説明

紙の填料含量を高めるために使用されるコポリマーブレンド組成物

【課題】紙の填料含量を高めるために使用されるコポリマーブレンド組成物の提供。
【解決手段】1種以上のアニオン性重合体と、1種以上のカチオン性重合体と、1種以上の非イオン性重合体とを含む異種ポリマーブレンドを製造する方法であって、(a)第一の量の重合開始剤と1種以上のアニオン性又はカチオン性単量体とを非中性溶液に添加し(ここで各単量体の電荷は等しい)、(b)第二の量の上記重合開始剤と1種以上の非イオン性単量体とを添加し、(c)第三の量の上記重合開始剤と、(a)の単量体とは反対の電荷を有する1種以上のイオン性単量体とを添加し、第四の量の上記重合開始剤を段階的に添加して、残存する単量体を反応させ、(e)得られたポリマーブレンドを中和する方法。1種以上のアニオン性、カチオン性、及び非イオン性単量体をin situ重合させて又は別々に重合させた後に混ぜ合わせて生成した各重合体を含む異種ポリマーブレンドにも関する。紙又は板紙の填料含量を高める方法であって、(a)異種ポリマーブレンドを沈降炭酸カルシウム填料と混ぜ合わせ、(b)得られた混合物をパルプスラリーと混ぜ合わせ、(c)得られたスラリー混合物を加工して、紙又は板紙を形成する方法にも関する。最後に、紙又は板紙の填料含量を高める方法であって、(1)異種ブレンド又は沈降炭酸カルシウム填料をパルプスラリーと混ぜ合わせ、(2)残りの成分をパルプスラリーと混ぜ合わせ、(c)得られたパルプスラリー混合物を加工して、紙又は板紙を形成する方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙の填料含量を高めるために使用されるコポリマーブレンド組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
製紙産業においては、紙や板紙中の木質繊維を無機填料で代替することは、一般的に木質繊維よりも無機填料が安価であり、代替によりコストダウンができることから、好ましい。沈降炭酸カルシウムは、製紙業界で一般的に使用される填料である。無機填料を使用することで製紙の総費用は減少するものの、無機填料の含有量が高まることで、紙の全体嵩、強度及び剛度が減少する場合がある。この、紙の全体嵩、強度及び剛度は、いずれも最終用途において重要な特性である。
【0003】
このような最終紙製品の強度や剛度の減少は、木材パルプ及び無機填料の構造に起因する。製紙工程では、木材パルプの長繊維が絡み合うことで、強度の高い繊維網が形成される。無機填料はこのような長鎖繊維鎖を含まないため、無機填料の含量を高めると完成品の繊維網の強度が低下することがある。さらに、無機填料の含量が高まるにつれて、抄紙機のプレス部を出るとき、湿紙の未乾燥強度が減少する。この強度減少は機械の操業性に影響を及ぼし、湿紙のやぶれが原因でスループットの低下や休止時間の増加がおこるため、抄紙機の生産性が低下してしまう場合がある。
【0004】
先行技術において、製紙工程の一環として、紙や板紙の最終製品中の微細無機填料の歩留まりを高める処理法が提案されているが、最終製品の重量、強度及び操業性を維持すると同時に紙の無機填料含量を高める方法は開示されていない。
【0005】
例えば、乾燥紙力増強樹脂(dry strength resins)が先行技術において公知であり、最初の抄紙用パルプスラリー(完成紙料ともいう)に混合した場合、完成した紙製品の強度を高めることができる。両性で水溶性の乾燥紙力増強樹脂が先行技術において公知である。両性樹脂は、典型的には、フリーラジカル共重合反応により、アクリルアミドを、カチオン性単量体及びアニオン性単量体(例えば、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(「DADMAC」)及びアクリル酸)と反応させることで得られる。通常、上記樹脂は各イオン性構成成分が10〜15モル%(荷電重合体総量の20〜30モル%)に制限される。イオン性重合体の濃度が高いと、溶液が不安定になる。
【0006】
さらに、アニオン性重合体及びカチオン性重合体それぞれからなる2液型の乾燥紙力増強樹脂も先行技術において公知である。典型的には、上記各樹脂は連続的に添加される。すなわち、一方の電荷の樹脂を全て添加した後に、その反対の電荷の樹脂を全て添加する。アニオン性樹脂及びカチオン性樹脂を別々の樹脂として添加する場合に典型的に使用されるアニオン性樹脂は、アクリルアミド/アクリル酸共重合体である。また、カチオン性樹脂は、典型的には、DADMAC、アクリロイルエチルトリメチルアンモニウムクロリド(「AETAC」)、又は、ビニルホルムアミドの加水分解体のいずれかを含んでいる。
【0007】
例えば、パルプスラリーと無機填料とを別々に荷電ポリマーで処理した後、その填料を反対の電荷を帯びたイオン性ポリマーで処理し、処理した填料及びパルプスラリーを混ぜ合わせることによって、紙の無機填料含量を高めることができる。別の方法としては、無機填料だけを荷電ポリマーで処理した後、処理した填料とパルプスラリーを混ぜ合わせて、紙に加工することもできる。
【0008】
紙の無機填料含量を高めつつ紙の嵩を維持する別の方法として、無機填料の平均粒径を大きくすることが挙げられる。填料濃度を高くする、かつ/又は填料粒径を大きくすると、抄紙スラリーの加工表面の摩損の増加につながる可能性がある。この摩損性は、概して、製紙工程のウェットエンドにおいて、特に抄紙用フォーミングファブリック及び固定脱水エレメントでの摩耗の増加として現れる。また、これらの部分の他、スリッターナイフなどの表面での摩耗が増加することで、最終紙製品の品質が低下し、設備の維持費や修理費が増加することもある。上記問題を軽減する試みとして、界面活性剤やTEFLON(R)(ポリテトラフルオロエチレン)の抄紙スラリーへの添加などがこれまでに行われてきた。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、概して言えば、少なくとも1種のアニオン性単量体、1種のカチオン性単量体及び1種の非イオン性単量体から構成される重合体を含む異種ポリマーブレンドを使用すると、紙力、重量又は操業性に悪影響を及ぼすことなく紙の無機填料含量を高めることができるという驚くべき発見に関する。本発見により、紙や板紙の費用効果的な製造が可能となる。また、本発明は、その一態様において、新規の異種ポリマーブレンドを生成する新規な方法に関する。最後に、本発明は、また別の態様において、紙又は板紙の強度、重量及び操業性を維持するために異種ポリマーブレンドを沈降炭酸カルシウム填料とともに使用する方法に関する。
【0010】
本発明の一実施形態は、紙又は板紙の無機填料含量を高めるために使用される異種ポリマーブレンドを製造する方法であって、(a)第一の量の重合開始剤と1種以上のアニオン性又はカチオン性単量体とを非中性溶液に添加し(ここで各単量体の電荷は等しい)、(b)上記溶液に第二の量の上記重合開始剤と1種以上の非イオン性単量体とを添加し、(c)第三の量の上記重合開始剤と、工程(a)の上記単量体とは反対の電荷を有する1種以上のイオン性単量体とを添加し、(d)第四の量の上記重合開始剤を段階的に添加して、残存する単量体を反応させて、その結果、上記異種ポリマーブレンドを得、(e)必要に応じて、得られた異種ポリマーブレンドを中和する(ここで上記重合開始剤は水溶性アゾ開始剤からなる群から選択される)、方法である。
【0011】
上記アニオン性単量体は、(1)アクリル酸、(2)メタクリル酸、(3)スチレンスルホン酸、(4)ビニルスルホン酸、(5)アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、又は、(6)それらの混合物であってもよい。
【0012】
上記カチオン性単量体は、(1)ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、(2)アクリロイルエチルトリメチルアンモニウムクロリド、(3)メタクリロイルエチルトリメチルアンモニウムクロリド、(4)アクリロイルエチルトリメチルアンモニウムスルファート、(5)メタクリロイルエチルトリメチルアンモニウムスルファート、(6)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、(7)メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、(8)(2)〜(7)の非4級化体、(9)ビニルホルムアミド(その後加水分解されビニルアミンとなる)、又は、(10)それらの混合物であってもよい。
【0013】
上記非イオン性単量体は、(1)アクリルアミド、(2)メタクリルアミド、(3)N−アルキルアクリルアミド、(4)ビニルホルムアミド、又は、(5)それらの混合物であってもよい。
【0014】
本発明の別の実施形態は、異種ポリマーブレンドであって、(a)(1)アクリル酸、(2)メタクリル酸、(3)スチレンスルホン酸、(4)ビニルスルホン酸、(5)アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸及び(6)それらの混合物からなる群から選択される単量体から形成される1種以上のアニオン性重合体と、(b)(1)ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、(2)アクリロイルエチルトリメチルアンモニウムクロリド、(3)メタクリロイルエチルトリメチルアンモニウムクロリド、(4)アクリロイルエチルトリメチルアンモニウムスルファート、(5)メタクリロイルエチルトリメチルアンモニウムスルファート、(6)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、(7)メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、(8)(2)〜(7)の非4級化体、(9)ビニルホルムアミド(その後加水分解されビニルアミンとなる)及び(10)それらの混合物からなる群から選択される単量体から形成される1種以上のカチオン性重合体と、(c)(1)アクリルアミド、(2)メタクリルアミド、(3)N−アルキルアクリルアミド、(4)ビニルホルムアミド及び(5)それらの混合物からなる群から選択される単量体から形成される1種以上の非イオン性重合体とを含む異種ポリマーブレンドである。
【0015】
また、異種ポリマーブレンドは、(a)少なくとも1種のアニオン性単量体及び少なくとも1種の非イオン性単量体から構成される1種以上の共重合体と、(b)少なくとも1種のカチオン性単量体及び少なくとも1種の非イオン性単量体とから構成される1種以上の共重合体とをさらに含んでいてもよい。
【0016】
また、異種ポリマーブレンドは、少なくとも1種のアニオン性単量体、少なくとも1種のカチオン性単量体及び少なくとも1種の非イオン性単量体から構成される1種以上の三元共重合体をさらに含んでいてもよい。
【0017】
本発明のさらに別の実施形態は、紙又は板紙の填料含量を高める方法であって、(a)異種ポリマーブレンドを沈降炭酸カルシウム填料と混ぜ合わせて、混合物を形成し、(b)得られた混合物をパルプスラリーと混ぜ合わせ、(c)得られたパルプスラリー混合物を加工して、紙又は板紙を形成する方法である。
【0018】
本発明の別の実施形態は、紙又は板紙の填料含量を高める方法であって、(a)異種ポリマーブレンド又は沈降炭酸カルシウム填料を、パルプスラリーと混ぜ合わせて、混合物を形成し、(b)工程(a)の残りの成分を上記パルプスラリー混合物と混ぜ合わせ、(c)得られたパルプスラリー混合物を加工して、紙又は板紙を形成する方法である。
【0019】
本発明の別の実施形態は、紙又は板紙の填料含量を高める方法であって、(a)ポリ−ジアリルジメチルアンモニウムクロリド/アクリルアミド/アクリル酸共重合体混合物を沈降炭酸カルシウム填料と混ぜ合わせ、(b)得られた混合物をパルプスラリーと混ぜ合わせ、(c)得られたパルプスラリーを加工して、紙又は板紙を形成する方法である。
【0020】
本発明のさらに別の実施形態は、紙又は板紙の填料含量を高める方法であって、(a)ポリ−ジアリルジメチルアンモニウムクロリド/アクリルアミド/アクリル酸共重合体混合物又は沈降炭酸カルシウム填料をパルプスラリーと混ぜ合わせ、(b)工程(a)の残りの成分を上記パルプスラリー混合物と混ぜ合わせ、(c)得られたパルプスラリー混合物を加工して、紙又は板紙を形成する方法である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本願明細書において、単数形を表す用語(冠詞)の“a”や“the”は同義であり、別段の意味が明示されない限り、“one or more(1つ以上)”や“at least one(少なくとも1つ)”と置き換えて使用することができる。従って、例えば、本明細書や添付の特許請求の範囲における“a compound(化合物)”に関しては、1種類の化合物を指すこともあれば、複数種の化合物を指すこともある。また、特に指定のない限り、数値は全て、「約」という語で修飾されているものとして理解されるべきである。本明細書中に記載される全ての組成物及びプロセスにおいて、使用した単量体や重合体反応開始剤などの未反応の構成成分を少なくとも痕跡量は含んでいる可能性が高いことは理解していただけるであろう。特に断りのない限り、「重量%」は個々のブレンド中に含まれる固形分の重量%を指し、水溶液に含まれる水分の重量は除く。
【0022】
本発明の種々の実施形態に係る組成物及びプロセスは、紙や板紙の無機填料含量を高めるために用いるのが好適である。また、本発明によって湿紙完成紙料の操業性を高めることができる。本発明は、アニオン性単量体、カチオン性単量体及び非イオン性単量体から形成される重合体の新規異種ポリマーブレンドを包含する。また、本発明は、新規異種ポリマーブレンドのその場(in situ)製造法も包含する。また、本発明には、パルプスラリーを異種ポリマーブレンド及び沈降炭酸カルシウム填料で処理することによって紙又は板紙の無機填料含量を高める方法も包含される。最後に、本発明には、パルプスラリーをポリ−ジアリルジメチルアンモニウムクロリド/アクリルアミド/アクリル酸共重合体混合物及び沈降炭酸カルシウム填料で処理することによって紙の無機填料含量を高める方法も包含される。
【0023】
安定した異種ポリマーブレンド水性組成物は、非中性溶液中で段階的反応法によりその場(in situ)で調製できる。反応前及び反応の間は溶液を非中性とし、アニオン性単量体とカチオン性単量体の間の反応を最小限に抑える。上記方法は、(a)熱重合開始剤を使用して非中性溶液中で1種以上のアニオン性単量体を重合する工程、(b)上記溶液に1種以上の非イオン性単量体及び追加の熱重合開始剤を添加する工程、(c)上記溶液に1種以上のカチオン性単量体及び追加の熱重合開始剤を添加する工程、(d)残存する単量体と追加の熱重合開始剤を反応させる工程、並びに、(e)得られた水性異種ポリマーブレンド混合物を中和する工程を含む。得られた異種重合体組成物には、最も多い場合で、非イオン性単独重合体、カチオン性単独重合体、アニオン性単独重合体、アニオン性/非イオン性共重合体、カチオン性/非イオン性共重合体、及び、場合によってはアニオン性/非イオン性/カチオン性三元共重合体が含まれる。上記組成物は熱重合開始剤及び構成成分である単量体成分をいずれも微量ながら含むものであることは、当該技術分野においては理解されているものである。
【0024】
下記の実施例に示されるように、単量体成分の添加順序を逆にして、最初にカチオン性単量体を反応させてから最後にアニオン性単量体を反応させてもよい。別の方法としては、アニオン性単量体、カチオン性単量体及び非イオン性単量体を別々に重合した後で得られた各重合体を組み合わせてブレンドにすることにより異種ポリマーブレンドを形成してもよい。その場(in situ)反応により異種ポリマーブレンドを生成するのが好ましい。
【0025】
重合開始剤としては、公知の重合開始法で用いられるものであればどのようなものでもよい。該重合開始法としては、以下に限定されないが、酸化還元や熱重合などが挙げられる。上記重合開始剤は、好ましくは熱重合開始剤である。上記重合開始剤は、より好ましくは水溶性アゾ開始剤である。上記重合開始剤は、最も好ましくはアゾジイソブチルアミジン二塩酸塩(V50,Wako(バージニア州リッチモンド)より入手可)である。
【0026】
単量体は製紙業界で通常用いられる単量体をいずれも用いることができる。アニオン性単量体は、好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸又はアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸である。アニオン性単量体は、より好ましくはアクリル酸である。
【0027】
カチオン性単量体は、好ましくはジアリルジメチルアンモニウムクロリド;アクリロイルエチルトリメチルアンモニウムクロリド;メタクリロイルエチルトリメチルアンモニウムクロリド;アクリロイルエチルトリメチルアンモニウムスルファート;メタクリロイルエチルトリメチルアンモニウムスルファート;アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド;メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド;アクリロイルエチルトリメチルアンモニウムクロリド、メタクリロイルエチルトリメチルアンモニウムクロリド、アクリロイルエチルトリメチルアンモニウムスルファート、メタクリロイルエチルトリメチルアンモニウムスルファート、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリドの非4級化体;及びビニルホルムアミド(その後加水分解されビニルアミンとなる)である。カチオン性単量体は、より好ましくはジアリルジメチルアンモニウムクロリドである。
【0028】
非イオン性単量体は、好ましくは、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド又はビニルホルムアミドである。非イオン性単量体は、より好ましくは、アクリルアミドである。
【0029】
異種ポリマーブレンドの各構成成分のモル比は、各単量体につき約1モル%〜約50モル%であってもよい。反応物質のモル比は、アニオン性単量体が約10〜約30モル%、非イオン性単量体が約40〜約80モル%、カチオン性単量体が約10〜約30モル%であるのが好ましい。
【0030】
含まれる各単量体成分のモル比に応じて、異種ポリマーブレンドは最終的に、正若しくは負に帯電しているか、又は、実質的に等電である。アニオン性成分とカチオン性成分のモル比は、中性pHで異種ポリマーブレンドが実質的に等電となるように選択するのが好ましい。しかしながら、正味電荷が陰性又は陽性であるのが有利な用途もある。
【0031】
2官能化合物の存在下でなければ、単量体の重合は直鎖状に進行する。特定の用途によっては分枝鎖状の重合体が必要な場合もあるが、その場合には、低濃度の2官能又は多官能化合物を添加して、重合反応を1ステップ以上行ってもよい。反応に2官能又は多官能化合物が含まれず、得られた重合体が実質的に直鎖状であるのが好ましい。
【0032】
異種ポリマーブレンドは、製紙業界において従来使用されてきた形態であれば、どのような形態でも使用することができる。その形態としては、以下に限定されないが、水性懸濁液;逆相エマルジョン及びマイクロエマルジョン;塩水分散物;並びに、乾燥又は沈降ポリマーブレンドを粉砕又は粉末化したものなどが挙げられる。異種ポリマーブレンドは安定な水性懸濁液の状態で使用するのが好ましい。
【0033】
異種ポリマーブレンドは、得られる製品の物性(嵩(重量)、操業性、強度など)を維持しつつ、紙や板紙の無機填料含量を実質的に高めるために用いることができる。無機填料はバージン木質繊維や再生木質繊維に比べて安価であるため、填料含量が高まると有利に製紙を行うことができる。
【0034】
異種ポリマーブレンドを使用することで、最終紙製品の他の物性を低下させることなく、紙又は板紙の無機填料含量を10%(乾燥重量当たり)高めることができる。本発明は無機填料であればどのようなものとでも用いることができる。上記無機填料としては、以下に限定されないが、沈降(軽質)炭酸カルシウム、粉砕(重質)炭酸カルシウム、カオリン粘土、焼成カオリン粘土、タルク、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム及び二酸化チタンなどが挙げられる。無機填料は、好ましくは沈降炭酸カルシウム、粉砕炭酸カルシウム又はカオリン粘土である。無機填料は、より好ましくは沈降炭酸カルシウムである。無機填料は最も好ましくはアラゴナイト系針状沈降炭酸カルシウム又はカルサイト系偏三角面体状結晶クラスター(clustered scalenohedral calcite)沈降炭酸カルシウムである。それら本発明の好ましい実施形態では、他の無機填料よりも高いレベルの完成紙剛度が得られた。
【0035】
本発明の異種ポリマーブレンドを無機填料と混合する填料前処理工程を行った後でパルプスラリーとの最終混合を行ってもよいし、あるいは、異種ポリマーブレンド及び無機填料をパルプスラリーに段階的に添加してもよい。異種ポリマーブレンド及び無機填料をパルプスラリーに添加する前に混合するのが好ましい。また、本発明の化合物は抄紙機のウェットエンドにおいて適用してもよい。
【0036】
異種ポリマーブレンドは広範囲の処理濃度で効果を生ずる。パルプスラリーは、完成紙料(パルプスラリー+添加剤)の全乾燥重量に対して約0.05〜約1重量%の異種ポリマーブレンドで処理するのが好ましい。パルプスラリーは、完成紙料の全乾燥重量に対して約0.1〜約0.5重量%の異種ポリマーブレンドで処理するのがより好ましい。
【0037】
異種ポリマーブレンドは広範囲の最終紙製品や紙品種に対して適用することができる。それらの例としては、以下に限定されないが、非塗工コピー紙、塗工上質紙、塗工中質紙、非塗工中質紙、及び、包装紙などが挙げられる。
【0038】
完成紙又は板紙中の無機填料総量を高めつつ望ましい完成紙品質を維持できることに加えて、本発明には、填料が高含量でもパルプスラリーの操業性を向上させ、かつ、抄紙機のフォーミングファブリック及び固定脱水エレメントを潤滑するという予想外の利点がある。上記ポリマーブレンドを用いることで、填料の配合量が多い湿紙の未乾燥時の繊維間結合が強くなる。この繊維間結合のおかげで、填料の配合量が多くても機械の操業性が向上する。また、パルプスラリーの無機填料含量が高まるにつれ、抄紙機の機械部品では無機填料よる摩損が大きくなる。この摩損により維持費や機械の休止時間が増加するため、生産性が減少する。ファブリックや部品の寿命を延ばすことにより、製紙にかかる総費用を低減し、機械の操業時間を長くすることができる。
【0039】
TEFLON(R)などのスリップ剤を使用して抄紙機が受ける摩擦を低減できるが、該スリップ剤は完成紙製品の品質に悪影響を及ぼす場合があることに加え、その多くは高価である。本発明の異種ポリマーブレンドを用いることにより、実験室の試験では、抄紙機におけるファブリック寿命が向上した。パルプスラリーを本発明の化合物で処理する場合、填料の全乾燥重量に対して約0.01〜約10重量%の処理濃度とすることで、摩損が低減する。填料の全乾燥重量に対して約1.5重量%の配合量とするのが好ましい。異種ポリマーブレンドを適用して、完成紙又は板紙の無機填料含量を高めるのと同様な方法で摩損を低減することもできる。
【実施例】
【0040】
以下の実施例は、本発明の実施形態を例として説明するための一助となるものである。
【0041】
以下の各実施例において、重量%は有効重合体固形分の重量%を指し、水溶液は除く。実施例7〜14では、パルプスラリーの填料含量を高めるために新規の異種ポリマーブレンドを使用する方法を説明しているが、これらの実施例においては、製品の配合量は全て、処理される物質(木質繊維+填料などの添加剤)の全乾燥重量に対する有効物質(固形分)の百分率で表し、水分は計算から除外する。
【0042】
実施例1:In−Situ異種ポリマーブレンドの合成
【0043】
異種ポリマーブレンドサンプルを以下の方法により調製した。アクリルアミド(SNF(ジョージア州ライスボロ)より入手可)及びDADMAC(Kemira(ジョージア州ケネソー)より入手可)を別々のフラスコに入れ、無酸素窒素で30分間スパージした。スパージ後のアクリルアミド溶液を含むフラスコに10%硫酸銅(II)(Sigma Aldrich(ミズーリ州セントルイス)より入手可)1.10gを添加し、発熱反応の暴走を防ぐため上記フラスコをモニタリングした。
【0044】
それとは別に、コンデンサー、メカニカルスターラー、調節器に接続した熱電対、スパージ用の窒素注入口、窒素排出口、及び、加熱マントルを備えた3000mL容の4つ口丸底フラスコを用意した。このフラスコにアクリル酸Rohm&Haas(ペンシルベニア州フィラデルフィア)より入手可)35.51gを添加した。このフラスコに脱イオン水1432.53gを入れて無酸素窒素で30分間スパージした。
【0045】
別の100mL容丸底フラスコにa,a’−アゾジイソブチルアミジン二塩酸塩(V50,Wako(バージニア州リッチモンド)より入手可)の10%溶液46.87gを加え、無酸素窒素で30分間スパージしつつ275rpmで攪拌した。スパージ後のV50のうち20%(9.37g)を上記アクリル酸に添加した。この3000mL容フラスコを、275rpmで攪拌しつつ、55℃まで30分間加熱した。発熱反応が確実に暴走しないように温度をモニタリングした。氷浴を準備しておき温度を制御した。
【0046】
スパージ後のアクリルアミド溶液323.63gを上記3000mL容フラスコに添加した後、さらに、上記スパージ後のV50のうち20%(9.37g)を添加した。この3000mL容フラスコを、275rpmで攪拌しつつ、55℃まで30分間加熱した。30分後、温度を65℃に調節し、スパージ後のDADMAC溶液121.33gを添加した。シリンジポンプに残りのV50溶液(28.12g)を入れた。そのV50溶液のうち40%(11.25g)を、その後270分にわたって、加熱下、275rpmで攪拌しながら滴下した。
【0047】
270分後、上記3000mL容フラスコの温度を75℃まで上昇させ、残りのV50溶液(16.87g)をその後30分にわたって滴下した。30分後、この3000mL容フラスコの温度を80℃まで上昇させ、さらに60分間80℃で加熱した。得られた溶液を室温まで冷却した。この溶液のpHを測定し、水酸化ナトリウムで7に調整した。
【0048】
反応の結果、安定した不透明色の異種ポリマーブレンド懸濁液が得られ、この懸濁液は、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリ−アクリルアミド/アクリル酸共重合体、ポリ−DADMAC、ポリ−DADMAC/アクリルアミド共重合体、及び、ポリ−アクリルアミド/アクリル酸/DADMAC三元共重合体を有効重合体濃度10%で含んでおり、そのブルックフィールド粘度は3000cps(#3LVTスピンドルにより30rpm、22℃で測定)であった。中間組成物の反応速度論的サンプリングや1H NMRを用いたサンプリングによって上記ブレンドの各画分を算出した。また、反応後に、生成物を13C NMRにより分析した。最終異種ポリマーブレンドは、以下の成分(重合体固形分の重量%で表す):ポリアクリル酸13%、ポリ−アクリルアミド/アクリル酸共重合体4%、ポリアクリルアミド64%、ポリ−DADMAC/アクリルアミド共重合体6%、ポリ−DADMAC12%、及び、ポリ−アクリル酸/アクリルアミド/DADMAC三元共重合体1%を含んでいた。異種ポリマーブレンドは、室温で30日間保存しても沈殿もゲル化も分離もしなかった。
【0049】
実施例2:In−Situ異種ポリマーブレンドの合成
【0050】
異種ポリマーブレンドサンプルを以下の方法により調製した。アクリルアミド(Kemira(ジョージア州ケネソー)より入手可)及びDADMAC(Sigma Aldrich(ミズーリ州セントルイス)より入手可)を別々のフラスコに入れ、無酸素窒素で30分間スパージした。
【0051】
それとは別に、コンデンサー、メカニカルスターラー、調節器に接続した熱電対、スパージ用の窒素注入口、窒素排出口、及び、加熱マントルを備えた500mL容の4つ口丸底フラスコを用意した。このフラスコにアクリル酸(Sigma Aldrich(ミズーリ州セントルイス)より入手可)14.06gを添加した。このフラスコに脱イオン水205gを入れて無酸素窒素で30分間スパージした。この500mL容フラスコにイソプロパノール(0.24g,VWR(ペンシルベニア州ウェストチェスター)より入手可)を添加した。
【0052】
別の50mL容丸底フラスコにa,a’−アゾジイソブチルアミジン二塩酸塩(V50,Wako(バージニア州リッチモンド)より入手可)の20%溶液11.13gを加え、無酸素窒素で30分間スパージしつつ275rpmで攪拌した。スパージ後のV50のうち20%(2.23g)を、上記アクリル酸に添加した。この500mL容フラスコを、275rpmで攪拌しつつ、45℃まで45分間加熱した。発熱反応が確実に暴走しないように温度をモニタリングした。氷浴を準備しておき温度を制御した。
【0053】
スパージ後のアクリルアミド溶液(54.92g)を上記500mL容フラスコに添加してから、スパージ後のV50(40%(4.46g))を速やかに添加した。この500mL容フラスコを、275rpmで攪拌しつつ、45℃まで45分間加熱した。45分後に、スパージ後のDADMAC溶液(48.04g)及びスパージ後のV50(20%(2.23g))を添加した。この500mL容フラスコを、275rpmで攪拌しつつ、45℃で45分間加熱した。
【0054】
45分後、上記500mL容フラスコの温度を75℃まで上昇させ、残りのV50溶液(2.23g)を添加した。この混合液を75℃で1時間加熱した。得られた溶液を室温まで冷却した。この溶液のpHを測定し、水酸化ナトリウムで7に調整した。
【0055】
反応の結果、安定した不透明色の異種ポリマーブレンド懸濁液が得られ、この懸濁液は、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリ−アクリルアミド/アクリル酸共重合体、ポリ−DADMAC、ポリ−DADMAC/アクリルアミド共重合体、及び、ポリ−アクリルアミド/アクリル酸/DADMAC三元共重合体を有効重合体濃度10.2%で含んでおり、そのブルックフィールド粘度は580cps(#3LVTスピンドルにより30rpm、22℃で測定)であった。中間組成物の反応速度論的サンプリングや1H NMRを用いたサンプリングによって上記ブレンドの各画分を算出した。異種ポリマーブレンドは、室温で30日間保存しても沈殿もゲル化も分離もしなかった。
【0056】
実施例3:In−Situ異種ポリマーブレンドの合成
【0057】
異種ポリマーブレンドサンプルを以下の方法により調製した。アクリルアミド及びDADMAC(共にSNF(ジョージア州ライスボロ)より入手可)を別々のフラスコに入れ、無酸素窒素で30分間スパージした。
【0058】
それとは別に、コンデンサー、メカニカルスターラー、調節器に接続した熱電対、スパージ用の窒素注入口、窒素排出口、及び、加熱マントルを備えた500mL容の4つ口丸底フラスコを用意した。このフラスコに、アクリル酸(SNF(ジョージア州ライスボロ)より入手可)14.06g及び脱イオン水205.49gを添加し、無酸素窒素でスパージしつつ275rpmで30分間攪拌した。
【0059】
別の50mL容丸底フラスコにa,a’−アゾジイソブチルアミジン二塩酸塩(V50,Wako(バージニア州リッチモンド)より入手可)の20%溶液(11.13g)を加え、無酸素窒素で30分間スパージしつつ275rpmで攪拌した。スパージ後のV50のうち20%(2.23g)を、上記アクリル酸に添加した。この500mL容フラスコを、275rpmで攪拌しつつ、45℃まで45分間加熱した。発熱反応が確実に暴走しないように温度をモニタリングした。
【0060】
スパージ後のアクリルアミド溶液54.92gを上記500mL容フラスコに添加してから、スパージ後のV50のうち40%(4.46g)を速やかに添加した。この500mL容フラスコを、275rpmで攪拌しつつ、45℃まで45分間加熱した。45分後に、スパージ後のDADMAC溶液48.04g及びスパージ後のV50のうち20%(2.23g)を添加した。この500mL容フラスコを、275rpmで攪拌しつつ、45℃で45分間加熱した。
【0061】
45分後、上記500mL容フラスコの温度を75℃まで上昇させ、残りのV50溶液(2.23g)を添加した。この混合液を75℃で1時間加熱した。得られた溶液を室温まで冷却した。この溶液のpHを測定し、水酸化ナトリウムを用いて7に調整した。
【0062】
反応の結果、安定した不透明色の異種ポリマーブレンド懸濁液が得られ、この懸濁液は、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリ−アクリルアミド/アクリル酸共重合体、ポリ−DADMAC、ポリ−DADMAC/アクリルアミド共重合体及びポリ−アクリルアミド/アクリル酸/DADMAC三元共重合体を、有効重合体濃度10.4%で含んでおり、そのブルックフィールド粘度は774cps(#3LVTスピンドルにより30rpm、22℃で測定)であった。中間組成物の反応速度論的サンプリングや1H NMRを用いたサンプリングによって上記ブレンドの各画分を算出した。異種ポリマーブレンドは、室温で30日間保存しても沈殿もゲル化も分離もしなかった。
【0063】
実施例4:反応後(post reaction)の重合体を混合するポリマーブレンドの合成
【0064】
異種ポリマーブレンドを、反応済みの(post reaction)重合体から合成した。まず、3種の重合体を製造した。ポリアクリルアミドを製造するために、アクリルアミド(SNF(ジョージア州ライスボロ)より入手可)219.9gを2000mL容丸底フラスコに加え、脱イオン水800gで希釈した。この混合液を、275rpmで攪拌し、無酸素窒素で30分間スパージした。30分後、硫酸銅(II)(0.11g)を添加した。この反応器を45℃まで加熱し、該フラスコにV50の10%脱イオン水溶液35.6gを添加した。反応液は50℃まで発熱し、高粘度を示した。粘度を低減するため、脱酸素脱イオン水400gを添加した。45分後、このフラスコに10%V50溶液17.8gを添加し、該フラスコを75℃まで1時間加熱した。重合体のpHは調整しなかった。反応の結果、固形分8.0%のポリアクリルアミド溶液1419gが得られた。
【0065】
ポリアクリル酸を製造するために、アクリル酸(SNF(ジョージア州ライスボロ)より入手可)28.1gを1000mL容丸底フラスコに加え、脱イオン水400gで希釈した。この混合液を275rpmで攪拌し、無酸素窒素で30分間スパージした。30分後、このフラスコを45℃まで加熱し、該フラスコにV50の10%脱イオン水溶液17.80gを添加した。反応液を45℃(50℃までわずかに発熱した)で45分間保持した。重合体のpHは調整しなかった。反応の結果、固形分6.9%の透明なポリアクリル酸溶液420gが得られた。
【0066】
ポリ−DADMACを製造するために、DADMAC(SNF(ジョージア州ライスボロ)より入手可)121.4gを1000mL容丸底フラスコに加え、脱イオン水538gで希釈した。この混合液を275rpmで攪拌し、無酸素窒素で30分間スパージした。次に、この反応器を75℃まで加熱し、該フラスコにV50の10%脱イオン水溶液13.1gをシリンジポンプによりその後120分かけて添加した。120分後、さらに、V50の10%脱イオン水溶液3.3gを添加し、温度を80℃まで上昇させ、30分間保持した。重合体のpHは調整しなかった。反応の結果、固形分12.80%の透明なポリ−DADMAC溶液664gが得られた。
【0067】
3種の重合体を製造した後で、反応後の重合体をブレンドした異種ポリマーブレンドを製造した。まず、ポリアクリル酸(固形分7.0重量%)230gをポリアクリルアミド溶液(固形分8.5重量%)380gへとゆっくりと混合した。得られた混合液を脱イオン水420gで希釈し、400rpmで激しく攪拌した。この混合液を攪拌しつつ、ポリ−DADMAC溶液(固形分16.6重量%)220gを該ブレンドにゆっくりと添加した。50%NaOH溶液を段階的に添加して沈殿物質を全て再溶解させ、このブレンドのpHを7.0に調整した。
【0068】
得られたブレンドは、安定な、不透明色の異種ブレンド懸濁液であり、この懸濁液の有効重合体濃度は11.7重量%であり、そのブルックフィールド粘度は1200cpsであった。このブレンドは、ポリアクリル酸19重量%、ポリアクリルアミド38重量%、及び、ポリ−DADMAC43重量%を含むブレンドであった。
【0069】
実施例5:4−スチレンスルホン酸ナトリウム水和物(SSA)、アクリルアミド及びメチルアクロイル−N−プロピルトリメチルアンモニウムクロリド(MAPTAC)を含む異種ポリマーブレンドの合成
【0070】
SSA/アクリルアミド/MAPTAC異種ポリマーブレンドのサンプルを以下の方法により調製した。アクリルアミド(Kemira(ジョージア州ケネソー)より入手可)及びMAPTAC(Sigma Aldrich(ミズーリ州セントルイス)より入手可)を別々のフラスコに入れ、無酸素窒素で30分間スパージした。
【0071】
それとは別に、コンデンサー、メカニカルスターラー、調節器に接続した熱電対、スパージ用の窒素注入口、窒素排出口、及び、加熱マントルを備えた500mL容の4つ口丸底フラスコを用意した。このフラスコにSSA(Sigma Aldrich(ミズーリ州セントルイス)より入手可)133.25g及び脱イオン水23.72gを加え、275rpmで30分間攪拌した。このフラスコに脱イオン水242gを入れ、275rpmで攪拌し、無酸素窒素で30分間スパージした。
【0072】
別の50mL容丸底フラスコにV50(Wako(バージニア州リッチモンド)より入手可)の20%溶液7.45gを加え、無酸素窒素で30分間スパージしつつ275rpmで攪拌した。スパージ後のV50(20%(1.49g))を上記SSAに添加した。この500mL容フラスコを、275rpmで攪拌しつつ、45℃まで45分間加熱した。
【0073】
スパージ後のアクリルアミド溶液36.75gを上記500mL容フラスコに添加してから、スパージ後のV50溶液のうち40%(2.98g)を速やかに添加した。この500mL容フラスコを、275rpmで攪拌しつつ、50℃まで45分間加熱した。45分後に、スパージ後のMAPTAC溶液57.06g、及び、スパージ後のV50のうち20%(1.49g)をできるだけ速やかに添加した。この500mL容フラスコを、275rpmで攪拌しつつ、50℃で45分間加熱した。
【0074】
45分後、上記500mL容フラスコの温度を75℃まで上昇させ、残りのV50溶液(1.49g)を添加した。この混合液を75℃で1時間加熱した。得られた溶液を室温まで冷却した。この溶液のpHを測定し、水酸化ナトリウムを用いて7に調整した。
【0075】
反応の結果、安定な、不透明色の異種ポリマーブレンド懸濁液が得られた。この懸濁液の有効重合体濃度は15.3%であり、そのブルックフィールド粘度は46cps(#63スピンドルにより50rpm、22℃で測定)であった。残存するSSA及びアクリルアミド単量体を測定したところ、その残存量は2ppm未満であった。この懸濁液は希釈すると分離し、製紙用に適した均一な懸濁液とするには激しく攪拌しなければならなかった。
【0076】
実施例6:(実施例1と比べて)添加順序を逆にした異種ポリマーブレンドの合成
【0077】
異種ポリマーブレンドのサンプルを以下の方法により調製した。アクリルアミド(SNF(ジョージア州ライスボロ)より入手可)161.9g及びアクリル酸(Aldrich(ミズーリ州セントルイス)より入手可)17.76gを別々のフラスコに入れた。このアクリルアミドを脱イオン水716.6g及び固体の硫酸銅(II)(Sigma Aldrich(ミズーリ州セントルイス)より入手可)0.11gと共に混合した。上記両フラスコとも無酸素窒素で30分間スパージした。
【0078】
それとは別に、250mL容の滴下漏斗を嵌着したYコネクタ、コンデンサー、メカニカルスターラー、調節器に接続した熱電対、スパージ用の窒素注入口、窒素排出口、及び、加熱マントルを備えた500mL容の4つ口丸底フラスコを用意した。このフラスコにDADMAC(SNF(ジョージア州ライスボロ)より入手可)60.68gを加え、275rpmで攪拌し、無酸素窒素で30分間スパージした。
【0079】
別の50mL容丸底フラスコにV50(Wako(バージニア州リッチモンド)より入手可)の10%溶液を加え、無酸素窒素で30分間スパージしつつ275rpmで攪拌した。シリンジポンプにスパージ後のV50溶液9.38gを入れ、この溶液を上記500mL容フラスコに180分かけて滴下注入した。この溶液を上記フラスコに添加する間、275rpmで攪拌しつつ、温度を65℃に一定に保った。
【0080】
スパージ後のアクリルアミド溶液を上記500mL容フラスコに添加してから、スパージ後の10%V50溶液4.69gを速やかに添加した。この500mL容フラスコを50℃まで冷却し、275rpmで攪拌しつつ、その温度に1時間保持した。このフラスコにアクリル酸17.76g及びV50溶液4.69gを速やかに添加した。275rpmで攪拌しつつ、温度を50℃で1時間保持した。
【0081】
1時間後、上記500mL容フラスコの温度を75℃まで上昇させ、残りのV50溶液4.69gをシリンジポンプにより30分かけて滴下した。V50溶液を全て添加した後、このフラスコの温度を80℃まで1時間加熱した。得られた溶液を室温まで冷却した。この溶液のpHを測定し、水酸化ナトリウムを用いて7.4に調整した。
【0082】
反応の結果、薄灰色で粘性の異種ポリマーブレンド懸濁液が得られた。この懸濁液の有効重合体濃度は14.5%であり、そのブルックフィールド粘度は20,100cps(#63スピンドルにより5rpm、22℃で測定)であった。中間組成物の反応速度論的サンプリングや1H NMRを用いたサンプリングによって上記ブレンドの各画分を算出した。1H NMR分析の結果、DADMACのポリ−DADMACへの変換率は99.9%、未反応のアクリル酸は1ppm未満、未反応のアクリルアミドは253ppmであった。異種ポリマーブレンドは、室温で30日間保存しても沈殿もゲル化も分離もしなかった。
【0083】
実施例7:最終紙又は板紙製品中の紙灰分を増加させた場合の製紙における有用性
【0084】
実施例2と同様に合成された本発明の異種ポリマーブレンドを、アラゴナイト系針状クラスター沈降炭酸カルシウム填料(ULTRABULK(R)II PCC,Specialty Minerals(ペンシルベニア州ベスレヘム)より入手可)とともに使用した。上記填料の平均粒径は3.9μmであった。本発明の異種ポリマーブレンドについて、製紙前の填料前処理剤としての試験と、異種ポリマーブレンドで処理する前に填料が配合されている状態で、製紙途中に添加するウェットエンド添加剤としての試験とを、それぞれ行った。どの試験においても、完成紙料の全乾燥重量当たり0.45重量%に相当する処理量で重合体を添加した。いずれの添加法でも最終紙製品が優れた特性を示すという結果が得られた。
【0085】
漂白広葉樹繊維70重量%及び漂白針葉樹繊維30重量%からなるパルプスラリーを使用し、目標紙灰分30重量%(乾燥重量)として最終紙製品を製造した。繊維原料を目標ろ水度450mL CSFとして叩解した。他の標準的な添加剤(全て完成紙料の全乾燥重量の重量%で表す)として、0.75%Stalok 300デンプン(Tate and Lyle(イリノイ州ディケーター)より入手可)、0.25%アラム(General Chemical(ニュージャージー州パーシッパニー)より入手可)、0.1%Prequel 1000 ASAサイズ剤、0.015%PERFORM PC8138凝集剤、及び、0.01%PERFORM SP9232ろ水向上剤(全てHercules,Inc.(デラウェア州ウィルミントン)より入手可)を使用した。サイズプレス処理はETHYLEX 2015ヒドロキシエチル化コーンスターチ(50lb/T,Tate and Lyle(イリノイ州ディケーター)より入手可)の表面処理とした。抄紙機は目標上側平滑度150シェフィールド単位としてカレンダリングを行った。
【0086】
本発明を用いた完成紙製品は、カルサイト系偏三角面体状クラスター填料(SMI ALBACAR(R)LO PCC(Specialty Minerals,Inc.より入手可(ペンシルベニア州ベスレヘム))、平均粒径2.1μm)を目標紙灰分20重量%(完成紙料の乾燥重量当たり)として使用し、かつ、異種ポリマーブレンドを使用しないことを除き、同じ変数及び添加剤を使用して製造した紙と比較した。実験の結果を表1に示す。填料含量が高い場合のALBACAR(R)LO PCC対照区と比較して、本発明を用いると、填料含量が高くなっても剛度及び強度が維持された。填料を前処理する場合及び共重合体をパルプ完成紙料に添加する場合のいずれにおいても、高い填料配合量で紙力が維持されていた。
【0087】
【表1】

【0088】
実施例8:異種ポリマーブレンドの、2つの成分のポリマーのブレンド物に対する比較
【0089】
本発明の異種ポリマーブレンドを実施例3と同様にして合成し、反応後の重合体を混合したカチオン性/アニオン性重合体ブレンドと比較した。カチオン性重合体及びアニオン性重合体は、実施例3の異種ポリマーブレンドの合成に使用したのと同じカチオン性単量体及びアニオン性単量体を原料とするものである。上記各重合体は、PERFORM PC8229及びHERCOBOND 2000(共にHercules,Inc.(デラウェア州ウィルミントン)より入手可)として入手可能である。
【0090】
漂白広葉樹繊維70重量%及び漂白針葉樹繊維30重量%からなるパルプスラリーを使用し、目標紙灰分30重量%(乾燥重量)として最終紙製品を製造した。繊維原料を目標ろ水度450mL CSFとして叩解した。他の標準的な添加剤(全て完成紙料の全乾燥重量の重量%で表す)として、0.75%Stalok 300デンプン(Tate and Lyle(イリノイ州ディケーター)より入手可)、0.25%アラム(General Chemical(ニュージャージー州パーシッパニー)より入手可)、0.1%Prequel 1000 ASAサイズ剤、0.015%PERFORM PC8138凝集剤、及び、0.01%PERFORM SP9232ろ水向上剤(全てHercules,Inc.(デラウェア州ウィルミントン)より入手可)を使用した。サイズプレス処理はETHYLEX 2015ヒドロキシエチルコーンスターチ(50lb/T,Tate and Lyle(イリノイ州ディケーター)より入手可)の表面処理とした。抄紙機は目標上側平滑度150シェフィールド単位としてカレンダリングを行った。さらに、本発明を用いて製造した完成紙製品は、カルサイト系紡錘状填料(SMI ALBACAR(R)LO PCC(Specialty Minerals,Inc.(ペンシルベニア州ベスレヘム)より入手可)、平均粒径2.1μm)を目標紙灰分20重量%(完成紙料の乾燥重量当たり)として使用し、かつ、異種ポリマーブレンドを使用しないことを除き、同じ変数及び添加剤を使用して製造した紙と比較した。試験の結果を表2に示す。
【0091】
上側平滑度が150シェフィールド単位と一定である場合、いずれの重合体処理法でも未処理の完成紙よりも面内及びZ軸方向の両引張特性が向上した。重合体を添加しないでアラゴナイト系針状沈降炭酸カルシウムをカルサイト系偏三角面体状結晶クラスター沈降炭酸カルシウムと比較した場合、前者は強度の面でいくらか有利であるが、異種重合体化合物をアラゴナイト系針状沈降炭酸カルシウム填料と併用すると最も高い剛度及び完成紙総合品質が得られた。
【0092】
【表2】

【0093】
実施例9:反応後の重合体を混合したブレンドに対する本発明の比較
【0094】
本発明の異種ポリマーブレンドを実施例2と同様にして合成し、実施例4と同様に調製した反応後の重合体を混合した重合体ブレンドと比較した。
【0095】
漂白広葉樹繊維70重量%及び漂白針葉樹繊維30重量%からなるパルプスラリーを使用し、目標紙灰分30重量%(乾燥重量)として最終紙製品を製造した。繊維原料を目標ろ水度450mL CSFとして叩解した。他の標準的な添加剤(全て完成紙料の全乾燥重量の重量%で表す)として、0.75%Stalok 300デンプン(Tate and Lyle(イリノイ州ディケーター)より入手可)、0.25%アラム(General Chemical(ニュージャージー州パーシッパニー)より入手可)、0.1%Prequel 1000 ASAサイズ剤、0.015%PERFORM PC8138凝集剤、及び、0.01%PERFORM SP9232ろ水向上剤(全てHercules,Inc.(デラウェア州ウィルミントン)より入手可)を使用した。サイズプレス処理はETHYLEX 2015ヒドロキシエチルコーンスターチ(50lb/T,Tate and Lyle(イリノイ州ディケーター)より入手可)の表面処理とした。抄紙機は目標上側平滑度150シェフィールド単位としてカレンダリングを行った。さらに、本発明を用いて製造した完成紙製品は、カルサイト系偏三角面体状クラスター填料(SMI ALBACAR(R)LO PCC(Specialty Minerals,Inc.(ペンシルベニア州ベスレヘム)より入手可)、平均粒径2.1μm)を目標紙灰分20重量%(完成紙料の乾燥重量当たり)として使用し、かつ、異種ポリマーブレンドを使用しないことを除き、同じ変数及び添加剤を使用して製造した紙と比較した。試験の結果を表3に示す。
【0096】
上側平滑度が150シェフィールド単位と一定である場合、いずれの重合体処理法でも未処理の完成紙よりも面内及びZ軸方向の両引張特性が向上した。一方、異種重合体化合物をアラゴナイト系針状沈降炭酸カルシウム填料と併用すると最も高い剛度及び完成紙総合品質が得られた。
【0097】
【表3】

【0098】
実施例10:異種ポリマーブレンドの抄紙機操業性の向上能又は維持能
【0099】
異種ポリマーブレンドを実施例1と同様にして合成し、ノーブルアンドウッド(Noble and Wood)ハンドシート試験を実施して、抄紙機操業性に関するブレンドの効果を評価した。試験に使用する繊維完成紙料は、360mL CSFの漂白広葉樹クラフト70重量%を500mL CSFの漂白針葉樹クラフト30重量%とブレンドして形成した。無機炭酸カルシウム填料であるULTRABULK(R)II PCC(Specialty Minerals,Inc.(ペンシルベニア州ベスレヘム)より入手可)を、20〜30重量%(完成紙料の乾燥重量当たり)となるように、繊維完成紙料に添加した。さらに、ALBABAR(R)LO PCCを使用しているものの異種ポリマーブレンドを使用していない対照紙を比較目的で製造した。懸濁液を固形分が1重量%(完成紙料の乾燥重量当たり)になるように希釈した。0.75%Stalok 300デンプン(Tate and Lyle(イリノイ州ディケーター)より入手可)、0.25%アラム(General Chemical(ニュージャージー州パーシッパニー)より入手可)、0.02%PERFORM PC8138凝集剤、及び、0.02%PERFORM SP7200ろ水向上剤からなる標準的な添加剤パックを完成紙料に添加した(全ての%は全完成紙料の乾燥重量%に基づく)。
【0100】
処理済み及び未処理の完成紙料のアリコートをそれぞれ使用して、8×8インチ四方のハンドシートを目標坪量90lbs/3000平方フィートとして製造した。各シートは標準的な条件でプレスしたが、乾燥は行わなかった。その後、プレスした各シートを2つのプラスチック製透明シートの間にはさみ、紙断裁機を使用して紙/透明シートを1インチ幅ストリップに切断した。ストリップの未乾燥時の湿潤引張強度をインストロン型試験機で試験した。次に、同じ試験条件で得た別々のハンドシートをそれぞれ乾燥して、固形分、坪量及び灰分歩留りの各試験状態を評価した。これらの評価は標準的なTAPPI法で行った。
【0101】
填料の種類を変えたことに加え、紙灰分歩留りを17重量%から25重量%(完成紙の乾燥重量当たり)へと高めることによって、未乾燥時の湿潤引張強度は56%減少したが、プレス後の固形分に変化はみられなかった。実施例1で得た異種ポリマーブレンドを0.2重量%(完成紙料の乾燥重量当たり)添加すると、未処理の完成紙料よりも性能が38%向上した。完成紙料を0.4重量%(完成紙料の乾燥重量当たり)で処理すると、未処理の完成紙料よりも性能が65%向上した。
【0102】
抄紙機操業性は、プレス部を出るときの湿紙の繊維間結合力と密接に関係している。すなわち、繊維間結合力が強くなるほど、完成紙料の「操業性」も高くなる。本発明の異種ポリマーブレンドを添加すると、湿紙の繊維間結合力が強くなり、結果として、紙灰分が高くても抄紙機操業性が向上することになると期待される。結果を表4に示す。
【0103】
【表4】

【0104】
実施例11:スラリー摩損性低減に対する異種ポリマーブレンドの有用性
【0105】
本発明の異種ポリマーブレンドを実施例1と同様にして合成し、未処理填料/スラリー混合物、及び、2つの成分、ポリ−DADMACとアクリル酸/アクリルアミド共重合体、1.5重量%(スラリーの乾燥重量当たり)で処理したスラリー混合物と比較して評価した。ALBACAR(R)SP PCC及びULTRABULK(R)II PCC(共にSpecialty Minerals,Inc.(ペンシルベニア州ベスレヘム)より入手可)の両方を無機填料として使用して評価した。
【0106】
摩損の可能性をアインレーナー(Einlehner)磨耗試験機(AT2000型)を用いて評価し、スラリーにより抄紙機の合成ワイヤーが摩耗する度合いを測定した。填料などの添加剤による摩耗量を試験ワイヤーの損失重量により求めた。試験対象の填料又は顔料の水性懸濁液中で回転式研磨器である「被験体」が滑り摩擦を生じる結果、試験ワイヤー材は減損する。所定の圧力レベルで特定の距離を移動した後の試験ワイヤーの損失重量を用いて、試験対象の填料又は顔料による摩耗量の比較を行う。
【0107】
試験ワイヤーは、複数のセラミックレッジ(ceramic ledges)からなる回転式研磨器のまわりに設置する。回転式研磨器は、垂直駆動軸の底部に取り付け、上部は開口している。試験ワイヤーは、固定された支持ロッド、及び、この固定ロッドを中心に旋回する支持ロッドと係合し、荷重により回転式研磨器に押しつけられている。ガラス製試験シリンダーに入れた填料又は顔料の懸濁液中に試験ワイヤー及び回転式研磨器を完全に浸漬する。試験ワイヤーと回転式研磨器との間に吸引力が生じるために、懸濁液は内側から回転式研磨器のセラミックレッジ間の隙間を通って試験ワイヤーへと到達できる。セラミックレッジ研磨器の回転運動により懸濁液が充分に混合された状態が維持される。参照用GCC填料サンプルを使用した場合に損失重量が2つの回転式研磨器とも目標値になるように懸濁液稠度を選択する。ワイヤーの外側は接着テープで覆うため、セラミックレッジとワイヤーとの間には充分な液体膜が形成される。
【0108】
アインレーナーAT2000磨耗試験の標準設定は、ワイヤー張力1kgw、回転式研磨器移動量25,000m(距離)である。回転式研磨器は333m/分の速度で運動するため、1回の試験が終了するまでに75分かかる。填料サンプルは2つの研磨器で1回試験し、得られた損失重量(mg)はその2つの測定値の平均である。1回の試験に使用したサンプル量は、被験体#2062の場合には9.5g(乾燥重量)、被験体#2137の場合には8.5g(乾燥重量)であった。
【0109】
未処理スラリー、異種ポリマーブレンド1.5重量%(スラリーの乾燥重量当たり)、2成分コンパウンド1.5重量%(スラリーの乾燥重量当たり)に対して、ALBACAR(R)SP PCC及びULTRABULK(R)II PCCの両方を使用してスラリー試験を評価した。2成分重合体を使用した場合にはスラリー摩損性がわずかに減少しただけであったが、本発明の異種重合体化合物を使用した場合にはスラリー摩損性が著しく減少した。各試験結果を表5にまとめて示す。
【0110】
【表5】

【0111】
実施例12:SSA/AM/MAPTAC異種ポリマーブレンドの製紙有用性
【0112】
SSA/AM/MAPTAC異種ポリマーブレンドを実施例5と同様にして合成し、パルプスラリーに添加して、そのスラリーから製造された最終紙製品の特性を評価した。ALBACAR(R)LO PCCを無機填料として使用した。異種ポリマーブレンドをALBACAR(R)LO PCCと混合し、室温で低剪断力で攪拌した後、スラリーに添加した。
【0113】
漂白広葉樹繊維70重量%及び漂白針葉樹繊維30重量%からなるパルプスラリーを使用し、目標紙灰分30重量%(乾燥重量)として最終紙製品を実施例7と同様に製造した。繊維原料を目標ろ水度450mL CSFとして叩解した。他の標準的な添加剤(全て完成紙料の全乾燥重量の重量%で表す)として、0.75%Stalok 300デンプン(Tate and Lyle(イリノイ州ディケーター)より入手可)、0.25%アラム(General Chemical(ニュージャージー州パーシッパニー)より入手可)、0.1%Prequel 1000 ASAサイズ剤、0.015%PERFORM PC8138凝集剤、及び、0.01%PERFORM SP9232ろ水向上剤(全てHercules,Inc.(デラウェア州ウィルミントン)より入手可)を使用した。サイズプレス処理はETHYLEX 2015ヒドロキシエチル化コーンスターチ(50lb/T,Tate and Lyle(イリノイ州ディケーター)より入手可)の表面処理とした。抄紙機は目標上側平滑度150シェフィールド単位としてカレンダリングを行った。
【0114】
いずれの重合体生成物を使用した場合にも、最終紙製品の最終灰分を高めることができ、灰分20重量%の対照紙に対して強度が低下することはなかった。試験結果を表6に示す。
【0115】
【表6】

【0116】
実施例13:異種ポリマーブレンドと添加順序を逆にして合成した異種ポリマーブレンドとの比較
【0117】
実施例3と同様に合成した異種ポリマーブレンドを、添加順序を逆にして(例えば実施例6のように)合成した異種ポリマーブレンドと比較し、2種のポリマーブレンドの有効性を比較した。ULTRABULK(R)II PCCを無機填料として使用した。また、未処理ALBACAR(R)LO PCC対照シートを形成した。
【0118】
漂白広葉樹繊維70重量%及び漂白針葉樹繊維30重量%からなるパルプスラリーを使用し、目標紙灰分30重量%(乾燥重量)として最終紙製品を実施例7と同様に製造した。繊維原料を目標ろ水度450mL CSFとして叩解した。他の標準的な添加剤(全て完成紙料の全乾燥重量の重量%で表す)として、0.75%Stalok 300デンプン(Tate and Lyle(イリノイ州ディケーター)より入手可)、0.25%アラム(General Chemical(ニュージャージー州パーシッパニー)より入手可)、0.1%Prequel 1000 ASAサイズ剤、0.015%PERFORM PC8138凝集剤、及び、0.01%PERFORM SP9232ろ水向上剤(全てHercules,Inc.(デラウェア州ウィルミントン)より入手可)を使用した。サイズプレス処理はETHYLEX 2015ヒドロキシエチル化コーンスターチ(50lb/T,Tate and Lyle(イリノイ州ディケーター)より入手可)の表面処理とした。抄紙機は目標上側平滑度150シェフィールド単位としてカレンダリングを行った。
【0119】
平滑度が150シェフィールド単位と一定である場合、実施例3で合成した異種ポリマーブレンドは、添加順序を逆にして合成した異種ポリマーブレンドよりも良好な性能を示した。両ブレンドとも未処理の対照区よりも良好な性能を示した。結果を表7にまとめて示す。
【0120】
【表7】

【0121】
実施例14:異種ポリマーブレンドと併用した場合のALBACAR(R)SP−3沈降炭酸カルシウム及びULTRABULK(R)II沈降炭酸カルシウムを比較した製紙有用性
【0122】
本発明の異種ポリマーブレンドを実施例6と同様にして合成し、2種類の異なる沈降炭酸カルシウム填料、すなわち、アラゴナイト系針状沈降炭酸カルシウム(ULTRABULK(R)II PCC)及び偏三角面体状クラスター沈降炭酸カルシウム(ALBACAR(R)SP−3)(共にSpecialty Minerals,Inc.(ペンシルベニア州ベスレヘム,デラウェア州ウィルミントン)より入手可)を使用して最終紙製品の特性を評価した。2種の填料の平均粒径はそれぞれ3.9μm及び3.0μmであった。無機填料のみを含むパルプスラリーから製造した紙を対照として用いた。
【0123】
漂白広葉樹繊維70重量%及び漂白針葉樹繊維30重量%からなるパルプスラリーを使用し、目標紙灰分30重量%(乾燥重量)として最終紙製品を実施例7と同様に製造した。繊維原料を目標ろ水度450mL CSFとして叩解した。他の標準的な添加剤(全て完成紙料の全乾燥重量の重量%で表す)として、0.75%Stalok 300デンプン(Tate and Lyle(イリノイ州ディケーター)より入手可)、0.25%アラム(General Chemical(ニュージャージー州パーシッパニー)より入手可)、0.1%Prequel 1000 ASAサイズ剤、0.015%PERFORM PC8138凝集剤、及び、0.01%PERFORM SP9232ろ水向上剤(全てHercules,Inc.(デラウェア州ウィルミントン)より入手可)を使用した。サイズプレス処理はETHYLEX 2015ヒドロキシエチル化コーンスターチ(50lb/T,Tate and Lyle(イリノイ州ディケーター)より入手可)の表面処理とした。抄紙機は目標上側平滑度150シェフィールド単位としてカレンダリングを行った。試験結果を表8(ALBACAR(R))及び表9(ULTRABULK(R))に示す。
【0124】
上側平滑度が150シェフィールド単位と一定である場合、異種重合体混合物で処理したULTRABULK(R)II PCC又はALBACAR(R)SP−3 PCCを含むパルプスラリーから製造した最終紙は、未処理の紙よりも良好な性能を示した。
【0125】
【表8】

【0126】
【表9】

【0127】
当業者に明らかであるように、上記実施形態や実施例に対して、本発明の概念の範囲を逸脱しない範囲で、各種改変を行うことができる。従って、本発明は開示された特定の実施形態や実施例に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲に記載されるように、本発明の趣旨や範囲内に含まれる変形例も包含することが理解できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異種ポリマーブレンドを製造する方法であって、
(a)第一の量の重合開始剤と1種以上のアニオン性又はカチオン性単量体とを非中性溶液に添加し、ここで各単量体の電荷は等しく、
(b)前記溶液に第二の量の前記重合開始剤と1種以上の非イオン性単量体とを添加し、
(c)第三の量の前記重合開始剤と、工程(a)の前記単量体とは反対の電荷を有する1種以上のイオン性単量体とを添加し、
(d)第四の量の前記重合開始剤を段階的に添加して、残存する単量体を反応させて、その結果、前記異種ポリマーブレンドを得、
(e)必要に応じて、得られた異種ポリマーブレンドを中和する
方法。
【請求項2】
(a)前記アニオン性単量体は、(1)アクリル酸、(2)メタクリル酸、(3)スチレンスルホン酸、(4)ビニルスルホン酸、(5)アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸及び(6)それらの混合物からなる群から選択され、
(b)前記カチオン性単量体は、(1)ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、(2)アクリロイルエチルトリメチルアンモニウムクロリド、(3)メタクリロイルエチルトリメチルアンモニウムクロリド、(4)アクリロイルエチルトリメチルアンモニウムスルファート、(5)メタクリロイルエチルトリメチルアンモニウムスルファート、(6)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、(7)メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、(8)(2)〜(7)の非4級化体、(9)ビニルホルムアミド(その後加水分解されビニルアミンとなる)及び(10)それらの混合物からなる群から選択され、
(c)前記非イオン性単量体は、(1)アクリルアミド、(2)メタクリルアミド、(3)N−アルキルアクリルアミド、(4)ビニルホルムアミド及び(5)それらの混合物からなる群から選択される、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記重合開始剤は水溶性アゾ開始剤である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記溶液は、約10モル%〜約30モル%のアニオン性単量体と、約40モル%〜約80モル%の非イオン性単量体と、約10モル%〜約30モル%のカチオン性単量体とを含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
異種ポリマーブレンドであって、
(a)(1)アクリル酸、(2)メタクリル酸、(3)スチレンスルホン酸、(4)ビニルスルホン酸、(5)アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸及び(6)それらの混合物からなる群から選択される単量体から形成される1種以上のアニオン性重合体と、
(b)(1)ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、(2)アクリロイルエチルトリメチルアンモニウムクロリド、(3)メタクリロイルエチルトリメチルアンモニウムクロリド、(4)アクリロイルエチルトリメチルアンモニウムスルファート、(5)メタクリロイルエチルトリメチルアンモニウムスルファート、(6)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、(7)メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、(8)(2)〜(7)の非4級化体、(9)ビニルホルムアミド(その後加水分解されビニルアミンとなる)及び(10)それらの混合物からなる群から選択される単量体から形成される1種以上のカチオン性重合体と、
(c)(1)アクリルアミド、(2)メタクリルアミド、(3)N−アルキルアクリルアミド、(4)ビニルホルムアミド及び(5)それらの混合物からなる群から選択される単量体から形成される1種以上の非イオン性重合体と
を含む異種ポリマーブレンド。
【請求項6】
(d)少なくとも1種のアニオン性単量体及び少なくとも1種の非イオン性単量体から構成される1種以上の共重合体と、
(e)少なくとも1種のカチオン性単量体及び少なくとも1種の非イオン性単量体から構成される1種以上の共重合体と
をさらに含む、請求項5記載の異種ポリマーブレンド。
【請求項7】
(f)少なくとも1種のアニオン性単量体、少なくとも1種のカチオン性単量体及び少なくとも1種の非イオン性単量体から構成される1種以上の三元共重合体
をさらに含む、請求項6記載の異種ポリマーブレンド。
【請求項8】
紙又は板紙の填料含量を高める方法であって、
(a)請求項5記載の異種ポリマーブレンドを沈降炭酸カルシウム填料と混ぜ合わせて、混合物を形成し、
(b)前記混合物をパルプスラリーと混ぜ合わせ、
(c)得られたパルプスラリー混合物を加工して、紙又は板紙を形成する
方法。
【請求項9】
前記沈降炭酸カルシウム填料は、(1)アラゴナイト系針状結晶クラスター、(2)カルサイト系偏三角面体状結晶クラスター及び(3)それらの混合物からなる群から選択される、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記沈降炭酸カルシウム填料の平均粒径は約2μm〜約4μmである、請求項8記載の方法。
【請求項11】
紙又は板紙の填料含量を高める方法であって、
(a)(i)請求項5記載の異種ポリマーブレンド又は(ii)沈降炭酸カルシウム填料を、パルプスラリーと混ぜ合わせて、混合物を形成し、
(b)工程(a)の残りの成分(i)又は(ii)を前記パルプスラリー混合物と混ぜ合わせ、
(c)得られたパルプスラリー混合物を加工して、紙又は板紙を形成する
方法。
【請求項12】
前記沈降炭酸カルシウム填料は、(1)アラゴナイト系針状結晶クラスター、(2)カルサイト系偏三角面体状結晶クラスター及び(3)それらの混合物からなる群から選択される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記沈降炭酸カルシウム填料の平均粒径は約2μm〜約4μmである、請求項11記載の方法。
【請求項14】
紙又は板紙の填料含量を高める方法であって、
(d)請求項6記載の異種ポリマーブレンドを、沈降炭酸カルシウム填料と混ぜ合わせて、混合物を形成し、
(e)前記混合物をパルプスラリーと混ぜ合わせ、
(f)得られたパルプスラリー混合物を加工して、紙又は板紙を形成する
方法。
【請求項15】
前記沈降炭酸カルシウム填料は、(1)アラゴナイト系針状結晶クラスター、(2)カルサイト系偏三角面体状結晶クラスター及び(3)それらの混合物からなる群から選択される、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記沈降炭酸カルシウム填料の平均粒径は約2μm〜約4μmである、請求項14記載の方法。
【請求項17】
紙又は板紙の填料含量を高める方法であって、
(a)(i)請求項6記載の異種ポリマーブレンド又は(ii)沈降炭酸カルシウム填料を、パルプスラリーと混ぜ合わせて、混合物を形成し、
(b)工程(a)の残りの成分(i)又は(ii)を前記パルプスラリー混合物と混ぜ合わせ、
(c)得られたパルプスラリー混合物を加工して、紙又は板紙を形成する
方法。
【請求項18】
前記沈降炭酸カルシウム填料は、(1)アラゴナイト系針状結晶クラスター、(2)カルサイト系偏三角面体状結晶クラスター及び(3)それらの混合物からなる群から選択される、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記沈降炭酸カルシウム填料の平均粒径は約2μm〜約4μmである、請求項18記載の方法。
【請求項20】
(a)ポリ−ジアリルジメチルアンモニウムクロリド/アクリルアミド/アクリル酸共重合体混合物を沈降炭酸カルシウム填料と混ぜ合わせ、
(b)工程(a)で得られた混合物をパルプスラリーと混ぜ合わせ、
(c)得られたパルプスラリー混合物を加工して、紙又は板紙を形成すること
によって、紙又は板紙の填料含量を高める方法。
【請求項21】
前記沈降炭酸カルシウム填料は、(1)アラゴナイト系針状結晶クラスター、(2)カルサイト系偏三角面体状結晶クラスター及び(3)それらの混合物からなる群から選択される、請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記沈降炭酸カルシウム填料の平均粒径は約2μm〜約4μmである、請求項20記載の方法。
【請求項23】
(a)(i)ポリ−ジアリルジメチルアンモニウムクロリド/アクリルアミド/アクリル酸共重合体混合物又は(ii)沈降炭酸カルシウム填料を、パルプスラリーと混ぜ合わせ、
(b)工程(a)の残りの成分(i)又は(ii)を前記パルプスラリー混合物と混ぜ合わせ、
(c)得られたパルプスラリー混合物を加工して、紙又は板紙を形成すること
によって、紙又は板紙の填料含量を高める方法。
【請求項24】
前記沈降炭酸カルシウム填料は、(1)アラゴナイト系針状結晶クラスター、(2)カルサイト系偏三角面体状結晶クラスター及び(3)それらの混合物からなる群から選択される、請求項18記載の方法。
【請求項25】
前記沈降炭酸カルシウム填料の平均粒径は約2μm〜約4μmである、請求項18記載の方法。

【公表番号】特表2012−503086(P2012−503086A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−527993(P2011−527993)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【国際出願番号】PCT/US2009/057468
【国際公開番号】WO2010/033796
【国際公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(591020249)ハーキュリーズ・インコーポレーテッド (75)
【氏名又は名称原語表記】HERCULES INCORPORATED
【出願人】(502335051)スペシャルティ ミネラルズ (ミシガン) インク. (14)
【Fターム(参考)】