圧強度、引張り強度等)を有するうえ、組紐よりも生産性が良い紐状物が得られること、また該円筒状編紐を加熱された金型に通して材料の溶融温度未満の温度で加熱処理を施すことにより伸縮性(外径変化)が抑えられた紐状物が得られることを見出し、これに基づいた中空状多孔質膜用支持体の製造方法を既に特許出願している(特開2008−114180号公報)。
そして本発明者等は、かかる製造方法を実施するのに好適な装置についてさらに鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明の紐状物製造装置は、糸を丸編みして編紐を編成する丸編機と、前記丸編機から排出された編紐が通過する貫通孔を有し、該貫通孔内の編紐を加熱処理する熱処理金型と、
前記貫通孔を通過した編紐を引取る引取機と、前記丸編機の製紐速度と、前記貫通孔に導入される編紐の導入速度との差を検出する検出手段と、該検出手段における検出結果に基づいて前記丸編機における製紐速度を制御するフィードバック制御手段を備えたことを特徴とする。
前記丸編機から排出された後、前記熱処理金型に導入される前の編紐に張力を付加する張力付加手段を設けることが好ましい。
前記張力付加手段として、上下動可能なフリーガイドロールを備えたダンサーロール機構を設けることが好ましい。
前記検出手段として、前記フリーガイドロールの位置の変化量を検出する手段を設けることが好ましい。
前記貫通孔に導入される編紐の導入速度を制御する予備引取機を設けることが好ましい。
前記熱処理金型で加熱処理された編紐から発生する油煙の回収手段を備えることが好ましい。
前記油煙の回収手段として、前記熱処理金型を通過した編紐が通過する貫通孔を有する排煙室と、該排煙室内を排気する排気ポンプと、前記排気ポンプに接続された油分離フィルターとを有する油煙回収装置を備えており、前記排煙室が前記熱処理金型に接続されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の紐状物製造装置によれば、伸縮性(外径変化)が抑制された紐状物を、生産性よく製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の装置で製造される紐状物の実施形態として、中空状多孔質膜用支持体を例に挙げて説明するが、本発明の装置は、他の用途に用いられる紐状物の製造にも適用可能である。
【0012】
<中空状多孔質膜用支持体>
図1は、本発明の装置で製造される中空状多孔質膜用支持体(以下、支持体と記す。)の一例を示す側面図である。支持体13は、糸を丸編みした円筒状編紐12に所定の熱処理が施されたものである。
【0013】
丸編みとは、丸編機を用いて筒状のよこメリヤス生地を編成することであり、円筒状編紐12は、糸を湾曲させて螺旋状に伸びる連続したループを形成し、これらループを前後左右に互いに関係させたものである。円筒状編紐12は、図2に示すような、従来の円筒状組紐19とは異なるものである。
糸の形態としては、マルチフィラメント、モノフィラメント、紡績糸等が挙げられる。
糸の材料としては、合成繊維、半合成繊維、再生繊維、天然繊維が挙げられる。糸は、複数種類の繊維を組み合わせたものであってもよい。
【0014】
合成繊維としては、ナイロン6、ナイロン66、芳香族ポリアミド等のポリアミド系繊維;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリグリコール酸等のポリエステル系繊維;ポリアクリロニトリル等のアクリル系繊維;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維;ポリビニルアルコール系繊維;ポリ塩化ビニリデン系繊維;ポリ塩化ビニル系繊維:ポリウレタン系繊維;フェノール樹脂系繊維;ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂系繊維;ポリアルキレンパラオキシベンゾエート系繊維等が挙げられる。
【0015】
半合成繊維の例としては、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、キチン、キトサン等を原料としたセルロース誘導体系繊維;プロミックスと呼称される蛋白質系繊維等が挙げられる。
再生繊維の例としては、ビスコース法、銅‐アンモニア法、有機溶剤法により得られるセルロース系再生繊維(レーヨン、キュプラ、ポリノジック等。)が挙げられる。
天然繊維の例としては、亜麻、黄麻等が挙げられる。
【0016】
糸の材料としては、耐薬品性に優れる点から、ポリエステル系繊維、アクリル系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリアミド系繊維、ポリオレフィン系繊維が好ましく、ポリエステル系繊維またはアクリル系繊維が特に好ましい。
糸としては、後述の(b)工程の熱処理による効果が発揮されやすい点から、合成繊維のマルチフィラメントが好ましい。
【0017】
支持体13の外径は、中空状多孔質膜の外径によって決まる。中空状多孔質膜の外径は、中空状多孔質膜を束ねた膜モジュールにおける必要濾過面積から、1.5〜6.0mmが好ましく、2.0〜3.5mmがより好ましい。従って、支持体13の外径は、1.0〜5.0mmが好ましく、1.8〜3.0mmがより好ましい。
【0018】
糸の繊度は、中空状多孔質膜の耐久性および、多孔質膜層との接着性を向上させる点から、200〜1000dtexが好ましい。糸の繊度が200dtex以上であれば、中空状多孔質膜のつぶれ圧が向上する。糸の繊度が1000dtex以下であれば、内径縮小化による通水性の低下が抑えられる。
【0019】
円筒状編紐12の編目の数は、1周あたり5以上が好ましい。編目の数は、後述の丸編機のメリヤス針(編針)の数と同じである。編目の数が5以上であれば、円筒状編紐12の中空部の断面形状が円形となり、内径縮小化による通水性の低下が抑えられる。
編目の数の上限は、円筒状編紐12の外径、糸の繊度、編目の大きさに等により決まる。編目が大きい場合、製膜原液を支持体13に塗布する際に、製膜原液が支持体13の内部に流入して中空部が閉塞するおそれがある。従って、同じ外径の円筒状編紐12を製造する場合、糸の繊度が高いと編目の数は少なく、繊度が低いと編目の数は多く設定する必要がある。編目の数の上限は、円筒状編紐12の外径が5.0mm、糸の繊度が200dtexのとき最大となり、その数は28である。
【0020】
[第1の実施形態]
次に、図3、図4を参照しながら、本発明の紐状物の製造装置の第1の実施形態について説明する。なお、図3中の(a)は装置の正面図、(b)は左側面図、(c)は上面図である(以下、同様。)。図4は熱処理金型の両端面および長さ方向に沿う断面を示す図である。
本実施形態の装置は、各構成要素が本体フレーム1内に配置されている。
本実施形態の装置には、図示しないボビンスタンドのボビンから供給される糸11を丸編みして円筒状編紐(以下、単に編紐ということもある。)12を編成して排出する丸編機2と、丸編機2から排出された編紐12が通過する貫通孔14を有し、該貫通孔14内の編紐12を加熱処理するとともに所望の外径に成型する熱処理金型4と、該熱処理金型4を通過した支持体13(加熱処理された円筒状編紐12)を引取る引取機5が設けられている。
【0021】
丸編機2は編成した編紐12を下方へ排出するように構成されている。熱処理金型4は、貫通孔14の長さ方向が垂直方向で、下側が入口14a、上側が出口14bとなるように設けられている。引取機5は熱処理金型4の上方に設けられている。
本実施形態において、丸編機2から排出された編紐12は、自重により垂下された状態で下方に向かって進行し、丸編機2および熱処理金型4の下方でUターンするように折り返され、引取機5で引取られることによって上方に向かって進行し、熱処理金型4の貫通孔14内に入口14aから導入され、出口14bから排出されるようになっている。
【0022】
丸編機2および熱処理金型4の下方には円筒状編紐12の折り返し位置Pを検出するためのセンサー6aおよびセンサー6bが設けられている。センサー6aはセンサー6bよりも上方に設けられている。また、装置前面には各構成要素を操作する操作盤7が、背面には電気機器部品を納めた制御盤8が配置されている。さらに、丸編機2の上方には、丸編機2に供給される糸11に一定の張力を付与するヤーンテンサー9および、糸切れを検知して装置の運転を停止する糸切れセンサー10が配置されている。
【0023】
丸編機2は、回転可能な円筒状のシリンダと、該シリンダの内側に配置された回転しないスピンドルと、該スピンドルの外円周上に配置された複数のメリヤス針(編針)とを有して構成される。そして、駆動モーター3からVベルトにより駆動される。円筒状編紐12の外径、内径、編目の数および大きさは、メリヤス針の数、メリヤス針を配置するスピンドルの円周直径、糸の繊度等により決まる。本実施形態におけるスピンドルの円周直径は、3〜12mmが好ましく、4〜8mmがより好ましい。メリヤス針の数は6〜14本が好ましく、8〜12本がより好ましい。なお、駆動モーター3としては、高回転および、後述のフィードバック制御に対応するため、ブラシレスDCモーターや、ACサーボモーターを使用することが好ましい。
【0024】
熱処理金型4は、金属製のブロック、プレート等からなる本体と、加熱手段とを有して構成される。加熱手段としては、バンドヒーター、アルミ鋳込みヒーター、カートリッジヒーター等が挙げられる。加熱温度は処理する糸によって変わるが、およそ150℃〜260℃の範囲である。温度の制御方法は、PID制御、ON/OFF制御のいずれも用いることができる。
熱処理金型4の本体には貫通孔14が形成されている。該貫通孔14の入口14aにおける内径Dは、加熱処理前の円筒状編紐12の外径D’と等しいか、それより若干大きい。
貫通孔14の出口14bにおける内径dは、加熱処理後の支持体13の外径d’と等しい。
貫通孔14の出口14bから入口14a側に向かう長さLの部分は、貫通孔14の内径がdで一定であるストレート部14cとなっている。
入口14aにおける内径Dは、出口14bにおける内径d以上であることが好ましい。すなわち、外径が均一な支持体13を得るには、円筒状編紐12を均一に加熱する必要がある。したがって、貫通孔14の内周面と円筒状編紐12の表面とが常に接触するように、D≧dとする。
ストレート部14cの長さLと出口14bにおける内径dとの比(L/d)は、円筒状編紐12を均一に加熱する点から、1以上が好ましい。
貫通孔14は、円筒状編紐12の引っ掛かりを回避する点から、ストレート部14cと入口14aとの間では、貫通孔14の内径が、入口14aからストレート部14cに向かって漸次縮径しており、内周面がテーパー状となっていることが好ましい。
ストレート部14cと入口14aとの間の長さL1は、長すぎるとテーパー形状の加工が困難であるとともに、加熱手段となるヒーターの容量が増大し、短すぎると円筒状編紐12を十分に加熱できないため、これらの不都合が生じないようにL1を設定することが好ましい。例えば100〜400mmが好ましく、200〜300mmがより好ましい。
【0025】
引取機5としては、ネルソンロール、ニップロール、カレンダーロール等が挙げられる。ニップロールは支持体13をつぶす恐れがある。つぶれると中空部が閉塞し、中空状膜多孔質膜用の支持体としての用を成さない。従って、引取機5にはネルソンロールまたはカレンダーロールが好ましい。これらのロールを用いて支持体13を引取るには、ロールと支持体13との接触面積をある程度大きくする必要がある。カレンダーロールの場合、支持体13との接触面積を確保するためにロール本数を多くする必要がある。ネルソンロールは、2本のロールに支持体13を複数回巻き付けることで接触面積を確保できる点でより好ましい。
【0026】
ネルソンロールは、一般的に図3(c)に示す如く、駆動ロール5aと該駆動ロール5aに対して一定の傾斜角度θをもって取り付けられたフリーロール5bとからなる。これら2本のロールに支持体13を「8」の字状に複数回巻き付けることにより支持体13を引取ることが可能となる。また、ロール表面には、支持体13のスリップを抑えるため、ゴムがライニングされている。ゴムの材質は特に限定するものではなく、ウレタンゴム、ネオプレーンゴム、EPDMゴム、バイトンゴム等が挙げられる。ゴムの硬度は、硬いと支持体13がスリップしやすく、柔らかいと磨耗しやすい。本発明者らが検討した結果、ゴムの硬度はショアA40度〜70度の範囲が好適であり、より好ましくはショアA45度〜60度の範囲である。
【0027】
センサー6aおよびセンサー6bは、光電センサー等の検出物体に接触せずに検出が行なえるセンサーであればよく、公知のセンサーを用いることができる。光電センサーは、可視光線、赤外線などの“光”を、投光部から信号光として発射し、検出物体によって反射する光を受光部で検出したり、遮光される光量の変化を受光部で検出し出力信号を得る。
【0028】
次に、本装置による支持体13の製造工程を説明する。
支持体13は、下記(a)工程、および下記(b)工程により製造される。
(a)糸11を丸編みして円筒状編紐12を編成する工程。
(b)前記円筒状編紐12を、熱処理金型4を通過させて加熱処理する工程。
【0029】
(a)工程
円筒状編紐12は、丸編機2を用いて編成される。
丸編機2の製紐速度は円筒状編紐12の形状により若干変わるが、シリンダの回転数を変化させることによって制御できる。本発明における丸編機2の製紐速度とは、丸編機2から排出される編紐12の排出速度を意味する。
シリンダの回転数は引取機5の引取り速度に応じて設定される。引取り速度が6〜200m/hrの範囲の場合、シリンダ回転数はおよそ100〜4000rpmであることが好ましい。
【0030】
(b)工程
円筒状編紐12は、その構造上、伸縮性を有しているが、加熱処理を施すことによって、円筒状編紐12の伸縮性(外径変化)を抑制することができる。
円筒状編紐12は、熱処理金型4を通過するとき、材料として用いた糸11の溶融温度未満の温度で加熱処理される。これにより円筒状編紐12は熱収縮を起こし、伸縮性が抑制されるとともに、編目が緻密になる。さらに、出口14b近傍のストレート部14cにおいて円筒状編紐12の外径が規制されて、所望の外径d’に成型される。
なお、熱処理金型4において、円筒状編紐12は糸の溶融温度未満で処理されるため、特許文献2および特許文献3の光沢紐のように、紐の表面が糸の溶融温度以上で加熱されて溶融したものとは異なる。支持体13の表面が溶融すると、編目が閉塞し、処理水が通過できなくなり、濾過膜としての性能を発揮できない。
【0031】
本実施形態のように、丸編機2の後段に熱処理金型4を連続的に設ける場合、丸編機2から排出されて熱処理金型4に導入されるまでの編紐12の長さの変動が少ないことが好ましい。また丸編機2から排出される編紐12、および熱処理金型4内を通過する編紐12に加わる張力の変動が少ないことが好ましい。
しかしながら、(b)工程における熱処理温度によっては円筒状編紐12の収縮率が変動することがあり、該収縮率が変動すると、引取機5の引取り速度が一定であっても熱処理金型4の貫通孔14に導入される編紐12の導入速度が変動する。また長時間の連続運転を行うと、丸編機2のメリヤス針の磨耗等により編目の大きさが変わるなど、丸編機2における製紐速度も一定ではない。
貫通孔14への導入速度より丸編機2の製紐速度が遅い場合、円筒状編紐12に過大な張力が加わり、熱処理金型4において編紐12の充分な熱収縮が行われないおそれがある。また、貫通孔14への導入速度より丸編機2の製紐速度が速い場合は、長時間運転時に、円筒状編紐12が装置下部に堆積して、熱処理金型4に向かって引き上げられる際に絡むトラブルになりやすい。
したがって、かかる問題を防止するためには、丸編機2の製紐速度(排出速度)と貫通孔14への導入速度との差が常に小さく抑えられていることが好ましく、両者が常に等しいことが最も好ましい。
【0032】
本実施形態では、丸編機2の製紐速度と、熱処理金型4の貫通孔14に導入される編紐12の導入速度との差を検出する検出手段として、丸編機2の下方に排出された円筒状編紐12の折り返し位置Pを検出するセンサー6a、センサー6bが設けられている。
また円筒状編紐12の折り返し位置Pが、上側のセンサー6aよりも上方、または下側のセンサー6bよりも下方にあることを検出した場合は、該検出結果に基づいて、丸編機2のシリンダの回転数を増大または低減させて、丸編機2の製紐速度を制御するフィードバック制御手段(図示せず。)が設けられている。
【0033】
具体的には、円筒状編紐12の折り返し位置Pが、センサー6aとセンサー6bとの間に位置するように丸編機2の製紐速度の初期値および引取機5の引取り速度の初期値を設定する。
フィードバック制御手段は、円筒状編紐12の折り返し位置Pが、上側のセンサー6aより上方になった場合は、丸編機2のシリンダ回転数を増大して製紐速度を速くし、該折り返し位置Pが、側のセンサー6bより下方になった場合は、丸編機2のシリンダ回転数を低減して製紐速度を遅くするように設定されている。
【0034】
本実施形態の装置によれば、丸編機2と熱処理金型4を連続的に設けたことにより、熱処理金型4で編紐12に熱収縮を生じさせて、伸縮性(外径変化)が抑制された支持体13を生産性良く製造できる。しかも丸編機2の製紐速度(排出速度)と熱処理金型4の貫通孔14への導入速度との差が常に小さく抑えられるため、丸編機2と熱処理金型4の間における編紐12の長さの変動、ならびに丸編機2から排出される編紐12、および熱処理金型4内を通過する編紐12に加わる張力の変動が少なく抑えられ、製造安定性が良い。
【0035】
[第2の実施形態]
次に、図5を参照しながら、本発明の紐状物の製造装置の第2の実施形態について説明する。図5において、図3と同じ構成要素には同じ符号を付してその説明を省略する。
本実施形態の装置が、第1の実施形態の装置と異なる点は、丸編機2と折り返し点Pとの間に、丸編機2から排出された円筒状編紐12に張力を付加する空気エジェクター15(張力付加手段)を設けた点である。
空気エジェクター15は、該空気エジェクター15に所定圧力の気体(空気)を供給することにより、内部を通過する円筒状編紐12に対してが一定の張力を付与することができるものであればよく、例えば公知の真空発生器を使用できる。供給する気体の圧力は運転条件にもよるが、およそ0.1MPa〜0.7MPaの範囲である。
【0036】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の作用効果が得られるほか、以下の効果が得られる。
すなわち、丸編機2で円筒状編紐12を製紐する際に、スピンドルの円周直径、メリヤス針数、糸の繊度等の製造条件によっては、編目がメリヤス針から抜けにくくなり、円筒状編紐12が丸編機2の下方に排出されず、糸がメリヤス針に絡むトラブル発生の原因となる。本実施形態によれば、製紐された円筒状編紐12に加わる張力を大きくすることができ、これによってメリヤス針から編目が抜けやすくなり、かかるトラブルを防止することができる。
【0037】
[第3の実施形態]
次に、図6を参照しながら、本発明の紐状物の製造装置の第3の実施形態について説明する。図6において、図3と同じ構成要素には同じ符号を付してその説明を省略する。
本実施形態の装置が、第1の実施形態の装置と大きく異なる点は、丸編機2および熱処理金型4の下方における編紐12のUターン部分にダンサーロール機構16(張力付加手段)を設けるとともに、丸編機2の製紐速度と、熱処理金型4の貫通孔14に導入される編紐12の導入速度との差を検出する検出手段として、該ダンサーロール機構16のフリーガイドロール16cの位置の変化量を検出する位置検出器17を設けた点である。
【0038】
ダンサーロール機構16は、回転軸16aに直交した天秤状のシャフト16bの一端に設けられたフリーガイドロール16cと、他端に設けられたバランス調整用の錘16dを備えており、図6に示す如く、フリーガイドロール16cは上下動可能となっている。錘16dの重量および固定位置は任意に変更することができ、それにより、フリーガイドロール16cの重量、すなわち、円筒状編紐12に加える荷重(張力)を変更することができる。円筒状編紐12の片方、すなわち丸編機2とフリーガイドロール16cとの間の円筒状編紐12に加わる張力は、フリーガイドロール16cの重量の1/2である。
【0039】
回転軸16aには、位置検出器17が取り付けられており、フリーガイドロール16cの位置が、予め設定された初期位置に対して上方または下方に変化したときの変化量を検出するように構成されている。
またフリーガイドロール16cの位置の変化量が、予め設定された量より大きいことを検知した場合は、該検出結果に基づいて、シリンダの回転数を増大または低減させて丸編機2の製紐速度を制御するフィードバック制御手段(図示せず。)が設けられている。
具体的には、フリーガイドロール16cの位置が上方に移動した場合は、丸編機2のシリンダ回転数が増大されて製紐速度が速くなり、フリーガイドロール16cの位置が下方に移動した場合は、丸編機2のシリンダ回転数が低減されて製紐速度が遅くなるように管理、制御されている。これにより丸編機2の製紐速度(排出速度)と熱処理金型4の貫通孔14への導入速度との差が常に小さく抑えられる。
【0040】
なお、図中符号20は、熱処理金型4の貫通孔14に導入される直前の、編紐12の進行方向を垂直方向とするためのガイドロールである。
本実施形態によれば、第1および第2の実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0041】
[第4の実施形態]
次に、図7を参照しながら、本発明の紐状物の製造装置の第4の実施形態について説明する。図7において、図6と同じ構成要素には同じ符号を付してその説明を省略する。
本実施形態の装置が、第3の実施形態の装置と異なる点は、ダンサーロール機構16と熱処理金型4の間に、ガイドロール20を設けず、予備引取機18を設けた点である。
予備引取機18は、引取機5と同じ構成のネルソンロールからなる。すなわち駆動ロール5aと該駆動ロール5aに対して一定の傾斜角度θをもって取り付けられたフリーロール5bとからなり、これら2本のロールに、ダンサーロール機構16から熱処理金型4に至る途中の編紐12が「8」の字状に複数回巻き付けられている。予備引取機18における引取り速度は独立して制御できるようになっている。したがって、予備引取機18の引取り速度と引取機5の引取り速度との比が所定の値となるように制御して運転することが可能である。
【0042】
本実施形態によれば、予備引取機18の引取り速度と引取機5の引取り速度との比を調節することにより、熱処理金型4の貫通孔14を通過する円筒状編紐12に加わる張力を任意に調整することができ、これによって支持体13の編目の大きさを制御することが可能となる。例えば、引取機5に対して、予備引取機18の引取り速度を速く設定することにより、貫通孔14内を走行する円筒状編紐12の張力を低く設定でき、この場合は円筒状編紐12が充分に収縮されるため支持体13の編目が小さくなる。一方、引取機5に対して、予備引取機18の引取り速度を遅く設定すれば、貫通孔14内を走行する円筒状編紐12の張力が大きくなって円筒状編紐12が延伸されるため、これによって支持体13の編目を大きくすることができる。
【0043】
また本実施形態では、第3の実施形態と同様に、ダンサーロール機構16によって、丸編機2から排出された円筒状編紐12に張力が付加されているため、編目がメリヤス針から抜けやすくなっている。さらにフリーガイドロール16cの位置の変化量に基づいて丸編機2の製紐速度がフィードバック制御されているため、丸編機2の製紐速度(排出速度)と熱処理金型4の貫通孔14への導入速度との差が常に小さく抑えられる。
【0044】
[変形例1]
上記第1〜第4の実施形態において、使用する糸の材料が油剤を含有する合成繊維である場合、熱処理金型4にて油剤が加熱されることにより、加熱処理後の支持体13から油煙が発生することがある。この油煙が機外に排出されると環境上好ましくない。かかる油煙を捕集し、液化して回収する油煙回収装置を必要に応じて設けることが好ましい。油煙回収装置は熱処理金型4の後段に設けることが好ましい。熱処理金型4に油煙回収装置が接続されていることがより好ましい。
【0045】
図8、図9は油煙回収装置の一例を示したもので、図8は概略構成図、図9は要部の断面図である。本例の油煙回収装置20は、排煙室21と、排気ポンプ22と、油分離フィルター23を備えている。
排煙室21は、管状の入口側部材24と、管状の出口側部材25と、これらを連通させる配管継手26とから構成されている。入口側部材24および出口側部材25は円筒形の貫通孔を有する。入口側部材24は、熱処理金型4の出口14bに接続されている。
配管継手26は、円筒形の貫通孔を有しており、該貫通孔の途中に、貫通孔の内部と外部を連通する吸引口26aが設けられている。配管継手26の吸引口26aには排気管27が接続されており、該排気管27は排気ポンプ22に接続されている。排気ポンプ22は油分離フィルター23に接続されている。
図9に示すように、入口側部材24の内部と、配管継手26の内部と、出口側部材25の内部は一直線状の空間部を形成しており、該空間部は、熱処理金型4を通過した支持体13(加熱処理された円筒状編紐12)が通過する円筒形の貫通孔となっている。
【0046】
入口側部材24、出口側部材25、および配管継手26の材質は、熱処理金型4からの熱を受けるため、金属製が好ましい。配管継手26としてネジ込み配管継手を用い、入口側部材24と配管継手26、および出口側部材25と配管継手26とを、それぞれ着脱可能とすることが好ましい。これらが着脱可能であると、内部に油剤が付着した際に、洗浄や交換が容易である。
【0047】
熱処理金型4を通過した支持体13は、油煙回収装置20の排煙室21に導入される。支持体13を構成する糸の材料が油剤を含有する場合、熱処理金型4にて該油剤が加熱されると、入口側部材24および配管継手26の内部空間において、支持体13から油煙が発生する。ここで発生した油煙は、吸引口26aから、樹脂製あるいは金属製の排気管27を通って排気ポンプ22により排出され、油分離フィルター23によって油剤となり、ドレンとして回収される。
【0048】
入口側部材24および配管継手26の内径d1は、熱処理金型4の出口14bにおける内径dより大きい。これらの内径の差(d1−d)は、特に限定されないが、小さすぎると入口側部材24の内部空間容量が小さくなって、支持体13から十分な油煙が発生せず、大きすぎると入口側部材24の内部空間容量が大きくなり、吸引口26aからの排気流速が低下し、油煙が凝縮して十分に回収できないおそれがあるため、0.5〜10mmが好ましく、1〜3mmがより好ましい。
入口側部材24および配管継手26とを合わせた内部空間の長さL3は、長すぎると油煙が吸引口26aから排出される前に入口側部材24の内壁面に接触して凝縮し、十分に回収できないおそれがあり、短すぎると内部空間容量が小さくなって、支持体13から十分な油煙が発生しないため、10〜200mmが好ましく、40〜100mmがより好ましい。
出口側部材25の内径d2は、熱処理金型4から出た支持体13の外径d’と同径以上、外径d’+0.5mm以下が好ましい。d2が支持体13の外径d’より小さい場合、支持体13の表面を摩擦により傷つける可能性があり好ましくない。一方、d2が外径d’より0.5mm以上大きいと、その隙間から油煙が機外に漏れやすくなり好ましくない。
出口側部材25の長さL4は、支持体13の通過速度、すなわち引取機5の引き取り速度に応じて決めるのが好ましい。支持体13の通過速度が速い場合、支持体13に付随して油煙が機外に漏れる恐れがあるため、L4を長くすることが好ましい。例えば、引き取り速度が3.34m/minの場合、L4の値は50mm以上が好ましい。但し、L4の値が必要以上に長い場合、出口側部材25の出口から流入する空気の抵抗が増えるため、入口14aから熱処理金型4の内部に流入する空気量が増えて、熱処理金型4内の熱を奪い、円筒状編紐12に十分な熱量が与えられず、熱収縮が不十分となるおそれがある。出口側部材25の長さL4の上限は、上述の観点から200mm以下が好ましく150mm以下がより好ましい。
【0049】
排気ポンプ22の構造は特に限定されず、一般的なエアーポンプ、真空ポンプなどを使用できる。ダイヤフラム式の排気ポンプを使用する場合、吹き返しにより出口側部材25の出口から油煙が機外に漏れるおそれがあるため、吸引口26と排気ポンプ22を接続する排気管27の途中に逆止弁(図示せず)を設けることが好ましい。
排気ポンプ22の排気量は、発生する油煙量により適宜選択することが望ましい。但し、必要以上の排気量のポンプを使用すると、入口14aより熱処理金型4の内部に多量の空気が流入し、熱処理金型4内の熱を奪い、円筒状編紐12に十分な熱量が与えられず、熱収縮が不十分となるおそれがある。
【0050】
油分離フィルター23は、油煙を液化し、ろ過して油剤を回収できるものであればよい。
例えば、一般的なオイルミストを捕集する構造のものを利用できる。油分離フィルターのろ過精度などは、油煙粒子の大きさに合わせて適宜選択することが好ましい。
【0051】
[変形例2]
上記第1〜第4の実施形態において、図4に示す熱処理金型4に代えて、図10に示す熱処理金型4’を用いてもよい。図10において、図4と同じ構成要素には同じ符号を付してその説明を省略する。
図4に示す熱処理金型4は、貫通孔14の出口14b付近のストレート部14cと、入口14aとの間で、貫通孔14の内径が、入口14aからストレート部14cに向かって漸次縮径している。これに対して、図10に示す熱処理金型4’は、貫通孔14の出口14b付近のストレート部14cに隣接して、貫通孔14の内径が、入口14a側からストレート部14cに向かって一定の角度θで急に縮径するテーパー部14eが設けられている。また、該テーパー部14eと貫通孔14の入口14aとの間の、長さL2の部分は、貫通孔14の内径がDで一定であり、入口側ストレート部14c’となっている。
テーパー部14eを、図10に示すように、貫通孔14の長さ方向に沿う面で断面視したときに、対向するテーパー面のなす角度θは3〜90度が好ましく、10〜20度がより好ましい。該θが3度より小さいと、図4に示す熱処理金型4と同等の効果しか得られず、90度より大きいと円筒状編紐12がテーパー部14eに引っ掛りやすくなる。
入口側ストレート部14c’の長さL2は、長すぎるとストレート部14c’の加工が困難であるとともに、加熱手段となるヒーターの容量が増大し、短すぎると円筒状編紐12を十分に加熱できないため、これらの不都合が生じないように設定することが好ましい。例えば100〜400mmが好ましく、200〜300mmがより好ましい。
【0052】
図4に示すように、貫通孔14の入口14aからストレート部14cに向かって漸次縮径する構造の熱処理金型4は、貫通孔14が緩やかに縮径するため、得られる支持体13における編目は比較的開いた構造となる。
一方、図10に示すように、貫通孔14の途中に急に縮径するテーパー部14eを有する構造の熱処理金型4’を用いた場合、貫通孔14に導入された円筒状編紐12は、入口側ストレート部14c’においてある程度の熱収縮を起こし、続いてテーパー部14eにおいて急激に縮径されるため、編目は潰れた状態になりやすい。
得ようとする編目状態に応じて熱処理金型の構造を選択することが好ましい。
【実施例】
【0053】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
図3の装置により支持体13を製造した。糸11としては、ポリエステル繊維(繊度:420dtex、フィラメント数:360)を用いた。丸編機2としては圓井繊維機械社製の紐編機(編針数:8本、針サイズ:16ゲージ、スピンドルの円周直径:6mm)を用いた。熱処理金型4は、バンドヒーターによる加熱手段を有するアルミニウム合金製の金型(内径D:5mm、内径d:2.0mm、L/d:2、L1:260mm)を用いた。加熱温度を200℃として、引取機5の引取り速度を0.5m/minとした。丸編機2の製紐速度の初期値は約0.4m/minであった。運転中、円筒状編紐12は、常にセンサー6aとセンサー6bの間にあり、丸編機2のシリンダ回転数は500rpm前後で制御されていた。得られた支持体13の外径は2.0mmであった。編目の数は、1周あたり8個であった。
【0054】
(実施例2)
図5の装置により支持体13を製造した。糸11としては、ポリエステル繊維(繊度:504dtex、フィラメント数:432)を用いた。丸編機2としては圓井繊維機械社製の紐編機(編針数:12本、針サイズ:16ゲージ、スピンドルの円周直径:8mm)を用いた。熱処理金型4はバンドヒーターによる加熱手段を有するアルミニウム合金製の金型(内径D:5mm、内径d:3.0mm、L/d:5、L1:260mm)とした。加熱温度を215℃として、引取機5の引取り速度を1.5m/minとした。丸編機2の製紐速度の初期値は約1.4m/minであった。空気エジェクター15として、日本ピスコ社製の真空発生器(型式:VRL300、吸込み口径:8mm)を用いた。供給する空気圧力は0.3MPaとした。運転中、円筒状編紐12は、常にセンサー6aとセンサー6bの間にあり、丸編機2のシリンダ回転数は1700rpm前後で制御されていた。得られた支持体13の外径は3.0mmであった。編目の数は、1周あたり12個であった。
【0055】
(実施例3)
図6の装置により支持体13を製造した。糸11としては、ポリエステル繊維(繊度:336dtex、フィラメント数:288)を用いた。丸編機2は実施例2と同じものを用いた。熱処理金型4はバンドヒーターによる加熱手段を有するステンレス製の金型(内径D:5mm、内径d:2.3mm、L/d:10、L1:260mm)とした。加熱温度を190℃として、引取機5の引取り速度を3.34m/minとした。丸編機2の製紐速度の初期値は2.6m/minであった。ダンサーロール機構16のフリーガイドロール16cの重さは40gとした。運転中、フリーガイドロール16cはほぼ一定の位置にあり、丸編機2のシリンダ回転数は3300rpm前後で制御されていた。得られた支持体13の外径は2.3mmであった。得られた支持体13の外表面の写真を図11に示す。編目は均一で、編目の数は、1周あたり12個であった。
【0056】
(実施例4)
図7の装置により支持体13を製造した。予備引取機18の速度を2.6m/minとした以外は実施例3と同じ条件とした。運転中、フリーガイドロール16cはほぼ一定の位置にあり、丸編機2のシリンダ回転数は3300rpm前後で制御されていた。得られた支持体13の外径は2.3mmであった。編目の数は、1周あたり12個であった。
【0057】
(実施例5)
図6の装置において、図10に示す熱処理金型4’を用いて支持体13を製造した。すなわち、熱処理金型をステンレス製の金型(内径D:5mm、L2:250mm、内径d:2.3mm、L/d:10、角度θ:15度)に変更した以外は実施例3と同じ条件とした。運転中、フリーガイドロール16cはほぼ一定の位置にあり、丸編機2のシリンダ回転数は3300rpm前後で制御されていた。得られた支持体13の外径は2.3mmであった。得られた支持体13の外表面の写真を図12に示す。編目は均一であり、実施例3と比較して潰れた状態であった。編目の数は、1周あたり12個であった。
【0058】
(実施例6)
図6の装置に油煙回収装置20を設けて支持体13を製造した。油煙回収装置20の排煙室21において、入口側部材24および配管継手26の内径d1は4mm、長さL3は30mmとした。また、出口側部材25の内径d2は2.4mm、長さL4は50mmとした。排気ポンプ22として、イワキ社製のエアーポンプ(型式:APN−085、最大風量:5L/min)を用い、油分離フィルター23として、SMC社製のマイクロミストセパレータ(型式:AMD250)を用いた。その他は実施例3と同じ条件でとし、支持体を得た。運転中、油煙が機外に漏れることはなく、約100時間運転後、油分離フィルター23のドレン排出口からは、約180mlの油剤が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の円筒状編紐の製造装置により得られる、中空状多孔質膜用支持体の一例を示す側面図である。
【図2】従来の中空状多孔質膜用支持体として用いられる円筒状組紐の一例を示す側面図である。
【図3】本発明の紐状物製造装置の第1の実施形態を示す三面図である。
【図4】熱処理金型の一例を示す端面図および側断面図である。
【図5】本発明の紐状物製造装置の第2の実施形態を示す三面図である。
【図6】本発明の紐状物製造装置の第3実施形態を示す三面図である。
【図7】本発明の紐状物製造装置の第4の実施形態を示す三面図である。
【図8】本発明の紐状物製造装置に用いられる油煙回収装置の例を示す概略図である。
【図9】図8の油煙回収装置の要部の側断面図である。
【図10】熱処理金型の別の一例を示す端面図および側断面図である。
【図11】実施例で得られた支持体13の外表面を示す写真である。
【図12】他の実施例で得られた支持体13の外表面を示す写真である。
【符号の説明】
【0060】
2 丸編機、
4 熱処理金型、
5 引取機、
6a,6b センサー(検出手段)、
11 糸、
12 円筒状編紐、
13 支持体(中空状多孔質膜用支持体)、
14 貫通孔、
15 空気エジェクター(真空発生器)、
16 ダンサーロール機構、
18 予備引取機、
20 油煙回収装置、
21 排煙室
22 排気ポンプ、
23 油分離フィルター。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば中空状多孔質膜の支持体等の紐状物を製造するのに好適な紐状物製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境汚染に対する関心が高まり、また水質に関する規制が強化されていることから、分離の完全性、コンパクト性などに優れた濾過膜を用いた水処理が注目を集めている。該水処理の濾過膜としては、例えば、中空状多孔質膜が用いられている。該中空状多孔質膜には、優れた分離特性や透過性能のみならず、高い機械物性も必要とされる。機械特性に優れた中空多孔質膜としては、例えば図2に示すような、糸を丸打ちした円筒状組紐からなる支持体の外周面に、多孔質膜層を設けた中空状多孔質膜が知られている。該中空状多孔質膜は、支持体を環状ノズルに連続的に通す際に、環状ノズルから製膜原液を吐出し、支持体の外周面に製膜原液を塗布した後、製膜原液が塗布された支持体を凝固浴槽内に通し、凝固浴層内の凝固液で製膜原液を凝固させることにより製造される。
【0003】
支持体としての円筒状組紐は、通常、製紐機により製造される。製紐機においては、平板上に立設した多数のボビンから各糸を引き出し、各糸を相互に交差させて組むとともに、各ボビンを所定の経路に沿って移動させることにより糸の位置関係を所定のパターンで変化させて組紐が製造される。
【0004】
しかしながら、該製紐機は、小分けした多数のボビンが複雑な動きをしているため、製紐速度を上げることが難しく、生産性が低いという問題がある。通常、製紐機による円筒状組紐の製紐速度は10〜20m/hr程度である。生産性が低いと、支持体(円筒状組紐)のコストが上昇し、その結果、該支持体を用いる中空状多孔質膜のコスト上昇にもつながる。
また、製紐機によって製造された組紐は、構成する全ての糸が斜めに組まれ、また、製紐のためにボビンが複雑な動きをするため、製紐過程で付加された張力等の残留歪を有する。該歪を除去する方法として、製紐機で製造された組紐を籠などに貯留し、熱水、乾燥炉等で熱処理し、その後、巻き取る方法が挙げられる。従って、原糸からボビンへの糸の小分け工程、製紐工程、熱処理工程、巻き取り工程という繁雑な工程を経なければならず、製紐機の紐を製造する速度が低いことも伴って、生産性向上の障害となっている。
下記特許文献1には、製紐工程および上記熱処理工程を連続して行う製紐機が提案されている。しかし、該製紐機を用いたとしても、製造工程の簡素化は可能であるが、製紐速度自体が向上するわけではない。
【0005】
また、組紐は、通常、伸縮性を有しており、張力が付与されると伸びて、その外径が小さくなる。例えば円筒状組紐からなる支持体に製膜原液を塗布する際に、支持体にかかる張力が変動すると、支持体の外径が変化する。その結果、環状ノズルの管路の内周面と支持体との間隙が変化するため、環状ノズルの内径および製膜原液の吐出量が一定の場合、製膜原液を均一な厚さで塗布できない。また、凝固工程において、製膜原液が完全に凝固する前に支持体が伸びた場合、多孔質膜層にピンホール等の膜構造の欠陥が発生するおそれがある。
【0006】
下記特許文献2および特許文献3には、貫通孔を有する部材の前後に供給ロールと引取ロールを配置し、該貫通孔に合成繊維製の紐を通過させながら繊維の融点以上に加熱して紐の表面を光沢加工する装置が開示されている。
しかしながら、該装置は、紐を製造した後の後工程として表面を溶融加工(光沢加工)する装置であり、紐の製造工程の一部として加熱処理を行う装置ではない。
また特許文献2には、紐の圧延・延伸装置に、光沢加工のための加熱処理装置を組み込んだ実施形態が記載されているが、組紐を製造する製紐機と加熱処理装置を連続的に組み合わせた形態は記載されていない。仮に組紐の製紐機と加熱処理装置を連続して設けたとしても、製造速度は製紐機の製紐速度に依存するため、上述したように生産性が低いことが問題となる。
【特許文献1】実開平6−37384号公報。
【特許文献2】特開2002−004142号公報。
【特許文献3】特開2003−013348号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、伸縮性(外径変化)が抑制された紐状物を、生産性良く製造できる装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、丸編により円筒状編紐を編成することにより、円筒状組紐と同等の機械特性(耐圧強度、引張り強度等)を有するうえ、組紐よりも生産性が良い紐状物が得られること、また該円筒状編紐を加熱された金型に通して材料の溶融温度未満の温度で加熱処理を施すことにより伸縮性(外径変化)が抑えられた紐状物が得られることを見出し、これに基づいた中空状多孔質膜用支持体の製造方法を既に特許出願している(特開2008−114180号公報)。
そして本発明者等は、かかる製造方法を実施するのに好適な装置についてさらに鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明の紐状物製造装置は、糸を丸編みして編紐を編成する丸編機と、前記丸編機から排出された編紐が通過する貫通孔を有し、該貫通孔内の編紐を加熱処理する熱処理金型と、
前記貫通孔を通過した編紐を引取る引取機と、前記丸編機の製紐速度と、前記貫通孔に導入される編紐の導入速度との差を検出する検出手段と、該検出手段における検出結果に基づいて前記丸編機における製紐速度を制御するフィードバック制御手段を備えたことを特徴とする。
前記丸編機から排出された後、前記熱処理金型に導入される前の編紐に張力を付加する張力付加手段を設けることが好ましい。
前記張力付加手段として、上下動可能なフリーガイドロールを備えたダンサーロール機構を設けることが好ましい。
前記検出手段として、前記フリーガイドロールの位置の変化量を検出する手段を設けることが好ましい。
前記貫通孔に導入される編紐の導入速度を制御する予備引取機を設けることが好ましい。
前記熱処理金型で加熱処理された編紐から発生する油煙の回収手段を備えることが好ましい。
前記油煙の回収手段として、前記熱処理金型を通過した編紐が通過する貫通孔を有する排煙室と、該排煙室内を排気する排気ポンプと、前記排気ポンプに接続された油分離フィルターとを有する油煙回収装置を備えており、前記排煙室が前記熱処理金型に接続されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の紐状物製造装置によれば、伸縮性(外径変化)が抑制された紐状物を、生産性よく製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の装置で製造される紐状物の実施形態として、中空状多孔質膜用支持体を例に挙げて説明するが、本発明の装置は、他の用途に用いられる紐状物の製造にも適用可能である。
【0012】
<中空状多孔質膜用支持体>
図1は、本発明の装置で製造される中空状多孔質膜用支持体(以下、支持体と記す。)の一例を示す側面図である。支持体13は、糸を丸編みした円筒状編紐12に所定の熱処理が施されたものである。
【0013】
丸編みとは、丸編機を用いて筒状のよこメリヤス生地を編成することであり、円筒状編紐12は、糸を湾曲させて螺旋状に伸びる連続したループを形成し、これらループを前後左右に互いに関係させたものである。円筒状編紐12は、図2に示すような、従来の円筒状組紐19とは異なるものである。
糸の形態としては、マルチフィラメント、モノフィラメント、紡績糸等が挙げられる。
糸の材料としては、合成繊維、半合成繊維、再生繊維、天然繊維が挙げられる。糸は、複数種類の繊維を組み合わせたものであってもよい。
【0014】
合成繊維としては、ナイロン6、ナイロン66、芳香族ポリアミド等のポリアミド系繊維;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリグリコール酸等のポリエステル系繊維;ポリアクリロニトリル等のアクリル系繊維;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維;ポリビニルアルコール系繊維;ポリ塩化ビニリデン系繊維;ポリ塩化ビニル系繊維:ポリウレタン系繊維;フェノール樹脂系繊維;ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂系繊維;ポリアルキレンパラオキシベンゾエート系繊維等が挙げられる。
【0015】
半合成繊維の例としては、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、キチン、キトサン等を原料としたセルロース誘導体系繊維;プロミックスと呼称される蛋白質系繊維等が挙げられる。
再生繊維の例としては、ビスコース法、銅‐アンモニア法、有機溶剤法により得られるセルロース系再生繊維(レーヨン、キュプラ、ポリノジック等。)が挙げられる。
天然繊維の例としては、亜麻、黄麻等が挙げられる。
【0016】
糸の材料としては、耐薬品性に優れる点から、ポリエステル系繊維、アクリル系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリアミド系繊維、ポリオレフィン系繊維が好ましく、ポリエステル系繊維またはアクリル系繊維が特に好ましい。
糸としては、後述の(b)工程の熱処理による効果が発揮されやすい点から、合成繊維のマルチフィラメントが好ましい。
【0017】
支持体13の外径は、中空状多孔質膜の外径によって決まる。中空状多孔質膜の外径は、中空状多孔質膜を束ねた膜モジュールにおける必要濾過面積から、1.5〜6.0mmが好ましく、2.0〜3.5mmがより好ましい。従って、支持体13の外径は、1.0〜5.0mmが好ましく、1.8〜3.0mmがより好ましい。
【0018】
糸の繊度は、中空状多孔質膜の耐久性および、多孔質膜層との接着性を向上させる点から、200〜1000dtexが好ましい。糸の繊度が200dtex以上であれば、中空状多孔質膜のつぶれ圧が向上する。糸の繊度が1000dtex以下であれば、内径縮小化による通水性の低下が抑えられる。
【0019】
円筒状編紐12の編目の数は、1周あたり5以上が好ましい。編目の数は、後述の丸編機のメリヤス針(編針)の数と同じである。編目の数が5以上であれば、円筒状編紐12の中空部の断面形状が円形となり、内径縮小化による通水性の低下が抑えられる。
編目の数の上限は、円筒状編紐12の外径、糸の繊度、編目の大きさに等により決まる。編目が大きい場合、製膜原液を支持体13に塗布する際に、製膜原液が支持体13の内部に流入して中空部が閉塞するおそれがある。従って、同じ外径の円筒状編紐12を製造する場合、糸の繊度が高いと編目の数は少なく、繊度が低いと編目の数は多く設定する必要がある。編目の数の上限は、円筒状編紐12の外径が5.0mm、糸の繊度が200dtexのとき最大となり、その数は28である。
【0020】
[第1の実施形態]
次に、図3、図4を参照しながら、本発明の紐状物の製造装置の第1の実施形態について説明する。なお、図3中の(a)は装置の正面図、(b)は左側面図、(c)は上面図である(以下、同様。)。図4は熱処理金型の両端面および長さ方向に沿う断面を示す図である。
本実施形態の装置は、各構成要素が本体フレーム1内に配置されている。
本実施形態の装置には、図示しないボビンスタンドのボビンから供給される糸11を丸編みして円筒状編紐(以下、単に編紐ということもある。)12を編成して排出する丸編機2と、丸編機2から排出された編紐12が通過する貫通孔14を有し、該貫通孔14内の編紐12を加熱処理するとともに所望の外径に成型する熱処理金型4と、該熱処理金型4を通過した支持体13(加熱処理された円筒状編紐12)を引取る引取機5が設けられている。
【0021】
丸編機2は編成した編紐12を下方へ排出するように構成されている。熱処理金型4は、貫通孔14の長さ方向が垂直方向で、下側が入口14a、上側が出口14bとなるように設けられている。引取機5は熱処理金型4の上方に設けられている。
本実施形態において、丸編機2から排出された編紐12は、自重により垂下された状態で下方に向かって進行し、丸編機2および熱処理金型4の下方でUターンするように折り返され、引取機5で引取られることによって上方に向かって進行し、熱処理金型4の貫通孔14内に入口14aから導入され、出口14bから排出されるようになっている。
【0022】
丸編機2および熱処理金型4の下方には円筒状編紐12の折り返し位置Pを検出するためのセンサー6aおよびセンサー6bが設けられている。センサー6aはセンサー6bよりも上方に設けられている。また、装置前面には各構成要素を操作する操作盤7が、背面には電気機器部品を納めた制御盤8が配置されている。さらに、丸編機2の上方には、丸編機2に供給される糸11に一定の張力を付与するヤーンテンサー9および、糸切れを検知して装置の運転を停止する糸切れセンサー10が配置されている。
【0023】
丸編機2は、回転可能な円筒状のシリンダと、該シリンダの内側に配置された回転しないスピンドルと、該スピンドルの外円周上に配置された複数のメリヤス針(編針)とを有して構成される。そして、駆動モーター3からVベルトにより駆動される。円筒状編紐12の外径、内径、編目の数および大きさは、メリヤス針の数、メリヤス針を配置するスピンドルの円周直径、糸の繊度等により決まる。本実施形態におけるスピンドルの円周直径は、3〜12mmが好ましく、4〜8mmがより好ましい。メリヤス針の数は6〜14本が好ましく、8〜12本がより好ましい。なお、駆動モーター3としては、高回転および、後述のフィードバック制御に対応するため、ブラシレスDCモーターや、ACサーボモーターを使用することが好ましい。
【0024】
熱処理金型4は、金属製のブロック、プレート等からなる本体と、加熱手段とを有して構成される。加熱手段としては、バンドヒーター、アルミ鋳込みヒーター、カートリッジヒーター等が挙げられる。加熱温度は処理する糸によって変わるが、およそ150℃〜260℃の範囲である。温度の制御方法は、PID制御、ON/OFF制御のいずれも用いることができる。
熱処理金型4の本体には貫通孔14が形成されている。該貫通孔14の入口14aにおける内径Dは、加熱処理前の円筒状編紐12の外径D’と等しいか、それより若干大きい。
貫通孔14の出口14bにおける内径dは、加熱処理後の支持体13の外径d’と等しい。
貫通孔14の出口14bから入口14a側に向かう長さLの部分は、貫通孔14の内径がdで一定であるストレート部14cとなっている。
入口14aにおける内径Dは、出口14bにおける内径d以上であることが好ましい。すなわち、外径が均一な支持体13を得るには、円筒状編紐12を均一に加熱する必要がある。したがって、貫通孔14の内周面と円筒状編紐12の表面とが常に接触するように、D≧dとする。
ストレート部14cの長さLと出口14bにおける内径dとの比(L/d)は、円筒状編紐12を均一に加熱する点から、1以上が好ましい。
貫通孔14は、円筒状編紐12の引っ掛かりを回避する点から、ストレート部14cと入口14aとの間では、貫通孔14の内径が、入口14aからストレート部14cに向かって漸次縮径しており、内周面がテーパー状となっていることが好ましい。
ストレート部14cと入口14aとの間の長さL1は、長すぎるとテーパー形状の加工が困難であるとともに、加熱手段となるヒーターの容量が増大し、短すぎると円筒状編紐12を十分に加熱できないため、これらの不都合が生じないようにL1を設定することが好ましい。例えば100〜400mmが好ましく、200〜300mmがより好ましい。
【0025】
引取機5としては、ネルソンロール、ニップロール、カレンダーロール等が挙げられる。ニップロールは支持体13をつぶす恐れがある。つぶれると中空部が閉塞し、中空状膜多孔質膜用の支持体としての用を成さない。従って、引取機5にはネルソンロールまたはカレンダーロールが好ましい。これらのロールを用いて支持体13を引取るには、ロールと支持体13との接触面積をある程度大きくする必要がある。カレンダーロールの場合、支持体13との接触面積を確保するためにロール本数を多くする必要がある。ネルソンロールは、2本のロールに支持体13を複数回巻き付けることで接触面積を確保できる点でより好ましい。
【0026】
ネルソンロールは、一般的に図3(c)に示す如く、駆動ロール5aと該駆動ロール5aに対して一定の傾斜角度θをもって取り付けられたフリーロール5bとからなる。これら2本のロールに支持体13を「8」の字状に複数回巻き付けることにより支持体13を引取ることが可能となる。また、ロール表面には、支持体13のスリップを抑えるため、ゴムがライニングされている。ゴムの材質は特に限定するものではなく、ウレタンゴム、ネオプレーンゴム、EPDMゴム、バイトンゴム等が挙げられる。ゴムの硬度は、硬いと支持体13がスリップしやすく、柔らかいと磨耗しやすい。本発明者らが検討した結果、ゴムの硬度はショアA40度〜70度の範囲が好適であり、より好ましくはショアA45度〜60度の範囲である。
【0027】
センサー6aおよびセンサー6bは、光電センサー等の検出物体に接触せずに検出が行なえるセンサーであればよく、公知のセンサーを用いることができる。光電センサーは、可視光線、赤外線などの“光”を、投光部から信号光として発射し、検出物体によって反射する光を受光部で検出したり、遮光される光量の変化を受光部で検出し出力信号を得る。
【0028】
次に、本装置による支持体13の製造工程を説明する。
支持体13は、下記(a)工程、および下記(b)工程により製造される。
(a)糸11を丸編みして円筒状編紐12を編成する工程。
(b)前記円筒状編紐12を、熱処理金型4を通過させて加熱処理する工程。
【0029】
(a)工程
円筒状編紐12は、丸編機2を用いて編成される。
丸編機2の製紐速度は円筒状編紐12の形状により若干変わるが、シリンダの回転数を変化させることによって制御できる。本発明における丸編機2の製紐速度とは、丸編機2から排出される編紐12の排出速度を意味する。
シリンダの回転数は引取機5の引取り速度に応じて設定される。引取り速度が6〜200m/hrの範囲の場合、シリンダ回転数はおよそ100〜4000rpmであることが好ましい。
【0030】
(b)工程
円筒状編紐12は、その構造上、伸縮性を有しているが、加熱処理を施すことによって、円筒状編紐12の伸縮性(外径変化)を抑制することができる。
円筒状編紐12は、熱処理金型4を通過するとき、材料として用いた糸11の溶融温度未満の温度で加熱処理される。これにより円筒状編紐12は熱収縮を起こし、伸縮性が抑制されるとともに、編目が緻密になる。さらに、出口14b近傍のストレート部14cにおいて円筒状編紐12の外径が規制されて、所望の外径d’に成型される。
なお、熱処理金型4において、円筒状編紐12は糸の溶融温度未満で処理されるため、特許文献2および特許文献3の光沢紐のように、紐の表面が糸の溶融温度以上で加熱されて溶融したものとは異なる。支持体13の表面が溶融すると、編目が閉塞し、処理水が通過できなくなり、濾過膜としての性能を発揮できない。
【0031】
本実施形態のように、丸編機2の後段に熱処理金型4を連続的に設ける場合、丸編機2から排出されて熱処理金型4に導入されるまでの編紐12の長さの変動が少ないことが好ましい。また丸編機2から排出される編紐12、および熱処理金型4内を通過する編紐12に加わる張力の変動が少ないことが好ましい。
しかしながら、(b)工程における熱処理温度によっては円筒状編紐12の収縮率が変動することがあり、該収縮率が変動すると、引取機5の引取り速度が一定であっても熱処理金型4の貫通孔14に導入される編紐12の導入速度が変動する。また長時間の連続運転を行うと、丸編機2のメリヤス針の磨耗等により編目の大きさが変わるなど、丸編機2における製紐速度も一定ではない。
貫通孔14への導入速度より丸編機2の製紐速度が遅い場合、円筒状編紐12に過大な張力が加わり、熱処理金型4において編紐12の充分な熱収縮が行われないおそれがある。また、貫通孔14への導入速度より丸編機2の製紐速度が速い場合は、長時間運転時に、円筒状編紐12が装置下部に堆積して、熱処理金型4に向かって引き上げられる際に絡むトラブルになりやすい。
したがって、かかる問題を防止するためには、丸編機2の製紐速度(排出速度)と貫通孔14への導入速度との差が常に小さく抑えられていることが好ましく、両者が常に等しいことが最も好ましい。
【0032】
本実施形態では、丸編機2の製紐速度と、熱処理金型4の貫通孔14に導入される編紐12の導入速度との差を検出する検出手段として、丸編機2の下方に排出された円筒状編紐12の折り返し位置Pを検出するセンサー6a、センサー6bが設けられている。
また円筒状編紐12の折り返し位置Pが、上側のセンサー6aよりも上方、または下側のセンサー6bよりも下方にあることを検出した場合は、該検出結果に基づいて、丸編機2のシリンダの回転数を増大または低減させて、丸編機2の製紐速度を制御するフィードバック制御手段(図示せず。)が設けられている。
【0033】
具体的には、円筒状編紐12の折り返し位置Pが、センサー6aとセンサー6bとの間に位置するように丸編機2の製紐速度の初期値および引取機5の引取り速度の初期値を設定する。
フィードバック制御手段は、円筒状編紐12の折り返し位置Pが、上側のセンサー6aより上方になった場合は、丸編機2のシリンダ回転数を増大して製紐速度を速くし、該折り返し位置Pが、側のセンサー6bより下方になった場合は、丸編機2のシリンダ回転数を低減して製紐速度を遅くするように設定されている。
【0034】
本実施形態の装置によれば、丸編機2と熱処理金型4を連続的に設けたことにより、熱処理金型4で編紐12に熱収縮を生じさせて、伸縮性(外径変化)が抑制された支持体13を生産性良く製造できる。しかも丸編機2の製紐速度(排出速度)と熱処理金型4の貫通孔14への導入速度との差が常に小さく抑えられるため、丸編機2と熱処理金型4の間における編紐12の長さの変動、ならびに丸編機2から排出される編紐12、および熱処理金型4内を通過する編紐12に加わる張力の変動が少なく抑えられ、製造安定性が良い。
【0035】
[第2の実施形態]
次に、図5を参照しながら、本発明の紐状物の製造装置の第2の実施形態について説明する。図5において、図3と同じ構成要素には同じ符号を付してその説明を省略する。
本実施形態の装置が、第1の実施形態の装置と異なる点は、丸編機2と折り返し点Pとの間に、丸編機2から排出された円筒状編紐12に張力を付加する空気エジェクター15(張力付加手段)を設けた点である。
空気エジェクター15は、該空気エジェクター15に所定圧力の気体(空気)を供給することにより、内部を通過する円筒状編紐12に対してが一定の張力を付与することができるものであればよく、例えば公知の真空発生器を使用できる。供給する気体の圧力は運転条件にもよるが、およそ0.1MPa〜0.7MPaの範囲である。
【0036】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の作用効果が得られるほか、以下の効果が得られる。
すなわち、丸編機2で円筒状編紐12を製紐する際に、スピンドルの円周直径、メリヤス針数、糸の繊度等の製造条件によっては、編目がメリヤス針から抜けにくくなり、円筒状編紐12が丸編機2の下方に排出されず、糸がメリヤス針に絡むトラブル発生の原因となる。本実施形態によれば、製紐された円筒状編紐12に加わる張力を大きくすることができ、これによってメリヤス針から編目が抜けやすくなり、かかるトラブルを防止することができる。
【0037】
[第3の実施形態]
次に、図6を参照しながら、本発明の紐状物の製造装置の第3の実施形態について説明する。図6において、図3と同じ構成要素には同じ符号を付してその説明を省略する。
本実施形態の装置が、第1の実施形態の装置と大きく異なる点は、丸編機2および熱処理金型4の下方における編紐12のUターン部分にダンサーロール機構16(張力付加手段)を設けるとともに、丸編機2の製紐速度と、熱処理金型4の貫通孔14に導入される編紐12の導入速度との差を検出する検出手段として、該ダンサーロール機構16のフリーガイドロール16cの位置の変化量を検出する位置検出器17を設けた点である。
【0038】
ダンサーロール機構16は、回転軸16aに直交した天秤状のシャフト16bの一端に設けられたフリーガイドロール16cと、他端に設けられたバランス調整用の錘16dを備えており、図6に示す如く、フリーガイドロール16cは上下動可能となっている。錘16dの重量および固定位置は任意に変更することができ、それにより、フリーガイドロール16cの重量、すなわち、円筒状編紐12に加える荷重(張力)を変更することができる。円筒状編紐12の片方、すなわち丸編機2とフリーガイドロール16cとの間の円筒状編紐12に加わる張力は、フリーガイドロール16cの重量の1/2である。
【0039】
回転軸16aには、位置検出器17が取り付けられており、フリーガイドロール16cの位置が、予め設定された初期位置に対して上方または下方に変化したときの変化量を検出するように構成されている。
またフリーガイドロール16cの位置の変化量が、予め設定された量より大きいことを検知した場合は、該検出結果に基づいて、シリンダの回転数を増大または低減させて丸編機2の製紐速度を制御するフィードバック制御手段(図示せず。)が設けられている。
具体的には、フリーガイドロール16cの位置が上方に移動した場合は、丸編機2のシリンダ回転数が増大されて製紐速度が速くなり、フリーガイドロール16cの位置が下方に移動した場合は、丸編機2のシリンダ回転数が低減されて製紐速度が遅くなるように管理、制御されている。これにより丸編機2の製紐速度(排出速度)と熱処理金型4の貫通孔14への導入速度との差が常に小さく抑えられる。
【0040】
なお、図中符号20は、熱処理金型4の貫通孔14に導入される直前の、編紐12の進行方向を垂直方向とするためのガイドロールである。
本実施形態によれば、第1および第2の実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0041】
[第4の実施形態]
次に、図7を参照しながら、本発明の紐状物の製造装置の第4の実施形態について説明する。図7において、図6と同じ構成要素には同じ符号を付してその説明を省略する。
本実施形態の装置が、第3の実施形態の装置と異なる点は、ダンサーロール機構16と熱処理金型4の間に、ガイドロール20を設けず、予備引取機18を設けた点である。
予備引取機18は、引取機5と同じ構成のネルソンロールからなる。すなわち駆動ロール5aと該駆動ロール5aに対して一定の傾斜角度θをもって取り付けられたフリーロール5bとからなり、これら2本のロールに、ダンサーロール機構16から熱処理金型4に至る途中の編紐12が「8」の字状に複数回巻き付けられている。予備引取機18における引取り速度は独立して制御できるようになっている。したがって、予備引取機18の引取り速度と引取機5の引取り速度との比が所定の値となるように制御して運転することが可能である。
【0042】
本実施形態によれば、予備引取機18の引取り速度と引取機5の引取り速度との比を調節することにより、熱処理金型4の貫通孔14を通過する円筒状編紐12に加わる張力を任意に調整することができ、これによって支持体13の編目の大きさを制御することが可能となる。例えば、引取機5に対して、予備引取機18の引取り速度を速く設定することにより、貫通孔14内を走行する円筒状編紐12の張力を低く設定でき、この場合は円筒状編紐12が充分に収縮されるため支持体13の編目が小さくなる。一方、引取機5に対して、予備引取機18の引取り速度を遅く設定すれば、貫通孔14内を走行する円筒状編紐12の張力が大きくなって円筒状編紐12が延伸されるため、これによって支持体13の編目を大きくすることができる。
【0043】
また本実施形態では、第3の実施形態と同様に、ダンサーロール機構16によって、丸編機2から排出された円筒状編紐12に張力が付加されているため、編目がメリヤス針から抜けやすくなっている。さらにフリーガイドロール16cの位置の変化量に基づいて丸編機2の製紐速度がフィードバック制御されているため、丸編機2の製紐速度(排出速度)と熱処理金型4の貫通孔14への導入速度との差が常に小さく抑えられる。
【0044】
[変形例1]
上記第1〜第4の実施形態において、使用する糸の材料が油剤を含有する合成繊維である場合、熱処理金型4にて油剤が加熱されることにより、加熱処理後の支持体13から油煙が発生することがある。この油煙が機外に排出されると環境上好ましくない。かかる油煙を捕集し、液化して回収する油煙回収装置を必要に応じて設けることが好ましい。油煙回収装置は熱処理金型4の後段に設けることが好ましい。熱処理金型4に油煙回収装置が接続されていることがより好ましい。
【0045】
図8、図9は油煙回収装置の一例を示したもので、図8は概略構成図、図9は要部の断面図である。本例の油煙回収装置20は、排煙室21と、排気ポンプ22と、油分離フィルター23を備えている。
排煙室21は、管状の入口側部材24と、管状の出口側部材25と、これらを連通させる配管継手26とから構成されている。入口側部材24および出口側部材25は円筒形の貫通孔を有する。入口側部材24は、熱処理金型4の出口14bに接続されている。
配管継手26は、円筒形の貫通孔を有しており、該貫通孔の途中に、貫通孔の内部と外部を連通する吸引口26aが設けられている。配管継手26の吸引口26aには排気管27が接続されており、該排気管27は排気ポンプ22に接続されている。排気ポンプ22は油分離フィルター23に接続されている。
図9に示すように、入口側部材24の内部と、配管継手26の内部と、出口側部材25の内部は一直線状の空間部を形成しており、該空間部は、熱処理金型4を通過した支持体13(加熱処理された円筒状編紐12)が通過する円筒形の貫通孔となっている。
【0046】
入口側部材24、出口側部材25、および配管継手26の材質は、熱処理金型4からの熱を受けるため、金属製が好ましい。配管継手26としてネジ込み配管継手を用い、入口側部材24と配管継手26、および出口側部材25と配管継手26とを、それぞれ着脱可能とすることが好ましい。これらが着脱可能であると、内部に油剤が付着した際に、洗浄や交換が容易である。
【0047】
熱処理金型4を通過した支持体13は、油煙回収装置20の排煙室21に導入される。支持体13を構成する糸の材料が油剤を含有する場合、熱処理金型4にて該油剤が加熱されると、入口側部材24および配管継手26の内部空間において、支持体13から油煙が発生する。ここで発生した油煙は、吸引口26aから、樹脂製あるいは金属製の排気管27を通って排気ポンプ22により排出され、油分離フィルター23によって油剤となり、ドレンとして回収される。
【0048】
入口側部材24および配管継手26の内径d1は、熱処理金型4の出口14bにおける内径dより大きい。これらの内径の差(d1−d)は、特に限定されないが、小さすぎると入口側部材24の内部空間容量が小さくなって、支持体13から十分な油煙が発生せず、大きすぎると入口側部材24の内部空間容量が大きくなり、吸引口26aからの排気流速が低下し、油煙が凝縮して十分に回収できないおそれがあるため、0.5〜10mmが好ましく、1〜3mmがより好ましい。
入口側部材24および配管継手26とを合わせた内部空間の長さL3は、長すぎると油煙が吸引口26aから排出される前に入口側部材24の内壁面に接触して凝縮し、十分に回収できないおそれがあり、短すぎると内部空間容量が小さくなって、支持体13から十分な油煙が発生しないため、10〜200mmが好ましく、40〜100mmがより好ましい。
出口側部材25の内径d2は、熱処理金型4から出た支持体13の外径d’と同径以上、外径d’+0.5mm以下が好ましい。d2が支持体13の外径d’より小さい場合、支持体13の表面を摩擦により傷つける可能性があり好ましくない。一方、d2が外径d’より0.5mm以上大きいと、その隙間から油煙が機外に漏れやすくなり好ましくない。
出口側部材25の長さL4は、支持体13の通過速度、すなわち引取機5の引き取り速度に応じて決めるのが好ましい。支持体13の通過速度が速い場合、支持体13に付随して油煙が機外に漏れる恐れがあるため、L4を長くすることが好ましい。例えば、引き取り速度が3.34m/minの場合、L4の値は50mm以上が好ましい。但し、L4の値が必要以上に長い場合、出口側部材25の出口から流入する空気の抵抗が増えるため、入口14aから熱処理金型4の内部に流入する空気量が増えて、熱処理金型4内の熱を奪い、円筒状編紐12に十分な熱量が与えられず、熱収縮が不十分となるおそれがある。出口側部材25の長さL4の上限は、上述の観点から200mm以下が好ましく150mm以下がより好ましい。
【0049】
排気ポンプ22の構造は特に限定されず、一般的なエアーポンプ、真空ポンプなどを使用できる。ダイヤフラム式の排気ポンプを使用する場合、吹き返しにより出口側部材25の出口から油煙が機外に漏れるおそれがあるため、吸引口26と排気ポンプ22を接続する排気管27の途中に逆止弁(図示せず)を設けることが好ましい。
排気ポンプ22の排気量は、発生する油煙量により適宜選択することが望ましい。但し、必要以上の排気量のポンプを使用すると、入口14aより熱処理金型4の内部に多量の空気が流入し、熱処理金型4内の熱を奪い、円筒状編紐12に十分な熱量が与えられず、熱収縮が不十分となるおそれがある。
【0050】
油分離フィルター23は、油煙を液化し、ろ過して油剤を回収できるものであればよい。
例えば、一般的なオイルミストを捕集する構造のものを利用できる。油分離フィルターのろ過精度などは、油煙粒子の大きさに合わせて適宜選択することが好ましい。
【0051】
[変形例2]
上記第1〜第4の実施形態において、図4に示す熱処理金型4に代えて、図10に示す熱処理金型4’を用いてもよい。図10において、図4と同じ構成要素には同じ符号を付してその説明を省略する。
図4に示す熱処理金型4は、貫通孔14の出口14b付近のストレート部14cと、入口14aとの間で、貫通孔14の内径が、入口14aからストレート部14cに向かって漸次縮径している。これに対して、図10に示す熱処理金型4’は、貫通孔14の出口14b付近のストレート部14cに隣接して、貫通孔14の内径が、入口14a側からストレート部14cに向かって一定の角度θで急に縮径するテーパー部14eが設けられている。また、該テーパー部14eと貫通孔14の入口14aとの間の、長さL2の部分は、貫通孔14の内径がDで一定であり、入口側ストレート部14c’となっている。
テーパー部14eを、図10に示すように、貫通孔14の長さ方向に沿う面で断面視したときに、対向するテーパー面のなす角度θは3〜90度が好ましく、10〜20度がより好ましい。該θが3度より小さいと、図4に示す熱処理金型4と同等の効果しか得られず、90度より大きいと円筒状編紐12がテーパー部14eに引っ掛りやすくなる。
入口側ストレート部14c’の長さL2は、長すぎるとストレート部14c’の加工が困難であるとともに、加熱手段となるヒーターの容量が増大し、短すぎると円筒状編紐12を十分に加熱できないため、これらの不都合が生じないように設定することが好ましい。例えば100〜400mmが好ましく、200〜300mmがより好ましい。
【0052】
図4に示すように、貫通孔14の入口14aからストレート部14cに向かって漸次縮径する構造の熱処理金型4は、貫通孔14が緩やかに縮径するため、得られる支持体13における編目は比較的開いた構造となる。
一方、図10に示すように、貫通孔14の途中に急に縮径するテーパー部14eを有する構造の熱処理金型4’を用いた場合、貫通孔14に導入された円筒状編紐12は、入口側ストレート部14c’においてある程度の熱収縮を起こし、続いてテーパー部14eにおいて急激に縮径されるため、編目は潰れた状態になりやすい。
得ようとする編目状態に応じて熱処理金型の構造を選択することが好ましい。
【実施例】
【0053】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
図3の装置により支持体13を製造した。糸11としては、ポリエステル繊維(繊度:420dtex、フィラメント数:360)を用いた。丸編機2としては圓井繊維機械社製の紐編機(編針数:8本、針サイズ:16ゲージ、スピンドルの円周直径:6mm)を用いた。熱処理金型4は、バンドヒーターによる加熱手段を有するアルミニウム合金製の金型(内径D:5mm、内径d:2.0mm、L/d:2、L1:260mm)を用いた。加熱温度を200℃として、引取機5の引取り速度を0.5m/minとした。丸編機2の製紐速度の初期値は約0.4m/minであった。運転中、円筒状編紐12は、常にセンサー6aとセンサー6bの間にあり、丸編機2のシリンダ回転数は500rpm前後で制御されていた。得られた支持体13の外径は2.0mmであった。編目の数は、1周あたり8個であった。
【0054】
(実施例2)
図5の装置により支持体13を製造した。糸11としては、ポリエステル繊維(繊度:504dtex、フィラメント数:432)を用いた。丸編機2としては圓井繊維機械社製の紐編機(編針数:12本、針サイズ:16ゲージ、スピンドルの円周直径:8mm)を用いた。熱処理金型4はバンドヒーターによる加熱手段を有するアルミニウム合金製の金型(内径D:5mm、内径d:3.0mm、L/d:5、L1:260mm)とした。加熱温度を215℃として、引取機5の引取り速度を1.5m/minとした。丸編機2の製紐速度の初期値は約1.4m/minであった。空気エジェクター15として、日本ピスコ社製の真空発生器(型式:VRL300、吸込み口径:8mm)を用いた。供給する空気圧力は0.3MPaとした。運転中、円筒状編紐12は、常にセンサー6aとセンサー6bの間にあり、丸編機2のシリンダ回転数は1700rpm前後で制御されていた。得られた支持体13の外径は3.0mmであった。編目の数は、1周あたり12個であった。
【0055】
(実施例3)
図6の装置により支持体13を製造した。糸11としては、ポリエステル繊維(繊度:336dtex、フィラメント数:288)を用いた。丸編機2は実施例2と同じものを用いた。熱処理金型4はバンドヒーターによる加熱手段を有するステンレス製の金型(内径D:5mm、内径d:2.3mm、L/d:10、L1:260mm)とした。加熱温度を190℃として、引取機5の引取り速度を3.34m/minとした。丸編機2の製紐速度の初期値は2.6m/minであった。ダンサーロール機構16のフリーガイドロール16cの重さは40gとした。運転中、フリーガイドロール16cはほぼ一定の位置にあり、丸編機2のシリンダ回転数は3300rpm前後で制御されていた。得られた支持体13の外径は2.3mmであった。得られた支持体13の外表面の写真を図11に示す。編目は均一で、編目の数は、1周あたり12個であった。
【0056】
(実施例4)
図7の装置により支持体13を製造した。予備引取機18の速度を2.6m/minとした以外は実施例3と同じ条件とした。運転中、フリーガイドロール16cはほぼ一定の位置にあり、丸編機2のシリンダ回転数は3300rpm前後で制御されていた。得られた支持体13の外径は2.3mmであった。編目の数は、1周あたり12個であった。
【0057】
(実施例5)
図6の装置において、図10に示す熱処理金型4’を用いて支持体13を製造した。すなわち、熱処理金型をステンレス製の金型(内径D:5mm、L2:250mm、内径d:2.3mm、L/d:10、角度θ:15度)に変更した以外は実施例3と同じ条件とした。運転中、フリーガイドロール16cはほぼ一定の位置にあり、丸編機2のシリンダ回転数は3300rpm前後で制御されていた。得られた支持体13の外径は2.3mmであった。得られた支持体13の外表面の写真を図12に示す。編目は均一であり、実施例3と比較して潰れた状態であった。編目の数は、1周あたり12個であった。
【0058】
(実施例6)
図6の装置に油煙回収装置20を設けて支持体13を製造した。油煙回収装置20の排煙室21において、入口側部材24および配管継手26の内径d1は4mm、長さL3は30mmとした。また、出口側部材25の内径d2は2.4mm、長さL4は50mmとした。排気ポンプ22として、イワキ社製のエアーポンプ(型式:APN−085、最大風量:5L/min)を用い、油分離フィルター23として、SMC社製のマイクロミストセパレータ(型式:AMD250)を用いた。その他は実施例3と同じ条件でとし、支持体を得た。運転中、油煙が機外に漏れることはなく、約100時間運転後、油分離フィルター23のドレン排出口からは、約180mlの油剤が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の円筒状編紐の製造装置により得られる、中空状多孔質膜用支持体の一例を示す側面図である。
【図2】従来の中空状多孔質膜用支持体として用いられる円筒状組紐の一例を示す側面図である。
【図3】本発明の紐状物製造装置の第1の実施形態を示す三面図である。
【図4】熱処理金型の一例を示す端面図および側断面図である。
【図5】本発明の紐状物製造装置の第2の実施形態を示す三面図である。
【図6】本発明の紐状物製造装置の第3実施形態を示す三面図である。
【図7】本発明の紐状物製造装置の第4の実施形態を示す三面図である。
【図8】本発明の紐状物製造装置に用いられる油煙回収装置の例を示す概略図である。
【図9】図8の油煙回収装置の要部の側断面図である。
【図10】熱処理金型の別の一例を示す端面図および側断面図である。
【図11】実施例で得られた支持体13の外表面を示す写真である。
【図12】他の実施例で得られた支持体13の外表面を示す写真である。
【符号の説明】
【0060】
2 丸編機、
4 熱処理金型、
5 引取機、
6a,6b センサー(検出手段)、
11 糸、
12 円筒状編紐、
13 支持体(中空状多孔質膜用支持体)、
14 貫通孔、
15 空気エジェクター(真空発生器)、
16 ダンサーロール機構、
18 予備引取機、
20 油煙回収装置、
21 排煙室
22 排気ポンプ、
23 油分離フィルター。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸を丸編みして編紐を編成する丸編機と、
前記丸編機から排出された編紐が通過する貫通孔を有し、該貫通孔内の編紐を加熱処理する熱処理金型と、
前記貫通孔を通過した編紐を引取る引取機と、
前記丸編機の製紐速度と、前記貫通孔に導入される編紐の導入速度との差を検出する検出手段と、
該検出手段における検出結果に基づいて前記丸編機における製紐速度を制御するフィードバック制御手段を備えたことを特徴とする紐状物製造装置。
【請求項2】
前記丸編機から排出された後、前記熱処理金型に導入される前の編紐に張力を付加する張力付加手段を備えた、請求項1に記載の紐状物製造装置。
【請求項3】
前記張力付加手段として、上下動可能なフリーガイドロールを備えたダンサーロール機構を備えた、請求項2に記載の紐状物製造装置。
【請求項4】
前記検出手段として、前記フリーガイドロールの位置の変化量を検出する手段を備えた、請求項3に記載の紐状物製造装置。
【請求項5】
前記貫通孔に導入される編紐の導入速度を制御する予備引取機を備えた、請求項1〜4のいずれか一項に記載の紐状物製造装置。
【請求項6】
前記熱処理金型で加熱処理された編紐から発生する油煙の回収手段を備えた、請求項1〜5のいずれか一項に記載の紐状物製造装置。
【請求項7】
前記油煙の回収手段として、前記熱処理金型を通過した編紐が通過する貫通孔を有する排煙室と、該排煙室内を排気する排気ポンプと、前記排気ポンプに接続された油分離フィルターとを有する油煙回収装置を備えており、前記排煙室が前記熱処理金型に接続されている、請求項6記載の紐状物製造装置。
【請求項1】
糸を丸編みして編紐を編成する丸編機と、
前記丸編機から排出された編紐が通過する貫通孔を有し、該貫通孔内の編紐を加熱処理する熱処理金型と、
前記貫通孔を通過した編紐を引取る引取機と、
前記丸編機の製紐速度と、前記貫通孔に導入される編紐の導入速度との差を検出する検出手段と、
該検出手段における検出結果に基づいて前記丸編機における製紐速度を制御するフィードバック制御手段を備えたことを特徴とする紐状物製造装置。
【請求項2】
前記丸編機から排出された後、前記熱処理金型に導入される前の編紐に張力を付加する張力付加手段を備えた、請求項1に記載の紐状物製造装置。
【請求項3】
前記張力付加手段として、上下動可能なフリーガイドロールを備えたダンサーロール機構を備えた、請求項2に記載の紐状物製造装置。
【請求項4】
前記検出手段として、前記フリーガイドロールの位置の変化量を検出する手段を備えた、請求項3に記載の紐状物製造装置。
【請求項5】
前記貫通孔に導入される編紐の導入速度を制御する予備引取機を備えた、請求項1〜4のいずれか一項に記載の紐状物製造装置。
【請求項6】
前記熱処理金型で加熱処理された編紐から発生する油煙の回収手段を備えた、請求項1〜5のいずれか一項に記載の紐状物製造装置。
【請求項7】
前記油煙の回収手段として、前記熱処理金型を通過した編紐が通過する貫通孔を有する排煙室と、該排煙室内を排気する排気ポンプと、前記排気ポンプに接続された油分離フィルターとを有する油煙回収装置を備えており、前記排煙室が前記熱処理金型に接続されている、請求項6記載の紐状物製造装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−52190(P2009−52190A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−190008(P2008−190008)
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】
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