説明

紙器用加工紙、ブランクス、カートンおよび紙器用加工紙の製造方法

【課題】耐油加工を施した紙器は表面の耐油性によりサック貼りののりの載りやホットメルト貼りの接着性が十分ではなく、加工適性に劣るものであった。したがって、この様な焼き立てのピザやフライドチキン、フライドポテトなどの油分の多い食品や油の付着した工業用品などを販売、収納するための包装箱は、接着が不用な一枚の紙(ブランク)に折り加工を施したものを用い、填め合わせなどの手段により立体形状を維持しているものであったので、基材と耐油層の間に目止め層が形成されていることを特徴とする紙器用加工紙、ブランクス、カートンおよび紙器用加工紙の製造方法を提供することが望まれていた。
【解決手段】基材と耐油層の間に目止め層が形成されていることを特徴とする紙器用加工紙を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バター、チーズなどの乳製品の他、身欠きニシンなどの油分の多い食品や油の付着した工業用品などを販売、収納するための外箱、内箱として利用できる。
【背景技術】
【0002】
従来より、耐油加工を施した紙器として、特許文献1の様な技術が公開されている。この技術では、焼き立てのピザやフライドチキン、フライドポテトなどの油分の多い食品や油の付着した工業用品などを販売、収納するためのダンボール製の包装箱が知られている。
【0003】
しかし、この様な耐油加工を施した紙器は表面の耐油性によりサック貼りののりの載りやホットメルト貼りの接着性が十分ではなく、加工適性に劣るものであった。したがって、この様な焼き立てのピザやフライドチキン、フライドポテトなどの油分の多い食品や油の付着した工業用品などを販売、収納するための包装箱は、接着が不用な一枚の紙(ブランク)に折り加工を施したものを用い、填め合わせなどの手段により立体形状を維持しているものであった。
【0004】
特許文献は以下の通り。
【特許文献1】特開平9−290867号公報
【特許文献2】特開平7−70983号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の要望を満たすべくなされたものであって、耐油性があるにも係わらず、サック貼りやホットメルト貼りにおいても接着剤やホットメルト樹脂の紙器用加工紙基材への密着性が低下することなく、容易に製函することができ、しかもその接着を維持することが可能な紙器用加工紙、ブランクス、カートンおよび紙器用加工紙の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、基材と耐油層の間に目止め層が形成されていることを特徴とする紙器用加工紙を提供するものである。
【0007】
これにより、耐油剤の資源的無駄を無くす他に、塗布の均一性、安定性に寄与し、ひいては安価な紙器用加工紙を提供することが可能になったものである。
【0008】
また請求項2に係る発明は、耐油層がパターン状に施されている事を特徴とする請求項1記載の紙器用加工紙を提供するものである。
【0009】
これにより、耐油性があるにも係わらず、サック貼りやホットメルト貼りにおいても接着剤やホットメルト樹脂の紙器用加工紙基材への密着性が低下することなく、容易に製函することができ、しかもその接着を維持することが可能な紙器用加工紙を提供することが可能になったものである。
【0010】
また請求項3に係る発明は、目止め層が耐油層と同じパターン状に施されている事を特
徴とする請求項2記載の紙器用加工紙を提供するものである。
【0011】
これにより、目止め層の資源的無駄を無くす他に、塗布の均一性、安定性に寄与し、ひいては安価な紙器用加工紙を提供することが可能になったものである。
【0012】
また請求項4に係る発明は、パターンが、接着剤塗布領域が除かれるパターンであることを特徴とする請求項2または3記載の紙器用加工紙を提供するものである。
【0013】
これにより、耐油剤が接着剤やホットメルト樹脂の紙器用加工紙基材への密着性が低い場合にも、サック貼りやホットメルト貼りにおいても接着剤やホットメルト樹脂の紙器用加工紙基材への密着性が低下することなく、容易に製函することができ、しかもその接着を維持することが可能な紙器用加工紙を提供することが可能になったものである。
【0014】
また請求項5に係る発明は、請求項1ないし4何れか記載の耐油層が非フッ素系耐油剤からなることを特徴とする紙器用加工紙を提供するものである。
【0015】
これにより、環境・衛生面においても好ましい紙器用加工紙を提供することが可能になったものである。
【0016】
また請求項6に係る発明は、請求項1乃至5何れか記載の紙器用加工紙を用いて所定形状に打ち抜かれたブランクスを提供するものである。
【0017】
これにより、耐油性があるにも係わらず、サック貼りやホットメルト貼りにおいても接着剤やホットメルト樹脂の紙器用加工紙基材への密着性が低下することなく、容易に製函することができ、しかもその接着を維持することが可能なブランクスを提供することが可能になったものである。
【0018】
また請求項7に係る発明は、請求項6記載のブランクスが組み立てられたカートンを提供するものである。
【0019】
これにより、耐油性があるにも係わらず、しっかり製函されているカートンを提供することが可能になったものである。
【0020】
また請求項8に係る発明は、基材表面にパターン状に目止め層を施し、しかる後に同一のパターン状に耐油剤を施すことを特徴とする紙器用加工紙の製造方法を提供するものである。
【0021】
これにより、油性内容物を販売収納し、しかも填め合わせではなく製函可能な紙器用加工紙の製造方法を提供することが可能になったものである。
【0022】
また請求項9に係る発明は、請求項8記載の耐油剤が非フッ素系耐油剤からなることを特徴とする紙器用加工紙の製造方法を提供するものである。
【0023】
これにより、環境・衛生面においても好ましい紙器用加工紙の製造方法を提供することが可能になったものである。
【0024】
また請求項10に係る発明は、パターンが、接着剤塗布領域が除かれるパターンであることを特徴とする請求項8または9記載の紙器用加工紙の製造方法を提供するものである。
【0025】
これにより、耐油剤が接着剤やホットメルト樹脂の紙器用加工紙基材への密着性が低い場合にも、サック貼りやホットメルト貼りにおいても接着剤やホットメルト樹脂の紙器用加工紙基材への密着性が低下することなく、容易に製函することができ、しかもその接着を維持することが可能な紙器用加工紙の製造方法を提供することが可能になったものである。
【0026】
また請求項11に係る発明は、基材表面に目止め剤を塗布し、しかる後に耐油剤を塗布することを特徴とする請求項8または9または10記載の紙器用加工紙の製造方法を提供するものである。
【0027】
これにより、耐油剤の資源的無駄を無くす他に、塗布の均一性、安定性に寄与し、ひいては安価な紙器用加工紙の製造方法を提供することが可能になったものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明により、耐油性があるにも係わらず、サック貼りやホットメルト貼りにおいても接着剤やホットメルト樹脂の紙器用加工紙基材への密着性が低下することなく、容易に製函することができ、しかもその接着を維持することが可能な紙器用加工紙、ブランクス、カートンおよび紙器用加工紙の製造方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の一実施例としての紙器用加工紙およびその製造方法の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、提案する耐油性があるにも係わらず、サック貼りやホットメルト貼りにおいても接着剤やホットメルト樹脂の紙器用加工紙基材への密着性が低下することなく、容易に製函することができ、しかもその接着を維持することが可能な紙器用加工紙を示す。
【0030】
まず、紙器用加工紙基材1の一方の面に目止め層2をパターン状に設け、その目止め層2上に耐油層3を設ける。また、他方の面には印刷層4を設けることにより、紙器用加工紙が製造される。
【0031】
この場合の紙器用加工紙基材は、耐水性紙器用加工紙基材を用いるのが好ましい。一般的に耐油性が求められるときは同時に耐水性も求められる場合が多いからである。また、耐水性紙器用加工紙基材は一般的に平滑性も良く、目止め剤を少量にすることが可能だからである。しかし、耐水性が全く不用な場合などの様な場合はこれらに限られないことも当然であり、他の機能、例えば酸素遮断性が求められる様な場合であれば、それ相応の特殊用紙を用いることも可能である。
【0032】
また、目止め層は、その適性は紙器用加工紙基材と耐油剤により好ましい材料が変わるものであるが、一般的には、インキのメジウム、レジューサーが印刷適性の点で好ましく、紫外線硬化性(UV)インキや油性インキの他、目止め効果が生じるものであればどの様な材料でも構わない。この塗布量としては、上記紙器用加工紙基材を用いた場合は1〜3g/m2が適当である。1g/m2以下であれば十分な耐油性が発揮できなくなり、3g/m2以上であれば耐磨性に劣るからである。なお、他の条件、例えば下記耐油剤以外を用いた場合であれば、適当な塗布量が変動することもあるし、上記欠点が支障のない場合であれば上記範囲外でも構わないことは当然である。
【0033】
目止め層のパターンは、その性質上全面に設けることも可能であるが、費用的な面その他の理由により、耐油性を付与する部分だけに設けることが実際的である。
【0034】
また、耐油層は、ポリエチレンテレフタレート、アクリル系樹脂などが好ましいが、そ
の他の耐油性のある材料でも構わないことは当然である。この塗布量としては、上記紙器用加工紙基材、目止め層を用いた場合は1〜3g/m2が適当である。1g/m2以下であれば十分な耐油性が発揮できなくなり、3g/m2以上であれば製造時にブロッキングの問題があるからである。なお、他の条件、例えば上記材料以外を用いた場合であれば、適当な塗布量が変動することもあるし、上記欠点が支障のない場合であれば上記範囲外でも構わないことは当然である。
【0035】
目止め層と耐油層とのパターンの関係は、一般的に同じパターンでも良いが、厳密に全く同じパターンである必要は無い。耐油性が求められる部分で耐油剤が十分に塗布され、耐油性が不用な部分に耐油剤が設けられない構成なら、境界領域において耐油剤のみの層がある部分、目止め層がある部分が少し形成されても全体として性能に支障が生じないからである。
【0036】
耐油剤が設けられない領域は、耐油性があると支障が生じる領域、例えば接着剤塗布領域の様な、別の部材との接着や塗布、別機能の付与などの各種耐油性と相反する機能が求められる領域であり、接着剤塗布領域などが代表的なものである。従って、耐油性が求められず、接着剤塗布などにも用いられない領域は、耐油性を付与しても付与しなくても構わないが、費用的には耐油性を付与しないままの方が好ましい。
【0037】
さらに、印刷層は、通常の印刷で十分であるが、製函に用いる部分がある場合は、接着性能が低下しないインキが求められる。
【0038】
この様な紙器用加工紙は、サック貼りなどの製函工程に回される。つまり、ブランク形状への抜き工程を行った後、接着剤塗布領域に接着剤を設け、更に製函することができる。完成した耐油性紙箱は、接着が完全な紙箱となっており、内容物にバターやチーズなどの油性の内容物を入れた場合も耐油性が発揮できた。
【実施例】
【0039】
以下、本発明の一実施例としての紙器用加工紙およびその製造方法の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、提案する耐油性があるにも係わらず、サック貼りやホットメルト貼りにおいても接着剤やホットメルト樹脂の紙器用加工紙基材への密着性が低下することなく、容易に製函することができ、しかもその接着を維持することが可能な紙器用加工紙を示す。
【0040】
まず、紙器用加工紙基材1である白板紙260g/m2の一方の面にUVインキによる印刷、UVランプによる紫外線照射と熱風送付による乾燥により印刷層4を設け、他方の面にUVインキメジウムによる印刷、UVランプによる紫外線照射と熱風送付による乾燥により目止め層2をパターン状に設け、その目止め層2上に耐油剤による印刷、熱風送付による乾燥により耐油層3を設けることにより、紙器用加工紙(表の白色度82±3%、表の平滑度8.0±4.0kPa(sec)、剛度9.3mNm(縦方向)、剛度3.8mNm(横方向)、折曲強度3.98N(非罫線部、縦方向)、折曲強度2.49N(非罫線部、横方向)、折曲強度1.74N(罫線部、縦方向)、折曲強度1.56N(罫線部、横方向)、表の滑り角度16度)が製造される。
【0041】
この様な紙器用加工紙は、製函工程に回される。つまり、ブランク形状への抜き工程を行った後、接着剤塗布領域6に接着剤を設けて図2の様なブランクスが出来上がる。このブランクスに折り加工を施し、更にブランクスの接着剤塗布領域を用いて製函し、図3の様なカートンを製造することができる。完成した耐油性のカートンは、接着が完全なカートンとなった。
【0042】
この様なカートンにバターやチーズなどの油性の内容物を入れた場合も耐油性が発揮できた。
【0043】
なお、この紙器用加工紙の上からトルエンとn−ヘプタンの混合液(混合比1:1)を滴下し、染み込み具合を目視観察したところ、耐油加工を施した部分では染み込みが認められなかった。他方、耐油加工を施していない部分では若干の染み込みが認められた。
【0044】
同様に、この紙器用加工紙の上から市販のバターを10gカットし、35℃で30分間載せた状態で染み込み具合を目視観察したところ、耐油加工を施した部分では染み込みが認められなかった。他方、耐油加工を施していない部分では若干の染み込みが認められた。
【0045】
また、この紙器用加工紙の上から水滴を滴下し、染み込み具合を目視観察したところ、染み込みが認められなかった。
【0046】
同様に、この紙器用加工紙を水に浸漬したところ、染み込みが認められなかった。
【0047】
また、フッ素成分は全く認められず、臭気も官能検査の結果、全く認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、バター、チーズなどの乳製品の他、身欠きニシンなどの油分の多い食品や油の付着した工業用品などを販売、収納するための紙器用加工紙、ブランクス、カートンおよび紙器用加工紙の製造方法に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明における紙器用加工紙の部分拡大断面図である。
【図2】本発明における紙器用加工紙を用いたブランクの平面図である。
【図3】本発明における紙器用加工紙を用いたカートンの斜視図である。
【符号の説明】
【0050】
1・・・紙器用加工紙基材
2・・・目止め層
3・・・耐油層
4・・・印刷層
5・・・耐油加工領域
6・・・接着剤塗布領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と耐油層の間に目止め層が形成されていることを特徴とする紙器用加工紙。
【請求項2】
耐油層がパターン状に施されている事を特徴とする請求項1記載の紙器用加工紙。
【請求項3】
目止め層が耐油層と同じパターン状に施されている事を特徴とする請求項2記載の紙器用加工紙。
【請求項4】
パターンが、接着剤塗布領域が除かれるパターンであることを特徴とする請求項2または3記載の紙器用加工紙。
【請求項5】
請求項1ないし4何れか記載の耐油層が非フッ素系耐油剤からなることを特徴とする紙器用加工紙。
【請求項6】
請求項1乃至5何れか記載の紙器用加工紙を用いて所定形状に打ち抜かれたブランクス。
【請求項7】
請求項6記載のブランクスが組み立てられたカートン。
【請求項8】
基材表面にパターン状に目止め層を施し、しかる後に同一のパターン状に耐油剤を施すことを特徴とする紙器用加工紙の製造方法。
【請求項9】
請求項8記載の耐油剤が非フッ素系耐油剤からなることを特徴とする紙器用加工紙の製造方法。
【請求項10】
パターンが、接着剤塗布領域が除かれるパターンであることを特徴とする請求項8または9記載の紙器用加工紙の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−182373(P2006−182373A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−375867(P2004−375867)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】