説明

紙、および紙の生成方法

【課題】埋め込む情報の範囲が容易に把握されたり、限定されたりすることがなく、かつ正規品とコピー品の違いを正確に判別して真贋判定等を行なうことができる紙およびその紙の生成方法を提供する。
【解決手段】目に見える形の電子透かしパターンXm−1が描画された紙であって、その紙を電子複写して形成されたコピー紙からは電子透かしパターンXm−1に埋め込まれている情報を読み取ることができなくなる。コピー紙中の目に見える形の電子透かしパターンの有無を検出して、検出できなかった場合に電子複写される紙を正当な紙ではないと判定し、正規品であるか否かが見分けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙、および紙の生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
重要な文書の不正な偽造を抑止する目的で、文章を電子複写すると背景に「複写禁止」などの文字や画像が特殊な地紋模様(以下、「地紋画像」という)として浮かび上がる技術(以下「地紋技術」という)が知られている(たとえば特許文献1参照)。
【0003】
このような地紋技術は、仮に第三者が重要な文書を電子複写した場合、当該文書の背景等に地紋画像が浮かび上がるため、コピーした文書はそのまま使用することができない。つまり、地紋技術は、仮に電子複写されても不正利用されることがないように心理的な抑止力としての効果を発揮する。なお、地紋画像を予め重要な文書の背景等に表示させておき、電子複写されると当該地紋画像が消滅するといったこともできる。この地紋技術により当該文書が使用されたときに正当なものであるか否かの真贋判定をすることもできる。
【0004】
これら地紋技術の原理は、電子複写後にドットが残る領域と電子複写後にドットが消える領域という2つの領域で構成され、同じ印刷濃度を持つように構成することにより実現している。したがって、この2つの領域は、肉眼ではわからないがそれぞれ異なる特性を持っている。
【0005】
これは、一般的に電子複写機が、入力解像度や出力解像度に依存した画像再現能力しか持たないことに起因する。つまり、背景部が電子複写機で再現できるドットの限界を超えるように作成されている場合、電子複写によって集中したドットは再現できるが、分散したドットは再現できず、隠された地紋画像が浮かび上がる。また、電子複写により分散したドットが完全に消えなくとも、集中したドットと比較して明らかに電子複写後の濃度差があるような場合にも、隠された地紋画像が浮かび上がる。なお、このような技術では、たとえば網点処理や異なる特徴のディザマトリクスを用いたディザ処理によって上述した2つの領域を生成することができる。
【0006】
また、重要な文書の真贋判定を行なう目的で、電子透かしを重要な文書の画像等に肉眼では見えないように埋め込んでおき、埋め込んだ電子透かしが当該文書から一定値以上検出できた場合に正当な文書であると判定する真贋判定方法も知られている(例えば特許文献2参照)。なお、本願でいう従来の電子透かしとは、人間の視覚の特性を利用して、静止画像のデジタルコンテンツに対して、コンテンツとは別の情報を人間に知覚できないように(目に見えない形で)埋め込む技術をいう。
【0007】
この技術では、たとえば重要な文書のデータ領域を複数のブロック単位に分割し、ブロック毎に電子透かしとして埋め込むビット列をスペクトル拡散等により埋め込んでおく。そして、当該文書内の電子透かしを専用のCCD(Charge Coupled Device)機能付読み取り装置で読み取って、一定値以上の電子透かしが検出できるか否かの判定を行い、一定値以上の電子透かしが検出できない場合は当該文書が改竄されているか、または正当な文書ではないコピーされた文書であるという判定を行なう。
【0008】
【特許文献1】特開2001−197297号公報(図22参照)
【特許文献2】特開2006−157147号公報(段落0008参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示されている地紋技術は、ドットが集中している領域が容易に把握され、当該部分を削除して文書を改竄することは容易である。また、重要な文書の背景等に地紋画像が生成されるため、文書の特定の部分が黒っぽくなってしまう。したがって、実際に地紋技術を使用できる範囲は元の文書に影響を与えない範囲のみに限定しなければ実用的な利用方法とはなり得ない。また、特許文献2に開示されている真贋判定方法は、たとえ同じ正規品であっても検出される電子透かしのブロック数が異なる場合がある。更に、精巧なコピー品から検出される電子透かしのブロック数と上述した正規品の検出数とを比較すると微差である場合が多い。そのため、コピー品であるのにそれを正規品であると判定したり、正規品であるのにそれをコピー品であると判定したりする恐れがある。したがって、両者を正確に判別して真贋判定を行なうことは困難である。
【0010】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は埋め込む情報の範囲が容易に把握されたり、限定されたりすることがなく、かつ正規品とコピー品の違いを正確に判別して真贋判定等を行なうことができる紙およびその紙の生成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記の目的を達成するために、目に見える形の電子透かしパターンが描画された紙であって、その紙を電子複写して形成されたコピー紙からは上記電子透かしパターンに埋め込まれている情報を読み取ることができなくなる紙である。
【0012】
本発明は、地紋技術のように特定の部分にドットを集中して紙に埋め込む方法ではなく、目に見える形の電子透かしパターンを紙に描画するため、特定の部分が黒っぽくなるということがない。また、目に見える形の電子透かしパターンは、背景画像として描画できる他に、文書に表示されたマークやロゴ画像そのものや、それらの内部の模様として描画することもできる。したがって、埋め込む情報の範囲が特定の部分に限定されることもなく、埋め込まれた情報の所在が容易に把握されることもない。また、本発明の紙は、電子複写されると電子透かしパターンに埋め込まれている情報を読み取ることができなくなるため、正規品とコピー品の違いを正確に判別して真贋判定等を行なうことができる。
【0013】
他の発明は、上述した発明に加え、コピー紙中の目に見える形の電子透かしパターンの有無を検出して、検出できなかった場合に電子複写される紙を正当な紙ではないと判定し、正規品であるか否かが見分けられる紙である。
【0014】
本発明では、正規品の紙でない場合、電子複写されると上述した電子透かしパターンの有無検出の際、電子透かしパターンを検出できなくなる。したがって精巧なコピー品であっても、電子透かしパターンの有無によってのみで容易に正規品であるか否かを見分けられる。
【0015】
更に他の発明は、目に見える形の電子透かしパターンが描画された紙の生成方法であって、カラー印刷またはモノクロ印刷により電子透かしパターンが描画された第1の紙を生成するステップと、第1の紙をモノクロまたはグレースケールで電子複写して第2の紙を生成するステップと、第2の紙を更に電子複写して第3の紙を生成するステップと、第3の紙から電子透かしパターンに埋め込まれている情報が読み取れるか否かによって電子透かしパターンの電子複写の有無を判定するステップと、判定において読み取ることができない場合に第2の紙を真贋判定用の紙とする紙の生成方法である。
【0016】
本発明により生成された紙は、目に見える形の電子透かしパターンを紙に描画するため、上述したように埋め込む情報の範囲が容易に把握されたり、限定されたりすることがない。また、電子複写されるとその電子透かしパターンが読み取れない程度に略消滅してしまうため、上述したように容易に正規品とコピー品の違いを正確に判別して真贋判定等をすることができる。本出願人は、ディジタル処理による2値画像化では透かし強度を一度の電子複写により略消滅する程度の強度に調整することができなかったため、上述したアナログ的な電子複写処理により2値画像化を行い、透かし強度を一度の電子複写により略消滅する程度の強度に調整することに成功した。
【0017】
更に他の発明は、上述した発明に加えて、上記判定において第3の紙から電子透かしパターンに埋め込まれている情報を読み取ることができた場合は、更に電子透かしパターンの透かし強度を調整して全てのステップを繰り返し、読み取ることができないと判定された場合の第2の紙を真贋判定用の紙とする紙の生成方法である。
【0018】
電子透かしパターンが描画された紙を電子複写しようとする電子複写機の入力解像度や出力解像度と、電子透かしパターンの強度によっては、電子透かしパターンとして埋め込まれた情報が読み取れる程度に電子複写されてしまう場合が考えられる。しかし、このような生成方法を採用することにより、当該電子複写機の入出力解像度の性能に適した真贋判定用の紙を生成することができる。
【0019】
更に他の発明は、上述した発明に加え、上記判定において第3の紙から電子透かしパターンに埋め込まれている情報読み取ることができた場合は、更に第1の紙または第2の紙の印刷濃度を調整して全てのステップを繰り返し、読み取ることができないと判定された場合の第2の紙を真贋判定用の紙とする紙の生成方法である。
【0020】
電子透かしパターンが描画された紙を電子複写しようとする電子複写機の印刷濃度設定によっては、電子透かしパターンが電子複写されてしまい、電子透かしパターンとして埋め込まれた情報が読み取れる場合が考えられる。しかし、このような生成方法を採用することにより、当該電子複写機の印刷濃度の性能に適した真贋判定用の紙を生成することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、埋め込む情報の範囲が容易に把握されたり、限定されたりすることがなく、かつ正規品とコピー品の違いを正確に判別して真贋判定等を行なうことができる紙およびその紙の生成方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
まず、本発明の実施形態に係る電子透かしパターンが描画された紙に描かれる画像(以下、電子透かしパターン画像とする)の生成方法について説明する。
【0023】
(電子透かしパターン画像の生成方法について)
図1は、本発明の実施形態に係る電子透かしパターンが描画された紙を製造する際に必要とされる装置であって、電子透かしパターンの画像を生成するための電子透かしパターン画像生成装置10の機能概念図である。
【0024】
電子透かしパターン画像生成装置10は、ソフトウェアで実現される情報処理機能としては電子透かし情報量制御部11、電子透かし情報取得部12、CRC(Cyclic Redundancy Check:巡回冗長検査)符号化部13、ECC(Error Check and Correct:誤り訂正検査)符号化部14、繰り返し符号生成部15、電子透かし埋め込み部16などから構成される。
【0025】
また、電子透かしパターン画像生成装置10は、一般的なフォン・ノイマン型コンピュータであり、ハードウェアとしては図示しない制御部、記憶部、出力部、入力部などから構成される。
【0026】
制御部は、たとえばCPU(Central Processing Unit)である。また、記憶部は、たとえばRAM(Randam Access Memory)、ROM(Read On Memory)である。出力部は、たとえばディスプレイである。入力部は、たとえばキーボードやマウスである。これらはバスを介して各々接続されている。
【0027】
電子透かしパターン画像生成装置10は、上述したソフトウェアで実現される情報処理機能をハードウェア資源により協働させて、電子透かし情報列を繰り返して生成される電子透かしパターン列をコンテンツ画像に埋め込む。なお、電子透かしパターン列をコンテンツ画像に繰り返して埋め込むこと、および電子透かし情報に訂正符号データ及び誤り訂正データを付加することで、電子透かし情報の読み取り時における誤検出の防止を図っている。
【0028】
続いて、具体的に電子透かしパターン画像生成装置10を用いて電子透かしパターンの画像を生成する方法について説明する。
【0029】
図2は、図1に示す電子透かしパターン画像生成装置10が電子透かしパターン画像を生成するフローチャートを示した図である。図3は、図1に示す電子透かしパターン生成装置10により生成される電子透かし情報のビット列の例を示す図で、(A)は、電子透かし情報列の最小単位のビット列を示した図で、(B)は電子透かしパターン列のビット列を示した図である。
【0030】
はじめに、図2に示すように電子透かし情報として埋め込みたい情報と埋め込むべきコンテンツ画像を決定する(START)。電子透かし情報は、たとえば10桁からなる英数字とすることができる。コンテンツ画像は、たとえば電子透かしパターン画像として生成するための基となる文字画像であったり会社名を含むロゴ画像であったりする。なお、本実施例においては電子透かしパターンを描画する際にコンテンツ画像は不要としている。コンテンツ画像の代わりに電子透かしパターンの描画領域の範囲、形状が指示される。
【0031】
このコンテンツ画像は、上述したように従来と異なり特定の形状情報(ダミー画像)のみである。従来の場合は文字やロゴを構成する画像の情報を必要としていたが、この実施形態では、コンテンツ画像内の画素に情報を埋め込むのではなく、電子透かしパターンそのものが模様のごとく表示されるため、そのような情報、すなわちコンテンツ画像の内部の画素データは必要とされない。しかしながら従来のようにコンテンツ画像として外形の他に内部のデータをもつ画像を使用してもよい。なお、上述した電子透かし情報として埋め込みたい情報と埋め込むべきコンテンツ画像は電子透かしパターン画像生成装置10の図示しない記憶部に記録されている。
【0032】
次に図2のフローチャートの説明に用いる変数および情報量についての説明をする。
H・・・コンテンツ画像に埋め込み可能な総情報量である。
m・・・電子透かし情報として埋め込む情報の情報量である。
c・・・CRC符号データとして埋め込む情報の情報量である。
p・・・ECC符号データとして埋め込む情報の情報量である。
N・・・電子透かし情報列(N=m+c+p)の情報量を示す変数である。
t・・・電子透かし情報として埋め込む情報の個数を示す変数である。
C・・・コンテンツ画像に電子透かし情報列を埋め込む総個数を示す変数である。
【0033】
電子透かしパターン画像生成装置10は、図3(A)に示すようにmビットの電子透かし情報と、cビットのCRC符号データと、pビットのECC符号データから構成されるNビット(N=m+c+p)の電子透かし情報列を最初に生成する。そして、図3(B)に示すようにNビットの電子透かし情報列を所定回数(C)繰り返して、N*Cビットの電子透かしパターン列を最終的に生成する。なお、mビットの電子透かし情報が複数存在する場合、たとえば埋め込みたい情報A(N1ビット)と情報B(N2ビット)という2個(t=2)の情報がある場合、それぞれ繰り返して埋め込むときは、電子透かしパターン列の総情報量はN*Cビットではなく、N1*C/t+N2*C/tビットとなり、これらを生成することになる。以下に、t=1の場合の電子透かし情報を埋め込むための生成処理方法について図1と図2を参照しながら具体的に説明する。
【0034】
電子透かし情報量制御部11は、主にコンテンツ画像に埋め込み可能な情報量から電子透かしパターンを埋め込む情報量について制御を行なう。
【0035】
電子透かし情報量制御部11は、まず電子透かし情報取得部12によりm、c、pの情報量を取得して電子透かし情報列の情報量をNに代入する(ステップS100)。また、電子透かし情報量制御部11は、コンテンツ画像から埋め込み可能な情報量Hも取得する。なお、m、c、pに用いられるビット数は予め定められているものとする。
【0036】
次に、電子透かし情報量制御部11は、Nビットの電子透かし情報列の埋め込むべき個数C(Cは正の整数倍)を設定する(ステップS101)。なおCは、電子透かしパターン画像生成装置10の図示しない入力部からの入力により値が指定される場合や埋め込みたい電子透かし情報が複数ある場合に強制的にCの値を設定することができる。
【0037】
続いて電子透かし情報量制御部11は、コンテンツ画像から埋め込み可能な情報量Hと埋め込むべき電子透かし情報の総情報量をC*Nビット比較して電子透かし情報を何回繰り返して埋め込むかの判定を行なう(ステップS102)。
【0038】
電子透かし情報量制御部11は、ステップS102の判定においてコンテンツ画像に埋め込み可能な情報量Hより電子透かし情報の総情報量C*Nビットの方が大きいと判定した場合(Yes)は、コンテンツ画像に埋め込み可能な情報量となるようにCから1を減算していき、電子透かし情報の総情報量C*Nビットが埋め込み可能な情報量Hより小さくなるように制御する(ステップS103)。
【0039】
なお、電子透かし情報量制御部11は、複数の電子透かし情報N1、N2、N3・・・Ntがある場合には、コンテンツ画像に埋め込まれる電子透かし情報の総合計数をCとして固定し、各電子透かし情報をC/t個ずつ埋め込むことができる。
【0040】
その場合、電子透かし情報量制御部11は、各電子透かし情報の情報量をもとに、電子透かし情報として埋め込む情報の個数tと、各電子透かし情報の重複回数C/tを求めて以後の処理を行なう。
【0041】
CRC符号化部13は、mビットの電子透かし情報に対して誤りを検出するために生成多項方式に則りCRC符号化をおこなう(ステップS104)。
【0042】
CRC符号化部13は、mビットの電子透かし情報にcビットを付加する度にCから1を減算する処理を行い、1≦Cの条件を満たさなくなるまで符号化処理を続ける。なお、CRC符号化部13は、図2に示すように生成されたCRC符号データとしてcビットをECC符号化部14と繰り返し符号生成部35に渡す。
【0043】
ECC符号化部14は、cビットのCRC符号データに対して誤り訂正符号化をおこなう(ステップS105)。
【0044】
ECC符号化部14は、m+cビットの電子透かし情報にpビットを付加する度にCから1を減算する処理を行い、1≦Cの条件を満たさなくなるまで符号化処理を続ける。なお、ECC符号化部14は、図1に示すように生成されたパリティ検査データとしてpビットを繰り返し符号生成部15に渡す。
【0045】
繰り返し符号生成部15は、上述したmビットの電子透かし情報と、cビットのCRC符号データと、pビットのパリティ検査データの値をそれぞれ受け取り、これらのデータで構成されるNビットの電子透かし情報列をCだけそれぞれ繰り返して連接させて電子透かしパターン列を生成する(ステップS106)。
【0046】
繰り返し符号生成部15は、N*Cビットの電子透かしパターン列を電子透かし埋め込み部16に渡す(ステップS107)。電子透かしパターン列を受け取った電子透かし埋め込み部16は、コンテンツ画像の所定の範囲に電子透かしパターン列を埋め込む(ステップS107)。
【0047】
なお、コンテンツ画像に対する電子透かしパターン列の埋め込み処理について、コンテンツ画像をDCT(Discreate Cosine Transform:離散コサイン変換)、DFT(Discreate Fourier Transform:離散フーリエ変換)、DWT(Discreate wavelet Transform:離散ウェーブレット変換)などにより空間周波数変換した領域において電子透かしパターン列を地紋模様のような画像となるように埋め込んでもよい。
【0048】
なお、CRC符号化部14およびECC符号化部15について、誤り検出や誤り訂正に要求される精度によって、それぞれオプションの構成としてもよい。その場合は誤り検出、誤り訂正用のデータを両方とも生成しない、またはどちらか片方のみを生成して、電子透かし情報列として生成してもよい。
【0049】
なお、上述した電子透かしパターンの画像の生成方法はあくまでも例示であり、それ以外にも本発明の目的を逸脱しない範囲内で他の電子透かしパターン画像の生成アルゴリズムを採用することができる。
【0050】
(電子透かしパターンに記録する情報について)
上述した実施形態における電子透かしパターンに記録されている情報は、電子透かしパターンを描画する文書や書類に関連した日付、場所、機器、担当者、真贋判定情報またはこれらと関連付けられた識別情報とすることができる。なお、ここで関連付けられた識別情報としてたとえば10桁の英数字から構成される情報としてもよい。
【0051】
(真贋判定用の紙の生成方法について)
続いて、真贋判定用の紙の生成方法について具体的に説明する。
【0052】
図4は、図1に示す電子透かしパターン画像生成装置10により生成された電子透かしパターンを用いて真贋判定用の紙を生成する方法を示したフローチャートである。図5は、図4で示したフローチャートで生成される画像を示す図で、(A)は、文字画像を示す図で、(B)は背景画像を示す図である。
【0053】
ここで本実施例において使用する透かし強度Sjとは、図2のフローの説明中で示したコンテンツ画像に埋め込まれた電子透かし情報列の総個数Cを増減することにより検出できるか否かを相対的に表したレベルをいう。したがって、Cが増加すると透かし強度Sjは強くなり、Cが減少すると透かし強度Sjは弱くなるため両者は比例する関係にある。また、本実施例では透かし強度Sjの変数jの値が増えると透かし強度が弱くなるものとする。
【0054】
まず、透かし情報として埋め込みたい情報を決定する(START)。その後、上述した方法等により透かし強度Sj(=S1、jの初期値は1とする)である電子透かしパターンXn(=X1、nの初期値は1とする)を生成する(ステップS200)。
【0055】
そして、電子複写機により電子透かしパターンX1が描画された紙An(=A1)をカラー印刷またはモノクロ印刷で第1の紙として生成する(ステップS201)。なお、この電子透かしパターンX1は、紙A1に図5(A)に示すように文字画像として描画してもよいし、図5(B)に示すように背景画像として描画してもよい。また、この時点における電子透かしパターンXは図示しない専用のCCD機能付読み取り装置で十分に読み取れる程度の透かし強度があるように予め調整されているものとする。
【0056】
続いて、紙A1を電子複写機の機能を用いてモノクロまたはグレースケールで電子複写して電子透かしパターンXn+1(=X2)が描画された紙An+1(=A2)を第2の紙として生成する(ステップS202)。
【0057】
そして、紙A2を更に電子複写機で電子複写して電子透かしパターンXn+2(=X3)が描画された紙An+2(=A3)を第3の紙として生成する(ステップS203)。
【0058】
そして、生成された紙A3に描画されている電子透かしパターンX3から埋め込まれている情報が読み取れるか否かの判定を図示しない専用のCCD機能付読み取り装置によって行なう(ステップS204)。
【0059】
ステップS204の判定において読み取りができる場合(YES)、再度電子透かしパターンXnの透かし強度Sjを変更するためにステップS200へ戻り、透かし強度Sj+1(=S2)の電子透かしパターンXn(=X4)を生成した後にステップS200〜S204までの処理を繰り返し行なう。
【0060】
ステップS204の判定において、読み取りができない場合(NO)、電子複写元であるA(n+1)を真贋判定用の紙とする(ステップS205)。たとえば、図5に示すように文字画像または背景画像として生成された電子透かしパターンXm(たとえばX6)に埋め込まれている情報の読み取りができない場合(No)、電子複写元である電子透かしパターンXm−1(たとえばX5)が描画されている紙Am−1が真贋判定用の紙となる。
【0061】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない限り種々変更実施できる。たとえば、上述の実施形態では、電子透かしパターンを目に見える形で描画される第2の紙を真贋判定用の紙としたが、紙以外に布、プラスチックなどとしてもよい。また、第2の紙の生成ステップを省略して第1の紙を真贋判定用の紙としてもよい。
【0062】
また、真贋判定用の紙を生成した時に使用した電子複写機と不正に偽造される際に使用される図示しない電子複写機の入力解像度や出力解像度の性能が異なることが想定される。そのため、最終的に得られた図5に示す紙Am−1を図4に示すステップS203の後に、他の複数の電子複写機で電子複写して、電子透かしパターンXm−1の判定を更に行なってもよい。そのような判定処理を行なうことで様々な電子複写機で電子複写されても真贋判定結果が保証されることとなり、真贋判定用の紙として汎用性が高まる。また、仮に他の電子複写機で電子透かしパターンXm−1が電子複写できた場合には、当該他の電子複写機において上述した判定処理を繰り返し行い、真贋判定用の紙を生成してもよい。
【0063】
また、たとえばステップS200またはS201において電子複写機の印刷濃度を変更してからステップS203の判定を行なってもよい。なお、一般的に印刷濃度を濃くすると電子透かしパターンが描画されやすくなるため、電子複写後の電子透かしパターンの読み取り率が向上する。このため、電子透かしパターンの透かし強度Sjをなるべく弱くする一方で、電子複写機の印刷濃度は最も濃く電子複写できるレベル(最大レベル)に設定して電子複写を行なって真贋判定用の紙を生成してもよい。
【0064】
また、たとえば電子透かしパターン画像全体に電子複写機の光源(蛍光灯、ハロゲンランプ、LED等)と同じ色彩を付しても良い。電子透かしパターン画像にこのような処理を加えることで、電子複写機の特性上、電子透かしパターンXが電子複写されにくくなる。たとえば、電子透かしパターン画像全体を黄色や薄い青、蛍光色等としてもよい。
【0065】
また、電子透かしパターンの透かし強度Sjの変数jの値が増えると透かし強度が強くなるように設定して、上述した生成方法を行って真贋判定用の紙を生成してもよい。
【0066】
また、電子透かしパターンの透かし強度Sjの変数jの値が増えると透かし強度が強くなるように設定して、上述した生成方法を複数回繰り返し行なう。そして、ステップS204でNoと判定された紙を複数枚生成して、その中で最も透かし強度Sjが強い紙を真贋判定用の紙として生成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、電子透かしパターンを目に見える形で描画できるすべての紙に適用することができる。特に真贋判定が必要な証明書や証書に使用する紙として本発明を利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施形態に係る電子透かしパターンが描画された紙を製造する際に必要とされる装置であって、電子透かしパターンの画像を生成するための電子透かしパターン画像生成装置の機能概念図である。
【図2】図1に示す電子透かしパターン画像生成装置が電子透かしパターン画像を生成するフローチャートを示した図である。
【図3】図2に示す電子透かしパターンとして埋め込むビット列を示す図で、(A)は、電子透かし情報列を示す図で、(B)は電子透かしパターン列のビット列を示す図である。
【図4】図1に示す電子透かしパターン画像生成装置により生成された電子透かしパターンを用いて真贋判定用の紙を生成する方法を示したフローチャートである。
【図5】図4で示したフローチャートで生成される画像を示す図で、(A)は、文字画像を示す図で、(B)は背景画像を示す図である。
【符号の説明】
【0069】
An(第1の紙),An+1(第2の紙),An+2(第3の紙),Am−1,Am 紙
Xn,Xn+1Xn+2,Xm−1,Xm 電子透かしパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目に見える形の電子透かしパターンが描画された紙であって、
その紙を電子複写して形成されたコピー紙からは上記電子透かしパターンに埋め込まれている情報を読み取ることができなくなることを特徴とする紙。
【請求項2】
前記コピー紙中の前記目に見える形の電子透かしパターンの有無を検出して、検出できなかった場合に上記電子複写される紙を正当な紙ではないと判定し、正規品であるか否かが見分けられることを特徴とする請求項1に記載の紙。
【請求項3】
目に見える形の電子透かしパターンが描画された紙の生成方法であって、
カラー印刷またはモノクロ印刷により上記電子透かしパターンが描画された第1の紙を生成するステップと、
上記第1の紙をモノクロまたはグレースケールで電子複写して第2の紙を生成するステップと、
上記第2の紙を更に電子複写して第3の紙を生成するステップと、
上記第3の紙から上記電子透かしパターンに埋め込まれている情報が読み取れるか否かによって上記電子透かしパターンの電子複写の有無を判定するステップと、
上記判定において読み取ることができない場合に上記第2の紙を真贋判定用の紙とすることを特徴とする紙の生成方法。
【請求項4】
前記判定において前記第3の紙から前記電子透かしパターンに埋め込まれている情報を読み取ることができた場合は、更に前記電子透かしパターンの透かし強度を調整して前記全てのステップを繰り返し、読み取ることができないと判定された場合の前記第2の紙を真贋判定用の紙とすることを特徴とする請求項3に記載の紙の生成方法。
【請求項5】
前記判定において前記第3の紙から前記電子透かしパターンに埋め込まれている情報読み取ることができた場合は、更に前記第1の紙または第2の紙の印刷濃度を調整して前記全てのステップを繰り返し、読み取ることができないと判定された場合の前記第2の紙を真贋判定用の紙とすることを特徴とする請求項3に記載の紙の生成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−130911(P2009−130911A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−307305(P2007−307305)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【出願人】(506118836)デジタル・インフォメーション・テクノロジー株式会社 (28)
【Fターム(参考)】