説明

紙含有樹脂組成物及びその成形品並びにそれらの製造方法

【課題】本発明の目的は、再生困難なラミネート紙の全体を再利用して、資源の有効活用を目指した紙含有樹脂組成物を提供することにある。すなわち、紙の粉砕粒径を細かくすることなく、粒径の粗いエステル化された粉砕物と樹脂原料との混練性を改善することで、紙の未分散物をなくして均一に混合分散し、その結果、紙含有樹脂組成物の流動性を改善する。
【解決手段】本発明に係る紙含有樹脂組成物は、多塩基酸無水物でエステル化された紙の粉砕物、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂及びアルカリ土類金属化合物を少なくとも含有し、前記粉砕物及び前記ポリプロピレン樹脂が主要成分であり、ASTM−D1238−04cで規定したメルトマスフローレイト(MFR)(試験温度=190℃、試験荷重=10kg)が2.0〜25.0g/10minであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体容器の印刷断裁屑又は回収された液体容器などの再生困難なラミネート紙を粉砕して樹脂原料と混合してなる紙含有樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、粒径の粗い粉砕物と樹脂原料との混練性を改善することで、ラミネート紙の未分散物をなくして均一に混合分散させ、その結果、紙含有樹脂組成物の流動性を改善することによって、ラミネート紙の含有率を増加させることができる紙含有ポリオレフィン樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、湿式によるラミネート古紙を再利用する方法が行われている。また、プラスチックフィルムラミネート紙の乾式再利用に関して幾つかの方法が提案されている。乾式再利用の方法は、大別して、粉砕(粉砕機と粉砕粒径)、熱可塑性樹脂との混練(混練薬品と樹脂配合率)、造粒に関する提案であり、いずれの方法も紙と樹脂との混合分散を高めることによって成形性を改善することを目的としている。樹脂と紙粉砕物との混合組成物は、紙の粉砕粒度が粗くなるに従い、また紙粉砕物の比率が増加するに従い、その流動性が低下することが知られている。
【0003】
樹脂との混練性を高める粉砕方法については、例えば、プラスチックフィルムラミネート紙を、その細断物の粒径が0.05mm〜0.3mmの範囲に中心値を有し、紙の繊維を解繊させないように切断して該細断物とする方法(例えば、特許文献1を参照。)、粒径3mm程度の燐片状に粗粉砕した後、衝撃粉砕する方法(例えば、特許文献2を参照。)、粉砕物の粒径を一辺が5mm以下、好ましくは1mm以下に微粉砕し、繊維を綿状に解繊させることによって、紙と樹脂との分散性を高めるとする方法(例えば、特許文献3を参照。)、ポリプロピレンラミネート古紙を3mm角に粉砕した後、100メッシュパスの微粉砕したものを使用する方法(例えば、特許文献4を参照。)などがある。
【0004】
一方、混練薬品については、両面又は片面にポリエチレン樹脂層やポリプロピレン樹脂層を有する複合紙の細断物に、比重差の少ない細断したポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂を用いて紙−樹脂の混合時の偏り分散を防止する方法(例えば、特許文献5を参照。)、不要となったプラスチックラミネート紙や樹脂塗布紙をペレット樹脂のメルトフローレイト(MFR)を5〜50に規定することによって再利用する方法(例えば、特許文献6を参照。)がある。
【0005】
多塩基酸無水物によるエステル化については、ポリオレフィン、木粉・木質パルプなどの木質系材料、多塩基酸無水物及び有機過酸化物を含有させたポリオレフィン樹脂複合材を製造する方法があり、加熱混練により成形加工性及び機械強度が高まるとしている(例えば、特許文献7を参照。)。また、木粉入り樹脂組成物に関して、特に加熱加圧時における木粉の熱分解により生成する有機酸の中和剤として酸化マグネシウムを添加して、射出成形等の金型の腐食を防止する方法がある(例えば、特許文献8を参照。)。
【0006】
【特許文献1】特開2001−310326号公報
【特許文献2】特開2003−96206号公報
【特許文献3】特開2003−335951号公報
【特許文献4】特開平11−293124号公報
【特許文献5】特開平10−138241号公報
【特許文献6】特開平10−29222号公報
【特許文献7】特許第3651117号公報
【特許文献8】特開昭63−139946号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
湿式によるラミネート古紙の再利用する方法では、紙とフィルムを分離する必要があることと、分離回収された繊維分の歩留まりが低いこと、また、更に分離されたラミネートフィルムの焼却、埋め立てなどの処理が必要であることの理由によって、ラミネート古紙全体を効率よく再利用する方法については実用化されていない。さらにラミネート古紙を分離せずにそのまま再利用する方法についても実用化されていない。
【0008】
特許文献1、2又は3で示された方法は、何れも紙の粉砕粒径を細かくすることによって、又は粉砕物の形状を規定することによって、樹脂中での繊維の混合分散を高めるものである。しかし粒径を細かくする程、プラスチックフィルムラミネート紙に含まれる比較的融点の低いポリエチレンが粉砕時の発熱によって溶融し、スクリーンの目詰りを発生させるなどの粉砕効率を著しく低下させるという欠点がある。特許文献4で示された方法でも、ラミネート紙を粉砕する場合には、粉砕粒径が細かくなる程、ラミネートされた樹脂の熱溶融によるスクリーン又は平網の目詰まりが起き易く、粉砕機内部の温度上昇による固定刃と回転刃の接触などの問題が発生する。
【0009】
プラスチックフィルムラミネート紙が、針葉樹漂白化学パルプを主体とするラミネート紙である場合、紙の強度は高いが、坪量が高く、紙の両面が厚いポリエチレンなどの樹脂層で被覆され、剛度も高く、微粉砕が困難である。微粉砕が困難な理由としては、特許文献1、2、3又は4の場合と同様であり、比較的融点の低いポリエチレンなどの樹脂が粉砕時の発熱によって溶融し、スクリーンの目詰りを誘発し、粉砕効率を著しく低下させることが挙げられる。したがって、粒径の粗いラミネート紙の粉砕物と樹脂との混練分散性を向上させ、紙配合率の高い樹脂組成物を射出成形などに利用する技術の確立が課題となっている。
【0010】
本発明の第一の目的は、従来焼却若しくは繊維分しか利用されていなかった、液体容器の印刷断裁屑及び/又は回収された液体容器の長繊維の針葉樹漂白化学パルプを多く含む再生困難なラミネート紙を、紙とフィルムとを分離せずにそのまま全体として再利用して、資源の有効活用を目指した紙含有樹脂組成物を提供することにある。すなわち、ラミネート紙の粉砕粒径を細かくすることなく、粒径の粗い粉砕物と樹脂原料との混練性を改善することで、ラミネート紙の未分散物をなくして均一に混合分散し、その結果、紙含有樹脂組成物の流動性を改善することによって、ラミネート紙の含有率を増加させても射出成形などの成形性が良好な紙含有樹脂組成物を提供することにある。
【0011】
本発明の第二の目的は、本発明に係る紙含有樹脂組成物を用いて、ラミネート紙の含有率が高く、変色及び臭気がなく、吸水率が少なく、衝撃強度に優れた紙含有樹脂成形品を提供することにある。
【0012】
本発明の第三の目的は、二軸押出機を用いた混練を行うことによって、ラミネート紙の未分散がなく、均一に混合分散された紙含有樹脂組成物を得るための製造方法を提供することにある。
【0013】
本発明の第四の目的は、本発明の紙含有樹脂組成物を用いて、良好に成形された紙含有樹脂成形品を得るための製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、紙の粉砕物に使用する紙の組成と該粉砕物との関係、及び樹脂を混合したときの作業性と紙含有樹脂組成物の品質との関係について鋭意検討を進めた結果、前記目的を同時に達成できることを見出し、本発明に至った。
【0015】
本発明に係る紙含有樹脂組成物は、多塩基酸無水物でエステル化された紙の粉砕物、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂及びアルカリ土類金属化合物を少なくとも含有し、前記粉砕物及び前記ポリプロピレン樹脂が主要成分であり、ASTM−D1238−04cで規定したメルトマスフローレイト(MFR)(試験温度=190℃、試験荷重=10kg)が2.0〜25.0g/10minであることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る紙含有樹脂組成物では、前記多塩基酸無水物が無水マレイン酸であり、かつ、エステル化によって導入された無水マレイン酸の割合がパルプ成分に対して0.1〜5質量%であることが好ましい。紙含有樹脂組成物の流動性が改善され、吸水率も少なくなる。ラミネート紙の未分散がなく均一に混合分散されやすい。
【0017】
本発明に係る紙含有樹脂組成物では、前記アルカリ土類金属化合物がマグネシウム化合物であり、かつ、酸化マグネシウム換算で全質量に対し0.1〜5質量%含有していることが好ましい。有機酸を中和することによって、変色及び臭気の発生を抑えることが可能となる。
【0018】
本発明に係る紙含有樹脂組成物では、前記紙が針葉樹漂白化学パルプを50質量%以上含有する原紙をベースとしたポリエチレンフィルムラミネート紙であり、かつ、前記ポリエチレン樹脂が前記ポリエチレンフィルムラミネート紙の由来であることが好ましい。ミルクカートンやその裁断屑を再利用するものであり、針葉樹漂白化学パルプを多く含有することで、紙含有樹脂組成物の強度が高まる。
【0019】
本発明に係る紙含有樹脂組成物では、前記粉砕物と填料とを含む紙素材の合計量が、51質量%以上であることが好ましい。すなわち、環境配慮型紙含有樹脂組成物とすることができる。
【0020】
本発明に係る紙含有樹脂成形品は、多塩基酸無水物でエステル化された紙の粉砕物、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂及びアルカリ土類金属化合物を少なくとも含有し、前記粉砕物及び前記ポリプロピレン樹脂が主要成分であり、ASTM−D1238−04cで規定したメルトマスフローレイト(MFR)(試験温度=190℃、試験荷重=10kg)が2.0〜25.0g/10minであることを特徴とする。
【0021】
本発明に係る紙含有樹脂成形品では、前記紙が針葉樹漂白化学パルプを50質量%以上含有する原紙をベースとしたポリエチレンフィルムラミネート紙であり、かつ、前記ポリエチレン樹脂が前記ポリエチレンフィルムラミネート紙の由来であることが好ましい。ミルクカートンやその裁断屑を再利用するものであり、針葉樹漂白化学パルプを多く含有することで、紙含有樹脂組成物の強度が高まる。
【0022】
本発明に係る紙含有樹脂組成物の製造方法は、針葉樹漂白化学パルプを50質量%以上含有する原紙をベースとしたポリエチレンフィルムラミネート紙を粉砕して紙の粉砕物を得る工程と、多塩基酸無水物で前記粉砕物をエステル化させる工程と、アルカリ土類金属化合物で有機酸を中和する工程と、少なくとも前記粉砕物とポリプロピレン樹脂とを、二軸押出機で混練し、ASTM−D1238−04cで規定したメルトマスフローレイト(MFR)(試験温度=190℃、試験荷重=10kg)が2.0〜25.0g/10minである紙含有樹脂組成物を得る工程と、を有することを特徴とする。
【0023】
本発明に係る紙含有樹脂組成物の製造方法では、前記粉砕物の粉砕粒径が0.5〜2.5mmであることが好ましい。良好な混練性が得られるとともに、粉砕が容易でロングラン操業が可能である。
【0024】
本発明に係る紙含有樹脂組成物の製造方法では、前記ポリエチレンフィルムラミネート紙が、液体容器用のポリエチレンフィルムラミネート紙、該ポリエチレンフィルムラミネート紙の断裁屑及び/又は該ポリエチレンフィルムラミネート紙の回収古紙であることが好ましい。すなわち、資源の有効活用の効率が高まる。
【0025】
本発明に係る紙含有樹脂成形品の製造方法は、針葉樹漂白化学パルプを50質量%以上含有する原紙をベースとしたポリエチレンフィルムラミネート紙を粉砕して紙の粉砕物を得る工程と、多塩基酸無水物で前記粉砕物をエステル化させる工程と、アルカリ土類金属化合物で有機酸を中和する工程と、少なくとも前記粉砕物とポリプロピレン樹脂とを、二軸押出機で混練し、紙含有樹脂組成物を得る工程と、該紙含有樹脂組成物を射出成形機によって成形して、ASTM−D1238−04cで規定したメルトマスフローレイト(MFR)(試験温度=190℃、試験荷重=10kg)が2.0〜25.0g/10minである紙含有樹脂成形品を得る工程と、を有することを特徴とする。
【0026】
本発明に係る紙含有樹脂成形品の製造方法では、前記粉砕物の粉砕粒径が0.5〜2.5mmであることが好ましい。良好な混練性が得られるとともに、粉砕が容易でロングラン操業が可能である。
【0027】
本発明に係る紙含有樹脂成形品の製造方法では、前記ポリエチレンフィルムラミネート紙が、液体容器用のポリエチレンフィルムラミネート紙、該ポリエチレンフィルムラミネート紙の断裁屑及び/又は該ポリエチレンフィルムラミネート紙の回収古紙であることが好ましい。すなわち、資源の有効活用の効率が高まる。
【0028】
本発明に係る紙含有樹脂成形品の製造方法では、前記紙含有樹脂組成物を得る工程及び/又は前記紙含有樹脂成形品を得る工程において、流動性向上剤を添加することが好ましい。混練時の発熱及び/又は成形時の発熱が抑制され、成形性が向上する。
【発明の効果】
【0029】
本発明の紙含有樹脂組成物によって、従来焼却若しくは繊維分しか利用されていなかった、液体容器の印刷断裁屑及び/又は回収された液体容器の全体が再利用できる。特に液体容器には、長繊維の針葉樹漂白化学パルプを多く含む再生困難なラミネート紙が使用されており、その全体が再利用できる。すなわち、本発明の紙含有樹脂組成物は、ラミネート紙の粉砕粒径を細かくすることなく、粒径の粗い粉砕物と樹脂原料との混練性を改善することで、ラミネート紙の未分散物をなくして均一に混合分散させ、その結果、紙含有樹脂組成物の流動性を改善することによって、ラミネート紙の含有率を増加させても射出成形などの成形性が良好である。
【0030】
本発明の紙含有樹脂成形品は、本発明に係る紙含有樹脂組成物を用いることで、ラミネート紙の含有率を高くすることができ、しかも変色及び臭気がなく、衝撃強度に優れる。
【0031】
本発明の紙含有樹脂組成物の製造方法では、多塩基酸無水物及びアルカリ土類金属化合物による反応を起こし、かつ、二軸押出機を用いた混練を行うことによって、ラミネート紙の未分散がなく均一に混合分散された流動性の良好な紙含有樹脂組成物を得ることができる。
【0032】
本発明の紙含有樹脂成形品の製造方法では、本発明の紙含有樹脂組成物を用いて、良好に成形された紙含有樹脂成形品を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明の詳細について説明するが、本発明は次の実施形態に限定して解釈されるものではない。
【0034】
本実施形態に係る紙含有樹脂組成物は、多塩基酸無水物でエステル化された紙の粉砕物、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂及びアルカリ土類金属化合物を少なくとも含有し、前記粉砕物及び前記ポリプロピレン樹脂が主要成分であり、ASTM−D1238−04cで規定したメルトマスフローレイト(MFR)(試験温度=190℃、試験荷重=10kg)が2.0〜25.0g/10minである。前記紙は、針葉樹漂白化学パルプを50質量%以上含有する原紙をベースとしたラミネート紙、又は、該ラミネート紙とラミネート前のその原紙とを組み合わせたものである。
【0035】
ラミネート紙は、原紙の片面又は両面に膜厚20〜50μmのポリエチレン樹脂がラミネートされている。ここでラミネート紙は、液体容器用のラミネート紙、ラミネート紙の断裁屑又はラミネート紙の回収古紙のそれぞれ単独の使用、或いは、ラミネート紙及びラミネート紙の断裁屑の組み合わせの使用、ラミネート紙及びラミネート紙の回収古紙の組み合わせの使用、ラミネート紙の断裁屑及びラミネート紙の回収古紙の組み合わせの使用、又は、ラミネート紙及びラミネート紙の断裁屑及びラミネート紙の回収古紙の組み合わせの使用の各形態とすることが好ましい。資源の有効活用の効率が高まる。その代表例は、いわゆるミルクカートンと呼ばれる液体容器用のラミネート紙であり、又はその印刷断裁屑(以下、「印刷トリミング屑」という。)であり、又は、牛乳パックなどの回収古紙でもよい(以後、これらを総称して「ラミネート古紙」と呼ぶ。)。原紙は、坪量が300〜500g/m、紙厚が0.4〜0.6mm、密度が0.7〜0.6g/cmの範囲にあることが好ましい。ラミネート紙の原紙を構成するパルプは、針葉樹漂白化学パルプ(NBKP)を主体とし、その原紙中のNBKPの配合率は、少なくとも50質量%以上である。より好ましくは、80質量%以上である。NBKPが50質量%未満の配合率では、本実施形態の紙含有樹脂組成物の強度適性が不十分となりやすい。ラミネートされたフィルムの材料としては、例えば、低密度ポリエチレン樹脂又は高密度ポリエチレン樹脂である。
【0036】
ラミネート紙を粉砕することによって粉砕物を得る。なお、ラミネート紙にその原紙を混ぜたものを粉砕することによって粉砕物を得てもよい。これによって、粉砕物には、必ず、ラミネート紙のポリエチレンフィルムに由来するポリエチレンが含まれることとなる。本実施形態に係る紙含有樹脂組成物に含まれるポリエチレンの含有量は、例えば2〜10質量%であり、好ましくは4〜8質量%である。この含有量は、紙粉砕物の配合量、ラミネート前の原紙の添加量によって適宜調整できる。粉砕物の粉砕粒径は、その後の混錬条件の影響も受けるが、0.5〜2.5mmであることが好ましい。より好ましくは、1.0〜2.0mmである。紙粉砕物の粒径は、所定のスクリーンを通過して得られるスクリーンの径で定義される(以下、単に「粒径」という。)。樹脂との混練性を良好にする為には、紙の粉砕粒径が一般的に細かい程よい。粉砕粒径を2.5mm以下とすることで良好な混練性が得られやすい。ポリエチレンなどの熱溶融しやすい樹脂をラミネートしたラミネート紙を粉砕する場合には、粉砕粒径が細かくなる程、樹脂の熱溶融によるスクリーン又は平網の目詰まりが起き易く、粉砕機内部の温度上昇による固定刃と回転刃の接触などの問題が発生しやすい。本発明者らの実験によれば、特に0.5mm未満の粒径に粉砕する場合には、粉砕機の操業が著しく困難となる結果であった。しかし、0.5mm以上の粒径では、この種のトラブルはほとんど発生することなくロングラン操業が可能になり、粉砕効率も向上した。
【0037】
本実施形態で紙の粉砕物とともに添加されている樹脂は、ポリプロピレン樹脂(PP樹脂)又はこれの変性樹脂である。本実施形態では、ポリプロピレン樹脂又はこれの変性樹脂とともに下記の樹脂を添加しても良い。例えば、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、アクリロニトリル・スチレン樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂又はこれらの変性樹脂などの汎用樹脂である。これらの樹脂は、新規合成品、使用済み成形物の粉砕物又はリサイクル物でも良く、更に単独若しくは混合物であってもよい。
【0038】
本実施形態に係る紙含有樹脂組成物は、粉砕物及びポリプロピレン樹脂が主要成分であり、これらの合計含有量は、85〜98質量%とすることが好ましく、より好ましくは90〜95質量%である。85質量%未満の場合は、流動性及び分散性で劣る場合があり、98質量%を超えると色の変色が目立ちやすい場合がある。ここで、粉砕物の含有量は50〜70質量%とすることが好ましく、より好ましくは55〜60質量%である。50質量%未満の場合は、粉砕物の混入量が減ってリサイクル効率が劣り、70質量%を超えると流動性及び分散性で劣る場合がある。また、ポリプロピレン樹脂の含有量は15〜48質量%とすることが好ましく、より好ましくは25〜43質量%である。15質量%未満の場合は、強度が低下する場合があり、48質量%を超えると粉砕物の混入量が減ってリサイクル効率が劣る。
【0039】
本実施形態で使用する多塩基酸無水物は、例えば無水マレイン酸、無水フタル酸又は無水コハク酸などがあり、そして樹脂と混練する前のラミネート紙の粉砕物に選択的に付加され、主としてパルプ繊維中のセルロース、ヘミセルロースをエステル化することによって、紙の粉砕粒径を細かくすることなく、粒径が粗い粉砕物の流動性の向上に効果がある。これらのうち無水マレイン酸がより好ましく、添加量は0.1〜5質量%の範囲で選ばれる。より好ましくは、0.5〜3質量%である。この量が0.1質量%未満では流動性向上の効果が不十分な場合があり、5質量%を超えると紙含有樹脂組成物及び紙含有樹脂成形品の物性が低下する場合がある。
【0040】
本実施形態で使用するアルカリ土類金属化合物は、例えば酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛などがあり、樹脂と混練するときに添加され、パルプ中の水分と反応し水酸化物に変化した後、エステル化後に残留した多塩基酸及び/又はパルプの熱分解によって生じる有機酸を中和することによって、臭気・ガスの発生を防止するのに有効である。これらのうち酸化マグネシウムがより好ましく、添加量は、本実施形態に係る紙含有樹脂組成物の全質量に対して0.1〜5質量%の範囲で選ばれる。より好ましくは、0.5〜3質量%である。この量が0.1質量%未満では中和の効果が不十分の場合があり、5質量%を超えると紙含有樹脂組成物及び紙含有樹脂成形品の物性が低下する場合があり、また経済的に好ましくなくなる。なお、紙含有樹脂組成物を形成した場合、例えば酸化マグネシウムを添加すると、上記中和反応によって酸化マグネシウムはマグネシウム化合物となっているが、紙含有樹脂組成物の状態から酸化マグネシウムの含有量を測定する場合には、酸化マグネシウム換算で求める。
【0041】
本実施形態の紙含有樹脂組成物では、必要に応じて、紙粉砕物及び樹脂以外の成分を含有させてもよい。例えば、流動性向上剤を添加してもよい。
【0042】
本実施形態において使用される流動性向上剤の添加は、粉砕された紙粉砕物と樹脂を混練するときに配合する場合、又は紙含有樹脂組成物を成形するときに配合する場合のいずれの場合でもよい。流動性向上剤を含有させることで、成形時の発熱が防止され、成形時の成形性が向上する。なお、混練するときに流動性向上剤を配合する場合、成形時での効果だけでなく、混練時の摩擦による発熱を防止する効果も得られる。流動性向上剤は、成形時の摩擦による発熱を防止し、紙含有樹脂組成物の流動性を向上するものであれば特に制限はなく、例えば、ポリエチレンワックス、低密度ポリエチレン、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなどの高級脂肪酸又はその塩、各種高級脂肪酸エステルが挙げられる。流動性向上剤の融点が100℃以下であることが好ましく、例えば、エルカ酸アミド、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミドなどの脂肪酸アミドが挙げられる。これらを1種類用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0043】
また、必要に応じて相溶化剤、樹脂の酸化防止剤、帯電防止剤などの助剤を本発明の効果に影響を与えない範囲で添加してもよい。白色度を高くするために、酸化チタン、タルク、炭酸カルシウムなどの填料を少量添加してもよい。
【0044】
本実施形態に係る紙含有樹脂組成物では、紙の粉砕物と填料とを含む紙素材の合計量が、51質量%以上であることが好ましい。環境配慮型紙含有樹脂組成物とすることができる。より好ましくは、51〜70質量%である。紙含有樹脂組成物中の紙素材以外の成分は、樹脂を主成分とする。紙の粉砕物には、ラミネート紙の場合は、その構成するすべての成分を含む。例えば、NBKP、NBKP以外のパルプ、原紙中の樹脂分、原紙中の填料、ラミネートフィルムを含む。填料は、紙粉砕物と樹脂を混練するときに、必要に応じて添加されるものである。
【0045】
本実施形態の紙含有樹脂組成物は、二軸押出機で混練することが好ましく、このとき未分散物が少なくなり、均質化されやすい。二軸押出機による処理は、1回よりも2回以上の方がより均質化させることができるため好ましい。このとき、100〜200℃の温度で混練することがより好ましい。二軸押出機で混練する前に、所定の割合になるように計量された紙粉砕物及び樹脂並びに必要に応じて添加する流動性向上剤などの助剤をヘンシェルミキサーなどの混合機で予め均一に混合しておくことが好ましい。二軸押出機のスクリューによる流動、混練作用によって、繊維の解繊と切断とがなされ、紙含有樹脂組成物の分散性と流動性が改善される。
【0046】
本実施形態に係る紙含有樹脂組成物は、ASTM−D1238−04cで規定したMFR(試験温度=190℃、試験荷重=10kg)が2.0〜25.0g/10minである。好ましくは、5.0〜22.0g/10minである。MFRがこの範囲に入る紙含有樹脂組成物は、NBKPを50質量%以上含有する原紙をベースとした紙の粉砕物を含有しているにもかかわらず、紙粉砕物と樹脂とが十分に均一分散されている。MFRが2.0g/10min未満であると、紙粉砕物と樹脂との分散が不十分である。また、NBKPを多く含有している本実施形態では、紙粉砕物と樹脂との分散が十分に為されると、MFRは25.0g/10minに近づく。このMFRの値は、二軸押出機で混練するときに、流動性向上剤の添加の有無によって大きく影響を受けない。また、JIS K 7209:2000「プラスチック−吸水率の求め方」D法に準じて測定した吸水率が、0.10未満であることが好ましい。JIS K 7113:1995「プラスチックの引張試験方法」に準じて測定した引張強度が、33MPa以上であることが好ましい。さらにJIS K 7203:1995「硬質プラスチックの曲げ試験方法」に準じて測定した曲げ強度が、63MPa以上であることが好ましい。
【0047】
このように本実施形態に係る紙含有樹脂組成物は、針葉樹漂白化学パルプを50質量%以上含有する原紙をベースとしたポリエチレンフィルムラミネート紙を粉砕して紙の粉砕物を得る工程と、多塩基酸無水物で前記粉砕物をエステル化させる工程と、アルカリ土類金属化合物で有機酸を中和する工程と、少なくとも前記粉砕物とポリプロピレン樹脂とを、二軸押出機で混練し、ASTM−D1238−04cで規定したメルトマスフローレイト(MFR)(試験温度=190℃、試験荷重=10kg)が2.0〜25.0g/10minである紙含有樹脂組成物を得る工程と、を有する製造方法で得ることができる。なお、ラミネート紙に、ラミネート前のその原紙を添加して使用してもよい。
【0048】
次に本実施形態に係る紙含有樹脂成形品は、針葉樹漂白化学パルプを50質量%以上含有する原紙をベースとしたポリエチレンフィルムラミネート紙を粉砕して紙の粉砕物を得る工程と、多塩基酸無水物で前記粉砕物をエステル化させる工程と、アルカリ土類金属化合物で有機酸を中和する工程と、少なくとも前記粉砕物とポリプロピレン樹脂とを、二軸押出機で混練し、紙含有樹脂組成物を得る工程と、該紙含有樹脂組成物を射出成形機によって成形して、ASTM−D1238−04cで規定したメルトマスフローレイト(MFR)(試験温度=190℃、試験荷重=10kg)が2.0〜25.0g/10minである紙含有樹脂成形品を得る工程と、を有する製造方法で得ることができる。ここで、紙含有樹脂組成物を得る工程及び/又は紙含有樹脂成形品を得る工程において、流動性向上剤を添加することが好ましい。
【0049】
このようにして得られた本実施形態に係る紙含有樹脂成形品は、多塩基酸無水物でエステル化された紙の粉砕物、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂及びアルカリ土類金属化合物を少なくとも含有し、粉砕物及びポリプロピレン樹脂が主要成分であり、ASTM−D1238−04cで規定したメルトマスフローレイト(MFR)(試験温度=190℃、試験荷重=10kg)が2.0〜25.0g/10minである。前記紙は好ましくは、NBKPを50質量%以上含有する。また、MFRは、より好ましくは5.0〜22.0g/10minである。紙含有樹脂組成物のMFRの値と紙含有樹脂成形品にした後のMFRの値は、ほぼ同等となる。この紙含有樹脂成形品は、変色及び臭気がなく、衝撃強度が優れる。
【0050】
本実施形態の紙含有樹脂成形品では、含有されているラミネート紙が、液体容器用のポリエチレンフィルムラミネート紙、該ポリエチレンフィルムラミネート紙の断裁屑及び/又は該ポリエチレンフィルムラミネート紙の回収古紙であることを含み、資源の有効活用がなされる。また、紙含有樹脂成形品中の紙の粉砕物と填料とを含む紙素材の合計量が、51質量%以上であることが好ましく、環境配慮型となる。紙含有樹脂成形品としては、例えば、皿、コップ、ボウル、スプーン、櫛などがある。
【実施例】
【0051】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、例中の「%」は特に断らない限り「質量%」を示す。
【0052】
(実施例1)
[紙粉砕物の製造]
ポリエチレンフィルムラミネート紙の原紙が、NBKPを90質量%含有し、坪量393g/m、厚さ0.48mm、密度0.82g/cmのミルクカートン印刷トリミング屑を粉砕機(型式 BO−2575及びHaA−2542:ホーライ社製)にて粉砕し、0.5mmφのスクリーンを通過させポリエチレンフィルムラミネート紙の粉砕物を得た。
[紙含有樹脂組成物の製造]
次いで、無水マレイン酸(商品名 無水マレイン酸:日本油脂社製)をパルプ成分に対し0.5質量%となる量を加え、上記粉砕物に酸化チタン(商品名 タイペークA-220:石原産業社製)、変性PP樹脂(商品名 ユーメックス1010:サンノプコ社製)及びPP樹脂(商品名 J-5051HP:出光石油化学社製)を加え、更に中和剤として酸化マグネシウム(商品名 酸化マグネシウム:富田製薬社製)を全質量に対し0.5質量%となる量を加え、ヘンシェルミキサーで均一に混合し、その後デスクペレッター(型式 F−60:不二パウダル社製)及び二軸押出機に投入してペレット化し、紙含有樹脂組成物を得た。この紙含有樹脂組成物の中の紙比率は、55質量%であった。
[評価用射出成形品の製造]
紙含有樹脂組成物から、シリンダー設定温度180℃の射出成形機(型式 J35ELII:日本製鋼所社製)を用いて評価用射出成形品を作製した。
【0053】
(実施例2)
実施例1の紙粉砕物の製造において、スクリーンを0.5mmφのスクリーンから1.0mmφのスクリーンに変更し、無水マレイン酸(商品名 無水マレイン酸:日本油脂社製)をパルプ成分に対し0.5質量%から1.5質量%となる量に変更し、中和剤として酸化マグネシウム(商品名 酸化マグネシウム:富田製薬社製)を全質量に対し0.5質量%から1.5質量%となる量に変更した以外は同じ方法で、紙含有樹脂組成物及び評価用射出成形品を得た。この紙含有樹脂組成物の中の紙比率は、55質量%であった。
【0054】
(実施例3)
実施例2の紙粉砕物の製造において、粉砕物の原料を、ミルクカートン印刷トリミング屑から、ポリエチレンフィルムラミネート紙の原紙がNBKPを80質量%含有し、坪量362g/m、厚さ0.47mm、密度0.78g/cmの回収牛乳パックに変更した以外は同じ方法で、紙含有樹脂組成物及び評価用射出成形品を得た。この紙含有樹脂組成物の中の紙比率は、55質量%であった。
【0055】
(実施例4)
実施例3の紙含有樹脂組成物の製造において、紙粉砕物の配合量を、紙含有樹脂組成物の中の紙比率が55質量%となる量から紙含有樹脂組成物の中の紙比率が60質量%となる量に変更し、実施例3の紙粉砕物の製造において、スクリーンを1.0mmφのスクリーンから2.0mmφのスクリーンに変更し、無水マレイン酸(商品名 無水マレイン酸:日本油脂社製)をパルプ成分に対し1.5質量%から2.0質量%となる量に変更し、中和剤として酸化マグネシウム(商品名 酸化マグネシウム:富田製薬社製)を全質量に対し1.5質量%から2.0質量%となる量に変更した以外は同じ方法で、紙含有樹脂組成物及び評価用射出成形品を得た。
【0056】
(比較例1)
実施例1の紙粉砕物の製造において、スクリーンを0.5mmφのスクリーンから3.0mmφのスクリーンに変更し、中和剤として酸化マグネシウム(商品名 酸化マグネシウム:富田製薬社製)を無添加とした以外は同じ方法で、紙含有樹脂組成物及び評価用射出成形品を得た。この紙含有樹脂組成物の中の紙比率は、55質量%であった。
【0057】
(比較例2)
実施例1の紙含有樹脂組成物の製造において、無水マレイン酸(商品名 無水マレイン酸:日本油脂社製)をパルプ成分に対し0.5質量%から無添加に変更し、中和剤として酸化マグネシウム(商品名 酸化マグネシウム:富田製薬社製)を全質量に対し0.5質量%から無添加に変更したとした以外は同じ方法で、紙含有樹脂組成物及び評価用射出成形品を得た。
【0058】
(比較例3)
実施例3の紙含有樹脂組成物の製造において、無水マレイン酸(商品名 無水マレイン酸:日本油脂社製)をパルプ成分に対し1.5質量%から無添加に変更し、中和剤として酸化マグネシウム(商品名 酸化マグネシウム:富田製薬社製)を全質量に対し1.5質量%から無添加に変更したとした以外は同じ方法で、紙含有樹脂組成物及び評価用射出成形品を得た。
【0059】
上記実施例1〜4、比較例1〜3で用いたラミネート古紙、得られた紙粉砕物及び紙含有樹脂組成物並びに評価用射出成形品の評価は下記の方法で行い、結果を表1に示した。
【0060】
<紙比率>
紙含有樹脂組成物の中の紙の占める割合を紙比率と表示し、ここでは紙と炭酸カルシウムなどの填料の合計量を紙素材分とした。
【0061】
<MFR>
ASTM D1238-04c「Standard Test Method for Flow Rates of Thermoplastics by Extrusion Plastometer」に準じて測定。試験温度=190℃、試験荷重=10kg。紙含有樹脂組成物について測定した。
【0062】
<繊維分散性>
紙含有樹脂組成物に所定量のカーボンブラックを配合して評価用射出成形品を作製し、繊維の分散の程度を次の基準で評価した。
×:繊維の未分散多数、劣り実用に耐えない。
△:繊維の未分散ややあり、やや劣り実用に耐えない。
○:繊維の未分散なし、優れる。
【0063】
<成形性>
紙含有樹脂組成物から成形品を作製する成形加工のときの作業性を次の基準で評価した。
×:成形品が得られなかった、
△:成形性が不良であり、実用に耐えない、
○:成形性が良好。
【0064】
<変色>
成形品を視感にて次の基準で判定した。
×:明らかな黄色味あり、劣り実用に耐えない、
△:黄色味ややあり、劣り実用に耐えない、
○:黄色身がなく、優れる。
【0065】
<臭気>
成形品の臭気を次の基準で判定した。
△:紙焼けの臭気がややあり、劣り実用に耐えない、
○:臭気なく、優れる。
【0066】
<引張強度>
JIS K 7113:1995「プラスチックの引張試験方法」に準じて測定した。
【0067】
<曲げ強度>
JIS K 7203:1995「硬質プラスチックの曲げ試験方法」に準じて測定した。
【0068】
<IZOD(アイゾット衝撃強度)>
ASTM D256−04「Test Methods for Determination of thwPendulum Impact Resistance of Notched Specimens of Plastics」(ノッチなし)に準じて測定した。
【0069】
<吸水率>
JIS K 7209:2000「プラスチック−吸水率の求め方」D法 に準じて測定した。
【0070】

【表1】

【0071】
実施例1及び2では、ポリエチレンフィルムラミネート紙の原紙のNBKPが90質量%のミルクカートン印刷トリミング屑を使用して紙含有樹脂組成物を作製した。いずれの紙含有樹脂組成物も、NBKPの含有量が高いにもかかわらず、粉砕物のエステル化と二軸押出機の混練によって均一分散できたため、繊維分散性と成形性が良好であり、得られた成形品は、変色及び臭気もなかった。
【0072】
実施例3及び4では、ポリエチレンフィルムラミネート紙の原紙のNBKPが80質量%の回収牛乳パックを使用して紙含有樹脂組成物を作製した。NBKPの含有量が高いにもかかわらず、粉砕物のエステル化と二軸押出機の混練によって均一分散できたため、繊維分散性と成形性が良好であり、得られた成形品は、変色及び臭気もなかった。
【0073】
比較例1では、MFRの値が5g/10minであるが、ミルクカートン印刷トリミング屑の粉砕粒径が大きい為、分散性が不十分となり繊維分散性と成形性が不良であった。また中和剤を添加しなかった為、得られた成形品は、変色及び臭気が見られた。
【0074】
機械的強度、特に引張強度、曲げ強度及び吸水率は、比較例と比べると実施例では良好であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多塩基酸無水物でエステル化された紙の粉砕物、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂及びアルカリ土類金属化合物を少なくとも含有し、
前記粉砕物及び前記ポリプロピレン樹脂が主要成分であり、
ASTM−D1238−04cで規定したメルトマスフローレイト(MFR)(試験温度=190℃、試験荷重=10kg)が2.0〜25.0g/10minであることを特徴とする紙含有樹脂組成物。
【請求項2】
前記多塩基酸無水物が無水マレイン酸であり、かつ、エステル化によって導入された無水マレイン酸の割合がパルプ成分に対して0.1〜5質量%であることを特徴とする請求項1に記載の紙含有樹脂組成物。
【請求項3】
前記アルカリ土類金属化合物がマグネシウム化合物であり、かつ、酸化マグネシウム換算で全質量に対し0.1〜5質量%含有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の紙含有樹脂組成物。
【請求項4】
前記紙が針葉樹漂白化学パルプを50質量%以上含有する原紙をベースとしたポリエチレンフィルムラミネート紙であり、かつ、前記ポリエチレン樹脂が前記ポリエチレンフィルムラミネート紙の由来であることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の紙含有樹脂組成物。
【請求項5】
前記粉砕物と填料とを含む紙素材の合計量が、51質量%以上であることを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載の紙含有樹脂組成物。
【請求項6】
多塩基酸無水物でエステル化された紙の粉砕物、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂及びアルカリ土類金属化合物を少なくとも含有し、
前記粉砕物及び前記ポリプロピレン樹脂が主要成分であり、
ASTM−D1238−04cで規定したメルトマスフローレイト(MFR)(試験温度=190℃、試験荷重=10kg)が2.0〜25.0g/10minであることを特徴とする紙含有樹脂成形品。
【請求項7】
前記紙が針葉樹漂白化学パルプを50質量%以上含有する原紙をベースとしたポリエチレンフィルムラミネート紙であり、かつ、前記ポリエチレン樹脂が前記ポリエチレンフィルムラミネート紙の由来であることを特徴とする請求項6に記載の紙含有樹脂成形品。
【請求項8】
針葉樹漂白化学パルプを50質量%以上含有する原紙をベースとしたポリエチレンフィルムラミネート紙を粉砕して紙の粉砕物を得る工程と、
多塩基酸無水物で前記粉砕物をエステル化させる工程と、
アルカリ土類金属化合物で有機酸を中和する工程と、
少なくとも前記粉砕物とポリプロピレン樹脂とを、二軸押出機で混練し、ASTM−D1238−04cで規定したメルトマスフローレイト(MFR)(試験温度=190℃、試験荷重=10kg)が2.0〜25.0g/10minである紙含有樹脂組成物を得る工程と、
を有することを特徴とする紙含有樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
前記粉砕物の粉砕粒径が0.5〜2.5mmであることを特徴とする請求項8に記載の紙含有樹脂組成物の製造方法。
【請求項10】
前記ポリエチレンフィルムラミネート紙が、液体容器用のポリエチレンフィルムラミネート紙、該ポリエチレンフィルムラミネート紙の断裁屑及び/又は該ポリエチレンフィルムラミネート紙の回収古紙であることを特徴とする請求項8又は9に記載の紙含有樹脂組成物の製造方法。
【請求項11】
針葉樹漂白化学パルプを50質量%以上含有する原紙をベースとしたポリエチレンフィルムラミネート紙を粉砕して紙の粉砕物を得る工程と、
多塩基酸無水物で前記粉砕物をエステル化させる工程と、
アルカリ土類金属化合物で有機酸を中和する工程と、
少なくとも前記粉砕物とポリプロピレン樹脂とを、二軸押出機で混練し、紙含有樹脂組成物を得る工程と、
該紙含有樹脂組成物を射出成形機によって成形して、ASTM−D1238−04cで規定したメルトマスフローレイト(MFR)(試験温度=190℃、試験荷重=10kg)が2.0〜25.0g/10minである紙含有樹脂成形品を得る工程と、
を有することを特徴とする紙含有樹脂成形品の製造方法。
【請求項12】
前記粉砕物の粉砕粒径が0.5〜2.5mmであることを特徴とする請求項11に記載の紙含有樹脂成形品の製造方法。
【請求項13】
前記ポリエチレンフィルムラミネート紙が、液体容器用のポリエチレンフィルムラミネート紙、該ポリエチレンフィルムラミネート紙の断裁屑及び/又は該ポリエチレンフィルムラミネート紙の回収古紙であることを特徴とする請求項11又は12に記載の紙含有樹脂成形品の製造方法。
【請求項14】
前記紙含有樹脂組成物を得る工程及び/又は前記紙含有樹脂成形品を得る工程において、流動性向上剤を添加することを特徴とする請求項11、12又は13に記載の紙含有樹脂成形品の製造方法。



【公開番号】特開2008−75014(P2008−75014A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−257373(P2006−257373)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【出願人】(000241810)北越製紙株式会社 (196)
【Fターム(参考)】